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(平6.12.12、裁決事例集No.48 246頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、婦人物ブラウス卸業を営む同族会社であるが、平成元年4月1日から平成2年3月31日までの事業年度(以下「平成2年3月期」という。)、平成2年4月1日から平成3年3月31日までの事業年度(以下「平成3年3月期」という。)及び平成3年4月1日から平成4年3月31日までの事業年度(以下「平成4年3月期」といい、これと平成2年3月期及び平成3年3月期を併せて「各事業年度」という。)の法人税の青色の確定申告書に次の表1のとおり、平成2年4月1日から平成3年3月31日までの課税期間(以下「平成3年3月課税期間」という。)及び平成3年4月1日から平成4年3月31日までの課税期間(以下「平成4年3月課税期間」といい、これと平成3年3月課税期間を併せて「各課税期間」という。)の消費税の確定申告書(簡易課税用)に次の表2のとおり記載して、それぞれ法定申告期限までに申告した。


表1 (単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
所得金額 △1,545,533 0 0
納付すべき税額 外△22,731
0
外△30,746
0
外△25,551
0

(注) 「所得金額」欄の△印は、欠損金額であることを、また、「納付すべき税額」欄の外書の△印は所得税額等の還付金の額に相当する税額であることを示す。


表2 (単位:円)
課税期間
項目
平成3年3月課税期間 平成4年3月課税期間
課税標準額 200,214,000 199,744,000
納付すべき税額 600,600 599,200

 原処分庁はこれに対し、平成4年9月29日付で1平成2年3月期以後の法人税の青色申告の承認の取消処分、2次の表3のとおり法人税の各事業年度の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分及び3法人臨時特別税の平成4年3月期の課税標準法人税額を18,855,000円、法人臨時特別税額を471,300円とする決定処分及び無申告加算税の額を70,500円とする賦課決定処分並びに4次の表4のとおり消費税の各課税期間の更正処分をした。


表3 (単位:円)
区分
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
更正処分 所得金額 42,713,178 57,139,852 60,307,415
納付すべき税額 16,166,600 20,643,400 21,833,600
賦課決定処分 過少申告加算税の額 2,402,000 3,075,500 3,252,500

表4 (単位:円)
課税期間
項目
平成3年3月課税期間 平成4年3月課税期間
課税標準額 219,943,000 219,619,000
納付すべき税額 659,800 658,800

 請求人は、これらの処分を不服として平成4年11月12日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、これに対し平成5年2月8日付でいずれも棄却の決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分のうち、平成2年3月期以後の法人税の青色申告の承認の取消処分を除いた処分に不服があるとして、平成5年3月8日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は次のとおり違法であるから、法人税の各事業年度の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに法人臨時特別税の平成4年3月期の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分についてはその一部の取消しを、また、消費税の各課税期間の更正処分についてはその全部の取消しを求める。
イ 法人税の更正処分等について
(イ) 所得金額
A 推計の合理性
 原処分庁は、請求人の各事業年度の売上金額を算定するに当たり、請求人の平成4年3月期の下半期(平成3年10月から平成4年3月までの期間をいい、以下「本件下半期」という。)の売上原価率(平均売上単価(売上金額を売上数量で除した金額をいう。以下同じ。)に対する平均仕入単価(仕入金額を仕入数量で除した金額をいう。以下同じ。)の割合をいう。以下同じ。)を適用し、当該売上原価率で各事業年度の売上原価の額を除して算定し、また、請求人の一般経費(役員報酬及び地代家賃以外の販売費及び一般管理費をいう。以下同じ。)の額を算定するに当たっては、その売上金額に同業者の平均一般経費率(売上金額に対する一般経費の割合の平均値をいう。以下同じ。)を適用してそれぞれ算定しているが、原処分庁の用いた売上原価率及び平均一般経費率は、以下のとおりいずれも合理性がない。
(A) 売上原価率
a 請求人の取り扱う婦人物ブラウスは、季節性が著しく、春物、夏物及び秋冬物という3つの商品ごとに販売期間が異なるところ、それぞれの商品は、ファッション性及び季節性を有するために、翌年度にその販売を持ち越すことができない。
 そのため、各商品について、原価にかかわりなく見切り販売又はバーゲンを行うことが常態化しており、その時期も異なっている。
b したがって、請求人の事業については、同一の事業年度においてもその時期いかんによって事業内容等に変動があるので、これに伴い売上原価率も変動するものであるから、売上原価率を基に請求人の各事業年度の売上金額を推計するならば、請求人の1事業年度分、すなわち、平成4年3月期の1年分(以下「本件主張期間」という。)の取引に係る平均仕入単価及び平均売上単価を基に売上原価率を算出し、これを基礎として算定すべきである。
c そうすると、請求人の平均仕入単価は次の表5のとおり5,165円、平均売上単価は次の表6のとおり8,100円であるから、売上原価率は前者を後者で除した0.6376となり、原処分庁が算定した売上原価率は過小である。


