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(平6.3.1、裁決事例集No.47 16頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成3年3月1日から平成4年2月29日までの事業年度(以下「平成4年2月期」という。)分の法人税の青色の確定申告書及び還付請求金額を49,616,213円と記載した欠損金の繰戻しによる還付請求書を、平成4年4月16日にP税務署長に提出した。
(2) 原処分庁(R国税局長)は、請求人の欠損金の繰戻しによる還付金49,616,213円(以下「本件還付金」という。)について、国税通則法(以下「通則法」という。)第56条((還付))第2項の規定により、平成4年7月21日付でP税務署長から還付の引継ぎを受けた。
(3) 原処分庁は、本件還付金は平成4年6月24日に発生したとして、同年8月21日付でその一部を、請求人の平成2年3月1日から平成3年2月28日までの事業年度分の法人税の滞納(以下「滞納国税」という。)に係る税額43,019,578円(内訳:本税38,449,978円、延滞税4,569,600円。)に充当する処分をした。
(4) 請求人は、この充当処分を不服として平成4年9月17日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年12月10日付で異議申立てを棄却する旨の異議決定をした。
(5) 請求人は、異議決定を経た後の原処分について、不服があるとして平成4年12月27日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
 原処分庁は、通則法施行令第23条((還付金等の充当適状))及び法人税法第81条((欠損金の繰戻しによる還付))第6項の規定により、本件還付金を滞納国税に充当するのに適することとなった時(以下「充当適状の日」という。)は平成4年6月24日であるとして、本件還付金の一部を滞納国税に充当しているが、本件還付金の充当適状の日は、請求人が欠損金の繰戻しによる還付請求書をP税務署長に提出した同年4月16日とすべきである。
 本件還付金の充当適状の日が平成4年4月16日とすると、同年4月17日から同年6月24日までの間の延滞税は発生しないことになるところ、原処分庁は、この間の延滞税を算定し、本件還付金の一部を充当している。
 なお、請求人は、平成4年4月2日に口頭により原処分庁に対し、滞納国税との関係で、平成4年2月期分の欠損金額等について説明をしており、同日には滞納国税に係る納税の猶予の要件は充足されたことになるので、原処分庁は納税の猶予を認めるべきである。
 そうすると、滞納国税のうち同日以降の延滞税は免除されることになるが、原処分庁は、この延滞税を免除せず、本件還付金の一部をこの免除されることになる延滞税に充当している。
 また、原処分庁は、請求人に延滞税の計算内容を一切説明していない。

(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次に述べるとおり適法である。
 本件還付金の充当適状の日は、通則法施行令第23条及び法人税法第81条第6項の規定により、P税務署長が欠損金額等について調査をし、還付の決定を行った日、すなわち平成4年6月24日であることは明白である。
 なお、請求人は、口頭による説明をもって納税の猶予の申請があったとすべきである旨主張するが、通則法第46条((納税の猶予の要件等))に規定する納税の猶予は、同法施行令第15条((納税の猶予の申請手続等))に規定する納税の猶予申請書の提出が要件となっているところ、請求人は同申請書を提出していない。
 したがって、請求人の滞納国税については、通則法第63条((納税の猶予等の場合の延滞税の免除))に規定する延滞税の免除の適用はない。
 また、請求人は、原処分庁は充当の対象となった延滞税の計算内容を説明しなかった旨主張するが、延滞税の計算内容についてまで原処分庁が説明しなければならない法的根拠はない。
 おって、本件還付金の充当対象となった延滞税の額は、法人税法第74条((確定申告))第1項、同法第77条((確定申告による納付))及び通則法第2条((定義))第8号、同法第57条((充当))第2項並びに同法第60条((延滞税))第1項の規定により、滞納国税の法定納期限である平成3年4月30日の翌日から、本件還付金の充当適状の日である平成4年6月24日までの期間の日数に応じて、通則法第60条第2項の規定に従い正しく計算している。

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3 判断

 請求人は、本件還付金の充当適状の日を請求人が還付を請求した日、すなわち平成4年4月16日とすべきである旨主張し、原処分は違法であるとして、その一部の取消しを求めているので、当審判所において調査・審理したところ、次のとおりである。

