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(平7.6.20裁決、裁決事例集No.49 525頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、電気メッキ業を営む同族会社であるが、平成元年8月1日から平成2年7月31日まで、平成2年8月1日から平成3年7月31日まで及び平成3年8月1日から平成4年7月31日までの各課税期間(以下、順次、「平成2年7月期」、「平成3年7月期」及び「平成4年7月期」といい、これらを併せて「各課税期間」という。)の消費税について、別表の「確定申告」欄のとおり記載した確定申告書をいずれも法定申告期限までに提出した。
 原処分庁は、平成5年6月29日付で別表の「更正」欄のとおり更正処分及び「賦課決定」欄のとおり賦課決定処分をした。
 請求人は、これらの処分を不服として、平成5年8月24日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成5年11月18日付で別表の「異議決定」欄のとおり、平成3年7月期については一部を取り消し、平成2年7月期及び平成4年7月期についてはいずれも棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成5年12月16日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正処分について
 請求人は、M株式会社(平成2年10月1日の名称変更以前はN株式会社という。)、株式会社K(平成2年7月27日の名称変更以前はL株式会社という。)及びG株式会社(以下、順次、「M社」、「K社」及び「G社」といい、これらを併せて「M社等」という。)との各課税期間の取引について、M社等からのメッキ加工賃相当額を消費税の課税標準額に算入して確定申告をした。
 これに対し、原処分庁は、M社等からメッキ加工のため支給される原材料部品の金額にM社等のメッキ加工賃を加算したM社等の製品の金額が、消費税法取扱通達1―4―3《原材料等の支給による加工等の場合の課税売上高の計算》の定めにより、課税資産の譲渡等の対価の額に当たると認定し、課税標準額に算入して更正処分をした。
 しかしながら、各課税期間におけるM社等との原材料部品の取引は、有償支給の形態を採っているが、次のとおり、無償支給の形態と同様であることから、M社等の原材料部品を消費税法取扱通達5―2―13《下請先に対する原材料の支給》の「自己の資産として管理しているとき」に該当するので、課税資産の譲渡等には当たらない。
(イ)M社等の原材料部品は、M社等が一方的に設定する単価に基づく有償支給の形態を採っていること及びM社等から何時、どこに、幾つ納入する等の指示をされていることから、請求人は、M社等の原材料部品の品質及び数量の管理を事実上代行しているにすぎない。
(ロ)M社及びK社の原材料部品は、両社の純正部品であり、また、G社の原材料部品は、A株式会社(以下「A社」という。)の純正部品であることから、これらの純正部品の処分は事実上不可能であり、請求人には処分権がないと解すべきであるので、M社等から支給される原材料部品の実質的な所有権はM社等にあり、請求人にとっては、M社等からの預り在庫である。
(ハ)請求人は、メッキ剤等の加工原料を自己の責任で調達し、M社等の原材料部品にメッキ加工をするもので、M社等のメッキ加工賃を対価とする役務の提供であることから、それに即したM社等のメッキ加工賃を収入とする経理処理を行っている。
 したがって、課税標準額に算入される金額は、M社等のメッキ加工賃である。
ロ 賦課決定処分について
 前記イのとおり、平成3年7月期及び平成4年7月期の各更正処分は違法であることから、その全部の取消しに伴い、平成3年7月期及び平成4年7月期の過少申告加算税の各賦課決定処分も、その全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 更正処分について
(イ)請求人とM社等との取引等について調査したところ、次の事実が認められる。
A M社等は、請求人に対してM社等の原材料部品を売上げ、請求人がM社等の原材料部品にメッキ加工した製品を仕入れる、いわゆる原材料等の有償支給による取引であると認識している。
B M社等は、請求人に対しM社等の原材料部品を支給する場合は、資産の譲渡等があったとして、また、請求人からメッキ加工した製品の納入を受ける場合は、課税仕入れがあったとして経理処理をしている。
C M社等との取引において、メッキ加工の不良などの破損部品が発生した場合には、当該破損部品代金の相当額を請求人が負担することとなっている。
D 請求人は、決算時において、請求人が保有するM社等の原材料部品を自己の棚卸資産として決算書に計上している。
E M社等の原材料部品は、M社等の純正部品であり、M社等との取引契約上、メッキ加工した後にM社等へ譲渡することを予定しているので、他に売却するなどの行為が事実上不可能であって、請求人に処分権がないとは認められない。
F M社等は、支給する原材料部品に手配番号を付けて管理等を行っているが、M社等は、自己の資産として管理しているものではなく、製品の品質管理及び下請業者からの納入数量管理などの生産管理のために行っているものであり、請求人に支給した原材料部品を決算時に棚卸資産として決算書に計上していない。
G 請求人とM社等との間に行われる代金の決済方法は、請求人からM社等へ納入した製品に相当するM社等の原材料部品の金額を相殺するという方法ではなく、単に、その月に請求人がM社等へ納入した製品の代金とM社等が請求人に支給した原材料部品の代金を相殺し、その差額を支払う方法である。
 以上の事実から判断すると、請求人とM社等との間の取引は、有償で原材料部品を支給されていると認められる。
(ロ)ところで、消費税法取扱通達1―4―3の(1)には、事業者が製造販売契約の方式により原材料等を有償支給で受けて加工等を行った場合の基準期間における課税売上高に算入される課税資産の譲渡等の対価の額は、加工等を行った製品の譲渡の対価の額となる旨定められている。
 したがって、請求人の消費税の課税売上高に算入される課税資産の譲渡等の対価の額の計算に当たり、請求人からM社等に納入した製品については、当該製品の譲渡の対価の額により計算することとなる。
(ハ)請求人が主張する消費税法取扱通達5―2―13は、支給者を対象とした定めである。
 また、前記(イ)のBのとおり、M社等は、請求人に対しM社等の原材料部品を支給する場合は、資産の譲渡等があったとして、また、請求人からメッキ加工した製品の納入を受ける場合は、課税仕入れがあったとして経理処理をしており、かつ、前記(イ)のGのとおり、代金の支払は、メッキ加工した製品の納入代金と、この製品とは無関係の部品の支給代金とを相殺して支払う方法であることから、M社等は、明らかに自己の資産として管理しているとは認められない。
 そうすると、消費税法取扱通達5―2―13に定める、M社等が自己の資産として管理しているときに該当する旨の請求人の主張には理由がない。
(ニ)納付すべき税額について
A 課税標準額
 各課税期間の課税標準額は、下記(A)及び(B)の合計額、平成2年7月期487,618,000円、平成3年7月期558,235,000円及び平成4年7月期549,577,000円(千円未満の端数切捨て)となる。
(A)請求人の確定申告書に記載されている各課税期間の課税売上高は、次表のとおりである。

