ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.43 >> (平4.2.26、裁決事例集No.43 301頁)

(平4.2.26、裁決事例集No.43 301頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、昭和62年2月9日に死亡した○○(以下「被相続人」という。)の相続人であるが、この相続開始に係る相続税の申告書に課税価格を311,266,000円及び納付すべき税額を65,441,300円と記載して法定申告期限までに申告した。
 原処分庁は、これに対し平成元年6月30日付で課税価格を1,119,618,000円及び納付すべき税額を449,980,600円とする更正(以下「本件更正」という。)及び過少申告加算税の額を35,181,000円とする賦課決定をした。
 請求人はこれらの処分を不服として、平成元年8月29日に異議申立てをしたところ、異議審理庁はこれに対し、同年11月28日付で棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分になお不服があるとして、平成元年12月27日に審査請求をした。

トップに戻る

2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正について
 原処分庁は、別表の有価証券(以下別表に記載した貸付信託及び割引債をそれぞれ「本件貸付信託」、「本件割引債」といい、これらを併せて「本件有価証券」という。)を被相続人の財産と認定して本件更正を行ったが、本件有価証券は次のとおり請求人の固有の財産である。
(イ) 原処分庁は、本件有価証券の管理運用はすべて被相続人が行っていたとしているが、請求人は会社員であることから昼間は家を留守にすること、また、被相続人が以前建設業に携わっていた時の知名度や対外的な体面、更に、被相続人が死亡するまで同人と同居していたA女(以下「A女」という。)との関係等を考慮して、被相続人に銀行等金融機関との折衝の窓口になってもらっていたにすぎず、請求人は、被相続人と財産の運用に関する相談を行っていたし、本件貸付信託の証書を請求人の自宅に保管していたこともあって、本件有価証券の管理運用を被相続人がすべて行っていたものではない。
(ロ) 本件貸付信託の収益金等は、そのほとんどがB銀行P支店及びP銀行R支店の被相続人名義の普通預金に入金されているが、これは、被相続人が本件貸付信託を同人の財産であるがごとく振る舞っていたので、その心情を思い請求人名義の預金に入れることはしなかったもので、そのため、万一の場合を想定して、本件貸付信託が真の所有者である請求人以外の者に渡らないよう、B銀行P支店と昭和50年12月11日付の念書(以下「本件念書」という。)を取り交わし、更に、被相続人から昭和54年12月9日付の本件貸付信託受益証券の預り書の交付を受けていた。
 また、本件念書の作成人を請求人としていないが、これは、前記(イ)のとおり被相続人に金融機関との折衝の窓口になってもらっていたため、作成人を請求人とせず、請求人の妻D女(以下「D女」という。)を代理人として作成したものである。仮に、本件貸付信託の所有者が被相続人であったとすれば、本件念書作成の必要はなく、D女を代理人にする必要もない。更に、本件念書において請求人は予備受益者となっているが、これは、権利を予備的に有するというものではなく、本件貸付信託が請求人以外の者に渡ることのないようにするためのもので、請求人に万一のことがあった場合のことを考慮して、請求人の長男E男(以下「E男」という。)をも予備受益者としたものである。
(ハ) 本件貸付信託は、いずれも次表の請求人の土地譲渡代金、請求人の母F女(以下「F女」という。)が昭和43年から所有していた土地譲渡代金及び被相続人から贈与された資金50,000,000円並びに昭和45年にD女が相続により取得した資金12,000,000円をそれぞれ運用して、昭和47年4月に50,000,000円、昭和49年3月に50,000,000円、同年5月に50,000,000円、同年8月に50,000,000円、同年9月に30,000,000円、昭和50年3月に20,000,000円及び昭和53年6月に50,000,000円とそれぞれ設定し、その後5年ごとに書き換えてきたもので、原処分庁が本件貸付信託はいずれも昭和46年以前に設定されたと認定したのは誤りである。

 

