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(平5.7.1、裁決事例集No.46 225頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 共同審査請求人総代Aほか3名(以下、共同審査請求人を「請求人ら」という。)は、平成3年12月23日に死亡した○○(以下「被相続人」という。)の共同相続人であるが、同年1月1日から12月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税の確定申告書(以下「本件申告書」という。)に別表1の「申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに提出した。
 原処分庁は、これに対し、平成4年8月5日付で、別表1の「更正等」欄に記載のとおり、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
 請求人らは、平成4年8月12日、これらの処分を不服として異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年11月10日付で、別表1の「異議決定」欄に記載のとおり、更正処分については棄却、過少申告加算税の賦課決定処分についてはその全部を取り消す旨の異議決定をした。
 請求人らは、平成4年12月10日、異議決定を経た後の原処分について不服があるとして、本件審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法、不当であるから、その全部の取消しを求めるる。
イ 原処分庁は、被相続人がP市R町3丁目1番30(平成2年9月14日付で同地番から1番65に分筆)の土地105.94平方メートル(以下「本件土地」という。)を仮設駐車場として貸し付けていることをもって、消費税法上課税対象となる事業であると認定しているが、次に述べるとおり、本件土地の貸付けは、課税資産の貸付けに該当する事業ではない。
(イ) 本件土地の用途は、あくまで自家用駐車場として、一時的な土地利用を考えたまでで、親戚の者及び近隣の酒屋から一時的でもよいからと賃貸しを求められ、やむなく現在まで4台の駐車を認めてきたものである。
 その内訳は、平成元年9月から2台、平成2年2月から1台、同年3月から1台の合計4台である。
(ロ) 被相続人は、平成2年分及び平成3年分の所得税の確定申告において、不動産所得の計算上、上記(イ)の駐車場賃貸料を収入金額に計上したが、その減価償却費は経費に計上せず、舗装整地代等工事費は自家用経費としているとおり、事業としての収入を得ていたものではない。
 本件土地は、被相続人がその親戚であるBに対し、昭和64年1月4日付で譲渡し、平成2年10月8日に引き渡した土地の残土地であり、仮設駐車場にするまでは、従前の借地人であった同人が自家菜園として利用していた土地であった。
 そして、B宅の新築工事がほぼ終了した時点で、同人に譲渡した土地との境界を作り、地面は雑草が生えるのを防止するために舗装したが、これは自家用駐車場としての適当な設備をしたまでで、当初から第三者に貸す意思はなく、自家用の2台の車を駐車させていたものであり、本件土地の貸付けは、昭和63年12月30日付間消1ー63国税庁長官通達「消費税法取扱通達の制定について」(以下「消費税法取扱通達」という。)6ー1ー5《土地付建物等の貸付け》の注書きの1に定める単なる土地の貸付けである。
(ハ) 被相続人は、平成2年4月11日、P市S町1丁目3番4号のS町第一モータープール(以下「S町駐車場」という。)を廃業して所得税法第229条《開業等の届出》に規定する廃業届を行い、その後、同土地上に8階建てのマンションを新築し、平成3年6月1日から新規事業を開業したが、S町駐車場を廃業後マンションの賃貸事業を始めるまでの間は、事業所得を生ずる事業並びに消費税の課税資産の貸付けに該当する事業を行っていない。
ロ 被相続人は、平成3年7月8日、所得税法第229条の規定により、上記新築マンションの賃貸事業に係る開業届とともに、消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第4項に規定する消費税課税事業者選択届出書(以下「本件届出書」という。)を提出したことにより課税事業者としての適用を受けて本件申告書を提出したものであるから、還付すべき税額はないとする原処分を取り消すべきである。
 原処分は、次の理由により違法、不当であるから、その全部の取消しを求めるる。
イ 原処分庁は、被相続人がP市R町3丁目1番30(平成2年9月14日付で同地番から1番65に分筆)の土地105.94平方メートル(以下「本件土地」という。)を仮設駐車場として貸し付けていることをもって、消費税法上課税対象となる事業であると認定しているが、次に述べるとおり、本件土地の貸付けは、課税資産の貸付けに該当する事業ではない。
(イ) 本件土地の用途は、あくまで自家用駐車場として、一時的な土地利用を考えたまでで、親戚の者及び近隣の酒屋から一時的でもよいからと賃貸しを求められ、やむなく現在まで4台の駐車を認めてきたものである。
 その内訳は、平成元年9月から2台、平成2年2月から1台、同年3月から1台の合計4台である。
