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(平6.12.22、裁決事例集No.48 479頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、家具塗装業を営む同族会社であるが、平成元年5月1日から平成2年4月30日までの課税期間、平成2年5月1日から平成3年4月30日までの課税期間及び平成3年5月1日から平成4年4月30日までの課税期間(以下、それぞれ「平成2年4月課税期間」、「平成3年4月課税期間」及び「平成4年4月課税期間」といい、これらを併せて「各課税期間」という。)の消費税について、確定申告書に別表の「確定申告」欄のとおり記載した上、これをいずれも法定申告期限までに原処分庁に提出した。
 原処分庁は、これに対し、平成4年10月30日付で別表の「更正処分」欄記載のとおり、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
 請求人はこれらの処分を不服として平成4年12月28日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は平成5年3月26日付でいずれも棄却の異議決定をし、同月29日に異議決定書の謄本を送達した。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成5年4月27日に審査請求をした。
 その後、原処分庁は、平成5年9月29日付で平成4年4月課税期間について別表の「再更正処分」欄記載のとおり、再更正処分をした。
 請求人は、上記再更正処分を不服として、平成5年11月1日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、国税通則法第90条((他の審査請求に伴うみなす審査請求))第1項の規定により、同年12月13日にその異議申立書等を国税不服審判所長へ送付したので、同日審査請求がされたものとみなされた。
 そこで、これらの審査請求について併合審理する。
 なお、原処分庁は、平成5年12月13日付で平成4年4月課税期間について別表の「再々更正処分」欄記載のとおり、減額更正処分をしている。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は次の理由により違法であるから、その全部又は一部の取消しを求める。
イ 更正処分について
(イ) 請求人は、各課税期間について、消費税法(平成3年法律第73号による改正前のもの。以下同じ。)第37条((中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例))第1項に規定する卸売業を主として営む事業者として政令で定める者(以下「卸売業者」という。)に該当することから、各課税期間における仕入れに係る消費税額を、各課税期間における売上げに係る消費税額(各課税期間の課税標準額に対する消費税額から各課税期間における売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額をいう。以下同じ。)の100分の90に相当する額として申告した。
 原処分庁は、これに対し、請求人は卸売業者に該当しないとして、各課税期間における仕入れに係る消費税額を、各課税期間における売上げに係る消費税額の100分の80に相当する額として更正処分をした。
 しかしながら、請求人は、次のとおり、卸売業者に該当するから、各課税期間における仕入れに係る消費税額は、各課税期間における売上げに係る消費税額の100分の90に相当する額とすべきである。
A 消費税法施行令(平成3年政令第201号による改正前のもの。以下同じ。)第57条((卸売業を主として営む事業者の範囲))の規定によれば、卸売業者とは、卸売売上割合(同条第1項第1号に掲げる金額のうちに同項第2号に掲げる金額の占める割合をいう。以下同じ。)が100分の50を超える事業者とされており、また、この場合の卸売業とは、他の事業者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業で小売業以外のものとされている。
B 請求人の事業は、次のとおり、消費税法施行令第57条第2項に規定する卸売業に該当し、各課税期間の卸売売上割合は、いずれも100分の50を超えている。
(A) 請求人の事業は、他の事業者から購入した塗料を材料として家具の塗装を行うものであるが、その工程において、材料としての塗料の性質は変わらず、また、形状はもともと形を規定することが不可能なものであるから、性質及び形状を変更しているとはいえない。
(B) また、請求人は、塗装条件、納期、単価等において、あらかじめ指定された条件で塗装を行っており、たとえ原材料を自ら購入しているとはいえ自己の計算コントロールにおいて塗装を行っているものではない。
(C) 原処分庁は、請求人の損益計算書に仕入勘定がないことをもって卸売業に当たらないとしているが、他の事業者から商品を購入した場合の仕入勘定が損益計算書にあるか、製造原価報告書にあるかは会計処理の表示の仕方の問題であり、消費税法上の事業区分の判断基準とならない。
(D) 請求人は、E家具製作所等の特定の事業者への販売を行っており、一般の消費者に物品を販売する小売業ではない。
(E) 以上のとおり、請求人の事業は、他の事業者から購入した塗料を、性質及び形状を変更せずに、特定の事業者に販売するものであるので、消費税法施行令第57条第2項に規定する卸売業に該当する。
(ロ) 課税標準額等
 各課税期間の課税標準額等は、平成2年4月課税期間92,053,770円、平成3年4月課税期間91,064,418円、平成4年4月課税期間79,069,129円となる。
(ハ) 納付すべき税額
 以上により、各課税期間の納付すべき税額を算定すると、平成2年4月課税期間276,100円、平成3年4月課税期間273,100円、平成4年4月課税期間237,200円となる。
(ニ) したがって、平成2年4月課税期間についてはその全部を、平成3年4月課税期間及び平成4年4月課税期間についてはその一部を取り消すべきである。
ロ 過少申告加算税の各賦課決定処分について
 上記イのとおり、平成3年4月課税期間及び平成4年4月課税期間の更正処分はその一部を取り消すべきであるから、これに伴い、過少申告加算税の各賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。

