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(平10.7.7裁決、裁決事例集No.56 411頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、パチンコ景品交換業を営む者であったが、平成6年1月1日から平成6年12月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税について、確定申告書に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、平成7年12月14日に申告した。
 M税務署長は、平成7年12月26日付で本件課税期間の消費税について、無申告加算税の額を72,000円とする賦課決定処分をした。
 その後、請求人は、平成8年3月13日に課税標準額及び納付すべき税額を次表の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求をした。

(単位 円)
項目 区分確定申告更正の請求
課税標準額3,732,370,0000
納付すべき税額487,2000

 M税務署長は、これに対し、平成8年6月28日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
 請求人は、この処分を不服として、平成8年8月15日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年11月22日付で棄却の異議決定をし、その決定書謄本を請求人に対し同月25日に送達した。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成8年12月24日に審査請求をした。
 なお、請求人は平成9年2月1日に住所をQ市T町62番地□□□201号室からP市R町24番6号へ移動したが、これに伴い、原処分庁はM税務署長からN税務署長となった。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 消費税法第6条の適用について
 請求人がパチンコ景品交換所(以下「本件交換所」という。)で行っていた景品交換に係る事業(以下「本件事業」という。)においては、パチンコ店が遊技客に金銭の請求権として特定の「もの」(この特定の「もの」とは、請求人が取り扱っていたパチンコの景品であるシャープペンシル及びコーヒー豆を指し、以下これらの景品を「本件景品」という。)を景品として提供し、請求人は、遊技客からの本件景品の提供に対し金銭を支払い、その取扱高に対してパチンコ景品回収業者のS(以下「S」という。)から一定のレートにより金銭の支払を受けるものであり、これらの金銭の差額を利得としたものである。
 この金銭の請求権を表示するものとして提供される本件景品は、初めから消費を目的としたものではなく、単に金銭の請求権の存在を証明するためのものにすぎず、本件景品は、消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの。以下同じ。)別表第一に掲げられている消費税が非課税とされるもののうち、例えば、有価証券に類するもの、支払指図、金銭債権の譲渡又は物品切手に類するものなどとその経済的効用は全く同一であり、ただ、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の規定により、パチンコ店が現金又は有価証券を賞品として提供すること及び遊技客に提供した賞品を買い取ることが禁止されているため本件景品に身代わりさせているにすぎず、このことは全国的に行われている世間公知の事実であり、請求人とSとの本件景品の取引(以下「本件取引」という。)に消費税を課すには無理がある。
 したがって、本件取引については、消費税法第6条《非課税》の規定を類推適用し、実情に即した適正な法の適用を行うべきであり、それを認めないとした原処分は違法である。
ロ 売上げの算定について
 仮に、本件取引が非課税取引でないとしても、請求人はSの取引を代行し、その取扱高により手数料を受領しているのが実態であり、請求人が本件景品を販売しているわけではないから、消費税法の適用上、請求人の売上げは手数料相当額を基礎として算定すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 異議申立てに係る調査に基づく事実
 異議申立てに係る調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)請求人は、昭和49年ころより、Sの誘いにより、本件事業を開業した旨申述していること。
(ロ)本件事業のための開業資金は、すべて請求人が出資したこと。
(ハ)請求人は、J株式会社が経営するQ市T町131所在のパチンコ店K(以下「Kパチンコ」という。)において、遊技客が取得した本件景品を、シャープペンシルについては1本1,000円で、コーヒー豆については1箱500円で現金で買い取る、いわゆるパチンコ景品交換業を営む者であること。
(ニ)請求人は、Sに対し、シャープペンシルについては1本1,006円で、コーヒー豆については1箱503円で譲渡していること。
 なお、Sは、本件取引について、請求人より本件景品を上記の金額で購入した旨記帳していること。
(ホ)Kパチンコの経営者及びその従業員との交際等は、すべて請求人の判断により行っていること。
(ヘ)請求人は、現金の盗難事故等に備え、本件交換所の現金を保険対象物とする損害保険契約を請求人名義で締結し、その保険料の支払をしていること。
(ト)請求人は、M税務署所属の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)の調査を受け、本件課税期間の消費税について、本件課税期間に係る基準期間である平成4年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「本件基準期間」という。)の課税売上高を1,089,196,200円、本件課税期間の課税標準額を3,732,370,000円及び納付すべき税額を487,200円とする期限後申告書を平成7年12月14日にM税務署長に提出したこと。
 また、本件事業の内容は、本件基準期間から本件課税期間に至るまで変化していないこと。
ロ 消費税法第6条の適用の可否について
 請求人は、本件景品は消費税が非課税とされる有価証券に類するもの、支払指図、金銭債権の譲渡及び物品切手に類するものなどと経済的効用は同一であるから、本件取引については消費税法上の非課税規定を類推適用し、実情に即した適正な法の適用を行うべきである旨主張するが、本件取引が消費税法別表第一に掲げる資産の譲渡等に該当せず、非課税とならないことは明らかである。
 上記イの事実を総合して判断すれば、本件取引は商品を譲渡する行為そのものであって、非課税取引以外の資産の譲渡等に該当するものである。
 したがって、本件取引が非課税取引に該当しないことは明らかであるから、消費税法の非課税規定の範囲を超えて本件取引を非課税とすべきであるとする請求人の主張は失当である。
ハ 売上げの算定について
(a)本件取引に当たり、本件景品の売主である請求人が「納品書」を作成していること、(b)上記イの(ニ)のとおり、買主であるSは、請求人からの本件景品の買取りを商品の仕入れとして経理していること及び(c)本件事業に係る資金のすべてを請求人が調達し、自己の責任において運用していると認められることなどから判断すると、請求人は独立した事業者として本件景品の販売を行っていると認めるのが相当であるから、請求人の売上げは本件景品の販売額の総額である。
ニ 本件通知処分の適法性について
 以上のことから、請求人の主張にはいずれも理由がなく、また、請求人は本件基準期間においても本件課税期間と同様な取引を行っていたと認められるから、本件基準期間の課税売上高は1,089,196,200円となり、3,000万円を超えるので、請求人は本件課税期間については課税事業者となる。
 この結果、本件課税期間の課税標準額及び納付すべき税額はそれぞれ3,732,370,000円及び487,200円となり、これらの金額は請求人が平成7年12月14日に提出した期限後申告書の金額と同額である。