(ロ) 被相続人は、平成2年分及び平成3年分の所得税の確定申告において、不動産所得の計算上、上記(イ)の駐車場賃貸料を収入金額に計上したが、その減価償却費は経費に計上せず、舗装整地代等工事費は自家用経費としているとおり、事業としての収入を得ていたものではない。
 本件土地は、被相続人がその親戚であるBに対し、昭和64年1月4日付で譲渡し、平成2年10月8日に引き渡した土地の残土地であり、仮設駐車場にするまでは、従前の借地人であった同人が自家菜園として利用していた土地であった。
 そして、B宅の新築工事がほぼ終了した時点で、同人に譲渡した土地との境界を作り、地面は雑草が生えるのを防止するために舗装したが、これは自家用駐車場としての適当な設備をしたまでで、当初から第三者に貸す意思はなく、自家用の2台の車を駐車させていたものであり、本件土地の貸付けは、昭和63年12月30日付間消1ー63国税庁長官通達「消費税法取扱通達の制定について」(以下「消費税法取扱通達」という。)6ー1ー5《土地付建物等の貸付け》の注書きの1に定める単なる土地の貸付けである。
(ハ) 被相続人は、平成2年4月11日、P市S町1丁目3番4号のS町第一モータープール(以下「S町駐車場」という。)を廃業して所得税法第229条《開業等の届出》に規定する廃業届を行い、その後、同土地上に8階建てのマンションを新築し、平成3年6月1日から新規事業を開業したが、S町駐車場を廃業後マンションの賃貸事業を始めるまでの間は、事業所得を生ずる事業並びに消費税の課税資産の貸付けに該当する事業を行っていない。
ロ 被相続人は、平成3年7月8日、所得税法第229条の規定により、上記新築マンションの賃貸事業に係る開業届とともに、消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第4項に規定する消費税課税事業者選択届出書(以下「本件届出書」という。)を提出したことにより課税事業者としての適用を受けて本件申告書を提出したものであるから、還付すべき税額はないとする原処分を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 被相続人が本件土地を駐車場として賃貸ししていたことは、次に述べるとおり、消費税法第4条《課税の対象》第1項に規定する資産の譲渡等に該当するから、被相続人は本件課税期間において新規に事業を開始したということができない。
(イ) 消費税法においては、事業者が「事業」として行う財貨、サービスの提供を課税の対象としているところであり、この場合の「事業」とは、同種の行為を反復、継続、独立して行うことと解されており、このようなものであれば、その規模の大小は問わない。
 また、消費税法取扱通達6ー1ー5の注書きの1によれば、土地を駐車場として利用させた場合において、その用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画等をして貸し付ける場合は、施設の貸付けに該当し、非課税となる土地の貸付けに含まれないこととされている。
(ロ) 被相続人は、平成元年6月にC工務店に対し、本件土地を駐車場として利用するため、周りをフェンスで囲み、敷地をアスファルト舗装し、白線で区画した上で、それぞれ区画ごとに番号を付ける工事を依頼し、同年7月に完成して引渡しを受けたものである。
 そうすると、本件土地の駐車場の貸付けは、消費税法上の課税資産の譲渡等(消費税法第6条《非課税》第1項に規定する資産の譲渡等以外のもの)に該当する。
ロ 消費税法第52条《仕入れに係る消費税額の控除不足額の還付》第1項の規定によれば、課税事業者が、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から仕入れに係る消費税額を控除してなお不足額があるときは、当該不足額を記載した同法第45条《課税資産の譲渡等についての確定申告》第1項又は第46条《還付を受けるための申告》第1項の規定による申告書を提出することにより、当該不足額に相当する消費税の還付を受けることができる旨定めている。
 ただし、上記消費税の還付は、消費税法第9条第1項本文の規定の適用を受ける事業者(以下「免税事業者」という。)は除かれることとされている。
ハ 被相続人は、本件課税期間に係る基準期間、すなわち、昭和64年1月1日から平成元年12月31日までの課税期間(消費税法第2条《定義》第1項第14号)内の平成元年9月から本件土地を駐車場として賃貸ししており、当該基準期間における課税売上高が30,000,000円以下であるため、免税事業者に該当するが、平成3年7月8日に本件届出書を原処分庁に提出して、課税事業者になることを選択している。
 しかしながら、被相続人は、上記のとおり課税資産の譲渡等に該当する事業を平成元年から継続しており、本件課税期間は、消費税法第9条第4項に定める「事業を開始した日の属する課税期間」に当たらないことから、本件届出書の提出により課税事業者とされるのは、本件届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後になるものである。
ニ 以上のとおり、被相続人は、本件課税期間に係る消費税の還付を受けるための申告をすることはできないから、原処分は適法である。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件土地の貸付けが課税資産の譲渡等に該当するか否か、該当するとしても、本件課税期間において還付を受けるための申告ができるか否かにあるので、以下検討する。

