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(平7.4.27裁決、裁決事例集No.49 347頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、不動産業を営む同族会社であるが、平成元年8月1日から平成2年7月31日まで及び平成2年8月1日から平成3年7月31日までの各事業年度(以下それぞれ「平成2年7月期」、「平成3年7月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、それぞれ青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載した上、これをいずれも法定申告期限までに原処分庁に提出した。
 その後、請求人は、平成2年7月期について、平成3年6月10日に別表1の「修正申告」欄のとおり記載した修正申告書を原処分庁に提出した。
 原処分庁は、これに対し、平成4年3月31日付で別表1の「更正処分等」欄記載のとおり法人税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分をしたほか、平成2年7月から平成2年12月まで及び平成3年7月から平成3年12月までの各期間分(以下これらを併せて「本件各期間分」という。)の源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)について、別表2の「納税告知処分等」欄記載のとおり納税告知処分(以下「本件納税告知処分」という。)及び不納付加算税の賦課決定処分をした。
 また、請求人は、平成2年8月1日から平成3年7月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税について、確定申告書に別表3の「確定申告」欄のとおり記載した上、法定申告期限までに原処分庁に提出した。
 原処分庁は、これに対し、平成4年3月31日付で別表3の「更正処分等」欄記載のとおり消費税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分をした。
 請求人は、上記各処分を不服として、平成4年5月13日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は同年8月12日付でいずれも棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成4年9月14日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部又は一部の取消しを求める。
イ 法人税の更正処分について
(イ)請求人は、平成2年7月期において、P市R町3番21の宅地39.66平方メートル及び同宅地上の建物59.50平方メートル(以下それぞれ「本件土地」、「本件建物」といい、これらを併せて「本件物件」という。)を平成2年2月2日に株式会社A(以下「A社」という。)に譲渡し、その価額を45,000,000円として所得金額の計算をした。
(ロ)また、租税特別措置法(平成3年法律第16号による改正前のものをいい、以下「措置法」という。)第63条《土地の譲渡等がある場合の特別税率》第2項に規定する譲渡利益金額(以下「短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額」という。)の計算に当たっては、本件土地の譲渡等による収益の額を40,000,000円とし、この金額から本件土地の原価の額24,000,000円及び本件土地の譲渡等のために直接又は間接に要した負債利子、販売費及び一般管理費の額(以下これらを併せて「譲渡費用」といい、このうち販売費及び一般管理費の額を「販管費等」という。)を租税特別措置法施行令(平成3年政令第88号による改正前のものをいい、以下「措置法施行令」という。)第38条の4《土地の譲渡等がある場合の特別税率》第8項の規定による計算方法(以下この方法を「実額配賦法」という。)により算出した金額7,877,200円を控除して、短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額を8,122,000円(千円未満切捨て)と算定し、特別税率20パーセントを適用して確定申告をした。
(ハ)その後、請求人は、本件土地の譲渡利益金額が措置法第63条の2《超短期所有に係る土地の譲渡等がある場合の特別税率》第2項に規定する譲渡利益金額(以下「超短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額」という。)に該当するとして、特別税率を20パーセントから30パーセントに改めて再計算して修正申告をした。
(ニ)次いで、原処分庁は、次のとおり更正処分をした。
A 本件物件の譲渡価額を60,000,000円と認定し、請求人が確定申告した45,000,000円との差額15,000,000円を売上げの計上漏れであるとして、益金の額に算入した。
B 超短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額の計算について、(a)本件建物の価額を零円と認定した上で、本件土地の譲渡収益を60,000,000円とし、(b)本件土地の原価の額を24,000,000円、(c)譲渡費用を、措置法施行令第38条の5第4項の規定により読み替えて準用される措置法施行令第38条の4第6項第1号及び第2号の規定の適用を受ける場合におけるその計算方法(以下この方法を「概算法」という。)により算出した3,766,665円とし、これらに基づき超短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額を32,233,335円と算定した。
