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(平9.5.30裁決、裁決事例集No.53 491頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成4年4月1日から平成5年3月31日まで、平成5年4月1日から平成6年3月31日まで及び平成6年4月1日から平成7年3月31日までの各課税期間(以下、順次「平成5年3月期」、「平成6年3月期」及び「平成7年3月期」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税について、消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの。以下同じ。)第37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項の規定(以下「簡易課税制度」という。)の適用を受け、請求人の営む事業(以下「本件事業」という。)について、平成5年3月期及び平成6年3月期は、消費税法施行令(平成7年政令第341号による改正前のもの。以下同じ。)第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第5項第3号に規定する第三種事業(以下「第三種事業」という。)、平成7年3月期は、同項第4号に規定する第四種事業(以下「第四種事業」という。)に該当するとして、本件各課税期間に係る消費税額を計算していずれも法定申告期限までに申告した。
 その後、請求人は、平成8年3月27日に、平成7年3月期における本件事業は第三種事業に該当するとして、別表の「更正の請求」欄に記載のとおりとすべき旨の更正の請求をした。
(2)原処分庁は、これに対し、本件各課税期間における本件事業は、第四種事業に該当するとして、平成8年5月22日付で別表の「更正処分等」欄に記載のとおり平成5年3月期及び平成6年3月期の消費税の各更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をし、また、同日付で平成7年3月期については更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
(3)請求人は、これらの処分を不服として、平成8年6月24日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年9月20日付で棄却の異議決定をした。
(4)請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成8年10月16日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は次のとおり違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分及び本件通知処分について
 本件事業は、次の理由により、第三種事業に該当することから、当該事業が第四種事業に該当するとしてなされた本件更正処分及び本件通知処分は違法である。
(イ)本件事業について
 本件事業は、次に述べるとおり、消費税法上の事業区分を個別に判定するならば、高級既製婦人服(以下「プレタポルテ」という。)製造業であり、日本標準産業分類(以下「産業分類」という。)上、大分類では「製造業」、中分類では「衣服その他の繊維製品製造業」、小分類では「外衣製造業」及び「下着類製造業」に該当する。
A 主たる得意先は、株式会社J(以下「J社」という。)であり、製造する婦人服は、プレタポルテの分野に当たるため、見た目と着心地の良さなどの特質を発揮できるよう心掛けており、そのため、素材特性や副資材の効用が十分に発揮されるよう、工場設備、機械設備を保有し、優れた人材を配置して、素材の調和を高める技術力及び生産力の向上を図り、生産者機能を充実させている。
B 得意先から無償支給された表生地を指図書により裁断し、自己の計算において購入した主要な原材料である裏生地(キュプラ、ポリエステル、絹)及び芯地材(綿芯、毛芯、化繊芯)並びに副資材としての縫い糸、ボタン及びコサージュなど(以下「本件副資材」という。)を総合的、かつ、合理的に組み合わせ、生産者機能を駆使してプレタポルテを製造している。
C 主として、得意先から無償支給される表生地と自ら調達した裏生地等を原材料としてプレタポルテ(ジャケット、スカート、ブラウス及びワンピース等)を製造しているが、特定のシーズンにおいては、縫い合わせの形をとらずに重ね着として、自ら調達した裏生地等のみを原材料に、キャミソール、ペチコート及びタンクトップ等(以下「本件下着類」という。)も製造している。