(2) 原処分庁の主張

 原処分は次のとおり適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
(イ) 請求人は、次のとおり、卸売業者に該当しないので、各課税期間における仕入れに係る消費税額は、各課税期間における売上げに係る消費税額の100分の80に相当する額であるから、各課税期間の更正処分をしたものである。
A 卸売業者とは、請求人の主張のイの(イ)のAのとおりである。
B 請求人は、塗料を仕入れて、E家具製作所等特定の事業者から持ち込まれた家具等にあらかじめ指定された条件に基づき塗装を行ういわゆる家具の塗装業である。
C したがって、請求人の事業は、消費税法施行令第57条第2項に規定する他の事業者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業には該当しないので、請求人は、卸売業者に該当しない。
(ロ) 課税標準額等
 各課税期間の課税標準額等は、平成2年4月課税期間93,131,770円、平成3年4月課税期間91,064,418円、平成4年4月課税期間79,069,129円である。
(ハ) 納付すべき税額
 以上により、各課税期間の納付すべき税額を算定すると、平成2年4月課税期間558,700円、平成3年4月課税期間546,300円、平成4年4月課税期間474,400円となる。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、平成3年4月課税期間及び平成4年4月課税期間の更正処分は適法であり、かつ、確定申告額が過少であったことについて、国税通則法第65条((過少申告加算税))第4項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、過少申告加算税を賦課決定したものである。

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3 判断

(1) 更正処分について

イ 請求人が、卸売業者に該当するか否かに争いがあるので、以下審理する。
(イ) 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
A 請求人は、消費税法第37条第1項の規定(以下「簡易課税制度」という。)の適用を受ける旨を記載した届出書を、平成元年9月22日に提出しており、また、各課税期間とも、その基準期間における課税売上高が5億円を超えていないこと。
B 請求人は、E家具製作所等の得意先から預かった家具にあらかじめ指定された条件に従い塗装を行っているが、その工程は、F塗料株式会社他2社から液状の塗料を購入し、これをエアースプレーにより家具に塗装して納品するものであること。
C 上記Bの家具の塗装に係る課税資産の譲渡等の対価の額が合計額は、各課税期間とも、請求人が国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額のほとんどを占めていること。
(ロ) ところで、簡易課税制度においては、各課税期間における売上げに係る消費税額の100分の80(卸売業者にあっては100分の90)に相当する額を、各課税期間における仕入れに係る消費税額とみなして控除することができるとされている。そして、この場合の卸売業者とは、卸売売上割合が100分の50を超える事業者とされており、また、卸売業とは、他の事業者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の事業者へ販売する事業とされている。
(ハ) これを本件についてみると、次のとおりである。
A 請求人は、請求人の事業は、他の事業者から購入した塗料を、性質及び形状を変更せずに、特定の事業者に販売するものであるから卸売業に該当する旨主張するが、請求人が行う上記(イ)のBの事業は、塗料を材料として得意先から預かった家具に塗装をする、いわゆる家具の塗装業であり、およそ塗料それ自体を商品として販売する事業とはいえないから、卸売業に該当しないと認められ、請求人の主張は、独自の見解を述べるものであって、採用できない。
B そうすると、上記(イ)のCのとおり、各課税期間とも、請求人が国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額のほとんどが卸売業に係るものに該当しないこととなり、卸売売上割合が100分の50を超えないこととなるから、請求人は、各課税期間とも卸売業者には該当しない。
ロ 課税標準額等
 原処分庁は、各課税期間の課税標準額等を、平成2年4月課税期間93,131,770円、平成3年4月課税期間91,064,418円、平成4年4月課税期間79,069,129円と算定しているが、請求人の提出資料及び原処分関係資料等を当審判所が調査したところによれば、各課税期間とも計上漏れ等の算定誤りがあることが認められ、これらを是正すると、各課税期間の課税標準額は、平成2年4月課税期間95,979,000円、平成3年4月課税期間92,189,000円,平成4年4月課税期間79,351,000円、また、各課税期間における売上げに係る対価の返還等の金額は、平成2年4月課税期間3,996,230円、平成3年4月課税期間1,031,982円、平成4年4月課税期間165,404円となる。
ハ 納付すべき税額
 各課税期間における仕入れに係る消費税額は、各課税期間における売上げに係る消費税額の100分の80に相当する額であるから、上記ロの課税標準額を基に各課税期間の納付すべき税額を算定すると、平成2年4月課税期間551,800円、平成3年4月課税期間546,900円、平成4年4月課税期間475,100円となる。
ニ 以上審理したところによれば、平成3年4月課税期間及び平成4年4月課税期間については、納付すべき税額がいずれも更正処分の金額(平成4年4月課税期間については、平成5年12月13日付でされた減額更正処分後の金額)を上回るから更正処分は適法であるが、平成2年4月課税期間については、納付すべき税額が更正処分の金額を下回るから、更正処分はその一部を取り消すべきである。

(2) 過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、平成3年4月課税期間及び平成4年4月課税期間の更正処分は適法であり、かつ、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があったとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてされた過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

(3) その他

 原処分のその他の部分について、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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