(ホ)しかしながら、請求人は、上記(ニ)のAの15,000,000円を益金の額に算入することについては争わないが、本件土地の超短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額を計算するに当たっては、次の事由から、本件土地の譲渡収益を50,000,000円とし、譲渡費用は、請求人が用いた実額配賦法により算出した7,877,200円とすべきであり、原処分のうちこれを超える部分は取り消すべきである。
A 請求人は、平成2年2月2日に本件物件を60,000,000円でA社に譲渡する旨の契約を締結したが、本件土地の譲渡価額が50,000,000円であることは、その不動産売買契約書の特約条項欄に売買金額の内訳として「土地5,000万円、建物1,000万円」と記載されていることから明らかであること。
B 請求人は、譲渡費用について本件土地の譲渡に係る部分の金額を合理的に計算して確定申告書に記載したこと。
ロ 法人税の加算税の賦課決定処分について
(イ)平成2年7月期の重加算税の賦課決定処分
 請求人の会計帳簿には、売上げが正当に記帳されており、申告が過少となったのは請求人の責任ではなく、仮装隠ペいの事実がないから、重加算税の賦課決定処分はその全部を取り消すべきである。
(ロ)平成2年7月期の過少申告加算税の賦課決定処分
 上記イの(ホ)のとおり、更正処分はその一部を取り消すべきであるから、これに伴い、過少申告加算税の賦課決定処分も、その一部を取り消すべきである。
 なお、原処分庁が売上げの計上漏れであるとして益金の額に算入した15,000,000円のうち、4,000,000円の所得金額の増加額に対する過少申告加算税の賦課決定処分については争わない。
(ハ)平成3年7月期の重加算税の賦課決定処分
 原処分庁は、請求人がM株式会社(以下「M社」という。)と、平成2年4月27日にP市S町3丁目3番5の宅地76.13平方メートルに立案企画したテナントビルの総合企画・建物設計図書等を売り渡す契約(以下「総合企画売買契約」という。)を締結し、これに基づき同年8月1日に受領した金員10,000,000円を売上げの計上漏れと認定して、益金の額に算入した更正処分及び重加算税の賦課決定処分をした。
 しかしながら、請求人は、当該更正処分については争わないが、請求人の会計帳簿には、売上げが正当に記帳されており、申告が過少となったのは請求人の責任ではなく、仮装隠ぺいの事実がないから、重加算税の賦課決定処分はその全部を取り消すべきである。
ハ 本件課税期間の消費税の重加算税の賦課決定処分について
 原処分庁は、請求人がM社から受領した上記ロの(ハ)の金員10,000,000円を課税資産の譲渡等の対価の額の計上漏れと認定して、更正処分及び重加算税の賦課決定処分をした。
 しかしながら、請求人は、当該更正処分については争わないが、請求人の会計帳簿には、課税資産の譲渡等の対価の額が正当に記帳されており、申告が過少となったのは請求人の責任ではなく、仮装隠ぺいの事実がないから、重加算税の賦課決定処分はその全部を取り消すべきである。
ニ 本件各期間分の本件納税告知処分について
 原処分庁は、請求人が上記イの(ニ)のAの15,000,000円及び上記ロの(ハ)の10,000,000円を請求人の代表取締役E(以下「E」という。)に対し、臨時的な給与(賞与)を支給したものと認定して本件納税告知処分をした。
 しかしながら、次のとおり、本件納税告知処分は違法であるから、その全部を取り消すべきである。
(イ)Eは、請求人の発行済株式の80パーセント以上を所有するとともに、経営者として会社の経営に対し責任を負う立場にあるため、会社に資金が不足しているときは会社に資金を貸し付け、資金に余裕があるときはその返済を受けるのは当然である。
(ロ)この資金の貸借については、請求人の会計帳簿及び決算書に記帳等されており、売上げの計上漏れに係る金員は、いずれもEが個人的に費消したものでないことは明らかである。
ホ 不納付加算税の賦課決定処分について
 上記ニのとおり、本件納税告知処分はその全部を取り消すべきであるから、これに伴い、不納付加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次のとおり正当であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 法人税の更正処分について
(イ)本件土地の譲渡収益
A 請求人は、平成2年2月2日に本件物件をA社に45,000,000円で譲渡したとして、超短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額の計算における本件土地の譲渡収益を40,000,000円として修正申告しているが、次の事実が認められる。
(A)請求人とA社が取り交わした本件物件に係る平成2年2月2日付の不動産売買契約書には、本件物件の譲渡価額を60,000,000円と記載していること。
