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(平6.3.23、裁決事例集No.47 216頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 本件審査請求に至る経緯は、次のとおりである。

(1) 本件確定申告書提出の経緯

イ 審査請求人(以下「請求人」という。)は、昭和53年9月13日にP市R町1丁目1番28の「○○ハイム807号室」床面積57.52平方メートル(以下「本件マンション」という。)をA株式会社から13,000,000円で買い入れて、これを所有していた。
ロ 請求人は、平成2年5月31日に、本件マンションをBに38,000,000円で譲渡した。
ハ 請求人は、平成3年3月7日、本件マンションの譲渡に係る所得(以下「本件譲渡所得」という。)について、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第35条((居住用財産の譲渡所得の特別控除))第1項の規定(以下「本件特例」という。)を適用し、課税長期譲渡所得金額が零円であるとする平成2年分所得税の確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)を原処分庁に提出した。

(2) 原処分及び不服申立ての経緯

イ 原処分庁は、本件確定申告書の提出に対し、本件特例を適用することはできないとし、課税長期譲渡所得金額等について、平成3年12月25日付で別表のとおり平成2年分所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分をした。
ロ 請求人は、上記の原処分に不服があるとして、平成4年1月23日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成4年9月8日付でこれを棄却する旨の異議決定をした。
 よって、平成4年10月2日に本件審査請求に及んだものである。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、いずれもその全部の取消しを求める。
イ 所得税の更正処分について
 本件マンションは、次のとおり請求人が取得し請求人の生活の本拠として居住の用に供していたのであるから、本件特例の対象となる居住の用に供している家屋に該当するので、本件譲渡所得の金額の計算上、本件特例を適用すべきである。
(イ) 請求人は、本件マンションを取得した当時、C病院(以下「C病院」という。)に産婦人科の婦長として深夜勤務の多い業務に従事していた。
 請求人はその当時、P市S町3丁目2番15号に所在する家屋(以下「S町家屋」という。)で請求人の夫、同長男及び夫の母(以下、それぞれ「夫」、「長男」、「義母」という。)と共に生活していた。
 ところが、S町家屋は、当時借家であり狭あい(床面積40.45平方メートル)である上、修理も補修も自由にできず、家賃も毎年上がるため、請求人は、夜勤の多い仕事柄、勤務先の近くで、家族全員が住め、高校受験を控えた長男に単独の勉強部屋を与えてやれる家を持ちたいと考え本件マンションを買い入れた。
 請求人は、本件マンションの取得と同時に、家族全員で転居する予定であったが、病身の義母の反対でそれが困難となった。
 そこで、請求人は、義母との折り合いが悪かったこともあり、やむを得ず長男と共に本件マンションに転居し、譲渡直前まで継続して居住していたものである。
(ロ) 請求人が本件マンションに居住していた事実は、同マンションの管理人であるD(以下「管理人」という。)及び同マンションに居住する請求人の知人であるE(以下「知人」という。)が作成した各証明書(以下これらを「居住証明書」という。)で明らかである。
(ハ) 原処分庁は、本件マンションにおける請求人の居住の事実を近隣住民の答述を基に否認したが、これは次のとおり事実を誤認したものである。
 原処分庁の調査を担当した職員(以下「調査担当職員」という。)が、S町家屋の近隣住民に対し、請求人がS町家屋に居住していたかどうかを質問したところ居住していた旨の答述を得たということは、善意の第三者である近隣住民が、そのような質問をされた場合、夫婦が老親の下で同居していたと答えるのが当然のことであり、現に、請求人は、複数の近隣住民から、「税務署の方から聞かれたから、そのほうがよいと思って、S町に住んでいる。」と答えておいた旨を聞いているのであるから、これらS町家屋の近隣住民の答述をもって請求人がS町家屋を生活の本拠としていたと判断することは、事実を誤認したものである。
 また、本件マンションの近隣住民は、請求人がたまに顔を合わす程度でほとんど付き合いがなく、実情を知らなかったはずである。
