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(平6.4.15、裁決事例集No.47 303頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 審査請求人(以下「請求人」という。)は、建築設計監理業を営む同族会社であるが、平成元年10月1日から平成2年9月30日まで及び平成2年10月1日から平成3年9月30日までの各事業年度(以下順に「平成2年9月期」、「平成3年9月期」といい、これらを併せて「各事業年度」という。)の青色の法人税の確定申告書に、所得金額及び納付すべき税額を次表の「確定申告」欄のとおり記載して、それぞれの法定申告期限までに申告した。

 その後、請求人は、平成4年2月24日、次表の「修正申告」欄のとおり記載した平成3年9月期の青色の修正申告書を原処分庁に提出した。

(単位:円)
区分
事業年度
項目
平成2年9月期 平成3年9月期
確定申告 所得金額 0 658,379
納付すべき税額 0 131,800
修正申告 所得金額 1,759,379
納付すべき税額 440,000

(2) 原処分庁は、平成4年5月29日付で請求人に対し、次表のとおり各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。

(単位:円)
区分
事業年度
項目
平成2年9月期 平成3年9月期
更正 所得金額 3,700,721 7,636,658
納付すべき税額 1,018,200 2,110,900
賦課決定 過少申告加算税 131,000 240,500

 請求人は、平成4年6月11日、原処分を不服として異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年10月8日付でいずれも棄却の異議決定をした。
 請求人は、平成4年11月4日、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして本件審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正処分について
 請求人は、同社の代表取締役F及び同G(以下順に「F」、「G」といい、両名を併せて「Fら」という。)に対し、各事業年度とも役員報酬に関する取決文書(以下「本件取決書」という。)に基づいた金額を毎月支給し、役員報酬として損金経理した。
 これに対し、原処分庁は、当該役員報酬のうち各月の未払となった金額(以下「各月未払金」という。)について、1平成2年9月期の期末現在における残高380万円を、2平成3年9月期の期末現在における残高900万円のうち、平成3年1月分から同年6月分までの各月未払金の合計額600万円(以下、平成2年9月期分の380万円と併せて「本件未払金」という。)をそれぞれ役員賞与と認定し、各事業年度の損金の額に算入できないとして更正処分をした。
 しかしながら、本件未払金は、次の理由により定時定額に支給された役員報酬に該当するので、損金の額に算入すべきである。
(イ) 請求人は、毎月Fらに役員報酬を支給し、資金繰りに応じてその都度、総勘定元帳の給料手当勘定及び未払金勘定に支給金額及び各月未払金をそれぞれ正しく記帳している。また、請求人は、毎月Fらに手渡す給料支払明細書にも、未払金給料の項目に各月未払金を記載している。
(ロ) 請求人は、本件取決書に基づいて、Fらに対する役員報酬の月額を定めている。役員報酬は、社会通念上、役員会等の正式な法的手続によらず、一部の役員間の私文書による取決めに基づくものであっても、法人税法上の役員報酬となる。
(ハ) 原処分庁は、請求人が各月未払金に係る源泉所得税や社会保険料を毎月計算していない旨主張しているが、請求人は、各月未払金に係る源泉所得税を毎月計算しなくとも現実の支払の時にその計算をして徴収し、各月未払金を含めて年末調整を行っている。
 また、報酬と賞与の違いを、源泉所得税額の算出方法により決定すべきではなく、更に、社会保険料を徴収すべきか否かは、国税とは関係のないことである。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、各事業年度に係る各更正処分の取消しに伴い、各事業年度の過少申告加算税の各賦課決定処分は取り消されるべきである。

