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(平8.2.28裁決、裁決事例集No.51 673頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、プラスチック廃棄物の処理業を営む法人であるが、平成3年4月1日から平成4年3月31日までの課税期間、平成4年4月1日から平成5年3月31日までの課税期間及び平成5年4月1日から平成6年3月31日までの課税期間(以下、順次「平成4年3月期課税期間」、「平成5年3月期課税期間」及び「平成6年3月期課税期間」といい、これらの課税期間を併せて「各課税期間」という。)の消費税について確定申告をしていなかったところ、原処分庁は、平成6年7月29日付で、次表の「決定処分等」欄のとおり、決定処分(以下「本件各決定処分」という。)及び無申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。

 請求人は、これらの処分を不服として平成6年9月27日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年12月21日付で棄却の異議決定をした。
 その後、原処分庁は、平成6年12月27日付で本件各賦課決定処分を取り消した。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成7年1月20日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 消費税の課税の対象について
 原処分庁は、請求人がF県農業用廃プラスチック対策協議会(以下「県廃プラ協議会」という。)から各課税期間に受領した収入金額(以下「本件収入金額」という。)は、役務の提供の対価であるから、消費税の課税の対象となるとして本件各決定処分をしたが、次のとおり、本件収入金額は補助金及び助成分担金たる給付金であって、役務の提供の対価ではないから、消費税の課税の対象とはならないのであり、原処分庁は事実を誤認している。
(イ)F県(以下「県」という。)は、県下の園芸生産農家等(以下「園芸農家等」という。)から排出される産業廃棄物である園芸用廃プラスチック類(ポリエチレン及び塩化ビニールの廃棄物をいい、以下「廃プラ」という。)の適正な回収、処理に関する行政施策を円滑、適確に実施するために、昭和48年10月に園芸用廃プラスチック処理対策推進事業実施要領(以下「県廃プラ実施要領」という。)を制定して以来、その県廃プラ実施要領に基づいて、県、各市町村、農業協同組合、同連合会及び園芸生産者団体等は、一体となって、廃プラの円滑な収集と適正な処理を実施するための各種施策及び事業を行っている。
(ロ)請求人は、県廃プラ実施要領に基づいて設置された県廃プラ協議会の構成員の一員として、県廃プラ実施要領に定められた廃プラの適正処理部門と処理効率化対策事業部門を担当し、廃プラ処理に当たっている。
 請求人が担当している事業は、いずれも県及び各市町村の補助対象事業とされ、各事業の遂行上必要とする経費については、その総額を県廃プラ実施要領及びF県園芸用廃プラスチック処理対策事業補助金交付要綱(以下「県廃プラ補助金交付要綱」という。)等の諸規定等によって県、各市町村及びF県経済農業協同組合連合会(以下「県経済農協連合会」という。)等から交付される補助金及び助成分担金をもって、これを補てんすると定められている。
(ハ)補助金及び助成分担金の算定の基礎となる経費は、県廃プラ補助金交付要綱の規定により、「適正処理事業、処理効率化対策事業に要する経費は、処理予定量に1キログラム当たり20円を乗じて得た額、補助対象事業費は、1キログラム当たり15円を乗じて得た額とする。」とされている。
 なお、1キログラム当たりにつき、補助対象事業費15円としているのは、適正処理事業、処理効率化対策事業に要する経費20円から県経済農協連合会の負担分5円を減じているためである。
(ニ)本件収入金額は、上記(ロ)ないし(ハ)の補助金及び助成分担金が県廃プラ補助金交付要綱等の規定により県廃プラ協議会に交付され、県廃プラ協議会から請求人に交付されたものである。
