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(平7.3.23裁決、裁決事例集No.49 460頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、ガソリンスタンドを営む者であるが、平成5年7月30日の審査請求に至る経緯及びその内容は、別表1に記載のとおりであり、これらの審査請求について併合審理する。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法、不当である。
イ 所得税の更正処分について
(イ)事業所得の金額
 原処分庁は、次のとおり、不当な推計の方法により、平成元年分、平成2年分及び平成3年分(以下、併せて「各年分」という。)の事業所得の金額を過大に算定した。
A 推計の必要性
 請求人が各年分の確定申告書に記載した事業所得の金額は、取引実績額を基礎とした損益計算の方法(以下「実額計算の方法」という。)によって算定した正当な金額であり、請求人は、原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)の際に、本件調査を担当した職員(以下「調査担当職員」という。)に対して、帳簿書類等の提示はしなかったが、各年分の事業所得の金額が正当であることの説明を行った。
 しかしながら、原処分庁は、一方的に推計の方法によって請求人の各年分の事業所得の金額を過大に算定した。
B 推計の合理性
 原処分庁が事業所得の金額の推計に当たって採用した同業者は、請求人との類似性がなく、当該同業者の売上原価率及び所得率等が請求人の率とかけ離れたものである。
 このことは、請求人の各年分の売上原価率が、別表2ー1に記載のとおり平成元年分88.28パーセント、平成2年分87.30パーセント及び平成3年分89.16パーセントとなることからも明らかであり、原処分庁の推計の方法に合理性はない。
C ところで、請求人が各年分の事業所得の金額を見直したところ、それらは別表3に記載のとおり、平成元年分1,184,000円、平成2年分2,090,000円及び平成3年分1,310,000円となる。
(ロ)雑所得の金額
 平成元年分の雑所得の金額について、原処分庁がそれを零円としたことについては争わない。
(ハ)以上により、請求人の各年分の総所得金額は、別表3に記載のとおり平成元年分1,184,000円、平成2年分2,090,000円及び平成3年分1,310,000円となるから、所得税の各更正処分のうち、平成元年分及び平成3年分についてはその全部が、平成2年分については2,090,000円を超える部分が取り消されるべきである。
ロ 所得税の過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、所得税の各更正処分のうち、平成元年分及び平成3年分についてはその全部が、平成2年分についてはその一部が取り消されるべきであるから、それらに伴い、過少申告加算税の各賦課決定処分のうち、平成元年分及び平成3年分についてはその全部が、平成2年分についてはその一部が取り消されるべきである。
ハ 消費税の更正処分について
(イ)課税標準額
A 原処分庁は、請求人の昭和64年1月1日から平成元年12月31日までの課税期間(以下「平成元年期分」という。)、平成2年1月1日から平成2年12月31日までの課税期間(以下「平成2年期分」という。)及び平成3年1月1日から平成3年12月31日までの課税期間(以下「平成3年期分」といい、平成元年期分及び平成2年期分と併せて「各年期分」という。)の消費税の課税標準額を、各年分の事業所得の総収入金額を基に算定した。
 そして、当該総収入金額は、請求人の売上原価を基に同業者率を用いて算定したものであるが、前記イの(イ)のBのとおり、原処分庁が採用した同業者は請求人との類似性がなく不当なものである。
B また、原処分庁が事業所得に係る総収入金額の算定の基礎とした売上原価には、次表に記載した非課税である軽油引取税の額が含まれているため、推計の方法によって算定された課税標準額は、非課税である軽油取引税に対応する金額(以下「軽油引取税相当額」という。)を含んだものであり、過大に算定されている。

(単位 円)
平成元年期分平成2年期分平成3年期分
4,480,0005,537,0006,290,000

(ロ)仕入税額控除
A 原処分庁は、請求人が、本件調査の際に、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第7項に規定する課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等(以下「帳簿等」という。)を、調査担当職員に提示しなかったことを理由として、課税仕入れに係る消費税額について、同条第1項に規定する課税仕入れに係る消費税額の控除(以下「仕入税額控除」という。)を認めなかった。
B しかしながら、請求人が帳簿等を提示しなかったのは、調査担当職員が、請求人に対してそれらの提示を全く求めなかったからである。
 また、請求人は、各年期分の消費税の確定申告書に、仕入税額控除の額を次表のとおり記載していたのであるから、仕入税額控除は当然認められるべきである。

(単位 円)
平成元年期分平成2年期分平成3年期分
1,190,0911,996,5142,233,080

