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(平6.6.27、裁決事例集No.47 239頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、一般土木建築工事業を営む同族会社であるが、平成3年1月1日から平成3年12月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)について、次表の「確定申告」欄のとおり記載した青色の法人税の確定申告書を、平成4年2月21日にA税務署長に対して提出した。
 その後、原処分庁は、請求人の法人税の調査に着手したが、請求人は、当該調査が終了する前に、次表の「更正の請求1」欄に記載のとおり、平成4年11月5日に本件事業年度に係る法人税の更正の請求(以下「当初の更正の請求」という。)をした。
 原処分庁は、当該調査に基づき、次表の「更正処分等」欄に記載のとおり、平成4年12月25日付で本件事業年度に係る確定申告について、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
 請求人は、平成5年1月25日に次表の「更正の請求2」欄に記載のとおり、本件事業年度に係る更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をするとともに、同月27日に平成4年11月5日付の当初の更正の請求を取り下げた。
 原処分庁は、本件更正の請求に対して、平成5年2月19日付でその更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。

(単位:円)
区分
項目
確定申告 更正の請求1 更正処分等 更正の請求2
所得金額 11,675,364 3,872,790 17,985,096 4,026,000
納付すべき税額 2,963,200 429,200 5,329,500 472,400
過少申告加算税の額 - - 236,000 -

 請求人は、この処分を不服として、平成5年4月16日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 本件通知処分は、次のとおり違法な処分であるから、その全部が取り消されるべきである。
イ 請求人は、請求人の請負工事に係る各工事現場から排出された残土等(産業廃棄物の混在する廃棄物をいい、以下「本件残土等」という。)を、請求人が仮置場としている請求人所有のP町○○1080番地外5筆の総面積3,150平方メートルの土地(以下「本件土地」という。)に搬入し、本件事業年度に本件土地に搬入した本件残土等につき、本件土地から後記ロの(イ)のAの(B)の処理施設に搬送して処理するために要する費用(以下「本件残土処理費用」という。)を見積もり、その見積額を本件事業年度の完成工事原価の額として損金の額に算入した本件更正の請求をした。
 ところが、原処分庁は、請求人が本件土地に本件残土等を搬入したことによって、本件残土等の処理はいったん完了したものと認められるから、本件残土処理費用は、1完成工事原価とは認められないこと、2事後的費用であること、3本件事業年度にその債務が確定していないことから、本件残土処理費用の見積額は、本件事業年度の損金の額に算入できないとして本件通知処分をした。
ロ しかしながら、本件残土処理費用は、次のとおり完成工事原価に該当するから、本件更正の請求は認められるべきである。
(イ) 本件残土処理費用の原価性について
A 本件残土処理費用は、次の理由により法人税法第22条((各事業年度の所得の金額の計算))第3項第1号に規定する「当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価」に該当する。
(A) 各工事現場から排出された土木建築工事に係る残土等(以下「残土等」という。)は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃棄物に関する法律」という。)及び「R県産業廃棄物適正処理指導要綱」(以下「R県指導要綱」といい、「廃棄物に関する法律」と併せて「環境規制法規」という。)の規定に従って、適正に処理しなければならない旨義務付けられている。
(B) 本件土地に搬入した本件残土等は、上記(A)の環境規制法規に従ってその分別をしたうえ、必ず産業廃棄物処理施設(以下「処理施設」という。)に搬送しなければならないことから、本件土地に搬入した本件残土等は、処理施設に搬送して処理することにより、その処理は完了するものである。
(C) 本件土地は、本件残土等が排出される各工事現場から本件残土等の処理が完了する処理施設に至るまでの線上における一現場に過ぎないものであるから、本件土地から処理施設に至るまでの本件残土処理費用は、土木建築工事に係る完成工事原価に該当する。
(D) 決算に際しては、法人税基本通達2ー2ー1((売上原価等が確定していない場合の見積り))によって、完成工事高の計上時点で収益に対応する本件残土処理費用の見積額は、損金の額に算入すべきものであり、このことは費用収益対応の原則にも合致するものである。
B 本件事業年度末において、本件土地に搬入した本件残土等の処理は完了しておらず、請求人は、法人税基本通達2ー2ー1の定めにより、別表1のとおり適正に本件残土処理費用の額を見積もっているのであるから、当該見積額は、本件事業年度の損金の額に算入することができる。
(ロ) 事後的費用について
 事後的費用とは、将来において経費として支出することが予定できるものではなく、かつ、年間にして数十万円程度の微々たる金額がこれに該当する。
 しかしながら、本件残土等は、必ず処理施設に搬入しなければならないことから、本件残土処理費用は必然的に発生するものであり、かつ、請求人が、本件残土処理費用の額を適正に見積もると、別表1のとおり13,962,029円と多額なものであるから、事後的費用には該当しない。
(ハ) 債務の確定について
 本件残土処理費用は、前記(イ)のAのとおり法人税法第22条第3項第1号に規定する原価に該当するものであり、本件事業年度の収益に係る債務として確定しており、かつ、法人税基本通達2ー2ー1の定めに従って、請求人は、本件残土処理費用について、適正にその原価の額を見積もっている。