(B)請求人は、修正申告書に添付した別表三(二の二)「超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額の計算に関する明細書」(以下「別表三(二の二)」という。)に、本件土地の原価の額を24,000,000円と記載していること。
(C)上記(B)の24,000,000円は、請求人が本件物件をGから購入した際に支払った金額の全額であること。
(D)G及びA社の代表取締役J(以下「J」という。)は、原処分の調査を担当した職員に対し、本件建物は終戦後古材で建てられたものであり傾いているような状態であったため本件建物の価値はなく、本件物件の譲渡価額の全額が本件土地に係るものであると認識していたと答えていること。
B したがって、本件物件の譲渡価額60,000,000円は、すべて本件土地の譲渡対価であると認められるため、超短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額を算定するに当たり、本件土地の譲渡収益を60,000,000円としたものである。
(ロ)本件土地の譲渡費用
 請求人は、譲渡費用について合理的に計算した旨主張するが、次の事由から、合理的な配賦基準により計算されているとは認められないため、概算法で計算したものである。
A 負債利子を実額配賦法により計算する場合における配賦基準は、いわゆる総資産あん分の方法によるべきところ、請求人の配賦基準は、その算出根拠が不明確であり、資料の提出もないこと。
B 販管費等を実額配賦法により計算する場合における配賦基準は、個々の費用ごとにその性質、態様等に応じて合理的に算定すべきところ、請求人の配賦基準は、その算出根拠が不明確であり、資料の提出もないこと。
ロ 法人税の加算税の賦課決定処分について
(イ)平成2年7月期の重加算税の賦課決定処分
A 請求人は、本件物件の譲渡価額を45,000,000円として経理し確定申告しているが、上記イの(イ)のAのとおり本件物件の譲渡価額は60,000,000円であり、差額15,000,000円が売上げの計上漏れとなっているが、その決済状況を調査したところ、次の事実が認められる。
(A)請求人は、平成2年1月30日に本件物件の申込金1,000,000円を現金で受領し、同日付の領収証を発行していること。
 なお、当該申込金1,000,000円が請求人の会計帳簿には計上されていない。
(B)請求人は、平成2年2月2日に本件物件の手付金4,000,000円及び内金10,000,000円を現金で受領し、同日付の領収証を発行しており、当該現金14,000,000円を、同月5日にT銀行V支店(以下「T銀行」という。)の請求人名義の普通預金口座に入金しているが、うち10,000,000円については、更に、同日にT銀行のEの個人の名義の普通預金口座に預け替えしていること。
 なお、当該手付金4,000,000円及び内金10,000,000円とも請求人の会計帳簿の売上高には計上されていない。
B 請求人は、本件物件の譲渡価額として売上高に計上した金額45,000,000円と実際の譲渡価額60,000,000円との差額15,000,000円が売上げ漏れとなったのは、請求人の責任ではない旨主張するが、次のとおり理由がない。
(A)請求人は、A社との間で本件物件に関する不動産売買契約書を取り交わし、その譲渡価額は60,000,000円であると認識していたと認められること。
(B)上記ロの(イ)のAのとおり、請求人は、A社に対し領収証を発行し、その受領した金員及び領収証の控えを管理していたこと。
(C)請求人は、平成2年7月期の決算処理終了時までに、上記イの(イ)のAの(A)の不動産売買契約書及び上記(B)の領収証の控えを、請求人の関与税理士事務所の事務員に提示していないこと。
C したがって、上記Aのとおり、請求人が、申込金及び内金を受領していながら、これらの金額を請求人の会計帳簿の売上高に計上しなかった行為は、国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項に規定する国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし又は仮装したところに基づき納税申告書を提出した行為に該当するから、重加算税を賦課決定したものである。
(ロ)平成2年7月期の過少申告加算税の賦課決定処分
 上記イのとおり、更正処分は正当であり、かつ、請求人には確定申告額が過少であったことについて通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、過少申告加算税を賦課決定したものである。
(ハ)平成3年7月期の重加算税の賦課決定処分
A 請求人は、平成2年4月27日にM社と締結した総合企画売買契約に基づく売買代金10,000,000円が売上げ漏れとなったのは、請求人の責任ではない旨主張するが、次のことから、すべて請求人の意思による行為であると認められる。
(A)請求人は、平成2年8月1日に総合企画売買契約に基づく売買代金10,000,000円をM社から同社振出しの小切手で受領し、同日付の領収証を発行していること。
(B)請求人は、E個人の名義で上記(A)の小切手の裏書きをし、T銀行のEの個人の名義の普通預金口座に入金していること。
(C)請求人は、上記(A)の売買代金10,000,000円を会計帳簿の売上高に計上していないこと。
B したがって、請求人のした行為は、通則法第68条第1項に規定する国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし又は仮装したところに基づき納税申告書を提出した行為に該当するから、重加算税を賦課決定したものである。
