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(平8.4.18裁決、裁決事例集No.51 370頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)法人税について

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、組合員のための共同店舗の設置及び管理、組合員の取扱品の共同売出し、共同宣伝等を目的とする事業協同組合であるが、平成3年2月1日から平成4年1月31日までの事業年度(以下「平成4年1月期」という。)の法人税について、青色の確定申告書に所得金額を2,385,648円及び納付すベき税額を、507,800円と記載して、法定申告期限までに申告した。
 原処分庁は、これに対し、平成5年6月29日付で所得金額を86,691,348円、納付すべき税額を23,270,400円とする更正処分及び過少申告加算税の額を、3,381,500円とする賦課決定処分をした。
 請求人は、これらの処分を不服として、平成5年8月18日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は平成5年11月18日付で棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成5年12月15日に審査請求をした。

(2)法人臨時特別税について

 請求人は、平成3年2月1日から平成4年1月31日までの課税事業年度(以下「本件課税事業年度」という。)の法人臨時特別税について、確定申告書を提出しなかったところ、原処分庁は、これに対し、平成5年6月29日付で課税標準法人税額を20,406,000円及び納付すべき税額を510,100円とする決定処分並びに無申告加算税の額を76,500円とする賦課決定処分をした。
 請求人は、これらの処分を不服として、平成5年8月18日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は平成5年11月18日付で棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成5年12月15日に審査請求をした。

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(3)消費税について

 請求人は、平成2年2月1日から平成3年1月31日まで及び平成3年2月1日から平成4年1月31日までの各課税期間(以下、順次「平成3年課税期間」及び「平成4年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税について、確定申告書に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。

(単位 円)
課税期間平成3年課税期間平成4年課税期間
項目
確定申告
 課税標準額2,582,000309,404,000
 納付すべき税額8,853,200
 還付税額310,148

 原処分庁は、これに対し、平成5年6月29日付で次表の「更正」欄及び「賦課決定」欄のとおりの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。

(単位 円)
課税期間平成3年課税期間平成4年課税期間
項目
更正
 課税標準額42,881,000338,818,000
 納付すべき税額343,2009,728,900
賦課決定
 過少申告加算税の額72,50087,000

 請求人は、これらの処分を不服として、平成5年8月18日付で異議申立てをしたところ、異議審理庁は平成5年11月18日付で棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成5年12月15日に審査請求をした。

(4)源泉所得税について

 原処分庁は、平成6年6月20日付で、平成3年10月から同年12月までの各月分の源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)について、次表の「納税告知」欄及び「賦課決定」欄のとおりの納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をした。

(単位 円)
区分所得の種類納税告知賦課決定
期間(源泉所得税の額)(不納付加算税の額)
平成3年10月分配当41,925
平成3年11月分配当4,795,400479,000
平成3年12月分配当12,198,9541,219,000

