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(平13.3.29裁決、裁決事例集No.61 337頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、不動産賃貸業を営むJが、K相互会社(以下「K社」という。)に譲渡した土地が租税特別措置法(平成10年法律第21号、23号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第37条《特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例》第1項に規定する事業用資産(以下「事業用資産」という。)に当たるか否か及び重加算税の賦課決定の適否を争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ Jは、平成9年分の所得税について、青色の確定申告書(分離課税用)(以下「平成9年分確定申告書」という。)に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
 その後、Jは、平成10年12月16日に総所得金額、分離長期譲渡所得の金額及び納付すべき税額を別表1の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をした。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成11年7月8日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をするとともに、同日付で別表1の「更正処分等」欄のとおりとする更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び重加算税の賦課決定処分(以下、「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)をした。
ハ Jは、これらの処分を不服として、平成11年9月7日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成11年12月8日付でいずれも棄却の異議決定をした。
ニ Jは、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成12年1月7日に審査請求をした。
ホ その後、Jは、平成12年6月6日に死亡したので、相続人Lほか1名は本件審査請求における審査請求人の地位を承継したものであるが(以下、Jを「被相続人」といい、Lほか1名を「請求人ら」という。)、本件更正処分等に伴う請求人らの納付義務の承継額は別表2のとおりである。
 なお、請求人らはLを総代として選任し、その旨を平成12年8月17日に届け出た。

(3)基礎事実

 以下の事実については、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 被相続人は、所有していたM市N字P55番1の土地546.00平方メートルを平成9年3月7日に分筆登記をした。
 なお、分筆された土地の地番は55番4及び地積は149.15平方メートルと表示されている。
ロ 被相続人及びLは、所有していた別表3に掲げる土地(以下「本件土地」という。)を平成9年3月24日に、K社に153,252,000円で譲渡(以下「本件譲渡」という。)する不動産売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。
ハ 平成9年分確定申告書には、本件土地の譲渡所得の金額の計算において措置法第37条第1項の規定による特例(以下「本件特例」という。)を適用した旨記載され、かつ、次の書類が添付されている。
(イ)譲渡した本件土地の買換資産として、平成10年12月1日に被相続人の持分が37,079,587円に相当する建物を取得する予定である旨を記載した買換え承認申請書
(ロ)平成8年10月1日付で賃貸人を被相続人、賃借人をQ株式会社Z支店(以下「Q社」という。)、賃貸借物件を別表4に掲げる土地(以下「本件賃貸借契約土地」という。)、賃貸期間を平成8年10月1日から平成9年9月30日まで及び賃借料を1か月50,000円とする旨の土地賃貸借契約(以下「本件土地賃貸借契約」という。)に係る契約書(以下「本件土地賃貸借契約書」という。)写し
ニ 本件土地賃貸借契約の賃借人であり、また、本件土地をK社に紹介した者でもあるQ社は、平成9年7月に破産した。なお、代表取締役はRである。

