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(平11.11.11裁決、裁決事例集No.58 241頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)審査請求に至る経緯

 審査請求人G及び同H(以下「請求人ら」という。)は、平成7年12月25日に死亡したJの共同相続人であるが、この相続(以下「本件相続」という。)開始に係る相続税について、申告書に別表1の「申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
 原処分庁は、これに対し、平成10年7月6日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおりとする各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
 請求人らは、これらの処分を不服として、平成10年9月4日に異議申立てをしたところ、異議審理庁が平成10年11月30日付で棄却の異議決定をしたので、平成11年1月4日に審査請求をした。
 なお、請求人らは、Gを総代として選任し、その旨を平成11年1月4日に届け出た。

(2)原処分の概要

 請求人らは、本件相続に係る遺産のうち、Gが相続によって取得したK花街土地住宅経営組合(以下「本件組合」という。)に対する出資(以下「本件出資」という。)について、出資口数を116口、その価額を1口当たり50円、総額5,800円と評価して申告したところ、原処分庁は、出資口数を137口とし、その価額を国税庁長官の定める昭和39年4月25日付直資56、直審(資)17「財産評価基本通達」(平成8年5月30日付課評2―3による改正前のもの。以下「評価通達」という。)196《企業組合等の出資の評価》の定めを準用し、同通達185《純資産価額》に定める評価方法に準じ、本件相続開始時(課税時期)の直前期である平成6年4月1日から平成7年3月31日までの事業年度(以下「平成7年3月期」という。)の本件組合の貸借対照表に基づき、同組合の各資産を評価通達に定めるところにより評価した価額の合計額から各負債の金額の合計額を控除した金額を払込済総出資口数で除して計算した金額によって、1口当たり113,737円、総額15,581,969円と評価して原処分を行った。

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2 主張

(1)請求人らの主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 本件各更正処分について
 本件出資の口数137口については争わないが、その価額は、次の理由から、平成8年10月22日に開催された本件組合の役員会において承認された2件の出資の売買実例価額に基づき、1口当たり18,000円、総額2,466,000円と評価すべきであり、原処分庁が評価通達の定めを準用して本件出資の価額を評価したのは誤りである。
(イ)相続税法第22条《評価の原則》は、相続により取得した財産の価額は、特別に定める場合を除き、当該財産の取得のときにおける時価による旨規定しており、この時価とは、客観的な交換価値であると解されるから、その客観的交換価値を適正に反映したと認められる売買実例が存する場合には、その実例価額に準じて計算した価額によって評価することに何ら不合理はない。
(ロ)請求人らが主張する売買実例の価額は、出資1口当たりの年配当金額(750円)から源泉徴収に係る所得税相当額(150円)を差し引いた後の金額(600円)の30年分に相当する金額であり、また、当該金額は第三者間における自由な取引で成立した金額であって、客観的な交換価値を反映したものであることに疑問の余地はない。
ロ 本件各賦課決定処分について
 以上のとおり、本件各更正処分は違法であるから、これに伴い本件各賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。

(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件各更正処分について
 本件出資137口の価額は、次の理由から、評価通達に定める評価方法に準じて、1口当たり113,737円、総額15,581,969円と評価すべきである。
(イ)相続財産の価額は、その財産の客観的な交換価値が必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務上、一般的基準である評価通達に定められた画一的な評価方式に基づき算出された評価額が相続開始時におけるその財産の時価を上回っていると認められるような特別の事情がある場合を除き、同通達に定める評価方法によって評価を行うこととされている。
(ロ)これを本件についてみると、本件出資の評価方法については、評価通達に定めがないことから、同通達5《評価方法の定めのない財産の評価》の定めに基づき同通達に定める評価方法に準じて評価することとなるが、本件組合は、同通達194《合名会社等の出資の評価》ないし196に定める合名会社等に該当しないものの、本件組合の規約であるK花街土地住宅経営組合規約第10条《脱退者の持分の払戻し》の定めからすると、出資者は本件組合の財産に対して出資に応じた持分を有していることから、同通達196の定めに準じて同通達185の定めを準用して計算した本件組合の純資産価額を基とし、出資の持分に応ずる価額によって評価することとなる。
 なお、本件組合が解散したときは、法人税法第7条《内国公益法人等の非収益事業所得等の非課税》の規定により清算所得に対する法人税等の課税は行われないから、本件組合の純資産価額の計算に当たっては、評価通達186―2《評価差額に対する法人税額等に相当する金額》の定めにより計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除しないことになる。
(ハ)請求人らは、本件出資の価額を本件組合の役員会において承認された出資の売買実例価額に基づき評価すべきであると主張するが、当該価額は売買当事者が独自に算定した価額であり、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額ではなく、また、評価通達の定めに準じて評価した価額が本件相続開始時におけるその時価を上回っていると認められるような特別の事情もないことから、請求人らの主張は採用できない。
ロ 本件各賦課決定処分について
 以上のとおり、本件各更正処分は適法であり、これにより納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由がある場合には該当しないから、同条第1項の規定に基づいて行った本件各賦課決定処分は適法である。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件出資の評価方法及びその金額の多寡にあるので、以下審理する。

