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(平13.2.13裁決、裁決事例集No.61 647頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、野菜、果物卸売業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、在日米軍基地内にあるF/購買・契約課及びGとの取引(以下「本件取引」といい、F/購買・契約課及びGを併せて「本件取引先」という。)が、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「安保条約」という。)第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下「日米地位協定」という。)の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律(以下「所得税等特例法」という。)第7条《消費税法の特例》に規定する免税取引に該当するか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成5年1月1日から平成5年12月31日まで、平成6年1月1日から平成6年12月31日まで及び平成7年1月1日から平成7年12月31日までの各課税期間(以下「本件各課税期間」という。)の消費税について、別表の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、これに対し、本件取引には所得税等特例法第7条は適用できないとして、平成8年6月26日付で本件各課税期間について別表の「更正処分等」欄のとおりの各更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として、平成8年8月20日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年11月20日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成8年12月18日に審査請求をした。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、F/購買・契約課と1990年(平成2年)5月22日付で基本契約(以下「本件基本契約」という。)を締結し、1993年(平成5年)5月11日付で変更契約を締結した。
ロ F/購買・契約課との取引に係る納品先(以下「購買・契約課納品先」という。)は、次のとおりである。
(イ)H
(ロ)I
(ハ)J
(ニ)K
(ホ)L
(ヘ)M
(ト)N
(チ)O
(リ)P

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、いずれもその全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
(イ)本件基本契約について
 本件基本契約に係る契約書(以下「本件基本契約書」という。)に記載された説明2(義務の範囲)によると、「NAFI(Nonappropriated Fund Instrumentality)は、このBPA(Blanket Purchase Agreement(包括購入協定書))の下で実際に成される発注範囲に対してのみ義務があるものとします。この契約書はアメリカ合衆国政府の契約ではありますが、割当予算は義務づけられていません。」と訳せることから、この契約がアメリカ合衆国政府との契約であることが示されている。
(ロ)歳出外資金による諸機関について
 原処分庁は、本件取引先はアメリカ合衆国政府の歳出外資金による諸機関であり、日米地位協定第15条第2項において、これら諸機関に日本の租税を課す旨の規定があるので本件取引に係る課税資産の譲渡等については消費税は免除されないと主張するが、同条項は該当機関の納税義務について定めたものであり、消費税の負担、すなわち消費税の転嫁には関係のない条項である。
(ハ)所得税等特例法第7条の適用について
A 本件取引について
 本件取引は、本件基本契約書及びFの構成状況から、所得税等特例法第7条第1項に規定する合衆国軍隊そのものとの取引であることは明らかであり、合衆国軍隊の用に供する取引である。
 なお、所得税等特例法第7条第1項には原処分庁が判断した歳出資金と歳出外資金の区分による規定は何ら存在しないのであるから、合衆国軍隊への課税資産の譲渡等に係る消費税の免税取扱いに関して、この区分による免税適用への差異は存在しない。
B 合衆国軍隊の公認調達機関について
 原処分庁は、昭和35年9月27日付間消3−18《駐留軍用揮発油に対する揮発油税および地方道路税の免除等の取扱について》の国税庁長官通達(以下「本件通達」という。)を引用し、「合衆国軍隊の公認調達機関」の用語の意義を述べているが、本件通達は「消費税法」(昭和63年12月30日施行)の約30年前の取扱通達である。
 また、この通達における「公認調達機関」の用語の意義は所得税等特例法第10条《揮発油税法及び地方道路税法の特例》に用いられるのが本来の趣旨であり、所得税等特例法第7条第1項において適用すべきものではない。
 したがって、本件更正処分に日米地位協定の条項及び本件通達を引用して判断した原処分庁の論拠は誤りである。
C 免税証明書について
