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(平10.10.8裁決、裁決事例集No.56 251頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、パチンコ業を営む同族会社であるが、平成5年3月1日から平成6年2月28日まで、平成6年3月1日から平成7年2月28日まで及び平成7年3月1日から平成8年2月29日までの各事業年度(以下、順次「平成6年2月期」、「平成7年2月期」及び「平成8年2月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税並びに平成5年3月1日から平成6年2月28日までの課税事業年度(以下「本件課税事業年度」という。)の法人特別税について、審査請求をするに至るまでの経緯は、別表1のとおりである。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成9年6月20日に審査請求をした。

2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 法人税について
(イ)更正処分について
 請求人は、平成5年2月、P市T町六丁目36番地に所在の自走式立体駐車場設備(以下「本件駐車場設備」という。)を取得し、本件駐車場設備の耐用年数を平成6年2月期以前については28年、平成7年2月期及び平成8年2月期については15年として減価償却費を計算し損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、原処分庁は、本件駐車場設備は減価償却資産の耐用年数等に関する大蔵省令(平成10年3月31日大蔵省令第50号による改正前のものをいい、以下「耐用年数省令」という。)別表第一に掲げる「構築物」の「金属造のもの(前掲のものを除く。)」の「その他のもの」に該当し、耐用年数は45年であるとして、これにより計算した償却限度額を越える金額は償却超過額であるから、当該償却超過額は、損金の額に算入できないとして本件各事業年度の法人税の更正処分をした。
A ところで、減価償却資産の耐用年数は、本来その資産の物理的な意味での使用可能期間を表すものであるから、本件駐車場設備が耐用年数省令別表第一の細目に特掲されていないからといって、一律に「その他のもの」の範ちゅうに含めてしまうのは、耐用年数の本来の意味を表しているとはいえない。
 したがって、本件駐車場設備については、耐用年数省令別表第一に掲げる構造又は用途の「構築物」に元来、特掲すべき資産である。
 なお、原処分庁は、耐用年数の適用等に関する取扱通達(以下「耐用年数通達」という。)1―1―9《「構築物」又は「器具及び備品」で特掲されていないものの耐用年数》の存在が耐用年数省令の不備を補完しているとしているが、本件駐車場設備の類似資産が見当たらないので確認をすることができず、また、どのような事例が認められるのかも全く確認できないので、耐用年数通達の存在が耐用年数省令の不備を補完しているとはいえない。
B 原処分庁が認定した本件駐車場設備に係る耐用年数には、次のとおり誤りがある。
 本件駐車場設備は、(1)屋外露天式であること、(2)自動車の排気ガスと空気中の浮遊じんとの結合により劣化が進みその使用可能期間が法定耐用年数に比べて著しく短くなることから、請求人は、これらを理由として平成9年1月22日付で耐用年数を15年とする耐用年数の短縮承認申請をQ国税局長に対して行い、同年2月27日付の耐用年数の短縮承認申請の承認通知書(以下「本件承認通知書」という。)を受け取り承認されているところではあるが、そもそも本件駐車場設備は次のとおり劣化が早いと認められるものであり、本来、特別な使用状況等を理由として耐用年数の短縮承認申請をし、承認を受ける制度には馴染まない減価償却資産であることから、当該制度を経由することなく耐用年数を15年として認めるべき資産である。
(A)本件駐車場設備は、屋外露天式で雨水にさらされるにもかかわらず、一般の建築物のように構造体(柱、はり、床下地鉄板及び接合ボルト等)そのものに仕上げ等の保護がないため、2階の床(1階部分屋根)のコンクリートのクラックから雨水が入り、2階の床部分の下地の鉄板、床及びはり等の腐食が早いこと。
(B)構造体及び手すり等の塗装に、少しの傷があっても風雨により腐食が進むこと。
(C)自動車の排気ガスにより塗装の劣化が早まること。
(D)自動車の接触により、鉄骨の柱が傷つき、構造的に弱くなること。
C 請求人は、平成6年にS区役所(以下「S区役所」という。)から本件駐車場設備は償却資産として固定資産税の対象となる旨の指摘を受け、その際、S区役所の実地調査により本件駐車場設備の耐用年数は、耐用年数省令別表第二の339の3の「機械式駐車設備」の15年を準用するとの回答を得たので、平成7年2月期以降の法人税の確定申告においても、本件駐車場設備の耐用年数を15年としたものである。
