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(平8.1.16裁決、裁決事例集No.51 281頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、無線機の製造、販売及び輸出を営む法人であるが、平成4年3月1日から平成5年2月28日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税の青色の確定申告書に所得金額を736,860,070円、納付すべき税額を193,423,100円と記載して、法定申告期限までに申告したところ、J税務署長は、原処分庁所属の職員の調査に基づき、平成6年4月27日付で所得金額を811,575,703円及び納付すべき税額を221,437,600円とする更正処分並びに過少申告加算税の額を346,000円及び重加算税の額を8,589,000円とする賦課決定処分を行った。
 請求人は、これらの処分を不服として、平成6年6月22日に審査請求をした。
 なお、請求人は平成7年5月26日に住居をP市R町1丁目7番7号からQ市S町1丁目20番2号へ移動した。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
 原処分のその他の部分は争わない。
イ 更正処分について
(イ)原処分に至った経緯は、次のとおりである。
A 請求人は、昭和63年以来K国に対する製品の輸出は、K国の法人であるL Co.,LTD.(以下「L社」という。)等を代理店として、同国市場での請求人の製品の販売を行ってきたが、当該代理店が代理人として、請求人のK国の買主と直接売買契約を締結した事実は現在までなかった。
B 平成3年4月ころ、L社から請求人に対し、STATE RAILWAY OFK(以下「K国有鉄道」という。)による鉄道ラジオシステムの調達(以下「本件調達」という。)に関して競争入札が行われる予定であり、これに請求人の製品をもって参加したい旨の意思表示がなされ、請求人もその発注に応じる方向で検討を行っていた。
C 平成3年6月ころ、請求人に対しL社から本件調達はK政府に対するq銀行の融資案件の一環として行われること及びK国における入札手続の関係上、M Co.,LTD.(以下「M社」という。)が入札人として参加することを告げられ、入札手続履践のため、M社あてにL社が指定する内容のPOWER OF ATTORNEY(以下「本件委任状」という。)を作成するよう依頼された。
 なお、M社は、L社と取引関係を持つ同社のディーラーの1社であり、請求人とこれまで一切の直接の関係はなく、資金的にも人的にも何らの関係を有しない独立の企業である。
D 上記B及びCの連絡は、請求人とL社との間においてのみ行われたものであり、請求人は、入札後の本件調達における契約の履行に関しても、L社が請求人から必要な製品を購入後、これをM社に販売の上、最終的にM社がK国有鉄道に納品するとの理解の下に、L社との間での製品売買代金の確認及び交渉を行った。
E その後、L社から、「M社が、請求人の製品とH国のN(以下「N社」という。)及び日本の業者である株式会社T(以下「T社」という。)などの製造に係る鉄道ラジオシステムの周辺機器との組み合わせにより、K国有鉄道が平成3年9月に実施した本件調達の入札(以下「本件入札」という。)に参加し、同年10月14日にM社が一番札を取得した」旨の連絡とともに仮発注がなされ、L社は請求人に次のような説明及び依頼をしてきた。
(A)鉄道ラジオシステムの納品については、請求人が、他社製品をも含めたすべての製品を一括して日本からK国有鉄道あてに船積出荷してほしい。
(B)K国有鉄道は、1社に対してしか信用状を開設できないため、主要供給者である請求人に対して、M社の契約金額全額の信用状が開設されることになるから、信用状の金額と請求人の売上金額との差額をL社に返金してほしい。
 そこで、請求人は、他社製品の取扱手数料として、1社当たり10万円を受領することで上記の依頼を了承した。
F 請求人は、上記Eの本件調達に関する一連の取引(以下「本件輸出取引」という。)を履行するとともに、K国有鉄道が請求人に対して開設した信用状の金額100,240,808円を平成4年8月27日及び同年9月4日に受領したので、この信用状の金額のうち本件輸出取引におけるL社に対する売上金額として33,435,160円及び他社製品の取扱手数料として300,000円を海外売上高に計上するとともに、差額の66,505,648円を預り金として処理し、本件輸出取引において請求人が立て替えた他社製品の船積時の乙仲手数料や信用状取立銀行手数料等(以下「本件船積手数料等」という。)1,039,975円を差し引いた65,465,673円をL社に返金し、預り金の精算を行った。
 なお、請求人のL社に対する海外売上高の計上金額は、通常のK国内での同種製品の価格と同一であって、殊更安価な価格設定がなされているわけではない。
G 請求人は、前記のような取引をとる理由として、L社から次の事項について説明を受け、請求人も当該説明を合理的なものと判断して、本件輸出取引を行ったものである。
(A)鉄道ラジオシステムにおける主要製品は請求人のものであり、価額構成においても、請求人の製品は仕入ベースで70パーセント以上を占めていること。