ハ 本件課税期間の消費税の重加算税の賦課決定処分について
(イ)上記ロの(ハ)のAのとおり、請求人は、総合企画売買契約に基づく課税資産の譲渡等の対価の額10,000,000円を受領し、領収証を発行していながら会計帳簿に計上していないこと。
(ロ)したがって、請求人のした行為は、通則法第68条第1項に規定する国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし又は仮装したところに基づき納税申告書を提出した行為に該当するから、重加算税を賦課決定したものである。
ニ 本件期間分の本件納税告知処分について
(イ)請求人は、本件物件をA社に譲渡し、その代金の授受について、(a)申込金として受領した現金1,000,000円、(b)手付金として受領し、T銀行の請求人名義の普通預金口座に入金した4,000,000円及び(c)内金として受領し、同預金口座に入金後T銀行のEの個人の名義の普通預金口座に預け替えた10,000,000円の金員は、請求人がEから借り入れていた資金の返済である旨主張するが、請求人の会計帳簿には関連づけられる借入金の記帳がなく、これを認める具体的な証拠書類の提示及び説明がない。
(ロ)請求人は、M社との総合企画売買契約に基づく売買代金10,000,000円を、上記ロの(ハ)のAのとおり、同社振出しの小切手で受け取り、Eの個人名でその小切手の裏書きをし、平成2年8月1日にT銀行のEの個人の名義の普通預金口座に入金したことは、請求人がEから借り入れていた資金の返済である旨主張するが、請求人の会計帳簿には関連づけられる借入金の記帳がなく、これを証する具体的な書類の提示及び説明がない。
(ハ)Eは、請求人の発行済株式の80パーセント以上を所有し、会社の営業、経理等、経営に関する一切の実権を掌握する立場にあり、上記(イ)及び(ロ)の金員のすべてをEが自らの意思によって自由に処分することができる状態にあったと推認される。
(ニ)したがって、Eが、本件各事業年度末までに上記(イ)及び(ロ)の金員を個人的に費消したと認められたから、請求人が、Eに対し臨時的な給与(賞与)を支給したものとして、源泉所得税の納税告知をしたものである。
ホ 不納付加算税の賦課決定処分について
 上記ニのとおり、本件納税告知処分は相当であり、請求人には本件納税告知処分により納付すべきこととなった源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったことについて、通則法第67条《不納付加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、不納付加算税を賦課決定したものである。

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3 判断

(1)法人税の更正処分について

 平成2年7月期における、超短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額の算定の基となる、本件土地の譲渡収益及び譲渡費用について争いがあるので、以下それぞれ審理する。
イ 本件土地の譲渡収益について
(イ)次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
A 本件物件について、売主を請求人、買主をA社、売買価格を60,000,000円とする平成2年2月2日付の不動産売買契約書が作成され、当該契約書の特約条項欄には、本件物件の売買金額の内訳として、「土地5,000万円、建物1,000万円」と記載があること。
B 本件物件の譲渡価額は、60,000,000円であること。
C 請求人は、本件物件の譲渡価額を45,000,000円として総勘定元帳の売上勘定に計上し、この帳簿に基づいて確定決算をし、平成2年7月期の法人税の確定申告をしたこと。
D 請求人は、修正申告書の別表三(二の二)に、本件土地の譲渡収益を40,000,000円、本件土地の原価の額を24,000,000円及び譲渡費用を7,877,200円とそれぞれ記載して、本件土地に係る超短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額に対する税額を計算して申告していること。
(ロ)請求人提出資料及び原処分関係資料を当審判所が調査したところ、次の事実が認められる。
A 本件建物は、昭和22年に建てられた木造亜鉛メッキ鋼板葺きの二階建てであり、請求人がA社に譲渡した当時、固定資産評価額が少額であり、固定資産税が賦課されていなかったこと。
B 請求人は、本件物件を昭和63年1月25日にGから購入するに際し、同人に対して19,000,000円を支払ったほか、本件建物の借家人へ立退料5,000,000円を支払っているが、その合計金額24,000,000円を平成2年7月期の修正申告書の別表三(二の二)の課税土地譲渡利益金額の計算に当たり、土地の原価の額に記載して申告していること。
C 請求人から本件物件を購入したA社は、購入金額60,000,000円のすべてを土地の取得価額として会計帳簿に計上して申告していること。
D 請求人が本件物件を譲渡した時期に取引された近隣の土地の売買実例(1件)によると、その土地の坪当たり単価は約560万円であること。
(ハ)当審判所の調査によると、請求人が本件物件を購入したときの売り主であるGは、原処分庁に対し、次のとおり申述している。
