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(平8.4.26裁決、裁決事例集No.51 407頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、自動車販売業を営む同族会社であるが、平成3年4月1日から平成4年3月31日までの事業年度及び平成4年4月1日から平成5年3月31日までの事業年度(以下、順次「平成4年3月期」及び「平成5年3月期」といい、これらを併せて「各事業年度」という。)の法人税の青色の確定申告書並びに平成4年3月期の法人臨時特別税の青色の申告書及び平成5年3月期の法人特別税の青色の申告書に、別表1及び2の「確定申告」欄及び「申告」欄のとおり記載して、それぞれ法定申告期限までに原処分庁に提出した。
 原処分庁は、これに対し、平成6年5月31日付で、各事業年度の法人税、平成4年3月期の法人臨時特別税及び平成5年3月期の法人特別税について、それぞれ別表1及び2の「更正処分等」欄のとおり更正処分(以下、それぞれ「本件法人税の各更正処分」、「本件法人臨時特別税の更正処分」及び「本件法人特別税の更正処分」という。)をするとともに、各事業年度の法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分及び平成5年3月期の法人特別税に係る過少申告加算税の賦課決定処分をした。
 請求人は、これらの処分に不服があるとして、平成6年7月18日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
 原処分のその他の部分は争わない。
イ 本件法人税の各更正処分について
 原処分庁は、請求人が平成4年1月20日に136,939,600円で取得したF営業所の隣接地であるP市R町4288番1ほか1筆の土地(実測面積3,711.76平方メートル、以下「F営業所用地」という。)及び平成4年4月13日に363,788,000円で取得したGマイカーセンターの隣接地であるQ市S町3400番3ほか4筆の土地(実測面積2,165.72平方メートル、以下「Gマイカーセンター用地」といい、F営業所用地と併せて「本件土地」という。)について、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第62条の2《新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例》の規定(以下「本件損金不算入制度」という。)を適用し、新規取得土地等に係る負債の利子の額のうち損金の額に算入されない額(以下「本件損金不算入額」という。)として、平成4年3月期1,369,396円及び平成5年3月期24,461,420円を各事業年度の所得の金額に加算し、その他の部分とともに更正処分をした。
 しかしながら、更正処分のうち本件損金不算入額に係る部分は、次のとおり、更正通知書に重大な瑕疵が認められ、また、本件損金不算入制度の立法趣旨に照らし、さらには、措置法第62条の2第3項第2号の法令解釈の誤りに基づくもので違法であるから、取り消すべきである。
(イ)本件土地の状況
A F営業所用地
 F営業所用地は、昭和47年からF営業所の自動車販売及び整備工場として長期間にわたって使用されている建物又は構築物の敷地の用に供されている土地の隣接地で、元は田で既存の土地とは段差が2メートル近くあり、近隣の土地所有者から必ず段差がなくなるまで埋立てをして使用するように要請を受けているが、埋立費用が数千万円も必要と見込まれることから、現在まで資金繰りと採算上、埋立てができていない。しかし、地理的にも機能的にもF営業所と一体的に事業の用に供される施設の用に供される土地である。
B Gマイカーセンター用地
 Gマイカーセンター用地は、昭和59年からGマイカーセンターとして中古車販売を主業に長期間にわたって使用されている建物又は構築物の敷地の用に供されている土地の隣接地で、元は田で既存の土地とは段差が2ないし3メートルあり、埋立費用が数千万円も必要と見込まれることから、資金繰りと採算上、埋立てを一時見合わせていたが、河川工事に伴い平成5年12月に埋立てを開始し、平成6年3月に厚さ30センチメートルの全面的な埋立てを完了してからは多くの車両が駐車できるようになり、Gマイカーセンターの既存地と一体となって事業の用に供されている土地である。
(ロ)本件更正通知書の瑕疵