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2 主張

(1)原処分庁の主張

 原処分は、次のとおりいずれも適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件通知処分について
 請求人らは、本件売買契約によりK社に対して譲渡した本件土地は、従前から賃貸の用に供しており、譲渡した時点においても本件土地賃貸借契約により賃貸しており、その賃貸料も平成9年3月31日に300,000円(以下「本件金員」という。)がS銀行T支店の被相続人名義の普通預金口座(口座番号○○○○)に振り込まれているから、事業用資産に該当する旨主張する。
 しかしながら、次に述べるとおり本件土地は事業用資産に該当しない。
(イ)K社が本件土地の譲受けに至るまで被相続人等との交渉内容等を記載した折衝記録及びK社不動産部のi主任の申述並びに本件土地の近隣住民の申述によれば、次の事実が認められる。
A Q社U営業所の所長であるV(以下「V」という。)及び被相続人の長女の夫であるW(以下「W」という。)らは、平成8年7月1日、同年8月1日及び同年8月28日にK社X支社を訪れ、本件賃貸借契約土地の賃貸の申し出を行っている。
B 平成8年9月上旬に、被相続人側からK社X支社に対し、本件賃貸借契約土地について、改めて条件さえ折り合えば売却可の申し出を行った。
C 平成8年9月20日付で「K相互会社X支社Y営業所土地物件資料」(以下「本件土地物件資料」という。)がQ社名で作成されている。
 なお、本件土地物件資料は、Q社からK社X支社に提出されている。
D 被相続人、W及び平成9年1月までQ社の営業部長でありそれ以降はZ支店長であるa(以下「a」という。)らは、平成8年10月18日に被相続人の自宅において、本件賃貸借契約土地の売却に関してK社X支社に対する要望事項等について協議している。
 そして、本件賃貸借契約土地の全面積の買取り及び売却希望価額(坪単価)等の要望事項をまとめた「K社Y営業所に関する報告書」(以下「本件報告書」という。)は、平成8年10月28日にQ社からK社X支社に提出されている。
 なお、本件報告書には、被相続人及びWの氏名が明記されている。
E 被相続人が、K社X支社に対し平成9年3月4日付で提出した本件土地の売渡承諾書(以下「本件承諾書」という。)には、売渡しの条件として、本件土地は、事実上も法律上もなんら瑕疵及び負担のない更地の状態で引き渡す旨が記載されている。
F 被相続人、W、Q社及びK社の専任専属媒介者である株式会社b(以下「b社」という。)は、平成9年3月18日付で、売渡対象面積を981.85平方メートルとする等を条件に本件土地をK社に売却する旨の覚書(以下「本件覚書」という。)を取り交わしている。
G 本件土地は1か月間程度資材置場となっていた時期もあったが、それ以外は空地の状態であった。
(ロ)aは、異議審理庁所属の調査担当職員に対し、要旨次のとおり申述している。
A Q社は、本件賃貸借契約土地を賃借していた事実はなかった。
B 本件金員は、被相続人から本件賃貸借契約土地の売却交渉を依頼されたQ社が、その全部の土地を売却できなかったことから、その残地の補償をしたものだと思う。
(ハ)上記(イ)の一連の事実から判断すると、本件土地の譲渡は、被相続人側からのいわゆる売り申し込みと認められ、その交渉は本件土地賃貸借契約書に記載された契約年月日である平成8年10月1日以前から始まっており、かつ、その過程においては、そのほとんどに本件土地賃貸借契約書上の賃借人であるQ社が関与していることが認められ、これらを併せ考えると、本件土地賃貸借契約の締結そのものは、売ろうと交渉中の土地を一方では賃貸するという、全く矛盾する内容のものであることから、被相続人及びQ社の両者には、本件賃貸借契約土地を賃貸借する必要性は認められなかったとみるのが相当である。
(ニ)また、本件土地賃貸借契約書には、契約日現在において存在しない平成9年3月7日にM市N字P55番1の土地から分筆登記された同所55番4の土地が賃貸借物件として表示されていること及びaは、上記(ロ)のAのとおりQ社が本件賃貸借契約土地を賃借していた事実はなかった旨申述していることから、本件土地賃貸借契約書は、本件土地の売却が具体化した平成9年3月7日以後に、賃貸借の始期を溯って作成したと判断される。
(ホ)さらに、本件金員については、平成9年3月18日に被相続人がQ社とb社を立会人として、〔1〕被相続人は本件譲渡のため本件賃貸借契約土地を分筆する旨及び〔2〕分筆後の隣接残宅地内にQ社の費用負担で上下水道の引込み等の工事を行う旨の覚書を取り交わしていること、また、aは、上記(ロ)のBのとおり本件金員は、Q社が被相続人から本件賃貸借契約土地の売却交渉を依頼されたが、その全部を売却できなかったことからその残地の補償をしたものだと思う旨申述していること及び上記(ハ)及び(ニ)で述べたとおり、Q社が本件土地を賃借した実体が認められないことから、Q社が本件賃貸借契約土地を全部売却できなかったことによるその残地に対する補償のような性格の金員と認められ、本件賃貸借契約土地の賃貸料とは言えない。
 以上のことから、本件土地は、租税特別措置法施行令(以下「措置法施行令」という。)第25条《特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例》第2項に規定する資産に該当しないから、請求人らが主張する本件土地に係る「相当の対価」及び「継続的な貸付け」について審理するまでもなく、本件特例を適用することはできない。
 したがって、譲渡した本件土地に代わって取得する予定であった建物の取得者及び取得価額に変更があったとしても、本件更正の請求には更正すべき理由がないから、本件通知処分は適法である。
ロ 本件更正処分等について
(イ)本件更正処分
 上記イで述べたとおり、本件土地は措置法施行令第25条第2項に規定する資産には該当しないから、本件特例の適用がないとして行った本件更正処分は適法である。
(ロ)本件賦課決定処分
 本件土地賃貸借契約書は、上記イの(ハ)ないし(ホ)のとおり、被相続人が、そもそも本件土地について賃貸借の実体がないにもかかわらず、本件特例を受けんがために本件土地が事業用資産に該当するかのように装うため作成したものと言わざるを得ない。
 この行為は、国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項に規定する事実を仮装したところに基づき納税申告書を提出した場合に該当することから、同項の規定に基づき行った本件賦課決定処分は適法である。

