ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.43 >> (平4.3.25、裁決事例集No.43 424頁)

(平4.3.25、裁決事例集No.43 424頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 原処分庁は、審査請求人(以下「請求人」という。)の次表記載の滞納国税(以下「本件滞納国税」という。)を徴収するため、平成2年8月27日に、請求人所有の〇〇市△△町86番32宅地535.20平方メートルについて参加差押え(以下「本件参加差押え」という。)をした。

年度 税目 納期限 本税 加算税 延滞税
平成元年度 申告所得税(昭和61年分) 平成2年4月2日
5,123,000

487,000
法律による金額
平成元年度 申告所得税(昭和62年分) 平成2年4月2日 6,888,000 1,007,000 法律による金額
平成元年度 申告所得税(昭和63年分) 平成2年4月2日 6,242,000 911,000 法律による金額

 

 請求人は、本件参加差押えを不服として、平成2年10月25日に国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項の規定により、異議申立てを経ないで直接審査請求をした。

トップに戻る

2 主張

(1) 請求人の主張

 本件滞納国税は、いずれも、平成2年2月28日付でされた昭和61年分、昭和62年分及び昭和63年分の所得税の各更正並びに過少申告加算税の各賦課決定(以下「本件更正等」という。)に係るものであるが、本件更正等には、請求人に不動産所得があるとされている相続財産の持分割合等及び受贈財産の貸借関係について訴訟中であり、収入すべき金額が未確定であるのに、原処分庁が一方当事者の申立てだけを採用してこれを確定したものとしている違法がある。したがって、このような違法な課税処分に基づく本件参加差押えは違法である。

トップに戻る

(2) 原処分庁の主張

 課税処分と滞納処分とは、それぞれその目的及び効果を異にする別個の独立した行政処分であるから、課税処分(本件更正等)に存する違法を理由として滞納処分(本件参加差押え)の取消しを求めることはできない。
 ところで、原処分庁は、本件滞納国税について平成2年5月28日に督促状を発し、その日から起算して10日を経過した日までに請求人が本件滞納国税を完納しなかったので、国税徴収法第86条《参加差押の手続》第1項の規定に基づき本件参加差押えを行ったものであり、他に何らの違法も存しない。

トップに戻る

3 判断

(1) 請求人は、本件更正等の違法を理由に原処分は取り消されるべきである旨主張するので、以下検討する。

 課税処分と滞納処分とは、それぞれその目的及び効果を異にする別個の独立した行政処分であるから、これらが先行処分と後行処分の関係にある場合においても、課税処分にこれを無効といい得るかしが存する場合か、又はそれが権限ある機関によって取り消された場合でない限り、課税処分のかしは滞納処分の効力には影響を及ぼさないというべきである。
 ところで、課税処分が無効となるのは、その処分に重大かつ明白なかしが存する場合に限られるが、当審判所の調査の結果その他全資料によっても、本件更正等に重大かつ明白なかしがあるとは認められず、また、本件更正等が取り消された事実も認められない。
 したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(2) 原処分のその余の部分については、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 そうすると、本件審査請求は、理由がないものとして棄却すべきである。

トップに戻る