 本件法人税の更正処分に係る更正通知書(以下「本件更正通知書」という。)の更正の理由には「・・・現地を確認したところ、以前農地として使用されていたため、埋立て及び整地を行わなければ貴社が使用することができないにもかかわらず、何ら行われておらず、調査日現在まで建物等の建設はなく、建物又は構築物の敷地の用に供されていないものと認められますから、租税特別措置法第62条の2に規定する新規取得土地等に該当します。・・・」と記載されているが、Gマイカーセンター用地は、上記(イ)のBのとおり、平成5年12月に埋立てを開始し、平成6年3月には厚さ30センチメートルの全面的な埋立てを終わり、駐車場として多くの車両を駐車させており、原処分庁は、本件更正通知書日付が平成6年5月31日であることからみて事実誤認をしている。また、原処分庁は、本件土地が既存の建物等と一体的に使用される隣接地であることから、今更新しく建物等の建設は必要でないことを認識していない。
 したがって、本件更正通知書には、明らかに事実誤認に基づく重大な瑕疵があり、このような本件更正通知書によりなされた本件更正処分は違法である。
(ハ)本件損金不算入制度の立法趣旨及び措置法第62条の2第3項第2号の解釈
A 本件損金不算入制度が創設されたのは、当時、全国的に都市部及び都市郊外で土地転がしや地上げが横行し、地価高騰が顕著で、転売等で暴利をむさぼる企業も現れたこと等から、法人企業本来の正常な営業活動を逸脱するような土地売買を抑制することが、その立法趣旨であったと思う。
 本件土地は、いずれも既存の堅固な建物が建っている土地の隣接地であり、既存の土地のみでは狭小で機能的な運用が阻害されていたことから、正常な営業活動として取得したもので、仮需要によるものではない。
 また、利益を追求する法人企業にとって、地価の上昇率が支払利子率以上であればともかく、税負担の減少額以上に利子を支払うことは無駄であるところ、本件土地は値上がりを期待して取得したものではなく、また、値上がりもしていない。
 したがって、土地取得のための借入金の利子を支払うことによって税負担を回避しようとしたものではない。さらに、本件損金不算入制度には適用除外があり、大蔵財務協会発行の「昭和63年改正税法のすべて」に、「本制度が企業の節税行為に対処するとともに、土地の仮需要の抑制を狙いとするものであることから、法人の土地取得が節税または投機目的でないと認められる場合には、この措置は適用しないこととしています。」と記載されており、本件土地の取得の場合は、立法趣旨に照らし、適用除外とされるべきものと考える。
 以上により、本件法人税の各更正処分は、本件損金不算入制度の立法趣旨に照らし、違法である。
B 措置法第62条の2第3項第2号イに、「長期間にわたって使用されるものとして政令で定める建物又は構築物の敷地の用に供された土地等(これと一体的に使用される土地等として政令で定めるものを含む。)」については、「当該建物又は構築物がその用に供された日」が新規取得土地等に係る負債の利子が損金の額に算入されない期間の末日(以下「本件損金不算入期間の末日」という。)となる旨規定されており、同号イのかっこ書の「これと一体的に使用される土地等として政令で定めるものを含む。」の解釈については、当該条文が「使用される土地等」と規定し、「使用された土地等」又は「使用されている土地等」と規定していないこと、また、租税特別措置法施行令(以下「措置法施行令」という。)第38条の3《新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例》第14項において、これと一体的に使用される土地等として政令で定めるものは、「同号イに規定する建物又は構築物と一体的に事業の用に供される施設の用に供される土地等とする。」と規定し、「供された土地等」又は「供されている土地等」と規定していないことからすれば、当該土地と建物又は構築物が地理的及び機能的に一体的に事業の用に供されることが明らかであれば、現実に当該土地を事業の用に供したかどうかは関係がないと解すべきである。原処分庁の主張は、「供されていないから適用できない」といった趣旨であるから、同条項の「供される」を「供されている」若しくは「供された」と解釈しており、隣接地といえども駐車場等として使用を開始するまでは本件損金不算入期間の末日は到来しないとしている。
 しかしながら、措置法第62条の2第3項第2号イの次にロがあり、この中にも「供される」という文言がある。
 すなわち、「長期間にわたり当該法人の事業の用に供されることが法令の規定その他により確実であると認められるものとして政令で定める土地等」については、「当該確実であると認められる日として政令で定める日」と規定し、「供される」は「供されている」とも「供された」とも規定していない。
 それは措置法施行令第38条の3第15項各号によりはっきりしている。例えば、鉄道事業法、軌道法、道路運送法等各号の土地を取得するための当該認可を受けた日から、それぞれの事業の用に供される日まで施設工事等で何年もかかるからである。