(1) 原処分関係資料を基に調査したところ、次の事実が認められる。

イ P税務署長は、請求人の欠損金の繰戻しによる還付請求について、法人税法第81条第6項の規定により調査をし、平成4年6月24日に還付の決定をしていること。
ロ 滞納国税の納付すべき税額は、請求人がP税務署長に修正申告書を提出した平成3年12月16日に確定したものであること。
ハ 原処分庁は、本件還付金について、通則法第56条第2項の規定により、平成4年7月21日付でP税務署長から還付の引継ぎを受け、同署長が還付の決定をした日である同年6月24日を本件還付金の充当適状の日とし、同年8月21日付でその一部を滞納国税に充当していること。
ニ 原処分庁は、本件還付金を滞納国税に充当した後の還付金6,624,235円(内訳:本税6,596,635円、還付加算金27,600円。)を請求人の銀行預金口座に振り込むとともに、「国税還付金振込及び充当通知書」により、請求人に通知していること。

(2) 次に、還付金等の充当適状の日については、通則法施行令第23条第1項において、充当に係る国税の法定納期限(法定納期限後に納付すべき税額が確定した国税で、申告によりその納付すべき税額が確定したものについてはその申告があった時)(以下「充当に係る国税の法定納期限」という。)と、還付金等が生じた時とのいずれか遅い時とする旨規定されている。

 ところで、還付の取扱いについては、還付の発生の態様別に各税法において規定されているが、法人税の欠損金の繰戻しによる還付の取扱いは、法人税法第81条第6項において、税務署長は還付の請求の基礎となった欠損金額等について調査をし、その調査したところにより還付する旨規定されており、還付の請求に対しては調査をした後に還付をすることになっていることからすれば、上記の通則法施行令第23条第1項に規定する還付金等が生じた時についても、税務署長が還付の請求の基礎となった欠損金額等につき調査をして正当な還付金額を確認し、還付の決定をした日と解するのが相当である。

(3) そこで、本件についてみると、1「充当に係る国税の法定納期限」は、滞納国税が修正申告によりその納付すべき税額が確定したものであることから、前記3の(1)のロのとおり、平成3年12月16日となり、また、2「還付金が生じた時」は、前記3の(1)のイのとおり、P税務署長が調査により還付の決定をした日、すなわち平成4年6月24日となる。

 したがって、本件還付金の充当適状の日は、12のいずれか遅い時、すなわち本件還付金が生じた時である平成4年6月24日となるので、請求人の主張には理由がない。
 なお、請求人は、平成4年4月2日に原処分庁に対して滞納国税との関係で欠損金額等の内容を説明しているから、原処分庁は、納税の猶予を認めて延滞税の一部を免除すべきであるにもかかわらず、同日以降の延滞税を免除しないで本件還付金の一部をこれに充当したことは違法である旨主張するが、納税の猶予は、通則法施行令第15条に規定する申請書の提出が要件となっているところ、原処分関係資料によれば、請求人は納税の猶予の申請書を提出していないので、納税の猶予の適用はなく、請求人の主張には理由がない。
 また、請求人は、原処分庁は充当対象となった延滞税の計算内容を一切説明しなかった旨主張するが、原処分庁がその説明をしなければならない旨を定めた法令の規定はなく、違法性はない。
 おって、原処分庁が本件還付金の一部を充当の対象とした延滞税の額は、滞納国税が請求人の平成2年3月1日から平成3年2月28日までの事業年度分の法人税の修正申告により確定したものであることから、通則法第2条第8号、同法第57条第2項及び同法第60条第1項の規定により、延滞税の計算期間の始期をその法定納期限である平成3年4月30日の翌日とし、終期を本件還付金の充当適状の日である平成4年6月24日として、計算期間の日数に応じて、通則法第60条第2項の規定に従い計算されており、その計算期間及び延滞税の計算に誤りは認められず、これを不相当とする理由は認められない。
 以上のことから、請求人の主張にはいずれも理由がなく、原処分は相当である。

(4) 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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