(平成30年10月3日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、平成26年分の所得税等について、収入の計上誤り等を理由とする更正の請求をしたところ、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行うとともに、請求人の子らの名義で賃貸された土地の賃料に係る収益は請求人に帰属するとして更正処分等を行ったことから、請求人が当該各処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

  • イ 所得税法第12条《実質所得者課税の原則》は、資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律を適用する旨規定している。
  • ロ 所得税基本通達12−1《資産から生ずる収益を享受する者の判定》は、所得税法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者が誰であるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者が誰であるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する旨定めている。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人(昭和○年○月○日生)は、a市d町○−○の土地(374.0u)、同町○番○の土地(1,157.0u)、同市e町○丁目○番○の土地(977.0u)及び同市f町○丁目○番○の土地(823.0u)をそれぞれ相続又は売買により取得し、所有していた。
  • ロ 請求人は、上記イのa市d町○−○の土地、同町○番○の土地の一部(510.6u)及び同市e町○丁目○番○の土地(以下、これらの土地を併せて「本件d等土地」という。)並びに同市f町○丁目○番○の土地(以下「本件f土地」といい、本件d等土地と併せて「本件各土地」という。)をいずれも駐車場の用地として賃貸の用に供していた。
     このうち、本件d等土地の賃貸は、いずれも貸主である請求人が個人又は法人に所定の区画を自動車保管場所として使用させ、その使用料の支払を受けるという自動車保管場所使用契約によるものであった(契約期間は1年であり、以後自動更新されていた。以下、本件d等土地の上の駐車場を「本件d等駐車場」という。)。また、本件f土地の賃貸は、貸主である請求人が医療法人に従業員の駐車場用地としてこれを一括して賃貸し、その賃料の支払を受けるという土地賃貸借契約によるものであった(原契約は平成15年1月23日に締結され、以後、当該契約が更新されていた。以下、本件f土地の上の駐車場を「本件f駐車場」といい、本件d等駐車場と併せて「本件各駐車場」という。)。
  • ハ 本件f土地(本件f駐車場)について、請求人とD社との間で、平成15年1月23日、「賃貸不動産管理委任契約書」が作成された。この契約により、本件f駐車場に係る賃貸借契約の締結・改訂、賃料の請求・代理受領等の管理業務を請求人がD社に委託し、請求人はその委任報酬として賃貸料の○パーセントを支払うこととされた。また、D社が賃借人から代理受領する賃貸料については、上記の委任報酬額を控除(精算)した後の金額が請求人名義の預金口座に振り込まれることとされた。
     また、本件d等土地(本件d等駐車場)について、請求人とE社との間で、平成16年から平成21年にかけ、それぞれ「不動産管理契約書」(3通)が作成された。これらの契約により、請求人は、本件d等駐車場に係る自動車保管場所使用契約の締結、賃料等の代理受領、日常クレーム処理、日常清掃等の業務をそれぞれE社に委託し、その業務委託料として月額賃料等の総額の○パーセントを支払うこととされた。また、E社が各賃借人から代理受領する賃貸料については、上記の業務委託料を控除(精算)した後の金額が請求人名義の貯金口座に振り込まれることとされた。
  • ニ 請求人は、本件各土地を含むその所有する複数の土地を賃貸し、その賃料収益を不動産所得として所得税の確定申告をしており、平成25年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の申告においては、不動産所得に係る総収入金額(賃貸料)を○○○○円(うち本件各駐車場から生じた賃貸料収入は○○○○円)とし、不動産所得の金額を○○○○円としていた。
  • ホ 本件d等土地について、請求人とその長男であるFとの間で、平成26年1月25日、「使用貸借契約書」が作成された。また、同日、本件f土地について、請求人とその長女であるG(以下Fと併せて「Fら」という。)との間で、「使用貸借契約書」が作成された(以下、上記の各使用貸借契約書を「本件各使用貸借契約書」といい、本件各使用貸借契約書による契約を「本件各使用貸借契約」という。)。
