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(平5.6.25、裁決事例集No.45 323頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は会社役員であるが、平成2年分の所得税の確定申告書の特例条文欄に「措法35条」と記入の上、次表の「申告額」欄の1ないし5のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
 原処分庁は、これに対し平成3年10月29日付で、次表の「更正額」欄の1ないし5のとおり更正(以下「本件更正」という。)及び6のとおり過少申告加算税の賦課決定をした。

(単位:円)
年分
項目
申告額 更正額
総所得金額 1 6,196,400 6,196,400
内訳 給与所得の金額 2 4,931,400 4,931,400
譲渡所得(長期)の金額 3 1,265,000 1,265,000
課税分離長期譲渡所得の金額 4 0 13,882,000
納付すべき税額 5 210,700 2,987,100
過少申告加算税の額 6 390,500

 請求人は、これらの処分を不服として平成3年12月12日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、これに対し平成4年3月12日付でいずれも棄却の異議決定(以下「本件異議決定」という。)をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分になお不服があるとして、平成4年4月7日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 異議審理手続について
(イ) 本件異議決定は、事実確認の調査を行わず事実をねつぞうし、そのねつぞうした虚偽の資料に基づき誤った判断をしている。
(ロ) 誤った判断をしている箇所は、異議決定書の異議決定理由の次の部分である。
A 異議審理庁の担当職員(以下「異議審理担当職員」という。)がP市R町1丁目30番地18所在のマンション「○○」111号(以下「本件マンション」という。)の管理人に会って調査したと記載されているが、そのような事実はない。
B 平成元年12月から平成2年2月までの電気の使用量は零であるとあるが、それ以外の期間の使用量が明らかにされていない。
C 請求人がA株式会社××支店(以下「A社」という。)との間で平成2年1月13日に締結した本件マンションに係る専任媒介契約(以下「本件専任媒介契約」という。)には、本件マンションの売却に関する記載はあるが、本件更正とは無関係である。
D 請求人は異議審理担当職員に対し、次のとおり申述したとあるが、そのような申述は行っていない。
(A) 異議決定書の異議決定理由2の(2)のトの(ホ)において、「同年末から平成元年1、2月ころまでに賃借人に立ち退いてもらった。」と申述している。
(B) 異議決定書の異議決定理由2の(2)のトの(ヘ)において、「申立人が本件資産の使用を開始したのは平成元年3月か4月ころである。」と申述している。
(ハ) 本件異議決定は、国税通則法第84条《決定の手続等》第5項に規定する正当とする理由を明らかにしないばかりか、事実をねつぞうしてなされたもので無効であり、このことは原処分の取消事由に当たる。
ロ 本件更正について
(イ) 請求人は、自己が経営する会社への通勤を確保するために購入し、居住していた本件マンション(敷地権を含む。)を平成2年8月31日に譲渡(以下「本件譲渡」という。)したので、本件譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項(以下「本件特例」という。)の規定を適用の上、譲渡所得の金額から特別控除額(以下「本件特別控除額」という。)を控除して分離長期譲渡所得の金額を計算し、平成2年分の所得税の確定申告書を提出したところ、原処分庁は、本件譲渡については、本件特例の規定の適用は認められないとして、平成3年10月29日付で本件更正をした。
(ロ) しかしながら、本件マンションは、平成元年4月29日に賃借人のB女(以下「B女」という。)の立ち退いた後、請求人が間もなく使用を開始し、ほぼ毎週月曜日から金曜日まで寝泊まりしていたのである。
 したがって、本件マンションは、本件特例に規定する居住用財産に該当するから、本件譲渡に係る譲渡所得の計算上、本件特別控除額を控除されるべきである。
ハ 過少申告加算税の賦課決定について
 以上のとおり、本件更正は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い過少申告加算税の賦課決定もその全部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 異議審理手続について
 請求人は、異議審理庁が本件異議決定において、事実確認の調査を行わず事実をねつぞうし、そのねつぞうした虚偽の資料に基づき誤った判断をしており、事実をねつぞうしてなされた異議決定自体は無効なものであり、このことは原処分の取消事由に当たる旨主張するが、次のとおり、事実をねつぞうした事実はない。
 なお、異議審理手続の違法を理由として原処分の取消しを求めることはできない。
(イ) 異議決定書の異議決定理由2の(2)において「ところで、異議審理担当職員が調査、審理したところ、次の事実が認められます。」と記載しているが、ここにいう「調査、審理」とは、外部調査は勿論のこと、署内簿書の検討、収集資料の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈等、課税庁が課税標準又は税額等を認定するに至るまでの考え方、判断をも含む極めて包括的な概念を意味するものである。
 したがって、異議決定書の異議決定理由2の(2)のハにおいて異議審理担当職員が本件マンションの管理人に会って調査確認をしたということを主張しているのではない。