(ハ)以上のとおり、各年期分の消費税の各更正処分は、課税標準額を過大に算定し、仕入税額控除を適用しないで行っており、違法であるからその全部が取り消されるべきである。
ニ 消費税の過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記ハのとおり、平成2年期分及び平成3年期分の消費税の各更正処分は違法であり取り消されるべきであるから、これに伴い平成2年期分及び平成3年期分の過少申告加算税の各賦課決定処分はその全部が取り消されるべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次のとおり適法である。
イ 所得税の更正処分について
(イ)事業所得の金額
A 推計の必要性
(A)調査担当職員は、本件調査の際に、請求人に対して、再三にわたり各年分の事業所得の金額の計算に必要な帳簿書類等の提示及び申告額を算出した計算基礎の説明を求めたにもかかわらず、請求人はこれに応じず、帳簿書類等を一切提示しなかった。また、請求人は、確定申告書に記載した事業所得の金額を正当とする具体的な理由の説明もしなかった。
(B)このような事情の下では、請求人の各年分の事業所得の金額を、実額計算の方法により算定することができなかったので、やむを得ず推計の方法によってその金額を算定したものであり、何ら違法な点はない。
B 推計の合理性
(A)請求人の事業所得の金額を推計するに当たって用いた同業者(以下「類似同業者」という。)は、売上原価の額が請求人のそれの0.5倍以上2倍以内で、かつ、帳簿書類等の備付け、記録及び保存が義務付けられ、決算額に信用性が担保されている青色申告者であって、業種業態の同一性及び事業規模の近似性等の同業者としての類似性並びに資料の正確性を考慮して選定しており、抽出の方法も合理的である。
(B)さらに、このような類似同業者の平均値によって推計する場合には、同業者間に通常存在する程度の営業条件等の差異は、その平均値に吸収され捨象されるものであるから、当該平均値による推計自体を不合理ならしめる程度の顕著なものでない限り合理的である。
C 各年分の事業所得の金額の算定根拠は、次のとおりである。
(A)総収入金額(売上金額)
 各年分の総収入金額は、下記(B)の請求人の各年分の売上原価の額を、類似同業者の各年分の総収入金額に占める売上原価の割合の平均値(以下「平均売上原価率」という。)でそれぞれ除して算定すると、別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり平成元年分66,171,839円、平成2年分65,851,000円及び平成3年分83,817,250円となる。
(B)売上原価の額
a 各年分の仕入金額は、別表5の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり平成元年分55,405,681円、平成2年分55,512,393円及び平成3年分69,023,506円である。
b 各年分の売上原価の算定に当たり、各年分の年初及び年末の棚卸金額は、請求人の事業内容及び規模等からみて著しい変動がないものと認められ、また、請求人からは何ら資料の提示がないため、年初及び年末とも同額とした。
C したがって、各年分の売上原価の額は、前記aの仕入金額と同額となる。
(C)事業所得の金額
 各年分の事業所得の金額は、前記(A)の請求人の各年分の総収入金額に、類似同業者の各年分の総収入金額に占める青色申告特典控除額控除前の所得金額の割合の平均値(以下「平均所得率」という。)をそれぞれ乗じて算定すると、別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成元年分6,425,285円、平成2年分6,275,600円及び平成3年分8,205,708円となる。
(ロ)雑所得の金額
 請求人は、平成元年分の確定申告において、雑所得の金額200,000円を申告しているが、その内容は不明であり、請求人に事業所得以外に該当する所得があるとは認められないからこれを零円とする。
(ハ)所得控除の額
A 配偶者控除等の額
 各年分において、請求人の妻Mについては合計所得金額が零円と認められるので、別表6の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり配偶者控除350,000円及び配偶者特別控除350,000円をそれぞれ控除する。
 なお、請求人は、平成2年分の確定申告において、請求人の父N(明治39年10月3日生まれ)について450,000円の配偶者控除を行っているが、Nは配偶者に該当しないから、当該控除は認められない。
B 扶養控除の額
 請求人は、各年分の確定申告において、扶養控除として請求人の長女L(昭和47年3月10日生まれ)及び長男K(昭和49年12月26日生まれ)について、それぞれ350,000円を控除しているが、両人は特定扶養親族に該当するから、それぞれ450,000円を控除する。
 また、Nについては、同居老親等に該当する老人扶養親族として各年分とも550,000円を控除する。
 したがって、各年分の扶養控除額は、別表6の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、それぞれ1,450,000円となる。
C その他の所得控除の額
 各年分の社会保険料控除、生命保険料控除及び基礎控除の額は、請求人が確定申告書に記載したとおりである。