(単位 円)
平成2年7月期平成3年7月期平成4年7月期
377,793,970439,574,700409,970,503

(B)請求人がM社等に納入した各課税期間の原材料部品の金額は、次表のとおりである。

(単位 円)
取引先\課税期間平成2年7月期平成3年7月期平成4年7月期
M社49,713,26146,835,29853,042,597
K社3,014,0482,774,6053,796,743
G社57,097,22369,051,18582,767,600
 計109,824,532118,661,088139,606,940

B 課税標準額に対する消費税額
 各課税期間の課税標準額に対する消費税額は、前記Aの課税標準額に100分の3を乗じて算定した平成2年7月期14,628,540円、平成3年7月期16,747,050円及び平成4年7月期16,487,310円となる。
C 消費税からの控除税額
 請求人は、消費税法(平成3年法律第73号改正前のもの。以下同じ。)第37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項の適用を受ける旨の届出書を提出していることから、この規定に基づく消費税からの控除税額は、前記Bの課税標準に対する消費税額に100分の80を乗じて算定した、平成2年7月期11,702,832円、平成3年7月期13,397,640円及び平成4年7月期13,189,848円となる。
D 納付すべき税額
 各課税期間の納付すべき税額は、前記Bの課税標準に対する消費税額から、前記Cの消費税からの控除税額を差し引いた金額、平成2年7月期2,925,700円、平成3年7月期3,349,400円及び平成4年7月期3,297,400円(百円未満の端数切捨て)となる。
 したがって、この金額の範囲内でした各課税期間の更正処分は適法である。
ロ 賦課決定処分について
 前記イのとおり、平成3年7月期及び平成4年7月期の各更正処分は適法であり、かつ、請求人が過少申告したことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、同条第1項の規定に基づいてされた平成3年7月期及び平成4年7月期の過少申告加算税の各賦課決定処分も適法である。

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3 判断

(1)更正処分について

 M社等から支給される原材料部品相当額が、消費税の課税標準額に算入されるか否かについて争いがあるので、調査・審理したところ、次のとおりである。
イ 次のことについては、当事者間に争いはなく、当審判所の調査によっても、その事実が認められる。
(イ)M社等の原材料部品は、M社等の純正部品であること。
(ロ)請求人は、M社等から支給される原材料部品にメッキ加工をほどこし、M社等に納入していること。
(ハ)請求人は、平成元年9月27日、原処分庁に消費税法第37条第1項に規定する届出書を提出していること。
ロ 請求人提示資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)M社が請求人に交付した「支払方法等について」には、次のとおり記載があること。
A 支払制度は、検収毎月末日締切、翌月25日支払である。
B 支払方法(買掛金)は、消費税額を含み、支払総額が100万円未満の場合は現金支払、支払総額が100万円以上の場合は現金50%・H信用金庫I支店による一括決済方式50%である。
C 検査完了期日は、完成品の納品後5日である。
D M社が請求人に支給した支給材の決済は、支給毎月末日締切、翌月25日相殺である。
 ただし、下請代金支払遅延等防止法に即し、早期相殺とならないよう次のように調整する。
 有償支給材を加工し、弊社に納入する迄のリードタイム相当分として、当月支給材の26%分の相殺を1ケ月繰り延べる。
 なお、品名、数量、金額及び引渡期日は、有償支給材料売上明細書による。
(ロ)M社が請求人に平成4年8月7日付で発行した平成4年7月度の「買掛金仕入支払明細表」には、次表のとおり記載があること。

(単位 円)
前月残高1,164,579
現金払い1,059,727
現金払いより相殺(*1)149,763
右記(*2)参照1,200,000
差引残高△1,244,911
当月仕入9,696,684
当月仕入より相殺有償支給材料分6,575,339
 その他(*3)1,282
当月残高1,875,152