(B)K国有鉄道は、事務の煩雑さを避けるため、5,000,000アメリカ合衆国ドルを超えない限り、各供給者に信用状を開設するのではなく、主要供給者に1本の信用状をまとめて開設することを要求していること。
(C)K国内において調達される製品については、K国有鉄道はq銀行から100パーセントの融資を受けられないこととなるため、K国の製品についてもいったん請求人あて出荷し、請求人は、請求人及び他社の製品とともに再輸出する必要があること。
H しかるに、原処分庁は、本件輸出取引をK国有鉄道と請求人との直接取引であり、売上金額は請求人がK国有鉄道から受領した信用状金額100,240,808円であると認定し、請求人が売上金額として計上した33,735,160円との差額66,505,648円を本件事業年度の益金の額に算入するとともに、本件船積手数料等1,039,975円を損金の額に算入する更正処分をした。
(ロ)しかしながら、本件輸出取引は、次のとおりであり、原処分庁は事実を誤認している。
A 請求人とM社とは、契約上、資金上一切の点において何らの関係も有しない独立した第三者であって、M社は、独立した当事者として本件調達の入札に参加し一番札を獲得したものであるから、K国有鉄道との取引当事者はM社であって、請求人は本件調達における製品の主要供給者にすぎない。
B 本件入札に際して、商品構成を決定したのはM社であり、請求人は、M社が一番札を取得後に初めてL社から本件入札に係る売買契約書の概要を知るに至った。
 そして、商品の出荷や信用状による現金の受取り、売買代金の超過額の返金に至るまで、M社の意思に基づくL社からの指示で行動しており、本件入札に係る売買契約の締結で主体的な役割を果たしたのはM社であって、同社が実質的な売買当事者である。
C M社がK国有鉄道に提出した入札書類には、同社の代表者が同社を代表して契約当事者本人として署名しており、請求人は、単にラジオ機器の主たる生産者と表示されているにすぎない。
 また、平成4年6月3日にK国有鉄道とM社との間で締結された本件調達に関する売買契約書(以下「本件売買契約書」という。)の第1条には、「鉄道ラジオシステムをK国有鉄道が買い、M社が売ることに合意する」と記載されている。
D 請求人は、本件輸出取引に際し、自社製品とM社が直接又はL社を通じて間接的に仕入れた他社製品を一括してK国有鉄道に送ったのは、M社の指示に基づき行ったものであるから、実質的には、M社がK国有鉄道に送ったことになる。
 他方、本件調達に係る売買代金は、いったん請求人が受領しているが、自社の製品の売買金額を控除した残額をL社に返金し、L社は更にM社に送金しているから、最終的にはM社がK国有鉄道から受領したことになる。
E 原処分庁は、請求人が本件調達の入札に参加する趣旨で、M社に対して本件委任状を発行したものであるとして、本件調達における取引当事者は、K国有鉄道と請求人であると主張するが、次の理由から取引当事者はM社である。
(A)請求人は、海外における自社製品の販売業者の求めに応じ、(1)購入者に対して、請求人がその入札参加企業に製品を供給するのを知らしめること、(2)製品納入後の補修等に関するアフターサービスを請求人が確約していることを購入者に対して知らしめること及び(3)入札参加企業に対して、請求人が同一の入札に関しその入札参加企業以外に製品を供給しないことを確認する趣旨で従来から日常、かつ、事務的に委任状を発行してきたものである。
 請求人が、本件入札に関してM社にあてて発行した本件委任状は、正に上記の趣旨により製品の供給者としての確約書的性質を有する書面と考えることが、取引の背景事情を正確に反映しているものといえる。
(B)請求人が、平成3年8月22日付でM社に対して発行した本件委任状の委任内容は、本件入札の対象品目のうち請求人が供給する製品であるBase Transceiver○○○とMobile Transceiver○○○に限定されており、仮に、請求人がM社を代理人として本件入札に参加するのであれば、本件入札の対象品目のすべてについて委任状を発行しなければ意味がない。
 また、請求人が本件入札の内容を知ったのは平成3年10月14日であり、原処分庁が主張するように、本件委任状により代理権を付与したとしても、委任の内容となる事務処理が特定しない状態で行われた委任は無効となるものである。
(C)請求人が、本件輸出取引において最終的に輸出した商品の中には、本件委任状に記載のないCoaxial Cable(以下「同軸ケーブル」という。)が加わっているが、この同軸ケーブルについては、平成3年11月6日及び12月16日にL社から引き合いがあり、同年12月24日に見積書を提出したが、その時点では価格が折り合わず、最終的に平成4年2月12日になってオーダーがされていることからしても、請求人はK国有鉄道との取引当事者でないことは明らかである。
(D)M社は、本件入札に際して、本件委任状を使用した事実はなく、委任状の発行があったからといって当然にそれが使用されたことにはならないから、原処分庁は、本件委任状に基づきM社が請求人の代理人として本件入札に参加したと主張するのであれば、本件委任状が使用されたことについて具体的証拠を示して立証すべきである。