 なお、S区役所はその後も引き続き、本件駐車場設備の固定資産税に係る耐用年数を15年として課税していることから、法人税においても、本件駐車場設備の耐用年数を15年とすべきである。
D 請求人は、平成4年3月1日から平成5年2月28日までの事業年度(以下「平成5年2月期」という。)及び平成6年2月期においては、本件駐車場設備の耐用年数を耐用年数省令別表第一の「建物」の「金属造のもの(骨格材の肉厚が3ミリメートルを超え4ミリメートル以下のものに限る。)」の「車庫用のもの」の28年として減価償却費を計算し損金の額に算入して法人税の確定申告をしたが、請求人に対し平成5年9月ころに行われた平成5年2月期に係る税務調査(以下「前回の調査」という。)において、原処分庁は本件駐車場設備の耐用年数について何ら指摘をすることなく、容認してきたものであるから、それを変更してなされた更正処分は不当である。
(ロ)過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記(イ)のとおり、本件各事業年度の更正処分は違法であるから、これらの全部の取消しに伴い、本件各事業年度の過少申告加算税の賦課決定処分も取り消すべきである。
ロ 法人特別税の更正処分について
 上記イの(イ)のとおり、平成6年2月期の法人税の更正処分は違法であるから、その全部の取消しに伴い、本件課税事業年度の法人特別税の更正処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 法人税について
(イ)更正処分について
A 本件駐車場設備については、次の事実が認められる。
(A)請求人が所有する設計図によると、1階の天井部分は2階の床がむき出しで壁はなく、2階部分は壁、屋根ともにない構造であり、主要構造である柱には鋼鉄製のコラムが使用され、はりにはH鋼が使われていること。
(B)本件駐車場設備は、請求人が経営するパチンコ店舗に隣接し、来店客用の駐車場として使用されていること。
(C)請求人が所有する総勘定元帳及びP市W町6丁目26番地に所在するK株式会社(以下「K社」という。)との工事請負契約書並びに法人税の確定申告書に添付されている「固定資産台帳、減価償却費明細書」によると、本件駐車場設備の取得価額は平成5年2月期に計上された79,000,000円及び平成6年2月期に計上された9,380,000円であり、ともに建物として会計処理されており、その耐用年数は、平成5年2月期及び平成6年2月期は28年、平成7年2月期及び平成8年2月期は15年となっていること。
(D)請求人は、平成8年2月29日まで、本件駐車場設備に係る耐用年数の短縮承認申請書を提出していないこと。
B 請求人は、減価償却資産の耐用年数は、本来その資産の物理的な使用可能期間を表すものであり、本件駐車場設備が耐用年数省令に特掲されていないからといって、一律に「細目」の欄の「その他のもの」の範ちゅうに含めることは、耐用年数の本来の意味を表しているとはいえず、また、本件駐車場設備は、構造及び使用状況からすると劣化が早いと認められるから耐用年数は15年が相当であり、更にこれらの構造からすると、本件駐車場設備については耐用年数省令別表第一に掲げる「構築物」にもともと特掲すべきである旨主張する。
(A)しかしながら、耐用年数通達1―2―1《建物の構造の判定》の定めによれば、建物を構造により区分する場合において、どの構造に属するかはその主要柱、耐力壁又ははり等その建物の主要部分により判定することとなっているが、上記Aの(A)の事実によれば、本件駐車場設備は吹き抜け構造となっており、壁もなく外界と隔絶した構造とはなっていないので、耐用年数省令別表第一に掲げる「建物」には該当しない。
(B)耐用年数通達1―1―9によれば、「構築物」又は「器具及び備品」で細目が特掲されていないもののうちに、当該構築物等と「構造又は用途」及び使用状況が類似している別表第一に特掲されている構築物等がある場合には、納税地の所轄税務署長の確認を受けて、当該特掲されている構築物等の耐用年数を適用することができることとなっているが、本件駐車場設備について所轄税務署長の確認を受けた事実は認められない。
(C)耐用年数通達1―3―1《構築物の耐用年数の適用》によれば、構築物については、まず、その用途により判定し、用途の特掲されていない構築物については、その構造の異なるごとに判定することとされているが、本件駐車場設備の場合、耐用年数省令別表第一に掲げる構築物の用途に駐車場用のものの掲載はなく、その構造により判定することとなる。
(D)そうすると、本件駐車場設備の主要構造は鋼材であることから、耐用年数省令別表第一に掲げる「構築物」の「金属造のもの(前掲のものを除く。)」の「その他のもの」に該当し、法定耐用年数は45年となる。
