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(平5.10.21、裁決事例集No.46 31頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、小児科医業を営む者であるが、昭和63年分、平成元年分及び平成2年分(以下「各年分」という。)所得税について、別表の「確定申告」欄のとおり記載した青色の確定申告書をいずれも法定申告期限までに提出した。
 請求人は、平成2年分について平成3年6月19日に、昭和63年分及び平成元年分について平成3年7月10日に、それぞれ別表の「修正申告」欄のとおり記載した修正申告書を提出したところ、原処分庁は、平成2年分について、平成4年3月10日付で別表の「賦課決定1」欄のとおり賦課決定処分をした。
 更に、原処分庁は、平成4年3月10日付で別表の「更正」欄のとおり更正処分及び「賦課決定2」欄のとおり賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
 請求人は、更正処分及び本件賦課決定処分を不服として平成4年4月10日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正処分について
(イ)請求人は、新たに開設する診療所の建設用地として、昭和63年2月25日にP市R町大字S892番2の宅地934.33平方メートル(以下「本件土地」といい、本件土地のうち請求人の事業の用に供する部分を「本件事業用土地」という。)を取得し、更に、同年10月19日に本件土地上に、家屋番号892番2の鉄筋コンクリート造スレート葺、床面積一階244.71平方メートル、二階195.69平方メートル、地下一階15.83平方メートルの診療所併用住宅及びその付属設備(以下、診療所併用住宅と併せて「本件建物等」といい、本件建物等のうち請求人の事業の用に供する部分を「本件診療所」という。)を建築取得し、同年11月7日から本件診療所において診療を開始した。
 請求人は、本件土地及び本件建物等の取得のために、昭和63年中にA銀行T支店から合計180,000,000円の借入れを行い、同年中に支払った当該借入れに係る利子のうち、本件事業用土地及び本件診療所(以下、本件事業用土地と併せて「本件事業用土地等」という。)の取得に係る部分の支払利子2,718,402円及び当該借入れに際して支払った抵当権設定登記費用等(以下「本件登記費用等」という。)930,100円を昭和63年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入して確定申告を行った。
 これに対して、原処分庁は、上記支払利子2,718,402円のうち、請求人が本件診療所において診療を開始するまでの期間に対応する部分(以下「本件支払利子」という。)2,379,035円及び本件登記費用等(以下、本件支払利子と併せて「本件支払利子等」という。)930,100円の合計3,309,135円は、昭和63年分の必要経費に算入できないとし、また、本件支払利子のうち、本件診療所の取得に充てられた借入金に対応する支払利子297,064円を本件診療所の取得価額に算入したところにより本件診療所の減価償却費の額を算定し、請求人が当該減価償却費として必要経費に算入していた金額との差額(以下「本件減価償却費」という。)昭和63年分9,625円、平成元年分29,591円及び平成2年分24,981円を事業所得の金額の計算上必要経費に算入して更正処分をした。
(ロ)原処分庁は、請求人が事業所得を生ずべき業務を開始した日は診療行為を開始した日であるから、診療を開始するまでの期間に対応する本件支払利子等は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入できない旨主張する。
 しかしながら、本件支払利子等は、次のことから昭和63年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
A 請求人は、昭和63年1月に医院計画概要書を作成するほか開業に向けて具体的な計画を立て、同年1月27日に本件土地の売買契約を締結し、同年4月30日に本件建物等の建築に着工したものであるから、診療を開始したのは同年11月7日であるが、請求人の医業に係る事業所得を生ずべき業務は、実質的に同年1月から既に開始している。
B 業務の用に供する資産とは、現実に業務の用に供されているもののほか、将来、業務に使用されることが明らかなものも含まれることから、本件事業用土地等は、請求人が昭和63年2月25日に本件土地等を取得した時点において、前記Aの一連の取得行為から、将来、業務に使用されることが客観的に明らかであるので、本件事業用土地等は業務の用に供する資産に該当する。
C 所得税法第37条《必要経費》第1項には、事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、事業所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定されているが、所得を生ずべき業務とは、所得税法第2条《定義》第1項第20号で繰延資産は、事業所得を生ずべき業務に関し個人が支出する費用と規定されていることからも、直接その行為が収入を生ぜしめる業務のみが所得を生ずべき業務でないことは明らかである。
 更に、所得税法施行令第7条《繰延資産の範囲》第1項第1号《開業費》は、事業所得を生ずべき事業を開始するまでの間と規定し、「業務」と「事業」という文言を明確に区分して用いており、所得税法における業務の概念は、「業務」の中に「事業」が含まれ、事業の概念より広義であることからも、事業所得を生ずべき業務が収入を生ぜしめる業務のみでないことは明白である。
 そうすると、事業所得を生ずべき業務とは、収入を生ぜしめる業務のみをいうものではなく、請求人の場合、診療行為のみではなく、診療行為の開始に必要な準備段階の客観的、具体的な行為も含まれることは明らかであり、これを含まないとする原処分庁は、法解釈を誤っている。
D 所得税基本通達(以下「基本通達」という。)37ー27《業務用資産の取得のために要した借入金の利子》によれば、業務を営んでいる者が当該業務の用に供する資産の取得のために借り入れた資金の利子は、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する旨定められており、請求人は、昭和63年1月から既に業務を実質的に開始し、かつ、本件事業用土地等は業務の用に供する資産であるから、この取扱いに該当する。