(1) 原処分関係資料、請求人らの提出資料及び請求人らの答述並びに当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

イ 被相続人は、平成元年6月、C工務店に対し、本件土地を駐車場として利用するための工事を依頼し、本件土地にブロック積工事、フェンス工事及び舗装工事(白線引き工事を含む。)等が施工されたこと。
ロ 本件土地は、別表2に記載のとおりの契約内容で、平成元年9月1日からD及びEに、平成2年2月1日からFに、同年3月1日からGに、それぞれ駐車場として賃貸しされていること。
ハ 被相続人は、所得税の確定申告において、不動産所得の計算上、上記賃貸料を収入金額として、平成元年分は108,000円、平成2年分は628,000円、平成3年分は672,000円と、それぞれ申告していること。
ニ 被相続人の本件課税期間に係る基準期間(昭和64年1月1日から平成元年12月31日までの課税期間)における課税売上高は、S町駐車場及び本件土地に係る駐車場賃貸料の収入金額9,599,000円であり、被相続人は、免税事業者であったこと。
ホ 被相続人は、平成2年4月11日、S町駐車場を同年1月31日に廃業したとする個人事業の廃業の届出書を、また、平成3年7月8日、同駐車場の跡地に新築したマンションの賃貸事業を始めたとして、同年5月30日から12月31日までを適用開始期間とする本件届出書を原処分庁へ提出したこと。

(2) そこで、上記認定事実に基づき判断する。

イ 消費税法第2条第1項第8号及び第9号において、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいい、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、同法第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいうと定められているところ、この場合の「事業」とは、対価を得て行われる資産の譲渡等の行為を反復、継続、独立して遂行することと解するのが相当であり、消費に広く負担を求めるという消費税においては、このように同種の行為を反復、継続、独立して行うようなものであれば、所得税法における事業の概念とは異なって、事業の規模までは問わないというべきである。
 また、消費税法別表第一第1号及び同法施行令第8条《土地の貸付けから除外される場合》の規定によると、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合は、消費税法第6条第1項に規定する非課税となる土地の貸付けから除かれることとなり、事業者がその土地につき駐車場としての用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をして土地を貸し付けた場合は、課税資産の貸付けに該当すると解するのが相当である。
ロ これを本件についてみると、前記(1)のロ及びハのとおり、被相続人は、本件土地を平成元年9月1日からD及びEに、平成2年2月1日からFに、同年3月1日からGに、それぞれ駐車場として賃貸ししており、かつ、これらに係る賃貸料収入を平成元年9月から平成3年12月まで継続して得ていることから、対価を得て同種の行為を反復、継続、独立して行っているものと認められ、その結果、本件土地の貸付けは、消費税法上の「事業」に該当するものと認めるのが相当である。
 なお、本件土地に前記(1)のイのとおり駐車場としての用途に応じる地面の舗装、フェンスの設置及び白線による区画等が行われていることから、本件土地は駐車場の施設の利用に供されていることとなり、本件土地の貸付けは、上記イの理由により消費税法第6条第1項に規定する非課税とされる土地の貸付けから除外すべき土地の貸付けに該当するものと認めるのが相当である。
 したがって、被相続人は、平成元年9月1日から平成3年12月まで、継続して課税資産の貸付けに該当する事業を行っていたことが認められるから、平成3年6月1日から新規事業を開始したとする請求人の主張には理由がない。
ハ 次に、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項及び第52条第1項の規定によると、免税事業者は、課税仕入れに係る消費税額の控除及び控除不足額に相当する消費税の還付が受けられない旨定められているが、同法第9条第4項の規定によれば、免税事業者が同項に規定する届出書を提出した場合には、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間(当該提出をした日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間である場合には当該課税期間)から消費税を納める義務が免除されない旨定められており、免税事業者は、当該届出書を提出することによって、同法第30条第1項及び第52条第1項の規定の適用を受けることができることとされている。
ニ これを本件についてみると、被相続人は、前記(1)のニのとおり本件課税期間に係る基準期間における課税売上高が30,000,000円以下であり、免税事業者であるため、消費税法第9条第4項の規定により、平成2年12月31日までに同項に規定する届出書を提出しない場合は、本件課税期間の課税仕入れに係る消費税額の控除が受けられないこととなる。
 被相続人は、S町駐車場を平成2年1月31日に廃業したとして、同年4月11日に所得税法第229条に規定する廃業等の届出書を原処分庁へ提出しているものの、前記イで述べたとおり、平成元年9月から本件土地を駐車場として賃貸ししており、これが消費税法に規定する課税資産の譲渡等に該当する事業であると認められるから、平成3年7月8日に本件届出書を提出している本件においては、消費税法第9条第4項の規定に照らし、課税事業者とされるのは本件課税期間の翌課税期間以後となる。
ホ そうすると、本件課税期間において、仕入れに係る消費税額の控除不足額があったとしても、消費税法第45条第1項及び第46条第2項の規定による消費税の還付を受けるための申告はできないこととなる。
 したがって、被相続人が本件土地を駐車場として賃貸ししていたことは、消費税法第4条第1項に規定する資産の譲渡等に該当するとして、本件課税期間の仕入れに係る消費税の控除不足額に相当する消費税の還付を受けるための申告ができないとしてなされた原処分に何ら違法、不当な点はない。

(3) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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