(ホ)請求人は、県廃プラ実施要領等の定めるところに従い、廃プラの処理及び県外委託処理に係る搬出、運搬に要する経費の支出に充てるものとして本件収入金額の交付を受けたが、これは廃プラの適正処理事業という県及び各市町村の行政目的の実現を図るために交付されたものであり、この本件収入金額はそのすべてが県及び市町村の補助金交付要綱等に基づく補助金及び助成分担金たる給付金である。
(ヘ)原処分庁は、県廃プラ実施要領の定めを根拠に廃プラの実施主体は県廃プラ協議会であると事実認定しているのは相当でない。
 すなわち、請求人の事業である廃プラ処理に関する県廃プラ実施要領の「第4園芸用廃プラスチック適正処理事業」及び「第6園芸用廃プラスチック処理改善効率化事業」の「1処理効率化対策事業」のそれぞれの定めには実施主体についての記載がなく、また、廃プラ処理対策の主導者であり、かつ、県廃プラ実施要領に廃プラの処理費用の負担割合を定めているのは、県であるから、廃プラ処理の実施主体は県であるとするのが相当である。
(ト)県、市町村及び県経済農協連合会等から県廃プラ協議会を通じて請求人が交付を受けた本件収入金額は、間接交付の形態を採ってはいるが、これは廃プラを排出する市町村が69と多く、かつ、多岐広範にわたる県の地理的条件を考慮して、諸手続の簡素効率化を図るため、県農林部長の行政指導により事務取りまとめ機関として県廃プラ協議会が介在されることになったものであり、県廃プラ協議会が介在したとしても、本件収入金額が市町村の補助金交付要綱等に定める交付目的に沿って使用される限り、補助金及び助成分担金の性格を有することには何ら影響を及ぼすものではない。
(チ)したがって、原処分庁がこれらの事実関係の流れを全体像として捉えようとせず、県廃プラ協議会と請求人との間の本件収入金額の授受のみを捉え、本件収入金額は、県廃プラ協議会と請求人との間の委託契約に基づく役務の提供の対価に係る収入であるとしたのは、事実誤認に基づくものである。
ロ 信義則について
 請求人は、原処分庁に次のとおりの指導を受けたことにより、その指導に基づき消費税の確定申告をしなかったのであるから、本件各決定処分は、原処分庁の指導に従った納税者の信頼を踏みにじるもので、信義則に反する不当な処分である。
(イ)請求人は、県廃プラ協議会を通じて交付される本件収入金額のような廃プラ処理に係る収入金額(以下「廃プラ処理収入金額」という。)が消費税の課税の対象に該当するか否かにつき疑義があったので、平成元年3月7日に原処分庁に赴き、事情を説明の上判断を求めたところ、原処分庁の担当職員(以下「担当職員」という。)から「収入金額が説明のとおりであれば、これらの収入は特定収入であるから、消費税の課税の対象外であり、申告の必要はない。」旨の指導を受けている。
(ロ)平成元年11月、原処分庁から請求人の関与税理士であるG(以下「G」という。)に対し、請求人の消費税課税事業者届出書が未提出であるので、課税事業者に該当するか否かを検討の上請求人を指導してほしい旨記載した文書の送付があったことにより、Gは、同月17日に担当職員に対して電話により、請求人の事業内容、廃プラ処理収入金額の性格、受入先、入金の状況、入金経路及び手段、根拠となる要領等の状況を詳細に説明したところ、担当職員から「それらの収入金額は消費税の課税の対象外である収入であるから、消費税課税事業者届出書の提出は要しない。消費税確定申告書等未提出者名簿の請求人の部分は抹消しておく。」旨の指導を受けている。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 消費税の課税の対象について
(イ)原処分庁の調査によれば、次の事実が認められる。
A 請求人は、園芸農家等が廃棄した廃プラを請求人の工場で処理し、若しくは県外で廃プラを処理するための運送に伴う業務を行っていること。
B 請求人の県廃プラ協議会からの廃プラ処理収入金額は、処理予定量に応じ、1キログラム当たり20円として計算されていること。
C 県廃プラ実施要領及び県廃プラ協議会の策定した農業用廃プラスチック処理要領(以下「県廃プラ協議会処理要領」という。)には、次のとおり事業の実施主体は、県廃プラ協議会である旨記載されていること。
(A)県廃プラ実施要領の「第1趣旨」において、県廃プラ協議会は今後の廃プラの適正、かつ、効率的な処理方法の調査、検討を推進し、円滑な回収と適正な処理を実施することとされていること。
(B)県廃プラ協議会処理要領の頭書において、県廃プラ実施要領に基づき、県廃プラ協議会と各市町村の廃プラスチック対策協議会(以下「各市町村廃プラ協議会」という。)が処理する廃プラの取扱いは、県廃プラ協議会処理要領により行うこととされていること。