表5 (単位:枚、円)
仕入先
項目
(株)A (株)B 合計
仕入数量 1 18,864 4,470 23,334
返品数量 2 90 69 159
差引仕入数量(12 3 18,774 4,401 23,175
仕入金額 4 92,803,400 28,294,050 121,097,450
返品金額 5 903,600 477,500 1,381,100
差引仕入金額(45 6 91,899,800 27,816,550 119,716,350
平均仕入単価 6の合計)÷(3の合計)=5,165

(注)「仕入先」欄の(株)は、株式会社を示す。


表6 (単位:枚、円)
売上先
項目
(株)C (株)D (株)E 合計
売上数量 1 1,276 1,344 445 3,065
返品数量 2 484 159 2 645
差引売上数量(12 3 792 1,185 443 2,420
売上金額 4 12,632,950 9,535,480 4,048,220 26,216,650
返品金額 5 5,140,860 1,448,820 22,560 6,612,240
差引売上金額(45 6 7,492,090 8,086,660 4,025,660 19,604,410
平均売上単価 6の合計)÷(3の合計)=8,100

(注)「売上先」欄の(株)は、株式会社を示す。

(B) 平均一般経費率
 原処分庁の算定した平均一般経費率は、年々物価が上昇し、経費も増加するという世間の常識に逆行しており、刊行物等の資料の数値とも著しくかけ離れ、これを適用して算定した各事業年度の一般経費の額のうち、平成2年3月期の額は請求人の支払った給与手当の額にすら満たないものであり、原処分庁が採用した平均一般経費率に合理性がないことは明らかである。
B 売上金額
 上記Aの(A)のとおり、原処分庁の算定した売上原価率は過小であるから、請求人の主張する売上原価率0.6376を適用して算定すると、各事業年度の売上金額は、平成2年3月期157,382,956円、平成3年3月期194,138,056円及び平成4年3月期193,851,808円となり、原処分庁の認定した各事業年度の売上金額は過大である。
C 販売費及び一般管理費の額
(A) 役員報酬の額
 原処分庁認定額のとおりであり、争わない。
(B) 地代家賃の額
 原処分庁認定額のとおりであり、争わない。
(C) 一般経費の額
 請求人の各事業年度の一般経費の額は、取引実績に基づく金額(以下「取引実額」という。)により算定すべきであり、その額は、後記(D)の表のとおり、平成2年3月期39,709,171円、平成3年3月期39,281,535円及び平成4年3月期38,797,637円である。
(D) 販売費及び一般管理費の額
 以上の結果、請求人の各事業年度の販売費及び一般管理費の額は、次表のとおり、平成2年3月期49,369,171円、平成3年3月期48,941,535円及び平成4年3月期48,457,637円となる。

(単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
役員報酬の額 1 7,260,000 7,260,000 7,260,000
地代家賃の額 2 2,400,000 2,400,000 2,400,000
一般経費の額 3 39,709,171 39,281,535 38,797,637
内訳 給与手当の額 31,972,000 31,872,000 31,872,000
福利厚生費の額 192,000 192,000 192,000
旅費交通費の額 312,530 236,490 229,710
通信費の額 284,896 290,732 308,695
交際費の額 405,564 770,918 688,630
減価償却費の額 1,060,468 621,406 528,340
保険料の額 512,066 355,510 415,770
修繕費の額 327,571 206,827 320,434
水道光熱費の額 1,280,287 1,160,472 1,168,158
車両維持費の額 1,138,116 1,161,793 1,153,057
消耗品費の額 57,298 562,205 215,239
租税公課の額 1,162,800 955,634 1,067,008
荷造運賃の額 722,299 455,628 429,477
事務用品費の額 8,183 63,066 30,056
支払手数料の額 100,000 - 20,000
雑費の額 173,093 376,854 159,063
合計(123 49,369,171 48,941,535 48,457,637

D 営業外収益の額
 原処分庁認定額のとおりであり、争わない。
E 営業外費用の額
 原処分庁認定額のとおりであり、争わない。
F 繰越欠損金控除額
 原処分庁認定額のとおりであり、争わない。
G 所得金額
 以上の結果、請求人の各事業年度の所得金額は次表のとおりとなり、原処分庁は請求人の各事業年度の所得金額を過大に算定している。

(単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
売上金額 1 157,382,956 194,138,056 193,851,808
売上原価の額 2 100,347,373 123,782,425 123,599,913
販売費及び一般管理費の額 3 49,369,171 48,941,535 48,457,637
営業外収益の額 4 25,076 126,345 114,807
営業外費用の額 5 361,607 65,700 498,001
繰越欠損金当期控除額 6 677,884 - -
所得控除(123456 6,651,997 21,474,741 21,411,064