(ニ) 請求人が、請求人の勤務先に対する通勤届及び昭和62年分から平成元年分までの確定申告書に記載した住所がS町家屋の所在地を記載したことについては、通勤届は、強いて住所を変更しなくても通勤手当の金額が変わらないからそのままにしていたものであり、また、確定申告書は、退職後にP市役所から送付された申告書の住所がS町家屋になっていたのでそのまま申告したものであって、いずれも他意はない。
(ホ) 請求人は、本件マンションの譲渡に伴い、既に提出した見積書リストのとおり、平成2年6月9日、Fセンターに依頼して家具等の廃棄処分をしている事実から、請求人が同マンションに居住していたのは事実である。
ロ 重加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、本件更正処分は違法であるから、重加算税の賦課決定処分は違法である。
 仮に、本件更正処分が適法であるとしても、次の理由から、請求人に仮装の事実がないので、重加算税の賦課決定処分は事実を誤認してなされた違法なものであり、取り消すべきである。
(イ) 本件マンションを譲渡する直前の平成2年5月20日に住民登録を本件マンションの所在地に異動させたのは、本件マンションの登記簿上の住所と符合させれば、変更登記費用を節約できると考えたのであって、本件特例の適用を受けるために行ったものではない。
(ロ) 本件確定申告書に戸籍の附票の写しを添付したのは、本件マンションを居住の用に供していた家屋であると認識していたため、その証明のために添付したものである。
 したがって、原処分庁が主張するように仮装したものではない。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由によりいずれも適法である。
イ 所得税の更正処分について
 本件マンションは、次のとおり請求人が生活の本拠としていたものではないから、本件特例の対象となる居住の用に供している家屋には該当しないので、本件譲渡所得の計算上、本件特例の適用は認められない。
(イ) 原処分庁が、請求人の生活実態及び本件マンションでの居住事実等について調査したところ、次のとおりである。
A 請求人は、S町家屋における家庭事情等から、本件マンションを取得し、長男と二人で居住した旨主張するが、同マンションの取得目的、入居状況及び同マンションの譲渡に際しての家財等の搬出状況並びにS町家屋での食事の世話などの日常の生活状況等からみて、夫及び病身の義母と別居してまで同マンションを生活の本拠とするのは不自然であり、また、そうすることの格別の必然性は認められない。
B 本件マンション及びS町家屋の近隣住民は、原処分庁の調査担当職員に、同マンションには長男が入居していたが、請求人は入居していなかったと答述し、また、請求人、夫及び義母の三人はS町家屋に住んでいたと答述している。
C 管理人が作成した居住証明書は、同人が管理業務に従事したのが昭和62年7月からであるにもかかわらず、それ以前にそ及して、請求人が昭和53年12月から居住していたことを証明したものであり、事実を確認して作成したものとは認め難い。
D 請求人は、本件マンションの取得後も勤務先に対してS町家屋から通勤している旨を届け出ており、また、昭和62年分から平成元年分までの所得税の確定申告書に、S町家屋の所在地を住所として記載している。
E 請求人は、原処分庁の調査担当職員に本件マンションからの引っ越しに際し、Fセンターに依頼して、長男の荷物をT市の新居に運び、請求人の荷物をすべて処分してもらったと述べているがその事実は確認できない。
(ロ) ところで、本件特例の対象となる居住用家屋とは、所有者である個人がその居住の用に供している家屋である。
 その家屋が居住用家屋であるかどうかは、その者及び配偶者等(社会通念上、その者と同居することが通常であると認められる配偶者その他の者をいう。)の日常生活の状況、入居目的、構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案の上、その者が生活の本拠として利用しているかどうかにより判定すべきである。
(ハ) 以上の事実等を総合勘案すると、本件マンションは、請求人が生活の本拠として居住の用に供していたとは認められない。
ロ 重加算税の賦課決定処分について
 請求人は、本件マンションを居住の用に供していなかったにもかかわらず、あたかも居住用家屋であるかのように、1本件マンションを譲渡した(平成2年5月31日)直前に住民登録を移し、2戸籍の附票の写し及び電気料金の支払済証明書を添付して本件確定申告書を提出した行為は、国税通則法第68条((重加算税))第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしており、同項の規定により重加算税を賦課決定した 原処分は適法である。