P市S町4丁目426番30 地目 面積 105平方メートル
譲渡年 昭和31年 譲渡先 G社 価額
P市S町4丁目426番3 地目 面積 138平方メートル
譲渡年 昭和31年 譲渡先 G社 価額
P市S町4丁目426番26 地目 面積 23平方メートル
譲渡年 昭和31年 譲渡先 G社 価額
P市S町4丁目426番25 地目 宅地 面積 101.38平方メートル
譲渡年 昭和33年 譲渡先 ××省 価額
P市T町136番4 地目 宅地 面積 471.17平方メートル
譲渡年 昭和40年 譲渡先 ○○ 価額 14,000,000円
P市T町136 地目 宅地 面積 33平方メートル
譲渡年 昭和40年 譲渡先 △△ 価額 700,000円
P市S町1丁目273番1 地目 宅地 面積 1,441,24平方メートル
譲渡年 昭和47年 譲渡先 H社 価額 87,000,000円
P市S町1丁目273番4 地目 宅地 面積 216平方メートル
譲渡年 昭和48年 譲渡先 H社 価額 13,500,000円
P市S町3丁目85番30 地目 面積 639平方メートル
譲渡年 昭和52年 譲渡先 P県 価額 34,000,000円
P市S町3丁目83番2 地目 面積 23.55平方メートル
譲渡年 昭和52年 譲渡先 P県 価額 1,250,000円
P市S町3丁目85番31 地目 面積 2.88平方メートル
譲渡年 昭和52年 譲渡先 P県 価額 150,000円
P市○○町5丁目20番1 地目 面積
譲渡年 昭和54年 譲渡先 価額 2,500,000円

 

(ニ)原処分庁は、本件割引債は本件貸付信託の収益及び被相続人の不動産賃貸収入等から取得されたとしているが、本件貸付信託の所有者は請求人であるからその収益も当然請求人に帰属するものであり、また、被相続人名義の預金には前記(イ)のとおり被相続人に金融機関との折衝の窓口になってもらっていたことから、請求人の不動産賃貸収入も入金されており、更に、被相続人は、同人の不動産賃貸収入で被相続人及びA女の生活費並びにA女に対する給与の支払等を賄い、その残額は本件割引債の取得資金には至らず、相続開始時におけるB銀行P支店の被相続人名義の普通預金残高の一部を形成しているにすぎないから、本件割引債は請求人の財産である本件貸付信託の収益と請求人の不動産賃貸収入等から取得されたものであり、請求人の財産である。
(ホ) なお、本件有価証券について、これを請求人の名義とせず無記名としたのは被相続人の気持ちを思ったからであり、また、D女の財産の運用は請求人に任されていたため、あえてD女名義にせず他のものと一緒に無記名とした。
ロ 過少申告加算税の賦課決定について
 以上のとおり、本件更正は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い過少申告加算税の賦課決定もその全部を取り消すべきである。