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3 判断

 本件審査請求においては、請求人は、本件取引については消費税法第6条を類推適用して非課税取引として認めるべきである旨主張し、また、仮に非課税取引でないとしても、請求人の売上げは本件取引に係る手数料相当額を基礎として算定すべきである旨主張するので、以下審理する。

(1)資料及び調査に基づく事実

 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
イ 請求人は、本件交換所において、Kパチンコの遊技客から、パチンコの賞品である本件景品を、シャープペンシルについては1本1,000円で、コーヒー豆については1箱500円で、それぞれ現金で買い取っていたこと。
ロ 平成5年2月までは、Kパチンコ、Sが代表取締役であった景品卸売業者(問屋)である有限会社G(以下「G社」という。)、請求人の3者間で本件景品に係る取引を行っていたこと。
 そして平成5年3月からは、景品卸売業者(問屋)として株式会社Y(以下「Y社」という。)が設立されたことに伴い、それまでのG社と請求人との取引はY社に引き継がれ、また、平成6年2月からは、請求人とY社との間に景品回収業者としてSが介入し、4者間での取引となったこと。
ハ Sの帳簿によれば、Sは、平成6年2月以後請求人から、本件景品を遊技客からの買取価格100円当たり100.6円の価格で買い取り、これをY社に対し100.8円の価格で売り渡す経理処理をしていること。
ニ Y社の「店別報告書」及び「御通帳」によれば、Y社は、平成6年1月までは、請求人から本件景品を遊技客からの買取価格100円当たり100.6円の価格で買い取り、また、平成6年2月以後は、Sから本件景品を上記ハの価格(遊技客からの買取価格100円当たり100.8円)で買い取り、これをKパチンコに対し101円の価格で売り渡す経理処理をしていること。
ホ 平成5年2月以前においても、G社と請求人との本件景品の取引価格及びKパチンコとの取引価格は、上記ニと同じであったこと。
ヘ Kパチンコの「仕入帳」によれば、Kパチンコは、Y社(平成5年2月以前はG社)から本件景品を上記ニの価格(遊技客からの買取価格100円当たり101円)で買い取る経理処理をしていること。
ト 請求人は、調査担当職員に対し、要旨次のとおり申述していること。
(イ)Sの誘いにより、昭和49年ころから本件事業を開始した。
(ロ)本件事業のための開業資金は、すべて請求人が負担した。
(ハ)Kパチンコの店長及び従業員並びに近隣の住民に対する交際費は、すべて請求人が支出している。
(ニ)請求人は、本件交換所での盗難事故に備え、現金を保険対象物とする損害保険契約を請求人名義で締結し、その保険料の支払をしている。
(ホ)請求人は、本件交換所の建物として、パチンコ店に隣接する土地の所有者が建てたものを請求人名義で賃借しており、当該交換所の電気、水道及び電話等の維持費はすべて請求人が負担している。
チ Y社の代表取締役であるFは、調査担当職員に対し、要旨次のとおり申述していること。
(イ)請求人とY社(平成5年2月以前はG社)又はSとの取引に関する契約内容については、契約書は作成しておらず、すべて口頭によるものである。
(ロ)請求人が本件取引により得た譲渡代金は、請求人のものであり、請求人はこの譲渡代金を元に本件景品の買取資金としている。
(ハ)本件交換所において本件景品及び現金の盗難に遭った場合には、本件交換所の責任において処理をすることになる。