(E)原処分庁は、本件委任状の内容は、商法第504条の規定に該当するから、請求人はM社に対して代理権を付与している旨主張するが、K国においては、入札に関連して、通常、メインサプライヤーは製品供給を保証するために、例えば、手紙あるいはPOWER OF ATTORNEYといった書類を入札者に対して発行するのが通常であり、請求人が本件委任状をM社に対して発行したのもこのようなK国における商慣習に従ったまでのことである。したがって、請求人は、本件委任状の発行によりM社に対して代理権を付与したものではない。
 なお、本件入札及び本件売買契約書に関する準拠法はK国法であり、日本の商法の規定を根拠とする原処分庁の主張には、重大な瑕疵がある。
F 原処分庁は、信用状及び船荷証券は請求人を売主、K国有鉄道を買主として作成されている旨主張するが、請求人は信用状の受益者、船荷証券の荷送人であって、売主との記載はなく、受益者や荷送人が必ずしも売主であるわけではない。
G 原処分庁は、請求人がL社に対して発行したプロフォーマインボイスに対して、「いわゆる取引があったと仮想し作成される見積書的インボイスであることからすれば、プロフォーマインボイスをもって請求人とL社との取引の存在を主張する理由にはならない」と主張するが、貿易実務において、プロフォーマインボイスは、納期の時期、搬入の方法、売買対象品とその数量、価格及び代金決済の方法等を確認し合う重要な機能を果たしており、売主側にとっては受注確認書ないしは注文請書の性格を有し、特に商品の売買価格が基本契約書により既に約定されている継続的取引関係を有する当事者間においては、買主から別段の要求、訂正等がなければ、原則として、プロフォーマインボイスによって売買契約は成立するのであるから、原処分庁の主張には理由がない。
 さらに、原処分庁は、「売主請求人、買主L社あるいはM社であることを裏づける資料が他に存在しない」と主張するが、請求人は、平成4年8月27日付でL社に対する売買代金33,435,160円のインボイスを、同社に対して発行しているから、原処分庁の主張は明らかに事実誤認である。
H 原処分庁は、請求人がL社に対して、預り金の返金として送金した65,465,673円の支払理由が不明であると主張するが、K国有鉄道との取引当事者はM社であり、K国有鉄道が開設した信用状の真正な受取人はM社であるから、請求人は信用状金額をM社に代わって受領したものであり、当該金額から請求人の売上金額を控除した残額を返金したことに対して、支払理由が不明であるとする原処分庁の主張には理由がない。
ロ 本件賦課決定処分について
 前記イで述べたとおり、更正処分のうちの本件輸出取引については原処分庁が事実を誤認したものであり、更正処分はその一部が取り消されるべきものであるから、これに伴い重加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)も取り消されるべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ)原処分庁の調査によれば、次の事実が認められる。
A 請求人は、本件輸出取引につき本件事業年度において、K国有鉄道からの入金額100,240,808円のうち33,735,160円を海外売上高として計上し、入金額から海外売上高を控除した66,505,648円を預り金として計上した上、当該預り金からL社が負担すべき本件輸出取引に係る本件船積手数料等1,039,975円を差し引いた65,465,673円をL社に返金したとして経理処理していること。
B 請求人は、平成3年8月22日付で「請求人は、K国の法律に基づき設立され、本店をWに置くM社が、K国有鉄道の入札に参加し、請求人のために入札の交渉及び契約締結することについて正に委任する」旨の記載された本件委任状をM社に対して発行していること。
C 平成4年6月3日に、買手をK国有鉄道、売手をM社とする本件売買契約書が締結されており、同売買契約書には、次の内容が約定されていること。
(A)鉄道ラジオシステムは、A社(請求人)(日本)製のものであること。
(B)売手は、本件売買契約書に署名後180日以内に日本のY港にて鉄道ラジオシステムを船積みしなければならないこと。
(C)当該鉄道ラジオシステムの価格は、CIF・X価格で総額100,240,808円とし、決済は請求人を受益者とし、売手が金銭を引き出すことのできる取消不能信用状により行われること。
D 本件輸出取引に係るインボイスは、平成4年8月24日に、請求人からK国有鉄道あて発行されており、インボイス金額は100,240,808円であること。
E 本件輸出取引に係るK国有鉄道が発行した信用状の受益者は、請求人となっていること。
F 本件輸出取引に係る船荷証券の輸出者(荷主)は請求人であり、着荷通知先はK国有鉄道であること。
G 請求人は、平成3年11月15日、平成4年2月15日及び同年8月7日付でL社を売先とするプロフォーマインボイスを発行しており、これらのプロフォーマインボイスに記載された合計金額は33,435,160円であること。
H 請求人が、本件輸出取引に関してY税関に提出した輸出報告書(以下「本件輸出報告書」という。)によると、請求人が輸出者、K国有鉄道が買主となっていること。
(ロ)以上の事実を総合して判断すると、請求人は、M社に本件委任状を発行していることから、M社は請求人の代理人として本件入札に参加していると認められ、本件輸出取引は、請求人とK国有鉄道との直接取引である。
(ハ)また、請求人は、本件輸出取引について、次のとおり主張するが、その主張には、次のとおりいずれも理由がない。