(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 更正処分について
 本件未払金は、次の理由により、臨時的な給与であるから法人税法第35条((役員賞与等の損金不算入))第4項に規定する役員賞与に該当し、同条第1項の規定により損金の額に算入することはできない。
(イ) 請求人は、本件未払金のうち、1平成2年9月期の380万円については、同期末に未払給与として一括損金経理し、2平成3年9月期の600万円については、平成3年7月に同年1月から6月までの各月にわたる未払給与として一括損金経理したものであり、いずれもこの損金経理した時にFらに臨時的な給与の支給があったものとすべきである。
 更に、請求人は、一括損金経理したときからそ及して、本件未払金を各月未払金として総勘定元帳に記載していたのであるから、実情に沿った記帳がされたとはいえない。
(ロ) 請求人は、原処分調査時に本件取決書を提示することなく、また、商法第269条((報酬の決定))において、取締役が受けるべき報酬の額が定款に定められていない場合は、株主総会の決議をもって定める旨規定されているにもかかわらず、請求人は、その規定に従わずFらだけで役員報酬を取り決めたものである。
(ハ) 請求人が主張するように、各月未払金が毎月の給与支給日に確定していたのであれば、徴収すべき源泉所得税は、各月未払金を含めた給与の総額に対する税額を給与の支払額にあん分して計算すべきであり、また、社会保険料についても、各月未払金を含めた給与の総額で算出すべきであるのに、請求人はこれによっていない。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、各事業年度に係る各更正処分は適法であり、また、国税通則法第65条((過少申告加算税))第4項に規定する正当な理由がある場合に該当しないので、同条第1項及び第2項の規定に基づく各事業年度の過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。

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3 判断

(1) 更正処分について

 本件審査請求の争点は、本件未払金が役員報酬、役員賞与のいずれに該当するかにあるので以下検討する。
イ 請求人及び原処分庁提出の各資料並びに当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人の取締役、株主、本件取決書及び給料支給日について
A Fらは、請求人の代表取締役であること。
 なお、取締役は、Fらを含め5名であること。
B 請求人の各事業年度末の発行済株式数は、いずれも10,000株であり、そのうちFは400株、Gは6,600株を保有していること。
C 本件取決書の体裁、内容は、以下のとおりであること。
 本件取決書は、請求人の社名入りの会社用せんにボールペンで記載された3葉であって、それぞれ「役員報酬に関する取り決め」と題し、平成元年10月23日、平成2年10月22日、平成3年1月22日付で、順次当月以降のFらの役員報酬を下記Dのごとくにするとして、F、Gの氏名の次に金額が記載され、その後に各人の印鑑が押なつされているものであり、作成者名の記載はない。
 なお、請求人は、原処分調査時に調査担当者の「正規の諸手続に従った書類はありますか。」との求めに対して「それはありません。」と申述した旨答述していること。
D Fらは、両名だけで、請求人が各事業年度内にFらに支給する役員報酬という名目での金額を決定し、本件取決書に以下のとおり記載されていること。
(A) 平成元年10月23日付で、Fについては月額85万円、Gについては月額60万円。
(B) 平成2年10月22日付で、Fについては月額100万円、Gについては月額85万円。
(C) 平成3年1月22日付で、Fについては月額150万円、Gについては月額135万円。
 なお、役員報酬の額について、請求人の定款にはその定めがなく、請求人は、この点につき株主総会の決議をなしたこともない旨答述していること。
E 請求人の給料支給日は毎月25日であり、賞与の支給月は7月及び12月であること。
 なお、Fらに対する賞与の額等その支給に関する定めはないこと。
(ロ) 総勘定元帳の「給料手当」及び「未払金」勘定等について
A 請求人の各事業年度の総勘定元帳において、Fらに対する給料手当の支給金額(以下「支給金額」という。)、実際の支払金額(以下「支払金額」という。)、各月未払金、未払金残高(以下「未払金残高」という。)及びそれらの計上年月日は、別表1及び2のとおりであり、請求人は、各事業年度において支給金額を損金の額に算入したこと。
B 支払金額(ただし、未払金残高の支払は除く。)及び各月未払金は、各事業年度において、一定の金額であること。
C 本件未払金は、平成2年9月期末の未払金残高380万円と平成3年6月末の未払金残高600万円との合計980万円であること。
D 各月未払金は、請求人の現金及び当座預金等の資金事情に関係なく毎月未払金として定額計上されているが、請求人には、それを給料支給日に支払えないとする特段の事情も存在しないこと。
E 請求人は、未払金残高について別表1及び2のとおり、平成元年12月11日(賞与支給日)に110万円、平成2年7月13日(賞与支給日)に110万円、同年11月8日に380万円を支払ったこと。
 更に、請求人は、平成3年9月期の未払金残高900万円とその翌事業年度に発生した各月未払金について、平成3年12月11日に200万円、平成4年4月15日に320万円、同年5月12日に500万円を支払ったこと。
(ハ) 給料支払明細書、振替伝票の記載内容及び経理状況等について
A 請求人は、平成2年9月期の各月未払金を給料支払明細書に記載するに当たって、その「支払額」欄の不動文字である「基本給」欄とは区別して「仮払金」とボールペンで記載し、「控除額」欄に「仮払金」と同額を「未払金」と同じくボールペンで記載しているが、当該「仮払金」相当額は、総勘定元帳において、仮払金勘定ではなく給料手当勘定に支給総額をして記帳されていること。
B 請求人は、取引の都度、社内で作成した振替伝票に基づき、税理士に委嘱して電算機に入力し総勘定元帳を作成するという経理手順を採用しているが、本件未払金に限り、次のとおり、平成2年9月期の380万円の振替伝票を同期末に、平成3年9月期の各100万円の振替伝票をすべて同年7月に作成したこと。