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(2)請求人の答述

 請求人は、当審判所に対し、要旨次のとおり答述している。
イ 請求人とSとは、口頭で、遊技客から買い取った本件景品を必ずSに卸すという委託契約を結んでいた。実際、S以外には本件景品を卸してはいない。
ロ 本件景品の取引価格については、請求人、S及びKパチンコの当事者間で口頭により取り決めていた。
ハ 本件交換所における1日の交換資金として800万円を請求人自身が用意していた。
ニ 上記ハの交換資金800万円は、自己資金であるので、盗難等により損害が生じないよう請求人が保険を掛けていた。
ホ 本件景品については、自分のものではないので保険は掛けていない。
ヘ Kパチンコの閉店後、Sが本件景品を引き取りに来るのが建前であったが、実際には、請求人が納品書を作成し、直接Kパチンコに本件景品を納入していた。

(3)Sの答述

 Sは、当審判所に対し、要旨次のとおり答述している。
イ 請求人は、本件交換所の開設以後、遊技客から本件景品を自己の資金で買い取っていた。
ロ S又はY社若しくはG社は、請求人から本件景品を買い取っていた。
ハ 本件景品の買取価格は、請求人との間で双方の利益を考慮して決めていたものである。
ニ 請求人から買い取った本件景品を請求人にパチンコ店へ納品してもらっていたのは、人を雇ったりしなければならないなど手数がかかるので、請求人に納品をしてもらう契約としていたものであり、その分通常より買取価格を高くしていた。
ホ S又はY社若しくはG社は、請求人に対し手数料を支払っているわけではなく、お互いに独立して営業し、本件景品をそれぞれ売買していたのであり、請求人との間に委託契約はない。

(4)判決に基づく事実

当審判所の調査によれば、請求人が、平成9年*月**日に、E地方裁判所にY社を被告として提訴した損害賠償請求事件(平成9年(×)第×××号)に係る確定判決においては、争いのない事実等及び争点に対する判断として、次のとおり述べられていることが認められる。
イ 争いのない事実等
 原告と被告とは、原告がJ株式会社(以下「訴外会社」という。)の経営するパチンコ店の遊技客から買取った景品(両替用特殊景品)を継続的に被告に売り渡し、これに付随して、右景品を原告が直接右パチンコ店に被告の卸売取引として納品した上、パチンコ店から代金を受領し、右代金から遊技客に支払った買受代金を控除した差額金のうち6割を原告が取得し、被告が4割を取得する旨の継続的特殊景品売買及び納品等委託契約(以下「本件契約」という。)を締結し、右契約に従って取引を継続していた。
ロ 争点に対する判断
 景品買取所である原告は、特定のパチンコ店(訴外会社)が顧客に提供した換金用の特殊景品(訴外会社の場合はシャープペンシルとコーヒー豆)のみを買取り、これを契約上は卸業者である被告に売却し、物品自体は原告が被告の取引として直接パチンコ店(訴外会社)へ納入するものであって(原告と被告とは、一連の取引により景品100円につき1円という率の差益を取得し、これを前記割合により分配する。)、本件契約関係は、パチンコ店(訴外会社)、景品買取所(原告)、景品卸業者(被告)の三者の存在を不可欠とするものである。