 以上により、各年分の所得控除の額は、別表6の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成元年分2,874,000円、平成2年分2,987,000円及び平成3年分3,098,000円となる。
(ニ)課税総所得金額
 以上の結果、請求人の各年分の課税総所得金額を算定すると、別表6の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり平成元年分3,551,000円、平成2年分3,288,000円及び平成3年分5,107,000円となり、これらの金額は、いずれも各更正処分に係る課税総所得金額を上回るから、これらの更正処分は適法である。
ロ 所得税の過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、所得税の各年分の更正処分は適法であり、これらの更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実については、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、平成元年分及び平成2年分については同条第1項の規定並びに平成3年分については同条第1項及び第2項の規定に基づいて行った各年分の過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。
ハ 消費税の更正処分について
(イ)課税標準額
A 調査担当職員は、本件調査の際に、請求人に対して、再三にわたり各年期分の課税標準額の計算に必要な帳簿書類等の提示を求めたにもかかわらず、請求人は、帳簿書類等を提示せず、かつ、消費税の確定申告書に記載した課税標準額を正当とする具体的な理由の説明もなかった。
 そこで、原処分庁は前記イの(イ)のCの(A)の各年分の事業所得に係る総収入金額をもって課税資産の譲渡等に係る対価の額及び消費税額の合計額(以下「課税資産の譲渡等に係る税込み対価の額」という。)と認定したものであり、これらを基に各年期分の課税標準額を算定すると、別表7の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成元年期分48,183,000円、平成2年期分63,933,000円及び平成3年期分81,375,000円となる。
B 請求人は、原処分庁が算定した各年期分の課税標準額に、非課税である軽油引取税相当額が含まれているから、当該課税標準額を過大に算定した違法がある旨主張するが、軽油引取税の取扱いについては、消費税法取扱通達10ー1ー10《個別消費税の取扱い》において、「消費税法第28条《課税標準》第1項に規定する課税資産の譲渡等の対価の額には、酒税、たばこ税、揮発油税、石油税、石油ガス税等が含まれるが、軽油引取税、ゴルフ場利用税、特別地方消費税及び入湯税は、利用者等が納税義務者となっているのであるから対価の額に含まれないことに留意する。ただし、その税額に相当する金額について明確に区分されていない場合は、対価の額に含むものとする」と定められているところである。
 そして、軽油引取税については、その特別徴収義務者である軽油引取税についての特約業者に該当する事業者(以下「特約店等」という。)が販売する場合には課税標準たる対価の額に含めないことができるのであるが、特別徴収義務者に該当しないガソリンスタンド等が販売する場合には課税標準たる販売価格から軽油引取税を控除することができないため、原処分庁は課税標準額に軽油引取税相当額を含めて計算したものであり、何ら違法、不当な点はない。
(ロ)課税標準額に対する消費税額
 各年期分の課税標準額に対する消費税額は、上記(イ)の課税標準額に100分の3を乗じて算定すると、別表7の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり平成元年期分1,445,490円、平成2年期分1,917,990円及び平成3年期分2,441,250円となる。
(ハ)仕入税額控除
A 消費税法第30条第1項には、仕入税額控除について規定されているが、同条第7項では、「第1項の規定は、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合には適用しない」旨規定されている。
B ところで、調査担当職員は、本件調査の際に、請求人に対して、仕入税額控除は、帳簿等の保存がある場合に限り適用がある旨を説明し、再三にわたり帳簿等の提示を求めたにもかかわらず、請求人がそれらを一切提示しなかったため、その保存の事実を確認できなかった。
 このことは、消費税法第30条第7項に規定する「帳簿又は請求書等を保存しない場合」に該当するので、各年期分について同条第1項の規定を適用することはできない。
C また、請求人は、消費税法第37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項の規定の適用を受ける旨の届出書を提出していないので、この規定の適用もない。
(ニ)納付すべき税額
 以上の結果、各年期分の納付すべき税額を算定すると、別表7の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成元年期分1,445,400円、平成2年期分1,917,900円及び平成3年期分2,441,200円となり、これらの金額は、いずれも各更正処分の納付すべき税額を上回るから、これらの更正処分は適法である。