(単位:円)
区分 借方 貸方
科目 金額 科目 金額
平成2年9月期 給料手当 3,800,000 未払金 3,800,000
平成3年9月期 給料手当



1,000,000
1,000,000
1,000,000
1,000,000
1,000,000
1,000,000
未払金



1,000,000
1,000,000
1,000,000
1,000,000
1,000,000
1,000,000

 なお、請求人は、振替伝票を作成していなくても、各月未払金の金額を税理士事務所に電話連絡し、直接総勘定元帳に記帳してもらっている旨答述していること。
C 請求人が賞与支給日である平成元年12月11日及び平成2年7月13日にFらに支払った各110万円は、総勘定元帳には未払金の支払と記帳されているが、振替伝票には給料手当の支払と記載されていること。
D 平成元年12月11日のFに対する未払金の支払60万円は、同人に対する未払金残高50万円を超えて支払われていること。
(ニ) 各月未払金に対する源泉所得税について
 請求人は、Fらに対する各月の所得税の源泉徴収税額を算出するに際し、各月未払金を含めず支払金額だけで計算していること。
ロ ところで、法人税法第35条第1項によれば、「内国法人がその役員に対して支給する賞与の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」と規定されているため、役員賞与は、役員報酬と明確に区分されなければならない。
 一般に、役員報酬は、役員の通常の業務執行の対価として経費性を有するのに対し、役員賞与は、利益獲得の功労に対する報酬として利益処分の性質を有するものであり、役員報酬と役員賞与とはその性質を異にするものである。しかし、現実に役員に支給される給与が、そのいずれに該当するかを判別するのは容易でなく、また、利益処分として支給すべきものを容易に報酬化することによって、税負担の軽減を図ることが考えられるので、法人税法は、税務執行の便宜と租税負担の公平を図る見地から専ら「臨時的な給与」であるか否かという給与の支給形態ないし外形を基準として報酬と賞与を区別している。
 すなわち、法人税法第34条((過大な役員報酬の損金不算入))第2項の規定によれば、役員報酬とは、役員に対する給与のうち賞与及び退職給与以外のものをいうとされており、一方、同法第35条第4項の規定によれば、役員賞与とは、役員に対する臨時的な給与のうち、他に定期の給与を受けていない者に対し継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるもの及び退職給与以外のものをいうとされていることから、他に定期の給与を受けている者に対する「臨時的な給与」は、役員報酬ではなく役員賞与に該当する。
 そして、この「臨時的な給与」については、法人税法第35条第4項が、例えば非常勤役員のように、「他に定期の給与を受けていない者」に対して支給した「毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給される給与」を「臨時的な給与」から除外しているのであるから、他に定期の給与を受けている者に対して支給した「毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給される給与」については、「臨時的な給与」に含まれると解すべきである。
 更に、役員に支給される給与が臨時的な給与に当たるか否かは、単に臨時的な給与として支給の時期及び金額があらかじめ定められている場合のみならず、その定めがない場合であっても、支給の時期、回数及び趣旨等を他の役員及び使用人など全体の給与の支給状況との関連において検討し、当該給与が経常性のない一時的なものと認められるときは「臨時的な給与」に当たるものと解すべきである。