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(2) 原処分庁の主張

 本件通知処分は、次のとおり適法である。
イ 本件残土処理費用の原価性について
(イ) 建設工事の場合、原価の範囲は、その工事に直接要した全ての費用であり、これを残土等の関連費用でみれば、残土等を発生させる作業及びこれを当該現場から搬出する作業に係る費用が原価であり、その後に発生する残土等の処理に要する費用は、原価に該当しない費用である。
(ロ) 請求人が本件土地に本件残土等を搬入した段階で、本件残土等の処理行為は次の理由からいったん完了したものと判断されることから、その後に発生する請求人主張の本件残土処理費用は、完成工事原価に該当しない。
A 請求人は、本件残土等には土砂や石等の請求人の事業に利用可能なものが混在していることから、本件土地で分別して事業に利用可能なものの取得をすること及びそれにより処理業者に委託する本件残土等の量も減少して処理委託料を節約することを目的に本件土地を購入したこと。
B 本件土地における本件残土等の分別と処理施設への搬送等は、請求人の事業に利用可能なものの取得及びその後の本件残土等の処理委託料を節約するものであること。
C 上記A及びBより、本件土地における本件残土等の分別と処理施設への搬送等の行為は、目的物の建設のために排出された本件残土等の処理行為とは根本的に異なるものであることから、本件土地が、各工事現場から処理施設に至るまでの線上における一現場に過ぎないとは到底いえず、本件残土等の処理は、本件土地に本件残土等を搬入することで、いったん完了するものであること。
(ハ) したがって、請求人主張の本件残土処理費用は、請求人の事業に利用可能なものの取得及び本件残土等の処理委託料を節約するためのものであり、収益に対応する費用の性格は、何ら有していない。
ロ 事後的費用について
(イ) 工事に関連して支出される費用について、それが原価になるかどうかは、上記イの(イ)のとおり工事に直接要した費用であるか否かによって判断される。
 事後的費用は、この観点から原価とは区別されるべきもので、金額の多寡、予見性の有無等が原価となるか否かの判断の要素となるものではない。
(ロ) ところで、本件残土等を本件土地まで搬入する作業に係る費用は、原価に該当する費用であるが、請求人は、この費用については、既に原価の額として損金の額に算入しているところ、本件残土処理費用は、請求人が本件残土等を本件土地まで搬入を完了した後の分別及び処理業者への処理委託に係るものであり、かつ、請求人の事業に利用可能なものの取得及び本件残土等の処理委託料の節約に係るものであるから、これは事後的費用に該当し、その見積計上は認められない。
(ハ) 法人税法上原価に該当しない事後的費用についても、企業会計上、将来において特定の費用又は損失の発生の可能性が高く、その支出の原因となる事実がその事業年度において既に存在している場合には、引当金として計上され、損金の額に算入される場合がある。
 法人税法上損金の額に算入される引当金は、貸倒引当金、返品調整引当金、賞与引当金、退職給与引当金、特別修繕引当金、製品保証等引当金に限定されており、本件残土処理費用の見積額は、以上の引当金に該当しないことから、法人税法上損金の額に算入することは認められない。
ハ 債務の確定について
(イ) 本件残土処理費用は、上記ロのとおり事後的費用であるから、本件残土処理費用が、本件事業年度の損金の額に算入できるか否かは、債務確定基準によるべきである。
(ロ) 本件残土処理費用が、本件事業年度の損金の額に算入されるための要件である「具体的な給付の原因となる事実」、すなわち本件残土等の処理が本件事業年度においてなされていない以上、その債務は確定していない。
 また、環境規制法規に基づく本件残土等の撤去義務があるとしても、それは社会的義務があるにとどまり、当該撤去義務があることをもって本件残土処理費用が、税務上損金の額に算入されるための債務の確定があるとはいえない。
(ハ) したがって、請求人主張の本件残土処理費用の見積額は、それが適正であるか否かを問わず、本件事業年度の損金の額に算入することは認められない。