 つぎに、「供されている」といった条文については、措置法第71条の2《建物が国の施設等として使用されている場合の土地等の非課税》や、同法第71条の4《特定の都市計画駐車場の用に供されている土地等の非課税》がある。その意義は、「供される」とは明らかに異なっている。「供される」、「供されている」、「供された」は、それぞれに意味があり使い分けがしてある。
 したがって、措置法第62条の2第3項第2号イに関する原処分庁の解釈は誤りである。
 そこで、本件土地はいずれも既存の土地に隣接し、取得に際して明らかに建物又は構築物と一体的に使用されることが判然としているから、本件損金不算入期間の末日は、F営業所用地についてはF営業所が発足した昭和47年に、Gマイカーセンター用地についてはGマイカーセンターが発足した昭和59年に到来したと解すべきであるから、本件損金不算入額は発生しない。
ロ 法人税の過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件法人税の各更正処分はいずれも違法であり、その一部を取り消すべきであるから、これに伴い法人税の過少申告加算税の賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。
ハ 本件法人臨時特別税の更正処分について
 上記イのとおり、平成4年3月期の法人税の更正処分は違法であり、その一部を取り消すべきであるから、これに伴い本件法人臨時特別税の更正処分も、その一部を取り消すべきである。
ニ 本件法人特別税の更正処分について
 上記イのとおり、平成5年3月期の法人税の更正処分は違法であり、その一部を取り消すべきであるから、これに伴い本件法人特別税の更正処分もその一部を取り消すべきである。
ホ 法人特別税の過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記ニのとおり、本件法人特別税の更正処分は違法であり、その一部を取り消すべきであるから、これに伴い法人特別税の過少申告加算税の賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 本件法人税の各更正処分について
(イ)本件土地の状況
 原処分の調査担当者が調査したところ、次の事実が認められる。
A F営業所用地
 請求人は、F営業所用地を、平成4年1月20日にH及びJから136,939,600円で取得しているところ、当該土地は、既存の土地との段差が大きく埋立てて整地を行わなければ駐車場として事業の用に利用できない状態であること。
B Gマイカーセンター用地
 請求人は、Gマイカーセンター用地を平成4年4月13日にK及びLから363,788,000円で取得しているところ、当該土地は、平成5年3月期の末日において既存の土地との段差が大きく、埋立てて整地を行わなければ駐車場として事業の用に利用できない状態であったこと。
(ロ)本件更正通知書の瑕疵
 請求人自身も認めているとおり、Gマイカーセンター用地の埋立ては、審査請求の対象となっている平成5年3月期終了後の平成5年12月から開始されたものであり、平成5年3月期の末日において、当該土地が取得時の原状のままであったことについては、双方に争いのないところであり、また、本件更正通知書の更正の理由には、当該土地が建物又は構築物の敷地の用に供されていないから、措置法第62条の2に規定する新規取得土地等に該当する旨が記載されており、また、その記載によって、請求人は、原処分庁が行った処分の理由を了知することが十分に可能であるから、更正処分を無効ならしめるほどの違法はなく、本件更正通知書には重大な瑕疵がある旨の請求人の主張には理由がない。
(ハ)本件損金不算入制度の立法趣旨及び措置法第62条の2第3項第2号の解釈
 措置法第62条の2第3項第2号には、新規取得土地等を法人が有する場合に、当該新規取得土地等に係る負債の利子が損金不算入となる期間について、「当該新規取得土地等がその取得をした日において次に掲げる土地等に該当しない場合又はその取得をした日において次に掲げる土地等に該当し、かつ、当該土地等の区分に応じ次に定める日が到来していない場合における当該新規取得土地等の取得をした日から四年を経過する日(当該新規取得土地等が次に掲げる土地等に該当し、同日前に当該土地等の区分に応じ次に定める日が到来する場合には、その日)までの期間をいう。」と規定されており、同号イにおいて「長期間にわたって使用されるものとして政令で定める建物又は構築物の敷地の用に供された土地等(これと一体的に使用される土地等として政令で定めるものを含む。)」については、「当該建物又は構築物がその用に供された日」が本件損金不算入期間の末日である旨規定されている。