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3 判断

(1) 所得税の更正処分について

 本件マンションが本件特例の対象となる居住用家屋に該当するか否かについて争いがあるので、以下検討する。
イ 次の事実については、当事者間に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
(イ) 請求人は、昭和53年9月13日に本件マンションを取得し、平成2年5月31日にこれを譲渡したこと。
(ロ) 請求人は、本件マンションを取得した当時、C病院に産婦人科の婦長として勤務し、夫、長男及び義母と共にS町家屋に居住していたこと。
 また、本件マンション取得後も夫及び義母は引き続きS町家屋を生活の本拠としていること。
(ハ) 請求人は、本件マンションの取得当時、家庭事情等からC病院に近く、家族全員が住める家を持ちたいと考えていたこと。
(ニ) 請求人は、本件マンションの取得と同時に家族全員で同マンションへ転居したいと考えていたが、病身の義母の反対により、全員の転居ができなかったこと。
 また、請求人は、長男が大学に入学した昭和57年4月ころ、再度義母に、家族全員で本件マンションに住むことを相談したが、この時も義母の反対により、家族全員が同マンションに住めなかったこと。
(ホ) 請求人の長男は、高校受験のころには、本件マンションに入居し、それ以降、本件マンションが譲渡される直前まで居住していたこと。
 なお、同人は、本件マンションの譲渡時には26歳であり、既に昭和63年4月に就職している。
(ヘ) S町家屋と本件マンションの間の距離は、徒歩15分位の距離(約1キロメートル)であり、請求人は、双方の間を行き来し、双方の家屋で食事の支度をしていたこと。
(ト) 請求人は、昭和60年12月27日に、夫名義でS町家屋を家主から3,500,000円で取得し、同家屋の取得資金と修理費に充てるため、同人が加入する共済組合から7,000,000円を借り入れたこと。
(チ) 請求人は、昭和62年3月にC病院を退職したこと。
(リ) 請求人は本件マンションを譲渡した資金をもって、T市U町3丁目6番地××6−505のマンションを長男と共同で取得し、同マンションには長男夫婦が居住していること。
ロ 請求人の提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、本件マンション取得後も、次の書類の住所としてS町家屋の住所地を記載していたこと。
A 健康保険証の住所及び公的年金等の支払の通知を受ける住所
B C病院に届け出た通勤届の住所
C 原処分庁に提出した昭和62年分、昭和63年分及び平成元年分の所得税の確定申告書の住所
(ロ) 管理人は、平成3年10月30日付で、請求人が昭和53年12月から平成2年5月まで長男と共に本件マンションに居住し生活していた旨の居住証明書を作成したこと。
 なお、異議審理庁の調査を担当した職員の答述によると、本件マンションの管理人は、管理業務についたのが昭和62年7月13日からであるにもかかわらず、居住証明書を昭和53年12月にそ及して書いた根拠について、1管理人が保管している入居者名簿に請求人の名前が記載されている、2請求人が区分所有権者になっており、転貸ししていないので、請求人が生活していると考えた旨申述している。
(ハ) 知人は、平成3年10月30日付で居住証明書を作成していること。
 なお、知人は、請求人の勤務したC病院の看護婦であり、その居住証明書は管理人が作成した居住証明書と同一の文章となっている。
(ニ) 異議審理庁の調査を担当した職員の答述によると、本件マンションの近隣住民は、1本件マンションには長男が一人で生活していた、2請求人は同マンションに住んでおらず、時折、掃除に来ていた、3請求人は義母と一緒に住んでおり、「世話が大変だ」と言っていたのを聞いた旨申述していること。
(ホ) 調査担当職員の申述によると、S町家屋の近隣住民は、請求人が、S町家屋に夫と義母の三人で住み、義母の入院後も、夫と住んでいた旨申述していること。
(ヘ) 請求人の提出した平成2年6月9日付のFセンターの契約書(見積書)及び請求人のメモによれば、本件マンションにあった食卓セット、応接セット、机、冷蔵庫、ステレオ、洗濯機及びテレビ等の家具を廃棄処分したこと。
ハ ところで、本件特例の対象となる「居住の用に供している家屋」とは、真に居住の意思をもって、その者がある程度の期間、継続的に起居するなど実質的に生活の本拠として利用している家屋をいい、一時的な目的で短期間、臨時に使用する家屋等はこれに当たらないと解するのが相当である。