(注)△印は、マイナスを表す。
 また、当月分現金相殺内訳(*1)、(*2)一括支払方式振替明細及び当月仕入高より相殺(その他)内訳(*3)の明細が上表の右欄に記載してあること。
 なお、平成元年8月度から平成4年8月度までの買掛金仕入支払明細表の記載は、取引金額は異なるが、上表の様式により行われていること。
(ハ)前記(ロ)の買掛金仕入支払明細表と同日に発行された平成4年7月度の「検収明細表」の3枚の末葉の下欄には、次のとおり記載があること。
購入金額計 9,414,256 消費税額 282,428 総計 9,696,684
 なお、平成元年8月度から平成4年8月度までの検収明細表の記載は、金額は異なるが、上表の様式により行われていること。
(ニ)前記(ロ)の買掛金仕入支払明細表と同日に発行された平成4年7月度の「有償支給材料売上明細表」の5枚の末葉の下欄には、次のとおり記載があること。
売上金額計 6,383,824 消費税額 191,515 請求金額 6,575,339
 なお、平成元年8月度から平成4年8月度までの有償支給材料売上明細表の記載は、金額は異なるが、上表の様式により行われていること。
(ホ)K社が請求人に発行した「支払方法等について」には、次のとおり記載があること。
A 支払制度は、納品毎月25日締切・翌月25日支払である。
B 支払方法は支払総額により、次のとおりである。
 10万円未満のときは、現金100%・手形0%
 10万円以上で50万円未満のときは現金15%・手形85%
 50万円以上で100万円未満のときは現金10%・手形90%
 100万円以上で300万円未満のときは現金8%・手形92%
 300万円以上のときは現金0%・手形100%
C 支払手形の期日は、113日である。
D 検査完了期日は、納品後6日である。
E 有償支給材料の代金の決済は、支給材の納品分をその代金支払時
に相殺する。
 なお、品名、数量、金額及び引渡し期日は、有償支給材料売上明細書による。
(ヘ)K社が請求人に発行した平成2年8月度の「支払通知書」の上欄には、次表のとおり記載があること。

(単位 円)
摘要当月受入高有償支給金額協力会費振込手数料他
取引内訳397,166282,4510600
消費税11,9158,174018
支払内訳409,081290,6250618

 また、上表の右欄には、支払方法として、次表のとおり記載があること。

(単位 円)
相殺合計差引支払金額手形振込
291,243117,838100,00017,838

 さらに、上表の下欄には、明細書として、当月受入れ部品の明細が記載され、その合計金額は397,161円であり、また、次葉に有償支給の明細が記載され、当月有償支給の合計金額は272,451円であり、前月の相殺調整部品代40,000円及び当月の相殺調整部品代30,000円であることから、当月相殺金額は282,451円である旨記載されている。
 なお、平成元年8月度から平成4年8月度までの支払通知書及び明細書の記載は、取引金額は異なるが、上記様式により行われていること。
(ト)平成元年9月28日付で、G社が請求人に発行した平成元年8月度支払明細の支払案内票には、次表のとおり記載があること。