A 請求人は、M社は請求人と契約上、資金上、一切の点において何らの関係も有しない独立した第三者である旨主張する。
 しかしながら、前記(イ)のBのとおり、M社は請求人のために本件入札に参加し、入札の交渉、契約の締結を委任されており、M社は請求人と一切の点において何らの関係もない第三者とは認められず、請求人の主張は失当である。
B 請求人は、本件調達の締結から履行に至るまで、終始主体的な役割を演じたのはM社であり、売買契約の実質的な当事者はM社であると主張する。
 しかしながら、前記(イ)のBのとおり、M社は、請求人から入札の交渉、契約の締結を委任されているのであるから、M社がいわゆる代理人として主体的な役割を演じていたとしても、同社を売買契約の当事者とする理由にはならない。
C 請求人は、本件調達に関する製品は、M社の指示に基づき、請求人に送られてきた他社製品を、請求人が一括してK国有鉄道に輸出したものであり、実質的にみればM社からK国有鉄道に製品が納入されていると主張する。
 しかしながら、M社は請求人のいわゆる代理人の立場にあるので、製品の流れの背後にM社の意思があっても、そのことをもってM社からK国有鉄道に製品が納入されていることにはならず、請求人の主張には理由がない。
D 請求人は、委任状の発行はM社が請求人の製品をもって本件入札に参加することを確認し、認める趣旨で発行したものにすぎない旨主張する。
 しかしながら、委任状に記載された内容は、前記(イ)のBで述べたとおりであり、M社は請求人のいわゆる代理人と考えるべきであるから、請求人の主張には理由がない。
E 請求人は、本件調達についてM社に対して代理権を与えていない旨主張する。
 しかしながら、前記(イ)のBの本件委任状を発行し、本件入札に関する代理権を与えているから、これは商法第504条の規定からしても、M社が本件入札に関し、請求人のためにすることを示さなくても、その行為は請求人に対して効力を生ずることになるから、請求人の主張には理由がない。
F 請求人は、原処分庁が本件輸出取引に係る信用状及び船荷証券において、請求人を売主、K国有鉄道を買主として作成されていることを更正処分の理由としていることについて、請求人は信用状の受益者、船荷証券の荷送人であって売主との記載はなく、また、受益者や荷送人は必ずしも売主であるわけではない旨主張する。
 しかしながら、本件輸出取引に係るインボイス、信用状、船荷証券及び輸出報告書は、前記(イ)のDないしF及びHで述べたとおり、請求人とK国有鉄道を当事者としており、請求人が主張するような売主を請求人、買主をL社あるいはM社であることを裏づける資料は存在しない。
 また、前記(イ)のGで述べたとおりプロフォーマインボイスは存在するが、プロフォーマインボイスは、いわゆる取引があったものと仮想し作成される見積書的インボイスであることからすれば、当該プロフォーマインボイスをもって請求人とL社との取引の存在を主張する理由にはならない。
 したがって、存在する資料に基づき本件調達をみてみると、信用状の受益者、船荷証券の荷送人は輸出者であり、一般的には売主でもあることからして、請求人を本件調達の売主とすることは当然の帰結であり、請求人の主張には理由がない。
G 請求人は、信用状決済額のうちL社あるいはM社に帰属する部分を一時預り金に計上した上、これを返金したものであり、正当な行為であると主張する。
 しかしながら、前記AないしD及びEで述べたとおり、請求人が本件調達の売主であり、信用状決済額の全額が請求人に帰属するものであるから、信用状決済額のうち、L社あるいはM社に帰属する部分を預り金に計上した旨の請求人の主張には理由がない。
H 請求人は、信用状決済額から請求人の売上金額を控除した残額をL社に返金し、同社は更にM社に送金しているから、本件調達に係る売買代金は最終的にM社まで流れており、本件調達に係る売買代金をK国有鉄道から受け取ったのはM社である旨主張する。
 しかしながら、本件調達に係る売買代金をK国有鉄道から受け取ったのは、前記(イ)のCの(C)で述べたことからも明らかなように請求人自身であるから、請求人の主張には理由がない。
(ニ)以上のとおり、本件調達は、請求人とK国有鉄道との直接取引であるから、原処分庁は、本件事業年度において、K国有鉄道から入金のあった100,240,808円から請求人が海外売上高に計上した33,735,160円を控除した66,505,648円を海外売上高計上もれとして益金の額に算入し、本件船積手数料等1,039,975円を損金の額に算入したもので、その計算に誤りはない。
 したがって、更正処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分について
 以上述べたとおり、更正処分は適法であり、請求人が、本件輸出取引について、請求人とK国有鉄道との直接取引であるにもかかわらず、請求人とL社との取引であるとして前記イの(イ)のAで述をべた経理処理を行っていることは、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したことに該当する。
 したがって、本件賦課決定処分も適法である。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件調達に係る売主が請求人であるか否かであるので、以下審理する。