 請求人は、これらの処分を不服として平成6年6月27日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、国税通則法(以下「通則法」という。)第90条《他の審査請求に伴うみなす審査請求》第1項の規定に該当するものとして、同年6月30日に当審判所長あて送付してきたので、同日当該異議申立てに係る処分についての審査請求がされたものとみなされた。
(5)そこで、これらの審査請求について併合審理をする。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 法人税の更正処分について
(イ)請求人は、その事業運営に必要な費用は、請求人の定款(以下「定款」という。)第16条の定めに基づき組合員から賦課金を徴収することにより充ててきたものであるが、賦課金の負担割合については、組合員の各店舗の面積割合で計算することが合理的であるとして、この方式で算出した賦課金を徴収してきた。
 しかしながら、組合員の各店舗の売上げが伸び悩み、賦課金の負担が組合員の事業経営を圧迫するようになったため、請求人は、その所有する共同店舗であるP市S町717番地8ほか4筆684.2平方メートルの土地、同所所在の鉄筋コンクリート造陸屋根3階建2,001.59平方メートルの建物及び付属備品等(以下「本件建物等」という。)を平成3年10月16日の譲渡契約により株式会社H(所在地Q市、以下「H社」という。)に譲渡価額378,000,000円で譲渡し、その譲渡代金を請求人の借入金の返済及び経費の支払に充てるとともに、組合員が負担した賦課金のうち、平成元年2月1日から平成2年1月31日までの事業年度(以下「平成2年1月期」という。)の賦課金の一部、平成2年2月1日から平成3年1月31日までの事業年度(以下「平成3年1月期」という。)の賦課金の全部及び平成4年1月期(以下、平成2年1月期、平成3年1月期及び平成4年1月期を併せて「本件各事業年度」という。)の賦課金の全部(以下、これらの賦課金を「本件各賦課金」という。)を返還(以下、本件各賦課金の返還行為を「本件払戻し」といい、これに伴う払戻額を「本件払戻額」という。)し、平成2年1月期及び平成3年1月期分の本件払戻額は、平成4年1月期の所得の金額の計算上損金の額に算入し、平成4年1月期分の本件払戻額は、平成4年1月期の所得の金額の計算上益金の額から減算した。
 ところが、原処分庁は、本件払戻額は、出資者に対する剰余金の分配に該当し、法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第5項に規定する「資本等取引」に該当するとして更正処分をした。
(ロ)しかしながら、本件払戻しは、次のとおり、組合員が負担した運営費用の一部を返還したものであり、原処分は、組合の運営実態及び返還手続について曲解した違法なものである。
A 本件払戻しは、平成3年10月16日に開催した臨時総会の決議に基づき、組合員が負担した運営費用の一部を返還したもので、「資本等取引」である剰余金の分配と見ることはできない。
B 原処分庁は、本件払戻しの原資に本件建物等を譲渡して得た利益金が充てられたことを処分の理由としているが、請求人は譲渡代金を債務の返済と賦課金の返還を含む経費の支払に充てたものであるところ、原処分庁はこの点について触れておらず不当である。
C 原処分庁は、請求人が、平成3年10月16日の臨時総会の決議に基づき本件払戻しをしたのは、本来なら確定決算における剰余金の分配として通常総会で行うべき配当を、平成4年1月期において前払したものと変わらないとしているが、通常総会で決算関係書類を承認したことは、本件払戻額を損金処理することを承認したものであって、臨時総会で剰余金の分配を行うという意図も認識も有していなかったものであり、配当でないことは明らかである。
D 賦課金の額、徴収時期及び徴収方法等は、定款第16条により総会で定めることとなっており、総会の決議によって賦課金を減額又は返還することは何ら定款の定めに抵触しない。
 また、本件払戻額は、定款第55条に定める総損金に該当するものである。
E 原処分庁は、本件払戻しは、組合員の出資割合に厳密には応じていないが、本件建物等を譲渡して得た利益金を出資者たる地位に基づいて分配していることにほかならないから剰余金の分配である旨主張するが、本件払戻額の計算は、賦課金の徴収割合を基礎として行ったもので、その決議の手続からみても賦課金の返還は賦課金の負担者としての立場に基づいて行われたものである。
F 中小企業等協同組合法(以下「協同組合法」という。)第5条《基準及び原則》第1項第4号の規定「組合の剰余金の配当は、主として組合事業の利用分量に応じてするものとし、出資額に応じて配当するときは、その限度が定められていること。」は、同法の組合の要件の一つとされ、また、同法第9条《事業利用分量配当の課税の特例》では、利用分量に応じて配当した剰余金の額に相当する金額は、法人税法の定めるところにより、当該組合の同法に規定する各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する旨規定しており、第一次的には利用分量による配当を基本としその損金性を認めていることからも、賦課金の徴収割合に応じて返還した金額を出資額に応じた配当であると認定するのは不当である。
G 本件各賦課金の経理処理については、受け入れた請求人は、これを益金の額に計上し、負担した組合員は、損金の額又は必要経費に計上しており、また、本件払戻額については、請求人は、これを損金の額に算入し、組合員は、益金の額に算入又は収入金額に計上しているのであるから、原処分は二重に課税関係を生じさせる不当なものである。
(ハ)以上のとおり、請求人の組合員に対する本件払戻額は、請求人の所得の金額の計算上、損金の額に算入され、また、益金の額から減算されるべきである。
ロ 法人税の過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、法人税の更正処分は違法であるから、過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。
ハ 法人臨時特別税の決定処分について
 法人臨時特別税の決定処分は、前記イの法人税の更正処分とその課税の基礎となった事実を同じくするものであり、前記イのとおり、その事実の認定に誤りがあるので、そのような認定事実に基づいてなされた法人臨時特別税の決定処分は違法であり、その全部を取り消すべきである。
ニ 法人臨時特別税の無申告加算税の賦課決定処分について
 上記ハのとおり、法人臨時特別税の決定処分は違法であるから、無申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。
ホ 消費税の更正処分について
(イ)請求人は、定款の定めに基づき、賦課金及び販促事業費を組合員に賦課し、これを事業の運営費用に充てていたものであるが、原処分庁は、賦課金は組合員の店舗面積に応じて徴収しているので店舗を使用することの対価と認められ、また、販促事業費は共同宣伝等に要する費用を組合員から徴収するものであるから、共同宣伝等という役務の提供の対価であると認められるので、消費税の課税対象になるとして更正処分をした。
(ロ)しかしながら、次のとおり、賦課金及び販促事業費は、消費税の課税対象にはならないものであるから、原処分は違法である。
A 請求人が、組合員から徴収している賦課金及び販促事業費は、請求人の通常の業務運営費用に充てるための経費として賦課しているものであるから、消費税法取扱通達(以下「消費税通達」という。)5ー5ー3の(注)1の通常会費に該当する。
B 原処分庁は、本件各賦課金は、組合員が店舗を使用することの対価であると主張するが、本件各賦課金及び販促事業費の負担割合をどうするかについては、組合員均等、売上割合、従業員割合等いろいろな計算方法がある中で、売上げ及び従業員数等にも関連し、計算も分かりやすく合理的であるという理由で店舗の面積割合に応じて計算する方法を採用したものであり、店舗の面積に応じて徴収しているからといって店舗を使用することの対価と決めることは不当である。
 また、本件各賦課金が店舗使用料であれば、通常、その金額は一定しているところ、本件各賦課金は、請求人の通常の業務運営に必要な資金であるから、その都度総会で決定しており、また、本件各課税期間の金額が一定していないことからみても、店舗使用料とは全く性質が異なるもので、本件各賦課金と店舗の利用との間には、明白な対価関係は認められない。
C 販促事業費は、共同宣伝等に要する費用を賄うために組合員から徴収しているものではなく、本件各賦課金と同様請求人の通常の業務運営費用の一部として組合員の店舗の面積割合に応じて賦課するものであるから、共同宣伝等の役務の提供の対価ではない。
D 上記B及びCのとおり、請求人は、いずれも店舗の面積割合により算定した本件各賦課金及び販促事業費を組合員から徴収しているにもかかわらず、原処分庁は、本件各賦課金については、店舗の面積に応じて算定しているから店舗を使用することの対価であると認定する一方、販促事業費は、共同宣伝等の対価であると認定したことは、その論拠が一貫しておらず、根拠がないものといわざるを得ない。
ヘ 消費税に係る過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記ホのとおり、消費税の各更正処分は違法であるから、過少申告加算税の各賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。
ト 源泉所得税の納税告知処分について
 源泉所得税の各納税告知処分は、前記イの法人税の更正処分とその課税の基礎となった事実の認定を同じくするものであり、前記イに記載のとおり、その事実の認定に誤りがあるので、そのような認定事実に基づいてなされた源泉所得税の各納税告知処分は違法であり、その全部を取り消すべきである。
チ 源泉所得税の不納付加算税の賦課決定処分について
 上記トのとおり、源泉所得税の各納税告知処分は違法であるから、不納付加算税の各賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 法人税の更正処分について
 請求人が各組合員に支払った本件払戻額85,181,400円は、次のとおり、剰余金の分配に該当する。
(イ)請求人は、本件払戻額の原資として請求人の基本財産である本件建物等を譲渡して得た利益金を充てていること。
(ロ)請求人は、平成3年10月16日の臨時総会の決議に基づいて本件払戻しを行い、これを平成4年1月期の決算に係る通常総会で結果的に追認しているが、このことは剰余金の分配として配当を行ったものと認められること。
(ハ)本件払戻額は、その原資が組合と組合員以外の者との取引により生じたものであり、組合員その他の構成員との取引に基づく剰余金ではないから、事業利用分量配当に該当しないこと。
(ニ)本件払戻しは、請求人が、本件建物等を譲渡して得た利益金を出資金及び出資預り金の合計額に応じて組合員に分配しており、このことは、組合員全員に対しその出資者たる地位に基づいて分配した行為にほかならないから、出資者に対して行った剰余金の分配と認められること。
ロ 法人税の過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、法人税の更正処分は適法であり、また、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づき行った過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
ハ 法人臨時特別税の決定処分について
 上記イのとおり、法人税の更正処分は適法であるから、これに伴って行った法人臨時特別税の決定処分も適法である。
ニ 法人臨時特別税に係る無申告加算税の賦課決定処分について
 上記ハのとおり、法人臨時特別税の決定処分は適法であり、また、通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、同項の規定に基づき行った無申告加算税の賦課決定処分は適法である。
ホ 消費税の更正処分について
 消費税の各更正処分は、次のとおり、請求人が組合員から徴収した本件各賦課金及び販促事業費が消費税の課税対象に該当するとして行ったものであり、適法である。
(イ)賦課金は、組合員の店舗の面積割合に応じて徴収しており、店舗を使用することの対価と認められる。
(ロ)販促事業費は、請求人の定款第7条第3項の定めにより、請求人が、その共同宣伝等に要する費用を組合員から徴収するものであるから、共同宣伝等という役務の提供の対価と認められる。
ヘ 消費税に係る過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記ホのとおり、消費税の各更正処分は適法であり、また、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて行った過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。
ト 源泉所得税の納税告知処分について
 源泉所得税の各納税告知処分は、上記イのとおり、本件払戻額が所得税法第24条《配当所得》第1項に規定する剰余金の分配に該当するとして行ったものであり、適法である。
チ 源泉所得税の不納付加算税の賦課決定処分について
 上記トのとおり、源泉所得税の各納税告知処分は適法であり、また、請求人が源泉所得税を納付しなかったことについて、通則法第67条《不納付加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、同項の規定に基づいて行った不納付加算税の各賦課決定処分は適法である。