 本件マンションの管理人に会った者は、原処分庁の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)であり、異議審理担当職員は、調査担当職員の調査内容を検討した結果、同人が本件マンションの管理人から聴取した事項を事実として認定したものである。
(ロ) 異議決定書の異議決定理由2の(2)のトの(ホ)及び(ヘ)の記載内容は、請求人及び同人の代理人であるC税理士が平成4年2月13日に異議審理庁に来庁した際、請求人が異議審理担当職員に申述したものであり、事実をねつぞうしたものではない。
ロ 本件更正について
(イ) 本件特例の規定は、個人が、その居住の用に供している家屋若しくは当該家屋とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利を譲渡した場合には、当該譲渡所得金額の計算上、一定額の特別控除を認めるものであり、この場合の「居住の用に供している家屋」とは、居住用財産を譲渡した者が譲渡の時に生活の拠点として利用していた家屋をいうものと解され、これに該当するか否かは、その者及び配偶者等(社会通念に照らしその者と同居することが通常と認められる配偶者その他の者をいう。)の日常生活の状況、家族の構成若しくは生計の状況、その家屋への入居目的その他の事情を総合勘案して判定するものとされ、本件特例の規定の適用を受けるために居住した場合や、一時的な利用を目的として居住する場合には、これに当たらないと解されている。
(ロ) 原処分庁の調査によれば、次の事実が認められる。
A 請求人の戸籍の附票によると、同人の住所は、昭和45年4月28日から平成元年11月1日まではS市T町1566番地の317(以下「S市住居」という。)に、平成元年11月2日から平成2年3月3日までは本件マンションに、平成2年3月4日以降は再びS市住居にあり、請求人の家族の住所は、昭和45年4月28日以降現在まで継続してS市住居にあること。
B 本件マンションの登記簿謄本によると、請求人は、昭和59年9月25日の売買を原因として同年10月31日に本件マンションの所有権を取得していること。
C 本件マンションの管理人は、本件マンションには、昭和59年11月から平成元年6月初旬まで請求人以外の者が居住していた旨申述していること。
D 請求人は、平成元年11月18日から平成2年7月31日までの間、本件マンションに係るガス供給契約をD瓦斯株式会社と締結していたが、同期間におけるガスの使用量は零であること。
E 請求人は、平成元年11月2日から平成2年7月30日までの間、E電力株式会社から電気の供給を受けていたが、平成元年11月の使用量は4キロワットであり、同年12月から平成2年2月までの3か月の使用量は零であること。
F 請求人は、A社に本件マンションの売却を依頼し、同社との間で本件専任媒介契約を締結していること。
G 請求人は、異議審理担当職員に対し次のとおり申述していること。
(A) S市住居には、昭和45年4月に移転した。
(B) 請求人は、昭和47年10月U市W町2ー7ー15F株式会社(以下「F社」という。)を設立した。
(C) F社には、S市住居からマイカー通勤をしていたが、会社の近くに借りていた駐車場の明渡請求があり、マイカー通勤が困難になったこと、また、残業や接待が多いことから市内に住居があれば便利だと考え、昭和59年9月に本件マンションを購入した。
(D) しかし、本件マンション購入後、借りていた駐車場の明渡請求が中断されたため、本件マンションを貸し付けることとした。
(E) 昭和59年11月12日に本件マンションの借主が見つかり貸し付けたが、昭和63年暮れに駐車場の明渡問題が再燃したため、同年末から平成元年1、2月ころまでに賃借人に立ち退いてもらった。
(F) 請求人が本件マンションの使用を開始したのは、平成元年3月か4月ころである。
(G) 電気、ガス及び水道等の供給契約をいつしたかは覚えていない。
(H) 本件マンションには、毎週土曜日、日曜日を除く5日間寝泊まりするだけで、置かれていた物は寝具のみであったこと。また、食事は外食であり、風呂は近くの銭湯を利用していた。
(ハ) 以上の事実を総合すると、次のとおりである。
A 本件特例の規定は、前記(イ)のとおり、譲渡者が生活の拠点として利用していた家屋を譲渡した場合に適用されるべきものであるところ、次のとおり本件マンションは、請求人が生活の拠点として利用していた家屋とは認められないから、本件譲渡に係る譲渡所得金額の計算上、本件特例の規定を適用することは認められない。
(A) 請求人は、昭和63年末から平成元年1、2月ころまでに本件マンションの賃借人に立ち退いてもらい、請求人自身が、平成元年3月か4月ころから本件マンションの使用を開始した旨主張するが、前記(ロ)のA、C、D及びEの事実に照らすと、請求人の主張は信用し難いこと。
 仮に、請求人が本件マンションを使用していたとしても、前記(ロ)のA、C、D及びEの事実を総合勘案すると、その使用開始時期は平成元年11月ころであると推察されること。
(B) また、前記(ロ)のD、E及びFの事実からすると、平成元年12月から平成2年2月までの3か月間、本件マンションは全く使用されていなかったものと認められるところ、本件マンションは、平成2年1月13日に売却依頼がなされており、少なくとも、同日以降、請求人は本件マンションを使用していなかったものと認められること。
(C) 上記(A)及び(B)の事情及び前記(ロ)のAの事実を総合勘案すると、仮に、請求人が本件マンションを使用していたとしても、それは一時的な使用であって、請求人自身の生活の拠点としていたものとは到底考えられない。
 したがって、請求人の家族が昭和45年4月以降引き続きS市住居で生活していたことを考え併せれば、請求人の生活拠点もS市住居にあったとみるのが社会通念に合致すること。
B 以上の結果、請求人の分離長期譲渡所得の金額は、次表のとおりとなり、本件更正はこれらの金額と同額でなされているから適法である。