(1)本件各更正処分について

イ 本件出資の評価方法について
(イ)原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 本件組合は、昭和14年ころ、花街の得意客等が芸妓達の生活の保護をするために土地を取得し、その土地を維持管理することを目的として組織された団体で、法人格を取得することのないまま現在に至っている。
B 本件組合は、本件相続開始時において、39名の組合員によって構成されており、内部規約として、別紙に記載のK花街土地住宅経営組合規約(抜粋)を定めている。
C 本件組合は、専ら不動産賃貸を業とし、これに係る所得につき、人格のない社団として法人税の申告及び納付を行っている。
D 請求人らが主張する2件の売買実例は、その売買当事者がいずれも本件組合の組合員で、しかも買主は同一人であり、売主からの売申込みに対し、買主から出資1口当たり18,000円の売買金額を提示した結果、成約に至ったものであった。
 この金額は、当時の本件組合の出資1口当たりの源泉徴収税額控除後の配当金額(600円)の30年分に相当する金額として算定されたもので、本件組合の財産及び債務の具体的な価額や他の売買実例価額を参考に決定されたものではなかった。
 なお、これら2件の売買実例のほかには、取引事例として採用することができるような有効な売買実例は存在しない。
E 本件組合は、平成8年10月22日に開催された役員会において、上記の売買実例に係る出資の譲渡を承認したが、この承認は、出資1口当たりの売買金額(18,000円)自体についてされたものではなく、売買金額の決定は売買当事者に委ねられていた。
(ロ)相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は特別に定める場合を除き当該財産の取得の時における時価による旨規定しており、この時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額、すなわち客観的な交換価値を示す価額であると解される。
 この点に関し、請求人らは、本件組合の役員会において承認された2件の出資の売買実例価額は客観的な交換価値を示すものであるから、当該価額によって本件出資の時価を評価すべきであり、原処分庁が評価通達の定めを準用して本件出資の時価を評価したのは誤りである旨主張する。
 しかしながら、請求人らが主張する売買実例は、上記(イ)のD及びEの認定のとおり、譲渡人及び譲受人の双方が共に組合員という限定された市場において成立した稀少な事例であり、しかも当該売買実例価額が客観的な交換価値を反映したものと認めるに足りる証拠もない。
 そうすると、これらの売買実例価額は、売買当事者の主観的、個人的事情等の要素が影響しているというほかないものであるから、この価額を本件出資の時価として採用することはできない。
(ハ)次に、原処分庁が採用した評価通達に定める評価方法の適否についてみると、前記(イ)のAないしCの各認定事実によれば、本件組合は、団体としての組織を備え、当該組織内においては多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法・総会の運営・財産の管理等団体としての主要な点が規約によって確定していることなどからして、人格のない社団としての実体を備えていると認められるところ、評価通達には、人格のない社団の出資の評価方法についての定めがないことから、同通達5の定めにより、同通達に定める評価方法に準じて評価することになる。
 ところで、評価通達は、相続税等の課税の対象となる財産が多種多様であり、その価額を的確に評価することが必ずしも容易ではないため、納税者の申告の便宜と課税庁の取扱いの統一を図るために定められているものであるが、同通達は、株式会社や有限会社などのように、多数の者が一定の目的を達成するために結合した団体のうち法人格を有する団体に係る株式や出資等の評価方法として、169《上場株式の評価》ないし196に定めをおいており、本件組合は、上記認定のとおり、単なる個人の集合体ではなく、団体としての組織を有し、統一された意思の下にその構成員の個性を超越して活動を行っている人格のない社団であって、本件組合の財産及び債務は団体たる本件組合に帰属し、構成員たる組合員が個々の組合財産等について持分権や分割請求権を有していないことにかんがみると、本件出資の価額は、これらの法人格を有する団体に係る株式や出資についての評価方法の定めを準用して評価するのが合理的であると認められる。
(ニ)そこで、さらに具体的に本件出資の評価方法について検討すると、本件組合は、農業協同組合などのように、組合自体が一個の企業体として営利を目的として事業を行うことを法令の規定によって禁止されておらず、また、株式会社や合名会社などのように、組合員(社員)に対して出資口数に応じて議決権を与えなければならないことを定めた法令の規定もない。