(E)なお、法人税法施行令第57条《耐用年数の短縮》第1項によれば、当該資産がその使用される場所の状況に基因して著しく腐しょくしたことなどにより、その使用可能期間が法定耐用年数に比して著しく短くなった場合等、その該当する減価償却資産の使用可能期間を基礎としてその償却限度額を計算することについて、納税地の所轄税務署長を経由して所轄国税局長の承認を受けたときは、当該資産のその承認を受けた日の属する事業年度以後の各事業年度の償却限度額の計算については、その承認に係る使用可能期間をもって大蔵省令で定める耐用年数とみなすこととされている。
 しかしながら、請求人は、平成9年1月22日にQ国税局長に対して本件駐車場設備に係る耐用年数の短縮の承認申請書を提出しており、平成8年2月29日までにその耐用年数を15年とする承認を受けた事実は認められない。
 以上のことから、本件駐車場設備の本件各事業年度の適用耐用年数は45年となり、請求人の主張には理由がない。
C 請求人は、S区役所の実地調査により、本件駐車場設備の耐用年数について、耐用年数省令別表第二の339の3の「機械式駐車設備」を準用し、耐用年数を15年とする指導を受けてきたものであることから、それを変更してなされた更正処分は不当である旨主張する。
(A)しかしながら、耐用年数通達1―3―2《構築物と機械及び装置の区分》によれば、生産工程の一部としての機能を有しているものは、構築物に該当せず、機械及び装置に該当するものとされている。
 本件駐車場設備は、自走式立体駐車場であり生産工程の一部としての機能を有していないこと、また、機械及び装置により車両等を搬送するものでないことから耐用年数省令別表第二の339の3の「機械式駐車設備」を適用することはできない。
(B)また、S区役所が本件駐車場設備の耐用年数を15年であるとの取扱いをしたことについては、固定資産税の課税上のことであり、そのことが法人税における減価償却費の計算上、何ら影響を与えるものではない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
D 請求人は、前回の調査において、本件駐車場設備の耐用年数について何ら指摘を受けることなく容認されてきたものであることから、それを変更してなされた更正処分は不当である旨主張する。
 しかしながら、前回の調査において減価償却資産の耐用年数の是正が求められなくても、その減価償却資産の耐用年数に誤りがあることが明らかになったときには、その段階で是正を求めることは何ら不当なこととはいえない。
 なお、前回の調査において、本件駐車場設備の耐用年数について指導し、請求人の処理を積極的に容認した事実も認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
E 本件各事業年度の所得金額
(A)平成6年2月期
 請求人は、本件駐車場設備に係る耐用年数を28年として、減価償却費6,817,429円を損金の額に計上している。
 しかしながら、本件駐車場設備は、耐用年数省令別表第一に掲げる「構築物」の「金属造のもの(前掲のものを除く。)」の「その他のもの」に該当し、法定耐用年数は45年となり、これにより計算した償却限度額は4,314,828円となるから、償却限度額を超える金額2,502,601円は、損金の額に算入されないことになる。
 したがって、請求人の所得金額は、平成7年8月11日提出の法人税の修正申告書の所得金額130,132,470円に、上記の減価償却費の償却超過額2,502,601円を加算した金額132,635,071円となる。
(B)平成7年2月期
a 減価償却費の償却超過額
 請求人は、本件駐車場設備に係る耐用年数を15年として、減価償却費11,508,032円を損金の額に計上している。
 しかしながら、本件駐車場設備は、耐用年数省令別表第一に掲げる「構築物」の「金属造のもの(前掲のものを除く。)」の「その他のもの」に該当し、法定耐用年数は45年である。
 これにより計算した償却限度額は4,177,254円となり、償却限度額を越える金額7,330,778円は、損金の額に算入されないことになる。
b 事業税の損金算入額
 平成6年2月期の法人税の更正処分による増加所得金額に係る事業税315,400円を損金の額に算入することになる。
c 所得金額
 請求人の所得金額は、平成8年11月21日提出の法人税の修正申告書の所得金額193,925,562円に、上記aの金額を加算し、上記bの金額を減算した200,940,940円となる。
(C)平成8年2月期
a 減価償却費の償却超過額
 請求人は、本件駐車場設備に係る耐用年数を15年として、減価償却費9,873,892円を損金の額に計上している。