ニ 消費税の過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、消費税の各年期分の更正処分は適法であり、これらの更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実については、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて行った平成2年期分及び平成3年期分の過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、各年分の事業所得の金額及び各年期分の課税標準額の多寡並びに消費税の仕入税額控除の適用の可否であるので、以下審理する。

(1)所得税の更正処分について

イ 事業所得の金額
(イ)推計の必要性
A 請求人は、原処分庁が、不当な推計の方法により、請求人の事業所得の金額を一方的に過大に算定した旨主張するが、所得金額を実額計算の方法により算定するためには、請求人自らが原処分庁の調査に応じ、収入及び支出の内容を明らかにすることが必要である。
B そこで、当審判所の調査したところによれば、本件調査に際し、調査担当職員が再三にわたって各年分の事業所得の金額の計算の基礎となる帳簿書類等を提示するよう求めたにもかかわらず、請求人は、これに応じず、また、請求人は調査担当職員の質問に対して各年分の確定申告額を正当とする具体的な説明もしなかったことが認められる。
 このような状況の下では、原処分庁が、請求人の各年分の事業所得の金額を実額計算の方法により算定することができないと判断し、やむを得ず、請求人の取引先等を調査した結果に基づき推計の方法によりそれらを算定したことが認められるから、原処分庁が各年分の事業所得の金額を推計の方法により算定したことに、違法又は不当は認められない。
C ところで、請求人は、当審判所に対し、各年分の収支の計算書を提出して、別表3に記載のとおりの実額計算の方法による事業所得の金額を主張し、これを裏付ける証拠資料として次のものを提出した。
(A)各年分のX石油株式会社(以下「X石油」という。)の得意先元帳兼請求書の一部の写し
(B)各年分のガソリン等の月別の仕入・販売数量明細表
(C)各年分の差益金額の計算書(別表2ー2)
(D)各年分の必要経費の明細書(別表3の「必要経費の額」欄)
D そこで、上記Cの(A)ないし(D)の証拠資料について当審判所が審理したところ、次のとおりである。
(A)請求人は、別表2ー1に記載のとおり、仕入金額にガソリン等の差益金額を加算する方法によって売上金額(総収入金額)を算定しているが、日々の取引状況を継続的に記録した売上帳及び現金出納帳等の帳簿書類の提出がなく、また、請求人が主張するガソリン等の1リットル当たりの差益金額を裏付ける証拠資料の提出がないことから、売上金額の正否を確認することができない。
(B)各年分の必要経費の明細書に記載された科目ごとの金額については、これを裏付ける領収書等の証拠資料の提出がなく、また、日々の取引状況を継続的に記録した経費帳及び現金出納帳等の提出がないことから、それらの正否を確認することができない。
E 以上の結果、当審判所においても、請求人の各年分の事業所得の金額を実額計算の方法により算定することができないと認められるので、推計の方法により算定せざるを得ないから、以下、原処分庁が採用した推計の合理性及びその計算の適否について審理する。
(ロ)推計の合理性
A 原処分庁は、請求人の各年分の売上原価を基に、各年分とも類似同業者4件を選定し、その平均売上原価率及び平均所得率を適用して請求人の各年分の事業所得の金額を推計の方法によって算定していることが認められる。
 事業所得の金額を算定するに当たり、実額計算の方法によることができない場合において、同業者の平均的な所得率等によって所得金額を推計することは、業種業態に類似性のある同規模程度の同業者においては、特段の事情のない限り、同程度の売上原価に対し、同程度の収入を得ること及び同程度の収入に対し同程度の経費を支出し、同程度の所得を得ることが通例であり、このことは、請求人の営む事業においても例外ではなく、かつ、請求人に特段の事情があるとは認められないから、原処分庁の採用した推計の方法には合理性があると認められる。
B ところで、一般に、同業者の選定に当たっては、(a)青色申告書を提出している者であること、(b)事業内容が類似していること、(c)事業規模が同規模程度であること、(d)年間を通じて事業を営んでいること、(e)その年分について不服申立て又は訴訟が係属中でないことのすべてに該当することがその基準とされている。
C また、類似同業者の平均値によって推計する場合、選定された同業者に業種業態及び事業規模の類似性等の推計の基礎的要件に欠けることがない以上、同業者間に通常存する程度の個別的条件の差異は、平均値の中に吸収され捨象されるものであるから、当該平均値による推計自体を全く不合理ならしめるほど顕著なものでない限り、これを考慮する必要はないと解されている。