トップに戻る

(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 本件更正について
(イ) 本件有価証券については、次の事実が認められる。
A 本件有価証券はいずれも無記名であること。
B 本件有価証券はいずれも被相続人が管理運用していたこと。
C 本件有価証券の収益金等は、そのほとんどを被相続人が受け取り同人名義の預金に入金しており、請求人が受け取った事実がないこと。
(ロ) 本件貸付信託設定の資金については、次のとおりである。
A 本件貸付信託が設定された時期は、いずれも昭和46年以前であり、それ以前の年において請求人に土地の譲渡の事実が認められるのは昭和40年のみであり、その譲渡代金は14,000,000円にすぎないことから、本件貸付信託が請求人の土地譲渡代金から設定されたとする主張は不合理である。
B また、F女に土地の譲渡の事実が認められるのは昭和40年のみであり、その譲渡代金は2,180,000円にすぎず、その後、昭和46年11月にF女が死亡するまでの間、同人が土地を譲渡した事実は認められない。
 したがって、請求人がF女の土地譲渡代金を運用して本件貸付信託の一部を設定したとは認められない。
C 更に、昭和40年から相続開始の日までの間において、請求人がD女の資金を運用した事実は認められない。
 したがって、請求人がD女の資金を運用して本件貸付信託の一部を設定したとは認められない。
 なお、請求人の不動産所得に係る申告が認められるのは昭和47年以後であり、本件貸付信託の設定はそれ以前である。
(ハ) 本件割引債の取得資金について、昭和56年以前に取得したものは本件貸付信託の収益及び被相続人の不動産賃貸収入から取得されたと認められ、それ以降に取得したものは被相続人の普通預金から取得されているから、本件割引債が請求人の資金から取得されたとは認められない。
(ニ) 以上のとおり、本件有価証券の管理運用は被相続人が行っていたと認められ、その設定又は取得の状況等から総合して判断すれば、本件有価証券は請求人の財産ではなく被相続人の財産と認められる。
 なお、本件念書は、死亡等により被相続人が本件貸付信託の証書を受け取ることができなくなった場合には当該証書を請求人及びE男に交付する旨の内容で、このことからみても、本件貸付信託の所有者が被相続人であることは明らかである。
(ホ) したがって、本件有価証券はいずれも被相続人の財産と認められ、この評価額を加算すると、請求人の相続税の課税価格は1,119,618,000円及び納付すべき税額は449,980,600円となるので、これらと同額でなした本件更正は適法である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定について
 以上のとおり、本件更正は適法であり、かつ、請求人には、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて過少申告加算税を賦課決定したものである。