 しかしながら、本件駐車場設備は、耐用年数省令別表第一に掲げる「構築物」の「金属造のもの(前掲のものを除く。)」の「その他のもの」に該当し、法定耐用年数は45年である。
 これにより計算した償却限度額は3,968,391円となり、償却限度額を越える金額5,905,501円は、損金の額に算入されないことになる。
b 事業税の損金算入額
 平成7年2月期の法人税の更正処分による増加所得金額に係る事業税875,500円を損金の額に算入することになる。
c 法人税等の還付金の益金不算入額
 雑収入に計上している法人税等の還付金50,500円は、法人税法第26条《還付金等の益金不算入》の規定により、益金の額に算入されないことになる。
d 納税充当金から支出した事業税の損金算入額
 納税充当金から支出した事業税16,570,600円のうち16,555,000円を損金の額に算入しているが、差額15,600円は損金の額に算入されていないので、損金の額に算入することになる。
e 寄付金に係る損金不算入額の過大額
 請求人の平成8年11月21日提出の法人税の修正申告書を基に上記aの金額を寄付金支出前の所得金額に加算して、上記bないしdの金額を減算して寄付金の損金不算入額を計算すると、寄付金の損金算入限度額が62,049円増加するので、当該金額を損金の額に算入することになる。
f 所得金額
 請求人の所得金額は、平成8年11月21日提出の法人税の修正申告書の所得金額79,936,263円に、上記aの金額を加算して、上記のbないしeの金額を減算した84,838,115円となる。
(D)上記(A)ないし(C)の所得金額は、更正処分に係る所得金額と同額であるから、本件各事業年度の法人税の更正処分は適法である。
(ロ)過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記(イ)のとおり、法人税の本件各事業年度の更正処分は適法であり、かつ、更正処分により増加した納付すべき税額の計算の基礎となった事実には、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められず、また、過少申告加算税の額は、更正処分により増加した納付すべき税額を基に、同条第1項の規定に従いそれぞれ正しく計算されている。
ロ 法人特別税の更正処分について
 上記イの(イ)のとおり、法人税の更正処分は適法であり、法人税の更正処分に伴い、請求人の法人特別税の本件課税事業年度の課税標準法人税額は、その基準法人税額48,978,125円から定額控除税額4,000,000円を控除した44,978,000円(1,000円未満の端数切捨て)となり、法人特別税の更正処分は正しく計算されている。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件各事業年度の本件駐車場設備に係る適用耐用年数の判定にあるので、以下審理する。

(1)法人税について

イ 更正処分について
(イ)本件駐車場設備に係る次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、また、請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所が実地に調査したところによってもその事実が認められる。
A 本件駐車場設備は、請求人が経営するパチンコ店舗の西側に隣接するP市T町六丁目36番地に設置され、来店客用の駐車場として使用されていること。
B 本件駐車場設備の取得価額は、平成5年2月の本工事による取得価額79,000,000円と、同年5月の追加工事による取得価額9,380,000円との合計額88,380,000円であること。
 また、本件駐車場設備は、それぞれの取得の時期から事業の用に供されていること。
C 本件駐車場設備は、P市Y町二丁目2番33号に所在のM株式会社が製作したものを、K社が施工をしたものであること。
D 本件駐車場設備の規模、構造及び使用状況は、次のとおりであること。
(A)土地に定着する自走式立体駐車場設備である。
(B)駐車場全体は、屋根、壁ともなく外界とは隔絶しておらず、吹き抜け構造で2階部分の床がむき出しとなっており、屋外露天式である。
(C)本件の構造は、基礎部分、鉄骨製の主体部分、床のコンクリート敷部分、スロープ部分で構成されている。
(D)本件の主要部分は、鉄骨(鋼材)のH鋼を組み合わせたもので、鉄骨部材のすべてについて亜鉛メッキが施されている。
(E)1階及び2階の床部分は、コンクリート敷である。
(F)階段は、本件の鉄骨部分とボルトで連結してあり、本体と一体となっている。
(G)転落防止柵、電気照明設備、消化設備、確認ミラーは本体と一体となっている。
(H)2階部分へ駐車する場合は、車両がスロープを利用して移動する構造となっている。
