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(平11.1.27裁決、裁決事例集No.57 96頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、物納した土地上の賃貸用建物に係る費用及び資産損失を、審査請求人(以下「請求人」という。)の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができるか否かを主たる争点とする事案である。

(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、不動産貸付業等を営む者であるが、同人の父J(以下「J」という。)の死亡による相続税の納付につき、Jから相続したT県P市R町五丁目617番1、同617番2及び同617番5所在の各土地(以下「本件各土地」という。)の物納を平成6年4月4日付で申請し、本件各土地は、平成7年12月12日付で原処分庁の許可を受けて収納された。
ロ また、請求人は、本件各土地上の同人所有の建物(以下「本件建物」という。)を株式会社Y(以下「Y社」という。)に賃貸する旨の契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を解約し、本件建物を取り壊した。
 そして、請求人は、平成7年分の所得税について、本件賃貸借契約の解約に当たりY社に支払った損害金83,710,000円(以下「本件解約損害金」という。)、本件建物の取壊し費用5,253,000円(以下「本件取壊し費用」という。)及び同建物取壊しに係る損失16,153,500円(以下「本件資産損失」といい、これらを併せて「本件費用等」という。)等を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入したことにより、不動産所得の損失額が69,593,089円となり、これを他の所得から控除して純損失の金額を62,677,459円とし、平成8年分の所得税については、平成7年において生じた純損失の金額のうち52,274,025円を控除し総所得金額を零円として、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告をした。
ハ これに対し、原処分庁は、平成9年8月29日付で、本件費用等は本件各土地を物納するためのもので所得税法第37条《必要経費》第1項に規定する必要経費に算入することはできず、平成8年分以後へ繰り越す純損失の金額に相当する金額も零円であるなどとして、別表1の「更正処分等」欄のとおり、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ニ 請求人は、これらの処分を不服として平成9年10月27日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成10年1月27日付で、平成7年分については別表1の「異議決定」欄のとおり、同年分の更正処分等の一部を取り消す異議決定をし、平成8年分については棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成10年2月25日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 平成7年分の更正処分について
(イ)本件費用等について
 本件費用等は、次のとおり不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
A 本件費用等のうち、本件解約損害金及び本件取壊し費用は、本件賃貸借契約の解約及び本件建物の取壊しに要した費用で、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用であるから、所得税法第37条第1項の規定により、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきであり、また、本件資産損失についても、同法第51条《資産損失の必要経費算入》第1項の規定により、やはり不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
B 原処分庁は、本件費用等は支出又は発生の原因から判断して所得税法第33条《譲渡所得》第3項に規定する資産の譲渡に要した費用(以下「譲渡費用」という。)に該当するとし、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第40条の3《物納による譲渡所得等の非課税》の規定により、譲渡はなかったものとみなされる本件各土地に係るものであるから、本件費用等を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと主張する。
 しかしながら、支出又は発生の原因から判断しても、本件費用等は請求人が不動産貸付業を営んでいることを原因とするものであるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
