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(平12.10.11裁決、裁決事例集No.60 575頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、課税事業者である審査請求人(以下「請求人」という。)が行った相続税納付のための賃貸マンションの物納が、消費税の課税対象となるか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、農業及び不動産貸付業を営む個人の消費税課税事業者であるが、平成8年1月1日から平成8年12月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税について消費税の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
ロ これに対し、原処分庁は、平成10年6月30日付で別表1の「更正処分等」欄のとおり更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として平成10年7月3日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年9月30日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成10年10月5日に審査請求をした。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成3年12月11日に死亡した請求人の父Eからの相続に係る相続税の申告書を平成4年5月28日に原処分庁へ提出した。
ロ 請求人は、平成4年6月9日、上記イの相続税のうち887,000,000円について、相続税法第41条《物納》及び同法第42条《物納の手続及び許可》の規定に基づき、原処分庁に対し物納申請をした。
ハ 平成5年10月18日、上記ロの物納申請に係る諸手続等の担当が原処分庁からF国税局長に移管された。
 なお、請求人は、その後、当該物納申請のうち437,000,000円について取下げを行い、F国税局長は、平成7年2月10日から平成10年1月30日までの間に、別表2に記載のとおり、450,000,000円の物納の許可をした。
ニ 上記ハのF国税局長がした物納許可のうち、本件課税期間において物納許可された財産は、別表2の「番号」欄の13から17までの建物(以下「本件建物」という。)とその敷地である土地(以下「本件土地」という。)に区分される賃貸マンション(以下「本件マンション」という。)であり、本件マンションの物納(以下「本件物納」という。)に係る物納許可額は128,965,304円(以下「本件物納許可額」という。)である。
 なお、本件物納許可額の内訳は、本件建物の物納許可額が64,404,476円及び本件土地の物納許可額が64,560,828円となっている。
ホ 本件マンションは、物納申請後も引き続き請求人の不動産貸付業の一部としての住宅の貸付けの用に供されていたが、物納に際しては、本件マンションが空室状態であることが条件の一つになっていたことから、請求人は、入居者に対する退去の要請及び退去等の手続きについて、株式会社Kに依頼し、本件マンションについては、入居者が退去した日から2カ月から3カ月以内に物納許可がされている。
ヘ 請求人は、平成8年9月25日、本件課税期間を適用開始課税期間とする「消費税課税事業者届出書」を原処分庁に提出した。
 なお、同日、平成9年1月1日から平成9年12月31日までの課税期間を適用開始課税期間とする「消費税簡易課税制度選択届出書」を原処分庁に提出した。
ト 原処分庁は、平成10年6月30日付で、本件物納には消費税が課されるとして、本件建物の物納許可額を資産の譲渡等の対価の額として本件課税期間の課税売上げの額に含め、本件更正処分をした。

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2 主張

(1)請求人

 原処分は、次のとおり違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 相続税納付のための物納による資産の譲渡は、事業としての行為ではなく、かつ、本件マンションは、消費税が非課税とされる住宅の貸付けの用に供していた資産であるから事業資産ではない。
ロ 居住用の貸家については、仕入れに係る消費税額の控除ができないから、同控除のできない資産を代物弁済に充てても資産の譲渡等には該当しない。
ハ 物納による資産の譲渡については、所得税を課さない旨の規定があるから、消費税についても同様に非課税とすべきであり、消費税の課税事業者のみが課税となるのは不公平である。
ニ 本件更正処分は違法であるから、過少申告加算税の賦課決定処分も取り消されるべきである。
ホ 上記以外のことについては争わない。

