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(平9.12.15裁決、裁決事例集No.54 1頁)

《裁決書(抄)》

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、異議審理庁の平成9年8月6日付の原処分に対する異議申立てについての異議決定書の謄本(以下「本件異議決定書謄本」という。)を同月29日に受領し、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、同年9月16日に審査請求をした。
 請求人は、本件異議決定書謄本が発送された平成9年8月6日から23日後の同月29日に同謄本を受領していることから、当審判所において、受領が遅延した理由を請求人に照会したところ、(1)仕事の都合上及び過去の郵便物の抜き取りを理由に郵便規則第90条に基づく郵便物留置申込書をF郵便局に提出していたこと及び(2)本件異議決定書謄本を同日にF郵便局で受領した旨の回答がなされた。
 なお、当審判所が原処分関係書類を調査したところ、請求人はF郵便局に郵便物留置申込書を提出していたこと及び本件異議決定書謄本を平成9年8月29日に受領していることが認められる。
 ところで、国税通則法第77条《不服申立期間》第2項において審査請求をすることができる期間は、「異議決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1月以内にしなければならない」旨規定されており、「送達があった日」とは、書類が社会通念上送達を受けるべき者の支配下に入りその内容を了知し得る状態になったと認められる時をいうものと解されており、送達を受けるべき者が現実に書類の内容を了知していなくても送達の効力が生じることとなる。
 つぎに、郵便規則第90条によれば、郵便物の受取人があらかじめ当該配達を受け持つ郵便局に旅行その他の事由によって不在となる期間(30日を限度とする。)を届け出ている場合には、その期間の郵便物を当該郵便局に留め置くことになっているものの、受取人が当該郵便局に出向けばいつでも自由に受領できる取扱いとなっており、当該郵便局に郵便物が留め置きされた時以後、その郵便物は受取人がいつでも受領可能であることからして、受取人は当該郵便物をその支配下に置き、その内容を了知し得る状態になったものと認められるから、郵便物が郵便局に留め置かれた時に送達の効力が生じるものと解される。
 これを本件についてみると、本件異議決定書謄本は、平成9年8月6日に発送されており、また、請求人の住所地は、異議審理庁の所在地と同じP市内であることから、社会通念上遅くとも発送の日の翌々日である同月8日にはF郵便局に送達され、かつ、請求人は、F郵便局に郵便物留置申込書を提出していたことから同日に留め置かれたものと推認される。
 そうすると、本件異議決定書謄本は、平成9年8月8日までに請求人に送達されたことになるから、本件審査請求をすることができる期間は、同日の翌日から起算して1月以内の同年9月8日までとなり、また、この間に審査請求をすることができなかったことについて国税通則法第77条第3項に規定する天災その他やむを得ない理由も認められない。
 したがって、本件審査請求は不服申立てのできる期限を経過した後の平成9年9月16日になされているから、不適法なものである。

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