 なお、本件下着類については、単独で納品することはなく、製造する外衣に付随するものとして製造、納品している。
(ロ)自己調達の原材料について
 プレタポルテの主たる原材料は表生地であるが、自ら調達している裏生地及び芯地材についても、次に記述のとおり主要な原材料である。
A 裏生地は、それを付けることによって本来の機能性に加えてファッション性が最大限に加わり、高級化や多様化の美の実現に製品特性を発揮するものであり、次により、表生地だけでは得られない機能を補っており、表生地にも勝るとも劣らない素材である。
(A)表生地に張りを与え、シルエットを安定させる。
(B)下着との接触を滑らかにし、肌ざわりも良く、活動にも抵抗感がなく、着脱を容易にする。
(C)吸湿性の悪い表生地の欠点を補う。
(D)表生地と裏生地の間に空気の層を作り、保温性を高める。
(E)裏生地を付けることにより表生地の皺をよりにくくする。
(F)表生地が伸びやすい素材の場合その伸びを防ぐ。
(G)汗による表生地の表面変化を防ぐ。
(H)表生地の透けるものはそれを防ぎ、逆に裏生地を透かしてその美的効果を得る。
B 芯地材は、伸縮性やドレープ性に富み、薄手の材料にフィットしやすく、ソフトな風合いを保持するもので、次のような機能を有している。
(A)シルエットを保ち、作る。
(B)型崩れを防ぐ。
(C)部分的に膨らみを作る。
(D)張りを出する。
(E)体形の欠点を補う。
C 裏生地等のアパレル素材と製品には、それぞれ特有の性質、機能があり、それらはファッション性と機能性を調和させるために有機、不可欠の関係にある。
(ハ)第三種事業の該否について
 以上のとおり、本件事業は、表生地の無償支給を受け、裏生地、芯地材及び本件副資材を自己調達してプレタポルテを製造している事業であり、(a)第三種事業に該当するか否かの判定は、産業分類によることとされていること、(b)自己調達した裏生地及び芯地材は主要な原材料であることから、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業(以下「役務の提供を行う事業」という。)には当たらず、第三種事業に該当する。
 なお、山本守之著「消費税の実務」によれば、味噌の製造業者が主要な原材料の一つである米の無償支給を受け、大豆、麹、塩等を自己調達して味噌を製造している場合、大豆は味噌の主要な原材料であるから、当該製造は第三種事業に該当するとしていることからみると、主要な原材料である表生地の無償支給を受け、自己調達した主要な原材料である裏生地及び芯地材並びに本件副資材を用いて婦人服を製造する請求人の行為は、味噌の製造業者と何ら異なることがなく、第三種事業に該当することは明らかである。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分はいずれも違法であるから、本件賦課決定処分はいずれも取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分及び本件通知処分について
 本件事業は、次のとおり、第四種事業に該当するので、本件更正処分及び本件通知処分は適法である。
(イ)簡易課税制度における第三種事業に該当するかどうかは、産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定することとされており、産業分類上の製造業とは、有機又は無機の物質に物理的、化学的変化を加えて新製品を製造し、これを卸売する事業所をいうとされ、他の業者の所有に属する原材料に加工処理を加えて加工賃を受け取る賃加工業も製造業に分類するとされていることから、一般的に縫製業も製造業に含まれることとなるが、消費税法上は、製造業といえども、役務の提供を行う事業であれば第四種事業に該当することになる。
 ここで、製造業者が原材料の無償支給を受けて製造を行う場合において、その無償支給される原材料が主要な原材料である場合には、役務の提供を行う事業に該当するとみるのが相当である。
 また、無償支給される原材料が、主要な原材料に該当するかどうかは、その原価構成割合のみでなく、製造される製品の特性から判断して、当該原材料が主要な要因をなす部分であるかどうかにより判断することになる。
(ロ)ところで、請求人は、裏生地及び芯地材が表生地と同様に主要な原材料である旨主張する。
 しかしながら、衣服の製品特性を決定する原材料は表生地であり、裏生地及び芯地材については、表生地の持っている特性を増長あるいは補完し、衣服としての機能性を高めるために表生地に附属する形で用いられるものであり、通常、単独では衣服とはなりえず、また、機能を果たすものでないことからも、衣服製品の主要な原材料とは認められない。