     本件各使用貸借契約書には、請求人が本件各土地を平成26年2月1日から10年間、各年の固定資産税・都市計画税の合計額相当額を賃料としてFらにそれぞれ賃貸する旨、Fらは本件各土地を駐車場用地として賃借する旨、さらに、Fらは、請求人の承諾により本件各土地を転貸又は賃借権譲渡を行うことができる旨が記載されていた。
  • ヘ さらに、本件各使用貸借契約書が作成された日と同日の平成26年1月25日、請求人とFらとの間で、本件各土地の上に敷設されたアスファルト舗装又は車止め若しくはフェンス(以下「本件舗装等」という。)を請求人がFらに贈与する旨の「贈与契約書」(2通)がそれぞれ作成された(以下、上記の各贈与契約書を「本件各贈与契約書」といい、本件各贈与契約書による契約を「本件各贈与契約」という。また、本件各使用貸借契約書と本件各贈与契約書を併せて「本件各契約書」という。)。
     本件各贈与契約書には、贈与物件上において営む駐車場賃貸借契約については、Fらがその地位を引き継ぐこととする旨が記載されていた。
  • ト 本件d等土地(本件d等駐車場)の賃貸に関し、FとE社との間において、平成26年1月30日、同年2月1日以後、請求人とE社との間で締結されていた不動産管理契約(上記ハの後段)の委託者をFに、賃料等の振込先をF名義の預金口座にそれぞれ変更する旨の「不動産管理(変更)契約書【貸主、家賃振込口座の変更】」(3通)が作成された。
     また、本件f土地(本件f駐車場)の賃貸に関し、GとD社との間において、平成26年2月1日、同日以後の管理業務の委任者をGに、地代等の振込先をG名義の預金口座にそれぞれ変更する旨の「賃貸不動産管理委任変更契約書」が作成された。
  • チ 本件f土地について、Gとこれを従前請求人から賃借していた医療法人との間で、平成26年1月31日、同年2月1日以後の賃貸人をGとすることなどを記載した「土地賃貸借変更契約書」が作成された。
     また、本件d等土地については、平成26年2月1日以後、Fと本件d等土地を新たに自動車保管場所として使用する者又は従前の契約内容を変更する者との間で、賃貸人をFとする「自動車保管場所使用契約書」又は「自動車保管場所使用(変更)契約書」が作成された。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、平成26年分の所得税等について、確定申告書に別表の「確定申告」欄のとおりに記載して法定申告期限までに申告した。
     なお、請求人は、上記の確定申告書に同年分の収支内訳書(不動産所得用)を添付して提出したところ、当該収支内訳書上、本件各駐車場の賃貸契約期間については、これを平成26年1月のみとし、当該期間の賃貸料収入を同年分の不動産所得に係る総収入金額に含めて不動産所得の金額を算出していた。
  • ロ 請求人は、平成26年分の所得税等について、平成29年1月24日、別表の「更正の請求」欄のとおりの更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をした。
     なお、本件更正の請求は、収入の計上漏れ、固定資産税の計上漏れ、金(金地金)の譲渡収入の計上漏れ等により、上記イの申告に係る納付すべき税額が過大となっていることを理由とするものであるが、このうち金地金の譲渡収入の計上漏れ等については、請求人が原処分庁所属の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)による調査を受け、その際に指摘されたものであった。
  • ハ 原処分庁は、本件更正の請求に対し、平成29年3月23日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)を行うとともに、請求人の平成26年分の所得税等について、同日付で、別表の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)を行った。
     なお、本件更正処分は、平成26年2月以後の本件各駐車場の収入がいずれも請求人に帰属することを前提としてされたものであり、また、本件通知処分は、本件更正処分により認定した課税標準及び納付すべき税額を前提としてされたものであった。
  • ニ 請求人は、本件通知処分及び本件更正処分等を不服として、平成29年6月16日、再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、同年9月13日付で棄却の再調査決定をした。
  • ホ 請求人は、平成29年10月11日、再調査決定を経た後の原処分を不服とし、その一部の取消しを求めて審査請求をした。

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2 争点

本件各駐車場に係る平成26年2月ないし12月の所得は、請求人に帰属するか(具体的には、本件各使用貸借契約及び本件各贈与契約が有効に成立したか否か。)