トップに戻る

3 判断

  本件審査請求の争点は、本件有価証券が相続財産であるか、あるいは請求人の固有の財産であるかにあるので、以下審理する。

(1) 本件更正について

 請求人は、本件有価証券は請求人の資金で取得したものであるから、請求人の固有の財産となる旨主張するので審理したところ、次のとおりである。
イ 当審判所が原処分関係資料を調査したところ、次の事実が認められる。
(イ) 本件有価証券は、いずれも無記名の貸付信託及び割引債であること。
(ロ) 本件有価証券の収益金等は、被相続人が現金により受領した上で、そのほとんどをB銀行P支店同人名義普通預金及びP銀行R支店同人名義普通預金に入金していること。
(ハ) 本件割引債は昭和53年以降順次購入し、その償還期に伴う買換え等を繰り返し行い相続開始日に至っていること。
(ニ) 昭和56年以降に購入した本件割引債の資金は、いずれも被相続人名義の預金から支出されていること。また、当該預金口座には本件有価証券の収益金等が入金されていたこと。
(ホ) 昭和47年3月から昭和50年9月当時のB銀行P支店の貸付担当副長は、原処分庁の調査担当職員に、「私が転勤のためP支店から出る時には200,000,000円くらいの被相続人の無記名貸付信託が設定されていたと記憶しており、また、昭和49年中には180,000,000円の無記名貸付信託を新規に設定した事実はない。」旨申述していること。
(ヘ) 昭和49年8月から昭和52年7月当時のB銀行P支店の預金信託課長は、原処分庁の調査担当職員に、「被相続人はB銀行P支店開店時に300,000,000円くらいの無記名貸付信託を設定し、同行との取引を開始したことを聞いており、また、私の在勤中に被相続人が数千万円単位の無記名貸付信託を新規に設定した事実はない。」旨申述していること。
(ト) B銀行P支店は、昭和40年11月18日に営業を開始したこと。
(チ) A女は、原処分庁の調査担当職員に次のように申述したこと。
A 昭和37年6月から被相続人が死亡するまで同人と同居していたこと。
B B銀行P支店とは、同支店が開店して間もないころから取引を始め、昭和47年当時には200,000,000円以上の無記名貸付信託があったこと、また、昭和49年中には貸付信託を新規に設定したことはないこと。
C 本件有価証券の管理運用に関しては、被相続人がすべて行っており、これら有価証券を同人が借りたB銀行P支店の3つの貸金庫に保管していたこと。
D 本件割引債は、昭和62年1月27日あるいは28日に貸金庫から持ち出し、1月分の書換えをした後は被相続人の指示により手元に置き、同年2月分及び3月分の書換えを済ませ、同年4月15日にJ銀行U支店に持参し、株式会社○○社長を通じて請求人に渡したこと。
E 昭和62年1月31日に1被相続人及び請求人の実印と印鑑証明書、2普通預金通帳2通(B銀行P支店、P銀行R支店)及び3財布を、同年2月3日に貸金庫の鍵3本を、それぞれ請求人に渡したこと。
(リ) 請求人がA女あてに作成した昭和62年2月3日付の引継証明書(以下「本件引継証明書」という。)によれば、請求人は、同月同日A女から、1被相続人の実印及び印鑑登録証、2請求人の実印及び印鑑登録証、3B銀行金庫錠3本、4B銀行普通預金通帳2通及び5P銀行普通預金通帳1通をそれぞれ受け取っていること。
(ヌ) J銀行U支店債券預金班の担当者は、原処分庁の調査担当職員に対し、次のように申述していること。
A 昭和61年4月から昭和62年2月まで被相続人との取引担当者であったこと。
B 取引はすべて被相続人の指示により行い、債券の受渡しは、同人の自宅で同人及びA女立会いのもとに行ったこと。
C 被相続人は、債券をB銀行P支店の貸金庫に保管していたこと。
(ル) 本件念書は、昭和50年12月11日付でB銀行P支店あてに作成されており、これには総額250,000,000円の無記名貸付信託に関し、「貸付信託及び金銭信託の証書をB銀行P支店が預かること、「私」が死亡その他の理由によりその証書の受取りが不可能の場合には請求人及びE男を予備受益者として当該予備受益者に交付すること」等記載されていること。
 なお、本件念書には、「上記代理人D女」と記載され、D女の姓の押印があるが、代理される「本人」の記載がないこと。
(ヲ) 昭和48年7月から昭和51年6月当時のB銀行P支店の支店長は、原処分庁の調査担当職員に、「本件貸付信託は被相続人のものと認識していた。本件念書は被相続人が作成し同人が持参したものであり、その文中の「私」は被相続人以外には考えられず、D女は被相続人の代理人と理解していた。なお、B銀行P支店が本件念書に記載されている貸付信託の証書を預かった事実はなく、その証書は被相続人が借りていた同支店の貸金庫に保管されていた。」旨申述していること。
ロ また、無記名の有価証券の所有者がだれであるかについては、当該有価証券が無記名であることから、特段の事情がない限り、その証書等を現実に支配管理している者がその有価証券の所有者との一応の推定が生じるものと解すべきであるところ、その証書を現実に支配管理している者以外の者が当該有価証券の取得資金を支出したことが明らかでなく、また、当該有価証券の証書等を他に贈与したことの事実も認められない場合には、その証書等を現実に支配管理している者が当該有価証券の所有者とみるのが相当である。
ハ ところで、請求人は、本件有価証券が請求人の固有の財産である理由を挙げているので、以下判断する。