 また、原処分庁は、本件支払利子等は資産の取得に要した費用に該当すると認定しているが、資産の取得に要した費用とは、その取得のために直接要した費用をいい、本件支払利子等のような間接的な支払は含まれないから、本件支払利子等を本件事業用土地等の取得価額に算入すべきでない。
(ハ)そうすると、各年分の事業所得の金額、総所得金額又は純損失の金額は、次のとおりとなる。
A 昭和63年分
 事業所得の金額の計算上生じた損失の金額11,309,778円、純損失の金額2,888,118円となる。
B 平成元年分
 事業所得の金額の計算上生じた損失の金額2,081,731円、純損失の金額1,269,971円となる。
C 平成2年分
 事業所得の金額11,616,622円、総所得金額8,146,058円となる。
ロ 賦課決定処分について
 前記イの(ロ)及び(ハ)のとおり、各年分の更正処分は違法であるから、その全部の取消しに伴い、本件賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 更正処分について
(イ)本件支払利子等について
 本件支払利子等は、次のことから昭和63年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
A 業務を営んでいない者が、新たに業務を開始するに当たって、その業務の用に供する資産を借入金をもって先行取得している場合、当該業務開始前の期間に対応する借入金の利子及び借入金に係る抵当権設定登記費用等は当該資産の取得価額に算入することとされている。
 請求人は、A銀行T支店から借入金をもって、昭和63年2月25日に本件事業用土地を取得し、同年10月19日には本件診療所を建築して、同月31日にB病院を退職した後、同年11月7日に本件診療所において小児科医業に係る業務を開始しているから、本件支払利子2,379,035円及び本件登記費用等930,100円を本件事業用土地等の取得価額に算入したものである。
B 請求人は、所得税法上「業務」には「事業」が含まれるから同法第37条第1項に規定する事業所得を生ずべき業務は収入を生ぜしめる業務のみでない旨主張するが、同項及び同法第2条第1項第20号に規定する所得を生ずべき業務は、いずれも不動産所得、事業所得又は雑所得の金額の計算に当たっての規定であり、所得税法上、事業規模に至らない不動産所得又は雑所得の金額と事業規模の不動産所得又は事業所得の金額の計算方法等を同一の条文で規定する場合、所得を生ずベき業務としているのであって、請求人の主張のように解釈すべきではない。
 このことは、所得税法第51条《資産損失の必要経費算入》において、事業規模の不動産所得、事業所得又は山林所得については、同条第1項及び第2項で所得を生ずべき事業と規定され、事業規模に至らない不動産所得又は雑所得については、同条第4項で所得を生ずべき業務と規定し、「事業」と「業務」が区分されていることからも明らかである。
 したがって、所得税法第37条第1項の所得を生ずべき業務について生じた費用とする規定をもって、事業開始前に生じた費用が事業所得の金額の計算上必要経費に算入されると解釈すべきではない。
C 請求人は、B病院に勤務していた昭和63年1月から開業に向けて具体的な計画と実行を開始しているから、請求人の医業に係る業務は、同月に実質的に開始された旨主張するが、業務を開始した日とは、請求人の主張するような開業計画の立案等を開始したという抽象的・主観的な日をいうのではなく、具体的・客観的に事業を開始した日、すなわち、請求人にあっては診療行為を開始した同年11月7日となる。
D 請求人は、基本通達37ー27において、業務の用に供する資産の取得のために借り入れた資金の利子は、必要経費に算入すると定められている旨主張するが、当該基本通達の定めは業務を営んでいる者についての取扱いであるから、新たに業務を開始する請求人にはこの取扱いは該当しない。
(ロ)事業所得の金額
 前記(イ)のとおり、本件支払利子2,379,035円及び本件登記費用等930,100円は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入できず、本件事業用土地等の取得価額に算入することとなり、本件支払利子のうち本件診療所の取得に充てられた借入金に対応する支払利子297,064円は、本件診療所の取得価額に加算することとなる。
 したがって、本件診療所の取得価額に加算したところにより所得税法第49条《減価償却資産の償却費の計算及び償却の方法》第1項の規定に基づいて減価償却費を計算し、本件減価償却費昭和63年分9,625円、平成元年分29,591円及び平成2年分24,981円を必要経費に算入することとなる。
 そうすると、昭和63年分の事業所得の金額の計算上生じた損失の金額は8,010,268円、平成元年分の事業所得の金額の計算上生じた損失の金額は2,111,322円及び平成2年分の事業所得の金額は11,167,366円となる。
(ハ)各年分の総所得金額又は純損失の金額
A 昭和63年分
 総所得金額は、前記(ロ)の事業所得の金額の計算上生じた損失の金額8,010,268円と給与所得の金額8,302,660円との差引金額292,392円となる。
 また、合計所得金額は、総所得金額292,392円と退職所得の金額119,000円との合計額411,392円となり、純損失の金額はないこととなる。
B 平成元年分
 純損失の金額は、前記(ロ)の事業所得の金額の計算上生じた損失の金額2,111,322円と給与所得の金額811,760円との差引金額1,299,562円となる。
C 平成2年分
 総所得金額は、前記(ロ)の事業所得の金額11,167,366円と給与所得の金額1,111,800円との合計額から平成元年分の純損失の金額1,299,562円を控除した10,979,604円となる。
 したがって、上記の金額と同額でした各年分の更正処分は適法である。
ロ 賦課決定処分について
 前記イのとおり、各年分の更正処分は適法であり、かつ、請求人が過少申告をしたことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められないから、本件賦課決定処分も適法である。