 さらに、同号イを受けて、措置法施行令第38条の3第13項において、「長期間にわたって使用されるものとして政令で定める建物又は構築物」は、その取得価額が3.3平方メートル当たり15万円以上である建物又はその耐用年数が20年を超える構築物である旨規定され、また、同条第14項において、「建物又は構築物と一体的に使用される土地等として政令で定めるもの」は、「同号イに規定する建物又は構築物と一体的に事業の用に供される施設の用に供される土地等とする。」と規定されている。
 ところで、本件損金不算入制度は、法人が支払う借入金の利子が企業会計上の期間費用として、その支払った事業年度の損金の額に算入できる税制上の仕組みを利用し、また、近年の金融緩和等を背景として、法人企業の借入金による土地取得が顕著となっていることから、借入金による土地取得を通ずる企業の税負担の回避行為に対処し、併せて土地の仮需要の抑制を図る観点から、法人の土地取得に係る借入金の利子の損金算入を制限する措置を講ずるために創設されたものである。
 しかし、法人の土地取得が不要不急なものであるかどうかをあらかじめ見極めることは困難であり、他方、実需に基づいた土地取得者に対してまで一定期間支払利子の損金算入を認めないというのは過重な負担を強いることになるといった点に配慮して、一定の適用除外の範囲を定め、その一つとして、措置法第62条の2第3項第2号イの本書に「長期間にわたって使用されるものとして政令で定める建物又は構築物の敷地の用に供された土地等」と規定し、法人が土地等を取得し、当該土地等が長期間にわたって使用されるものとして政令で定める建物又は構築物の敷地の用に供された場合を掲げているのである。
 したがって、建物又は構築物がその用に供された日に本件損金不算入期間の末日が到来することとなる土地等は、措置法施行令第38条の3第13項で定める建物又は構築物(以下「特定建物等」という。)の敷地の用に供された土地等であることが前提となることは明らかであるから、新規取得土地等そのものが、特定建物等とともに事業の用に供されていない限り、措置法第62条の2第3項第2号イに定める土地等には該当しないのである。
 請求人の主張は、措置法第62条の2第3項第2号イのかっこ書に、「これと一体的に使用される土地等」と規定されていることを根拠にして、新規取得土地等が、将来的(埋立て等の改良後)に既存の特定建物等と一体的に使用されることを前提として、F営業所用地及びGマイカーセンター用地が適用除外の新規取得土地等であるとするものであるが、上述の法律創設の趣旨及び同号イの本書の規定からすると、請求人の主張のように解すべき余地はない。
(ニ)上記(イ)の事実関係及び上記(ハ)の措置法第62条の2第3項第2号の解釈に照らせば、F営業所用地及びGマイカーセンター用地は、請求人も自認しているとおり、資金繰りの関係から採算上埋立てを一時見合わせており、また、既存の土地との段差が大きいため埋め立てて整地を行わなければ駐車場として利用できない状態にあり、請求人の事業の用に供されていないことは明らかであって、いずれもその取得の日から平成5年3月期の末日まで事業の用に供されておらず、本件損金不算入期間の末日(埋立てをして駐車場として利用した日又は当該新規取得土地等の取得をした日から4年を経過する日のいずれか早い日)が到来していないから、別表3及び4のとおり平成4年3月期及び平成5年3月期の本件損金不算入額を請求人の申告所得金額に加算した本件法人税の各更正処分は適法である。
ロ 法人税の過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件法人税の各更正処分は適法に行われており、請求人が法人税の所得金額を過少に申告したことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由がある場合に該当しないから、同条第1項の規定に基づいて行った法人税の過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
ハ 本件法人臨時特別税の更正処分について
 上記イのとおり、平成4年3月期の法人税の更正処分は適法であるから、これに基づいて行われた本件法人臨時特別税の更正処分も適法である。
ニ 本件法人特別税の更正処分について
 上記イのとおり、平成5年3月期の法人税の更正処分は適法であるから、これに基づいて行われた本件法人特別税の更正処分も適法である。
ホ 法人特別税の過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記ニのとおり、本件法人特別税の更正処分は適法に行われており、請求人が納付すべき法人特別税額を過少に申告したことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合には該当しないから、同条第1項の規定に基づいて行った法人特別税の過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

