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(平8.1.22裁決、裁決事例集No.51 161頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、会社役員であるが、平成3年分、平成4年分及び平成5年分(以下、併せて「各年分」という。)の所得税について、確定申告書に次表のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。

(単位 円)
年分平成3年分平成4年分平成5年分
項目
確定申告
総所得金額37,079,37333,744,37430,737,548
 内訳
配当所得の金額2,580,000
給与所得の金額27,484,50027,864,50027,912,000
雑所得の金額1,264,8731,329,8741,375,548
一時所得の金額5,750,0004,550,0001,450,000
納付すべき税額3,290,2002,400,400419,058

(注)一時所得の金額は、所得税法第22条《課税標準》第2項第2号の規定による2分の1に相当する金額である。
 次いで、請求人は、原処分庁所属の職員の調査を受け、平成3年分及び平成4年分(以下「両年分」という。)の所得税について、次表のとおりとする修正申告書を平成6年2月10日に提出した。

(単位 円)
年分平成3年分平成4年分
項目
修正申告等
総所得金額39,379,37339,055,345
内訳
 配当所得の金額2,580,000
 給与所得の金額27,484,50027,864,500
 雑所得の金額1,264,8731,329,874
 一時所得の金額8,050,0009,860,971
納付すべき税額4,440,2005,055,900
過少申告加算税の額115,000265,000

(注)一時所得の金額は、所得税法第22条第2項第2号の規定による2分の1に相当する金額である。
 これに対し、原処分庁は、平成6年2月28日付で、両年分の修正申告について上表の「過少申告加算税の額」欄のとおりの賦課決定処分をするとともに、両年分の所得税について次表のとおりの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「両年分の更正処分等」という。)をした。

 請求人は、これらの処分のうち両年分の更正処分等を不服として平成6年4月28日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年7月29日付でいずれも棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成6年8月26日に審査請求をした。
 さらに、原処分庁は、平成5年分の所得税について、平成6年7月29日付で上表の「平成5年分」欄のとおりの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
 請求人は、これらの処分を不服として、平成6年8月26日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年11月28日付でいずれも棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成6年12月13日に審査請求をしたので、両年分の更正処分等に対する審査請求と併合審理をする。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正処分について
 請求人は、平成3年4月16日に株式会社J(平成元年12月25日の商号変更前はK株式会社。以下「J社」という。)から、同社が経営するLカントリークラブ(以下「Lカントリークラブ」という。)の会員名義が記載されていないゴルフ会員証(以下「本件証書」という。)15枚の提供を受け、そのうち、4枚を平成3年、8枚を平成4年及び1枚を平成5年にそれぞれ第三者に譲渡して得た所得(以下「本件所得」という。)について、所得税法第34条《一時所得》第1項に規定する一時所得であるとして各年分の確定申告書及び両年分の修正申告書を提出したところ、原処分庁は、これを所得税法第35条《雑所得》に規定する雑所得であると認定して更正処分をしたが、原処分庁の認定は次のとおり事実を曲解し法解釈を誤った違法な処分である。
 なお、本件所得に係る収入の計上時期については争わない。
(イ)本件証書は、J社から、従来のよしみとしてLカントリークラブのオープンを記念して請求人に贈与されたものであり、本件所得は所得税法第34条に規定する一時所得に該当する。
 なお、原処分庁は、J社の代表取締役M(以下「M」という。)が、本件証書はLカントリークラブの開設に当たり請求人が果たした功労に対する謝礼として提供した旨申述しているとの事実を認定しているが、その認定の基礎となった申述書(以下「本件申述書」という。)が提出された経緯は、請求人が代表取締役をしているN株式会社(以下「N社」という。)が法人税の調査を受けた際、○○国税局調査部の調査担当職員から、本件所得は同法人に帰属すべきものではないかという指摘があり、かつ、同法人と請求人個人の二重課税の示唆もあったので、思い余ってN社からJ社に無理に書面の提供を懇願したものであるから、功労に対する謝礼として提供した旨の本件申述書の記載内容は真実ではない。
(ロ)また、請求人は、本件証書の贈与を受ける際に、J社から入会金を払い込めばLカントリークラブの会員としての地位が取得できる旨の説明を受けたが、いつでも容易にこれを譲渡できるようJ社の了承のもと敢えて本件証書にその名義人の記載をしなかった。
 すなわち、本件証書は、入会金を払い込めばゴルフ会員権を取得できるという預託金返還請求権を含むゴルフ会員権購入選択権を証するものであり、会員権価格が上昇した際に請求人が当該購入選択権を行使して会員たる地位を取得するとともにそれを売却して値上がり益を得ることができるものである。
 そして、請求人は、当該購入選択権の権利行使をして会員としての地位を取得するとともにその地位を第三者に譲渡して本件所得を得たのであるが、その実態は、ストックオプション(株式購入選択権)の権利行使をして株式を取得するとともにその株式を売却することにより値上がり益を得る場合と同質のものである。
 ところで、○○国税局所得税課長が監修している質疑応答集によれば、ストックオプションの経済的利益は通常一時所得として課税されるとしているから、本件所得の所得区分についてもこれと同様に取り扱うべきである。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、各年分の更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い各年分の過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
 請求人は、本件所得は一時所得である旨主張するが、次の理由により、本件所得は雑所得に該当する。
(イ)異議審理庁の担当職員が調査したところ、次の事実が認められる。
A 請求人は、平成3年4月16日にJ社から本件証書の提供を受けたこと。
B Mは、本件証書はLカントリークラブの開設に当たり請求人が果たした功労に対する謝礼として提供した旨申述していること。
C 本件証書には、Lカントリークラブに対する預託金として6,400,000円の記載がされているが、請求人がJ社から提供を受けた時点では、その名義人の記載がないこと。
D Lカントリークラブの会則によると、その会員になろうとする者は、1,600,000円の入会金と6,400,000円の預託金の払込みを行い、かつ、理事会等の承認を得ることにより、初めて同カントリークラブの会員たる地位と預託金の返還請求権を取得するものであり、会員たる地位の取得と預託金の返還請求権の取得は、不可分のものであること。
E 請求人は、本件証書をJ社から提供を受けた時点では、入会金の支払を行っておらず、Lカントリークラブの会員としての地位を取得していないこと。
F 請求人は、平成3年中に次表のとおりPらに総額23,000,000円で本件証書のうち4枚を売却し、その売却代金の中からJ社に一枚当たり1,600,000円、4枚分合計6,400,000円の入会金を支払ったこと。