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3 判断

(1)法人税の更正処分について

 本件払戻額が、剰余金の分配に当たるか否かについて争いがあるので、以下審理する。
イ 次のことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
(イ)請求人は、昭和56年6月19日に設立された協同組合法第3条《種類》第1項に規定する事業協同組合であり、定款において次のことを定めていること(ただし、抜粋である。)。
第7条 請求人は、(1)組合員のために必要な共同店舗の設置及び管理、(2)組合員及び一般公衆の利便を図るための駐車場の設置及び管理並びに(3)組合員の取扱品の共同売出し及び共同宣伝等に関する事業を行う。
第15条 請求人は、請求人の行う事業について使用料又は手数料を徴収することができ、その額は、規約で定める額を限度として理事会で定める。
第16条 請求人は、請求人が行う事業の費用(使用料又は手数料をもって充てるべきものを除く。)に充てるため、組合員に経費を賦課することができ、その経費の額、徴収の時期及び方法その他必要な事項は総会において定める。
第56条 利益剰余金の配当は、総会の決議を経て、事業年度末における組合員の出資額若しくは組合員がその事業年度において組合の事業を利用した分量に応じてし、又は事業年度末における組合員の出資額及び組合員がその事業年度において組合の事業を利用した分量に応じてするものとし、事業年度末における組合員の出資額に応じてする配当は、年1割を超えないものとする。
(ロ)請求人は、上記(イ)の定款第16条の定めに基づき、別表1ないし別表3のとおり、本件各賦課金を共益費用、店舗賦課金及び空店舗均等割賦課金に区分して算出していること。
(ハ)請求人は、平成3年9月23日の臨時総会で、本件建物等をH社に譲渡することを決議し、同年10月16日に378,000,000円で譲渡する旨の契約を締結していること。
(ニ)請求人は、平成3年10月16日に臨時総会を開催し、本件建物等の譲渡に伴い、(1)平成2年3月27日及び平成3年6月5日の総会で決議した賦課金については、徴収する必要がなくなったので取り消し、全額返還するとともに、(2)平成元年3月27日の総会で決議した賦課金については、賦課基準1坪当たり15,000円を8,250円に減額することとし、既に徴収した賦課金との差額を返還する旨の決議をしていること。
(ホ)上記(ニ)の決議に基づき組合員に支払われた本件払戻額は、平成2年1月期分17,582,400円、平成3年1月期分39,072,000円及び平成4年1月期分28,527,000円の合計85,181,400円であり、組合員別の内訳は、別表1ないし別表3の「(12)払戻額」欄のとおりであること。
(ヘ)請求人は、本件払戻額のうち、平成2年1月期及び平成3年1月期分の合計額56,654,400円は、平成4年1月期の所得の金額の計算上、損金の額に算入し、平成4年1月期分28,527,000円は、平成4年1月期の所得の金額の計算上、益金の額から減算していること。
(ト)請求人の出資金は、24,000,000円であり、これは組合員12者(社)が各々20口、2,000,000円ずつ均等に出資したものであること。
 なお、当該出資金については、平成4年1月31日の臨時総会において、組合存続を前提に組合員全員の出資口数を各々19口減資する決議がなされていること。
ロ 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査したところによれば、次の事実が認められる。
(イ)請求人は、事業の運営に関する費用について、上記イの(イ)のとおり、定款第16条に基づき、組合員に賦課する賦課金をもって充てることとしており、当該賦課金を賦課するに当たっては、各事業年度当初の収支予算、借入金返済に要する金額及び長期の収支計画等を総合判断し、総会において議決していること。
(ロ)請求人の本件各事業年度の損益計算書又は収支予算書(案)によると、その収入金額、支出金額及び借入金返済額は、次表のとおりであること。