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3 争点についての主張

請求人 原処分庁
  Fらは、本件各使用貸借契約により本件各土地の使用収益権を得て、本件各贈与契約により本件各駐車場の賃貸人の地位を引き継いだことにより、本件各駐車場の転貸人となった。このことは、Fらが、本件各駐車場の使用者との間で賃貸借契約の変更契約を締結したり、本件各駐車場の管理会社との間で不動産管理委任契約の変更契約を締結したりしたことからも明らかである。
 したがって、本件各駐車場に係る平成26年2月ないし12月の所得は、Fらに帰属するものであり、請求人に帰属するものではない。
 なお、請求人は、調査担当職員に対し、本件各使用貸借契約書の存在を知らず、署名・押印したかも不明である旨申述したことはない。請求人が本件各贈与契約及び本件各使用貸借契約の締結意思を有していなかったという原処分庁の主張は、根拠のない恣意的な推測にすぎない。
  以下のとおり、本件各贈与契約及び本件各使用貸借契約は無効であり、Fらは、本件各駐車場に係る収益に関し何らの権原も有していない。したがって、本件各駐車場に係る平成26年2月ないし12月の所得は、本件各土地の所有者である請求人に帰属する。
  • (1) 本件各贈与契約について
     本件舗装等は、取引観念上、本件各土地を離れて独立した用途に用いられることを想定し得ず、独立の経済的価値を有するものではないから、本件各土地から独立して所有権の客体とはならないものである。加えて、下記(2)と同様の理由から、請求人は、本件各贈与契約の締結意思を有していなかった。
     よって、本件各贈与契約は無効である。
  • (2) 本件各使用貸借契約について
     請求人は、調査担当職員に対し、本件各使用貸借契約書の存在を知らず、署名押印したかも不明である旨申述したことなどからすると、請求人は、Fなどに言われるがままに、具体的内容を理解せずに本件各使用貸借契約書に署名押印したにすぎず、本件各使用貸借契約の締結意思を有していなかったものというべきである。
     また、本件各贈与契約は、上記(1)のとおり独立して贈与の客体となり得ない本件舗装等を贈与するという不合理な内容であること、Fは、調査担当職員に対し、単なる土地の借用では本件各駐車場に係る収益の帰属者とは認められないと考えて本件各契約書を作成した旨申述したこと、請求人とFらは、親子であることからすると、本件各契約書は、所得税率が請求人よりも低いFらが本件各駐車場に係る収益を享受する権原を有するという外形を作出し、租税回避を行う目的で作成されたものというべきであり、このことからも、請求人は、本件各使用貸借契約の締結意思を有していなかったというべきである。
     よって、本件各使用貸借契約は無効である。

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4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

所得税法はその第12条に実質所得者課税の原則についての規定を置くところ(上記1の(2)のイ参照)、その趣旨は、担税力に応じた公平な税負担を実現するため、収益の法形式上の帰属者(名義人)と法律的実質的帰属者が相違する場合には、後者を収益の帰属者とするというものと解される。そして、同条の規定を受けた所得税基本通達12−1は、所得税法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者が誰であるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者が誰であるかにより判定すべきであり、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する旨を定めているが(上記1の(2)のロ参照)、かかる取扱いは同条の規定の趣旨に沿うものとして当審判所においても相当と認められる。