(1)更正処分について

イ 当審判所が原処分関係資料及び請求人から提出された証拠資料を調査したところ、次の事実が認められる。
(イ)平成3年5月24日付のL社から請求人に対する通信文によると、鉄道プロジェクトに係るモービルアンテナの紹介がされていること。
(ロ)平成3年7月10日付のL社から請求人に対する通信文によると、K国有鉄道が調達する888台のベース及びモービルトランシーバーに係るM社あての委任状を発行するよう依頼されていること。
 なお、この依頼に基づき委任状を発行した事実は認められないこと。
(ハ)平成3年8月19日付のL社から請求人に対する通信文によると、K国有鉄道のプロジェクトに係るM社あての委任状を発行するよう依頼されていること。
 なお、対象商品は○○○となっていること。
(ニ)平成3年8月20日付の請求人からL社に対する通信文によると、旧型である○○○より新型の△△△を奨めていること。
(ホ)平成3年8月21日付のL社から請求人に対する通信文によると、K国有鉄道への入札対象品目はすでに○○○で決定しており、いかなる変更もできない旨及び入札番号は××であり委任状に記載するよう連絡がされていること。
(ヘ)請求人は、M社に対して平成3年8月22日付で本件委任状を発行しており、それには「日本国の法令の下に設立され、かつ、登記され、その主たる事務所をP市R町1丁目7―7に有するA株式会社(請求人)は、K国の法令の下に設立され、かつ、登記され、その主たる事務所をK国X市に有するM社をA株式会社のために、次のK国有鉄道に係る入札に参加し、交渉及び契約の締結を行うことをここに指名し、これを確認します。

(1)購入者K国有鉄道
(2)入札番号未定
(3)締切日1991年9月20日
(4)対象品○○○ベース・トランシーバー483台及び
 ○○○モービル・トランシーバー405台

 なお、A株式会社から新たな通知をするまでは、この委任状は有効となります」旨の記載がされていること。
(ト)平成3年9月10日付の本件入札に関する「入札及び契約書類」のB章のBー9入札準備には「入札書式様式は入札者の住所氏名が記載され、代表委任権を有する代表代理人の署名を必要とする」旨記載されているところ、K国有鉄道に提出された本件入札の書式様式の写しによると、入札者はM社を代表してBが署名していること。
(チ)平成3年10月14日付のL社から請求人に対する通信文によると、M社は、(1)K国有鉄道との契約を勝ち取ったこと、(2)K国有鉄道は注文書記載の100,240,808円を請求人にあてて信用状を開設すること、(3)請求人は信用状金額と請求人の売上金額との差額をL社を通じてM社に支払うことになること、(4)注文書に記載された製品の一部が請求人の製品であり、他の製品は他社から調達されるものであることが記載されている。
(リ)請求人は、上記(チ)の通信文を受けて、平成3年10月14日付で売買総額を35,107,320円とするプロフォーマインボイス(インボイスNO. a)を、L社に対して発行していること。
 なお、このプロフォーマインボイスによる○○○トランシーバーの単価は36,320円である。
 また、同日付で売買総額を39,809,420円とするプロフォーマインボイス(インボイスNO.b)を、M社に対して発行していること。
(ヌ)平成3年10月15日付のL社から請求人に対する通信文によると、(1)請求人が上記(リ)のL社に対するプロフォーマインボイスに記載した○○○の単価36,320円は34,340円の誤りである旨の指摘とともに、(2)K国有鉄道が信用状を開設するために必要な総額100,240,808円とする仮プロフォーマインボイスを請求人に発行するよう求め、その仮プロフォーマインボイスの記載内容を添付してきていること。
(ル)平成3年11月5日付のL社から請求人に対する通信文によると、請求人に対して□□等の同軸ケーブルの見積りを依頼していること。
 なお、請求人はL社との間において、平成3年11月6日以降同軸ケーブルの価格交渉を行っていたが、売買価格が折り合わず、請求人は、L社自ら調達するよう平成4年1月30日付で依頼したところ、L社は平成4年2月11日付で請求人の提示した価格を承認し、同軸ケーブルの取引が成立し、平成4年2月15日付で総額2,795,240円のプロフォーマーインボイスを発行していること。
(ヲ)請求人は、前記(ヌ)のL社からの○○○の単価誤りの指摘に基づき、平成3年11月15日付で前記(リ)のL社あてプロフォーマインボイスを訂正するプロフォーマインボイス(インボスNO.a)を同社に対して発行しており、その総額は30,493,920円であること。
(ワ)請求人は、平成3年11月19日付のL社に対する通信文で、本件輸出取引に係る次の事項についての確認を求めていること。
A 他社製品の請求人への到着日時、また、他社製品の供給者の住所、氏名等
B 請求人は、M社のために、他の供給者に対して代金を支払う責任があるか否か。
C 請求人が信用状に基づき受け取る金額と、請求人の売上金額との差額をどのような方法で支払うことになるのか。
(カ)上記(ワ)の質問に対して、平成3年11月21日付でL社から回答を受けており、その内容は次のとおりであること。
A 他の供給者には、M社、T社及びN社の3社が関与しており、M社は製品をK国から船便で出荷し、Y到着は平成4年2月末ごろになる。