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3 判断

(1) 更正処分について

 本件支払利子等が昭和63年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができるか否かについて争いがあるので、調査・審理したところ、次のとおりである。
イ 次のことについては、当事者間に争いはなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
(イ)請求人は、本件土地及び本件建物等の取得資金としてA銀行T支店から昭和63年2月25日100,000,000円、同年5月23日10,000,000円、同年8月23日40,000,000円及び同年9月30日30,000,000円を借り入れたこと。
(ロ)請求人は、昭和63年1月27日にC株式会社と本件土地の売買契約を締結し、同年2月25日に93,267,900円で取得したこと。
(ハ)請求人は、昭和63年1月30日に本件建物等の新築工事に係る設計・管理業務を株式会社Dに委託し、同年5月23日にE株式会社と103,000,000円で本件建物等の工事請負契約を締結し、同年10月19日に本件建物等が完成して引渡しを受けたこと。
(ニ)請求人は、昭和63年10月31日にB病院を退職し、同年11月7日に本件診療所において診療を開始したこと。
(ホ)請求人は、前記(イ)の借入金に係る利子のうち、本件支払利子2,379,035円を昭和63年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入したこと。
ロ 請求人の提示資料を基に当審判所が調査したところ、本件登記費用等930,100円のうち359,948円は、昭和63年2月に総勘定元帳の開業費勘定から、店主貸勘定に振り替えられている事実が認められること。
ハ 所得税法上、「業務」と「事業」の用語の使い分けに係る規定については、次のとおりである。
(イ)所得税法第37条第1項によれば、その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定されている。
(ロ)所得税法第143条《青色申告》では、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行う居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、確定申告書及び当該申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる旨規定され、また、同法第57条《事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等》青色事業専従者の定義において、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族で専らその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事するものをいう旨規定されている。
ニ 以上の事実等を基に検討すると、次のとおりである。
(イ)請求人は、所得税法第37条第1項に規定する「所得を生ずべき業務について生じた費用」とは、所得税法の規定の解釈上「業務」には「事業」が含まれ、診療行為など直接収入を生ぜしめる業務のみが「所得を生ずべき業務」をいうのではなく、昭和63年1月に実質的に医業に係る業務を開始しているのであるから、本件支払利子等は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入される旨主張する。
 しかしながら前記ハのとおり、所得税法においては、事業と称するに至らない程度のものと事業と称するものに関して併せて規定する場合に「業務」としていると解されることから、同法第37条第1項に規定する「不動産所得、事業所得又は雑所得を生ずべき業務について生じた費用」については、事業所得に限れば「事業所得を生ずべき事業について生じた費用」と解するのが相当である。
 したがって、事業所得を生ずべき事業について生じた費用とは、客観的にみて、その支出した費用がその事業と直接の関連性があり、事業の遂行上必要な支出であることを要し、かつ、費用収益対応の原則からすれば、収入すべき金額を生ぜしめる事業に係る費用に限られるものと解される。
 そうすると、前記イの(イ)ないし(ニ)のとおり、請求人は、昭和63年1月30日に本件建物等の新築工事に係る設計・管理業務を委託し、同年2月25日に借入金をもって本件土地を取得し、同年5月23日に本件建物等の工事請負契約を締結して同年10月19日には本件建物等の引渡しを受けるなど、開業に向けて準備したことが認められるが、本件診療所において診療を開始したのは同年11月7日であるから、同日をもって収入を生ぜしめる事業を開始したこととなる。