(ハ)上記(ロ)の「販促事業費」は、組合員の共同宣伝等の費用に充てるためのものとして、組合員の店舗面積1坪当たり、1,000円を毎月徴収しているが、この販促事業費収入と請求人が支出する共同宣伝等に要する費用との直接的な関連は認められず、本件各賦課金と一体として請求人の通常の業務運営費用に充てられていること。
(ニ)上記(ロ)の「その他使用料」は、組合員及び組合員外の者に店舗の軒先や駐車場に仮設店舗等を設置させる場合の使用料及び組合員が階段下や店舗裏等に設置した倉庫の使用料であること。
(ホ)別表1ないし別表3の「共益費用」は、水道光熱費、保険料、修繕費、保守管理費及び賃借料等の合計額を、組合員に貸与している店舗の合計面積で除して算出した1平方メートル当たりの額2,121円(平成3年7月以降は1,887円)に、各組合員に貸与している店舗の床面積を乗じて算出していること。
 同表の「店舗賦課金」は、共益費用の目安とした費用以外の費用及び借入金返済額の合計額を、組合員に貸与している店舗の合計面積で除して算出した1平方メートル当たり2,545円(平成3年7月以降は、2,265円)に、各組合員に貸与している店舗の床面積を乗じて算出していること。
 なお、店舗賦課金は、1階の店舗と2階の店舗とでは売上げに影響があるため、2階の店舗は1階の店舗の90パーセントに相当する額としていること。
 また、同表の「空店舗均等割賦課金」は、平成元年11月30日に組合員であるJが入居していた店舗101.9平方メートルのうち34.6平方メートルが同人から請求人に返還されたため、平成元年12月から平成2年1月までの期間については、その返還された店舗の面積に対する店舗賦課金に相当する額(別表1の「空店舗分」欄の322,000円)を、有限会社K(以下「K社」という。)を除く組合員11者で除して算出した額29,272円について、別表1の「(6)合計」欄の金額が千円未満の端数が切り上げられている者には各28,000円、それ以外の者には各30,000円とし、組合員の負担が全体としてほぼ均等になるよう賦課し、平成2年2月から平成3年10月までの期間については、返還された店舗面積に対する店舗賦課金に相当する額(別表2及び別表3の「(空店舗分)」欄の月額161,443円及び143,659円)を、K社を除く各組合員に均等に賦課したものであること。
(ヘ)請求人は、店舗の2階の一部分6平方メートルをL銀行に月額26,000円で賃貸しているが、当該金額は、店舗賦課金1平方メートル当たり2,290円、共益費用1平方メートル当たり2,121円にその床面積6平方メートルをそれぞれ乗じた金額の合計額について、千円未満の端数を切り捨てたところにより算定しており、その計算根拠は2階に入居している組合員と同様であること。
(ト)請求人は、店舗拡張計画が行き詰まり、賦課金の負担が各組合員の事業経営を圧迫し経営状況も芳しくなかったため、臨時総会に諮り本件建物等の譲渡を決定したこと。
(チ)請求人は、上記イの(ハ)により譲渡した本件建物等の譲渡代金から本件建物等の取得資金に充てた借入金、賃借人からの預り敷金及び各組合員からの出資預り金等の返済を行い、更に、譲渡後の請求人の事業運営に必要と見込まれる金額を差し引いた残余の金額を本件払戻しの原資としたこと。
(リ)請求人は、昭和59年12月に本件建物等の取得資金に充てるため、組合員から店舗面積に応じた出資預り金合計52,400,000円を預かっているが、当該預り金については、資本準備金的性格を有するものであるから、組合が解散し持分の還元が行われる場合を除き、組合員に還元することはない旨を記載した平成3年3月28日付の「出資預り金の取扱いに関する確認書」(以下「確認書」という。)を組合員から徴していること。
ハ ところで、協同組合法第12条《経費の賦課》は、事業協同組合等が、その経費を組合員に賦課する場合には、定款に定めるところによらなければならない旨規定しており、その趣旨は、賦課金の額が恣意的に決定されないよう組合員の負担方法を明確にする点にあると解される。
 一方、協同組合法の組合は、同法第5条第1項第4号で規定する「組合の剰余金の配当は、主として組合事業の利用分量に応じてするものとし、出資額に応じて配当するときは、その限度が定められていること。」を要件の一つとしており、同法第9条は、利用分量に応じて配当した剰余金の額に相当する金額は、法人税法の定めるところにより損金の額に算入する旨規定している。
 また、法人税法第61条《協同組合等の事業分量配当等の損金算入》第1項第1号は、組合員に対し、その者が当該事業年度中に取り扱った物の数量、価額その他その協同組合等の事業を利用した分量に応じて分配する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する旨規定している。ここでいう損金の額に算入できる分配について、法人税基本通達14ー2ー1では、組合と組合員との取引により生じた剰余金等から成る部分の分配に限られ、固定資産の処分等による剰余金の分配はこれに該当せず、事業分量配当に該当しない剰余金の分配は、組合員に対する出資配当に該当する旨の取扱いを定めており、当審判所においても当該取扱いによることは相当と認める。
ニ これを、本件についてみると、次のとおりである。
(イ)本件各賦課金について
 協同組合法第12条第1項によれば、組合は組合員に経費を賦課することができる旨規定されているが、ここでいう経費とは、組合の維持管理に要する経常的な経費をいうと解されているところ、請求人は、上記ロの(イ)ないし(ニ)のとおり、組合員から店舗の使用料名目としての対価は徴収していないものの、(1)本件建物等の取得のための借入金の返済額を本件各賦課金の算定の基礎としている事実が認められ、(2)当該賦課金のうち、共益費用及び店舗賦課金は、いずれも上記ロの(ホ)及び(ヘ)のとおり、組合員の店舗の面積に応じて算出されていること、(3)1階の店舗と2階の店舗とでは売上げに影響があること等を考慮して算定するに当たって格差を設けていること及び(4)組合員でないL銀行に対する賃貸料は、組合員から徴収することとしている共益費用及び店舗賦課金と同様の算定根拠に基づいて算定されていることを総合して判断すると、本件共益費用及び店舗賦課金は、請求人所有の店舗を使用させることの対価(使用料)であると認められる。
 なお、本件各賦課金のうち空店舗均等割賦課金は、上記ロの(ホ)のとおり、組合員の出資に応じて均等に賦課されていることからみて、請求人の事業を運営するために通常必要な費用の賦課金であると認められる。
(ロ)本件払戻しについて
A 協同組合法第13条《使用料及び手数料》は、組合は、定款の定めるところにより、使用料及び手数料を徴収することができる旨規定しており、組合が行う事業のうち、経済事業については、これを利用した組合員及び組合員以外の者から使用料等を徴収することができると解され、また、同法第12条第1項は、組合は、定款の定めるところにより、組合員に経費を賦課することができる旨規定しており、その趣旨は、経費を随時、多額に徴収することは、組合員の有限責任(同法第10条《出資》第5項)を破壊するおそれがあるので、組合員の負担を明確にする点にあると解されている。
 一方、協同組合法第5条第1項第4号は、「組合の剰余金の配当は、主として組合事業の利用分量に応じてするものとし、出資額に応じて配当するときは、その限度が定められていること。」と規定しており、これは、剰余金の配当につき、事業利用分量配当を主位的なものと位置付け、出資配当は副次的なものと位置付けていると解するのが相当である。