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(2)請求人らの主張

 原処分は、次の理由によりいずれも違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件通知処分について
 被相続人は、次に述べるとおり、事業用資産に該当する本件土地を譲渡し、譲渡した本件土地の代わりに本件土地の一部を共有していたLと建物を取得する見込みであったことから、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算において本件特例を適用して確定申告したが、その後、建物を取得する者は被相続人1名に変更したこと及び取得予定の建物の取得価額を37,079,587円から39,900,000円に変更したことにより本件更正の請求をしたもので、本件更正の請求には正当な理由がある。
(イ)被相続人は、本件賃貸借契約土地を平成4年12月24日以前は水田として耕作していたものであるが、平成4年12月25日から平成5年8月31日までd株式会社(以下「d社」という。)に貸付けていた。d社では、県からf川護岸工事を請け負ったため、本件賃貸借契約土地を荒造成の上、現場事務所及びトイレ等を設置したほか建設機械(重機)及び建設資材等集配場として使用していた。なお、賃貸料は、本件賃貸借契約土地の荒造成費と相殺したため直接金銭の授受はなかった。また、d社は、上記護岸工事が延長したため、それに伴って平成5年9月1日以降ほぼ全工期期間賃借を継続した。その際の利用状況及び賃借料等の条件は、工期延長前と同じである。
 さらに、平成7年4月27日から同年8月31までは、g株式会社(以下「g社」という。)へ賃貸しており、賃貸期間は、その後、機械等整理の上引揚げするまでの間延長された。g社では、本件賃貸借契約土地を工事用機械置場として使用していた。
 なお、賃貸料は、各月91,350円とし、3回(5月9日、6月12日及び8月10日)の送金により収受している。
(ロ)被相続人は、平成7年11月から平成8年8月まで本件賃貸借契約土地の賃貸を一時的に中断したが、その後、Q社に対して本件賃貸借契約土地の使用を了解していたところであるが、Q社の都合で平成8年10月1日付で本件賃貸借契約を締結した。賃貸期間を1年としたのは、賃貸条件を1年ごとに更新できるためである。
 Q社の賃借目的は、本件賃貸借契約土地をh南部方面の営業活動の拠点にするためといわれ、賃借当初は、常時、建設機械・資材の置場、機材の検収及び駐車場用地等として利用していた。
 なお、賃貸料は、1か月50,000円の年額600,000円とし、平成9年3月31日及び同年9月30日の2回に分けて受領することとした。しかし、Q社が業況不振で自己破産に追い込まれたため、請求人は、賃貸料を本件譲渡のあった月までの分として平成9年3月31日に300,000円を受領している。
(ハ)措置法施行令第25条第2項に規定する相当の対価について、賃貸料がいかほどが相当の対価かは法令に明文の規定はないが、「租税特別措置法(山林・譲渡所得関係)の取扱について」(平成3年12月18日付課資3−2、課所4−6の国税庁長官通達をいい、以下「措置法通達」という。)37−3《事業に準ずるものの範囲》によれば、固定資産税その他の必要経費を回収した後において、なお相当の利益が生ずるような対価を得ているかどうかにより判定する旨定めている。
 地代収入の場合、一般的には、固定資産税が唯一の必要経費であり、本件賃貸借契約土地に係る平成8年分の支払固定資産税額は、208,700円であるから、その利益率は、65.22%と高率となっている。
 ちなみに、当該地域の田の場合の平均所得額は10a当たり整理地で約88,600円程度で、利益率は14.8%程度であることと比較しても、本件賃貸借契約土地は高収益を上げているものといえる。
(ニ)ところで、原処分庁は、本件賃貸借契約土地には、Q社との賃貸借事実の実体が認められないと認定している。
 しかしながら、これは次のとおり事実の誤認又は推測に基づくものである。
A Wは、本件賃貸借契約土地の賃貸の申出のためにK社X支社へ行った記憶もなければ、K社のi主任とは面識がない。本件賃貸借契約土地は、K社側から用地買取の打診があり、価額面で折り合わず被相続人から打ち切った。
B K社に提出されたとする本件土地物件資料は、Q社とK社との関係で被相続人は何ら関知しない。
C 本件賃貸借契約土地の売却について要望事項等を協議したと主張する平成8年10月18日には、被相続人はk病院に入院中であり、また、この時期にaと協議した事実もない。
したがって、K社に提出されたとする本件報告書については、被相続人は関知しないし、何ら関係がない。
D 本件土地賃貸借契約書は、Q社の必要性から作成されたものであり、〔1〕Q社は当初からM市N字P55番1の分筆を考えていたもので、分筆後の地番は必然的に55番4となることは常識であること、〔2〕賃貸借の面積は、分筆前の全面積で記載されていることなどから、本件土地賃貸借契約書が平成9年3月7日以後に作成されたという原処分庁の判断には初歩的な誤りがある。
E aは、当方の調べに対し、「〔1〕本件賃貸借契約土地をQ社が賃借していたかどうかは、平成9年1月までQ社の支店長の職にあったm(以下「m」という。)が専担し、自分は関係していないこと、〔2〕本件金員は、mが決めたことで残地補償と言うことかと思ったという程度で、事の重要さの認識もなく税務署の調査担当者に申述した」と言っている。
 以上のとおり、被相続人は、本件賃貸借契約土地を継続的に賃貸の用に供しており、本件譲渡時においても相当の利益が生ずるような対価を得ていたものと判断されたことから、本件土地の譲渡は、措置法第37条に規定する事業用資産の譲渡に該当するものと判断したものである。
 したがって、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算においては本件特例を適用すべきであるから、被相続人の課税される所得金額は79,990,000円となり、納付すべき税額は○○○円過大となる。
ロ 本件更正処分等について
(イ)本件更正処分
上記イで述べたとおり、被相続人は、事業の用に供していた本件土地を譲渡し、本件土地の代わりに建物を取得する予定であったことから、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算において本件特例を適用したことは適法であり、本件更正処分はその全部を取り消すべきである。
(ロ)本件賦課決定処分
 被相続人は、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算において、本件特例の適用があるものとの判断により本件特例を適用したもので、ことさら事実を仮装し、又は隠ぺいして課税を免れようとした事実は全くない。
 したがって、通則法第68条第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したとき」には該当する事実がないから、本件賦課決定処分はその全部を取り消すべきである。