(2)原処分庁

 原処分は、次のとおり適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 消費税法第2条《定義》第1項第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいい、これには代物弁済による資産の譲渡を含む旨規定されているところ、この代物弁済とは、債務者が本来負担していた債務の弁済に代えて他の給付を行うことによって債務を消滅させることをいうものである。
 ところで、相続税法第41条で規定する物納は、相続税について金銭により納付することを困難とする事由がある場合において、金銭に代えて不動産等をもって相続税の納付に充てるものであるから、物納も代物弁済に該当することとなる。
 また、消費税法施行令第2条《資産の譲渡等の範囲》第3項は、資産の譲渡等には、その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡を含むものとする旨規定されており、事業の用に供している建物等の譲渡も事業付随行為として消費税の課税対象となる。
 そうすると、請求人が本件マンションを物納したことは、代物弁済によりその不動産貸付業に付随して資産の譲渡を行ったと認められる。
 したがって、本件物納は、事業者が行った資産の譲渡等に該当するから、消費税法第4条《課税の対象》第1項の規定により消費税が課されることとなる。
 なお、住宅の貸付けは、消費税法第6条《非課税》第1項の別表第一の第13号により消費税を課さないこととなるが、住宅の貸付けの用に供している建物の譲渡について消費税を課さない旨の法律上の規定はない。
ロ 物納については、所得税法上、物納も譲渡所得の課税要件である「資産の譲渡等」に該当するものの、立法政策上、租税特別措置法第40条の3《物納による譲渡所得等の非課税》の規定により所得税法第33条《譲渡所得》の規定による譲渡がなかったものとみなし、所得税を課税しないこととされている。
 しかしながら、消費税法第6条には、物納による資産の譲渡等が非課税に該当する旨の規定はなく、他に物納について消費税法第4条第1項の規定を排斥する規定もないから、物納は資産の譲渡等に該当し、消費税が課されることになる。
ハ 請求人の本件課税期間の消費税の課税標準額等は、次のとおりである。
(イ)課税売上げの額
A 本件物納に係る課税売上げの額は、本件建物の物納許可額である。
B 不動産貸付けに係る課税売上げの額は、請求人の平成8年分所得税青色決算書(不動産所得用)に記載されている総収入金額98,129,961円から消費税法第6条第1項の規定に基づき非課税となる部分の金額(以下「非課税売上げの額」という。)55,135,860円を控除し、平成8年分所得税確定申告において申告漏れとなっていたGからの駐車場賃貸料40,170円を加算した金額である。
C 農業に係る課税売上げの額は、請求人の平成8年分所得税青色申告決算書(農業所得者用)に記載されている総収入金額である。
D 以上の結果、請求人の本件課税期間に係る課税売上げの額は別表3の「原処分庁主張額」欄の〔4〕のとおり108,023,387円である。
(ロ)課税標準額及び消費税額
 課税標準額は、上記(イ)のDの課税売上げの額に103分の100を乗じた金額となり、また、消費税額は、課税標準額に100分の3を乗じた金額で、それぞれ別表4の「原処分庁主張額」欄の〔2〕及び〔3〕のとおり課税標準額104,877,000円、消費税額3,146,310円である。
(ハ)控除対象仕入税額
 仕入れに係る消費税額として控除の対象となる税額(以下「控除対象仕入税額」という。)は、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号に規定する方法により算定した次のAとBの合計領であり別表5の「原処分庁主張額」欄の〔15〕のとおり107,722円である。
A 課税仕入れに係る消費税額(以下「課税仕入税額」という。)のうち、課税資産の譲渡等のみに要する額は、請求人が確定申告書に記載した75,159円である。
B 請求人は、平成8年5月に店舗及び住宅用の賃貸ビルに係る水道修理費用として1,705,799円を支出していることから、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入税額は、当該金額に103分の3を乗じて算定した金額49,683円となり、そのうち控除対象仕入税額に加算される金額は、この49,683円に課税売上割合を乗じて算定した金額であり、別表5の「原処分庁主張額」欄の〔14〕のとおり32,563円である。
ニ 以上の結果、請求人の納付すべき税額は、別表6の「原処分庁主張額」欄の〔5〕のとおり3,038,500円となり、本件更正処分の納付すべき税額3,037,400円を上回るから、本件更正処分は適法である。
ホ 以上のとおり、本件更正処分は適法であり、また、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づき行った過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