 そうすると、本件出資の評価は、評価通達169ないし196の定めのうち、組合自体が営利を目的とする事業を行うことができ、かつ、組合員が各々一個の議決権を有することとされている(出資持分の大小と関係なく議決権が与えられている)企業組合、漁業生産組合その他これに類似する組合等に対する出資の評価方法を定めた評価通達196の定めを準用して評価するのが、本件組合の性格に照らして最も合理的な評価方法であるということができ、これに代わるべき他の合理的な評価方法を認めることはできない。
 なお、評価通達196は、同通達185の定めを準用して計算した純資産価額を基として、出資の持分に応ずる価額によって評価することとしており、ここにいう純資産価額とは、課税時期における各資産を同通達で定めるところにより評価した価額の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び同通達186―2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式(出資)数で除して計算した金額によって評価する方式であるところ、本件組合は、人格のない社団と認められることは上記(ハ)で述べたとおりであって、人格のない社団については法人税法第7条の規定により清算所得に対する法人税等の課税は行われないから、本件組合の出資1口当たりの純資産価額を計算するに当たっては、上記の評価差額に対する法人税額等相当額を控除することは相当ではない。
ロ 本件出資の純資産価額について
 以上のとおり、原処分庁の採用した評価方法には合理性があると認められるので、以下、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果に基づいて、本件組合の出資1口当たりの純資産価額の適否を検討する。
(イ)課税時期における本件組合の資産及び負債の金額(帳簿価額)
 当審判所における調査によれば、本件組合は、課税時期である本件相続開始時において仮決算を行っておらず、また、平成7年3月期末から課税時期までの間の本件組合の資産及び負債の金額に著しい増減がなかったと認められるので、当審判所においても、本件組合の平成7年3月期の貸借対照表に計上された資産及び負債の金額を課税時期における本件組合の資産及び負債の帳簿価額とみなし、これらの金額を基に、以下、課税時期における本件組合の資産及び負債の金額(相続税評価額)を算定することとする。
(ロ)本件組合の各資産の金額(相続税評価額)
 本件組合の平成7年3月期の貸借対照表に計上された資産及び負債の金額は、別表2のとおりであり、これに計上された各資産の金額を基に、評価通達の定めるところにより評価した金額は、それぞれ以下に掲げるとおりである。
A 預貯金
 預貯金の相続税評価額は、160,079,901円となる。
 この金額は、預貯金の合計額159,964,815円に、評価通達203《預貯金の評価》の定めに基づき、定期預金2口に係る既経過利子の額として支払を受けることができる金額から当該既経過利子の額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を控除した115,086円を加算した金額である。
B 土地
 本件組合の財産目録に基づく土地の明細は、別表3記載のとおりであり、評価の単位となる一画地の土地に面する路線に付された路線価を基とし、評価通達15《奥行価格補正》から同通達20《不整形地、無道路地、間口が狭小な宅地等、がけ地等の評価》までの定めにより画地調整を行い、各画地ごとに自用地としての価額を計算した。
 このうち順号〔1〕、〔2〕、〔4〕ないし〔10〕の各画地の自用地としての価額は、当該各画地内に存する不特定多数の者の通行の用に供されている私道部分の評価額を零円として計算した価額である。
 なお、順号〔12〕ないし〔14〕の各画地は、後述のとおり、貸家の目的に供されていることから、各利用の単位ごとに一画地として評価したことにより、また、順号〔1〕、
〔2〕、〔5〕、〔7〕ないし〔10〕の各画地は、私道を除く宅地の地積を求積するに際し、端数処理を行ったことにより、上記の自用地としての価額につき、原処分額と審判所認定額に差が生じることとなった。
 別表3の順号〔2〕及び〔3〕の各画地は、借地権の目的となっている宅地であるから、その価額は、評価通達25《貸宅地の評価》の定めにより、上記の自用地としての価額から、その自用地としての価額に同通達27《借地権の評価》の定めにより70パーセントの借地権割合を乗じて計算した価額を控除して評価した。
 原処分庁は、同表の順号〔6〕、〔9〕、〔12〕ないし〔14〕の各画地を自用地として評価しているが、順号〔4〕ないし〔15〕の各画地は、いずれも貸家の目的に供されている宅地であると認められるから、その価額は、評価通達26《貸家建付地の評価》の定めにより、自用地としての価額から、その自用地としての価額に同通達27の定めによる70パーセントの借地権割合と同通達94の定めによる40パーセントの借家権割合との相乗積を乗じて計算した価額を控除して評価するのが相当である。