 そうすると、協同組合法は、組合が組合員から徴収した手数料及び経費の額が結果的に多過ぎ、余剰が生じたような場合等組合と組合員との間の取引によって生じた剰余金を組合員に還元するに当たっては、まず、組合の事業の利用分量に応じて行われること(この場合には、同法第9条により、法人税法の定めるところに従い、当該組合の同法に規定する各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されること。)を期待し、そうでなければ、一定限度の下に、出資額に応じて行われることを期待しているというべきである。
B これを、本件についてみると、本件各賦課金は、上記(イ)のとおり、請求人が所有する店舗を組合員に対して使用させることの対価及び請求人の事業を運営するために通常必要な費用の賦課金であると認められるので、これにより剰余金が生じた場合は、まず、組合員が事業を利用した分量に応じた配当によって処理されることを協同組合法は期待しているというべきであって、請求人が主張するような既に徴収した賦課金そのものを組合員に払い戻すことは、本来協同組合法及び法人税法の予定していないところといわざるを得ず、請求人の主張を採用することはできない。
(ハ)本件払戻しの原資について
 本件各賦課金の算定に当たっては、上記ロの(イ)及び(ロ)のとおり、請求人が本件各事業年度における請求人の事業の運営に必要な経費、借入金返済額及び前期繰越金等を総合的に判断し、長期収支計画を踏まえて算定していることからみて、各事業年度の収支が相償うことを目途として賦課金が徴収されていたことが認められる。
 また、請求人は、上記ロの(チ)のとおり、本件建物等の譲渡代金で、本件建物等取得のための借入金、賃借人からの預り敷金及び各組合員からの出資預り金等の負債を返済している。さらに、その後の組合運営上必要と見込まれる費用の額を差し引いた後の残余の金額を、本件払戻額として本件払戻しを請求人が行っていることが認められる。
 そうすると、請求人が、本件各事業年度において剰余金が生じるような賦課金を組合員から徴収していた事実は認められず、また、他に特段の組合員への払戻原因も認められないのであるから、本件建物等の譲渡による利益金が本件払戻しの原資であったというべきである。
 したがって、この点について、請求人の本件払戻しの原資は、本件建物等の譲渡による剰余金を分配したものではない旨の主張を採用することはできない。
(ニ)本件払戻額の払戻基準について
 請求人の出資金24,000,000円は、前記イの(ト)のとおり、組合員12者(社)がそれぞれ2,000,000円ずつ均等に出資したものである。請求人は、このほかに、前記ロの(リ)のとおり、組合員に貸与している店舗の床面積に応じた出資預り金52,400,000円を有しており、当該出資預り金は、組合が解散し持分の還元が行われる場合を除き、組合員に還元することはない旨の確認書を徴している事実があることから、出資金に準じたものと認められる。
 この出資金と出資預り金との合計金額は、別表4の「合計」欄のとおりであり、また、合計金額に対する組合員ごとの割合は、同表の「割合」欄のとおりであるところ、その割合は各組合員が本件払戻しにより支払を受けた金額が本件払戻額の合計額に占める割合とほぼ一致していることが認められる。このことは、実質的に出資持分の割合に応じて本件払戻しをすることについて組合員が合意していたことによるものであったことが窺われる。
(ホ)事業利用分量配当について
A 請求人は、事業年度途中の臨時総会で本件払戻しは賦課金の徴収割合で行うことを決議し、事業年度末の通常総会で本件払戻額を損金処理すること等を承認したものであり、本件払戻額を出資額に応じた配当であると認定するのは不当である旨主張する。
 ところで、事業利用分量配当は、一種の売上割戻し又は値引きの性格を有することから、法人税法の定めるところにより各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされている(協同組合法第9条)。
 また、法人税法は、組合員に対しその者が当該事業年度中に取り扱った物の数量、価額その他その協同組合等の事業を利用した分量に応じて分配する金額を当該事業年度の所得の金額の計算上、損害の額に算入することとしている(法人税法第61条第1項第1号)。
そして、法人税法上、事業利用分量配当として損金の額に算入することができる配当は、事業利用分量配当が組合員に対する一種の売上割戻し又は値引きの性格を有するものであることからすると、その剰余金が組合と組合員との取引により生じた剰余金からなる部分の配当に限られ、固定資産の処分等による剰余金や組合事業であっても組合員の利用がないと認められる事業(自営事業)から生じた剰余金の分配は、事業利用分量配当には該当せず、当該剰余金は、組合員に対する配当に該当するものと解される。
 本件払戻額は、上記(ハ)で認定したとおり、その原資が組合と組合員以外の者との取引により生じた本件建物等の譲渡による利益の一部をもって充てられているものと認められるから、その他の判断を待つまでもなく組合員に対する配当に該当するものと認められるのであって、これは事業利用分量配当には当たらないものというべきである。
 そうすると、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
B また、請求人は、各組合員が本件払戻額を事業所得等の金額の計算に含めて所得税等の確定申告を行っているから、二重に課税関係を生じさせている原処分は不当である旨主張するが、仮に、個々の組合員が当該配当金に係る所得税等について、既に納付済であったとしても、当該組合員の納付済税額との調整については、別途に処理されるべきものであるから、上記の判断に影響を及ぼすものではない。
(ヘ)平成4年1月期分の本件払戻額について
 平成4年1月期分の本件払戻額は、上記(ホ)のとおり、その原資が請求人の基本財産である本件建物等を譲渡したことによる剰余金であって、組合員その他の構成員との取引に基づく剰余金とは認められないことから、事業利用分量配当には該当せず、出資者としての地位に基づく配当と認められるところ、当該配当は、法人税法第22条第3項第3号に規定する「資本等取引」に当たるので、所得の金額の計算上損金の額に算入することはできない。
 なお、賦課金のうち空店舗均等割賦課金1,381,875円の返還は、上記(イ)のとおり、請求人の事業を行うために通常必要な費用を賄うための賦課金の返還と認められるので、益金の額から減算するのが相当である。
 したがって、この点に関して、当該金員を配当であるとする原処分庁の主張は採用することができない。
(ト)平成2年1月期及び平成3年1月期分の本件払戻額について
 請求人が平成2年1月期及び平成3年1月期に組合員から徴収した賦課金は、上記(ハ)のとおり、当該各事業年度の事業運営に必要な経費、借入金返済額等を見込み、収支相償うことを目途に決定されたものであると認められるところ、当該各事業年度において剰余金が生じていた事実は認められない。
 また、当該各事業年度の賦課金は、当該各事業年度の総会により承認されて確定しているのであるから、当該各事業年度に徴収した本件各賦課金を返還したとする本件払戻額を平成4年1月期の所得の金額の計算上損金の額に算入することは、上記(ヘ)と同じ理由により認められない。
(チ)以上により、請求人の平成4年1月期の所得金額は、申告所得金額に本件払戻額のうち損金の額に算入することが認められない83,799,525円を加算し、後記(5)のニの平成4年課税期間の納付すべき消費税額9,637,700円から上記1の(3)の確定申告に係る納付すべき消費税額8,853,200円を控除した784,500円を減算すると85,400,673円となり、当該金額は更正処分の金額を下回るから、更正処分はその一部を取り消すべきである。