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3 判断

(1)消費税の課税の適否について

 請求人は、相続税の物納による資産の譲渡は、事業としての行為ではなく、かつ、本件マンションは、消費税が非課税とされる住宅の貸付けの用に供していた資産であるから事業資産ではないなどとして、本件物納は、消費税の課税対象とはならない旨主張するので、以下審理する。
イ 本件に関する消費税法等の規定及びその趣旨は、次のとおりである。
(イ)消費税法第4条第1項は、国内において事業者が行った資産の譲渡等には、消費税を課する旨規定している。
(ロ)ここでいう資産の譲渡等とは、消費税法第2条第1項第8号において、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨規定している。
(ハ)更に消費税法第2条第1項第8号は、事業として対価を得て行う資産の譲渡には、代物弁済による資産の譲渡も含まれる旨規定している。なお、代物弁済による資産の譲渡とは、債務者が債権者の承諾を得て、約定されていた弁済の手段に代えて他の給付をもって弁済する場合の資産の譲渡をいうものと解される。
(ニ)また、消費税法施行令第2条第3項において、資産の譲渡等には、その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡等を含む旨規定しているところ、その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡等とは、事業活動の一環として又はこれに関連して行われる資産の譲渡等を含み、事業の用に供している建物及び機械等の譲渡は、事業として対価を得て行う資産の譲渡等に該当するものと解される。
 したがって、非課税取引又は免税とされる以外のものは、それが事業として又はその付随行為として対価を得て行われる資産の譲渡である限り、その原因を問わず消費税の課税対象となると解するのが相当である。
(ホ)相続税法第41条で規定する物納は、相続税について金銭により納付することを困難とする事由がある場合に、納税義務者の申請により税務署長の許可を得て、金銭に代えて不動産等をもって相続税の納付に充て自己の租税債務を消滅させるものである。
 したがって、物納も、債務者が債権者の承諾を得て、その債権の目的物に代えて他の給付で債務を消滅させるとの要件を充足し、代物弁済に当たるといえる。
ロ しかるところ、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、本件マンションは元来賃貸用マンションであったところ、請求人は物納許可の2カ月から3カ月前に入居者を退去させ空室状態にしたが、これは本件マンションを物納するに当たり空室状態にすることが物納の許可条件であったことからなされたもので、事業用資産が遊休状態になっているだけのことであるから、本件マンションは、請求人が営む不動産貸付業の用に供している資産であることに何ら変わりがないものと認められる。
ハ そうすると、本件物納は、課税事業者である請求人が不動産貸付業の用に供している本件マンションをもって相続税について代物弁済したものであるところ、代物弁済は、上記イの(ハ)のとおり、資産の譲渡等に該当し、また、上記イの(ニ)のとおり、事業の用に供している建物の譲渡は、その譲渡の原因が何であるかにかかわらず、事業活動に関連して行われる資産の譲渡として事業に付随したもので、事業として対価を得て行う資産の譲渡等に該当すると解されるのであるから、本件物納が、請求人の相続税を納付するためのものであったとしても、消費税法第4条第1項にいう事業者の行った資産の譲渡等に該当すると認めるのが相当である。
 なお、消費税法第6条第1項の別表第一の第1号において、土地の譲渡については、消費税を課さないこととされていることから、本件物納のうち、本件土地に係る部分については、消費税は課されないこととなり、本件建物に係る部分のみが消費税の課税対象となる。
 したがって、相続税納付のための物納による資産の譲渡は、事業として行う資産の譲渡には当たらないとする請求人の主張には理由がない。
ニ 請求人は、本件マンションは、消費税が非課税とされる住宅の貸付けの用に供していた資産であるから事業資産ではない旨主張するが、対価を得て行われる住宅の貸付けは消費税法第2条第1項第8号に規定する資産の譲渡等には該当するものの、政策的理由から消費税法第6条第1項で非課税としているもので、これをもって、請求人が営む不動産貸付業の用に供している本件マンションが事業用資産ではないとする請求人の主張には理由がない。
ホ また、請求人は、居住用の貸家については仕入れに係る消費税額の控除ができないことから、同控除のできない資産を代物弁済に充てても課税資産の譲渡等には該当しない旨主張する。
 しかし、消費税法第35条《非課税業務用調整対象固定資産を課税業務用に転用した場合の仕入れに係る消費税額の調整》では、国内において非課税業務用に供する目的で建物等の課税仕入れを行った事業者が、非課税業務による資産の譲渡等にのみ要するものとして控除対象仕入税額がないこととした場合においても、当該建物等を、当該課税仕入れの日から3年以内に課税業務の用に転用した場合には、当該業務の用に供した日の属する期間に応じて、当該建物等の課税仕入税額のうち一定の額を当該業務の用に供した日の属する課税期間の控除対象仕入税額に加算し、当該加算をした後の金額を当該課税期間における控除対象仕入税額とみなす旨規定している。
 そして、本件物納について、控除対象仕入税額に加算することができないのは、本件物納が、課税仕入れのあった日から3年以内に課税資産の譲渡等に係る業務の用に供した場合には該当しないためである。
 更に、消費税法上は、資産の譲渡等が課税資産の譲渡等に該当するか否かは当該資産の譲渡等があった日の属する課税期間において、また、当該資産の課税仕入税額が控除対象仕入税額となるか否かは、原則として当該資産の課税仕入れのあった日の属する課税期間においてそれぞれ判定することとなるのであるから、当該資産の課税仕入れに係る消費税額が控除対象仕入税額にならないことを理由として、その後の当該資産の譲渡等が課税資産の譲渡等に該当しないということはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
ヘ 請求人は、物納による資産の譲渡については、所得税を課さない旨の法令の規定があるから、消費税についても同様に非課税とすべきであり、消費税の課税事業者のみが課税となるのは不公平である旨主張する。
 しかしながら、消費税法には、物納による資産の譲渡が非課税である旨の規定はなく、他の法令に物納について同法第4条第1項の規定を適用しない旨の規定もなく、本件物納のうち本件建物に係る部分が消費税の課税対象となることについては、上記ハのとおりであることから、原処分に違法は認められない。
ト 以上のとおり、請求人の主張にはいずれも理由がなく、本件物納が消費税法第4条第1項に規定する課税の対象となる資産の譲渡等に該当するとした原処分は適法である。
 なお、物納財産の所有権の移転の時期は、物納許可の日と解するのが相当であるから、本件物納についても、物納許可の日に資産の譲渡があったものと認めるのが相当である。