 また、平成元年8月度から平成4年8月度までの支払明細の支払案内票の記載は、取引金額は異なるが、上表の様式により行われていること。
(チ)請求人は、各課税期間に相当する事業年度の決算時において、請求人が保有するM社等の原材料部品を自己の棚卸資産として決算書に計上していること。
(リ)M社の請求人との取引についての会計帳簿等の経理処理は、次のとおりであること。
A M社が請求人に対して支給材を支給した時は、借方科目「有償支給材」、貸方科目「仕掛品」の経理仕訳をして仕掛品を有償支給材に振り替え、請求人に対しての借方科目「未収入金」、貸方科目「有償支給材売上」と経理仕訳を行っている。
B 請求人からM社の完成品が納入された時は、借方科目「材料」、貸方科目「買掛金」の経理仕訳を行っている。
(ヌ)K社の請求人との取引についての会計帳簿等の経理処理は、次のとおりであること。
A K社が請求人に対して支給材を支給した時は、借方科目「買掛金」、貸方科目「外注加工賃」及び「仮払消費税」の経理仕訳を行っている。
B 請求人からK社の完成品が納入された時の会計上の仕訳は、借方科目「外注加工賃」及び「仮払消費税」、貸方科目「買掛金」の経理仕訳を行っている。
(ル)G社の請求人との取引についての会計帳簿等の経理処理は、次のとおりであること。
A G社が請求人に対して支給材を支給した時は、借方科目「未収入金」、貸方科目「仕掛品売上」及び「仮払消費税」の経理仕訳を行っている。
B 請求人からG社の完成品が納入された時は、借方科目「外注加工費」、貸方科目「買掛金」及び「仮払消費税」の経理仕訳を行っている。
(ヲ)昭和52年7月1日に請求人とM社との間で締結した購買基本契約に係る「購買基本契約書」(以下「購買契約書」という。)には、M社と請求人は、M社において生産する二輪車・四輪車その他すべての製造・販売に必要な一般材料(継続購入品)及び部品(以下「契約品」という。)の取引に関し、互助共栄の精神と信義誠実の原則に基づき、購買契約を締結する旨記載され、次のとおり定められていること。
A 第1条《総則》第1項には、M社は本契約の定めるところにしたがい、請求人に対して必要の都度、契約品を発注し、請求人はM社の要求条件に基づく契約品の納入及びそれに付随する事項の給付をなすものとする旨。
B 第1条第2項には、M社は前項の代価として請求人に対して代金を支払う旨。
C 第1条第3項には、第1項によりM社が発注する契約品の単価並びに受け入れた契約品の代金の支払方法は、別にM社・請求人協議により決定する旨。
D 第2条《仕様》第1項には、M社に対して請求人が納入する契約品の仕様は、M社の定める「仕様書類」により明示する旨。
E 第2条第2項には、前項において「仕様書類」とは、M社が発行し又は承認した図面類・図面に代わるべき企画・見本若しくは検査規格、又はM社・請求人協議により別にとりきめた品質保証契約を称する旨。
F 第3条《契約品の納入》第1項には、請求人はM社が定める手続にしたがい、指定された期日・場所及び数量の契約品を納入するものとし、これを履行できないときは、M社に対して事前に通報をなし、その承認を得るものとする。
 M社はこれにより損害を被ったときは、請求人に対してその賠償を請求することができる旨。
G 第4条《契約品の受入》には、M社は請求人より契約品納入の都度これを受入し、この時点で目的物の引渡しがあったものとする旨。
(ワ)K社の取引基本契約に係る「取引基本契約書」(以下「取引契約書」という。)には、K社と当該契約者とはK社と当該契約者との間に締結される資材、機器、物品の売買または製造委託(修理委託を含む)に関する契約に必要な基本事項について契約を締結する旨記載され、次のとおり定められていること。
A 第1条《基本原則》第3項には、K社及び当該契約者は、契約条項のほかK社が提出する注文書に定める事項及びK社が定める取引手続並びに仕様書、図面、諸規格、協定書、検査指導票等に準拠しなければならない旨。
B 第5条《納入》第1項には、当該契約者は契約品を納入期日にK社の指定する受渡し場所へ納入しなければならない旨。
C 第5条第2項には、契約品の損傷、錆等事故のない様、当該契約者の責任に於て包装梱包の上納入しなければならない旨。
D 第5条第3項には、K社は原則として過剰納入は認めないものとする旨。
E 第6条《原材料の支給》第1項には、K社は契約品の製造に要する材料部品の全部又は一部を当該契約者に支給することがある。
 ただし、支給材及び部品の種類、数量、方法はK社が指定する。
 なお、K社より無償支給された材料、部品はK社の所有に属するものとする旨。
F 第6条第2項には、K社より支給された材料、部品の所有権は当該契約者がその代金を支払った時点においてK社より当該契約者に移転するものとする旨。
G 第6条第3項には、K社より当該契約者に支給された材料、部品は同条第1項及び第2項を問わず契約品製作以外の目的に使用してはならない旨。
H 第16条《受領および検査》第1項には、K社は当該契約者の契約物品納入の都度これを受領して受領を証する書面を当該契約者に交付し、かつあらかじめ定めた検査方法によりすみやかに検査しなければならない旨。
I 第16条第2項には、前項の検査に合格したときは、K社は契約物品が合格したことを証明する書面を当該契約者に交付するものとし、この時点で引渡しがあったものとする旨。
(カ)G社の「単価決定通知書」(以下「単価通知書」という。)には、次表のとおり記載がある。