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(5)消費税法第6条の適用の可否について

イ ところで、消費税の課税対象については、消費税法第4条《課税の対象》第1項は、「国内において事業者が行った資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する」と規定しているところ、この「資産の譲渡等」とは、同法第2条《定義》第1項第8号において、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう」と規定している。
 さらに、同項第9号において、「課税資産の譲渡等」とは、「資産の譲渡等のうち、同法第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう」と規定し、同項においては、「国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない」と規定している。
 そして、これを受けて消費税法別表第1においては、消費税が非課税とされる資産の譲渡等を限定して規定しており、例えば、(a)有価証券取引税法第2条《定義》に規定する有価証券その他これに類するものとして政令で定めるもの及び外国為替及び外国貿易管理法第6条第1項第7号《定義》に規定する支払手段(銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手(旅行小切手を含む。)、為替手形、郵便為替、信用状及びこれらに類する支払指図で、収集品及び販売用のもの以外のもの。)などの譲渡(第2号)、(b)利子を対価とする一定の資産の貸付け、信用の保証としての役務の提供、合同運用信託又は公社債投資信託に係る信託報酬を対価とする役務の提供及び保険料を対価とする役務の提供その他これらに類するものとして政令で定めるもの(第3号)、(c)物品切手(商品券その他名称のいかんを問わず、物品の給付請求権を表彰する証書をいう。)その他これに類するものとして政令で定めるものの譲渡(第4号)を掲げており、これらの規定を受けて、消費税法施行令(平成9年政令第383号による改正前のもの。)第9条《有価証券に類するものの範囲等》第1項は、上記(a)の有価証券に類するものとして、登録国債等、有限会社などの社員の持分、貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権などを、同令第10条《利子を対価とする貸付金等》第3項は、上記(b)の資産の貸付け又は役務の提供に類するものとして、金銭債権の譲受けその他の承継(第8号)などを、同令第11条《物品切手に類するものの範囲》は、上記(c)の物品切手に類するものとして、役務の提供又は物品の貸付けに係る請求権を表彰する証書を、それぞれ規定している。
ロ そこで、まず上記(1)から(4)の事実等を上記イに照らして、本件取引が非課税取引に該当するか否かを審理したところ、次のとおりである。
(イ)本件景品は、Kパチンコが遊技客に提供するパチンコの景品であるが、パチンコ店が、遊技客に提供した景品を直接換金したり又は遊技客から景品を直接買い戻すことは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第23条《遊技場営業者の禁止行為》第1項の規定により禁止されていることから、本件の取引関係においては、上記法令に違反しないようにするため、上記(1)のロ及びチの(イ)のとおり、Kパチンコ、景品の卸売業者(問屋)であるY社(平成5年2月以前はG社)及び請求人の3者(平成6年2月以後は、Y社と請求人との間にSが介入し4者)間で、口頭による契約を結び、本件景品に係る取引を継続的に行っていたものであると認められる。
 この本件景品の取引価格については、上記(2)のロ及び(3)のハの答述によれば、S又はY社等からの一方的な取り決めではなく、請求人を含め取引の当事者間で口頭により取り決めていたものであることが認められ、また、上記(1)のイからヘまで及びチの(ロ)の事実、上記(2)のハ並びに(3)のイ及びロの答述を総合すると、当該口頭契約における本件景品に係る取引内容は、請求人は、自らの資金で、Kパチンコが遊技客に提供した本件景品をあらかじめ当事者間で取り決めていた価格で買い取り、Sは、請求人から、その本件景品を遊技客からの買取価格100円当たり100.6円の価格で買い取った上、Y社へ100.8円の価格で売り渡し、Y社は101円の価格でKパチンコへ売り渡す(平成6年1月以前は、Y社等が請求人から100.6円の価格で買い取り、101円の価格でKパチンコへ売り渡す)ものであると認められる。
 そして、実際の取引においては、上記(2)のヘ及び(3)のニの答述並びに上記(4)の判決に基づく事実によれば、請求人は、遊技客から買い取った本件景品を、S又はY社等に代わり、Y社等の卸売取引として納品書を作成した上直接Kパチンコへ納品し、その際本件景品の代金を預かり、その代金のうち請求人がS又はY社等から契約上受け取ることになっている代金を収受して、その収受した代金を遊技客からの交換資金等として運用していたことが認められ、また、上記(1)のトの(ハ)から(ホ)まで及びチの(ハ)並びに上記(2)のニによれば、本件交換所はすべて請求人の責任によって営まれていたものと認められる。
 以上のことから、請求人を含めた関係者間においては、本件景品はあらかじめ取り決めた価格によりお互いが取引する商品としての価値を有するものとして認識され、本件景品に係る売買取引を継続的に行っていたものであるとみるのが相当であり、請求人は、S又はY社等からは独立した事業者として、自己の名と責任において遊技客から本件景品を買い取り、自己の名と責任において本件景品を販売しているものとみるのが相当である。
 したがって、請求人が行っている本件取引(平成6年1月以前のY社等との取引を含む。以下同じ。)は本件景品の販売行為そのものであり、S又はY社等への本件景品の譲渡は、販売を目的とした商品そのものの譲渡であると認められる。
(ロ)以上のとおり、本件景品は、パチンコ店が遊技客に景品として提供するために、景品交換業者及び景品卸売業者(問屋)等を流通する商品そのものであり、遊技客から買い入れた商品である本件景品の譲渡が、消費税法別表第一に規定する非課税とされる資産の譲渡等に当たらないことは上記イの規定上明らかであるから、本件取引は非課税取引には該当しないものである。
ハ 次に、本件取引について、消費税法第6条の規定の類推適用の可否について、審理する。
 消費税は、生産流通過程を経て事業者から消費者に提供されるという財貨、サービスの流れに着目して、事業者の売上げを課税対象とすることにより、間接的に消費に税負担を求めるものであり、消費税が課税される取引は、原則として国内におけるすべての財貨、サービスの販売、提供及び貨物の輸入であるが、これらの財貨、サービスの中には、消費税が消費に対して負担を求める税としての性格上、本来課税の対象とすることになじまないものや社会政策上課税することが適当でないものがあり、消費税法上これらのものについては消費税を課さないこととされており、上記イのとおり、消費税法別表第一は、課税の対象とすることになじまない性格のものとして、有価証券その他これに類するもの、支払手段及び物品切手等を規定している。
 本件の場合、上記ロの(ロ)で述べたとおり、本件取引は商品である本件景品の販売行為そのものであり、消費税法別表第一に掲げられている課税の対象とすることになじまない性質の資産の譲渡等とはその性質が異なるものであって、これらに該当しないことは明らかであるから、本件取引について消費税法第6条第1項の規定を類推適用する余地はないというべきである。
 したがって、請求人のこの点に関する主張には理由がない。