A 本件物件の売買価格は、本件土地の面積が12坪であったので、坪当たり200万円で計算した24,000,000円であるべきところ、請求人が本件建物の借家人への立退料5,000,000円を支払う条件で19,000,000円と定めたものであること。
B 本件建物は、終戦後古材で建てたもので、売渡しのとき建物の価値はないものと認識していたこと。
(ニ)当審判所の調査によると、Jは、原処分庁に対し、次のとおり申述している。
A 請求人からA社に対し、本件土地を坪当たり500万円で売却したい旨の話があり、A社は、請求人の言い値どおり、60,000,000円で購入することとしたこと。
B 本件建物は、古くて傾いているような状態であったため、価値があるとは考えられず、本件物件の取引総額60,000,000円のすべてが、本件土地の代金であると認識していたこと。
(ホ)以上の各事実及び各申述に基づいて判断すると、請求人は、修正申告における超短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額の計算に当たり、本件物件の購入金額24,000,000円の全額を「土地の原価の額」としており、これについて争わないのであるから、請求人自ら本件建物の価値は零円であることを認めたものと推認されること、加えて、本件建物は、建築後40年以上経っていること及び請求人が本件物件を売却した当時の本件建物の固定資産税の算定の基となる固定資産評価額が少額であることから、上記(ハ)のBのG及び上記(ニ)のBのJの本件建物の価値はないと認識していたとの申述は信用できることを併せ考えると、建物固有の価値は評価に値しないものであり、本件建物の価額はないものと認めるのが相当である。
 また、本件土地について、本件建物に価値がないことは上記のとおりであり、加えて、上記(ロ)のDのとおり、近隣における土地の売買実例の坪当たり単価が約560万円であるところ、本件物件の譲渡代金の60,000,000円がすべて土地の代金とすると坪当たり単価は約500万円となること及び上記(ロ)のCのとおり、A社は本件物件の購入金額60,000,000円のすべてを本件土地の取得価額として申告していることから、本件土地を坪当たり単価500万円として取引総額60,000,000円で購入し、その全額が本件土地の代金と認識していたとのJの申述は信用できることを併せ考えると、本件物件の譲渡価額は、すべて本件土地の価額と認めるのが相当である。
 したがって、本件土地の譲渡収益を60,000,000円とした原処分は相当である。
(ヘ)なお、請求人は、不動産売買契約書の特約条項欄に「土地5,000万円、建物1,000万円」の記載があることを根拠に、本件建物の譲渡価額は10,000,000円である旨主張する。
 しかしながら、本件建物に価値がないこと及び本件土地の譲渡価額60,000,000円が相当であることは上記(ホ)のとおりであるから、当該特約条項欄に記載した事項は、取引の真実を反映したものではないと認めるのが相当であり、この点に関する請求人の主張は採用できない。
ロ 本件土地の譲渡費用について
(イ)請求人は、譲渡費用について、本件土地の譲渡に係る部分の金額を合理的に計算して修正申告書の別表三(二の二)に記載した旨主張する。
(ロ)ところで、措置法施行令第38条の4第8項及び第38条の5第4項の規定は、土地の譲渡等のすべてについて支出する経費のうち、当該土地の譲渡等に係る部分の金額を合理的に計算することができるものにあっては、概算法に代えて実額配賦法により計算することを例外的に認めているものと解される。
(ハ)しかしながら、請求人は、当審判所に対し、負債利子及び販管費等の配賦基準の算出根拠を何ら示さないのであるから、請求人の主張する譲渡費用が合理的に計算したものであるかどうか審理できない。
(ニ)そこで、原処分関係資料を当審判所が調査したところ、上記2の(2)のイの(ロ)のとおり、原処分庁が概算法を採用したことは相当と認められる。
 また、当審判所において原処分庁が概算法に基づいて算出した譲渡費用について検討したところ、その計算に誤りはなく相当と認められる。
 したがって、請求人の主張は採用できない。
ハ 以上審理したところによれば、本件土地の譲渡収益及び譲渡費用は更正処分の金額と同額となるから、更正処分は適法である。

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(2)法人税の加算税の賦課決定処分について

イ 平成2年7月期の重加算税の賦課決定処分
 請求人は、本件物件の譲渡価額60,000,000円の一部15,000,000円が売上げの計上漏れとなっていることについては争わないところ、重加算税の賦課決定処分について争いがあるので、以下審理する。
(イ)請求人提出資料及び原処分関係資料を当審判所が調査したところ、次の事実が認められる。
A 請求人とA社の間で取り交わした本件物件に係る不動産売買契約書は、上記(1)のイの(イ)のAの売買価格を60,000,000円とする契約書のほかに、契約日付が同日で売買価格を50,000,000円とするもう一通の契約書が存在すること。
B 請求人がA社から受領した本件物件の譲渡代金の決済状況等については、次のとおりであること。
(A)請求人は、平成2年1月30日に本件物件の申込金1,000,000円を受領し、同日付の領収証を発行しているが、請求人の会計帳簿にその記帳はなく、確定申告書に添付した損益計算書の売上高に算入していない。