 原処分の調査中に提示した免税証明書(以下「本件免税証明書」という。)は、次のとおり、権限ある官憲が発行したものであるから、本件取引は、免税取引に該当する。
(A)権限ある官憲の発給する証明書について
 本件免税証明書に署名したQ(以下「Q」という。)は、NONAPPROPRIATED FUND R支部のCONTRACTING SPECIALISTであり、Qの発行する証明書は、権限ある官憲の発給するものに該当する。
 これは、上記1の(3)のイの変更契約に係る契約書(以下「本件変更契約書」という。)では、本件基本契約書からの引継ぎがそのままなされ、Qの署名で引き続き契約を行っていることからも明らかである。
 したがって、原処分庁は「民間人が発行した」と主張しているが、当人は「権限ある官憲」であることは以上のことからも明白である。
(B)本件免税証明書の効力について
 Qは、本件取引が当然に免税取引になるものとして免税証明書の発行を認識していなかったため、請求人はやむを得ず本件免税証明書を入手したうえで、平成6年12月12日裁決(大裁(諸)平6第49号)(以下「本件裁決事例」という。)にならって原処分庁の税務調査官に提示し、本件取引のすべてが免税取引の対象になることを補充証明した。
 したがって、本件免税証明書は、所得税等特例法第7条第2項及び日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律施行令(以下「所得税等特例法施行令」という。)第2条《消費税の免税手続》の要件を満たしている。
(ニ)米軍契約官の指導について
 購買・契約課納品先の米軍契約官(以下「本件米軍契約官」という。)及びS県外の在日米軍契約官(以下、これらを併せて「本件米軍契約官ら」という。)は、当社の問い合わせに対し、本件更正処分に係る税務調査中及び本件更正処分後においても本件取引が明確に免税取引であると説明している。
 また、本件米軍契約官の指導により、納品価格には消費税の付加は認められていない。仮に、本件取引を課税取引とするならば、税制改革法第17条第3項の趣旨から国税当局はアメリカ合衆国(米軍)を指導すべきであり、それが義務であり、責務である。
 つまり、国税当局は税制改革法に重大な違反をしているから、本件更正処分は不当である。
(ホ)以上のとおり、本件取引は、所得税等特例法第7条及び所得税等特例法施行令第2条に規定する免税の要件を満たしているから、本件更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきである。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分はその全部を取り消すべきであるから、それに伴い、本件賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ)本件基本契約について
 本件基本契約書には、「NONAPPROPRIATED FUND(歳出外資金)」と記載されていることから、本件取引は、日米地位協定第15条第1項(a)に規定する「歳出外資金による諸機関」との取引に該当する。
(ロ)歳出外資金による諸機関について
 日米地位協定第15条第1項(a)に規定する諸機関とは、合衆国の軍当局が公認し、かつ、規制する海軍販売所、ピー・エックス、食堂、社交クラブ、劇場、新聞その他の歳出外資金による諸機関と掲げてあり、同条第2項において、これらの諸機関による商品及び需品の日本国内における購入には、日本の租税を課する旨規定している。
(ハ)所得税等特例法第7条の適用について
A 本件取引について
(A)合衆国軍隊について
 所得税等特例法第7条第1項に規定する「合衆国軍隊」とは、同法第2条《定義》第2項において、安保条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍をいう旨規定している。
(B)合衆国軍隊の公認調達機関及び軍人用販売機関等について
 本件通達によれば、「合衆国軍隊の公認調達機関」とは、合衆国政府の予算によって、合衆国軍隊全体のために契約を締結し、軍用物資を調達することを専管する軍の機関を指称するものである。したがって、所得税等特例法第2条第4項に規定する「軍人用販売機関等」は含まないと解されている。
 この「軍人用販売機関等」とは、同法第2条第4項において、日米地位協定第15条第1項(a)に規定する諸機関をいう旨規定している。
(C)本件取引について消費税が免除されるためには、上記(A)の「合衆国軍隊」又は(B)の「合衆国軍隊の公認調達機関」に対して合衆国軍隊の用に供される課税資産の譲渡等を行ったことが必要であるが、本件取引先は、日米地位協定第15条第1項(a)に規定する歳出外資金による諸機関であり、これに該当しない。
B 合衆国軍隊の公認調達機関について
 本件通達は、所得税等特例法第10条に規定する「合衆国軍隊」又は「合衆国軍隊の公認調達機関」の用語の意義について定めており、いわゆる歳出外資金によるものか否かの区分により判断するものであるところ、これを、同法第7条に規定する用語の意義にも同様に取り扱うことは認められる。
C 本件免税証明書について
(A)本件免税証明書は、請求人が、原処分に係る調査中にNONAPPROPRIATED FUND R支部の購入担当責任者で、民間人のQに依頼して作成させたものである。さらに、本件取引に係る免税証明書は、本件免税証明書の1枚のみであり、そこに記載された取引期間は、1996年(平成8年)3月1日から同年3月31日までの分であり、本件各課税期間のものではない。