D 県廃プラ協議会処理要領の定めにより、県廃プラ協議会は請求人の廃プラの処理実績に対し、廃プラの処理料及び県外委託処理に係る搬出、運搬経費を支払うこととされていること。
(ロ)上記(イ)の事実によると、本件収入金額は、請求人が県廃プラ協議会から廃プラ処理を請負い、その処理実績に応じて得る対価であることが明らかであるから、県廃プラ協議会が支払った本件収入金額の原資が県及び各市町村等が給付する補助金又は間接補助金に当たるか否かにかかわらず、役務の提供の対価に係る収入であるから、消費税の課税の対象となる。
ロ 信義則について
 信義則に反する旨の請求人の主張には、次のとおり理由がない。
(イ)請求人は、平成元年11月ころに原処分庁からGに対して送付された請求人に対する消費税の課税事業者届出書の提出方指導の依頼文書(以下「本件依頼文書」という。)の上部余白に平成元年11月17日にGが担当職員から電話により指導を受けた事績の記載があるとして、本件依頼文書を原処分庁に提出した。
(ロ)しかしながら、本件依頼文書の上部余白の記載内容及び請求人の本件収入金額は補助金及び助成分担金に当たるとする主張からすると、Gの担当職員に対する説明は、本件収入金額が県及び各市町村等からの補助金又は助成分担金に当たることを前提とした説明であったと考えるのが相当であり、請求人が廃プラ処理という役務の提供を行い、その対価として県廃プラ協議会から本件収入金額を得ているという事実関係を前提としたものではないと認められる。
(ハ)仮に、請求人が主張するような電話による応答があったとしても、申告納税制度の下における申告納税は、納税者が自己の判断と責任において行うものであるから、たとえ、税務職員が誤った指導、助言をし、これと異なる税務署長の更正処分又は決定処分があったとしても、直ちにそれを信義則に反するものであるということはできない。
 なお、原処分庁は、Gに対し本件依頼文書を送付し、Gと担当職員との間で何らかの電話による応答があったことを認め、その後における請求人の無申告に対する指導及び対応について、必ずしも十分であったとは言い切れないことから、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項のただし書の「期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合」の規定に準じた扱いをし、本件各賦課決定処分を取り消している。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件収入金額が消費税の課税の対象となるか否か及び信義則に反するか否かであるので、以下審理する。

(1)消費税の課税の対象について

イ 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
(イ)請求人の各課税期間における本件収入金額及び仕入れに係る消費税額は、次表のとおりであること。

(単位 円)
項目本件収入金額仕入れに係る消費税額
課税期間
平成4年3月期課税期間64,010,000810,520
平成5年3月期課税期間68,446,2001,049,535
平成6年3月期課税期間71,175,000849,155

(ロ)本件収入金額の計算の基礎となる廃プラ1キログラム当たりの処理料は、昭和58年度から平成元年度まで廃ポリエチレンが20円、廃塩化ビニールが10円とされ、平成2年度から廃塩化ビニールが20円に値上げされ、現在に至っていること。
ロ 本件収入金額に関し、当審判所が県廃プラ実施要領、県廃プラ補助金交付要綱及び県廃プラ協議会処理要領等を調査したところ、次の事実が認められる。
(イ)県廃プラ実施要領の「第4園芸用廃プラスチック適正処理事業」、県廃プラ処理要領の「3処理」の(2)及び各市町村廃プラ協議会の各処理要領において、廃プラ処理料は、1キログラム当たり20円と定められ、その負担割合は、県、市町村、生産者(各市町村の農業協同組合等)及び県経済農協連合会がそれぞれ4分の1とされていること。
(ロ)県廃プラ協議会から請求人に支払われる廃プラ処理料の手続等は、次のとおりであること。