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3 判断

 本件土地が措置法第37条第1項に規定する事業用資産に当たるか否か及び重加算税の賦課決定の適否に争いがあるので、以下審理する。

(1)本件通知処分について

イ 請求人らの提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)Q社のV及びnは、平成8年7月1日にWと面接し、本件賃貸借契約土地について譲渡の意思があるかどうかを確認したところ、被相続人に話をしてみるとの回答を得た。
(ロ)K社X支社は、平成8年7月17日に本社に対し、K社Y営業所の候補地としてQ社から紹介された本件賃貸借契約土地について連絡した。
(ハ)a及びVは、本件賃貸借契約土地に係る所有者側の要望を確認するため、平成8年10月18日に被相続人宅を訪問し、被相続人、W及び請求人らと面談した。
 なお、土地所有者側の要望内容は、次のとおりである。
一 全面積、買取を要望
一 北側アパートの日照を考慮して欲しい
一 開発行為の申請が必要
一 坪単価を出して欲しい(手取りで45万〜50万位を希望)
一 節税対策を考えて欲しい
一 早くの返答をお願いしたい
(ニ)Vは、平成8年10月29日にK社本社を訪れ、本件賃貸借契約土地の図面を持参するとともに、上記(ハ)の要望内容を説明した。
(ホ)本件覚書は、本件土地をK社に売買するに当たり、売主被相続人及び売主の代理人Wと紹介者Q社との間で取り交わされたものであり、要旨次の内容が記載されている。
 分割後の隣接宅地の敷地内にQ社の費用負担で、下記工事を設置する。本覚書締結後、1ケ年以内に完成して被相続人に引き渡す。
A 公共上水道の引込み
B 公共下水道の汚水桝
C 県道側よりの進入路(24条申請による)を確保する
D 当敷地周囲のフエンス及び土留め工事等は、甲(売主)、乙(紹介者)協議の上、経済的な事情も考慮しながら、工法を決定する
(ヘ)被相続人は、Q社の破産に伴い、平成9年10月21日付でr地方裁判所(以下「r地裁」という。)民事第○○部に対し、破産者Rに対する平成9年(○)第○○号破産事件について、上記(ホ)の覚書による約束事項に基づく債権額を11,691,750円とする債権届出書を提出した。
ロ aは、当審判所に対し、要旨次のとおり答述している。
(イ)本件賃貸借契約土地については、K社に営業所建築の予定があったことから、Q社が営業所建築請負の受注活動のためにK社に紹介したものである。
(ロ)本件賃貸借契約土地の売買に関し、平成8年の秋頃に私とVで被相続人、請求人ら及びWに会った。その際、Wが被相続人及びLから本件賃貸借契約土地を売却することについての了解を取った。
(ハ)Q社がK社の営業所建築の受注のために本件賃貸借契約土地を賃借するということはVから聞いたが、本件土地賃貸借契約書が作成されていたことについては、s税務署の調査担当者から当該契約書を示されて知った。
(ニ)しかし、Q社が本件賃貸借契約土地に資材を置いたり、駐車等で使用した記憶はない。
(ホ)本件金員は、Q社が本件賃貸借契約土地をK社に紹介するため押さえたことから生じた費用である。
ハ 平成5年11月から平成9年7月までQ社の総務課長の職にあったt(以下「t」という。)は、当審判所に対し、要旨次のとおり答述している。
(イ)K社に営業所を建築したい希望があり、mが当時活動していたことは知っていた。本件土地の売買の半年位前に、mは、「Wは、本件賃貸借契約土地を早く処分したがっている。また、K社側は、社内稟議に時間がかかるので、Q社で本件賃貸借契約土地を賃借する。」と話していた。
(ロ)本件土地賃貸借契約書は、Vが作成したものと思う。賃貸借の契約日は不明だが、本件土地賃貸借契約書には私がQ社の社判及び代表者の印を押印した。