 請求人は、物納の申請期間に制限があったこと及び許可を受けるまで申請の取下げができることから、本件各土地につき、取りあえず物納の申請をしたにすぎず、請求人が当初から物納の意向を示していた事実はない。むしろ、請求人は、本件各土地を維持するため、新たにビルを建築してこれを賃貸し、延納の手続を選択することを予定していたのであり、本件各土地が収納されたという結果のみから、本件費用等が譲渡費用に該当するとはいえないし、仮に本件費用等が本件各土地を物納するためのものとしても、このことが必要経費への算入を否定する根拠となるわけではない。
 なお、所得税基本通達33―7《譲渡費用の範囲》は、借家人等を立ち退かせるための立退料、土地を譲渡するためその土地の上にある建物等の取壊しに要した費用など、資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用は譲渡費用であるとしているが、これは、立退料及び取壊し費用が当該資産の譲渡価額を増加させるために支出され、かつ、これらの費用が譲渡価額の増加による収入金額の増加に対応することによるものである。
 立退料が、その敷地利用権を土地の譲受人に対し法律上対抗することのできる建物賃借人に支払われている場合は、これを譲渡費用ということができるとしても、本件各土地に係る相続税の課税価格は、請求人が本件各土地を無償で借り受けていたことを理由に更地として評価され、本件建物の賃借人であるY社も敷地利用権を有しないとされているのであって、本件建物を取り壊して本件各土地を更地としても、その収納価額に増加はない。にもかかわらず、本件費用等を譲渡費用とすることは本件建物の賃借人に敷地利用権を認めることとなり、課税実務上、一貫性を欠く取扱いとなる。
C また、原処分庁の主張によれば、本件費用等は所得の金額の計算上一切考慮されないこととなるが、これは担税力が弱く、その資金の捻出も困難な納税者にとってあまりに酷である。
(ロ)その他の費用について
 原処分庁は、司法書士へ支払った登記料、T県税事務所へのタクシー代等の合計81,090円(以下「本件登記料等」という。)につき、本件各土地を物納するためのものあるいは家事費であるとして、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとするが、これらはいずれも不動産所得を生ずべき業務について生じた費用であり、必要経費に算入すべきである。
ロ 平成8年分の更正処分について
 上記イのとおり、平成7年分の更正処分は取り消されるべきであるから、これに伴い平成8年分の更正処分も取り消されるべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 平成7年分の更正処分について
(イ)本件費用等について
A 本件費用等は、請求人が本件各土地を物納するためのものであり、所得税法第33条第3項に規定する譲渡費用に該当する。
 そして、措置法第40条の3は、個人が財産を相続税法第41条《物納》第1項の許可を受けて物納した場合には、所得税法第33条の規定の適用については、当該譲渡がなかったものとみなすと規定しており、これによれば、本件各土地を物納したことによる譲渡所得の課税関係は発生せず、本件費用等は請求人の所得の金額の計算上考慮されないこととなる。
B 請求人は、本件各土地上に新たにビルを建築してこれを賃貸するために本件賃貸借契約を解約し、本件建物を取り壊したものである旨主張する。
 しかしながら、請求人は、当初から物納の意向を示していたもので、本件賃貸借契約の解約に際し作成された解約合意書(以下「本件解約合意書」という。)にも、本件各土地の物納を前提とする記載がある上、請求人の主張する新たなビルの建築に係る具体的な計画もなく、現に本件各土地は物納の許可を受けて収納されているのであって、本件費用等は、本件各土地を物納するためのもので、不動産の貸付けのためのものではない。
C なお、請求人は、本件建物の取壊しにより本件各土地の収納価額は増加しないとして、本件費用等は譲渡費用に該当しない旨主張するが、当該費用等が譲渡費用であるか、不動産所得の必要経費であるかは、その支出又は発生の原因により判断すべきであり、本件建物の賃借人の敷地利用権の有無に左右されるものではない。
(ロ)その他の費用について
 請求人が本件賃貸借契約を解約したのは、平成7年1月31日であるから、同月1日から同月31日までの1か月間の固定資産税、都市計画税及び減価償却費は平成7年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるが、請求人が本件費用等のほかにその必要経費に算入すべきとする本件登記料等は、譲渡費用あるいは家事費であり、平成7年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
(ハ)総所得金額等について
 以上によれば、別表2のとおり、平成7年分の総所得金額は41,906,531円となり、納付すべき税額は13,235,200円となるところ、この金額は更正処分の額と同額であるから更正処分は適法である。
ロ 平成8年分の更正処分について
 上記イのとおり、平成7年分の所得税について請求人が平成8年分以後へ繰り越して控除することのできる純損失の金額は生じないので、別表2のとおり、請求人の平成8年分の総所得金額は52,274,025円となり、納付すべき税額は18,155,900円となるところ、この金額は更正処分の額と同額であるから更正処分は適法である。