(イ) 請求人は、本件有価証券の管理運用等に関し、被相続人が本件有価証券の設定等の窓口となっていたにすぎず、本件有価証券の管理運用をすべて被相続人が行っていたものではない旨主張する。
 しかしながら、前記イの(チ)、(ヌ)及び(ヲ)の各関係人の原処分庁に対する各申述からすれば、請求人が本件有価証券の管理運用に関わっていた事実を認めるに足る証拠はなく、本件有価証券の証書はB銀行P支店の被相続人の貸金庫あるいは被相続人の自宅に保管されていたことが認められる。
 したがって、本件有価証券の管理運用は被相続人が行っていたものと認めるのが相当であるから、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
(ロ) 本件貸付信託設定の時期及びその額に関し、請求人は、昭和47年に50,000,000円、昭和49年に180,000,000円、昭和50年に20,000,000円及び昭和53年に50,000,000円をそれぞれ新規に設定した旨主張する。
 しかしながら、前記イの(ホ)、(ヘ)及び(チ)の各関係人の原処分庁に対する申述からすれば、請求人の主張するような事実は認められず、また、請求人は、昭和47年、昭和49年、昭和50年及び昭和53年にそれぞれ新規に貸付信託を設定したという具体的な証拠を何ら提出しない。
 そうすると、貸付信託の更新が5年ごとに行われること、上記関係人の、1昭和49年中に180,000,000円の貸付信託を新規に設定した事実がないこと、2昭和49年以降昭和52年7月まで数千万円単位の無記名貸付信託を設定した事実がないこと及び3昭和47年当時200,000,000円以上の無記名貸付信託が設定されていたこと等の申述を考え併せれば、当該貸付信託の設定は昭和49年以前5年以上前になされたものと認めるのが相当である。
 したがって、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
(ハ) 本件貸付信託の取得資金について、請求人は、本件貸付信託は請求人の土地譲渡代金並びにF女及びD女の資金を運用してそれぞれ設定した旨主張する。
 しかしながら、請求人が当該土地の譲渡代金並びにF女及びD女の資金をそれぞれ運用して本件貸付信託を設定した事実を認めるに足る証拠はいずれもない。
 また、前記(ロ)のとおり、請求人が昭和49年中に新規に設定したと主張する総額180,000,000円の貸付信託は、いずれも昭和49年から5年以上前に設定されたと認められるから、仮に、請求人の主張するように請求人がF女の資金を運用していたとしても、これに昭和44年までの請求人の土地譲渡代金を含めただけでは180,000,000円にはるかに及ばないと認められるので、請求人の主張には信ぴょう性がないものである。
 したがって、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
(ニ) 本件割引債について、請求人は、本件割引債が請求人の財産である本件貸付信託の収益及び不動産賃貸収入等から取得されたものである旨主張する。
 しかしながら、本件貸付信託が請求人所有のものと認められないことは前記(イ)ないし(ハ)で述べたとおりであり、また、請求人の不動産収入により本件割引債を取得したとする点については、請求人は、当該不動産収入からこれを購入したことについて具体的な証拠を提出しないところ、前記イの(チ)及び(ヌ)の各関係人の原処分庁に対する申述によれば、本件割引債を支配管理していたのは被相続人であることは明らかであるから、本件割引債は被相続人所有のものと認定するのが相当である。
 なお、本件割引債取得の基となった預金について、これに請求人の不動産収入が入金されている旨主張するが、当該預金は被相続人の名義であり、他に合理的な反証のない限り、その名義人の所有とみるのが相当であるところ、本件引継書によれば、当該預金に係る通帳は昭和62年2月3日に当時被相続人と同居していたA女から請求人が引き継いだこと、また、A女も前記イの(チ)のとおりこれにそう申述をしていることからすれば、被相続人が亡くなる直前まで当該預金を同人自身が管理運用していたものと認めるのが相当である。
 したがって、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
ニ 以上の結果、本件有価証券の証書の支配管理の状況並びに本件有価証券の運用の状況及び設定又は取得資金の状況等、いずれの点からみても本件有価証券は被相続人の財産と認められ、本件有価証券の価額は、別表のとおり808,351,960円となるところ、請求人の相続税の課税価格は1,119,618,000円及び納税すべき税額は449,980,600円となり、これらの金額はいずれも更正に係る課税価格及び納付すべき税額と同額であるから、本件更正は適法である。

(2) 過少申告加算税の賦課決定について

 以上のとおり本件更正は適法であり、また、請求人には、納付すべき税額を計算するに当たり、原処分庁が過少申告加算税の基礎とした税額に係る事実をその計算の基礎としなかったことについて国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてした過少申告加算税の賦課決定は適法である。

(3)その他

 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る