 したがって、請求人は、主要な原材料として得意先から無償支給された表生地と自己調達した裏生地、芯地材及び本件副資材の補助材料を用いて縫製を行いその対価を得ていることになるから、請求人の行う事業は役務の提供を行う事業であり、第四種事業に該当することは明らかである。
 なお、請求人は、主要な原材料の一つである米の無償支給を受け、大豆、麹、塩等を自己調達して味噌を製造している場合に、大豆も味噌の主要な原材料であることから、その製造行為は第三種事業に該当するとした事例をもって、本件事業も第三種事業に該当する旨併せて主張するが、消費税法上の事業区分は個別に判断すべきものであって、当該味噌の製造と同一に論ずることはできず、請求人の主張には理由がない。
(ハ)次いで、請求人は、自己調達の裏生地のみで本件下着類を製造しており、これは第三種事業に該当する旨主張するが、本件下着類は、単独の製品としてではなく、同時に縫製される外衣と組み合わされて販売されることが前提となっていることから、上衣の付属品と考えられる。
 また、仮に、本件下着類の製造が役務の提供を行う事業に該当しないとしても、請求人は、課税資産の譲渡等に係る各取引を事業の種類ごとに区分して記帳していないことから、本件下着類の製造は、消費税法施行令第57条第4項第3号の規定により、第四種事業に該当することになる。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分はいずれも適法であり、また、国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った本件賦課決定処分はいずれも適法である。

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3 判断

(1)本件更正処分及び本件通知処分について

 本件審査請求の争点は、本件事業が、第三種事業に該当するか否かにあるので、以下審理する。
イ 事実関係
(イ)争いのない事実
 次のことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所が調査したところによってもその事実が認められる。
A 請求人は、平成元年2月23日に消費税課税事業者届出書及び消費税簡易課税制度選択届出書を提出しており、また、本件各課税期間とも、その基準期間における課税売上高が4億円を超えていない。
 なお、請求人は、課税資産の譲渡等に係る各取引を事業の種類ごとに区分して記帳していない。
B 請求人の得意先は、主としてJ社であり、また、製品の大部分はプレタポルテである。
C 本件事業におけるプレタポルテの受注から納品までの流れは次のとおりである。
(A)得意先から指図書、見積書、付属仕様書及び型紙が送付され、表生地のみが無償支給される。
(B)裏生地、芯地材、本件副資材は、付属仕様書の指定に基づき請求人が仕入れる。
(C)送付されてきた型紙を基に裁断用の型紙を作り、それを用いて、表生地、裏生地及び芯地材の裁断を行う。
(D)付属仕様書の指示に従い表生地と芯地材を接着して一枚の生地のようにし、周囲をテーピングする。
(E)ミシンを使って生地を縫製する。
 なお、裏生地は滑りやすいため別に縫製し、後で表生地と合わせて縫製する。
(F)最後にプレスして、出来上がった製品に値札、タッグ等を取り付け、検針機にかけて検品した後、ハンガーに吊るし、ポリ袋をかける。
(G)完成した製品を得意先の指示する場所に納品する。
D 請求人は、特定のシーズンにおいて、自己調達した裏生地等により、同時に縫製される外衣の付属品として本件下着類を製造している。
E 得意先からの見積書及び付属仕様書によれば、裏生地及び芯地材は副資材として取り扱われている。
F 本件事業は、産業分類によると、大分類では「製造業」、中分類では「衣服・その他の繊維製品製造業」、小分類では「織物製(不織布製及びレース製を含む)外衣・シャツ製造業(和式を除く)」及び「下着類製造業」に該当する。
(ロ)認定した事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
A 請求人が製造する標準的なプレタポルテの表生地及び裏生地の原価の合計に対する裏生地の原価の占める平均的割合は、ドレスが23.8パーセント、ジャケットが29.7パーセント、スーツが22.5パーセント及びブラウスとタンクトップの組み合わされたものは28.1パーセントである。
B 芯地材は、衣服の襟及びそで口等の芯にして衣服の型崩れを防ぎ、部分的に膨らみを与える等のために使用されている。
C 請求人の各課税期間における決算書によると、製造原価に対する原材料費(裏生地、芯地材、本件副資材)、労務費及び外注費の割合は、平成5年3月期は原材料費16.2パーセント、労務費60.5パーセント、外注費1.9パーセント、平成6年3月期は原材料費17.9パーセント、労務費59.1パーセント、外注費1.9パーセント及び平成7年3月期は原材料費15.4パーセント、労務費43.2パーセント、外注費14.6パーセントである。