(2) 認定事実

原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 原処分に係る税務調査の際の請求人の申述等について
    • (イ) 平成27年9月8日
       調査担当職員は、平成27年9月8日、請求人の所得税等の調査(以下「原処分調査」という。)のため、肩書地に所在する請求人の自宅に赴き、請求人と面談した。
       調査担当職員は、請求人から平成26年分の所得税等の申告関係資料の提示を受けるとともに、請求人の所有する不動産1件ごとに、その利用状況等について請求人に質問等をしたところ、請求人は、Fらがいずれもその居住用として利用している土地建物については、固定資産税等を請求人が負担した上でFらに無償で貸している旨申述した。他方、請求人は、本件各駐車場の収入が平成26年1月までしか計上されていないことについては、同年2月以降の収入はFらが申告しているとしたものの、その経緯などの詳しいことは分からない旨申述した。
       また、請求人が提示した申告関係資料を調査担当職員が確認したところ、その中に、請求人に対して支払う本件各土地の地代に関する計算資料(「平成26年 A(請求人)様へ支払う地代」と題し、「税理士法人H」が作成したもの)があり、そこに「土地使用貸借契約書より」との記載があった。しかし、請求人が提示した申告関係資料の中に土地使用貸借契約書が見当たらなかったことから、調査担当職員が請求人に当該土地使用貸借契約書の提示を求めたところ、請求人は、契約書については知らない旨、契約書に印鑑を押印した記憶もない旨申述した。
    • (ロ) 平成27年9月14日
       調査担当職員は、平成27年9月14日、請求人に電話をかけ、本件各土地に係る使用貸借契約書を次回の面談時に提示するよう依頼した。これに対し、請求人は、長男(F)が税理士に聞いて申告を行っている旨、長男から言われるまま申告をした旨、契約書に押印した記憶はなく契約書も手もとにない旨などを申述した。
       上記の電話の後、Fから調査担当職員宛に電話があった。Fは、本件各駐車場の収入をFらが申告していることについて、単なる土地の借用では本件各駐車場に係る収入の帰属者として認められないため、父(請求人)から駐車場設備の贈与を受けて本件各駐車場の収入を申告している旨、(請求人に対し)地代も支払い、贈与税の申告もしている旨、さらにこれらについては税理士に聞いて行っている旨などを調査担当職員に申述した。
       なお、調査担当職員は、このFからの電話により、請求人がFらに対し駐車場の設備(本件舗装等)を贈与したことを知った。
    • (ハ) 平成27年9月16日
       本件各使用貸借契約書及び本件各贈与契約書(本件各契約書)の各写しが、Fの妻を介して調査担当職員に提出された。
    • (二) 平成27年10月20日
      調査担当職員は、請求人の自宅に臨場し、請求人及びFと面談した。
       Fは、調査担当職員に対し、平成26年2月以降、本件各土地の賃貸借契約の名義をFらの名義に変更しているとし、本件各駐車場の収入の権利者がFらであることは明らかであるから、その収入はFらに帰属する旨などを申述した。一方、請求人は、本件各契約書の作成経緯や不動産管理会社との管理契約に係る委任者名義の変更等の経緯に関する調査担当職員の質問に対し、「分からない」、「2、3日前のことも忘れている」旨の回答をするにとどまった。
    • (ホ) 平成27年12月1日
       税理士法人H(以下「本件税理士法人」という。)は、平成27年12月1日、原処分庁に対し、税務代理の依頼者を請求人、対象税目を所得税等、対象年分を平成24年分から平成26年分までとする税務代理権限証書を提出した。
    • (へ) 平成27年12月17日及び同月18日
       本件税理士法人の請求人の担当税理士であるJ税理士は、平成27年12月17日、B税務署に赴き、調査担当職員と面談した。その際、J税理士は、調査担当職員に対し、今回の件については、本件税理士法人において助言を行ったものである旨などを申述した。
       また、J税理士は、同月18日、調査担当職員に電話をかけ、請求人はFらとの間で本件各使用貸借契約を締結していること、また、賃貸借契約や不動産管理契約の名義、賃料の受取口座の名義もFらの名義であることから、本件各駐車場の収入の真実の権利者はFらであり、当該収入はFらに帰属する旨などを申述した。
  • ロ 本件税理士法人の請求人への関与状況
     本件税理士法人は相続専門の税理士法人であり、平成27年12月に請求人から税務代理を受託したが(上記イの(ホ))、それ以前の平成25年11月頃から請求人の相続対策についての助言や指導を行っていた。そして、本件各使用貸借契約、本件各贈与契約の締結をはじめとした本件各土地を巡る一連の取引ないし行為は、本件税理士法人が企図したものであり(上記イの(へ))、本件各契約書の書式も本件税理士法人が作成したものであった。