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3 判断

 双方の主張に基づいて調査、審理したところ、次のとおり判断される。

(1)本件法人税の各更正処分について

イ 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
(イ)請求人は、F営業所用地を、平成4年1月20日に136,939,600円で取得したこと。
(ロ)F営業所用地は、既存の土地と段差が2メートル近くあり、また、近隣の土地所有者から必ず段差がなくなるまで埋立てをして使用するよう要請を受けているところ、平成5年3月期の末日において資金繰りと採算上の都合で埋立てができない状況であったこと。
(ハ)請求人は、Gマイカーセンター用地を、平成4年4月13日に363,788,000円で取得したこと。
(ニ)Gマイカーセンター用地は、取得時には既存の土地と段差が2ないし3メートルあり、埋め立てて整地しなければ使用できない状況であったが、資金繰りと採算上の都合で埋立てを一時見合わせていたこと。
 その後、当該土地は河川工事に伴い平成5年12月に埋立てを開始し、平成6年3月に厚さ30センチメートルの全面的な埋立てを完了してからは多くの車両が駐車できるようになったこと。
(ホ)本件土地は、措置法第62条の2第3項第1号に規定する新規取得土地等に該当すること。
ロ 当審判所が原処分関係資料を調査したところ、次の事実が認められる。
(イ)請求人の平成4年3月期末の借入金残高は10,635,770,348円であったこと。
 また、同期に損金の額に算入した負債の利子の額は638,028,979円で、平均利子率は6.6パーセントであったこと。
(ロ)請求人の平成5年3月期末の借入金残高は11,793,249,381円であったこと。
 また、同期に損金の額に算入した負債の利子の額は584,666,183円で、平均利子率は5.2パーセントであったこと。
ハ 原処分の調査担当者の当審判所に対する答述によれば、次の事実が認められる。
(イ)原処分の調査担当者は、本件土地の状況について、Gマイカーセンター用地は平成5年11月の終わりころ実地に確認したが、F営業所用地は調査時に請求人が提示した日付入り写真により確認したこと。
(ロ)原処分の調査担当者は、本件土地が請求人所有の既存の施設の隣接地であることを認識していたこと。
(ハ)本件土地は、いずれも既存の土地と段差が大きく、埋立てをして整地をしなければ、駐車場として利用できない状態であったが、平成5年3月期の末日までは何ら工事はされておらず、各事業年度において事業の用に供されていないこと。
ニ 当審判所が、本件土地の状況について平成7年6月23日に確認したところ、次の事実が認められる。
(イ)F営業所用地は、F営業所の敷地裏側のコンクリート製擁護壁と接した土地であるが、F営業所の敷地より2ないし3メートル低位にあり、また、埋立て等が行われたとは認められないこと。
(ロ)Gマイカーセンター用地は、国道○号線に面し、Gマイカーセンターの敷地の南側に接した土地であるが、国道より約2メートル低位にあり、埋立てをし、進入路が設けられ車両が駐車できること。
ホ 本件更正通知書の瑕疵
 請求人は、本件更正通知書には、明らかに事実誤認に基づく重大な瑕疵があり、このような本件更正通知書によりなされた本件更正処分は違法である旨主張するので審理したところ、次のとおりである。
(イ)青色申告に係る法人税について更正をする場合、更正通知書に更正の理由を附記すべきものとしているのは、法人税法が、青色申告制度を採用し、青色申告に係る所得の計算については、それが法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがないことを納税者に保障した趣旨にかんがみ、原処分庁の判断の慎重性、合理性を担保してそのし意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨に出たものと解される。
 そして、帳簿書類の記載自体を否認することなく、ただその法的評価につき納税者と見解を異にして更正する場合には、更正処分の根拠になる評価判断に至った過程自体について、原処分庁のし意の抑制及び相手方の不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の附記として欠けるところはないと解される。
(ロ)これを本件についてみると、本件更正通知書の更正の理由には、「現地を確認した日時」及び「本件土地が既存の建物等と一体的に使用される土地」であるかどうかの判断は明記されていないが、更正の理由である1本件土地が新規取得土地等であること、2本件土地が建物又は構築物の敷地の用に供されていないこと及び3本件損金不算入額の計算過程とその結果が明記されており、原処分庁が更正処分に至った判断過程が明らかにされ、原処分庁のし意の抑制及び相手方の不服申立ての便宜は図られていると認められるから、本件更正通知書に重大な瑕疵があるとはいえず、更正処分に違法性はない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ヘ 本件損金不算入制度の立法趣旨及び措置法第62条の2第3項第2号の解釈
 請求人は、本件土地の取得は本件損金不算入制度の立法趣旨から適用除外である旨主張するとともに、本件損金不算入期間の末日について、措置法第62条の2第3項第2号の解釈に争いがあるので審理したところ、次のとおりである。
(イ)本件損金不算入制度は、法人が支払う借入金利子が企業会計上の期間費用として、その支払った事業年度に損金の額に算入できる税制上の仕組みを利用した借入金による土地取得を通ずる企業の税負担回避行為に対処し、併せて土地の仮需要の抑制を図る観点から、法人の土地取得に係る借入金の利子の損金算入を制限する措置を講ずるために創設されたものと解される。