(I)自走式の立体駐車場であり機械及び装置により車両等を搬送するものではなく、また、生産工程の一部としての機能も有していない。
(J)常に車の排気ガスや空気中の浮遊じんにさらされた状態で使用している。
(K)駐車可能台数は、1階部分が113台、2階部分が113台の合計226台である。
E 請求人は、本件駐車場設備の耐用年数を平成6年2月期は、耐用年数省令別表第一に掲げる「建物」の「金属造のもの(骨格材の肉厚が3ミリメートルを超え4ミリメートル以下のものに限る。)」の「車庫用のもの」に該当するとして28年、また、平成7年2月期及び平成8年2月期には、耐用年数省令別表第二の339の3の「機械式駐車設備」に該当するとして15年で確定申告をしていること。
 また、請求人が、本件各事業年度の本件駐車場設備に係る減価償却費として損金経理をした金額は、別表2の「損金算入減価償却費(2)」欄のとおり、平成6年2月期が6,817,429円、平成7年2月期が11,508,032円、平成8年2月期が9,873,892円であること。
F 原処分庁は、本件駐車場設備を耐用年数省令別表第一に掲げる「構築物」の「金属造のもの(前掲以外のものを除く。)」の「その他のもの」に該当するとして、本件各事業年度について本件駐車場設備の耐用年数を45年として更正処分をしていること。
G 請求人は、本件駐車場設備を取得してから平成8年2月29日までの間、Q国税局長に対して、法人税法施行令第57条第2項に基づき、本件駐車場設備に係る耐用年数の短縮の承認申請書を提出し、その耐用年数の短縮承認申請の承認を受けた事実は認められないこと。
H S区役所は、本件駐車場設備に係る固定資産税の償却資産の課税に際して、耐用年数を15年としていること。
I 請求人は、更正処分があった後の平成9年1月22日に、Q国税局長に対して、本件駐車場設備は、「屋外露天式であり、車の排気ガスと空気中の浮遊じんとの結合による影響で、その使用可能期間が法定耐用年数に比して著しく短いこと。」などを理由として、法人税法施行令第57条第2項の規定に基づき法定耐用定数45年のところ、15年とする耐用年数の短縮承認申請をし、本件承認通知書を受け取りその承認を受けていること。
J 原処分庁は、本件の調査を実施する前の平成5年9月28日に、本件駐車場設備を取得した事業年度である平成5年2月期についても税務調査を実施していること。
(ロ)当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
A 本件駐車場設備と類似する自走式立体駐車場設備に関する減価償却資産の分類及び耐用年数について、各国税局が過去において取扱いをした例によれば、自走式立体駐車場設備は、耐用年数省令別表第一の「構築物」の「金属造のもの(前掲のものを除く。)」の「その他のもの」に該当し、法定耐用年数は45年であると判定しており、「耐用年数の短縮の承認申請書」を納税地の所轄国税局長に提出をして、法定耐用年数を15年として承認されている実例があること。
B 固定資産税の償却資産に係る耐用年数は、地方税法第388条《固定資産税に係る自治大臣の任務》の規定に定めるところの固定資産評価基準の第3章第1節8耐用年数において、国税と同様に耐用年数省令によることとされていること。
C 固定資産税の課税における耐用年数の短縮手続は、国税局長からの「耐用年数の短縮承認申請の承認通知書」の写しを申告書等に添付することによって、国税と同様の耐用年数とすることとされていること。
D 上記(イ)のJのとおり、確かに税務調査は実施されているが、同調査において、調査担当職員が積極的に本件駐車場設備に係る耐用年数を28年と容認した事実は認められないこと。
(ハ)以上の事実等に基づいて判断すると、次のとおりである。
A 請求人は、本件駐車場設備は屋外露天式で常に車の排気ガスや空気中の浮遊じんにさらされた状態で使用するため、使用可能期間が法定耐用年数に比べ著しく短くなることから、法人税法施行令第57条に基づく耐用年数の短縮承認申請をすれば、法定耐用年数の短縮が認められるが、本来本件駐車場設備は特別な使用状況等を理由として耐用年数の短縮承認申請をし、承認を受ける制度には馴染まない減価償却資産であるから、当該制度を経由することなく、本件駐車場設備の耐用年数を15年として認めるべきである旨主張する。
(A)ところで、有形固定資産の多くは、使用又は時の経過によって、その本件及び機能を消耗していくものであるが、このような資産の取得に要した費用を、取得した会計期間又は除却した会計期間だけの費用とするのは合理的ではない。
 すなわち、このような有形固定資産の取得に要した費用は、その資産の使用によって得た各会計期間の収益に対応する費用を計算し、その資産を使用する各会計期間に配分するのが合理的である。