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(2)法人税の過少申告加算税の賦課決定処分について

 法人税の過少申告加算税の賦課決定処分については、前記(1)のとおり、更正処分がその一部を取り消されることに伴い、その基礎となる税額は、22,410,000円となる。
 また、この税額の計算の基礎となった事実については、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、過少申告加算税の額は3,329,000円となり、賦課決定処分の金額を下回るから、法人税の過少申告加算税の賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。

(3)法人臨時特別税の決定処分について

 法人臨時特別税の決定処分については、前記(1)のとおり、法人税の更正処分がその一部を取り消されることにより、湾岸地域における平和回復活動を支援するため平成2年度において緊急に講ずべき財政上の措置に必要な財源の確保に係る臨時措置に関する法律第11条《課税標準》第2項の規定により、課税標準法人税額は、次表のとおりとなり、この金額は、法人臨時特別税の決定処分に係る課税標準法人税額を下回るから、法人臨時特別税の決定処分は、その一部を取り消すべきである。

(単位 円)
項目金額
課税所得金額(1)85,400,000
基準法人税額((1)×27%)(2)23,058,000
控除額(3)3,000,000
課税標準法人税額((2)−(3))20,058,000

(4)法人臨時特別税の無申告加算税の賦課決定処分について

 法人臨時特別税の無申告加算税の賦課決定処分については、上記(3)のとおり、決定処分がその一部を取り消されることに伴い、その基礎となる税額は500,000円となる。
 また、この税額の計算の基礎となった事実については、通則法第66条第1項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、請求人の無申告加算税の額は75,000円となり、賦課決定処分の金額を下回るから、無申告加算税の賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。

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(5)消費税の更正処分について

 請求人が組合員から徴収した賦課金及び販促事業費が、消費税の課税対象になるか否かについて争いがあるので、以下審理する。
イ 課税標準額について
(イ)請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査したところによれば、次の事実が認められる。
A 請求人は、平成元年9月27日に所轄税務署長に対し、消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第4項の規定に基づき「消費税課税事業者選択届出書」を提出していること。
B 請求人は、共益費用、店舗賦課金及び空店舗均等割賦課金からなる賦課金の計算方法については、総会に諮り、その決議により決定していたこと。
C 販促事業費は、設立当初は販売促進事業計画を策定し、これに要する経費を見積り、その見積もった経費を組合員から徴収していたが、昭和61年ころからは、前記(1)のロの(ハ)のとおり組合員の店舗面積1坪当たりの金額で徴収され、賦課金と一体として請求人の通常の業務運営費用に充てられていること。
D 請求人は、販売促進事業に関する収支を他の事業の収支と区分せず、請求人の事業に係る収支と一括して経理していること。
E 請求人が、確定申告をした消費税の課税売上高(税込み)及び課税標準額の内訳は、次のとおりであること。