(3) 検討

  • イ はじめに
     本件においては、前記(1)に照らして、「収益の基因となる資産の真実の権利者が誰であるか」が問題となるところ、本件各土地は、いずれも請求人の所有に属するものである(上記1の(3)のイ)。これに対し、請求人は、請求人とFらとの間において本件各契約書が作成されたことにより、本件各駐車場の経営者としての地位ないしは本件各土地の賃貸人としての地位が請求人からFらにそれぞれ移転した旨主張し、原処分庁は、本件各契約書に係る契約にはその効力が認められない旨主張する。
     そこで、以下においては、本件各契約書に係る契約、すなわち本件各使用貸借契約及び本件各贈与契約が有効に成立したものか否かについて検討する。
  • ロ 本件各使用貸借契約及び本件各贈与契約の効力について
    • (イ) 本件各使用貸借契約及び本件各贈与契約については、本件各契約書が作成されているところ、その各請求人作成部分の署名・押印を請求人自身がしたことについては当事者間に争いがないことなどから、請求人がその意思に基づいて本件各契約書に署名・押印したものと認められる。
       ところで、文書に、作成者の意思に基づいてされた署名あるいは押印がある場合は、通常、その署名・押印をした者は、当該文書の内容を確認の上これに署名・押印することがほとんどであるから、当該文書の記載内容自体もその意思に基づくもの(真正に成立したもの)と推定される(民事訴訟法第228条《文書の成立》第4項参照)。そうすると、本件各契約書については、請求人の意思に基づく署名・押印がある以上、その内容自体についても請求人の意思に基づくものとの推定が働くこととなる。
    • (ロ) そこで検討するに、本件各契約書の記載によれば、Fらが、請求人から本件各土地の上に敷設されていた本件舗装等の贈与を受けて本件各駐車場に係る賃貸借契約を引き継ぎ、また、平成26年2月1日から平成36年1月31日までの10年間、請求人の承諾により、本件各土地の転貸又は賃借権譲渡をすることができるとされている(上記1の(3)のホ及びへ)。
       しかし、基礎事実及び認定事実によれば、請求人は平成26年2月1日当時○歳と高齢であったこと、本件各契約書の作成をはじめとした本件各土地を巡る一連の取引ないし行為については、Fが請求人の相続対策の相談をしていた本件税理士法人が企図したものであり、本件各契約書の書式も本件税理士法人が作成したものと認められること、また、平成26年2月1日の前後において、本件各土地の駐車場としての利用状況や不動産管理会社(E社又はD社)を介しての管理状況自体に特段の変化が認められないことからすると、本件各契約書の作成目的は、請求人の相続対策の一環として、その所有不動産から生ずる賃料収益の一部を親族間で分散することにより、総体としての租税負担を軽減させることにあったとみるのが相当である。そして、かかる目的の下、本件各土地の所有権を請求人に留保したまま、その使用収益権原のみを相応の対価を発生させることなく他に移転する方法として、Fらへの本件各土地の使用貸借及び駐車場設備(本件舗装等)の贈与という形式が採られたものと認められる。
    • (ハ) また、認定事実によれば、本件各契約書の作成当事者である請求人は、原処分調査の際、調査担当職員の質問に対し、本件各駐車場の収入を平成26年2月以降Fらが申告することとなった経緯等の詳しいことは分からない旨の回答をした上、本件各使用貸借契約書を知らない旨、また、契約書に印鑑を押印した記憶もない旨申述し(平成27年9月8日。上記(2)のイの(イ))、さらに、後日、調査担当職員が電話で請求人に本件各使用貸借契約書の提示を求めた際にも、契約書に印鑑を押印した記憶はなく手もとにもない旨の回答をしたほか(同月14日。上記(2)のイの(ロ))、Fの妻を介して本件各契約書の写しが調査担当職員に提出された後、F同席の下で行われた調査の際にもなお、本件各土地の賃料収益をFらが申告することとなった事情等の詳細は「分からない」などと回答するにとどまるなど(同年10月20日。上記(2)のイの(二))、本件各契約書については、一貫して知らない旨申述していたことが認められる。そして、原処分調査の際、請求人は、Fらがその居住用として利用している不動産については、固定資産税等を負担した上でFらに無償で貸している旨明確に回答していたところ(上記(2)のイの(イ))、本件各契約書の作成についてのみ、あえて虚偽の申述を行わなければならない動機が請求人にあったとも認められないことからすると、請求人は、原処分調査の時点において、実際にも、本件各駐車場の収入を平成26年2月以後Fらが申告することとなった具体的な事情やその原因とされる本件各契約書の作成事実を認識していなかったものと認めるのが相当である。