D 請求人の各課税期間の消費税額は、仮に、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》に規定する課税仕入れに係る消費税額を控除する方法(以下「本則課税」という。)により計算すると、平成5年3月期が3,684,700円、平成6年3月期が2,632,500円、平成7年3月期が3,228,000円であり、また、本件事業を第三種事業又は第四種事業として、消費税法第37条第1項及び同法施行令第57条第1項第3号に規定する割合を適用して計算すると、平成5年3月期がそれぞれ1,702,900円、2,270,500円、平成6年3月期がそれぞれ1,330,400円、1,773,900円、平成7年3月期がそれぞれ1,617,100円、2,156,200円である。
ロ 簡易課税制度上の事業区分
(イ)ところで、簡易課税制度上の事業区は、消費税法施行令第57条第5項において、第一種事業とは卸売業、第二種事業とは小売業、第三種事業とは農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業(製造した棚卸資産を小売する事業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業の各事業(ただし、第一種事業及び第二種事業に該当するもの並びに役務の提供を行う事業を除く。)、第四種事業とは、第一種事業から第三種事業に掲げる事業以外の事業をいう旨規定している。
なお、第三種事業に該当するとされている上記農業から水道業までの各事業の範囲は、おおむね産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定することが相当である。
(ロ)ここで、役務の提供を行う事業に該当するか否かの判定は、製造業者が原材料の無償支給を受けて製造を行う場合、その支給される原材料が主要な原材料に該当するか否かで判断し、当該支給される原材料が主要な原材料である場合には、役務の提供を行う事業に該当するものと解すべきである。
 したがって、製造業者が、自ら補助資材等を調達している場合であっても、主要な原材料の無償支給を受けている場合は、第四種事業に該当するものと判断される。
 ただし、主要な原材料が複数併列して必要とされるような製品の製造にあっては、製造業者が主要な原材料の一部の無償支給を受けている場合であっても、補助資材等のほかに、自らの計算において他の主要な原材料を調達している場合は、第三種事業に該当すると解する余地もある。
 また、原材料が、主要な原材料に該当するかどうかの判定は、原価構成割合のみによるものではなく、製造される製品の特性から判断して、主要な要因をなす部分であるかにより行うべきであり、製造される製品ごとに個別に判断するものと解される。
(ハ)次いで、消費税法施行令第57条第4項第3号においては、「第四種事業と第四種事業以外の事業とを営む事業者が当該課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等で、第四種事業に係るものであるか第四種事業以外の事業に係るものであるかの区分をしていないものがある場合には、当該区分していない課税資産の譲渡等は、第四種事業に係るものとする」と規定している。
ハ 本件更正処分及び本件通知処分の適否
 前記イ及び上記ロに基づいて、本件更正処分及び本件通知処分の適否を判断すると、次のとおりである。
(イ)本件事業について
A 請求人は、(a)製造する婦人服はプレタポルテであり、素材特性や副資材の効用が十分に発揮されるよう、工場設備及び機械設備の保有、優れた人材の配置並びに技術力、生産力の向上を図り、生産者機能を充実させていること、(b)無償支給された表生地並びに自己の計算において調達した裏生地、芯地材及び本件副資材を総合的、かつ、合理的に組み合わせ、生産者機能を駆使してプレタポルテを製造していることを理由に、本件事業は、産業分類上は製造業に分類され第三種事業に該当する旨主張する。
B しかしながら、本件事業が第三種事業である製造業に該当するためには、上記ロの(イ)に記載のとおり、当該事業が産業分類上の製造業に該当し、かつ、役務の提供を行う事業に該当しないことが要件とされるのであって、設備、生産能力等の生産者機能や製品の付加価値の多寡などによって判断されるべきものではないから、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
(ロ)自己調達の原材料について