(ロ) 過少申告加算税の賦課決定処分
 以上のとおり、法人税の各事業年度の更正処分は違法であり、その一部を取り消すべきであるから、これに伴い、過少申告加算税の賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。
ロ 法人臨時特別税の決定処分等について
(イ) 課税標準法人税額及び法人臨時特別税額
 原処分庁は、前記イの(イ)のGのとおり、平成4年3月期の所得金額を過大に算定し、これを基礎として法人臨時特別税の基準法人税額を算定しているから、これに伴い課税標準法人税額及び法人臨時特別税額をいずれも過大に算定している。
(ロ) 無申告加算税の賦課決定処分
 以上のとおり、法人臨時特別税の平成4年3月期の決定処分は違法であり、その一部を取り消すべきであるから、これに伴い、無申告加算税の賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。
ハ 消費税の更正処分について
 原処分庁は、各課税期間の課税売上を過大に算定し、これを基礎として消費税の各課税期間の課税標準額を算定しているから、その課税標準額及び消費税額を過大に算定している。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次のとおり適法である。
イ 法人税の更正処分等について
(イ) 所得金額
A 推計の必要性
 法人税の更正処分に係る調査において、原処分庁の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)が請求人に対し再三にわたり所得金額の計算に必要な帳簿書類の提示及び調査への協力を求めたにもかかわらず、請求人は帳簿書類を一切提示しなかった。
 このような状況の下では請求人の所得金額を取引実額により算定することが不可能であったため、やむを得ず法人税法第131条((推計による更正又は決定))の規定に基づき、各事業年度の所得金額を推計したものである。
B 推計の合理性
 各事業年度の売上金額を請求人の本件下半期の売上原価率により推計することは、各事業年度において、請求人の事業内容及び事業規模等に特段の変動が認められないことに基づくものであり、また、各事業年度の一般経費の額を請求人と業種業態が類似する同規模程度の同業者(以下「類似同業者」という。)の平均一般経費率により推計することは、業態に類似性のある同業者においてはその一般経費率は通常同程度であるという経験則に基づくものであって、いずれも合理的なものである。
C 売上金額
 各事業年度の売上金額は、後記Dの売上原価の額を売上原価率で除して算定したもので、次表のとおりとなる。

(単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
売上原価の額 1 100,347,373 123,782,425 123,599,913
売上原価率 2 0.5464 0.5464 0.5464
売上金額(1÷2 183,651,853 226,541,773 226,207,747

 なお、売上原価率は、次の表7及び表8のとおり、原処分庁が請求人の売上先及び仕入先について調査した取引実額に基づいて、本件下半期の請求人の平均仕入単価と平均売上単価を算出し、前者を後者で除して算出した数値0.5464である。


表7 (単位:枚、円)
仕入先
項目
(株)A (株)B 合計
仕入数量 1 7,237 1,506 8,743
仕入金額 2 33,058,900 9,674,436 42,733,336
平均仕入単価 2の合計)÷(1の合計)=4,887

(注)「仕入先」欄の(株)は、株式会社を示す。


表8 (単位:枚、円)
売上先
項目
(株)C (株)D (株)E 合計
売上数量 1 401 514 118 1,033
売上金額 2 3,784,520 4,196,120 1,258,760 9,239,400
平均売上単価 2の合計)÷(1の合計)=8,944

(注)「売上先」欄の(株)は、株式会社を示す。


D 売上原価の額
 売上原価の額は、請求人の取引先等に対する調査に基づく仕入金額であり、その内容は次表のとおりである。
 なお、棚卸高は、請求人の事業内容、規模等からみて各事業年度とも著しい変動がないと認められるので期首及び期末とも同額として算定した。

(単位:円)
事業年度
仕入先
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
(株)A 76,643,778 97,097,379 95,641,577
(株)B 23,703,595 26,685,046 27,958,336
合計 100,347,373 123,782,425 123,599,913

(注)「仕入先」欄の(株)は、株式会社を示す。


E 販売費及び一般管理費の額
(A) 役員報酬の額
 各事業年度の役員報酬の額は、請求人の代表取締役Fに対するものであり、同人に係る源泉徴収票に記載されている支払金額に基づいて各事業年度とも7,260,000円と算定した。
(B) 地代家賃の額
 各事業年度の地代家賃の額は、請求人の確定申告額と同額であり、次表のとおり算定した。

(単位:円)
事業年度
支払先
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
F 600,000 600,000 600,000
G 600,000 600,000 600,000
H 600,000 600,000 600,000
I 600,000 600,000 600,000
合計 2,400,000 2,400,000 2,400,000

(C) 一般経費の額
 各事業年度の一般経費の額は、前記Cの売上金額に類似同業者の平均一般経費率を乗じて、次表のとおり算定した。

(単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
売上金額 1 183,651,853 226,541,773 226,207,747
平均一般経費率 2 0.1629 0.1590 0.1426
一般経費の額(1×2 29,916,887 36,020,141 32,257,225