D 原処分庁は、Y税務署管内に事業所を有し、請求人と同業種の者で、かつ、その年分の売上原価の額が請求人のそれの0.5倍以上2倍以内であるなど事業規模の類似する事業を営む青色申告者4件を類似同業者としているので、当審判所において、原処分庁が選定した類似同業者4件についてその適否を検討したところ、類似同業者のうち3件についてはいずれも前記Bに記載した基準を満たし、請求人と事業内容・規模等が類似すると認められるが、残り1件については事業内容が必ずしも請求人と類似していない点が認められるので、これを除き、当審判所において新たに前記Bに記載した基準を満たしている同業者1件を追加選定して、これら同業者4件(以下「修正類似同業者」という。)の総収入金額に占める売上原価の額の割合の平均値(以下「修正平均売上原価率」という。)を求めると、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成元年分85.05パーセント、平成2年分84.62パーセント及び平成3年分83.22パーセントとなり、また、総収入金額に占める青色申告特典控除額控除前の所得金額の割合の平均値(以下「修正平均所得率」という。)を求めると、同表の「審判所認定額」に記載のとおり、平成元年分8.74パーセント、平成2年分9.62パーセント及び平成3年分9.72パーセントとなる。
E なお、請求人は、原処分庁が事業所得の金額の推計に当たって採用した同業者は、請求人との類似性がなく、当該同業者の売上原価率及び所得率等は、請求人の率とかけ離れたものである旨主張する。
 しかしながら、類似同業者の平均値により推計する場合には、請求人と業種業態及び事業規模等が類似する同業者を選定した結果、類似同業者間の売上原価率又は所得率に開差があったとしても、相当数の同業者の平均値を算出することによって、それぞれの同業者の個別性が平均化され、一般的に推計の合理性が高まると解するのが相当であることについては、前記AないしCで述べたとおりであり、原処分庁による類似同業者の選定は、上記Dのとおり、3件については合理的に行われており、他の1件については、当審判所において合理的に選定替えしたところである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ハ)以上により、請求人の各年分の事業所得の金額を算定すると次のとおりである。
A 総収入金額(売上金額)
 各年分の総収入金額は、下記Bの売上原価の額を修正平均売上原価率で除して算定すると、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成元年分65,217,749円、平成2年分65,516,489円及び平成3年分82,827,128円となる。
B 売上原価の額
 当審判所が原処分庁の算定した請求人の各年分の仕入金額を検討したところ、算定誤りが認められ、当審判所が算定すると、別表5の「審判所認定額」欄に記載したとおり、平成元年分55,467,696円、平成2年分55,440,053円及び平成3年分68,928,736円であると認められる。
 なお、原処分庁は、各年分の売上原価の額の算定に当たり、各年分の年初及び年末の棚卸金額を同額として、各年分の仕入金額をもって各年分の売上原価の額としているところ、当審判所の調査によっても、請求人の事業内容、規模等からみて、各年分の年初及び年末の棚卸金額に著しい変動があるとは認められないから、この点に関する原処分庁の認定は相当と認められる。
C 事業所得の金額
 各年分の事業所得の金額は、前記Aの総収入金額に修正平均所得率を乗じて算定すると、別表4の「審判所認定額」欄に記載したとおり、平成元年分5,700,031円、平成2年分6,302,686円及び平成3年分8,050,796円となる。
 なお、請求人は、平成3年分については貸倒損失があるとして、当審判所に貸倒損失に係る約束手形(平成2年6月10日有限会社D振出、額面金額1,000,000円)の写しを提出した。
 しかし、請求人の主張する貸倒損失の額については、請求人は、本件調査の際、貸倒損失に係る申出及び証拠資料としての約束手形の提出をしておらず、貸倒れの事実につき疑問があるほか、日々の取引状況を記録した売掛帳等を提出しないから、事業との関連性を明らかにすることができないため、上記の算定額から更に控除することはできない。
ロ 雑所得の金額
 平成元年分の雑所得の金額が零円であることについては、当事者間に争いはなく、当審判所においてもこれを不相当とする理由はない。
ハ 所得控除の額
 各年分の所得控除の額については、当事者間に争いはなく、当審判所の調査の結果によっても相当と認められ、別表6の「審判所認定額」欄の記載のとおり、平成元年分2,974,000円、平成2年分2,987,000円及び平成3年分3,098,000円となる。
 なお、原処分庁は、平成元年分の所得控除の額を2,874,000円と算定しているが、これは計算誤りと認められる。
ニ 課税総所得金額
 以上の結果、各年分の課税総所得金額を算定すると、別表6の「審判所認定額」欄に記載したとおり、平成元年分2,726,000円、平成2年分3,315,000円及び平成3年分4,952,000円となる。
 そうすると、当審判所が認定した請求人の平成元年分及び平成2年分の課税総所得金額は、いずれも更正処分に係る課税総所得金額を上回るから、これらの更正処分は適法であり、また、平成3年分の課税総所得金額は更正処分に係る課税総所得金額を下回るから、当該更正処分はその一部を取り消すべきである。

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(2)所得税の過少申告加算税の賦課決定処分について