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3 判断

(1) 本件審査請求の争点は、請求人が主張する本件残土処理費用の見積額が、本件事業年度の損金の額に算入することができるか否かにあるので、以下審理する。

イ 原処分関係資料及び当審判所の調査したところによれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人が本件残土等を搬入する土地は、1本件土地、2請求人所有のP町B271番外6筆の総面積3,730平方メートルの場所(以下「B土地」といい、「本件土地」と併せて「両土地」という。)の2ヶ所であること。
(ロ) 昭和64年1月1日から平成元年12月31日までの事業年度(以下「平成元年12月期」という。)、平成2年1月1日から平成2年12月31日までの事業年度(以下「平成2年12月期」という。)、本件事業年度及び平成4年1月1日から平成4年12月31日までの事業年度(以下「平成4年12月期」という。)において、各工事現場より排出され、両土地に搬入された本件残土等の搬入量及び累積搬入量の状況は、次表のとおりであること。

(単位:立方メートル
事業年度 平成元年12月期 平成2年12月期 本件事業年度 平成4年12月期
本件残土等搬入量 2,931.55 2,303.00 3,594.00 4,892.10
累積搬入量 2,931.55 5,234.55 8,828.55 13,720.55

(ハ) 本件残土等の処理施設への搬送量は、別表2の「残土搬送量」欄に記載のとおり、本件事業年度がコンクリート廃材48立方メートル、平成4年12月期が木くず24立方メートル、残土42立方メートル及びコンクリート他318立方メートルであること。
(ニ) 本件残土等は、平成元年12月期及び平成2年12月期の両事業年度においては、処理施設に搬送されていないこと。
(ホ) 請求人が本件残土等の処理を委託した業者は、C株式会社(以下「C社」という。)及び有限会社D(以下「D社」といい、「C社」と併せて「処理委託業者」という。)の2社であること。
(ヘ) C社の残土等の処理委託単価は、平成3年4月1日以降別表3のとおりであること。
(ト) 当審判所が、平成5年8月24日に本件土地を実地に調査確認したところによれば、本件土地の本件残土等は、そのほとんどが土砂、石及びコンクリート廃材であり、ガラスくず、金属くず、廃プラスチック及びゴムくず等は確認できなかったこと。
(チ) 原処分の調査担当者が、平成4年6月24日に本件土地を実地に調査確認したところによれば、本件残土等の状況は、上記(ト)の状況とほとんど変わらなかったこと。
(リ) 本件事業年度及び平成4年12月期の両事業年度において搬送した本件残土等に係る11トン車1台当たりの処理委託単価は、別表2の「処理委託単価」欄に記載のとおり、コンクリート廃材に係る8,000円が最高単価となっていること。
ロ 請求人の取締役であるE(以下「E」という。)は、当審判所の質問に対して、次のとおり答述している。
(イ) 平成元年12月期及び平成2年12月期の両事業年度において、両土地に本件残土等をそれぞれどれだけ搬入したかは不明であること。
(ロ) B土地に搬入した本件残土等は、処理施設に搬送することなく捨て放しの状態であること。
(ハ) 本件残土等は、本件事業年度以降は本件土地だけに搬入していること。
(ニ) 本件土地は、本件残土等を搬入し、分別して処理施設に搬送する場所、つまり、本件残土等を仮に置いておくための仮置場と認識していること。
(ホ) C社の処理施設は、平成3年ころにより稼働していたが、C社に本件残土等を搬送し始めた平成4年3月までは、本件土地に若干の空き地があったことから、それまでは本件土地に本件残土等を放置した状態であったこと。
 また、本件残土等のごく一部は、平成3年11月から12月にかけて、D社に搬送して処理していたこと。
(ヘ) 本件土地に搬入した本件残土等のうち、土砂及び石等の請求人の事業に利用できるものについては、処理施設に搬送することなく、必要な都度、請求人の事業に使用しており、それ以外の事業に利用できない残土等は、環境規制法規の規定に従って各種類の廃棄物に分別したうえ、処理施設に搬送していること。