(D) 販売費及び一般管理費の額
 以上の結果、各事業年度の販売費及び一般管理費の額は次表のとおりとなる。

(単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
役員報酬の額 7,260,000 7,260,000 7,260,000
地代家賃の額 2,400,000 2,400,000 2,400,000
一般経費の額 29,916,887 36,020,141 32,257,225
合計 39,576,887 45,680,141 41,917,225

F 営業外収益の額
 各事業年度の営業外収益の額は、受取利息の額で、次表のとおり算定した。

(単位:円)
事業年度
金融機関名
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
S銀行K支店 - 67,196 68,125
L銀行M支店 25,076 59,149 46,682
合計 25,076 126,345 114,807

G 営業外費用の額
(A) 支払利息の額
 各事業年度の支払利息の額は、請求人の確定申告額と同額であり、平成2年3月期65,700円、平成3年3月期65,700円及び平成4年3月期65,880円である。
(B) 雑損失の額
 各事業年度の雑損失の額は、請求人の確定申告額と同額であり、平成2年3月期295,907円、平成3年3月期零円及び平成4年3月期432,121円である。
(C) 営業外費用の額
 以上の結果、請求人の各事業年度の営業外費用の額は、平成2年3月期361,607円、平成3年3月期65,700円及び平成4年3月期498,001円となる。
H 繰越欠損金控除額
 平成2年3月期の繰越欠損金控除額は、法人税法第57条((青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し))の規定に基づくもので、その金額は677,884円である。
I 所得金額
 以上の結果、請求人の各事業年度の所得金額は次表のとおりとなり、これらの金額は法人税の各更正処分に係る所得金額と同額であるから、各更正処分は適法である。

(単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
売上金額 1 183,651,853 226,541,773 226,207,747
売上原価の額 2 100,347,373 123,782,425 123,599,913
販売費及び一般管理費の額 3 39,576,887 45,680,141 41,917,225
営業外収益の額 4 25,076 126,345 114,807
営業外費用の額 5 361,607 65,700 498,001
繰越欠損金当期控除額 6 677,884 - -
所得控除(123456 42,713,178 57,139,852 60,307,415

(ロ) 過少申告加算税の賦課決定処分
 以上のとおり、法人税の各更正処分は適法であり、かつ、請求人には国税通則法第65条((過少申告加算税))第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」に該当しないので、同条第1項及び第2項に基づき過少申告加算税の賦課決定処分をしたものである。
ロ 法人臨時特別税の決定処分等について
(イ) 課税標準法人税額及び法人臨時特別税額
 法人税の各更正処分は、上記イの(イ)のとおり適法になされているところ、これに基づいて、「湾岸地域における平和回復活動を支援するため平成二年度において緊急に講ずべき財政上の措置に必要な財源の確保に係る臨時措置に関する法律」(以下「臨時措置法」という。)第14条((課税標準及び税額の申告))第1項の規定により、法人臨時特別税の課税標準法人税額及び法人臨時特別税の額を算定したところ、次表のとおりそれぞれ18,855,000円及び471,300円となる。
 そうすると、請求人には法人臨時特別税の申告書を提出する義務があると認められるにもかかわらず、当該申告書の提出がなかったので、国税通則法第25条((決定))の規定により、法人臨時特別税の決定処分をしたものである。
 そして、これらの金額は、法人臨時特別税の決定処分に係る金額と同額であるから、決定処分は適法である。

(単位:円)
課税事業年度
項目
平成4年3月期
課税所得金額 1 60,307,000
1のうち年 8,000,000円相当額以下の金額 2 8,000,000
1のうち年 8,000,000円相当額を超える金額 3 53,307,000
2の28パーセント相当額 4 2,240,000
3の37.5パーセント相当額 5 19,615,125
基準法人税額(45 6 21,855,125
控除額 7 3,000,000
課税標準法人税額(67 8 18,855,000
法人臨時特別税額(8×0.025) 471,000

(注)「課税所得金額」及び「課税標準法人税額」の各欄は、1,000円未満の端数を、「法人臨時特別税額」欄は100円未満の端数をそれぞれ切り捨てた後の金額である。


(ロ) 無申告加算税の賦課決定処分
 前記(イ)のとおり、法人臨時特別税の決定処分は適法であり、かつ、請求人には、国税通則法第66条((無申告加算税))第1項に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当しないので、同項の規定に基づき無申告加算税の賦課決定処分をしたものである。
ハ 消費税の更正処分について
(イ) 課税標準額
A 推計の必要性
 本件消費税に係る調査において、調査担当職員が請求人に対し、再三にわたり消費税の課税標準額の計算に必要な帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず、請求人はこれに応ぜず、また、確定申告書に記載した課税標準額が正当であることについての具体的な説明もしなかった。
 このような状況の下では、取引実額により課税標準額を算定することができなかったので、やむを得ず、推計の方法により、各課税期間の課税標準額を算定したものである。
B 課税標準額
 各課税期間の課税標準額は、次表のとおり前記イの(イ)のCで算定した法人税の所得金額の計算の基礎とした売上金額に103分の100を乗じて算定した金額が消費税の課税資産の譲渡等の対価の額(以下「課税売上高」という。)となり、この課税売上高の1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額となる。