(単位 円)
  課税期間平成3年課税期間平成4年課税期間
区分
課税売上高(税込み)
店舗使用料収入1,568,6001,569,550
倉庫使用料収入548,000502,333
雑収入543,444754,534
建物等譲渡収入315,860,000
合計2,660,044318,686,417
課税標準額2,582,000309,404,000

F 上記Eの平成3年課税期間の店舗使用料収入には、L銀行に賃貸している家賃収入312,000円が計上されていないこと。
G 請求人の組合員12者(社)の消費税の申告内容を調査したところ、消費税法第37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項の規定の適用を選択していない組合員5者(社)のうち2者(社)については、消費税の申告に当たり、本件各賦課金を課税仕入れとして経理していること。
(ロ)以上の事実に基づき判断すると、次のとおりである。
A 本件各賦課金の性格については、上記(1)のニの(イ)で認定したとおりであるところ、上記(イ)のGのとおり、組合員12者(社)のうち消費税法第37条第1項の規定を適用していない2者(社)は、共益費用及び店舗賦課金を課税仕入れとして経理して消費税の申告を行っていることが認められ、請求人が行う役務の提供等との間に対価関係があることを認識していたことが窺われる。
 また、上記(イ)のBのとおり、賦課金の計算方法等については、組合員全員の了解の下で決定されていると認められる。
B 販促事業費は、上記(イ)のB及びCのとおり、他の賦課金と混在して請求人の通常の事業運営の費用に充てられていることから、販促事業費という名目で徴収しているものの、請求人の事業を運営するために通常必要な費用の賦課金であると認められ、請求人が行う販売促進事業に要する費用そのものを徴収したものではないと認められる。
(ハ)ところで、消費税法第4条《課税の対象》第1項は、国内において事業者が行った資産の譲渡等には、消費税を課する旨規定し、この資産の譲渡等とは、同法第2条《定義》第1項第8号において、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨規定している。
 そして、同業者団体、組合等がその構成員から受ける会費、組合費等が消費税法第2条第1項第8号に規定する役務の提供に係る対価に当たるか否かの判定に当たっては、消費税法通達5ー5ー3において、当該会費、組合費等については、当該同業者団体、組合等がその構成員に対して行う役務の提供等の間に明白な対価関係があるか否かによって判定するのであるが、その判定が困難なものにつき、継続して、同業者団体、組合等が同号に規定する資産の譲渡等に係る対価に該当しないものとし、かつ、その会費等を支払う事業者側がその支払を同項第12号《課税仕入れの意義》に規定する課税仕入れに該当しないこととしている場合には、これを認めることとしており、また、当該同業者団体、組合等が、団体としての通常の業務運営のために経常的に要する費用を分担させ、その団体の存立を図るというようないわゆる通常会費については、役務の提供に係る対価に該当しないものとして取り扱うことが相当であり、更に、名目が会費等とされている場合であっても、それが実質的に出版物の購読料、映画・演劇等の入場料、職員研修の受講料又は施設の利用料等と認められるときは、その会費等は、同号に規定する資産の譲渡等に係る対価に該当するとして取り扱うこととしており、当審判所においてもこのような取扱いによることは相当と認められる。
(ニ)これを、本件についてみると、次のとおりである。
A 請求人は、上記(イ)のAのとおり、消費税法第9条第4項の規定に基づき、所轄税務署長に対し「消費税課税事業者選択届出書」を提出していることから、本件各課税期間については、課税売上高が3,000万円以下であっても、消費税の確定申告書を提出しなければならない。
B 請求人が組合員から徴収した賦課金のうち共益費用及び店舗賦課金は、前記(ロ)のAのとおり、請求人の建物を店舗として使用させることの対価であると認められ、消費税法第2条第1項第8号に規定する資産の貸付けの対価に該当するので、消費税の課税対象とするのが相当であり、請求人の主張を採用することはできない。
C 一方、請求人が空店舗均等割賦課金及び販促事業費として組合員から徴収した賦課金については、前記(ロ)のA及びBのとおり、請求人の事業運営のために要する経常的な経費を分担させたものであると認められるから、消費税法第2条第1項第8号に規定する役務の提供の対価に該当せず、消費税の課税対象にならないと解するのが相当であり、原処分庁の主張を採用することはできない。
D なお、上記(イ)のFのとおり、平成3年課税期間の店舗使用料収入には、L銀行に賃貸している家賃収入312,000円が計上されていないので、当該家賃収入は、平成3年課税期間の課税売上げに加算すべきである。
(ホ)以上の結果、本件各課税期間における消費税の課税標準額及び消費税額は、次表のとおりとなる。

(単位 円)
課税期間平成3年課税期間平成4年課税期間
区分
課税売上高(税込み)
店舗・倉庫使用料2,428,6002,071,833
雑収入543,444754,534
建物等譲渡収入315,860,000
賦課金収入37,134,63627,145,125
合計金額40,106,680345,831,492
課税標準額38,938,000335,758,000
課税標準額に対する消費税額1,168,14010,072,740

(注)課税標準額は、課税売上高(税込金額)を103で除し、これに100を乗じて算出した金額の千円未満の金額を切り捨てた金額である。
ロ 課税仕入れに係る消費税額について
(イ)消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項及び第2項は、課税事業者は、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から、その課税期間中における課税仕入れ等に係る消費税額を控除するが、当該課税期間における課税売上割合が95パーセントに満たないときは、事業者の選択により、課税仕入れ等に係る消費税額は、個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれかにより計算する旨規定しているところ、請求人は、本件各課税期間の消費税の仕入税額控除の計算方法について、当該各確定申告書の「控除税額の計算方法」欄に一括比例配分方式を適用する旨の表示を行い、これに基づいて計算した消費税の確定申告書をそれぞれ原処分庁に提出している事実が認められるので、請求人の課税仕入れ等に係る消費税額は、一括比例配分方式により算定することになる。
 そこで、上記イの(ホ)により本件各課税期間の課税売上割合を算出すると、次表のとおりとなる。