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(2)課税標準等について

イ 課税売上げの額
(イ)本件物納に係る課税売上げの額
A 本件物納は、請求人の支払うべき相続税について、事業の用に供している本件マンションにより代物弁済したものと認められるところ、代物弁済した場合の対価の額は、消費税法施行令第45条《課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準の額》第2項第1号により「当該代物弁済により消滅する債務の額に相当する金額」と規定されていることから、本件物納により消滅する相続税の額、すなわち本件物納許可額をもって資産の譲渡等の対価の額とするのが相当である。
B したがって、本件物納に係る課税売上げの額は、本件物納許可額のうち本件建物の物納許可額64,404,476円となる。
(ロ)不動産貸付けに係る課税売上げの額
A 請求人は、原処分庁の所得税調査の際に、Gからの駐車場賃貸料の3カ月分40,170円が申告漏れである旨指摘されたことに伴い、平成10年6月15日に平成8年分の所得税の修正申告書を原処分庁に提出しているが、本件課税期間の消費税の確定申告においては、上記40,170円を課税売上げに計上していないことから、当審判所の調査によっても、当該金額を課税売上げに含めるべきものと認められる。
B 請求人は、平成8年分所得税青色決算書(不動産所得用)の収入金額の内訳の「賃貸料」欄の一部について、駐車場賃貸料と住宅賃貸料との合計金額で記載し、「用途」欄を「住」と記載して非課税売上げである住宅用としているところ、当審判所の調査によれば、当該金額のうち駐車場賃貸料相当額998,160円は課税売上げに当たると認められる。
C 請求人は、平成8年分所得税青色決算書(不動産所得用)の収入金額の内訳の貸借人Hの「用途」欄を「住」と記載し、非課税売上げである住宅用としているところ、当審判所の調査によれば、その用途は事務所であるから、当該賃貸料及び更新料1,087,620円は課税売上げに当たると認められる。
D 以上の結果、不動産貸付けに係る非課税売上げの額を含む資産の譲渡等の額は、請求人の申告額98,129,961円に上記Aの40,170円を加算した98,170,131円であり、そのうち、課税売上げの額は、請求人が申告した課税売上げの額42,994,101円に上記AからCの合計額2,125,950円を加算した金額45,120,051円となる。
(ハ)農業に係る課税売上げの額
 原処分庁は、農業に係る課税売上げの額は、請求人の平成8年分所得税青色決算書(農業所得用)の収入金額584,640円としているところ、当審判所の調査によっても、原処分庁の認定額は相当と認められる。
(ニ)したがって、請求人の本件課税期間に係る課税売上げの額は、別表3の「審判所認定額」欄の〔4〕のとおり110,109,167円となる。
ロ 課税標準額及び消費税額
 課税標準額は、請求人が消費税込みの経理を採用していることから、上記イの(ニ)の課税売上げの額に103分の100を乗じた金額となり、また、消費税額は、当該課税標準額に100分の3を乗じた金額で、それぞれ別表4の「審判所認定額」欄の〔2〕及び〔3〕のとおり課税標準額106,902,000円、消費税額3,207,060円となる。
ハ 控除対象仕入税額
 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、請求人は、課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等を有する課税事業者であることが認められ、請求人の本件課税期間に係る控除対象仕入税額は、消費税法第30条第2項の規定に基づき以下により算定することとなる。
(イ)課税資産の譲渡等のみに要する課税仕入税額
 原処分庁は、課税資産の譲渡等のみに要する課税仕入税額を75,159円と認定しているところ、当審判所の調査によれば次のとおりである。
A 不動産貸付けに係る課税仕入額は、次のとおりである。
(A)請求人が不動産の貸付けに係る課税仕入額として申告した支払手数料40,170円。
(B)請求人が不動産の貸付けに係る課税仕入額として申告した管理費261,521円のうち、賃貸ビルの受水槽清掃費179,110円は、下記(ロ)のBに該当することが明らかであるため、当該金額を除いた82,411円。
(C)請求人が所有する賃貸マンションの管理組合に支払った管理費4,893,080円のうち、駐車場収入に係る駐車場管理費2,448,000円。
(D)請求人が支出した修繕費のうち、賃貸ビルの店舗用ケーブルテレビのアンテナの修繕費35,020円。
(E)以上の結果、不動産貸付けに係る課税仕入額は、別表5の「審判所認定額」欄の〔5〕のとおり2,605,601円となる。
B 農業に係る課税仕入額2,278,795円については、当審判所の調査によっても相当と認められる。
C 以上の結果、課税資産の譲渡等のみに要する課税仕入額は、上記AとBの合計額4,884,396円となり、課税仕入税額は、当該金額に103分の3を乗じて計算すると、別表5の「審判所認定額」欄の〔8〕のとおり142,263円となる。