 このように、有形固定資産の取得費用を、それが使用できる各会計期間に配分するとともに、その配分額だけ当該資産の繰越価額を減じていく手続を会計学上減価償却と呼んでおり、使用又は時の経過によりその価値が減少するため、減価償却の方法によってそれにかかわる費用を配分しなければならない資産を、減価償却資産と称している。
 そして、減価償却は、減価償却資産の取得価額を毎期計画的に、規則的に費用化する手続であるが、その減価償却の基本は、法人税関係については、法人税法第31条《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》に規定されており、その減価償却費の計算方法等についての具体的な内容はすべて政令等に定められている。
 よって、現行の耐用年数省令の各別表に掲げる法定耐用年数は、減価償却資産の特質を踏まえながら次の考え方を基準として規定されていると解されている。
a 減価償却の制度は、税法に減価償却計算に必要な耐用年数、残存価額、償却方法及びその手続について詳細な規定を設けているが、特に耐用年数は、千差万別の器具備品等についてそれぞれ個々各別にこれを定めることは不可能であるから、一定の基準の下に画一的に定められている。
 これは、適正な課税所得を計算して課税の公平を図るためのものであるから、減価償却資産の耐用年数や残存価額を独自に見積もることは認められておらず、また、減価償却の方法は、あらかじめ選定して届出を要し、その届け出た償却方法を変更する場合には税務署長の承認が必要であるとされている。
b また、法定耐用年数は、通常の維持補修を行うとした場合の通常の効用持続年数、つまり、通常の維持補修下での物理的使用可能期間を想定した考え方を基に規定されており、その効用持続年数は、減価償却資産に原則として通常考えられる維持補修を加える場合において、その減価償却資産の本来の用途及び用法により、現に通常予定される効果を挙げることができる年数とされている。
c しかしながら、個別の減価償却資産の材質、製作方法、使用場所等が著しく異なる等のため、法定耐用年数と比較してその耐用年数が著しく短く、法定耐用年数によることが実情に合致せず不適当であるときには、別途耐用年数の短縮等の制度によって解決を図ることとされ、法人税法施行令第57条はその旨の規定を定めるとともに、この制度を適用する場合には、事前に所轄国税局長の承認を受ける必要があるとしている。
(B)法人税法上の減価償却資産の範囲は、法人税法施行令第13条《減価償却資産の範囲》において、資産の種類に応じ具体的に規定されており、また、耐用年数省令別表第一には、建物、建物附属設備、構築物、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品について、それぞれ種類、構造又は用途、細目の異なるごとに耐用年数が定められている。
 なお、法人税法施行令第13条第2号には、ドック、橋、岸壁、さん橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地に定着する土木設備又は工作物が構築物である旨規定されている。
(C)そうすると、本件駐車場設備は上記(イ)のDの事実を上記(B)に照らして判断すると、耐用年数省令別表第一の「構築物」の「金属造のもの(前掲のものを除く。)」に該当し、その細目が特掲されていない資産については、「その他のもの」に該当するとして取り扱うことになるから、本件駐車場設備の細目は「その他のもの」に該当することになり、本件駐車場設備の法定耐用年数は45年となる。
(D)およそ租税の負担は、法律の定めるところに従って課せられるべきであり、課税の公平を確保するために法適合性が強く要請されるところ、減価償却資産の耐用年数については上記(A)で述べたとおり、耐用年数省令の別表第一ないし別表第八に定められており、減価償却はこれらいずれかの法定耐用年数を適用して計算することとされている。
 そのうえで、法人税法施行令第57条は、個別の減価償却資産について、特別な事由により法定耐用年数と比較してその耐用年数が著しく短く、法定耐用年数によることが不適当である場合にはその調整を図ることが合理的であるとし、その場合には、耐用年数の短縮承認申請とその承認を条件として法定耐用年数によることなく、承認を受けた耐用年数で減価償却を行うことを認めているものと解されている。
 したがって、法人税法施行令第57条の規定を適用して減価償却を行う場合には、所轄国税局長に対して耐用年数の短縮に係る申請を行ってその承認を受けるべきであって、これらの手続を行うことなく法定耐用年数によらない減価償却を行うことは許されないと解すべきである。
 よって、本件駐車場設備の減価償却について、耐用年数の短縮を行おうとする場合には、法人税法施行令第57条の規定に基づく申請を行い承認を受ける必要がある。