 そして、その適用要件としては、措置法第62条の2第1項において、(1)当該事業年度終了の時において新規取得土地等を有していること、(2)当該事業年度に当該新規取得土地等に係る負債利子損金不算入期間が含まれていること、(3)当該事業年度に損金の額に算入された負債の利子があることと規定されている。
 一方、思惑や税負担の回避目的からではなく、本来の事業目的のために土地を取得した者に大きな負担を強いることのないよう、法人の土地取得が税負担の回避又は投機目的でないと認められる場合には、本件損金不算入制度の適用を除外する規定が設けられている。
(ロ)請求人は、本件土地が正常な営業活動として取得したもので仮需要によるものでなく、その取得目的から、本件損金不算入制度の立法趣旨に照らし、適用除外になる旨主張する。
 しかしながら、その適用除外の範囲を定めた法律上の規定は、ただ単に、その土地取得が、本来事業のためであればよいとか、投機目的のためでなければよいとかいった包括的なものではなく、税負担回避目的等で取得したものでないことが客観的に明らかな場合等を類型化し、適用除外となる場合を個々に定めたものとなっている。
 したがって、法律の規定上、法人の土地取得が本件損金不算入制度の適用除外になるためには、その取得の目的にかかわらず、法律に定められた適用除外の規定に該当しなければならないことになる。
 そうすると、本件損金不算入制度は土地の取得目的いかんを問うものではなく、適用除外の規定に該当するかどうかにより本件損金不算入額を計算することになるから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(ハ)請求人は、措置法第62条の2第3項第2号イのかっこ書の「使用される」、あるいは、措置法施行令第38条の3第14項の「供される」という語句を捉え、本件土地が取得に際して明らかに既存の営業所建物等と一体的に使用されることが判然としていることを根拠に、営業所等が発足した日に本件損金不算入期間の末日が到来しており、本件損金不算入額は発生しない旨主張する。
 ところで、負債利子損金不算入期間は、措置法第62条の2第3項第2号で原則4年間とされながらも、同号イにおいて、「長期間にわたって使用されるものとして政令で定める建物又は構築物の敷地の用に供された土地等(これと一体的に使用される土地等として政令で定めるものを含む。)」は、「当該建物又は構築物がその用に供された日」が本件損金不算入期間の末日とされ、同号イ本書において、新規取得土地等の本件損金不算入期間の末日が到来したものとされるためには、新規取得土地等そのものが特定建物等の敷地の用に供されていることが必要である旨規定されている。
 さらに、同号イかっこ書の「これと一体的に使用される土地等」は、措置法施行令第38条の3第14項で「建物又は構築物と一体的に事業の用に供される施設の用に供される土地等とする。」と規定され、この「建物又は構築物と一体的に事業の用に供される施設」とは、特定建物等と機能的及び地理的な一体性を有して事業の用に供される施設をいい、その施設は必ずしも特定建物等と同一の用途であるとか、その敷地と接している必要はないが、地理的一体性を備えているだけでなく、機能的にも一体として使用されている必要があると解される。
 すなわち、特定建物等及びそれらと一体的に使用される施設が事業の用に供されたことにより、法人の土地取得が不要不急なものでないこと、あるいは税負担回避目的でないこと等が客観的に明らかとなり、また、長期間にわたって使用されることが確実に見込まれることから、その時点から適用除外とするものと解される。
 このことは、鉄道事業法、軌道法、道路運送法等の規定により、これらの事業を行う事業者の取得した土地が事後的に事業の用に供されることとなった場合には工事施行の認可を受けることになっているが、措置法施行令第38条の3第15項各号においては、これらの事業の用に供される土地等の負債利子損金不算入期間の末日を、「当該認可を受けた日」と規定していることに照らしても明らかである。
 また、措置法第62条の2第3項第2号イの本書で特定建物等の敷地がその用に供されたことが求められており、特定建物等の直接的な敷地でさえ事業の用に供されていることが必要とされていることからすれば、それらと一体的に使用される土地等について、条件が緩和されているとは解されず、さらに、上記(イ)の本件損金不算入制度の趣旨・目的に照らせば、特定建物等の敷地の用に供された土地等と一体的に使用される土地等もその用に供されていることが必要と解するのが相当である。
 さらに、措置法第62条の2第3項第2号イのかっこ書の「使用される」、又は、措置法施行令第38条の3第14項の「供される」という語句は、現に使用され、又は、供されていなくとも、将来的に使用され、又は供される予定であればよいことまでを意識して使われたものではなく、単に特定建物等の敷地と一体的な関係にあることを表すために、中立的な概念として使われたにすぎないと解される。
 そうすると、上記(ハ)のとおり、措置法第62条の2第3項第2号に基づき、本件土地が既存の特定建物等と一体的に使用された日に本件損金不算入期間の末日が到来すると解するのが相当であり、本件土地は、上記イのとおり、各事業年度末において事業の用に供されていないことは明らかであり、各事業年度において特定建物等と一体的に事業の用に供される施設の用に供される土地等とはいえず、したがって、本件損金不算入期間の末日は到来しているとは認められないから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(ニ)請求人は、上記イの(ホ)のとおり、各事業年度末において新規取得土地を有しており、また、上記ロのとおり、各事業年度に損金の額に算入された負債利子の額があることが認められる。
(ホ)以上により、請求人の本件土地の取得は、本件損金不算入制度のすべての適用要件を充たしており、また、本件損金不算入額の計算における基礎数値に誤りはなく、それらに基づく計算も適正であるから、本件法人税の各更正処分は適法であり、請求人の主張には理由がない。