品番品名有支@加工@支払い@加工区分
 ペタル   ペタル部
○○―00ブレーキ30065365テイピング

ハ M社の第一購買部企画課主査であるD及び第二購買部第二課主任であるV(以下、両者を併せて「M社のDら」という。)は、当審判所に対し、次のとおり併せて答述している。
(イ)M社は、請求人に対してM社が生産販売している二輪車及び四輪車の原材料部品を売り渡し、請求人が原材料部品にメッキ加工した製品を購入している。
 これらの取引を開始するに当たり、昭和52年7月1日に購買契約を締結し、必要に応じて覚書を取り交わしているが、基本的には購買契約書に基づき現在も取引を継続している。
(ロ)M社は、請求人に原材料部品を売り渡す際に、前工程の原価にその原材料部品に応じた割合を加算して単価を設定し、その単価で請求人に売り渡している。
 したがって、原材料部品は、請求人に売り渡した時点でM社のものではなく、購買契約書にもあるように不良品が発生した場合には、すべて請求人が負担することとなり、不良品をスクラップ等にすることは契約条項に違反せず、また、請求人から定期的に在庫報告を一切受けていないし、在庫管理にも介入していない。
 また、M社が請求人に原材料部品を売り渡した以後、請求人の在庫であることは、平成元年2月から3月にかけて実施した二回の説明会でM社及び請求人の双方が認識していると判断している。
 なお、M社は、昭和52年7月1日の取引開始当初から請求人に対して原材料部品を有償で支給している。
(ハ)上記取引に係る代金の決済方法は、下請代金支払遅延防止法の関係から、有償で支給した原材料部品代金の全額を請求人からの仕入代金から相殺するのではなく、毎年5月に過去の実績に基づいて決定した相殺留保割合の相当額を相殺留保して支払っている。
(ニ)消費税については、請求人に有償で支給した原材料部品を課税売上げとし、また、請求人から原材料部品にメッキ加工した製品が納入され、検収した時点で課税仕入れとして税込みで経理処理をしている。
ニ K社の総務部経理課長であるW(以下「K社のW」という。)及び製造第一購買課長であるX(以下、Wと併せて「K社のWら」という。)は、当審判所に対し、次のとおり併せて答述している。
(イ)K社は、請求人に対して主にK社の純正部品であるガソリン携行缶のキャップの仕掛品を支給し、請求人が当該キャップにメッキ加工をした製品をK社に納入している。
 これらの取引の開始に当たっては、通常、取引契約を締結し、その取引契約に係る取引契約書に基づき取引を行なっているが、請求人と昭和61年9月ころに取引を開始した当初から取引契約書は取り交わしていない。
(ロ)K社は、請求人に対してガソリン携行缶のキャップの仕掛品を支給する際、K社が仕入れた価格を有償支給品の単価として請求人に売渡し、その有償支給品の単価に請求人のメッキ加工賃を上乗せした価格で請求人から購入している。
 これらの代金の決済に当たっては、下請代金支払遅延等防止法の関係から、毎月の請求人から報告される棚卸報告に基づき有償支給品の相殺留保金額を算定し、有償支給品の金額の一部について相殺を留保して毎月25日締切りの翌月25日払いで決済している。
(ハ)請求人から毎月在庫報告を求めるのは、上記相殺留保金額を計算するためのほか、工程管理及び納入管理という観点からである。
 しかし、これらの請求人に有償支給した仕掛品は、K社が請求人に対して売り渡したものであり、請求人の在庫ではあるが、有償支給した仕掛品は、K社の純正部品であることから、請求人は、無償支給されたものと同様な気持ちで取り扱っていると思う。
(ニ)消費税については、請求人にガソリン携行缶のキャップの仕掛品を支給した時点で課税売上げとし、また、請求人からガソリン携行缶のキャップの仕掛品にメッキ加工した製品を購入した時点で課税仕入れとして経理処理を行っている。
 なお、これらの経理は、いずれも税抜経理で処理している。
ホ K社のWは、当審判所に対し、次のとおり答述している。
(イ)K社と請求人との間で取引契約書は取り交わしていないが、取引に関する契約は、K社が他社と取り交わしている取引契約書に基づいて取引を行っている。
(ロ)通常、下請先に有償支給材を支給した時は、借方科目「未収入金」、貸方科目「売上」と経理処理するのであるが、K社は、(1)有償支給材を売上げに計上すると自社の製品売上げの金額と区分できないこと、(2)決算上、売上げが多額になること及び(3)下請先の加工賃が一目瞭然に把握できることから、借方科目「買掛金」、貸方科目「外注加工賃」という経理処理をしている。
 なお、有償支給材の金額は、資産の譲渡があったものとして消費税の課税標準に算入している。
ヘ G社の常務取締役であるB、企画室長であるE及び経理課長であるP(以下、三者を併せて「G社のBら」という。)は、当審判所に対し、次のとおり併せて答述している。
(イ)G社は、A社の純正部品であるバイクのキッククランク及びペタルブレーキ等の仕掛品を請求人に支給し、請求人が当該仕掛品にメッキ加工した製品を購入している。
 昭和47年ころに、請求人と取引を開始した当初は、請求人に対して材料を無償で支給していたが、棚卸しの際のトラブルを解消するため及び下請業者が不良品及び破損等を出した場合に負担させるため、昭和50年頃から有償支給とした。
 しかし、請求人は、A社の純正部品を取り扱っている以上、有償支給の材料については、無償支給されたものと同様な気持ちで取り扱ってもらわないとA社とG社及びG社と請求人との契約の存続にかかわる。
(ロ)G社と請求人との取引は、G社がA社の納入価格を参考にして、同一部材は、同一価格で有償支給の材料の単価を設定し、併せて、請求人の加工賃を決め、材料価格に加工賃を上乗せした価格で請求人から引き取る旨を記載した単価決定通知書を請求人に発行して、その単価決定通知書に基づいて取引を行っている。
(ハ)消費税については、税抜経理で、請求人に支給した有償支給材は課税売上げとし、また、請求人から仕入れた製品は課税仕入れとしている。
 なお、これら消費税については、発注時等に経理するのではなく、1ヶ月分をまとめて経理している。
 代金決済は、平成2年12月までは、毎月20日締めの翌月28日支払、平成3年1月からは、毎月末締めの翌月28日支払とした。
 その代金の決済方法は、G社からの有償支給材の売上分を請求人からの仕入代金から相殺し、メッキ加工賃に相当する金額を支払っている。
(二)経理仕訳としては、請求人に有償支給材を支給した時、借方科目「未収入金」、貸方科目「仕掛品売上」及び「仮受消費税」とし、また、請求人からメッキ加工した製品が納入された時、借方科目「外注加工賃」及び「仮受消費税」、貸方科目「買掛金」としている。
