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(平4.2.24、裁決事例集No.43 1頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 原処分庁(P税務署長から昭和63年4月25日付で国税通則法(以下「通則法」という。)第43条《国税の徴収の所轄庁》第3項の規定により徴収の引継ぎを受けた○○国税局長)は、審査請求人(以下「請求人」という。)がP税務署長に平成2年分の所得税の確定申告書を提出したことにより発生した43,300円の還付金(以下「本件還付金」という。)につき、通則法第56条《還付》第2項の規定により同署長より還付の引継ぎを受け、平成3年5月15日で本件還付金を、請求人の昭和61年6月11日相続開始に係る相続税の申告分の滞納税額(以下「本件滞納国税」という。)に充当(以下「本件充当」という。)をした。
 請求人は、本件充当を不服として平成3年6月27日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 本件充当は、次の理由により違法であるから、その全部を取り消すべきである。
 原処分庁は、本件滞納国税につき滞納処分として既に平成元年10月12日付で不動産の差押え(以下「本件差押え」という。)をなして国税債権を確保しており、更に本件充当をすることは重複処分となるから違法である。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 請求人は、平成3年5月15日現在、本件滞納国税3,453,700円を滞納していた。
 一方、請求人が平成3年2月16日にP税務署長に対して平成2年分の所得税の確定申告書を提出したことにより、本件還付金が発生した。
ロ このため、原処分庁は、平成3年4月19日にP税務署長より本件還付金について還付の引継ぎを受け、通則法第57条《充当》の規定に基づいて、平成3年5月15日に本件滞納国税に充当したものであり、本件充当は何ら違法ではない。

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3 判断

 請求人は、本件滞納国税につき原処分庁は既に本件差押えをなして国税債権を確保しており、更に本件充当をすることは重複処分となるから違法である旨主張するので審理したところ、次のとおりである。
(1) 通則法第40条《滞納処分》の規定によると、一定の期日までに国税が完納されない場合は滞納処分を行うと定めており、また、国税徴収法第47条《差押の要件》の規定によると、一定の期日までに国税が完納されない場合は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならないと定めている。
(2) そして、通則法第57条の規定によると、還付金等がある場合において、その還付を受けるべき者につき納付すべきこととなっている国税があるときは、通則法第56条第1項の規定による還付に代えて、還付金等をその国税に充当しなければならないと定めている。
(3) ところで、通則法第57条第1項による還付金等の充当は、上記(2)のとおり、同一の納税者に還付金等と納付すべきこととなっている国税とが併存していることを要件とするものであるところ、当審判所が調査したところによれば、請求人には平成3年5月15日現在原処分庁を国税の徴収の所轄庁として納付すべきこととなっている本件滞納国税が存在しており、たとえ本件差押えによって、原処分庁が既に本件滞納国税に係る国税債権の確保を図っていたものであるとしても、それにより請求人の本件滞納国税が完納されたというわけではない。
 また、本件充当は、本件滞納国税につき差押えがなされているかどうかにはかかわりなく行われるものであり、かつ、本件差押えとは別個の規定に基づく内容を異にしたものであるから、これを重複処分で違法であるということはできない。
 したがって、原処分庁が本件還付金を本件滞納国税に充当した本件充当は適法であり、請求人の主張には理由がない。
(4) 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所の調査によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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