 以上により評価した各土地の相続税評価額の合計額は、別表3の「審判所認定額」欄に記載のとおり、408,649,054円となる。
C 建物
 本件組合の財産目録に基づく建物の明細は、別表4記載のとおりであり、これらの建物は、いずれも貸家の目的に供されていると認められる。
 原処分庁は、評価通達89《家屋の評価》の定めにより、建物の平成7年度の固定資産に倍率1.0を乗じて評価した自用建物としての価額から、当該価額に評価通達94《借家権の評価》の定めによる40パーセントの借家権割合を乗じて計算した金額を控除して評価している。
 しかしながら、これらの建物については、国税庁長官の定める平成7年8月18日付課評2―9・課資2―140「阪神・淡路大震災の発生日以後に相続等により取得した財産の評価について」通達4《被災家屋の評価》の適用があるので、各建物の平成7年度の固定資産税評価額に倍率1.0を乗じて評価した各建物の価額から、その価額に地方税法第367条《固定資産税の減免》の規定に基づき条例に定めるところによりその被災家屋に適用された固定資産税の軽減又は免除の割合を乗じて計算した金額を自用建物としての価額とするのが相当である。
 この自用建物としての価額から、当該価額に40パーセントの借家権割合を乗じて計算した金額を控除して評価すると、各建物の相続税評価額の合計額は、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり、69,186,042円となる。
D 附属設備
 附属設備は、上記Cの建物と構造上一体となっている設備であると認められることから、評価通達92《附属設備等の評価》の(1)の定めに基づき、当該建物の価額に含めて評価することになる。
E 上記以外の資産の金額
 上記AないしD以外の資産の金額は、本件組合の平成7年3月期の貸借対照表に計上されている金額と同額である。
F 本件組合の各資産の相続税評価額の合計額
 以上によって計算すると、本件組合の各資産の相続税評価額の合計額(千円未満の端数切捨て)は、別表5の「審判所認定額」欄に記載のとおり、642,331,000円となる。
(ハ)本件組合の各負債の金額
 本件組合の各資産の相続税評価額の合計額から控除すべき各負債の金額は、次のとおりである。
A 未払法人税、未払県民税、未払市民税及び未払事業税
 純資産価額の計算上、負債とすべき未納公租公課の簿外債務の金額であって、その金額は、未払法人税が6,440,100円、未払県民税が291,000円、未払市民税が1,061,300円及び未払事業税が2,108,200円である。
B 未払固定資産税
 課税時期以前に賦課期日のあった固定資産税の税額4,243,000円である。
C 未払配当金
 本件組合の平成7年3月期の利益処分として確定した配当金額であって、その金額は、3,379,500円となる。
D 納税充当金及び災害損失特別勘定
 本件組合は、平成7年3月期の貸借対照表に納税充当金及び災害損失特別勘定の各金額を負債として計上しているが、これらの金額は課税時期までその債務が確定しておらず、相続税法第14条《控除すべき債務》第1項に規定する確実と認められる債務には当たらないから、本件組合の出資1口当たりの純資産価額の計算上、負債として計上することはできない。
E 上記以外の負債の金額
 上記AないしD以外の負債の金額は、平成7年3月期の貸借対照表に計上されている金額と同額である。
F 各資産の相続税評価額の合計額から控除すべき各負債の金額の合計額
 以上によって計算すると、各資産の相続税評価額の合計額から控除すべき各負債の金額の合計額(千円未満の端数切捨て)は、別表5の「審判所認定額」欄に記載のとおり、182,340,000円となる。
(ニ)本件組合の出資1口当たりの純資産価額
 本件組合の出資1口当たりの純資産価額は、前記(ロ)のFの各資産の相続税評価額の合計額から上記(ハ)のFの各負債の金額の合計額を控除した金額を本件相続開始時における本件組合の払込済総出資口数4,506口で除して計算した金額であり、別表5の「審判所認定額」欄に記載のとおり、102,084円となる。
ハ 本件出資の価額(総額)について
 上記ロの(ニ)の本件組合の出資1口当たりの純資産価額に本件出資の出資137口を乗じて計算すると、本件出資の価額の総額は、13,985,508円となる。
 この価額を基に、請求人らの相続税の課税価格及び納付すべき税額を計算すると、別表6の「審判所認定額」欄のとおりであり、請求人Gについては、課税価格及び納付すべき税額ともに更正処分の額を下回ることになり、また、請求人Hについては、課税価格に異動はないが、本件出資の価額が減少することに伴い相続税の総額が減少し、その結果、同人の納付すべき税額が更正処分の額を下回ることになるので、本件各更正処分はいずれもその一部を取り消すべきである。