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(2)法人税の過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、本件法人税の各更正処分はいずれも適法であり、また、請求人には、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、原処分庁が同条第1項の規定に基づいて行った法人税の過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

(3)本件法人臨時特別税の更正処分について

 上記(1)のとおり、平成4年3月期の法人税の更正処分は適法であるところ、湾岸地域における平和回復活動を支援するため平成二年度において緊急に講ずべき財政上の措置に必要な財源の確保に係る臨時措置に関する法律第8条、第11条及び第12条の規定により、請求人の平成4年3月期の法人臨時特別税の基準法人税額は102,196,487円、課税標準法人税額は99,196,000円となり、課税標準法人税額に100分の2.5を乗じた2,479,900円(100円未満の端数切捨て)が納付すべき税額であり、いずれも更正処分の額と同額であるから、本件法人臨時特別税の更正処分は適法である。

(4)本件法人特別税の更正処分について

 上記(1)のとおり、平成5年3月期の法人税の更正処分は適法であるところ、法人特別税法第6条、第9条及び第10条の規定により、請求人の平成5年3月期の法人特別税の基準法人税額は158,788,625円、課税標準法人税額は154,788,000円となり、課税標準法人税額に100分の2.5を乗じた3,869,700円(100円未満の端数切捨て)が納付すべき税額であり、いずれも更正処分の額と同額であるから、本件法人特別税の更正処分は適法である。

(5)法人特別税の過少申告加算税の賦課決定処分について

上記(4)のとおり、本件法人特別税の更正処分は適法であり、また、請求人には、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、原処分庁が同条第1項の規定に基づいて行った法人特別税の過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
(6)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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別表1


(単位 円)
区分 事業年度平成4年3月期平成5年3月期
確定申告
 所得金額272,692,951392,660,188
 納付すべき税額87,047,900139,166,400
更正処分等
 所得金額274,933,209425,911,451
 納付すべき税額87,888,300149,804,500
 過少申告加算税の額84,0001,063,000

別表2


(単位 円)
区分  税目法人臨時特別税法人特別税
申告
 課税標準法人税額98,356,000142,319,000
 納付すべき税額2,458,9003,557,900
更正処分等
 課税標準法人税額99,196,000154,788,000
 納付すべき税額2,479,9003,869,700
 過少申告加算税の額31,000

別表3

平成4年3月期の本件損金不算入額

(単位 円、%)
土地の区分F営業所用地
取得年月日平成4年1月20日
新規取得土地等の基準取得価額136,939,600
利子率による計算
 利子率6
当期に含まれる負債利子損金不算入期間÷当期の月数2÷12
計算金額1,369,396
負債利子額による計算
 当期の負債の利子額638,028,979
当期に含まれる負債利子損金不算入期間÷当期の月数2÷12
計算金額106,338,163
損金不算入額1,369,396

平成5年3月期の本件損金不算入額

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