ハ そこで、争いのある本件未払金について、前記イの認定事実を上記ロに照らして、以下検討する。
(イ) 請求人は、本件未払金が役員報酬である証拠として、本件取決書、給料支払明細書に記載された「未払金」及び各月未払金に係る総勘定元帳の記帳内容を提出するので、まずこの点について検討する。
A 本件取決書について
 役員に対して支給した給与が、法人税法上、報酬となるか賞与となるかは、前記ロのとおり、その定めの有無にかかわらず、定期の給与であるか臨時的な給与であるかにより判定すべきものである。
 ところで、商法第269条によれば、取締役の報酬は、定款で定めるか株主総会の決議によって定めることとなっている。株主総会の決議による場合、一般的に、株主総会で取締役の報酬総額だけを決め、取締役会において、取締役各人に対する具体的な報酬額の配分を決議するか、代表取締役に一任する決議を行う。
 請求人には取締役がFらを含め5名いるが、本件取決書は、請求人の発行済株式の大半を所有し、かつ、代表権を有するFらが、請求人が認めるとおり、両名だけで、同人らのみの役員報酬の額を決定(改定)したところを記載したものであり、その内容につき株主総会、取締役会等の決議を経たものではない。
 また、請求人が主張するように、正式な法的手続によらず一部の役員間の私文書による取決めであっても、法人税法上の役員報酬になる旨認識しているのであれば、原処分調査時に調査担当者の求めに応じ、法人税法上報酬となるか賞与となるかの争いとなっているFらに対する役員報酬額の証拠として、正規の諸手続に従った書類でなくとも特別の事情がない以上、本件取決書を容易に提示できたはずである。
 にもかかわらず、請求人は、本件取決書を調査担当者に提示せず、異議申立ての段階に至って提出したものであるが、このことは、調査当時には作成されておらず、その後に及んで作成したのではないかと推認されても致し方なく、更に、本件取決書の内容が取締役会等の決議を経たものでないことをも併せ考えると、本件取決書は、請求人の主張を裏付ける証拠としての価値が極めて低い、といわざるを得ない。
B 給料支払明細書の「未払金」の記載について
 請求人は、毎月、未払給料をFらの給料支払明細書に記載し、その「未払金」が役員報酬額の証拠であると主張するが、「未払金」相当額は、前記イの(ハ)のAのとおり、「基本給」に含めることなく「仮払金」として記載されている。
 しかし、各月未払金が役員報酬として毎月支給することが確定していたものであるなら、請求人が、平成元年10月分から平成2年9月分までの一年間にもわたって給料支払明細書にわざわざ「仮払金」として記載していたことについての合理的理由はなく、その不動文字である「基本給」欄に「仮払金」を含めた役員報酬改定後の金額を記載すれば事足りたものである。
 このように、各月未払金が発生した平成元年10月分以降の給料支払明細書に記載された「未払金」と同額の「仮払金」としての処理は、不自然かつ、理由のないものであり、「未払金」の記載事実をもって、請求人の役員報酬額に関する主張を裏付ける証拠としては価値が低い、といわざるを得ない。
C 各月未払金に係る総勘定元帳の記帳内容について
 請求人は、前記イの(ハ)のBのとおり、本件未払金に限って振替伝票を後日作成したことを認めるものの、総勘定元帳では本件未払金としての一括計上ではなく各月未払金として毎月計上されている事実については、各月未払金の金額を税理士に電話連絡して直接総勘定元帳に記載してもらっている旨申述する。
 しかし、その申述内容が事実であるなら、請求人は、各月未払金及び未払金残高を認識していたはずであり、前記イの(ハ)のC及びDのように、振替伝票の記載内容と総勘定元帳の記帳内容との不一致及びFに対する未払金残高を超えてその支払がなされるという不合理はあり得ないはずである。