    • (二) そして、上記(ロ)及び(ハ)の事実に加え、本件各土地を巡る一連の取引ないし行為は、Fから相続対策の相談を受けていた本件税理士法人が企図したものであり、本件各契約書の書式も本件税理士法人が作成したものと認められること(上記(2)のロ)、請求人は原処分調査の際、税理士から助言を受けていたFから言われるままに申告を行った旨申述していたこと(上記(2)のイの(ロ))を併せ考慮すると、請求人は、その内容を知らされないまま、本件税理士法人が作成した本件各契約書への署名・押印をFから求められ、その記載内容を一切確認しないままこれに応じたことが強く推認されるというべきである。
    • (ホ) この点について、請求人は、原処分調査の際、調査担当職員に対し、本件各使用貸借契約書について知らないなどと申述した事実はない旨主張する。
       しかしながら、証拠上、原処分調査の状況(上記(2)のイ)を通じ、調査担当職員の質問やこれに対する請求人の回答に特段不自然な点は認められない。加えて、調査担当職員が電話で請求人に本件各使用貸借契約書の提示を求め、これに対し請求人が契約書に押印した記憶はなく手もとにもない旨の回答をした日の同日に、Fが、調査担当職員に電話をかけ、本件各駐車場の収入をFらが申告することとなった経緯等の説明をしていたこと(上記(2)のイの(ロ))、さらに、その後、本件各契約書の写しが、Fの妻を介して調査担当職員に提出されたこと(上記(2)のイの(ハ))からすると、請求人は、少なくとも原処分調査の際には、調査担当職員に対し、本件各使用貸借契約書の存在を知らない、契約書に印鑑を押印した記憶もない旨の申述等をしていたと認めるのが相当である。
    • (へ) 以上によれば、請求人は、本件各契約書について、その意思に基づいて署名・押印を行ったことが認められるものの、本件各契約書の内容を確認することがなかったため、その内容を全く認識していなかった可能性が高い。そうすると、上記(イ)の推定の基礎を欠いていて推定は働かないから、本件各契約書によっては、請求人がその内容に沿った意思を有していたとは認められないというべきである。
       したがって、本件各契約書に基づいて、本件各使用貸借契約及び本件各贈与契約が請求人の意思に基づいて成立したものとは認められないし、他に本件各使用貸借契約及び本件各贈与契約が有効に成立したと認めるに足りる的確な証拠もないから、当該各契約が有効に成立したと認めることはできない。
  • ハ 本件各駐車場の収入の帰属について
     上記ロの(へ)のとおりであるから、本件各駐車場に係る平成26年2月ないし12月の所得、具体的には、本件各土地について、平成26年2月1日以後の期間を対象として新たに締結され又は変更された賃貸借契約(自動車保管場所使用契約)により生じた賃料(使用料)収益は、その貸主名義にかかわらず、いずれも本件各土地の所有者である請求人に帰属するというべきである。他方、Fらは、事実上、本件各土地の賃貸借契約(自動車保管場所使用契約)を自己の名で締結し、その賃料(使用料)を管理し、費消していたにすぎない。

(4) 原処分の適法性について

  • イ 本件通知処分及び本件更正処分の適法性について
     上記(3)のハのとおり、本件各駐車場に係る平成26年2月ないし12月の所得はいずれも請求人に帰属すると認められる。そして、当審判所において請求人の平成26年分の所得税等の総所得金額及び納付すべき税額を計算すると、いずれも本件更正処分の額と同額となるところ、本件通知処分及び本件更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。
     したがって、本件更正の請求に対して更正をすべき理由がないとした本件通知処分及び本件更正処分はいずれも適法である。
  • ロ 本件賦課決定処分の適法性について
     上記イのとおり、本件更正処分は適法であるところ、本件において、国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。そして、当審判所においても、請求人の過少申告加算税の額は、本件賦課決定処分における金額と同額であると認められる。
     したがって、本件賦課決定処分は適法である。

(5) 結論

よって、審査請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとする。

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