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(2)本件各賦課決定処分について

 以上のとおり、本件各更正処分がいずれもその一部を取り消されることに伴い、過少申告加算税の基礎となる税額は、別表6の「審判所認定額」欄のとおりとなるが、この税額の計算の基礎となった事実については、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合に該当するとは認められないから、過少申告加算税の額は、別表6の「審判所認定額」欄のとおりとなり、これらの金額は、本件各賦課決定処分の金額を下回ることになる。
 したがって、本件各賦課決定処分もまたいずれもその一部を取り消すべきである。
(3)原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。

別紙

K花街土地住宅経営組合規約(抜粋)

第2条(目的)
 本組合は、組合員の相互扶助の精神に基づき、組合の財産の維持並びに増加を図り、組合員の親睦と融和に資し、よって社会的使命を達成することを目的とする。
第4条(事業)
 本組合は、第2条の目的を達成するための次の事業を行う。
1.不動産の売買、賃貸、管理及び、その運営。
2.飲食店の経営。
3.貸金業。
4.前各号に付帯する一切の業務。
第5条(組合員の構成)
 本組合は組合員をもって構成する。
第6条(加入)
 新規並びに第7条(相続加入)にて組合に加入するものは、役員会の同意を必要とする。第7条(相続加入)
1.相続を原因として新たに組合に加入を申し込む場合、相続人のうち1名のみを、組合員として加入せしめるものとする。
2.前項の規定により加入の申し出をしようとする者は、他の相続人すべての同意書を提出しなければならない。
 同意書が提出されない場合は、当該組合員が死亡により脱退したものとして取り扱う。
第8条(脱退)
 組合員は、あらかじめ組合に通知した上で、事業年度の終わりにおいて脱退することができる。
第9条(除名)
 本組合は、総会の決議により、次の各号の一つに該当する組合員を除名することができる。
1.出資の振込、経費の支払、その他組合に対する義務を怠った組合員。
2.本組合の事業を妨げ、又は、妨げようとした組合員。
3.本組合を著しく損ねる行為をなした組合員。
第10条(脱退者の持分の払い戻し)
 組合員が脱退したときは、脱退の当時における組合財産の状況に従いこれを計算して持分を払い戻すものとする。
 除名による場合も同様とする。
第14条(役員の定数)
 本組合の役員は理事長、副理事長、会計監査及びその他の理事とする。
その定数は以下のとおりとする。
〔1〕理事長1名 〔2〕副理事長1名 〔3〕会計監査2名以内 〔4〕その他の理事7名以内
 なお、本組合の役員は、本組合の組合員中から総会において選任される。
第15条(役員の退就任)
 役員の辞任及び新たな役員の選任については、総会の同意を必要とする。
第16条(理事長)
 理事長は本組合の業務を執行し、組合を代表する。
第17条(副理事長)
 副理事長は理事長を補佐し、万一理事長が事故ありたる時は、新しい理事長選任迄、その職務を代行する。
第19条(役員会)
 役員会は理事により構成され、理事長の諮問に応じ、本組合の運営方針その他重要事項を調査審議する。
第21条(会議)
1.組合の会議は総会及び役員会とする。
2.本組合の会議は理事長が必要と認める時、招集するものとする。
3.総会及び役員会は、組合員又は理事の半数(委任状を含む)以上が出席し、その議決権の過半数で決し、可否同数の時は議長の決するところによる。
4.総会における各組合員の議決権は第12条の持分割合の比率による。
第23条(事業年度)
 本組合の事業年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わるものとする。
第28条(規約変更)
 この規約の変更は、組合員の半数以上(委任状を含む)が出席した総会において、総組合員の過半数の賛成をもって議決しなければならない。
第29条(付則)
 この規約に定めなき重要事項については、役員会において協議決定する。

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