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3 判断

(1)平成7年分の更正処分について

イ 本件費用等について
(イ)所得税法第37条第1項は、その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、この所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他この所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定し、また、同法第51条第1項は、居住者の営む不動産所得を生ずべき事業の用に供される固定資産その他これに準ずる資産で政令で定めるものについて、取壊し、除却、滅失その他の事由により生じた損失の金額(資産の譲渡により又はこれに関連して生じたものを除く。)は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する旨規定している。
(ロ)そこで、本件費用等について検討すると、当審判所の調査によれば、次の事実を認めることができる。
A 請求人は、本件各土地をJから無償で借り受け、本件各土地上の本件建物をY社に賃貸していたが、Jは、平成5年9月3日に死亡し、請求人が本件各土地を相続した。
B 請求人は、Jの死亡に係る相続税の納付につき、本件各土地上に新たにビルを建築し、これを賃貸マンションとしたり、その一部を貸店舗としたりすることで高収益を得て延納の手続を選択することも企図していたが、その適否についての判断は困難であった上、物納の申請期間に制限があることから、請求人は、平成6年3月22日及び同月30日ごろ公認会計士事務所を介して原処分庁の担当者に物納の手続等を相談し、同年4月4日に同庁に対し、相続税の申告書を提出するとともに、本件各土地及びT県Q市S町三丁目478番2所在の土地(K、L及びMとの共有地、以下「本件外土地」という。)について物納の申請をし、同年10月6日には本件各土地の現地調査を受けた。
C 他方、請求人は、平成6年8月3日、Y社との間で、解約日を平成7年1月31日、明渡し日を同年2月6日とし、請求人がY社に対し本件解約損害金83,710,000円を支払うとともに敷金5,000,000円を返還する旨合意した。そして、この合意に基づき平成7年1月31日付で本件賃貸借契約を解約し、同年2月6日付で解約金及び敷金の合計88,710,000円を支払った。
 なお、本件賃貸借契約の解約に際し作成された本件解約合意書には「万一、乙(Y社)の明渡遅滞によって、甲(請求人)において敷地の物納手続に遅延を生じ、物納されなかったときは、乙は、甲に対し、それによって甲の被る税法上の一切の損失を賠償するものとする」と、記載がある。
D 請求人は、Y社から本件建物の明渡しを受けてこれを取り壊し、平成7年3月8日、本件取壊し費用として5,253,000円をW株式会社に対し支払った。また、これに伴い本件建物の取壊しに係る本件資産損失は16,153,500円となる。
E 請求人は、本件外土地については、Q市土地開発公社に譲渡することとなり、平成7年5月11日に物納申請取下書を提出した。しかし、本件各土地については、平成元年ころにJが別途建築した賃貸マンションと同様の建築計画及び資金計画で、本件各土地上に新たなビルを建築することを企図していたものの、当該ビルの具体的な建築計画及び利用形態等を確定したり、業者にその建築を打診するまでには至らなかった。そして、請求人は、賃貸価額の下落に伴い高額の賃料収入を得ることが困難となり、本件各土地の一部に不法に根抵当権設定仮登記がなされ、この抹消登記手続を行う必要が生じたことなどから、新たなビルの建築を断念せざるを得なくなった。
F 本件各土地は、平成7年12月12日付で許可を受けて同月15日付で収納された。
(ハ)ところで、物納は、本来の金銭納付に代えて物納の許可を受けた物納財産によりその許可を受けた相続税額を納付するもので、公法上の代物弁済であることから、所得税法第33条に規定する譲渡所得等の課税対象となるが、物納財産に対する譲渡所得等の課税について、政策的な配慮から措置法第40条の3において個人がその財産を相続税法第41条第1項の許可を受けて物納した場合には、当該財産の譲渡はなかったものとされる。
(ニ)また、所得税法第33条第3項に規定する譲渡費用とは、取得費とされるものを除き、当該譲渡のために直接必要な費用と解されるところ、上記(ロ)のAからFまでのとおり、本件賃貸借契約の解約及び本件建物の取壊しは本件解約合意書によれば本件各土地の物納を前提とするものであり、請求人は、物納の許可を受けるため、本件賃貸借契約を解約し、本件建物を取り壊して本件各土地を更地にしたもので、そのための費用は物納に直接必要なものと認められる。そして、物納も公法上の代物弁済として譲渡の一態様であることに照らすと、本件解約損害金及び本件取壊し費用は、譲渡費用に該当すると解される。
(ホ)請求人は、これに対し、本件各土地につき、物納の申請をする際には、新たにビルを建築してこれを賃貸することを予定していたのであって、本件各土地が許可を受けて収納されたのは結果にすぎないし、不動産所得を生ずべき業務に起因して生じた費用でもある本件解約損害金及び本件取壊し費用を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できないとする根拠はないと主張する。
 しかしながら、本件解約損害金及び本件取壊し費用が、その年分における不動産所得を生ずべき業務について生じた費用に当たるとするためには、請求人が本件各土地を当該業務の用に供する意図を有しているというだけでは足りず、近い将来において確実に当該業務の用に供されるものといえるような客観的な状態にあることを必要とするものと解されるところ、上記(ロ)のEのとおり、請求人は従前建築された賃貸マンションと同様の建築計画及び資金計画で新たにビルを建築することを企図していたとはいえ、当該ビルの具体的な建築計画及び利用形態等を確定するには至らず、業者にその建築を打診することもなかったというのであって、これらの事情に照らすと、上記のような客観的な状態にあったとは認められない。