イ 平成元年分及び平成2年分については、上記(1)のとおり各更正処分は適法であり、また、各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいて行った過少申告加算税の各賦課決定処分は、適法である。
ロ 平成3年分については、上記(1)のとおり更正処分の一部が取り消されることに伴い、過少申告加算税の基礎となる税額は680,400円となる。
 したがって、この納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて過少申告加算税の額を算定すると77,000円となり、この金額は賦課決定処分に係る金額に満たないから、過少申告加算税の賦課決定処分はその一部を取り消すべきである。

(3)消費税の更正処分について

イ 課税標準額
(イ)請求人は、原処分庁が、事業所得に係る総収入金額を基に課税標準額を推計の方法によって算定したことについて、〔1〕原処分庁が事業所得に係る総収入金額の推計に当たって採用した同業者は請求人との類似性がなく不当であり、〔2〕原処分庁が算定した課税標準額には非課税である軽油引取税相当額が含まれていることから違法である旨主張する。
 そして、請求人は、当審判所に対して次の資料を提出した。
A 各年期分に係るX石油が発行した得意先元帳兼請求書の一部の写し(前記(1)のイの(イ)のCの(A)と同一のもの)
B 各年期分(平成元年期分については平成元年4月から同年12月まで)の軽油引取税の月別支払明細表
C 前記Aの得意先元帳に記載された課税売上高の月別明細表
D 上記Cの課税売上高に対する消費税額の月別明細表
(ロ)原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査したところによれば、次の事実が認められる。
A 請求人は、各年期分の消費税について、別表1の「確定申告」欄に記載のとおり確定申告したこと。
B 調査担当職員は、本件調査の際に、再三にわたり、請求人に対して、課税標準額の計算に必要な帳簿書類等の提示を求めたが、請求人は、これに応じなかったこと。
C 別表5に記載した請求人の各年分の仕入金額には、軽油本体の価額及び軽油引取税の額が含まれていること。
D 修正類似同業者の総収入金額及び売上原価の額には、それぞれ軽油引取税相当額及び軽油引取税の額が含まれていること。
E 請求人とX石油との間に係る取引の状況等は、次のとおりであること。
(A)X石油は、地方税法第700条の2《用語の定義》第1項第3号に規定する特約業者に該当し、軽油引取税に係る特別徴収義務者である。
(B)請求人は、平成元年3月31日に、X石油との間で軽油委託販売契約書を取り交わしているが、請求人は、当該契約書の取り交わしの有無については、当審判所に対し「分からない。そういう契約は結んでいない」と答述している。
(C)上記契約に係る契約書には、請求人は、X石油に対して、一定期間ごとに委託販売報告書を提出する義務がある旨記載されているが、請求人は同委託販売報告書をX石油に提出していない。
(ハ)消費税法第28条第1項の規定によれば、課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額とされており、また、課税資産の譲渡等の対価の額は、対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税に相当する額を含まないものとされている。
(ニ)ところで、課税資産の譲渡等に関連して取得する金銭のうちには、消費税以外の個別消費税に相当する額が含まれている場合があり、これが課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるかどうかが問題となるが、この点に関しては、次のとおり解される。
A 軽油引取税、ゴルフ場利用税及び特別地方消費税等については課税資産の譲受け等をする者が納税義務者となっている。このため特約店等にあっては、特別徴収義務者として納税義務者から軽油引取税そのものを特別徴収し、地方公共団体に納付するのであるから、その税額は、基本的に課税資産の譲渡等の対価に該当しないこととなるが、特約店等(特別徴収義務者)に該当しないガソリンスタンド等の石油製品販売業者(以下「販売店」という。)にあっては、特別徴収義務者に該当しないから、販売店が特約店等に支払った軽油引取税額を顧客への売却価格に上乗せして軽油を販売しても、その軽油引取税相当額は、売却価格の一部にすぎず、課税資産の譲渡等の対価の額に含まれることとなる。
B 販売店が、特約店等との間で軽油に関する委託販売契約を締結し、特約店等の軽油を販売する販売店等(以下「委託販売店等」といい、委託販売店等以外の販売店を「一般販売店」という。)である場合には、原則として特約店等から受け取る委託販売手数料が役務の対価として、課税資産の譲渡等の対価の額になる。
(ホ)そこで、請求人が特約店等、一般販売店及び委託販売店等のいずれに該当するか等について判断する。
A 請求人が特約店等に該当せず、販売店に該当することは明らかである。
B 請求人は、X石油との間で前記(ロ)のEの(B)のとおり、軽油委託販売契約書を取り交わしているが、前記(ロ)のEの(B)の答述及び同(C)のとおり、請求人は上記契約を認識していないうえ、上記契約にそった取引の処理をしていないから、請求人のX石油との取引は、委託販売契約としての実態を備えているとは認められない。