 また、租税特別措置法施行令第23条((居住用財産の譲渡所得の特別控除))第1項の規定によれば、居住の用に供している家屋を二以上所有する場合には、「その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋」のみについて、本件特例が適用されるものとされている。
 そして、いずれの家屋を主として居住の用に供していたものであるかの判断は、その者及び社会通念上その者と同居することが通常であると認められる配偶者等の日常生活の状況、入居目的、その構造及び設備の状況その他諸般の事情を総合勘案して行われるべきであると解される。
ニ そこで、以上の事実を総合して判断すると、次のとおりである。
(イ) 当事者双方に争いのない事実からみると、次のとおり判断できる。
A 本件マンションを取得した目的は、S町家屋が借家であり、狭あいであったため、家族全員が本件マンションに移転し、居住することにあった。
B しかし、義母の反対があったため、家族全員の居住は実現せず、S町家屋には、夫及び義母が居住し、本件マンションには、長男が居住していた。
C 請求人は、食事等の家事を行うため、S町家屋と至近距離にある本件マンションとの双方の間を行き来し、いずれを主として居住の用に供していたか明らかでない。
(ロ) しかしながら、本件マンションを譲渡した直前における居住の状況についてみると、1S町家屋についても、請求人が資金を出して、夫名義でこれを取得していること、2長男は既に就職して、独立した生計を営んでいること、3請求人は、昭和62年にはC病院を退職しており、通勤という観点からは同病院に近い本件マンションを使用する必要がなくなったことから判断すると、長男が未成年のころは、長男の食事等の世話のため、本件マンシヨンを主として居住の用に供していたといえる状況があったといえるにしても、本件マンションを譲渡した平成2年の時点では、長男と共に本件マンションを生活の本拠とする理由も必要性も認められないといわざるを得ない。
 そうすると、本件マンションを譲渡した時には、請求人の主として居住の用に供していた家屋は、S町家屋と認められる。
(ハ) 更に、請求人は、通勤届等複数の書類にS町家屋を住所地として記載しており、この点について請求人は、通勤届については、住所の変更の必要性がなかったこと及び確定申告書については、P市役所から送付された住民税申告書の記載に従ったもので他意がない旨主張するが、このような公的な書類等については社会通念上、本人が住所地と定めたところを記載するのが通常と考えられるから、請求人が本件マンションを生活の本拠として認識していたとは認め難い。
(ニ) ところで、請求人は、本件マンションに居住していたことを管理人及び知人が証明し、また、居住の事実を証明するものとして同マンションに家具が存在していた旨主張する。
 しかし、管理人の答述は、請求人の居住の実態を熟知することなく、単に、請求人が入居者名簿に登載されていること及び請求人が本件マンションの所有者であり、他へ転貸ししていないということを重視してのものと認められることからすると、その証明力は高いとはいえない。
 また、知人の答述については、知人は請求人と勤務を共にしたことがあり、請求人の生活状況を知り得る立場にあった反面、請求人の意図に応じた答述をする可能性も高く、同人作成の居住証明書の記載内容が管理人作成の居住証明書と全く同一であることからすると、これをもって請求人が同マンションを生活の本拠としていたと認めるに足りるものではない。
 更に、請求人の主張する廃棄処分したとする家具等については、請求人が居住していなくとも、長男が本件マンションに居住していた以上、当然存在するものであり、請求人が居住していたことを証明するに足りるものではない。
(ホ) また、請求人は原処分庁の主張するS町家屋及び本件マンションの近隣住民の答述は、事実を誤認している旨主張する。当審判所においては、原処分庁の近隣住民の答述は、つまるところ、いずれが生活の本拠であったかを明らかにしたものとはいえず、これを判断の証拠として採用し難い。
ホ 以上のとおり、請求人の主張はいずれも理由がなく、請求人の主として居住の用に供していた家屋はS町家屋であると認められるから、本件マンションは、本件特例の対象となる居住の用に供している家屋には該当しない。
 したがって、原処分庁が、本件譲渡所得の計算に当たり、本件特例に基づく特別控除の額を控除しないで、措置法第31条((長期譲渡所得の課税の特例))第4項の規定による長期譲渡所得の特別控除額を控除して行った更正処分は適法である。