(単位 円)
会員証番号販売先金額
15P8,000,000
16Q株式会社5,000,000
20株式会社R5,000,000
21S5,000,000

G 請求人は、平成4年中に次表のとおりT株式会社らに総額42,000,000円で本件証書のうち8枚を売却し、その売却代の中からJ社に1枚当り1,600,000円、8枚分合計12,800,000円の入会金を支払ったこと。

(単位 円)
会員証番号販売先金額
17T株式会社5,000,000
18W株式会社5,000,000
19X株式会社5,000,000
22Y株式会社5,000,000
23X株式会社5,000,000
24Z銀行5,000,000
25Z銀行5,000,000
26A7,000,000

H 請求人は、平成5年中にB銀行に5,000,000円で本件証書のうち1枚を売却し、その売却代金の中からJ社に1,600,000円の入会金を支払ったこと。
I 請求人は、前記FないしHのとおりJ社に対して入会金の払込みを行っているが、請求人自身がLカントリークラブの会員としての地位を取得したものではなく、請求人から本件証書の購入をした者が直接同クラブの会員としての地位を取得していること。
(ロ)以上の事実を総合し判断すると、請求人はLカントリークラブの会員としての地位を取得した事実が認められず、J社から本件証書の提供を受けた平成3年4月16日時点では、本件証書には経済的価値はないから、法人からの贈与により取得した金品には該当しない。
 また、請求人が本件証書を第三者に販売し、その収入からJ社に本件証書1枚当たり、1,600,000円の入会金を支払うことによりその差額を経済的利益として得ていることは、預託金の返還請求権としての権利を贈与されたものではなく、本件証書を販売することにより各年分の経済的利益を実現したものと認められる。
 なお、請求人は、本件所得はストックオプションを与えられたことによる経済的利益と全く同質のものである旨主張するが、本件所得は、預託金の返還請求権としての権利を贈与されたものではなく、本件証書の提供を受けそれを第三者に販売することにより本件所得を得たものであるから、ストックオプションを与えられたことによる経済的利益と同質とは認められない。
 したがって、本件所得は営利を目的とした継続的な行為により生じた所得であると認められ、所得税法第34条第1項に規定する「労務その他の役務の対価としての性質を有しないもの」には当たらないので、一時所得には該当しない。
(ハ)請求人は、Lカントリークラブの会員としての地位を取得していないので、本件所得は、会員である地位を譲渡したことによる所得としての譲渡所得には該当せず、また、本件証書の販売を事業として行った事実は認められないので、事業所得にも該当しない。
(ニ)そうすると、本件所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得と認められ、所得税法第35条第1項に規定する雑所得に該当する。
(ホ)以上の結果、請求人の総所得金額は次表のとおりとなり、これらの金額は各年分の更正処分の額といずれも同額になるから、各年分の更正処分に違法はない。