C したがって、請求人は一般販売店に該当すると認められるから、請求人における課税資産の譲渡等の税込み対価の額は、特約店等に支払った軽油引取税相当額を含む顧客への売却価格等の総額すなわち総収入金額である。
(ヘ)次に、課税標準額について判断する。
A 前記(ロ)のBのとおり、調査担当職員が、請求人に対して、再三にわたり課税標準額の計算に必要な帳簿書類等の提示を求めたにもかかわらず、請求人からは何ら正当な事由がないまま帳簿書類等の提示が一切なかったことから、原処分庁が、各年分の事業所得の総収入金額(平成元年分については総収入金額に12分の9を乗じた金額)をもって、各年期分の課税資産の譲渡等の税込み対価の額と認定し、それらを基に、各年期分の課税標準額を算定したことは、相当であると認められる。
 なお、平成元年期分については、平成元年4月1日以降の資産の譲渡等のみが課税対象となるところ、請求人にあっては、総収入金額は推計の方法により算定せざるを得ず、また、各月の総収入金額に、各月間で著しい差があると認めることはできないから、平成元年分の事業所得に係る総収入金額を平成元年の月数12で除し、これに平成元年4月1日から同年12月31日までの期間の月数9を乗じた額を、課税資産の譲渡等の税込み対価の額とするのが相当である。
B もっとも、原処分庁が事業所得に係る総収入金額を推計する際に採用した類似同業者の適否については、前記(1)のイの(ロ)で述べたとおり、修正類似同業者の修正平均売上原価率を適用することがより合理的である。
 そこで、当審判所が、請求人の各年分の事業所得に係る総収入金額を、請求人の各年分の売上原価の額を基に、修正平均売上原価率を用いて算定すると、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおりである。
 なお、上記の請求人の売上原価の額には軽油引取税の額が含まれており、また、修正類似同業者の売上原価の額についても同様である。
C ところで、請求人は、前記2の(1)のハのBのとおり主張するが、次の理由により請求人の主張には理由がない。
(A)前記(ニ)のAのとおり、特別徴収義務者である特約店等にあっては、軽油引取税の額は、基本的に課税資産の譲渡等の額に該当しないが、請求人は一般販売店であって、同税を徴収する者ではなく、納税する者であり、また、一般販売店が軽油引取税相当額を価格に上乗せして顧客から対価を受領しているとしても、当該軽油引取税相当額は軽油引取税自体ではなく、上記対価の受領は同税の徴収ではないこと。
(B)軽油引取税相当額については、消費税法別表第一の消費税を課さない資産の譲渡等の対価の額に該当しないこと。
(C)上記Bの各年分の事業所得に係る総収入金額の推計の方法による算定についても、上記Bのなお書のとおり、修正類似同業者の売上原価の額には軽油引取税の額が含まれ、それゆえ、その総収入金額についても軽油引取税相当額が含まれているから、推計の方法は合理的であること。
D そうすると、消費税法第28条の規定に基づく各年期分の課税標準額は、別表7の「審判所認定額」欄に記載のとおり、前記Bの各年分の事業所得に係る総収入金額(平成元年分については、前記Aのとおり、同年分の総収入金額に12分の9を乗じた金額)に103分の100を乗じた金額から千円未満の端数を切り捨てて算定した平成元年期分47,488,000円、平成2年期分63,608,000円及び平成3年期分80,414,000円となる。
ロ 課税標準額に対する消費税額
 各年期分の課税標準額に対する消費税額は、上記イの課税標準額に100分の3を乗じて算定すると、別表7の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成元年期分1,424,640円、平成2年期分1,908,240円及び平成3年期分2,412,420円となる。
ハ 仕入税額控除
(イ)請求人は、調査担当職員が仕入税額控除に係る帳簿等の提示要求をせずに、仕入税額控除を認めないのは違法であり、また、各年期分の消費税の確定申告書に仕入税額控除の額を記載していたのであるから、当該控除を認めるべきである旨主張する。
 そして、請求人は、当審判所に対して前記イの(イ)のA、C及びDの資料を提出した。
(ロ)そこで、当審判所が調査したところ、次の事実が認められる。
A 調査担当職員は、平成4年5月13日、同年6月23日及び同年9月9日に、請求人の事業所へ臨場した際に、請求人に対して課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の提示がない場合には仕入税額控除の適用ができないことを教示し、帳簿等の提示を求めたこと。
B 請求人は、上記Aの調査担当職員の帳簿等の提示の求めに対して、「更正してくれて結構。争うしかない」等と申し立て、帳簿等を提示しなかったこと。
(ハ)ところで、消費税法第30条第7項によれば、同条第1項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等を保存しない場合には、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合を除き、当該保存がない課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しないこととされている。