(ハ)当時、Q社では、資材置場としてh市u町yに借地があったことから、本件賃貸借契約土地の賃貸借については、K社に土地を紹介し、営業所の建築を受注するため確保することが目的のもので、本件土地賃貸借契約書はあっても、借地の実際の使用はなかった。
(ニ)本件金員は、本件土地賃貸借契約書に基づき支払ったものである。
ニ ところで、措置法第37条第1項に規定する事業用資産とは、営利を目的として自らの危険と計算において、継続的に行う事業のために使用する資産をいい、原則として譲渡当時、現実、かつ、継続的に事業の用に供されているものをいうと解されている。また、同項に規定する事業に準じるものとして政令で定めるものについて、措置法施行令第25条第2項は、事業と称するにいたらない不動産又は船舶の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものとする旨規定している。
 また、継続的に貸付け等の行為を行っているかどうかについては、措置法通達37−3(2)ロで、原則として、その貸付け等に係る契約の効力の発生した時の現況においてその貸付け等が相当期間継続して行われることが予定されているかどうかによる旨を定めている。この措置法通達の定めは、当審判所においても合理的と認めるものである。
ホ 上記イないしハの各事実及び関係者の答述を上記ニに照らし判断すると、次のとおりである。
(イ)本件賃貸借契約土地については、上記イの(イ)ないし(ハ)のとおり、Q社が、K社Y営業所の建築受注を目的として、平成8年7月頃からWと面接し、被相続人の意向を確認の上、K社に紹介したものであるが、被相続人は、平成8年10月18日にはK社に対する譲渡について、Q社と要望事項等を協議している事実があることからすると、同日頃には譲渡の意思があったものと認められる。
 そうすると、被相続人は、本件賃貸借契約土地について、請求人らが主張する本件賃貸借契約土地の賃貸借契約日である平成8年10月1日からわずか3週間足らずで譲渡する意思表示をしたものであることから勘案すると、本件賃貸借契約土地の賃貸借は、本件土地が譲渡されるまでの間、一時的にQ社に賃貸することとして賃貸借契約を結んだものと認めるのが相当である。
(ロ)上記(イ)の認定事実、さらには、本件土地賃貸借契約は、賃貸借期間を1年としていること及び賃貸借期間を1年としたことについての請求人らの主張を裏付けるに足りる証拠も認められないことを総合勘案すると、本件賃貸借契約土地の貸付けが相当期間継続して行われることが予定されていたものとは認められない。
 したがって、本件土地の賃貸は、措置法施行令第25条第2項に規定する相当の対価を得て継続的に行う事業に準ずるものには該当しないと認めるのが相当である。
 また、本件金員については、上記(イ)のとおり本件賃貸借契約土地を一時的にQ社に賃貸した賃貸料と認めるのが相当である。
 なお、原処分庁は、本件金員については、本件賃貸借契約土地の一部が売れ残った残地に対する補償のような金員と認められ本件賃貸借契約土地の賃貸料とは言えないと主張する。
 しかしながら、被相続人は、本件賃貸借契約土地の一部がK社に譲渡できなかったことによる補償として、上記イの(ホ)のとおり本件覚書を取り交わしていること、また、その後、Q社の破産に伴い上記イの(ヘ)のとおりr地裁に債権届出書を提出している事実が認められることから、本件金員は残地の補償のような金員と認められる旨の原処分庁の主張は当を得ておらず採用することができない。
(ハ)以上のとおり、本件譲渡は、措置法第37条第1項に規定する事業(事業に準ずるものを含む。)の用に供していた資産の譲渡には該当しないから、請求人らのその余の主張について審理するまでもなく、本件譲渡に係る分離長期譲渡所得の金額の計算において、本件特例を認めないとした本件通知処分は適法である。