(単位 円)
年分平成3年分平成4年分平成5年分
項目
総所得金額47,929,37349,416,31732,687,548
 内訳
配当所得の金額2,580,000
給与所得の金額27,484,50027,864,50027,912,000
雑所得の金額17,864,87321,551,8174,775,548

(注)雑所得の金額のうち、公的年金等に係る雑所得は、平成3年分1,264,873円、平成4年分1,329,874円及び平成5年分1,375,548円であり、いずれも請求人が確定申告書に記載した金額である。
 なお、配当所得の金額及び給与所得の金額についても、請求人が確定申告書に記載した金額である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、更正処分はいずれも適法であり、また、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った過少申告加算税の賦課決定処分はいずれも適法である。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件所得が一時所得又は雑所得のいずれに該当するかであるので、以下審理する。

(1)本件処分について

イ 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
(イ)請求人は、平成3年4月16日に、J社から本件証書15枚の提供を受けたこと。
(ロ)その際、請求人は、入会金の支払を行っておらず、Lカントリークラブの会員としての地位を取得していないこと。
(ハ)請求人は、平成3年から平成5年にかけて、本件証書15枚のうち13枚を前記(2)のイの(イ)のFないしHのとおり売却したこと。
ロ 請求人及び関係人の各答述並びに原処分関係資料によれば、次の事実が認められる。
(イ)請求人は、昭和63年ころ、C株式会社のDからLカントリークラブの開設に当たり同クラブの理事の選定を依頼され、当時のJ社の代表取締役であるE(以下「E」という。)ともかねてからの知り合いであったこともあり、これを引き受け、理事長及び数名の理事の選任などに尽力したこと。
(ロ)平成3年4月16日、Mは、本件証書を請求人に持参し、「Eが(請求人に)お礼をしなければいけない、ついてはお金の方がいいが会員証を持って行けと言っていた。」と説明したこと。
(ハ)請求人は、Mに対しこんなものはいらないと言ったが、同人が本件証書を勝手に置いて行ってしまったので、同席していたN社の専務取締役F(以下「F」という。)にN社の金庫に保管しておくように指示したこと。
(ニ)N社の社長でもある請求人の長男G(以下「G」という。)は、請求人から個人的にもらった本件証書があるから譲渡してほしい旨の依頼があったので、以前勤務していたH銀行の関係者や同窓生を通じて本件証書を売却したこと。
(ホ)J社からは、入会金を支払ってほしい旨の話は当初なかったが、その後、請求人は、売却した相手先からまだ会員登録がされていないとの連絡を受け、J社に問い合わせたところ、入会金を支払ってほしい旨言われたので、J社に対し次表のとおりの入会金を支払ったこと。

(単位 円、枚)
J社が受領した年月日入会金の額枚数該当する者の会員番号
平成3年 8月 5日1,600,000115
平成4年4月27日12,800,000816,17,18,20,21,22,24,25
平成4年11月 2日3,200,000219,23
平成4年11月 9日1,600,000126
平成5年4月30日1,600,000127