(単位 円、%)
区分平成3年課税期間平成4年課税期間
課税売上高(税込み)(1)40,106,680345,831,492
税抜き課税売上高((1)÷103×100)(2)38,938,524335,758,730
非課税取引(3)661,20163,113,950
合計((2)+(3))(4)39,599,725398,872,680
課税売上割合((2)÷(4))(5)98.384.1

(ロ)そうすると、請求人の平成3年課税期間の課税売上割合は95パーセント以上となるから、平成3年課税期間中における課税仕入れ等に係る消費税額486,945円を控除することとなる。
 また、平成4年課税期間の課税売上割合は、95パーセント未満であるから、上記(イ)のとおり、一括比例配分方式により課税仕入れ等に係る消費税額を計算することとなり、平成4年課税期間中における課税仕入れ等に係る消費税額516,722円に課税売上割合である84.1パーセントを乗じて算出すると434,960円となる。
ハ限界控除について
(イ)消費税法第40条《小規模事業者等に係る限界控除》第1項は、事業者のその課税期間の課税売上高が6,000万円未満である場合には、その課税期間の課税標準額に対する消費税額から、限界控除額に相当する消費税額を控除する旨規定している。
 そして、限界控除額は、当該課税期間に係る納付すべき消費税額に3,000万円のうち6,000万円から当該課税期間における課税売上高を控除した残額の占める割合を乗じて計算する旨規定しているところ、請求人の平成3年課税期間の課税売上高は、6,000万円未満であることから、当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から、限界控除額に相当する消費税額を控除することとなる。
(ロ)そうすると、請求人の平成3年課税期間に係る限界控除額は、当該課税期間の課税標準額に対する消費税額1,168,140円から課税仕入れ消費税額486,945円を差し引いた681,195円に、60,000,000円から38,938,524円を差し引いた21,061,476円を30,000,000円で除した割合を乗じて算出すると、478,232円となる。
ニ 以上により、本件各課税期間の課税標準額及び納付すべき消費税額を計算すると、これらの金額は、各更正処分の金額を下回るから、各更正処分は、いずれもその一部を取り消すべきである。

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(6)消費税に係る過少申告加算税の賦課決定処分について

 本件各課税期間の消費税の過少申告加算税の各賦課決定処分については、上記(5)のとおり、各更正処分がいずれもその一部を取り消されることに伴い、その基礎となる税額は、平成3年課税期間510,000円、平成4年課税期間780,000円となる。
 また、この税額の計算の基礎となった事実については、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、請求人の過少申告加算税の額は、平成3年課税期間51,500円、平成4年課税期間78,000円となり、各賦課決定処分の金額を下回るから、本件各課税期間の過少申告加算税の各賦課決定処分は、いずれもその一部を取り消すべきである。

(7)源泉所得税の納税告知処分について

 源泉所得税の納税告知処分について争いがあるので、以下審理する。
イ 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査したところによれば、次の事実が認められる。
(イ)請求人は、別表5「組合員別賦課金等返還明細」のとおり、本件払戻しを行っていること。
(ロ)本件払戻額のうち平成4年1月期に徴収した賦課金に相当する金額28,527,000円については、K社を除く組合員11者(社)に対しては、平成3年11月29日に合計23,977,000円、K社に対しては平成3年12月27日に4,550,000円が支払われていること。
(ハ)平成4年1月期に徴収した空店舗均等割賦課金の払戻額1,381,875円は、上記(ロ)の平成3年11月29日に返還した23,977,000円に含まれていること。
ロ ところで、所得税法第181条《源泉徴収義務》第1項は、居住者に対し国内において同法第24条第1項に規定する配当等の支払をする者は、その支払の際、その配当等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までにこれを国に納付しなければならない旨規定している。
 そして、同法第182条《徴収税額》は、徴収すべき所得税の額は、配当等の金額に20パーセントの税率を乗じて計算した金額とする旨規定している。
ハ これを、本件についてみると、次のとおりである。
(イ)前記(1)のニの(ホ)のとおり、本件払戻額のうち共益費用及び店舗賦課金に相当する金額は配当と認められ、これは、所得税法第24条第1項に規定する配当等に該当するから、請求人は、所得税法第181条に規定する居住者である当該組合員に対して国内において当該配当等の支払をする者に該当することが認められるから、源泉徴収義務者として、当該配当に対する源泉所得税について、源泉徴収義務を負うものである。
(ロ)なお、請求人は、平成4年1月期に徴収した空店舗均等割賦課金の払戻額1,381,875円を、上記イの(ハ)のとおり、平成3年11月29日に支払っていると認められ、これは、前記(1)のニの(へ)のとおり、一般管理費を賄うための賦課金の返還であり配当には該当しないから、源泉徴収の対象とならない。
(ハ)そうすると、源泉所得税の各納税告知処分のうち、平成3年10月分及び平成3年12月分の配当に係る源泉徴収税額については、当審判所が認定した額の範囲内であるから、当該納税告知処分は相当であるが、平成3年11月分の配当に係る源泉徴収税額は、4,519,025円となり、納税告知処分に係る源泉徴収税額を下回るから、平成3年11月分の納税告知処分は、その一部を取り消すべきである。

(8)源泉所得税の不納付加算税の賦課決定処分について

 上記(7)のとおり、平成3年12月分の源泉所得税の納税告知処分は相当であるから、不納付加算税の賦課決定処分も相当である。
 平成3年11月分の源泉所得税の不納付加算税の賦課決定処分については、上記(7)のとおり納税告知処分がその一部を取り消されることに伴い、その基礎となる額は、4,510,000円となる。
 また、上記納税告知処分に係る税額のうち、上記(7)により取り消される税額以外の税額を法定納期限までに納付しなかったことについては、通則法第67条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そうすると、平成3年11月分の源泉所得税に係る不納付加算税の額は451,000円となり、賦課決定処分の金額を下回るから、平成3年11月分の不納付加算税の賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。
(9)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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