(B)請求人は、平成2年2月2日に本件物件の手付金4,000,000円及び内金10,000,000円を現金で受領し、同日付の領収証を発行しており、当該現金14,000,000円を同年2月5日にT銀行の請求人名義の普通預金口座に入金し、うち10,000,000円については、更に、同日に同銀行のEの個人の名義の普通預金口座に預け替えしているが、当該手付金及び内金ともに請求人の会計帳簿の売上高にその記帳はなく、確定申告書に添付した損益計算書の売上高に算入していない。
(C)請求人は、平成2年3月6日に本件物件の譲渡代金45,000,000円を現金で受領し、同日付の領収証を発行しており、請求人の会計帳簿にその記帳があり、確定申告書に添付した損益計算書の売上高にも算入している。
(ロ)当審判所の調査によると、Jは、原処分庁に対し、次のとおり申述している。
A 本件物件の売買契約時にEから「本件物件の契約金額を50,000,000円ということにして、10,000,000円は裏取引にしてほしい」との要請があり、Eは、本件物件の売買価格を50,000,000円と記載した契約書を持参したこと。
B その後、請求人から当社が本件物件の取引金額をいくらで計上したかの問い合わせがあったので、「60,000,000円で計上した」旨答えたこと。
C 上記Bの後、請求人が本件物件の売買価格を60,000,000円と記載した契約書を持参したので受領したこと。
(ハ)請求人が、上記(イ)のAのとおり、本件物件の取引に関し契約書を2通作成していること及び上記(イ)のBのとおり、本件物件の譲渡代金60,000,000円の決済をしていることを併せ考えれば、本件物件の契約に際し、請求人から裏取引の話があり、契約書を2通作成したとのA社の申述は信用できる。
(ニ)そうすると、請求人は、本件物件の取引に関して、これを仮装する意思があり、確定申告した所得金額及び本件土地の譲渡収益がそれぞれ15,000,000円過少となったことは、その意思に起因するものと認めるのが相当である。
(ホ)したがって、請求人が、本件物件に係る不動産売買契約書を2通作成し、その譲渡代金のうち、売上げに計上しなかった15,000,000円については、通則法第68条第1項に規定する国税の課税標準等又は税額の基礎となるべき事実を隠ぺいし又は仮装したことに該当することとなり、原処分庁は、このうち11,000,000円に対応する所得金額及び超短期所有土地等の課税土地譲渡利益金額に対する法人税額の増加額について重加算税の賦課決定処分をしているのであるから、原処分庁が、通則法第68条第1項の規定に基づいてした重加算税の賦課決定処分は適法であり、請求人の主張には理由がない。
(ヘ)なお、請求人は、本件物件の譲渡代金を会計帳簿に正当に記帳していた旨主張し、当審判所に対し、その証拠書類としてルーズリーフ式の現金出納帳と称する帳簿を提出したが、当審判所で調査したところ、請求人が提出した当該帳簿は、日々の現金残高の記載がなく日付も前後していること及びM社から入金した10,000,000円の記載のあるページのみが明らかに差し替えられていることから、真実を記載した現金出納帳とは認められず、上記(1)のイの(イ)のCの総勘定元帳の現金勘定が真正な現金出納帳と認めるのが相当であり、この現金勘定に譲渡代金を正当に記帳していないことから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(ト)また、請求人は、申告が過少となったのは請求人の責任ではない旨主張する。
 請求人の関与税理士であったC会計事務所の事務員Dは、原処分庁に対し、請求人は、本件物件に係る不動産売買契約書及び入金状況を確認することができる領収証控を会計事務所へ提示していない旨申述している。一方、請求人は、当審判所に対し、本件物件に係る不動産売買契約書等を会計事務所に提出している旨答述している。
 両者の申し立ては相反するが、請求人が、本件物件の譲渡代金を上記(1)のイの(イ)のCのとおり、総勘定元帳に45,000,000円と計上していることの事実に照らすと、請求人の答述は信用できず、Dの申述は信用できる。
 このことから、請求人は、本件物件の取引に関する書類の一部しか会計事務所に提示していないと推認され、加えて、上記(ニ)のとおり、請求人には本件物件の売買に当たって取引を仮装する意思があったと認められるから、請求人に責任がないとは認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ロ 平成2年7月期の過少申告加算税の賦課決定処分
 上記(1)のとおり、更正処分は適法であり、かつ、請求人には、確定申告額が過少であったことについて通則法第65条第4項に規定する正当な理由があったとは認められないから、同条第1項の規定に基づきなされた過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
ハ 平成3年7月期の重加算税の賦課決定処分
 請求人は、平成2年4月27日にM社と売買金額10,000,000円の総合企画売買契約を締結し、同年8月1日にその売買代金10,000,000円を同社振出しの小切手で受領したこと及び当該売買代金10,000,000円が売上げの計上漏れであることを認め、平成3年7月期の更正処分については争わないところ、重加算税の賦課決定処分について争いがあるので、以下審理する。
(イ)請求人提出資料及び原処分関係資料を当審判所が調査したところ、次の事実が認められる。