 T社は、平成3年12月末ごろに請求人に商品を引き渡す。請求人は単に商品を受け取るだけである。
 N社は、H国の列車用アンテナの製造者で、製品は平成4年2月末に請求人に送付される。
B 請求人は、他の供給者に対して代金を支払う必要はなく、引き渡された製品等を一括してXに船積みするだけである。
C K国有鉄道は、一人の受取人にしか信用状を開設できないから、請求人に対してすべての製品等の信用状を開設する。そのため、請求人は信用状に係る総額100,240,808円を受け取ることになる。
 なお、上記(ワ)のCに関する質問には回答は行われていないが、その後のL社から請求人に対する通信文等により、L社のd国の口座に送金小切手で支払うことで解決していることが認められる。
(ヨ)本件売買契約書には、大要次の内容が記載されていること。
A 売主をM社、買主をK国有鉄道とする。
B 買主は、この契約の一部を構成する平成4年6月3日付の注文書NO. メートル(以下「本件注文書」という。)に記載されたA株式会社(請求人)製の鉄道ラジオシステムを買受け、その価額はCIF・Xで100,240,808円である。
 なお、本件注文書には、次の内容が記載されている。

C 売主は、本件売買契約書締結の日から180日以内に鉄道ラジオシステムを完全な状態でY港で船積みしなければならない。
D 買主は、売主が代金を受領できるようにするため、A株式会社を受益者とする総額100,240,808円の取消不能の信用状を開設することにより、売主に対して支払う。
(タ)請求人は、平成4年6月24日付のL社に対する通信文で、本件輸出取引に係る他社製品の取扱手数料として1社当たり10万円、合計30万円を要求したところ、同月26日付のL社からの通信文で、請求人が要求した手数料金額が了承され、L社との間でHANDLING COMMISSION AGREEMENTを締結していること。
(レ)請求人は、L社に対し平成4年8月7日付で、◎◎TOOL SET 10セットについて売買価額を146,000円とするプロフォーマインボイス(インボイスNO. e)を発行していること。
(ソ)請求人は、平成4年8月24日付で、K国有鉄道に対してインボイス(インボイスNO. f。以下「本件甲インボイス」という。)を発行しており、その内容は、本件注文書の品名及び数量に無償品の◎◎ALIGNMENT TOOL SET10セットが加わっているものの金額は同額であること。
(ツ)請求人は、平成4年8月27日付で、次の内容が記載されているインボイス(インボイスNO. g。以下「本件乙インボイス」という。)を、L社に対して発行していること。

(ネ)請求人は、本件注文書に記載された品名の製品を一括して船積みし、それに基づきD CO.,LTD.が平成4年9月2日にNO. hのBILL OF LADING(以下「本件船荷証券」という。)を発行していること。
 なお、本件船荷証券には、積出人として請求人の名称が記載され、着荷通知先としてK国有鉄道の名称が記載されていること。
(ナ)請求人は、本件輸出取引に関する売上げとして、平成4年8月27日に33,435,160円を、同年9月7日に300,000円の合計33,735,160円を海外売上高(借方科目は海外売掛金)に計上していること。
(ラ)請求人は、K国有鉄道が発行依頼したLetter of Credit(以下「本件信用状」という。)に基づき受領した額面90,216,727円のBILL OF EXCHANGE(為替手形)を、平成4年9月4日にE銀行F支店で決済し、銀行手数料92,086円控除後の90,124,641円及び平成5年1月13日に電信送金により送金された10,024,081円との合計100,148,722円を、請求人の同行の当座預金に入金していること。
(ム)請求人は、上記(ラ)のBILL OF EXCHANGEの額面金額及び電信送金額の合計額100,240,808円から、前記(ナ)の海外売掛金33,735,160円を回収したものとし、その他の金額66,505,648円を預り金で経理処理したこと。
(ウ)請求人は、上記(ム)の預り金から立替金として経理した本件船積手数料等1,039,975円を差し引いた65,465,673円について、平成4年9月29日に58,789,277円を、平成5年2月3日に6,676,396円をそれぞれL社に対して返金したとして、預り金勘定を減額していること。
 なお、本件船積手数料等の内訳は、次表のとおりであること。

(単位 円)
内容金額
信用状取立銀行手数料59,825
L社への預り金送金手数料4,169
K国から送られた品物の乙仲手数料78,651
H国から送られた品物の乙仲手数料31,449
預り品等をK国へ船積みした乙仲手数料330,391
預り品等をK国へ送付した運賃163,345
預り品等をK国へ送付した時の保険料372,145
合計金額1,039,975

ロ 前記イの事実に基づき判断すると次のとおりである。
(イ)原処分庁は、請求人がM社に対して本件委任状を発行していることをもって、M社は請求人の代理人として本件入札に参加したものであり、本件調達に係る売主は実質的に請求人である旨主張する。
 確かに、本件委任状は、前記イの(ヘ)のとおり、本件委任状に記載されている製品について、M社に代理権を与える書類としての要件を充足していると認められるが、これだけをもって、本件調達に係る製品のすべてについて、請求人がM社に代理権を与えているということはできない。