 ところで、上記(イ)のIのとおり、請求人は本件駐車場設備について、法人税法施行令第57条の規定に基づく耐用年数の短縮承認申請を、本件各事業年度の更正処分があった後の平成9年1月22日にQ国税局長に対して行っている事実が認められるものの、平成8年2月29日までに、この耐用年数の短縮承認申請をした事実が認められないことから、原処分庁が本件駐車場設備に係る耐用年数を上記(C)のとおり45年と認定したことは相当であると認められる。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
B また、請求人は、耐用年数はその資産の物理的な意味での使用可能期間を表すものであるから、本件駐車場設備が耐用年数省令別表第一の細目に特掲されていないからといって、一律に「細目」の欄の「その他のもの」に含めてしまうのは、耐用年数の本来の意味を表しているとはいえないから、本件駐車場設備を耐用年数省令別表第一に掲げる「構築物」に特掲すべきであるとし、更に、原処分庁は耐用年数通達1―1―9の存在が耐用年数省令の不備を補完しているものであるとしているが、当該通達の存在が耐用年数省令の不備を補完しているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、当審判所は、原処分庁が行った処分が法令の規定に照らして違法又は不当なものであるか否かを判断する機関であって、その処分の基となった法令等自体の適否又は合理性を判断することはその権限に属さないことであるので、請求人の主張については、当審判所の審理の限りではなく、その具体的理由を検討するまでもない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
C 請求人は、本件駐車場設備の耐用年数について、S区役所の実地調査により、耐用年数を15年とする指導を受けてきたものであるから、それを変更してなされた更正処分は不当である旨主張する。
 固定資産税の償却資産に係る耐用年数は、上記(ロ)のB及びCのとおり、国税と同様の取扱いをするものとされているところであり、両者の間に整合性が取れていることが望ましいが、S区役所が本件駐車場設備の耐用年数を15年とした取扱いをしたことは固定資産税の課税上のことであり、その取扱いが同区役所の指導によるものなのか、あるいは、請求人自身の判断によるものなのかを問うまでもなく、法人税に係る減価償却資産の耐用年数の適用の取扱いに影響を及ぼすものではない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
D 請求人は、平成5年2月期及び平成6年2月期においては、本件駐車場設備の耐用年数を28年として減価償却費を計算し損金の額に算入して法人税の確定申告をしていたが、前回の調査の際、原処分庁は本件駐車場設備の耐用年数について何ら指摘をすることなく容認してきたものであるから、それを変更してなされた更正処分は不当である旨主張する。
 しかしながら、上記Aの(D)のとおり、本件駐車場設備の法定耐用年数は45年となることが明らかであり、過去の税務調査の際において、課税上の誤りについて指摘がなかったとしても、その後の税務調査等でその誤りが明らかになった時点において、その是正を求めることは税務行政上、至極当然のことであり何ら不当であるとはいえず、前回の調査の際、原処分庁の調査担当職員が本件駐車場設備に係る耐用年数の適用誤りについて指摘をしなかったとしても、これをもって本件各事業年度の更正処分が違法となるものではない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ニ)そうすると、原処分庁が本件各事業年度の本件駐車場設備の減価償却費の計算上、耐用年数45年を適用したことは相当であり、また、本件駐車場設備に係る償却限度額の計算は正当に行われているから、本件各事業年度の事得金額は、別表2のとおりとなり、この金額は原処分庁が認定した額と同額となるから更正処分は適法である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 過少申告加算税の賦課決定処分については、本件各事業年度の更正処分は上記イのとおり適法であり、また、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定により過少申告加算税の賦課決定処分をした原処分は適法である。

(2)法人特別税の更正処分について

 法人税の更正処分は、上記(1)のイのとおり適法であるから、請求人の法人特別税の本件課税事業年度の課税標準法人税額は、原処分庁が認定したとおりの額44,978,000円となり、法人特別税の更正処分は適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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