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(2)本件更正処分等について

イ 本件更正処分
 上記(1)で判断したとおり、本件土地の賃貸は、措置法施行令第25条第2項に規定する相当の対価を得て継続的に行う事業に準ずるものには該当しないと認めるのが相当であり、本件譲渡は、措置法第37条第1項に規定する事業(事業に準ずるものを含む。)の用に供していた資産の譲渡には該当しない。
 以上の結果、請求人の平成9年分の総所得金額、分離長期譲渡所得の金額及び納付すべき税額は、平成9年分の更正処分の金額と同額となるから、更正処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分
(イ)ところで、通則法第68条第1項の規定によれば、重加算税の賦課決定については、納税者が国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したことが要件となっている。
(ロ)これを本件についてみると、次のとおりである。
 本件土地賃貸借契約書は、上記(1)のホで判断したとおり、被相続人がQ社に一時的に賃貸したと認めるのが相当であり、これにより本件土地賃貸借契約書が作成されたものと認められる。
 そうすると、本件土地賃貸借契約書は、賃貸借の実体がないにもかかわらず、本件特例を受けるために本件土地が事業用資産に該当するかのように装うため作成されたものである旨の原処分庁の主張は採用することができない。
 したがって、本件においては通則法第68条第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当しないから重加算税を賦課決定することは相当でない。
 他方、本件においては、上記イのとおり更正処分は相当であり、更正処分により納付すべき税額の基礎となった事実が更正前の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、本件賦課決定処分は、過少申告加算税相当額を超える部分の金額につき、取り消すのが相当である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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