A 請求人は、平成2年8月1日に上記の小切手10,000,000円をEの個人名で裏書きし、T銀行のEの個人の名義の普通預金口座に入金していること。
B 請求人は、M社に対して売買代金10,000,000円の領収証を発行しているが、請求人の会計帳簿にその記帳はなく、確定申告書に添付した損益計算書の売上高にも算入せず、また、請求人が当審判所に提出した領収証控の中には、該当する領収証控がないこと。
(ロ)以上の各事実によれば、請求人は、売買代金10,000,000円を確定決算の基とした総勘定元帳に記帳せず、当該売買代金に係る金員をEの個人の名義の普通預金口座に入金する方法で売上げを除外したものと認められる。
 このことは、通則法第68条第1項に規定する国税の課税標準等又は税額の基礎となるべき事実を隠ぺいし又は仮装したことに該当し、原処分庁が、通則法第68条第1項の規定に基づいてした重加算税の賦課決定処分は適法であり、請求人の主張には理由がない。
(ハ)請求人は、売買代金10,000,000円を会計帳簿に正当に記帳していた旨主張し、当審判所に対し、その証拠書類として上記イの(ヘ)のルーズリーフ式の現金出納帳を提出したが、当該帳簿が真実を記載した現金出納帳ではないこと及び上記(1)のイの(イ)の総勘定元帳の現金勘定が真正な現金出納帳であることは、上記イの(ヘ)で判断したとおりであるので、当該総勘定元帳の現金勘定に売買代金10,000,000円を正当に記帳していないことから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(ニ)また、請求人は、申告が過少となったのは請求人の責任ではない旨主張するが、上記(ロ)のとおり、売上げを除外した行為は、すべて請求人の行為であるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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(3)本件課税期間の消費税の重加算税の賦課決定処分について

 請求人は、原処分庁がした更正処分については争わず、重加算税の賦課決定処分について争いがあるので、審理したところ、上記(2)のハのとおり、請求人は、課税資産の譲渡等の対価の額(税込み)となる総合企画売買契約に係る売買代金10,000,000円をM社から同社振出しの小切手で受領し、領収証を発行しているにもかかわらず、Eの個人名でその小切手の裏書きをし、T銀行のEの個人の名義の普通預金口座に入金する方法により課税資産の譲渡等の対価の額(税込み)を除外したことが認められ、このような請求人の行為は、通則法第68条第1項に規定する課税標準等又は税額の基礎となるべき事実を隠ぺいし又は仮装したことに該当し、原処分庁が、通則法第68条第1項の規定に基づいてした重加算税の賦課決定処分は適法であり、請求人の主張には理由がない。

(4)本件期間分の本件納税告知処分について

 上記(2)のイの売上げの計上漏れに係る金員15,000,000円及び上記(2)のハの売上げの計上漏れに係る金員10,000,000円の合計25,000,000円が、請求人からEに対しての借入金の返済等であるか、請求人からEに対する臨時的な給与(賞与)となるかについて争いがあるので、以下審理する。
イ 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
(イ)E個人は、請求人の代表取締役であり、経営者として会社の経営に対し責任を負う立場にあるとともに、発行済株式の80パーセント以上を所有する株主であること。
(ロ)T銀行のEの個人の名義の普通預金は、E個人に帰属するものであること。
ロ 請求人提出資料及び原処分関係資料を当審判所が調査したところ、次の事実が認められる。
(イ)上記(2)のイの売上げの計上漏れに係る金員15,000,000円の決済状況等について
A 請求人は、平成2年1月30日に本件物件の申込金1,000,000円を現金で受領し、同日付の領収証を発行しているが、請求人の会計帳簿にその記帳はなく、確定申告書に添付した損益計算書の売上高に算入していないこと。
B 請求人は、平成2年2月2日に本件物件の手付金4,000,000円及び内金10,000,000円を現金で受領し、同日付の領収証を発行しており、当該現金14,000,000円を同月5日にT銀行の請求人名義の普通預金口座に入金し、うち10,000,000円については、同日に同銀行のEの個人の名義の普通預金口座に預け替えしているが、当該現金14,000,000円は、請求人の会計帳簿にその記帳はなく、確定申告書に添付した損益計算書の売上高に算入されていないこと。
 なお、請求人の会計帳簿には、現金14,000,000円をT銀行の請求人名義の普通預金口座に入金したこと及びT銀行の請求人名義の普通預金口座から10,000,000円を引き出したことの記帳がある。
C 上記BのT銀行の請求人名義の普通預金口座に入金した14,000,000円とT銀行の請求人名義の普通預金口座から引き出した10,000,000円との差額の4,000,000円の現金については、売上金の入金とすべきところ請求人の手持ち現金を普通預金口座に入金したとして経理処理をしているため、帳簿上の現金残高が実際の現金残高より4,000,000円過少となり、手許現金が4,000,000円過多となるが、平成2年7月期の決算終了までに現金過不足等の処理をした記録はないこと。
(ロ)上記(2)のハの売上げの計上漏れに係る金員10,000,000円の決済状況について