 また、当審判所の調査によれば、現に本件入札に参加した他の入札人においては、本件調達の入札に際して、入札人が入札製品の製造者を特定するために、製造者に委任状を作成させ、当該委任状をもって、本件入札に参加している事実が認められる。
 そうすると、本件委任状の発行を絶対的な要件として、本件売買契約書の取引当事者を実質的に請求人とK国有鉄道であるとすることはできない。
(ロ)原処分庁は、請求人とL社との間でプロフォーマインボイスは存在するが、プロフォーマインボイスは取引があったものと仮想し作成される見積書的インボイスであることからすれば、当該プロフォーマインボイスをもって請求人とL社との取引の存在を主張する理由にはならない旨主張する。
 しかしながら、プロフォーマインボイスの性格については、納期、搬入の方法、売買対象品とその数量、価格及び代金決済の方法等を確認し合う書類であるとする請求人の主張が相当であるのはもとより、請求人は、前記イの(ツ)のとおり、本件乙インボイスを発行しており、請求人とL社との取引の存在がうかがえるから、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(ハ)原処分庁は、本件甲インボイス、本件信用状、本件船荷証券及び本件輸出報告書のいずれもが、請求人とK国有鉄道とを当事者としていること及び本件調達に係る売買代金の総額を請求人が受け取っていることを理由として、本件調達に係る取引当事者は、請求人とK国有鉄道であると主張する。
 ところで、一般的な国際間の商取引においては、輸出貨物の通関に際して輸出報告書に添付するインボイスは請求書であるから、当該インボイスの発行者と、その輸出貨物に係る売買代金の決済として発行される信用状の受益者とが同一であれば、当該者が当該輸出取引における売主であることは疑いのないところである。
 これを本件輸出取引についてみると、請求人はL社の依頼により本件委任状を発行し、M社は請求人の製品を含む鉄道ラジオシステムに関して落札している事実が認められ、その結果、請求人が荷送人として請求人の製品を含む鉄道ラジオシステムをK国有鉄道を荷受人及び着荷通知先として送付するとともに、本件甲インボイスの発行があり、当該インボイスに記載された請求金額を本件信用状に基づき受領していることが認められるから、このことからみる限り本件調達については、請求人を売主、K国有鉄道を買主とするのが極めて当然であるから、原処分庁が本件輸出取引の通関に際し添付された本件甲インボイスの発行者である請求人を売主とし、本件甲インボイスに記載された金額100,240,808円を請求人の売上げと認定したことは当然である。
(ニ)しかしながら、インボイスの発行者が信用状の受益者である場合において、この者を売主とする一般的な取引に比して、他にこれと相容れない又はこれと異なる取引の存在を示す事実が存在するときには、その事実に着目して売主を特定するのは当然であり、本件の場合において、本件甲インボイスに記載された金額を請求人の売上げとすることについては、前記イで記載した通信文等の記載内容を含め、一般的な取引に比して異なる事実が存在することが次のとおり認められるから、本件甲インボイスに記載された金額を請求人の本件輸出取引に係る売上金額とすることには疑問が生ずる。
A 請求人がM社に対して発行した本件委任状の性格については、前記(イ)のとおり、請求人は、本件入札に際しM社から入札製品の製造者を特定する等のために本件委任状を求められたものと考えられること、かつ、本件委任状に記載された製品は本件甲インボイスに記載された製品等のすべてを網羅したものではないことから、少なくとも本件委任状の発行者を本件調達に係る売主と認定することはできないこと。
B 本件輸出取引においては、本件甲インボイスの発行者及び本件信用状の受益者が請求人となっているが、これに先立って本件調達に際して締結された本件売買契約書は、M社とK国有鉄道をその当事者とされているところ、M社が請求人の代理人として本件売買契約書を締結したと認められる事実はないこと及び本件売買契約書の条項として、前記イの(ヨ)のC及びDのとおり、(1)本件注文書に記載されたすべての製品についてYから一括してK国有鉄道に対して送付すること及び(2)K国有鉄道は本件売買契約に基づく売買代金の総額である100,240,808円の信用状を請求人を受益者として開設する旨の記載が認められる。
 そうすると、請求人は、本件売買契約書記載の条項に基づく指示をL社を通じてM社から受け、それに従ってかかる措置を講じたものとみることができることから、本件輸出取引におけるすべての製品等の船積み及び信用状の受益者が請求人となっていることをもって、本件売買契約書に係る実質的売主を請求人と認定することはできない。
C 請求人は、本件輸出取引に際し、自社製品とM社が直接又はL社を通じて間接的に仕入れた他社製品等を一括してK国有鉄道に送ったのは、M社の指示に基づき行ったものであると主張するとともに、請求人が一括して船積みした製品等に係る個々の納入業者のリスト(以下「本件リスト」という。)を別表のとおり提出した。