 なお、請求人からメッキ加工した製品を仕入れるという形態を取っているが、勘定科目は外注加工賃として経理している。
 また、請求人に有償支給した材料について、年2回棚卸しの報告を求めているが、これは、G社の在庫として管理する目的ではなく、生産管理上の観点から行っているものである。
ト ところで、請求人は、消費税取扱通達5―2―13の定めについて前記2の(1)のイの冒頭記載のとおり主張し、また、原処分庁は、消費税取扱通達1―4―3及び5―2―13の定めについて前記2の(2)のイの(ロ)及び(ハ)のとおり主張する。
 しかし、消費税取扱通達1―4―3の定めは、直接的には基準期間における課税売上高に算入される課税資産の対価の額について定めたものであり、また、同通達5―2―13の定めは、直接的には下請先に発注する事業者について定めたものであるところ、これらの定めは、外注加工の取引における課税標準額に含まれる範囲を念のため明らかにしたものであって、外注加工における原材料の支給が有償の譲渡とみられるときには、当該原材料の対価は支給者の課税標準額に算入され、当該原材料が加工されて原材料の有償支給者に製品として納品されたときには、当該原材料の対価を含んだ上記製品の対価が納品者の課税標準の額に算入されるという、消費税法第2条《定義》第1項第8号に規定する資産の譲渡等についての当然の解釈に基づき定められたものというべきである。
 すなわち、当審判所としては、消費税取扱通達1―4―3及び5―2―13の定めはいずれも相当であり、また、消費税法においては、一方の取引当事者にとっての課税資産の譲渡等は他方の取引当事者にとっては課税仕入れになるのであるから、これらの定めは、上記の消費税法第2条第1項第8号に規定する資産の譲渡等の範囲の解釈に当たり、いずれも参考となり得るものと解するところである。
チ そこで、請求人は、原材料部品について、(1)M社等が一方的に設定する単価に基づく有償支給の形態を採っていること、(2)M社等から何時、どこに、幾つ納入する等の指示をされていることから、原材料部品の品質及び数量管理を代行しているにすぎないこと、(3)M社等の純正部品の処分は事実上不可能であり原材料部品の所有権はM社等にあること及び(4)原材料にメッキ加工する加工原材料を自己の責任で調達していることから課税資産の譲渡等には当たらない旨主張するので、これらについて以下、検討する。
(イ)一般的に、事業者が下請企業に外注加工を依頼する場合、事業者においては納入された製品などの品質管理、生産高の調整及び生産コストの低減等を図るため、下請企業に原材料及び半製品を有償若しくは無償で支給するのが通常である。
 この場合、有償にするか否か、また、その支給単価は、企業の経営方針によって異なるが、何れも発注品の品質の確保、生産計画の達成及び機密保持のため、下請企業において支給を受けた原材料及び半製品を許可なく処分することを禁止しており、このため在庫数量等の報告、棚卸しの実地確認等を行っているのが通常である。
 また、企業によっては高価な原材料及び半製品について、下請企業に有償で支給することによって、その管理責任及び企業の金利負担の軽減等を図る場合もあるが、品質の確保等から同様な制約を科しているものである。
 さらに、依頼者のものに、加工業者が依頼者の依頼により加工した場合は、そのものの所有権は依頼者に帰属するものであるが、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超える場合及び加工業者が材料の一部を供したときは、依頼者の材料の価格に加工によって生じた価格を加えたものが、依頼者の材料の価格を超える場合は、そのものの所有権は加工業者が取得するものとされる。
(ロ)前記ロの(イ)ないし(ニ)、(リ)及び(ヲ)の事実並びに前記ハのM社のDらの答述によれば、M社は、請求人に対し、M社の原材料部品を売却して、請求人から原材料部品にメッキ加工したM社の製品を購入し、それらを毎月末に締切り、翌月25日に当該購入代金から売却代金を相殺して請求人に支払っており、請求人に売却した原材料部品を自己の資産として管理しておらず、また、請求人から定期的に在庫報告を受けている事実も認められない。
(ハ)また、前記ロの(ホ)、(ヘ)、及び(ヌ)の事実並びに前記ニのK社のWらの答述によれば、K社は、請求人に対し、K社の原材料部品を売却して、請求人から原材料部品にメッキ加工したK社の製品を購入し、それらを毎月25日に締切り、翌月25日に当該購入代金から売却代金を相殺して請求人に支払っており、請求人に売却した原材料部品を自己の資産として管理しておらず、また、請求人から毎月、在庫報告を受けているのは、相殺留保金額を算定する等の理由からのものであると認められる。
(ニ)さらに、前記ロの(ト)、(ル)及び(カ)並びに前記へのG社のBらの答述によれば、G社は、請求人に対し、G社の原材料部品を売却して、請求人から原材料部品にメッキ加工したG社の製品を購入し、それらを毎月末に締切り、翌月25日に当該購入代金から売却代金を相殺して請求人に支払っており、請求人に売却した原材料部品を自己の資産として管理しておらず、また、請求人から生産管理上の観点から年2回在庫報告を受けているが、G社の在庫として管理する目的から報告を求めているとは認められない。
(ホ)また、前記ロの(チ)のとおり、請求人は、その保有するM社等の原材料部品を自己の棚卸資産として決算書に計上していることが認められる。
(ヘ)そうすると、請求人とM社等との間の取引については、契約(K社との取引については契約書は取り交わしていないが、口頭による契約の存在を認定せざるを得ない。)上、原材料の支給は、請求人の仕入れとして、製品の納品は原材料の対価を含めた対価による請求人からの譲渡と定められており、また、M社等の経理上の処理も同様にされ、更に、請求人の決算書上も少なくとも棚卸資産として計上されるという処理がされているのであるから、特段の事実が認められない限り、当該取引は契約上、経理上の形式どおり認定されることが相当である。
(ト)ところで、請求人は、上記チの冒頭のとおり主張するが、M社等が請求人に支給した原材料部品を許可なく処分することを禁止すること及び納入期日等を指示することは、発注品の生産管理、品質の確保及び機密保持のために必要不可欠なことであり、また、M社等が原材料部品の単価を一方的に設定する等は、M社等と請求人との間の契約関係により定まっているものであって、これらの事実をもって、前記(ヘ)の判断を覆すことはできず、請求人がM社等の原材料部品の品質及び数量管理を代行しているとは認められない。
リ 前記チの認定に基づき、前記イないしヘの事実及び答述により検討すると、次のとおりである。
(イ)M社との取引について