 また、消費税法施行令第50条《課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の保存期間等》第1項によれば、同法第30条第1項の規定の適用を受けようとする事業者は、同条第7項に規定する帳簿等を整理し、帳簿についてはその閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日から、請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から、それぞれ2月を経過した日から7年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならないこととされている。
 これらの規定内容を通観すれば、帳簿等の保存年限が、商法では10年とされているのに対して、消費税法では税務当局において課税権限を行使し得る最長の年限である7年とされていること、また、その保存場所も納税地等に限られていることからみて、消費税法第30条第7項が、帳簿等の保存がなければ原則として同条第1項の規定を適用しないとしているのは、適法な税務調査がなされる際には、当然に保存されている帳簿等が提示され、これに基づいて課税仕入れ等に係る消費税額が算出され得ることを予定し、このような確実な資料が保存されていない場合には、仕入税額を控除しないこととするという趣旨であるものと解される。
 そうすると、消費税法第30条第7項にいう帳簿等の保存とは、ただ単に帳簿等が事業者の支配下に存在するということのみをいうのではなく、適法な税務調査に際し、税務職員からその提示、閲覧を求められたときには、正当な事由がない限りこれに応じ、当該職員においてこれを確認し得る状態に置くべきことも含み、かつ、これを7年間継続しなければならないと解するのが相当である。
(ニ)前記(ロ)の事実を上記(ハ)に照らして判断すると、次のとおりである。
A 仕入税額控除は、上記(ハ)のとおり、仕入税額控除に係る帳簿等の保存があるものについて適用されるところ、前記(ロ)のとおり、調査担当職員が、請求人に対して、再三にわたり、仕入税額控除に係る帳簿等の保存がなければ仕入税額控除は認められない旨を教示し、その帳簿等の提示を求めたにもかかわらず、請求人は何ら正当な事由がないのにこれに応じなかったことが認められるから、本件においては、消費税法第30条第7項に規定する帳簿等を保存していなかったというべきであるから、同条第1項の規定による仕入税額控除を適用することはできない。
B また、請求人が、各年期分の消費税の確定申告書に仕入税額控除の額を記載していたとしても、上記(ハ)のとおり、仕入税額控除は、帳簿等の保存がないものについては適用されないと解されるから、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
C さらに、請求人は、当審判所に対して、前記イの(イ)のA、C及びDに記載したX石油の得意先元帳等の写しを提出したが、上記(ハ)で述べたとおり、事業者が仕入税額控除の適用を受けるためには、法定申告期限を経過した日から7年間、適法な税務調査に際し、税務職員から仕入税額控除に係る帳簿等の提示を求められたときには、これに応じ帳簿等を当該職員が確認し得る状態に置くべきことも含め、その保存を継続しなければならないところ、請求人は、前記(ロ)のとおり、本件調査に際して、X石油の得意先元帳等を含めた仕入税額控除に係る帳簿等を調査担当職員に一切提示しなかったのであるから、既にその時点において、帳簿等の保存を継続していないと言わざるを得ない。
 したがって、請求人が、その後に至り、前記イの(イ)のA、C及びDの資料を当審判所に提出したからといって、原処分がさかのぼって違法となり、請求人が仕入税額控除の適用を受けられると解することはできない。
 以上のとおり、請求人の仕入税額控除に関する主張は採用することができない。
ニ 納付すべき税額
 以上の結果、各年期分の納付すべき税額を算定すると、別表7の「審判所認定額」欄に記載のとおり平成元年期分1,424,600円、平成2年期分1,908,200円及び平成3年期分2,412,400円となる。
 そうすると、当審判所が認定した請求人の平成元年期分の納付すべき税額は更正処分に係る納付すべき税額を上回るから、更正処分は適法であり、また、平成2年期分及び平成3年期分の納付すべき税額はいずれも更正処分に係る納付すべき税額を下回るから、これらの更正処分はその一部を取り消すべきである。

(4)消費税の過少申告加算税の賦課決定処分について

イ 上記(3)のとおり、平成2年期分及び平成3年期分の各更正処分の一部が取り消されることに伴い、過少申告加算税の基礎となる税額は平成2年期分1,715,800円及び平成3年期分2,332,300円となる。
ロ したがって、この納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて過少申告加算税の額をそれぞれ算定すると平成2年期分231,500円及び平成3年期分324,500円となり、平成2年期分の金額は賦課決定処分に係る金額と同額であるから過少申告加算税の賦課決定処分は適法であり、また、平成3年期分の金額は賦課決定処分に係る金額に満たないから、過少申告加算税の賦課決定処分はその一部を取り消すべきである。

(5)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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