(単位:円)
課税期間
項目
平成3年3月課税期間 平成4年3月課税期間
売上金額 226,541,773 226,207,747
課税売上高 219,943,468 219,619,171
課税標準額 219,943,000 219,619,000

(注)「課税標準額」欄は、1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。


(ロ) 消費税額
 請求人は、消費税法(平成3年法律第73号による改正前のものをいう。以下同じ。)第37条((中小企業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例))第1項の規定の適用を受ける旨の届出書を提出しているから、同条の規定により、各課税期間の消費税額は、前記(イ)のBの課税標準額に100分の0.3を乗じて、平成3年3月課税期間659,829円及び平成4年3月課税期間658,857円となる。
(ハ) 納付すべき税額
A 前記(イ)のとおり、各課税期間の課税売上高は、60,000,000円以上であるから、消費税法第40条((小規模事業者等に係る限界控除))の規定に基づく控除税額はない。
B 以上の結果、各課税期間の納付すべき税額は次表のとおりとなり、これらの金額は、消費税の各更正処分に係る金額と同額であるから、消費税の各更正処分は適法である。

(単位:円)
課税期間
項目
平成3年3月課税期間 平成4年3月課税期間
課税標準額 219,943,000 219,619,000
納付すべき税額 659,800 658,800

(注)「課税標準額」欄は、1,000円未満の端数を、「納付すべき税額」欄は、100円未満の端数をそれぞれ切り捨てた後の金額である。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、法人税に係る各事業年度の所得金額の多寡、法人臨時特別税額の多寡及び各課税期間の消費税額の多寡にあるので、以下審理する。