A 県の廃プラ処理の負担分は、県廃プラ協議会及び各市町村廃プラ協議会が協議して県知事の承認を得た廃プラの回収処理目標数量(以下「廃プラ処理予定数量」という。)に基づき、各市町村の申請により、各市町村に補助金として交付される。
B 各市町村の廃プラ処理の負担分は、廃プラ処理予定数量に基づき、各市町村廃プラ協議会の申請により、県の負担分を含めて各市町村廃プラ協議会に補助金として交付される。
C 各市町村の農業協同組合等の廃プラ処理の負担分は、廃プラ処理予定数量に基づき、各市町村廃プラ協議会の交付要求により、各市町村廃プラ協議会に負担金として交付される。
D 県廃プラ協議会は、廃プラ処理予定数量に基づき、県の負担分、各市町村の負担分及び各市町村の農業協同組合等の負担分を含めて、各市町村廃プラ協議会から交付を受ける。
 また、県廃プラ協議会は、廃プラ処理予定数量に基づき、県経済農協連合会から分担助成金として交付を受ける。
E 廃プラ処理予定数量に基づき、請求人は県廃プラ協議会から廃プラの処理料を受領するが、廃プラの処理実績と廃プラ処理予定数量との差異が20パーセント以内であれば、差額の清算はされず、請求人の受領する廃プラの処理料は確定する。
(ハ)県廃プラ実施要領の「第1趣旨」に、「県廃プラスチック対策協議会において、今後の廃プラスチックの適正かつ効率的な処理方法の調査、検討を推進し、円滑な回収と適正な処理を実施することにより、農村環境の保全と施設園芸の健全な発展に資する。」と記載されていること。
 また、県廃プラ協議会処理要領の頭書に、「F県園芸用廃プラスチック適正処理対策推進事業実施要領に基づき、F県農業用県廃プラスチック対策協議会と市町村廃プラスチック対策協議会が処理する廃プラスチックの取扱いはこの要領で行うものとする。」と記載され、また、同じく県廃プラ協議会処理要領の「3処理」の(5)には、「県協議会は、廃プラ工場の処理実績に対し、処理料及び県外委託処理分搬出運搬経費を支払うものとする。」と記載されていること。
(ニ)県廃プラ実施要領の「第4園芸用廃プラスチック適正処理事業」及び廃プラの県外委託処理に関する「第6園芸用廃プラスチック処理改善効率化事業」の「1処理効率化対策事業」の定めによれば、いずれも、「第3の1の(5)の回収組織活動計画書に基づき当該市町村協議会で回収し」とあり、その第3の1の(5)には、各市町村廃プラ協議会がその回収組織活動計画書を知事に提出、承認を受ける旨定められていること。
(ホ)県廃プラ協議会処理要領の「2予約申込および受託」に、各市町村廃プラ協議会は年1回、当該年度開始2か月前までに予約申込書により県廃プラ協議会に予約申込みを行い、県廃プラ協議会は、その予約申込書の内容を検討のうえ、受託数量を決定し請書を発行して処理契約とする旨が記載されていること。
(ヘ)県廃プラ協議会処理要領の定めによれば、県廃プラ協議会が各市町村廃プラ協議会に廃プラ処理料の請求をし、各市町村廃プラ協議会は県廃プラ協議会に廃プラ処理料を納入するとしていること。
(ト)県廃プラ協議会及び各市町村廃プラ協議会は、代表者の定めがある人格のない社団であること。
ハ ところで、消費税法第4条《課税の対象》第1項及び同法第6条《非課税》第1項は、国内において事業者が事業として対価を得て行った課税資産の譲渡等(消費税法第2条《定義》第9号に規定しているものをいう。以下同じ。)には、消費税を課する旨規定している。
 ここにいう「対価を得て行われる」とは、課税資産の譲渡等に対し反対給付を受けることをいうから、事業者が国又は地方公共団体等から交付を受ける、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「予算執行適正化法」という。)第2条《定義》に規定する補助金等及び間接補助金等は、特定の政策目的の実現を図るために交付を受けるものであり、資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供を行うことの反対給付として受けるものではなく、消費税の課税の対象とはならないことから、消費税は課されないと解するのが相当である。
 一方、たとえ補助金等の名目での交付金であったとしても、当該反対給付として受けるものであれば、消費税法第2条第8号及び第9号の規定により課税資産の譲渡等として消費税の課税の対象となると解するのが相当である。