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(6)売上げの算定について

イ 請求人は、本件取引が非課税取引でないとしても、請求人はSの取引を代行し、その取扱高により手数料を受領しているのが実態であり、請求人が本件景品を販売しているわけではないから、消費税法の適用上、請求人の売上げは手数料相当額を基礎として算定すべきである旨主張する。
 そして、請求人は、当審判所に対し、上記(2)のイ及びホのとおり、Sと専属の買取業務の委託契約を結んでいた旨及び本件景品は自分のものではない旨答述した。
 しかしながら、上記(5)のロで述べたとおり、本件取引は請求人の販売行為そのものであって非課税取引には該当しないものであり、請求人は独立して遊技客から買取業務を行っていたものであることが認められ、また、上記(3)のホのとおり、Sは当審判所に対し、委託契約はない旨答述していること、他に請求人との間に買取業務の委託契約があると認めるに足りる証拠がないことから、請求人の当該答述は採用することはできない。
ロ ところで、消費税の課税期間における課税標準額及び消費税の基準期間の課税売上高の算定の基礎となる課税資産の譲渡等の対価の額については、消費税法第28条《課税標準》第1項において、対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税に相当する額を含まないものとされている。
ハ 以上の結果、本件取引においては、請求人は本件景品を販売していたものであるから、請求人の本件課税期間における課税標準額及び本件基準期間の課税売上高は、本件景品の譲渡の対価の額として請求人が収受した金額の総額を基礎として算定することとなる。
 したがって、手数料相当額を基礎として算定すべきである旨の請求人の主張には理由がない。

(7)本件通知処分の適法性について

イ 原処分庁は、請求人の本件基準期間の課税売上高は、1,089,196,200円であると算定し、3,000万円を超えるから課税事業者となるとしているが、当審判所が調査したところ、当該金額は税込みの金額であり、原処分庁の認定額には誤りがあると認められることから、再計算したところ、請求人の本件基準期間における課税売上高は1,057,472,038円となる。
ロ したがって、請求人は、当審判所の調査によっても、本件課税期間においては課税事業者となる。
 また、原処分庁は、請求人の本件課税期間における課税標準額及び納付すべき税額は請求人が申告した額と同額であると算定しているところ、当審判所の調査によっても、原処分庁の認定額は相当と認められる。
ハ 以上のとおり、請求人の主張にはいずれも理由がなく、原処分庁が更正の請求に対して更正をすべき理由がないとして行った本件通知処分は適法である。

(8)その他

原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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