 また、上記納入業者の1社であるT社のU海外部課長は当審判所に対し、「当社はr国から商品を輸入し、それを請求人の指定する倉庫へ搬入したものの、それはL社からの指示に基づくものであり、当社の販売先は請求人ではなくL社である」との答述をしており、このことは、請求人及び同社の帳簿からも同社の製品を請求人が仕入れた事実がないことが明らかであることと相まって、T社に帰属する製品等をM社の指示により請求人が船積みしたものと推認される。
 そうすると、他の納入業者である2社の製品等についても、上記と同様にそれぞれの納入業者に帰属する製品等をM社の指示により請求人が船積みしたものと推認することができる。
D 上記Cに関連して、本件リストに記載された製品等のうち、請求人に帰属するとされる製品等に係る品名及びその数量は、本件乙インボイスに記載されたそれと一致することが認められる。
E 請求人が、当審判所に提出したL社との通信文やインボイス等の書類(以下「本件通信文等」という。)を詳細に検討したところ、(1)請求人とL社との間の製品等の単価訂正等を含めて本件輸出取引に係るほとんどすべての経過が記載されていること、(2)M社が本件調達に係る契約を本件入札において勝ち取ったこと、(3)K国有鉄道は請求人にあてて信用状を開設しその売買代金の全額を支払うことになるから、請求人は信用状金額と請求人の売上金額との差額をL社を通じてM社に支払うこと、(4)注文書に記載された製品等の一部は請求人の製品であるが、他の製品等はT社等が自らの製品等を供給すること、(5)請求人は他の製品等の供給者に代金を支払う必要はなく、送付された製品等を一括してK国有鉄道にあてて船積みすること等、本件輸出取引に関して本件通信文等に記載された内容は実際の物及び金の流れと一致しており、更に、上記Cで記載したとおり、本件リストのうち請求人に帰属するとされる製品等の品名及びその数量が本件乙インボイスのそれと一致し、加えて、上記CのT社のU海外部課長から得た答述とも併せ考えると、本件通信文等に記載された内容は極めて信ぴょう性があると認められる。
(ホ)請求人は、本件入札に際して、商品構成を決定したのはM社であり、同社が一番札を取得後に初めてL社から本件入札に係る売買契約書の概要を知るに至ったと主張するところ、当審判所の調査においても、前記イの(イ)ないし(ホ)及び(チ)の通信文の事実からすれば、本件入札についての要請、入札対象品目の決定、製品等の発注等はすべてL社からの指示に基づいて行われていたと認められるから、請求人の主張は相当である。
(ヘ)原処分庁は、請求人がL社に対して送金した65,465,673円を支払理由及び支払先が不明として認定しているが、次の理由から、支払理由及び支払先が不明と認定することはできない。
A 当審判所が、請求人がL社に返金したとする平成4年9月29日の58,789,277円及び平成5年2月3日の6,676,396円について調査したところ、請求人は、平成4年9月25日付のL社に対する通信文において、預り金の一部である58,789,277円を精算するため送金小切手を用意してよいか確認し、L社からは同日付で49,411,281円と9,377,996円の2通の送金小切手で送金するよう指示があったことが認められ、請求人は、その指示を受けて平成4年9月28日付でE銀行F支店を送金銀行とし、支払銀行をG BANK LTD.(以下「G銀行」という。)、受取人をL社とする上記2通の送金小切手の交付を受け、同月10月2日に同社にあてて送付している。
B また、残余の6,676,396円についても、平成5年2月2日付で上記と同様の方法により、1通の送金小切手の交付を受け、同月3日に同社に対して送付している。
C そして、上記小切手の第一裏書人はいずれもL社であり、同小切手はいずれもG銀行本店で現金払いにより決済されているところ、当該預り金の返金は上記並びに前記イの(チ)及び(カ)のCのとおり、専らL社の指示によっているものと認められ、また、当該決済された資金が請求人に帰属すると認定するに足りる証拠資料は存在しない。
ハ 以上のとおり、現に存する証拠資料によれば、本件輸出取引において、請求人は、M社がK国有鉄道と取り交わした本件売買契約書の付属書類である本件注文書に基づき、その主要製品の供給者として、請求人に帰属する製品等をL社に対して販売したと認めるのが相当であり、その売上金額は、本件乙インボイスに記載されている金額が相当と認められる。
 したがって、本件調達に係る売主を請求人であるとする原処分庁の主張にはいずれも理由がない。
ニ 本件事業年度の更正処分のうち上記以外の部分(加算金額合計10,200,750円から減算金額合計950,790円を差し引いた9,249,960円の部分)については、請求人は争わず、当審判所の調査によっても相当と認められる。
ホ 以上の結果、請求人の本件事業年度の所得金額は、確定申告書に記載された所得金額736,860,070円に、上記ニの金額9,249,960円を加えた746,110,030円となり、この金額は更正処分の金額を下回るから、更正処分はその一部を取り消すべきである。

(2)本件賦課決定処分について

 本件事業年度の本件賦課決定処分については、前記(1)のとおり更正処分の一部を取り消すべきであるから、これに伴い、その全部を取り消すべきである。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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