 前記ロの(ロ)のM社の買掛金仕入支払明細表の当月仕入欄に9,696,684円と記載され、その内訳として前記ロの(ハ)の検収明細表に(1)購入金額計9,414,256円、(2)消費税額282,428円及び(3)総計9,696,684円と記載されていることから、M社は、請求人から納入された製品のうち検収したもの9,414,256円に消費税率100分の3を乗じた282,428円の合計金額9,696,684円を請求人に対して支払う金額としていることが認められる。
 また、請求人に原材料部品を支給したものについて、前記ロの(ニ)の有償支給材料売上明細表に、売上金額計6,383,824円、(2)消費税額191,515円及び(3)請求金額6,575,339円と記載されていることから、請求人に対して支給した原材料部品の売上金額6,383,824円に消費税率100分の3を乗じた191,515円の合計金額6,575,339円を請求人から受領する金額として、請求人に対して支払う金額から相殺していることが認められる。
 これらの経理処理について、M社のDらは、請求人に有償で支給した原材料部品代を課税売上げとし、請求人から原材料部品にメッキ加工した製品が納入され、検収した時点で課税仕入れとして税込みで経理している旨前記ハで答述しており、また、前記ロの(チ)の事実から判断しても、M社の原材料部品は、M社から請求人に対して支給した時及び請求人からM社に納入されたときのいずれも課税資産の譲渡等の対価として消費税が課されているものと認められる。
(ロ)K社との取引について
 前記ロの(ヘ)のK社の支払通知書の当月受入高欄の取引内訳に397,166円と記載され、その取引金額397,166円に消費税率100分の3を乗じた11,915円を消費税と記載され、取引金額に消費税を加算した409,081円が支払内訳に記載されていることから、K社が請求人に対して支払う金額は、409,081円と認められる。
 また、前記ロの(ヘ)の明細書の次葉に、前月の相殺調整部品代40,000円及び当月の相殺調整部品代30,000円と記載され、その差額10,000円を当月有償支給の合計金額272,451円に加算した282,451円を前記ロの(ヘ)の支払通知書の有償支給金額欄の取引内訳に記載し、当月有償支給の合計金額272,451円に消費税率100分の3を乗じた8,174円を消費税と記載され、取引金額に消費税を加算した290,625円が支払内訳に記載され、更に、振込手数料についても取引手数料他欄の取引内訳600円及び消費税18円と記載され、それらの合計金額618円が支払内訳に記載され、有償支給金額欄の支払内訳290,625円と振込手数料他欄の支払内訳618円の合計291,243円を相殺合計欄に記載して、請求人に対して支払う金額から相殺していることが認められることから、消費税を含む291,243円が請求人から受領する金額としていることが認められる。
 これらの経理処理について、K社のWらは、ガソリン携行缶のキャップの仕掛品を請求人に支給した時点で課税売上げとし、請求人からメッキ加工した製品を購入した時点で課税仕入れとしている旨前記ニで答述し、更に、K社のWは、有償支給材を売上げに計上すると自社の製品売上げの金額と区別できないことなどから、借方科目「買掛金」、貸方科目「外注加工賃」という経理処理を行っているが、有償支給材の金額は、資産の譲渡があったものとして消費税の課税標準に算入している旨前記ホで答述しており、また、前記ロの(ヌ)の事実から判断しても、K社から支給される仕掛品は、K社から請求人に対して支給した時及び請求人がK社に納入された時のいずれも課税資産の譲渡等の対価として消費税が課されているものと認められる。
(ハ)G社との取引について
 前記ロの(ト)のG社の支払案内票の納入代金の小計欄に3,177,201円と記載され、その納入代金3,177,201円に消費税率100分の3を乗じた95,316円を加算した金額3,272,517円が購入代金の合計金額である旨記載されていることから、G社が請求人に支払う金額は、上記のとおり請求人から納入があった製品の金額3,177,201円に消費税額95,316円を加算した3,272,517円と認められる。
 また、G社が請求人に支給した支給部品について、相殺代金の有償支給部品欄に2,784,030円と記載され、その有償支給部品代金額を相殺代金の小計欄に記載するとともに、有償支給部品代金2,784,030円に消費税率100分の3を乗じた83,521円を加算した金額2,867,551円が相殺代金の合計金額である旨記載されていることから、請求人に対して支給した有償支給部品代金2,784,030円に消費税率100分の3を乗じた83,521円の合計金額2,867,551円を請求人から受領する金額として、請求人に対して支払う金額から相殺していることが認められる。
 これらの経理処理について、G社のBらは、請求人に支給した有償支給材は課税売上げとし、また、請求人から仕入れた製品は課税仕入れとして1ヶ月分をまとめて税抜経理で処理している旨前記へで答述しており、前記ロの(ル)の事実から判断しても、G社から支給される仕掛品は、G社から請求人に対して支給した時及び請求人からG社に納入された時のいずれも課税資産の譲渡等の対価として消費税が課されているものと認められる。
(ニ)そうすると、請求人は、M社等から支給された原材料部品代金と請求人のメッキ加工賃との合計金額である製品代金に係る消費税額をM社等から受領して、他方、請求人は、M社等から支給される原材料部品代金に係る消費税額をM社等に支払っていると認められることから、請求人の課税標準は、M社等から有償支給された原材料部品の金額を別表の「確定申告」欄の課税標準額に加算した金額となる。
 また、当該課税標準額に対する消費税額から、課税仕入れに係る消費税は、M社等から有償支給された原材料部品の金額に対する消費税額を加算した金額とすべきであるが、請求人は、前記イの(ハ)とおり、原処分庁に対し、平成元年9月27日に消費税簡易課税制度選択届出書を提出し、消費税法第37条第1項の規定の適用を受けて、その後、同項の規定の適用を受けることをやめる旨を記載した届出書を原処分庁に提出していないので、当該課税標準額に対する消費税額に100分の80を乗じた金額となる。
ヌ そこで、各課税期間における納付すべき税額について、以下、検討する。
(イ)課税資産の譲渡等につき領収すべき金額
A 各課税期間における請求人がM社等に納入した製品にかかる原材料部品の金額について、請求人提示資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次表のとおりであると認められる。