(1) 法人税の更正処分等について

イ 所得金額
(イ) 推計の必要性
A 当審判所の調査によれば、調査担当職員は、法人税の調査において、請求人に対し、各事業年度の所得金額の計算に必要な帳簿書類を提示するよう求めたにもかかわらず、請求人は、調査担当職員に対し各事業年度の所得金額の計算の基礎となる帳簿書類等の資料を提示せず、また、調査担当職員の質問に対しても具体的な説明をしなかったので、原処分庁は、請求人の各事業年度の所得金額を取引実額を基礎とする損益計算(以下「実額計算」という。)の方法により算定することができず、やむを得ず、請求人の取引先等を調査した結果に基づき推計の方法により算定したことが認められるから、原処分庁が各事業年度の所得金額を推計の方法により算定したことに違法は認められない。
B 請求人は、前記2の(1)のイのAの(A)のとおり、原処分庁の採用した売上原価率のみを争うことを理由として、自らの売上金額については主張立証せず、また、各事業年度の一般経費の額については取引実額により算定すべきであるとして、当審判所に対し平成4年3月期の売掛帳、納品書(控)及び買掛帳の各写し並びに各事業年度の人件費以外の一般管理費に係る領収証写しをそれぞれ提出した。
C しかしながら、請求人の営む婦人物ブラウス卸業にあっては、一般経費の額は、売上金額と密接な関連ないし対応関係を有するものと認められるから、請求人が一般経費について取引実額を主張する以上、一般経費の支出の事実及び支出の内容を証拠書類等によって明らかにするだけでなく、売上金額についても同様に明らかにすべきである。すなわち、その支出した一般経費の額がいくらの売上金額を得るために必要なものであったかという対応関係が客観的に認められる場合に初めてその適否の判断を行うべきであるところ、請求人は、自らの売上金額については取引実額によりこれを主張しないばかりか、平成2年3月期及び平成3年3月期については、売上金額に関する証拠書類等を提出せず、また、請求人が提出した平成4年3月期の売掛帳及び納品書(控)の各写しは、同期の確定申告書に添付の決算報告書に記載されている売上高及び売掛金の内訳書の記載内容から判断すると、いずれも同事業年度の取引の全部に係るものではないと認められるから、請求人の主張する取引実額による一般経費の額との対応関係が明らかであるとは認められない。
D したがって、請求人の一般経費に係る取引実額の主張は、請求人が提出した証拠書類等の信ぴょう性を検討するまでもなく、これを採用することはできないから、当審判所においても各事業年度の一般経費の額を推計の方法により算定せざるを得ない。
E そこで、当審判所は、原処分庁が採用した推計方法の合理性及び計算の適否について、以下審理する。
(ロ) 推計の合理性
A 売上原価率の算定方法の合理性
 請求人は、前記2の(1)のイの(イ)のAの(A)のbのとおり、原処分庁が売上原価率を本件下半期の計数で算定しているのは不合理である旨主張するので審理したところ、次のとおりである。
(A) 原処分庁は、請求人の各事業年度の売上金額を、各事業年度の売上原価の額を本件下半期の取引に基づき算定した売上原価率で除して算定していることが認められる。
(B) ところで、およそ卸売業一般においては、特段の事情のない限り、各事業年度の売上原価率はおおむね一定していることが通常であるところ、当審判所の調査によれば、請求人の営む事業にあっては、各事業年度相互間においては、その売上原価率に著しい変動があるとは認められないものの、請求人について1年を半期単位でみた場合には、請求人の取り扱う商品の性格からその売上原価率は、上半期と下半期とではこれを異にするがい然性が高いものと認められる。このため、原処分庁が請求人の本件下半期の取引に係る計数を基に算定した売上原価率は、本件にあっては、必ずしも合理的な数値とはいえず、本件主張期間の計数に基づいてこれを算定することがより合理的であり相当と認められる。
B 平均一般経費率の合理性
 請求人は、前記2の(1)のイの(イ)のAの(B)のとおり、原処分庁の採用した平均一般経費率は合理性がない旨主張するので審理したところ、次のとおりである。
(A) 一般に業種業態に類似性のある同業者にあっては、特段の事情がない限り、同程度の売上げに対し同程度の経費を支出することが通例であり、このことは請求人の営む事業の場合にあっても例外ではないから、原処分庁が請求人の一般経費の額を推計するに当たり類似同業者の平均一般経費率を用いた推計方法には合理性があると認められる。
(B) また、原処分庁は、P税務署又はその近隣の税務署の管内に事業所を有し、請求人と同業種の法人であり、かつ、その事業年度分の売上原価の額が請求人のそれの0.5倍以上2倍以内であるなど事業規模の類似する事業を営む青色申告法人を類似同業者(平成2年3月期、平成3年3月期各4件及び平成4年3月期3件)としているから、類似同業者の選定も合理的な方法により行われていることが認められる。
(C) ところで、原処分庁は、一般経費の額を売上金額に類似同業者の平均一般経費率を乗じて算定しているが、当審判所が原処分庁の採用した平均一般経費率を調査したところ、平成2年3月期及び平成4年3月期の平均一般経費率の計算に誤りが認められたので、当審判所において再計算すると、平成2年3月期は0.1579及び平成4年3月期は0.1423となる。
 なお、平成3年3月期の平均一般経費率0.1590は、その計算は適正であると認められる。
(D) 請求人は、原処分庁の採用した平均一般経費率は、刊行物に紹介されている同業者の経費率を下回り、物価の上昇に伴い年々経費も増加するという世間の常識に反し、合理性がない旨主張する。
 しかしながら、前記(A)及び(B)のとおり、類似同業者の選定は合理的に行われていると認められるから、その類似同業者の売上金額及び一般経費の額を基に前記(C)の計算誤りを訂正した後の平均一般経費率には合理性があると認められる。
 また、前記(B)のような方法で選定された類似同業者の平均値により推計する場合には、同業者の地域的特性や物価変動等の諸要素が平均値の中に加味されているというべきであり、また、当該類似同業者間に通常存在する程度の営業条件等の差異は、その平均値に吸収され捨象されるものであるから、当該平均値による推計自体を不合理ならしめる程度の顕著なものでない限りこれを考慮する必要はないと解するのが相当であるところ、請求人と当該類似同業者との間に顕著な差異があると認めることはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(E) さらに、請求人は、原処分庁が採用した平均一般経費率を適用して算定された各事業年度の一般経費の額の中には請求人の給与手当の額にすら満たないものもあって、合理性がない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、自ら主張する各事業年度の給与手当の額に係る証拠書類等を提出せず、このため、当審判所において、請求人の主張する給与手当の額を確認することができない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(ハ) 売上金額
A 前記(ロ)のAのとおり、請求人の各事業年度の売上金額を算定するに当たり用いるべき売上原価率は、請求人が主張するように本件主張期間の計数を基にして算定するのがより合理的であると認められるので、原処分庁が売上原価率を算定するに当たりその基礎となる資料を収集した相手先である仕入先及び売上先を当審判所が調査したところ、次のとおりである。
(A) 平成4年3月期の仕入金額(返品に係る金額を控除した後の金額をいう。以下同じ。)、仕入数量(返品数量を控除した後の数量をいう。以下同じ。)及び平均仕入単価は、次表のとおりとなる。

(単位:枚、円)
仕入先
項目
(株)A (株)B 合計
仕入数量 1 18,774 4,401 23,175
仕入金額 2 91,899,800 27,816,550 119,716,350
平均仕入単価 2の合計)÷(1の合計)=5,166