 なお、県及び各市町村が交付する補助金等及び間接補助金等についても、反対給付を受けない給付金であることがF県補助金等交付規則及び各市町村の定める補定金等交付規則(これらの交付規則と予算執行適正化法を併せて、以下「予算執行適正化法等」という。)に定められている。
ニ 請求人は、本件収入金額は、(a)廃プラ処理の実施主体は県であること、(b)県廃プラ実施要領及び県廃プラ補助金交付要綱等に従って行政目的の実現のために交付された補助金及び助成分担金であること及び(c)事務取りまとめ機関である県廃プラ協議会を通じて交付を受けたものであったとしても、本件収入金額が補助金等の性格を有することに影響を及ぼすものではないことから、役務の提供に係る収入ではなく、消費税の課税の対象とならない旨主張する。
 そこで、この点に関する請求人の主張について、上記ロの事実を上記ハに照らして審理したところ、次のとおりである。
(イ)予算執行適正化法等において、補助金等又は間接補助金等の交付の申請をしようとする者は、行政の長に申請書を提出することとされているところ、補助金の交付の申請をしているのは、上記ロの(ロ)で述べたとおり、県に対しては各市町村、また、各市町村に対しては各市町村廃プラ協議会であり、県廃プラ協議会及び請求人は交付の申請をしていない。
(ロ)廃プラ処理の実施主体については、(a)上記ロの(ハ)及び(ニ)の事実から、県廃プラ協議会及び各市町村廃プラ協議会であると認められること、(b)上記ロの(ホ)の事実から、各市町村廃プラ協議会が県廃プラ協議会に対し廃プラ処理を委託する旨の処理委託契約が成立していると認められること及び(c)上記ロの(ヘ)の事実から、廃プラ処理料は県廃プラ協議会が各市町村廃プラ協議会に請求をし納入を受けていることから、廃プラ処理の実施主体は県廃プラ協議会であると認められる。
 また、県が定めた廃プラ処理に関する一連の実施要領、補助金交付要綱及び処理要領によれば、県は、園芸農家等で排出される産業廃棄物である廃プラの適正な処理という行政目的のため、県、市町村、農業協同組合及び生産者団体で構成される県廃プラ協議会、各市町村廃プラ協議会等を設置し、廃プラ処理に係る経費の4分の1相当分を負担し各市町村に交付していることは認められるものの、県は廃プラ処理に直接かかわっている旨の定めは見当たらず、県が廃プラ処理の実施主体であるとは認められない。
(ハ)上記ロの(ロ)のEの事実から、県廃プラ協議会から請求人に対し、廃プラ処理予定数量に基づき、廃プラの処理料が支払われている(請求人が廃プラ処理という役務の提供をしなければ、県廃プラ協議会からは支払われない)ことから、請求人と県廃プラ協議会との間に廃プラの処理委託契約が存在すると認めるのが相当である。
(ニ)以上のことから、県が各市町村に交付するもの及び各市町村が各市町村廃プラ協議会に交付するものは、特定の行政目的の実現のためのものであり、いずれも補助金に該当すると認められるが、請求人が県廃プラ協議会から受領する廃プラの処理料は、廃プラ処理という役務の提供を行うことの反対給付として受けるものであるから、補助金等又は間接補助金等には該当しないと認められる。
 また、本件収入金額が消費税の課税の対象となるか否かは、国又は地方公共団体等とは別個の人格のない社団である県廃プラ協議会と請求人との取引が消費税法上の課税資産の譲渡等に該当するか否かで判断すべきであるから、本件収入金額が県廃プラ協議会を通じて交付を受けても補助金等の性格を有することに影響を及ぼさない旨の請求人の主張は相当でない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できず、原処分庁が本件収入金額は廃プラ処理という役務の提供に係る対価であるから、消費税の課税の対象となるとして本件決定処分を行ったことは適法である。

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(2)信義則について

 請求人は、本件各決定処分は信義則に反して不当である旨主張するので、以下審理する。
イ 当審判所に対する請求人の前専務取締役H(以下「H」という。)及びGが答述した要旨、請求人の提出した証拠資料並びに原処分庁関係資料を当審判所が調査したところによれば、次のとおりである。
(イ)Hは、平成元年J税務署に赴き、担当職員に廃プラ処理収入金額の消費税上の取扱いについて相談したところ、担当職員から「特定収入に該当するので課税の対象外である」との指導を受けた旨の答弁をしていること。