(ロ)誤税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入税額
 原処分庁は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入税額を32,563円と認定しているところ、当審判所の調査によれば次のとおりである。
A 原処分庁は、請求人が平成8年5月に支出した店舗及び住宅用の賃貸ビルに係る水道修理費用1,705,799円を課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入額であることが明らかにされていると認定しているところ、当審判所の調査によっても原処分庁の認定は相当と認められる。
B ところで、当審判所の調査によれば、上記(イ)のAの(B)の受水槽清掃費179,110円は、明らかに課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入額となることが認められる。
C そうすると、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入額は上記AとBの合計額1,884,909円となり、課税仕入税額は当該金額に103分の3を乗じた金額54,900円となるが、控除の対象となる課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入税額は、この金額に後記(ニ)のCの課税売上割合を乗じて計算することとなり、別表5の「審判所認定額」欄の〔14〕のとおり26,140円となる。
(ハ)控除対象仕入税額
 以上の結果、控除対象仕入税額は、別表5の「審判所認定額」欄の〔15〕のとおり168,403円となる。
(ニ)課税売上割合
 消費税法第30条第6項及び同法施行令第48条《課税売上げ割合の計算方法》第1項の規定に基づき、本件課税期間の課税売上割合を計算すると以下のとおりである。
A 課税売上割合を計算するに当たって、消費税額を除く課税売上げの額を計算すると、上記イの(ニ)の課税売上げの額110,109,167円に103分の100を乗じた金額106,902,103円となる。
B 不動産貸付けに係る非課税売上げの額は、次のとおりである。
(A)原処分庁は、不動産貸付けに係る非課税売上げの額を上記2の(2)のハの(イ)のBのとおり55,135,860円と認定しているところ、当審判所の調査によれば、当該金額のうち、上記イの(ロ)のBの駐車場賃貸料相当額998,160円及び上記イの(ロ)のCの事務所の賃貸に係る更新料1,087,620円は、いずれも課税売上げに当たると認められる。
 したがって、不動産貸付けに係る非課税売上げの額は、これらの金額を差し引いた金額53,050,080円となる。
(B)さらに、本件の場合は、上記(1)のハの(ロ)のとおり、本件土地の物納についても、事業として対価を得て資産の譲渡があったものとみなされることとなるものの、上記(1)のハのとおり、本件土地の物納については消費税は課税されないこととなるのであるから、本件土地の物納許可額64,560,828円は、非課税売上げの額に計上すべきこととなる。
(C)そうすると、本件課税期間に係る非課税売上げの額は、別表5の付表の「審判所認定額」欄の〔5〕のとおり117,610,908円となる。
C 以上の結果、課税売上割合は、別表5の付表の「審判所認定額」欄の〔7〕のとおり224,513,011円分の106,902,103円となる。
ホ 限界控除税額
 限界控除税額は、消費税法第40条《小規模事業者等に係る限界控除》第1項(平成6年法律第109号による改正前のもの。)の規定に基づき、当該課税期間の課税売上高が50,000,000円未満の事業者について適用されるところ、請求人は、消費税額を除く課税売上げの額が106,902,103円であり、50,000,000円を超えているから、同条の規定は適用されないこととなる。
 したがって、限界控除税額を零円とした原処分庁の認定は相当である。
ヘ 納付すべき税額
 以上の結果、請求人の本件課税期間の消費税の納付すべき税額は、別表6の「審判所認定額」欄の〔5〕のとおり3,038,600円となる。

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(3)本件更正処分について

 請求人の本件課税期間の納付すべき税額は、上記(2)のヘのとおり本件更正処分の納付すべき税額を上回るから、本件更正処分は適法である。

(4)過少申告加算税について

 過少申告加算税の賦課決定処分については、本件更正処分が上記(3)のとおり適法であり、また、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定により過少申告加算税の賦課決定をした原処分は適法である。

(5)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 よって、本件審査請求には理由がない。

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