(注)「仕入先」欄の(株)は、株式会社を示す。


(B) 平成4年3月期の売上金額(返品に係る金額を控除した後の金額をいう。以下同じ。)、売上数量(返品数量を控除した後の数量をいう。以下同じ。)及び平均売上単価は、次表のとおりとなる。

(単位:枚、円)
売上先
項目
(株)C (株)D (株)E 合計
売上数量 1 792 1,185 463 2,440
売上金額 2 7,488,890 8,086,660 4,268,660 19,844,210
平均売上単価 2の合計)÷(1の合計)=8,133

(注)「売上先」欄の(株)は、株式会社を示す。


(C) 以上の結果、請求人の各事業年度の売上金額を推計するに当たり用いるべき売上原価率は、前記(A)の平均仕入単価を前記(B)の平均売上単価で除した数値0.6352とすべきである。
B 請求人の各事業年度の売上金額は、後記(ニ)の売上原価の額を前記Aで算定した売上原価率で除して算定すると、次表のとおりとなる。

(単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
売上原価の額 1 100,347,373 123,782,425 123,599,913
売上原価率 2 0.6352 0.6352 0.6352
売上金額(1÷2 157,977,602 194,871,575 194,584,245

(ニ) 売上原価の額
 原処分庁は、各事業年度の売上原価の額を、請求人の取引先等に対する調査の結果把握した各事業年度の仕入金額に、請求人の各事業年度の期首及び期末の棚卸高を同額として考慮した上で、次表のとおり算定しているところ、当審判所の調査によっても、その額は相当と認められる。

(単位:円)
事業年度
仕入先
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
(株)A 76,643,778 97,097,379 95,641,577
(株)B 23,703,595 26,685,046 27,958,336
合計 100,347,373 123,782,425 123,599,913

(注)「仕入先」欄の(株)は、株式会社を示す。


(ホ) 販売費及び一般管理費の額
A 役員報酬の額
 各事業年度の役員報酬の額については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても、その額は相当と認められる。
B 地代家賃の額
 各事業年度の地代家賃の額については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても、その額は相当と認められる。
C 一般経費の額
 各事業年度の一般経費の額は、前記(ハ)のBで算定した売上金額に、前記(ロ)のBの(C)で再算定した平均一般経費率を乗じて算定すると、次表のとおりとなる。

(単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
売上金額 1 157,977,602 194,871,575 194,584,245
平均一般経費率 2 0.1579 0.1590 0.1423
一般経費の額(1×2 24,944,663 30,984,580 27,689,338

D 販売費及び一般管理費の額
 以上の結果、各事業年度の販売費及び一般管理費の額は次表のとおりとなる。

(単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
役員報酬の額 7,260,000 7,260,000 7,260,000
地代家賃の額 2,400,000 2,400,000 2,400,000
一般経費の額 24,944,663 30,984,580 27,689,338
合計 34,604,663 40,644,580 37,349,338

(ヘ) 営業外収益の額
 各事業年度の営業外収益の額については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても、その額は相当と認められる。
(ト) 営業外費用の額
 各事業年度の営業外費用の額については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても、その額は相当と認められる。
(チ) 繰越欠損金控除額
 平成2年3月期の繰越欠損金控除額については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても、その控除額は相当と認められる。
(リ) 所得金額
 以上の結果、請求人の各事業年度の所得金額は次表のとおりとなり、これらの金額は法人税の各更正処分に係る所得金額に満たないから、法人税の更正処分はその一部を取り消すべきである。

(単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
売上金額 1 157,977,602 194,871,575 194,584,245
売上原価の額 2 100,347,373 123,782,425 123,599,913
販売費及び一般管理費の額 3 34,604,663 40,644,580 37,349,338
営業外収益の額 4 25,076 126,345 114,807
営業外費用の額 5 361,607 65,700 498,001
繰越欠損金当期控除額 6 677,884 - -
所得控除(123456 22,011,151 30,505,215 33,251,800

ロ 過少申告加算税の賦課決定処分
 請求人には、各事業年度の確定申告の税額を計算するに当たり、原処分庁が過少申告加算税の基礎とした税額のうち一部取消しにより減額される部分以外の税額に係る事実を確定申告の税額の計算の基礎としなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、原処分庁が行った、過少申告加算税の基礎とした税額のうち当該減額される部分以外の税額を基礎とする部分に係る過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
 ところで、各事業年度の過少申告加算税の基礎となる税額及び過少申告加算税の額は次表のとおりとなり、これらの金額はいずれも賦課決定処分に係る金額に満たないので、各事業年度の賦課決定処分はその一部を取り消すべきである。

(単位:円)
事業年度
項目
平成2年3月期 平成3年3月期 平成4年3月期
過少申告加算税の基礎となる税額 7,880,000 10,650,000 11,680,000
7,380,000 10,150,000 11,180,000
過少申告加算税の額 1,157,000 1,572,500 1,727,000