(B)また、本件裁決事例は、補充証明すれば所得税等特例法施行令第2条の要件を具備することを認めた事例であるということはできない。
(C)したがって、本件免税証明書は、同法施行令第2条に規定する権限ある官憲の発給する証明書として扱うことは認められない。
(ニ)本件米軍契約官の指導について
 消費税が免除されるか否かは、法令に規定されている要件に該当するか否かで判断するものであり、本件米軍契約官による指導の内容には影響されない。
 また、請求人は、本件取引を課税取引とするならば、税制改革法第17条第3項の趣旨から指導を怠った国税当局は同法に違反しているから、本件更正処分は不当であると主張する。
 しかしながら、同条項は、消費税の見直しについて規定したものであり、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ホ)以上のとおり、本件取引は、合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関が購入するものでないことは明らかであり、また、請求人には権限ある官憲の発給する証明書の保存もないことから、所得税等特例法第7条に規定する免税取引には当たらない。
 したがって、本件更正処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり本件更正処分は適法であり、また、本件更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、本件更正処分前の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項に基づき行った本件賦課決定処分は適法である。

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3 判断

(1)本件更正処分について

 本件審査請求の争点は、本件取引が所得税等特例法第7条に規定する免税取引に該当するか否かにあるので、以下審理する。
イ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件基本契約書の様式は、AF FORM(空軍様式)2209であり、その表題には、「NONAPPROPRIATED FUND ORDER FOR SUPPLIES OR SERVICES」と記載されており、歳出外資金による購入契約書であること。
(ロ)また、本件変更契約書の様式は、STANDARD FORM(標準様式)30であり、その「ACCOUNTING AND APPROPRIATION DATA」欄には、「Nonappropriated Funds(歳出外資金)」と記載されていること。
(ハ)F財政部副支配人T及び同購買・契約課コントラクティングオフィサーズUは、当審判所に対し、要旨次のとおり答述していること。
A Fは、以前はW MWR(Morale,Welfare,and Recreation(福利厚生部))という名称であった。
 そのうち、RESOURCE MANAGEMENT FLIGHT/SVFは、人的・備品・コンピュータ等の調達及び財政管理を行っており、購買・契約課が、歳出外資金に係る契約担当部署である。購買・契約課で使用している契約書の様式は、AF FORM 2209である。
B 購買・契約課納品先であるクラブ等に関する発注には、歳出資金と歳出外資金によるものがあり、これらは独立運営といえども歳入が少ない部分については、一定の枠の範囲内で、歳出資金のサポートが行われる。
 例えば、軍人用体育館の運営(体育館の建設資金やアスレチックの器械購入)は歳出資金で行うが、その中にあるジュース・バーの費用は歳出外資金で行う。
 歳出資金を管理するのは、RESOURCE MANAGEMENT FLIGHTのAPF MANAGEMENTで、軍人がその任務にあたっている。
(ニ)防衛施設庁施設区域整備対策本部企画室X移設第3係長及びY防衛施設局Z渉外広報係長は、当審判所に対し、要旨次のとおり答述していること。
A 日本国政府がアメリカ合衆国政府のために支出する費用は、主に施設建築費、水道光熱費、訓練移転費、日本人従業員の給料等に使われている。
B これらの契約及び支出手続は、すべて日本国政府側で行っている。
ロ 関係法令等について
(イ)米国空軍規則等について
A 1986年(昭和61年)12月15日付米国空軍規則172−1の1巻11章及び同年9月26日付同規則215−5の改定で1994年(平成6年)10月28日付米国空軍命令65−106は、福利厚生計画に基づき、歳出外資金(Nonappropriated Fund)による諸機関が行う福利厚生活動に対して合衆国議会による歳出資金(Appropriated Fund)の支援が行われる旨規定している。
B 米国陸軍規則60及び米国空軍規則147の一連の規則によると、Gは、ピー・エックス(陸軍基地内の売店)やビー・エックス(空軍基地内の売店)を運営し、米国陸軍・空軍関係の軍人、軍属及びこれらの家族に商品とサービスを提供している。その法的地位は、合衆国政府の歳出外資金による機関であり、その契約は、合衆国の契約であるところ、その資金は、合衆国議会の歳出によるものではない旨規定している。
C 1991年(平成3年)5月30日付米国空軍規則176−9の改定で1994年(平成6年)10月21日付の米国空軍マニュアル64−302は、歳出外資金による契約には、AF FORM 2209を使用し、契約の変更又は修正の際には、STANDARD FORM 30を使用する旨規定している。