(ヘ)また、J社からは、本件証書をいくらで売ってほしい旨の話は当初なかったが、譲渡価額が安いと困るとの理由でもめたので、Gが、5,000,000円で売却した数名の者から3,000,000円を追加で受領したことにして小切手を振り出してもらい、それをJ社に提示し会員登録をしてもらったことがあること。
(ト)J社は、当審判所の照会に対し、前記(2)のイの(イ)のFないしHの本件証書を購入した者が直接会員として登録されており、請求人からの名義変更ではない旨の回答をしていること。
(チ)本件証書は、請求人が理事の地位に基づき授与された名誉会員証とは別に提供を受けたものであること。
(リ)請求人は、Eとは以前請求人が柔道をしていた関係で電話で話をする程度の付き合いであり、また、Mとはゴルフ場開発を契機として付き合いが始まりそれ以前は知り合いではなかったこと。
ハ ところで、所得税法第34条第1項は、「一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう」と規定している。
 つまり、営利を目的とする継続的行為から生じた所得及び労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しているものは、一時所得に該当しないこととなる。そして、ここにいう「役務の対価」とは、役務の提供をしたという事実があり、かつ、そのことを基因として役務の提供先から金品等を収受した場合には、それが謝礼という名目でなされたものであっても、これに含まれると解するのが相当である。
ニ 前記イ及びロの事実をハの規定等に照らし判断すると、(a)J社は、請求人がLカントリークラブの理事長及び数名の理事の選任に尽力したことなどに対する謝礼として、請求人に対し本件証書を提供したものであること、(b)J社は、請求人に対し、理事としての地位に基づく名誉会員証とは別に15枚にも及ぶ本件証書の提供をしていることから、同社は当初から請求人が第三者に本件証書を売却することを前提として提供したものであると認められること及び(c)請求人は、J社が自己に対する謝礼として本件証書を持参したことを認識した上、本件所得を得るため、Gに本件証書を第三者に売却することを依頼し、前記イの(ハ)のとおり、平成3年から平成5年にかけてこれを継続的に売却した結果、本件所得が実現したものであることが認められる。
 そうすると、請求人は、Lカントリークラブの理事長及び数名の理事の選任に尽力したなどの役務の提供を行ったことに基因してJ社から本件証書の提供を受け、それを継続的に第三者に売却することにより本件所得を得たというべきであるから、所得税法第34条で規定する一時所得には該当しないと解するのが相当である。
ホ 請求人は、Mの本件申述書は、N社から無理に懇願して作成してもらった経緯があるから、本件申述書に記載してある「功労に対する謝礼として提供した」との記載内容は真実ではない旨主張するので、当審判所が調査したところ、次の事実が認められる。
(イ)N社が○○国税局調査部の調査を受けた際、調査担当職員から本件証書はN社とJ社との取引に関連してN社に提供されたものではないかと指摘されたので、Fは本件証書が請求人に対して提供されたものであることを明らかにするための申述書を作成してほしい旨をMに依頼したところ、同人は○○国税局調査第△部第××部門の統括官あての本件申述書を作成したこと。
(ロ)本件申述書によれば、本件証書15枚は、当該ゴルフ場開発に当たり発起人代表として計画当初から開場に至るまでの間の、多大なる功労に報いるため請求人に謝礼として差し上げたものである旨記載されていること
(ハ)ところが、○○国税局調査部の調査担当職員から、「多大なる功労」の内容がはっきりしない旨の指摘を受けたので、Fは、請求人が行った理事を世話したことなどのほかに、自分が行ったことを含めて記載した「補足報告」と題する文書を提出したこと。また、その結果、○○国税局調査部の調査においては、本件証書がN社に提供されたものとは認定されなかったこと。
 そうすると、Fが本件申述書の作成をMに依頼したのは、本件所得がN社に帰属しないことを調査担当職員に明らかにすることに重点があったものと認められ、また、Fが請求人の功労の内容を詳細に説明するものとして記載した「補足報告」と題する文書に、すべて真実の内容が記載されているとはいえないものの、請求人がLカントリークラブの理事を世話したことなどの功労までを否定するものでないことが認められるから、本件証書が請求人の行ったこれらの役務の提供に対する謝礼として提供されたものであるとの前記ニの認定・判断に影響を及ぼすものではない。
ヘ 請求人は、本件証書は、J社のLカントリークラブのオープンを記念し、従来のよしみから贈与されたものであるから、本件所得は一時所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、前記ロの(リ)で認定した請求人とJ社のEらとの付き合いの程度を考慮すると、単なるよしみにより15枚もの本件証書が請求人に提供されたものとは認められず、むしろJ社は、上記ニの(a)のとおり、請求人が理事の選任に尽力してくれたことなどに対する謝礼として本件証書を請求人に提供したものと認められるから、本件所得を一時所得とする旨の請求人の主張には理由がない。
ト また、請求人は、本件所得の実態はストックオプションの権利行使をして得た所得と同質のものであり、○○国税局所得税課長が監修している質疑応答集によれば、ストックオプションの経済的利益は通常一時所得として課税されるとしているから、本件所得の所得区分についても同様に取り扱うべきである旨主張する。
 しかしながら、その質疑応答集によれば、自社から与えられたストックオプション(株式購入選択権)を行使した場合にその経済的利益に対して課税されるか否かの質問に対し、給与又は退職金に代えて与えられている場合を除き、通常、一時所得として課税される旨解説しているところ、ここで「給与又は退職金に代えて与えられている場合を除き」としているのは、この場合の経済的利益は労務その他の役務の提供に基因して得られたものであり、給与所得又は退職所得に該当するという考え方に基づくものと解される。
 すなわち、この質疑応答集においても、当該経済的利益が労務その他の役務の提供に基因して得られたものである場合などは、一時所得に該当しないという考え方を示しているものと認められ、ストックオプションを行使して得た経済的利益は、一律に一時所得に該当する旨の解説をしているものではない。
 したがって、本件所得がストックオプションの経済的利益と同質か否かを判断するまでもなく、請求人の主張には理由がない。
チ 以上のとおり、本件所得は一時所得には該当せず、また、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得にも当たらないから、本件所得は所得税法第35条第1項に規定する雑所得に該当すると解するのが相当であり、本件所得を雑所得であると認定した各年分の更正処分は適法である。

(2)過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、各年分の更正処分は適法であり、また、請求人には、確定申告の税額を計算するに当たり、原処分庁が過少申告加算税の計算の基礎とした税額に係る事実を確定申告の税額の計算の基礎としなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてした過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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