(注)「過少申告加算税の基礎となる税額」欄の下段の金額は、国税通則法65条第2項の規定による加重分の過少申告加算税の基礎となる税額である。

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(2) 法人臨時特別税の決定処分等について

イ 課税標準法人税額及び法人臨時特別税額
 前記(1)のイの(リ)のとおり、平成4年3月期の法人臨時特別税額の算定の基礎となる法人税の所得金額は33,251,800円となるから、法人臨時特別税の課税標準法人税額及び法人臨時特別税額は次表のとおりとなり、臨時措置法第14条第1項により請求人には同事業年度の法人臨時特別税の申告書を提出する義務があると認められるが、これらの金額は、法人臨時特別税の決定処分に係る金額に満たないから、法人臨時特別税の決定処分は、その一部を取り消すべきである。

(単位:円)
課税事業年度
項目
平成4年3月期
課税所得金額 1 33,251,000
1のうち年 8,000,000円相当額以下の金額 2 8,000,000
1のうち年 8,000,000円相当額を超える金額 3 25,251,000
2の28パーセント相当額 4 2,240,000
3の37.5パーセント相当額 5 9,469,125
基準法人税額(45 6 11,709,125
控除額 7 3,000,000
課税標準法人税額(67 8 8,709,000
法人臨時特別税額(8×0.025) 217,700

(注)「課税所得金額」及び「課税標準法人税額」の各欄は、1,000円未満の端数を、「法人臨時特別税額」欄は100円未満の端数をそれぞれ切り捨てた後の金額である。


ロ 無申告加算税の賦課決定処分
 請求人には、原処分庁が無申告加算税の基礎とした税額のうち一部取消しにより減額される部分以外の税額に係る事実を税額計算の基礎とした期限内申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、原処分庁が行った、無申告加算税の基礎とした税額のうち当該減額される部分以外の税額を基礎とする部分に係る無申告加算税の賦課決定処分は適法である。
 ところで、無申告加算税の基礎となる税額は210,000円であるから無申告加算税の額は31,500円となるところ、この金額は、賦課決定処分に係る金額70,500円に満たないので、賦課決定処分はその一部を取り消すべきである。

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(3) 消費税の更正処分について

イ 課税標準額
(イ) 推計の必要性
 当審判所の調査によれば、調査担当職員は、消費税に係る調査において、請求人に対し再三にわたり、各課税期間の課税標準額の計算に必要な帳簿書類等を提示するよう求めたにもかかわらず、請求人は、調査担当職員に対し各課税期間の課税標準額の計算の基礎となる帳簿書類等の資料を提示せず、また、調査担当職員の質問に対しても具体的な説明をしなかったので、原処分庁は、請求人の各課税期間の課税標準額を取引実額により算定することができず、やむを得ず、請求人の取引先等を調査した結果に基づき推計の方法により算定したことが認められるから、原処分庁が各課税期間の課税標準額を推計の方法により算定したことに違法は認められない。
(ロ)課税標準額
 当審判所が前記(1)のイの(ハ)で算定した法人税の所得金額の計算の基礎とした売上金額に103分の100を乗じて算定した金額が消費税の課税売上高となることから、各課税期間の課税標準額は、その金額の1,000円未満の端数を切り捨てた金額となり、次表のとおりとなる。

(単位:円)
課税期間
項目
平成3年3月課税期間 平成4年3月課税期間
売上金額 194,871,575 194,584,245
課税売上高 189,195,703 188,916,742
課税標準額 189,195,000 188,916,000

(注)「課税標準額」欄は、1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。


ロ 消費税額
 当審判所の調査によれば、請求人は、消費税法第37条第1項の適用を受ける旨の届出書を提出しているから、同条の規定により、各課税期間の消費税額は、前記イの(ロ)で算定した各課税期間の課税標準額にそれぞれ100分の0.3を乗じて算定すると、平成3年3月課税期間567,585円及び平成4年3月課税期間566,748円となる。
ハ 納付すべき税額
(イ) 前記イの(ロ)のとおり、請求人の各課税期間の課税売上高は、60,000,000円以上であるから、消費税法第40条の適用はなく、控除税額はない。
(ロ) したがって、各課税期間の納付すべき税額は、次表のとおりとなるが、これらの金額はいずれも更正処分に係る金額に満たず、また、確定申告に係る金額にも満たないから、消費税の更正処分はその全部を取り消すべきである。

(単位:円)
課税期間
項目
平成3年3月課税期間 平成4年3月課税期間
課税標準額 189,195,000 188,916,000
納付すべき税額 567,500 566,700

(注)「課税標準額」欄は、1,000円未満の端数を、「納付すべき税額」欄は、100円未満の端数をそれぞれ切り捨てた後の金額である。


(4) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠書類等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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