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(2) 重加算税の賦課決定処分について

 請求人が本件マンションの譲渡直前に同マンションの所在地に住民登録を移したこと並びに本件確定申告書に戸籍の附票の写し及び電気料金の支払済証明書を添付したことは、重加算税の賦課要件を満たしているか否かについて争いがあるので、以下検討する。
イ 請求人の答述、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、本件マンション取得後の昭和53年12月25日に住民登録を同マンションへ移し、昭和54年1月29日に同人名義で同マンションの所有権保存登記を行ったこと。
 このため、不動産登記簿上の所有者の住所は、本件マンションの所在地となっていたこと。
(ロ) その後、請求人は、昭和60年10月16日にS町家屋へ住民登録を移したこと。
(ハ) 不動産登記法第49条((申請却下手続))第1項第6号の規定によると、所有権移転登記の申請の際、登記義務者(売主)の登記簿上の住所は、住民登録した住所に符合しなければならないこと。
(ニ) 請求人の答述によると、請求人は登記簿上の住所を住民登録した住所に変更しなければならないところ、変更登記費用を節約するため、平成2年5月20日に住民登録をS町家屋から本件マンションに移し、これらを符合させたこと。
(ホ) 本件マンションの電気契約者は、請求人名義であること。
ロ ところで、国税通則法第68条第1項の規定によれば、重加算税の賦課決定には、納税者が国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺい又は仮装し、その隠ぺい又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したことが要件となっている。
ハ これを本件についてみると、次のとおりである。
(イ) 請求人は、本件マンションを請求人名義で取得し、かつ、長男を居住させて請求人が一時的にであっても長男と共に居住の用に使用していたことから、その事実をもって、同マンションを生活の本拠と理解していたことには、相当の理由があると認められる。
(ロ) また、請求人が本件マンションの譲渡直前に本件マンションの所在地に住民登録を移したのは、本件マンションの譲渡に係る所有権の移転登記手続に当たり、登記簿上の住所に住民登録上の住所を符合させるために行ったものであり、そのことをもって請求人が居住していたかのごとく仮装した行為とは認められない。
(ハ) 更に、原処分庁は、本件マンションを居住の用に供していないにもかかわらず、本件確定申告書に戸籍の附票の写し及び電気料金の支払済証書を添付したことは、仮装に当たる旨主張するが、これらの書類は、請求人が本件マンションを居住の用に供していた家屋であると誤認していたのであるから、その証明のために添付することは当然の行為であると認められ、原処分庁の主張は当を得ない。
(ニ) 以上のとおり、請求人の行為は、国税通則法第68条第1項に規定する課税標準の基礎となるべき事実を仮装したものではなく、他にその事実を認めるに足りる証拠資料もないことから、重加算税を賦課することは相当でない。
 したがって、本件は、過少申告加算税の賦課要件は満たしているが、重加算税を賦課することは相当でないと認められるから、原処分の重加算税の賦課決定処分のうち、過少申告加算税に相当する金額を超える部分の金額については、取り消すのが相当である。

(3) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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