 したがって、本件支払利子等は、事業所得を生ずべき事業について生じた費用に該当しないので、請求人の主張は採用することはできない。
(ロ)また、請求人は、基本通達37ー27によれば、業務の用に供する資産の取得のために借り入れた資金の利子は必要経費に算入する旨定められており、本件事業用土地等は取得した時点において業務の用に供する資産に当たるから、本件支払利子等は必要経費に算入できる旨主張する。
 しかしながら、基本通達37ー27は、既に業務を営んでいる者が業務の用に供した場合の取扱いであり、請求人のように新たに業務を開始する場合には該当しないので、請求人の主張は採用することはできない。
(ハ)更に、請求人は、資産の取得に要した費用とは、その取得のために直接要した費用をいい、本件支払利子等のような間接的な支出は含まないから、本件支払利子等を本件事業用土地等の取得価額に算入すべきでない旨主張する。
 しかしながら、事業を営んでいない者が新たに事業を開始する前にその事業の用に供する資産を借入金をもって取得している場合に、事業開始前に支出した借入金の利子は、その資産の取得のために必要な支払利子であるから、これを取得価額に算入するのが相当であると解される。
(ニ)請求人は、前記ロのとおり、開業費勘定に計上した本件登記費用等930,100円のうち、359,948円を店主貸勘定に振り替えているので、必要経費に算入されているのは570,152円となる。
 したがって、本件登記費用等930,100円のうち、570,152円が必要経費に算入されないこととなるので、原処分庁が本件登記費用等930,100円を必要経費に算入すべきでないとしたのは誤りである。
(ホ)以上により、本件支払利子2,379,035円及び本件登記費用等のうち本件事業用土地等の取得に係る金額570,152円の合計2,949,187円は、昭和63年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
 また、本件支払利子2,379,035円のうち本件診療所の取得に充てられた借入金に対応する支払利子297,064円は、本件診療所の取得価額に加算することが相当であり、本件減価償却費昭和63年分9,625円、平成元年分29,591円及び平成2年分24,981円をそれぞれ各年分の事業所得の計算上必要経費に算入することとなる。
ホ 各年分の総所得金額又は純損失の金額は、次のとおりとなる。
(イ)昭和63年分
 事業所得の金額の計算上生じた損失の金額は8,370,216円となり、給与所得の金額8,302,660円、退職所得の金額119,000円があるので合計所得金額は51,444円となり、純損失の金額はないこととなる。
(ロ)平成元年分
 事業所得の金額の計算上生じた損失の金額は2,111,322円となり、給与所得の金額811,760円があるので純損失の金額は1,299,562円となる。
(ハ)平成2年分
 修正申告に係る事業所得の金額11,616,622円には事業所得の計算上減価償却費が過大であったとする金額が加算されているが、当該金額の中には、昭和63年分に係る減価償却費の過大額211,250円及び平成元年分に係る減価償却費の過大額213,025円の合計424,275円が含まれていることから、これを減算すると事業所得の金額は11,167,366円となる。
 そうすると、総所得金額は、上記事業所得の金額と給与所得の金額1,111,800円の合計額から平成元年分の純損失の金額1,299,562円を控除した10,979,604円となる。
 したがって、前記(イ)のとおり、昭和63年分の純損失の金額をないこととした更正処分は適法であり、前記(ロ)、(ハ)のとおり、平成元年分の事業所得の金額の計算上生じた損失の金額2,111,322円、純損失の金額1,299,562円及び平成2年分の事業所得の金額11,167,366円、総所得金額10,979,604円でされた更正処分は適法である。

(2) 賦課決定処分について

 前記(1)のとおり、各年分の更正処分は適法であり、かつ、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてされた本件賦課決定処分も適法である。

(3) 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所において調査・審理したところによってもこれを不相当とする理由は認められない。

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