(単位:円)
項目 金額
譲渡所得の金額の計算 譲渡収入金額 1 26,000,000
取得費 2 10,252,226
譲渡費用 3 865,200
特別控除額 4 1,000,000
課税分離長期譲渡所得の金額
1234
5 13,882,000
納付すべき税額の計算 総所得金額 6,196,400
内訳 給与所得の金額 4,931,400
譲渡所得(長期)の金額 1,265,000
課税分離長期譲渡所得の金額 5 13,882,000
納付すべき税額 2,987,100

 

ハ 過少申告加算税の賦課決定について
 以上のとおり、本件更正は適法であり、かつ、請求人には、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてした過少申告加算税の賦課決定は適法である。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、異議審理手続の違法性の存否及び本件マンションが本件特例に規定する居住用財産に該当するかどうかにあるので、以下審理する。

(1) 異議審理手続について

 請求人は、本件異議決定において、国税通則法第84条第5項に規定する正当とする理由を明らかにしないばかりか、異議決定自体が事実をねつぞうしてなされたもので無効であることを理由として原処分の取消しを求めている。
 しかしながら、国税通則法第76条《不服申立てができない処分》は、異議審理庁がした異議決定について、不服申立てをすることはできない旨規定しており、異議審理手続の違法又は不当は、原処分の取消事由に当たらないというべきであり、また、本件異議決定は、国税通則法第84条第5項に規定する処分を正当とする理由を明らかにしていると認められるから、この点に関する請求人の主張は失当である。

(2) 本件更正について

 次の事実については、請求人及び原処分庁双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
(イ) 請求人の住民登録は、次のとおりである。
A 昭和45年4月28日から平成元年11月1日までは、S市住居であったこと。
B 平成元年11月2日から平成2年3月3日までは、本件マンションの所在地であったこと。
C 平成2年3月4日以降は、S市住居であること。
(ロ) 請求人の家族は、昭和45年4月28日以降継続してS市住居に居住していること。
(ハ) 本件マンションは株式会社△△に譲渡され、平成2年8月31日の売買を原因として所有権移転登記がされていること。
ロ 当審判所に対する請求人の答述、原処分関係資料及び当審判所の調査によると、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、本件マンションの売却に関し本件専任媒介契約を締結していること。
(ロ) 本件マンションは、A社の仲介により譲渡されていること。
(ハ) 調査担当職員が調査したところによると、本件マンションには、昭和62年5月13日から平成元年5月4日まではB女が居住し、同年5月10日から同年6月2日までは◎◎が居住していたこと、その後の入居者は請求人となっているが、同人が居住していたかどうかは明らかでないこと。
(ニ) F社の平成元年8月21日から平成2年8月20日までの事業年度に係る法人税申告書添付の地代家賃等の内訳書によると、同社のU市W町2ー7ー15の本店事務所の家賃は年間1,610,793円であり、同社のS市V町1ー22ー13のS市事務所の家賃は年間5,224,560円であること。
(ホ) 請求人は、S市住居に土地119.00平方メートル及び木造鉄板葺2階建家屋113.03平方メートル(以下「S市家屋等」という。)を所有していること。
(ヘ) 本件マンションに係る電気、ガス及び水道の使用状況等は、次のとおりである。
A 請求人は、平成元年11月2日に電気の使用を開始し、平成2年7月30日に使用を中止していること。
 なお、当該期間中に係る使用量は次表のとおりであること。


年月別 使用量 年月別 使用量 年月別 使用量
元.11 4キロワット 2.2 0キロワット 2.5 7キロワット
元.12 0  〃 2.3 9  〃 2.6 8  〃
2.1 0  〃 2.4 9  〃 2.7 26  〃

