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(平12.9.28裁決、裁決事例集No.60 387頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、医薬品の研究開発及び清涼飲料水の製造を業とする審査請求人(以下「請求人」という。)が平成3年8月31日に取得した空調設備(以下「本件空調設備」という。)について、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「耐用年数省令」という。)別表第一に掲げる「建物附属設備」の「冷房、暖房、通風又はボイラー設備」のうちの「細目」に掲げる冷凍機の出力が22キロワット以下の冷暖房設備(以下「冷暖房設備」という。)又は冷凍機の出力が22キロワット超の冷暖房設備(以下「その他の冷暖房設備」という。)のいずれに該当するかを判断するに当たり、その基準となる「冷凍機の出力」が争点となった事案である。

(2)審査請求に至る経緯

 別表1、2及び3のとおり(以下、平成7年4月1日から平成8年3月31日までの事業年度を「平成8年3月期」、平成8年4月1日から平成9年3月31日までの事業年度を「平成9年3月期」及び平成9年4月1日から平成10年3月31日までの事業年度を「平成10年3月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)。

(3)基礎事実

 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 本件空調設備は、耐用年数省令別表第一に掲げる「建物附属設備」の「冷房、暖房、通風又はボイラー設備」に該当すること。
ロ 本件空調設備は、ガスを熱源とした蒸発器、凝縮器、再生器及び吸収冷温水機を本体とする吸収式冷凍機(以下「吸収式冷凍機」という。)等からなる冷暖房兼用の設備であり、コンプレッサーを使用した冷凍機を主要部とする従来の設備とは冷却方法等が異なるため、吸収式冷凍機に直結する電動機はないこと。
ハ 耐用年数省令別表第一に掲げる「冷暖房設備」の耐用年数は13年であり、「その他の冷暖房設備」の耐用年数は15年であること。

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2 主張

(1)請求人の主張

イ 更正処分について
 原処分には、次のとおり、本件空調設備の耐用年数を15年として減価償却費の償却限度額を計算した違法があるから、本件各事業年度の各更正処分の全部の取消しを求める。
(イ)耐用年数の適用等に関する取扱通達(以下「耐用年数通達」という。)2―2―4の(3)は、「冷暖房設備」の「冷凍機の出力」について、冷凍機に直結する電動機の出力である旨定めているところ、本件空調設備には冷凍機に直結する電動機がなく、冷凍機の出力は22キロワット以下であるから、本件空調設備は「冷暖房設備」に該当し、その耐用年数は13年とするのが正当である。
(ロ)なお、原処分庁は、本件空調設備のように冷凍機に直結する電動機がない場合には、その冷凍能力を基に判断すべきである旨主張するが、冷凍能力で判断すべきである旨を定めた規定はどこにもないから、原処分庁の主張は、その根拠を欠く主張である。
(ハ)また、請求人は、平成5年1月の税務調査において、調査担当者が本件空調設備に係る竣工時の設計図・仕様書等を確認、実査したところに基づき、原処分庁が本件空調設備の耐用年数は13年であるとの判断を示したことから、その判断に従って耐用年数13年を継続適用してきたところ、今回の税務調査で、原処分庁が本件空調設備の耐用年数を15年としたことは、その取扱いが調査担当者によって不統一であり、納税の不平等を招く等、信義誠実の原則に反する処分である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件各事業年度分の各更正処分についてはその全部を取り消すべきであるから、これに伴い、過少申告加算税の各賦課決定処分も、平成9年3月期分についてはその全部を、また、平成8年3月期分及び平成10年3月期分については、各事業年度の修正申告に係る部分を超える部分を取り消すべきである。

(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
 耐用年数通達2―2―4の(3)における「電動機」とは、電気を熱源とするコンプレッサー式冷凍機の圧縮機を動かすモーターのことであるから、本件空調設備のように冷凍機に直結する電動機がない場合には、耐用年数省令別表第一の規定する冷凍機の出力は、その冷凍能力によって判断すべきであるところ、本件空調設備の吸収式冷凍機の冷凍能力は351.6キロワットとなり、「冷暖房設備」とする場合の基準22キロワットを超えているから、本件空調設備は「その他の冷暖房設備」に該当し、その耐用年数は15年となる。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、また、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った過少申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

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3 判断

(1)更正処分について

 本件空調設備の耐用年数に争いがあるので、以下審理する。
イ 耐用年数省令における減価償却資産の耐用年数は、その種類、構造、属性、使用方法その他を考慮し、かつ、課税の公平を図る上から、ある程度の画一的な取扱いとならざるを得ないことをも前提として定められており、耐用年数省令別表第一に基づき耐用年数を適用する場合には、新たな技術又は素材により製造等されたものであっても、個々の減価償却資産を同表に掲げる「種類」、「構造又は用途」及び「細目」の順に従って同表のいずれに該当するかを判断し、その該当する耐用年数を適用することとしている。
ロ そして、「冷暖房設備」又は「その他の冷暖房設備」のいずれに該当するかは、「冷凍機の出力」のみを基準として区分しており、「冷凍機の出力」とは、冷凍機に直結する電動機の出力をいうものと解するのが相当である。
ハ これを本件についてみると、本件空調設備は1の(3)のロのとおり冷凍機に直結する電動機を有しないことは明らかであり、また、当該電動機を有しない場合には冷凍能力で判断する旨の規定もないので、本件空調設備は「冷暖房設備」に該当し、その耐用年数は13年とするのが相当である。
 したがって、本件空調設備の冷凍能力は351.6キロワットであり、耐用年数省令で定める基準22キロワットを超えるから、本件空調設備は「その他の冷暖房設備」に該当し、耐用年数は15年であるとの原処分庁の主張は採用できない。
ニ 以上のことから、耐用年数13年を適用して本件各事業年度の所得金額を計算すると、別表5「審判所の認定額」のとおり、平成8年3月期及び平成10年3月期は、いずれもその事業年度の修正申告の金額と同額となり、平成9年3月期は、確定申告の金額を下回るから、本件各更正処分は、いずれもその全部を取り消すべきである。

(2)過少申告加算税の賦課決定処分について

 過少申告加算税の各賦課決定処分については、その計算の基礎となる税額の異動に伴い、平成9年3月期分についてはその全部を、また、平成8年3月期分及び平成10年3月期分については、それぞれその一部を取り消すべきである。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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