 請求人は、M社との総合企画売買契約に係る売買代金10,000,000円を平成2年8月1日に同社振出しの小切手で受領し、同日付の領収証を発行しており、更に、同日にEの個人名で同小切手の裏書きをし、その全額をT銀行のEの個人の名義の普通預金口座に入金していること。
(ハ)売上げの計上漏れに係る金員25,000,000円のうちT銀行のEの個人の名義の普通預金口座に入金した20,000,000円については、入金後、主に現金で引き出しているが、請求人の帳簿等への受入れの事実は認められないこと。
(ニ)請求人が提出した上記(1)のイの(イ)のCの総勘定元帳の長期借入金勘定には、Eとの貸借の記載はあるものの、上記(イ)及び(ロ)の金員に関する記載はないこと。
ハ 以上の事実を基に判断すると、Eは、(a)請求人の発行済株式の80パーセント以上を所有する株主であり、(b)請求人の代表取締役として、請求人を支配・管理しており、(c)その地位を利用することにより売上げの計上漏れに係る金員を受領し、その一部の金員を同人の個人の名義の普通預金口座に入金していたことが認められる。
 また、Eが現金領収した手付金1,000,000円及び同人の個人の名義の普通預金口座に入金した20,000,000円について、同人が請求人に返金等した事実は認められず、上記ロの(イ)のCの4,000,000円については、平成2年7月期以降において現金過不足等の調整をした事実はなく、請求人の事業遂行のために使用した事実を証する証拠も認められない。
 そうすると、売上げの計上漏れの金額の合計額25,000,000円をEが個人的に費消したと認めるほかなく、原処分庁が、請求人はEに対し臨時的な給与(賞与)を支給したものと認定したことは相当である。
ニ なお、請求人は、Eが当該金員を受領したことについて、請求人がEから借り入れていた金員の返済でありEが個人的に費消したものでない旨主張するが、当該金員が請求人からEに対し支給した臨時的な給与であることは上記のとおりであること及び上記ロの(ニ)の事実から当該金員をEへの借入金の返済に充てたとすることは認められず、当審判所の調査によっても、他に当該金員を借入金の返済に充てたとする資料もないことから、これらの点に関する請求人の主張は採用できない。
ホ ところで、原処分庁は、Eに対して賞与と認定した25,000,000円に係る源泉所得税の計算に当たって、それぞれの支払確定年月日を、本件各事業年度の末日としているが、上記イ及びロで認定したことからすれば、(a)上記ロの(イ)のAの1,000,000円については現金を受領した日である平成2年1月30日、(b)上記ロの(イ)のBの14,000,000円のうち10,000,000円についてはEの個人の普通預金口座に預け替えた日である平成2年2月5日、(c)上記ロの(イ)のBの14,000,000円のうち4,000,000円については平成2年7月期の末日である平成2年7月31日、(d)上記ロの(ロ)の10,000,000円についてはEの個人の普通預金口座に入金した日である平成2年8月1日とそれぞれ認めるのが相当である。
ヘ 原処分関係資料等を当審判所が調査したころ、請求人は、昭和54年8月31日に所得税法第216条《源泉徴収に係る所得税の納期の特例》の規定による源泉徴収に係る所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出し、同法第217条《納期の特例に関する承認の申請等》第5項の規定により源泉徴収に係る所得税の納期の特例の承認があったことが認められるので、所得税法第216条の規定を適用してそれぞれの法定納期限に納付すべき税額を算定すると、別表4の「納付すべき税額・審判所判断額」欄記載のとおり、平成2年7月から平成2年12月までの期間分5,410,448円となる。
ト 以上審理したところによれば、平成2年7月から平成2年12月までの期間分の源泉所得税の納付すべき税額は、納税告知処分の金額を下回ることとなるから、納税告知処分の一部を取り消すべきであり、また、平成3年7月から平成3年12月までの期間分の源泉所得税の納付すべき税額はないこととなるから、納税告知処分の全部を取り消すべきである。

(5)不納付加算税の賦課決定処分について

イ 上記(4)のとおり、平成2年7月から平成2年12月までの期間分の納税告知処分の一部を取り消すことに伴い、不納付加算税の賦課決定処分もその一部を取り消すべきであるが、納税告知処分のその他の部分については適法であり、かつ、本件納税告知処分により納付すべき税額が法定納期限までに納付されなかったことについて、通則法第67条第1項ただし書に規定する正当な理由があったとは認められないから、同項の規定に基づきなされた不納付加算税の賦課決定処分は相当である。
ロ 上記(4)のとおり、平成3年7月から平成3年12月までの期間分の納税告知処分は、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い平成3年7月から平成3年12月までの期間分の不納付加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

(6)その他

 原処分のその他の部分について、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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