A 次いで、請求人は、プレタポルテの製造に当たり自己調達している裏生地及び芯地材について、(a)裏生地は、高級化や多様化の美の実現に製品特性を発揮するものであり、表生地のみでは得られない機能を補っていること、(b)芯地材は、伸縮性やドレープ性に富み、薄手の材料にフィットしやすく、ソフトな風合いを保持するものであることから、いずれもプレタポルテの主要な原材料に当たるので、役務の提供を行う事業に該当しない旨主張する。
B しかしながら、次のとおり、プレタポルテの製品特性を決定する原材料は表生地であり、裏生地及び芯地材は、あくまでも表生地に付属するものであって、プレタポルテの主要な原材料である表生地の持っている特性を増補又は補完することにより衣服としての価値観、機能性を高めるものであるに過ぎないから、裏生地及び芯地材は衣服の主要な原材料であると認めることができない。
(A)需要者がプレタポルテの購入に当たって選定要素とするのは、表生地の色、質及びデザイン等の特性並びに価値観であり、裏生地は第二次的選定要素である。
(B)前記イの(ロ)のAのとおり、表生地及び裏生地の原価の合計に対する裏生地の原価の平均割合は、いずれも30パーセント以下であることからみても、表生地に比べて裏生地の原価構成割合は低く、裏生地が衣服の主要な部分を占めているとは認められない。
(C)前記イの(ロ)のBのとおり、芯地材は、衣服の型崩れを防ぐこと及び部分的に膨らみをつけること等のために、部分的な補助資材として使用されている。
(D)前記イの(イ)のEのとおり、裏生地及び芯地材は、副資材として取り扱われている。
C なお、請求人は、味噌の製造業者が味噌の主要な原材料の一つである米の無償支給を受け、大豆、麹、塩等を自己調達して味噌を製造した場合に、大豆は味噌の主要な原材料であるから、当該製造が第三種事業に該当するとされていることをもって、本件事業が味噌製造業者と何ら異なることがなく第三種事業に該当する旨主張するが、上記Bのとおり、請求人が自己調達する資材は、いずれも主要な原材料と認められないから、この点についての請求人の主張にはそもそも理由がない。
(ハ)第三種事業の該否について
A したがって、請求人のプレタポルテの製造は、上記ロの(ロ)及び上記(ロ)のBからして、役務の提供を行う事業に該当し、第三種事業に該当しないとするのが相当であり、このことは、次のことからしても明白である。
(A)前記イの(イ)のCに記載のとおり、請求人の製造するプレタポルテは、得意先からの指図書等によって、製品の仕様が細かく指示される上に、裏生地、芯地材及び本件副資材にいたるまで特定物品の購入を指定されており、請求人の恣意性、創造性の働く余地がなく、また、縫製加工上のリスクは負うとしても、製品販売上のリスクを負うとは認め難い。
(B)請求人の決算書によると、本件各課税期間の製造原価に占める原材料費、労務費及び外注費の平均割合は、前記イの(ロ)のCにより平均すれば、原材料費が16.5パーセント、労務費が54.3パーセント及び外注費が6.1パーセントであり、原材料費は極めて少なく、製造原価の主要部分を占めるのは労務費であるから、本件事業は、他の者の主要な原材料に加工等を施して、当該加工等の対価を得ている事業であるといえる。
(C)前記イの(ロ)のDに記載のとおり、本件事業の消費税額は、第三種事業として計算した消費税額に比べると、第四種事業として計算した消費税額の方が、本則課税によって計算した消費税額により近似しており、開差が少ないことから、課税の公平の観点からしても、本件事業は第四種事業とみるのが相当である。
B なお、請求人は、自己調達の裏生地等の原材料のみで製造する本件下着類もあると主張する。
 確かに、自己調達の原材料のみで製造する行為は第三種事業に該当するが、(a)本件事業のうち大部分を占めるプレタポルテの製造が、上記Aのとおり、第四種事業に該当すること、(b)請求人は、前記イの(イ)のAに記載のとおり、課税資産の譲渡等に係る各取引を事業の種類ごとに区分して記帳していないことから、上記ロの(ハ)により、本件事業のすべてが第四種事業に該当することになる。
(ニ)以上のとおり、本件事業は第三種事業には該当せず、第四種事業に該当することになるから、本件更正処分及び本件通知処分は、いずれも適法である。

(2)本件賦課決定処分について

 以上のとおり、本件更正処分は適法であり、その更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った本件賦課決定処分は適法である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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