 このことから、各月未払金に係る総勘定元帳の記帳内容と請求人の申述内容は、相互に矛盾するものであり、また、給料手当に関する勘定科目のみ振替伝票に基づかず電話連絡により記帳されたこと自体不自然であることを併せ考えると、ともに請求人の主張を裏付ける証拠としては価値が低い、といわざるを得ない。
(ロ) 次に、前記イの認定事実から、請求人がFらに対して、毎月規則的に反復、継続して現実に支払った給与は、別表1及び2の「支払金額」欄(ただし、外書の金額は除く。)の金額であり、このような支給内容から判断すると、当該金額が定期の給与に該当し、役員報酬と認めるのが相当である。
 これに対して、各月未払金は、総勘定元帳では、役員報酬の一部未払金として記帳されているものの、その内容は、上記(イ)のCのとおり証拠として価値の乏しいものであり、また、総勘定元帳は、各取引内容を振替伝票に起票し、これに基づき作成されるのが通常の経理手順であるところ、振替伝票によれば、賞与支給日である平成元年12月11日及び平成2年7月13日に支払われた各110万円は、同日、給料手当勘定に損金経理されたものであり、本件未払金は、平成2年9月期末及び平成3年7月にそれぞれ同勘定科目に損金経理されたものである。
 更に、請求人には、支給金額の一部を、各事業年度のそれぞれにおいて定額未払金としなければならない資金上の特段の事情があったとは認められず、また、源泉所得税額も定期の給与のみを基礎として算出されている。
 以上のことから、各月未払金は、定期の給与といい難く、その実態は、平成2年9月期については、賞与の支給月及び同期末に、平成3年9月期については、平成3年1月分から6月分までのものは同年7月に、同年7月以降分は同月以降にそれぞれ支給の確定した臨時的な給与というべきである。
 そして、各月未払金の趣旨は、その支払状況から、各事業年度において賞与支給日などに支払われた、又は、平成3年9月期の翌事業年度において支払う臨時的な給与を帳簿上定期の給与とするため、役員報酬の一部未払金として経理処理されたものと認めるのが相当である。
 したがって、各月未払金が臨時的な給与に該当する以上、本件未払金も、平成2年9月期末及び平成3年6月末の未払金残高の合計額であるから、定期の給与ではなく臨時的な給与に該当する。
 なお、請求人は、源泉所得税額の算出方法により報酬と賞与とを区別すべきではない旨主張する。確かに、請求人が主張するように、その算出方法によりその区別が決定されるものではないが、支給総額が確定している給与を分割して支払うのであれば、徴収すべき税額は、確定している支給総額に対する税額を実際の支払額にあん分して算出すべきであるにもかかわらず、それがなされていないことは、請求人には、毎月の給与支給時に、各月未払金を役員報酬として支給したとの認識がなかったからといわざるを得ない。
ニ 以上のとおり、本件未払金は、社会保険料と国税との関係を論じるまでもなく、臨時的な給与として支給したものを形式的に定期の給与として経理処理したものであり、法人税法第35条第4項に規定する役員賞与と認めるのが相当である。
 そうすると、本件未払金は、法人税法第35条第1項の規定により役員賞与として各事業年度の損金の額に算入されず、したがって、各事業年度の更正処分は適法である。

(2) 過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、各事業年度の各更正処分は適法であり、かつ、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてされた各事業年度の過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

(3) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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