(単位 円)
課税期間\取引先M社K社G社合計
平成2年7月期51,204,6593,126,08658,810,140113,140,885
平成3年7月期48,240,3572,846,52871,122,721122,209,606
平成4年7月期54,633,8753,910,64685,250,628143,795,149

B 各課税期間の請求人の確定申告に係る課税資産の譲渡等につき領収すべき金額は、請求人提示資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次のとおりである。
(A)平成2年7月期において請求人は、消費税の経理処理について税込経理を採用して、次表の合計金額を請求人の課税資産の譲渡等につき領収すべき金額としている。

(単位 円)
売上高賃貸料雑収入合計
385,341,225324,0003,462,565389,127,790

(B)平成3年7月期及び平成4年7月期において、請求人は、消費税の経理処理について、当該課税期間中の取引を税込経理で処理して、課税期間末において課税期間中の取引をまとめて税抜経理する方法を採用しているので、請求人の課税資産の譲渡等につき領収すべき金額は、次表の各科目の金額に当該各科目の未払消費税を加算した合計金額となる。

(単位 円)
平成3年7月期
科目金額未払消費税
売上高435,560,07313,066,782448,626,855
雑収入3,646,687109,4003,756,087
賃貸料267,9628,038276,000
車両売却100,0003,000103,000
合計452,761,942

(単位 円)
平成4年7月期
科目金額未払消費税
売上高407,328,82312,219,864419,548,687
雑収入2,641,68279,2502,720,932
合計422,269,619

C 請求人の各課税期間の課税資産の譲渡等につき領収すべき金額は、前記Aに前記Bを加算した平成2年7月期502,268,675円、平成3年7月期574,971,548円及び平成4年7月期566,064,768円となる。
(ロ)課税標準額
 前記(イ)のCの各課税期間における課税資産の譲渡等につき領収すべき金額は、国内取引に係る課税資産の譲渡等のみと認められるので、各課税期間の課税標準額は、前記(イ)のCの各課税期間における課税資産の譲渡等につき領収すべき金額に103分の100を乗じて算定した平成2年7月期487,639,000円、平成3年7月期558,224,000円及び平成4年7月期549,577,000円(千円未満の端数切捨て)となる。
(ハ)課税標準額に対する消費税額
 各課税期間の課税標準額に対する消費税額は、前記(ロ)の課税標準額に100分の3を乗じて算定した平成2年7月期14,629,170円、平成3年7月期16,746,720円及び平成4年7月期16,487,310円となる。
(ニ)消費税額からの控除税額
 前記(ハ)の課税標準に対する消費税額に100分の80を乗じて算定した平成2年7月期11,703,336円、平成3年7月期13,397,376円及び平成4年7月期13,189,848円となる。
(ホ)納付すべき税額
 各課税期間の納付すべき税額は、前記(ハ)の課税標準に対する消費税額から、前記(ニ)の消費税額からの控除税額を差し引いた平成2年7月期2,925,800円、平成3年7月期3,349,300円及び平成4年7月期3,297,400円(百円未満の端数切捨て)となる。
 したがって、納付すべき税額を上記金額の範囲内でした平成2年7月期及び平成4年7月期の各更正処分は適法であり、納付すべき税額が上記金額を上回ってされた平成3年7月期の更正処分は、その一部を取り消すのが相当である。

(2)賦課決定処分について

 前記(1)のとおり、平成4年7月期の更正処分は適法であり、かつ、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、更正処分前の税額の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、同条第1項の規定に基づいてされた過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。
 また、前記(1)のとおり、平成3年7月期の更正処分はその一部を取り消されるところ、取消しにより減額される部分以外の納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、同条第1項の規定に基づいて過少申告加算税を賦課することは相当であり、減額される部分以外の税額に国税通則法第65条第1項を適用すると、過少申告加算税の額は、71,000円となり、この金額と同額でされた過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。

(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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