 

B 請求人は、平成元年11月18日にガスの使用を開始し、平成2年7月31日に閉栓しており、当該期間中の使用量は零であること。
C 請求人は、平成元年11月6日に水道の使用を開始し、平成2年7月30日に閉栓しており、当該期間中の使用量は1立方メートル未満であること。
ハ ところで、本件特例に規定する「居住の用に供している家屋」とは、その者が生活の本拠として利用している家屋(ただし、一時的な利用を目的とする家屋を除く。)をいうものとされている。
 そして、本件特例は、居住の用に供している家屋を譲渡した場合には、譲渡者は再び居住用代替資産を取得する蓋然性が高いこと、通常の家屋であれば特別控除額の範囲内で取得できるであろうとの配慮から、居住の用に供している家屋の譲渡者が所得税の負担なくして普通程度の居住用代替資産を取得することを可能にする立法趣旨によるものである。
 また、本件特例が特別控除について連年の適用を認めず、3年間に一度の適用を認めたにとどまることにかんがみると、本件特例の適用を受けるためには、当該家屋を真に居住の意思をもって客観的にもある程度の期間継続して生活の本拠としていたことを要し、他に居住用の家屋を有し生活の本拠としているような場合には、たとえ当該家屋を居住用に供していたとしても、それは臨時的仮住まいであって、本件特例に規定する居住の用に供している家屋とは認められないと解すべきである。
 そして、これらの判定に当たっては、住居移転の経緯、居住期間、居住の態様及び生活の本拠がどこにあるか等について総合考慮して判断すべきであるとされている。
ニ 以上の事実に基づき総合判断すると、次のとおりである。
 請求人は、本件マンションには、B女が平成元年4月29日に立ち退いた後、間もなく居住を開始し、ほぼ毎週月曜日から金曜日まで寝泊まりしていたのであるから、本件マンションは本件特例に規定する居住用財産に該当する旨主張する。
(イ) しかしながら、請求人は、S市住居にS市家屋等を所有し、同所に生計を一にする同人の家族が継続して居住し、土曜日及び日曜日は毎週、それ以外の日であっても必要に応じてS市住居で家族と共に過ごすという生活を送っていたこと及びF社がS市事務所を有していたことなどを併せ考慮すると、請求人が生活の本拠として居住の用に供していたのは、本件マンションではなくS市住居とみるのが相当である。
(ロ) また、本件マンションに係る電気、ガス及び水道の使用を開始したのは平成元年11月以降であり、かつ、これらの使用状況は、前記ロの(ヘ)のAないしCのとおり、極めて少ないことが認められる。
 請求人は、平成元年11月ころから本件マンションに寝泊まりし、F社に通勤するなどして使用していたことは否定できないものの、上記の電気、ガス及び水道の使用状況からみて、その利用頻度は極めて少なく、特に、平成元年12月から平成2年2月までの電気の使用量は零であること及び請求人の住民登録は平成2年3月4日からS市住居であること等からみると、その居住目的は一時的なものであり、生活の本拠としていたとは到底認められない。
(ハ) 本件マンションは、本件専任媒介契約に基づき譲渡していることに照らすと、請求人が本件マンションに居住していたのは、本件譲渡をするまでの間の一時的なものであったとみるのが相当である。
(ニ) したがって、本件マンションは、本件特例に規定する居住用財産に該当しないと認めるのが相当であるから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
ホ 以上のとおり、本件譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、本件特例の規定を適用することはできない。
 よって、本件譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、譲渡収入金額から控除する取得費及び譲渡費用の額を申告額と同額とし、更に、措置法第31条《長期譲渡所得の課税の特例》第2項の規定により長期譲渡所得の特別控除額を控除して、分離長期譲渡所得の金額及び納付すべき税額を計算すると次表のとおりとなり、これらの金額は、いずれも更正に係る金額と同額であるから、本件更正は適法である。

(単位:円)
項目 金額
譲渡所得の金額の計算 譲渡収入金額 1 26,000,000
取得費 2 10,252,226
譲渡費用 3 865,200
特別控除額 4 1,000,000
課税分離長期譲渡所得の金額
1234
5 13,882,000
納付すべき税額の計算 総所得金額 6,196,400
内訳 給与所得の金額 4,931,400
譲渡所得(長期)の金額 1,265,000
課税分離長期譲渡所得の金額 5 13,882,000
納付すべき税額 2,987,100

(3) 過少申告加算税の賦課決定について

 以上のとおり、本件更正は適法であり、また、請求人には、確定申告の税額を計算するに当たり、原処分庁が過少申告加算税の基礎とした税額に係る事実を確定申告の税額の計算の基礎としなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてした過少申告加算税の賦課決定は適法である。

(4) その他

 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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