(ト) 本件残土等を分別する理由の一つは、廃棄物の種類により処理施設における処理委託単価が異なっていることから、本件残土等を各種廃棄物が混在した状態で処理施設に搬送すると、当該残土等の処理委託料は、その混在した廃棄物のうち、処理委託単価が一番高額な廃棄物の当該単価に基づいて決められることから、できるだけ処理委託料を低く押さえるためであること。
(チ) 11トン車1台当りの本件残土等の積載量は、単価表では8立方メートルとなっているが、実際の積載量は6立方メートルであること。
ハ 本件土地の状況等について、前記イ及びロの事実を総合すると、次のとおり判断することができる。
(イ) 1前記イの(リ)とEの答述口の(ト)を併せて考えると、請求人は、平成4年12月期までコンクリート廃材よりも処理委託単価の高額なガラスくず、廃プラスチック等の廃棄物の処理を処理委託業者に委託し処理したとは認められないこと、2前記イの(ト)及び(チ)の当審判所並びに原処分の調査担当者の実地確認の結果からみると、それぞれの時点では本件残土等は、その大部分が土砂、石及びコンクリート廃材によって構成されていると認められ、このことから判断すると、本件残土等は、その大部分が11トン車1台当りの残土等処理委託単価が8,000円以下の土砂、石及びコンクリート等によって構成されていると認められる。
(ロ) 平成元年12月期、平成2年12月期及び本件事業年度の間に両土地に搬入されたと認められる8,828,55立方メートルの本件残土等のうち、請求人が同期間において処理施設に搬送した本件残土等は、当該搬入量の1パーセントにも満たないコンクリート廃材48立方メートルだけであり、本件残土等の大部分を構成している土砂及び石等は、処理施設に全く搬送されていないことが認められる。
 なお、平成4年12月期においても、処理施設に搬送された本件残土等は、コンクリート廃材等384立方メートルだけであることが認められる。
(ハ) 上記(イ)及び(ロ)とロの(ヘ)のEの答述とを併せて考えると、本件土地に搬入された本件残土等のうち、その大部分を構成する土砂及び石等は、請求人の事業に利用されており、その余の請求人の事業に利用できないコンクリート廃材等が処理施設に搬送されているものと認められる。
(ニ) 以上のことから、本件土地は、本件残土等を分別して土砂及び石等の請求人の事業に利用できるものを取得するための場所として使用されるとともに、分別によりコンクリート廃材等の請求人の事業には利用できないものを、処理施設に搬送するための場所として使用されているものと判断できるものの前記(ロ)のとおり、本件土地から処理施設に搬送されたコンクリート廃材等は、本件残土等の搬入量に比較して極めて少量なことから、本件土地は、残土及び石等の請求人の事業に利用できるものを取得するための場所として主に使用されていると判断するのが相当である。
 そうすると、本件土地は、請求人が称する仮置場、つまり、本件残土等を搬入し、分別して処理施設に搬送するまで本件残土等を仮に置いておく場所としての性格を有するものとは認められない。
 ところで、請求人は、請求人には環境規制法規の規定により、本件土地に搬入した本件残土等は廃棄物の種類別に分別したうえ、必ず処理施設に搬送しなければならない義務がある旨主張するが、上記(ニ)のとおり、請求人は、本件土地を請求人の事業に利用できる土砂及び石等を取得する場所として使用し、かつ、本件残土等の処理施設への搬送状況も前記(ロ)のとおり、コンクリート廃材等の少量な搬送であることから、請求人のこの点に関する主張は、採用することができない。
ニ ところで、法人税法第22条第3項では、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。」と規定し、更に同項第1号で「当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額」と規定していて、当該事業年度の収益に対応する売上原価、完成工事原価等の原価の額は、これをその事業年度の損金の額に算入すべき金額であることを明瞭に規定している。