 なお、Hは、相談に際しては関係書類等の資料を一切持参せず、口頭での質疑であった旨答述していること。
 また、後日、請求人が当審判所に提出した「昭和63年度出張可令簿」にHが平成元年3月7日に消費税についてJ市に出張した旨の記載があること。
(ロ)請求人が当審判所に提出した平成4年1月31日の日付で作成したHから請求人の専務取締役Kに対する事務引継書の消費税の負担措置欄に、「1989年3月7日J税務署に相談の結果特定収入なので申告の必要なしとのこと」の記載があること。
(ハ)請求人が当審判所に提出した本件依頼文書の上欄部分に、平成元年11月17日にGと担当職員との電話による質疑応答の事績として、昭和63年3月期(基準期間)の処理手数料として県市町村16,000千円(補助金)、経済連16,000千円(助成金)と、その内訳は県4分の1、市町村4分の1及び経済連2分の1で、廃プラ協議会の会長は県農林部長である旨の記載があるとともに、担当職員から「消費税確定申告書等未提出者名簿を抹消しておく」との回答及び「課税事業者届出書の提出不要である」との回答を受けた旨の記載があること。
 また、Gは、当審判所に対し、請求人及びGとも廃プラ処理収入金額は県、各市町村からの補助金及び経済連からの助成金であると認識していたので、平成元年11月17日の担当職員との質疑応答に際して、廃プラ処理収入金額は県、各市町村からの補助金及び経済連からの助成金を県廃プラ協議会を通じて交付を受けていること及び請求人の事業内容として廃プラの焼却及び廃プラの県外搬出を行っている旨を説明したところ、本件依頼文書の上欄部分に記載されているとおりの回答を得たものであるとの答述をしていること。
ロ 原処分庁は、上記2の(2)のロの(ハ)のなお書のとおり、Gに対し本件依頼文書が送付され、Gと担当職員との電話による何らかの応答があったことが認められ、その後における請求人の無申告に対する指導及び対応について、必ずしも十分であったとは言い切れないことなどを理由として本件各賦課決定処分を取り消していること。
ハ ところで、信義則の法理の適用については、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分を免れしめて、納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別な事情がある場合に適用されると解されており、この場合の特別な事情がある場合の要件として、次の要件が不可欠であると解されている。
(イ)課税庁が納税者に対し、信頼の対象となる公的見解を表示したこと。
(ロ)納税者がその公的見解の表示を信頼して行動したこと。
(ハ)公的見解の表示ののちに、公的見解の表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けたこと。
(ニ)公的見解の表示を信頼して行動したことにつき、納税者の責めに帰すべき理由がないこと。
ニ そこで、信義則の法理の適用の不可欠の要件である特別な事情が存するか否かについて、上記イ及びロの事実を上記ハに照らし判断すると、次のとおりである。
 前記ハの(イ)の課税庁が納税者に対し、信頼の対象となる公的見解を表示したか否かについては、前記イの事実から、担当職員とH及びGとの間に廃プラ処理収入金額に関して質疑応答があったことは認められるが、いずれの場合においても、廃プラ処理収入金額に関する県廃プラ実施要領、県廃プラ補助金交付要綱及び県廃プラ協議会処理要領等の関係資料の提示をした上での質疑応答ではなく、また、廃プラ処理収入金額は地方公共団体等からの補助金ないし助成金であることを前提としての質疑応答であることが推認され、さらに廃プラ処理収入金額に関する客観的事実をすべて把握した上での担当職員の指導であったことを証する証拠はなく、当審判所の調査においても、いかなる事実関係を基にしての指導であったのかを確認することができない。
 このことは、課税庁が納税者に対し、信頼の対象となる公的見解を表示したという要件を具備したとはいえないから、その他の要件である上記ハの(ロ)ないし(ニ)の要件を審理するまでもなく、信義則の法理を適用することは相当でない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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