(ヘ)本件各土地は物納の許可を受けて収納されているのであり、本件解約損害金及び本件取壊し費用は本件各土地に係る不動産所得の収入を得るために直接に要した費用ということもできないことは明らかであり、結局、本件解約損害金及び本件取壊し費用は上記(ハ)のとおり譲渡費用に該当すると解され、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用に該当するということはできない。
(ト)また、本件資産損失についても、上記(イ)のとおり所得税法第51条第1項は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する損失の金額につき、資産の譲渡により又はこれに関連して生じたものを除くと規定しているところ、本件資産損失は、物納という資産の譲渡により又はこれに関連して生じたものであって、いずれにしても、これを不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
(チ)そして、物納も公法上の代物弁済としての資産の譲渡と解されることは上記(ハ)のとおりであるところ、措置法第40条の3は、個人がその財産を相続税法第41条第1項の許可を受けて物納した場合には、所得税法第33条の規定の適用については、当該財産の譲渡がなかったものとみなすと規定しているのであって、これによれば、本件各土地を物納したことによる譲渡所得の課税関係は生じず、本件費用等は請求人の所得の金額の計算上考慮されないこととなる。
(リ)なお、請求人は、本件建物を取り壊して本件各土地を更地としても、当該各土地の収納価額に増加はないとして、本件費用等は譲渡費用に該当しない旨主張する。
 しかしながら、本件各土地上に本件建物が存するのであれば、本件建物の賃借人の敷地利用権の有無にかかわらず底地のみの物納となって、物納財産の利用形態がこれまでのものと異なることとなり、相続税法第43条第1項ただし書の規定により、その収納価額は低く定められるところ、本件建物の取壊しによって本件各土地の収納価額は増加し、1,061,728,300円に達したものである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ヌ)請求人は、更に、本件費用等の支出にもかかわらず、これが請求人の所得の金額の計算上必要経費として考慮されないことは、担税力の弱い納税者にとってあまりに酷な結果になる旨主張するが、請求人は、本件各土地を物納することにより、相続税の納税義務の消滅という利益を得たにもかかわらず、譲渡所得は措置法第40条の3の規定により非課税とされているのであって、そうである以上、本件費用等が必要経費として考慮されないからといって、納税者に不当に酷なものとはいえない。
(ル)したがって、本件費用等を必要経費として算入することはできないとした原処分庁の判断は相当である。
ロ その他の費用について
 請求人が本件賃貸借契約を解約したのは、上記(1)のイの(ロ)のCのとおり、平成7年1月31日であるから、同月1日から同月31日までの1か月間の固定資産税、都市計画税の額437,100円及び減価償却費の額76,500円、合計金額513,600円は平成7年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することになる。
 また、本件費用等のほかに請求人が必要経費と主張する本件登記料等については、当審判所の調査によれば、これらは本件各土地に不法に設定された仮登記の抹消登記手続に係る訴訟のための費用等あるいは本件各土地を物納する際の手続費用、司法書士等に対する報酬と認められ、譲渡費用あるいは家事費というべきものであり、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
ハ 総所得金額等について
 以上によれば、平成7年分の不動産所得の金額は34,990,901円となり、上記2の(2)のイの(ハ)のとおり、同年分の総所得金額は41,906,531円、納付すべき税額は13,235,200円となり、これらの金額は、異議決定を経た後の更正処分の額と同額である。
ニ 以上のとおりであるから、請求人の主張はいずれも理由がなく、平成7年分の更正処分は適法である。

(2)平成8年分の更正処分について

 上記(1)のとおり請求人が平成8年分以後へ繰り越して控除することのできる純損失の金額は生じないので、上記2の(2)のロのとおり、請求人の平成8年分の総所得金額は52,274,025円、納付すべき税額は18,155,900円となり、これらの金額は異議決定を経た後の更正処分の額と同額であるから、更正処分は適法である。

(3)過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(1)及び(2)のとおり、各年分の更正処分は適法であり、また、請求人には、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてした過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

(4)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠書類等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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