 ここでいう原価の額とは、発生主義により認識されるが、更に費用収益対応の原則を適用して当期の損金か否かの決定を行うこととなる。
 すなわち、売上原価等の額について、既にそれに対応する収益の計上がある限りは、売上原価等の額が確定していなくとも、費用収益の対応の見地からその見積計上を認めることが必要であると解される。
 そこで、これを土木建築工事業における廃棄物の処理に係る費用についてみると、各工事現場より排出された廃棄物を当該工事現場から搬出し、廃棄物処理業者に直接その処理を委託した場合、これら一連の廃棄物の処理に係る費用は、収益に対応する原価の性格を有していることは明らかであり、当該工事に係る収益の計上がある限りは、当該廃棄物の処理に係る費用も原価の額として損金の額に算入すべきものであり、仮に当該事業年度においてその額が確定していなくとも、費用収益対応の見地から、その見積額が適正なものである限り、その計上をすることができると解される。
 したがって、仮に、各工事現場より排出された廃棄物が最終的な処理をするに至るまでに、その位置を何度か移動したとしても、当該廃棄物が当該事業年度の収益に対応する原価としての性格を有する限りは、当該廃棄物の最終的な処理をするに至るまでの費用は、原価として損金の額に算入すべきものであり、当該事業年度においてその額が確定していなくとも、その処理費用の見積額が適正なものであれば、当該費用は原価として損金の額に算入できるものと解される。
 そして、これが原価としての性格を有するか否かは、その費用に係る工事の内容及びその費用の性質等を勘案して、合理的に判断すべきものと解される。
ホ そこで、上記ニに照らして、本件残土処理費用を検討すると、次のとおりである。
(イ) 前記ハのとおり、本件土地は、請求人が称する仮置場、つまり、本件残土等を搬入し、分別して処理施設に搬送するまで本件残土等を仮に置いておく場所としての性格を有するものではないことから、請求人の請負工事に伴い発生する本件残土等の処理は、本件残土等が、本件土地に搬入されたことにより、いったん完了したものと認めるのが相当である。
(ロ) したがって、本件土地に搬入された本件残土等は、それが排出された各工事現場から本件土地まで、単にその場所を移動したに過ぎないものとは認められず、また、本件土地を、各工事現場から処理施設に至るまでの線上における一現場に過ぎないものという請求人の主張も採用することができない。
(ハ) 以上のとおり、本件事業年度において本件土地に搬入された本件残土等は、その処理が既に完了していることと認められるから、仮に、その後本件残土等に係るどのような費用が発生しようとも、その費用は、本件事業年度の収益に対応する原価としての性格は、もはや有しているものとは認められない。
 そうすると、請求人が、本件残土等を本件土地から処理施設へ搬送するために要する費用であると主張する本件残土処理費用は、法人税法第22条第3項第1号に規定する原価に該当しないことになるから、その見積額については、その余の部分について判断するまでもなく、本件事業年度の損金の額に算入することはできない。
(ヘ) なお、原処分庁は、「建設工事の場合、原価の範囲は、その工事に直接要した全ての費用であり、これを残土等の関連費用でみれば、残土等を発生させる作業及びこれを当該現場から搬出する作業に係る費用が原価であり、その後に発生する残土等の処理に要する費用は、原価に該当しない費用である。」と主張するが、一般的には、残土等を各工事現場より他の土地に搬入した段階においては、当該残土等は単にその場所を移動したというにすぎず、当該事業年度の収益に対応する原価としての性格が消え去ったものとは認められないから、この点に関する原処分庁の主張は採用することができない。
 以上の結果、本件残土処理費用の見積額を本件事業年度の損金の額に算入することはできないとした原処分は、適法である。

(2) 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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