(ロ)消費税法の免除に関する規定について
A 所得税等特例法第7条第1項は、事業者が、合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関に対し、合衆国軍隊の用に供するために購入する課税資産の譲渡等を行った場合には、消費税を免除する旨規定している。
B そして、所得税等特例法第7条第1項にいう合衆国軍隊とは、同法第2条第2項に規定する安保条約に基づき日本国にある合衆国の陸軍、空軍及び海軍をいい、合衆国軍の公認調達機関とは、合衆国政府の予算によって、合衆国軍隊全体のために契約締結し、軍用物資を調達することを専管する軍の機関の指称であり、同法第2条第4項に規定する軍人用販売機関等は、含まないと解されている。
 また、合衆国軍隊の用に供するために購入するものとは、合衆国軍隊が直接その団体活動の用に供する目的で購入し、かつ、その経費が合衆国政府の予算または日本国政府が合衆国政府の支出に充てる経費から支払われるものを指すのであって、合衆国軍隊の構成員、軍属若しくはこれらの者の家族が使用するために購入するもの及び軍人用販売機関等がその管理維持のため購入するものは含まないと解されている。
C ここでいう軍人用販売機関等とは、日米地位協定第15条第1項(a)に規定する、合衆国の軍当局が公認し、かつ、規制する海軍販売所、ピー・エックス、食堂、社交クラブ、劇場、新聞その他の歳出外資金による諸機関をいい、歳出外資金による機関とは、合衆国政府の機関であって、その機能継続のために毎年の若しくはその他の予算配賦を受けず、かつ、その収入を国庫の歳入に納付することを要求されていないものを指すとされ、その運営のための購入は、合衆国軍隊の構成員、軍属、若しくはこれらの家族の利用に供する福利厚生活動のためのものであり、かつ、国家予算の配賦を受けずに徴収する料金によって独立採算制により維持されている。
D さらに、所得税等特例法第7条第2項及び所得税等特例法施行令第2条は、上記Aの課税資産の譲渡等を行った事業者は、当該課税資産の譲渡等が合衆国軍隊の用に供されたものであることにつき、合衆国軍隊の権限ある官憲の発給する証明書を一定期間保存する必要がある旨規定している。
 そうすると、消費税の免除に関する規定は、〔1〕事業者の課税資産の譲渡等が、合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関に対して合衆国軍隊が直接その団体活動の用に供する目的で購入し、かつ、合衆国政府の予算または日本国政府が合衆国政府の支出に充てる経費から支払われること、〔2〕合衆国軍隊の権限ある官憲の発給する証明書で当該課税資産の譲渡等がこれらの用に供されたものであることを証明するものを一定期間保存することの二つの要件を満たすことで、適用を受けることができるものと解するのが相当である。
ハ 本件取引への所得税等特例法第7条の適用について
 請求人は、本件取引は、本件基本契約書及びFの構成状況から、所得税等特例法第7条第1項に規定する合衆国軍隊そのものとの取引であることは明らかであり、消費税が免除となる旨主張する。
 そこで、上記イの事実を上記ロの規定に照らして判断すると、次のとおりである。
(イ)F/購買・契約課との取引について
Fは、以前はW MWR(Morale,Welfare,and Recreation(福利厚生部))という名称であり、請求人の取引先であるF/購買・契約課は歳出外資金に係る契約担当部署である。
 そして、基礎事実のロのとおり、購買・契約課納品先は、合衆国軍隊の構成員、軍属、若しくはこれらの家族の利用に供する福利厚生活動のための諸施設であり、また、本件取引に際してF/購買・契約課と取り交わした本件基本契約書の様式はAF FORM 2209で、その表題には、「NONAPPROPRIATED FUND(歳出外資金)〜」と記載されている。
 このことからすれば、F/購買・契約課と請求人との取引は、合衆国軍隊が直接その団体活動の用に供する目的によるものではなく、かつ、その購入資金は、歳出外資金によるもので、F/購買・契約課は、合衆国政府の機関(軍の一部)ではあるが、合衆国政府の予算によって、合衆国軍隊全体のために契約を締結し、軍用物資を調達することを専管する合衆国軍隊の公認調達機関とはいえないこととなる。
 そうすると、F/購買・契約課との取引による請求人の課税資産の譲渡等は、所得税等特例法第7条第1項第1号に規定する合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関が合衆国軍隊の用に供するために購入するものには該当しないと解するのが相当である。
(ロ)Gとの取引について
 上記3の(1)のロの(イ)のBのとおり、Gは、ピー・エックス(陸軍基地内の売店)やビー・エックス(空軍基地内の売店)を運営し、米国陸軍・空軍関係の軍人、軍属及びこれらの家族に商品とサービスを提供しており、その法的地位は、合衆国政府の歳出外資金による機関であるから、Gとの取引も上記(イ)と同様に所得税等特例法第7条第1項第1号に該当しないと解するのが相当である。
ニ 請求人のその他の主張について
 請求人は、本件米軍契約官らから本件取引が免税取引に該当するとの説明及び指導を受けた旨主張し、仮に本件取引が課税取引に該当するならば、税制改革法第17条第3項の趣旨からしても、アメリカ合衆国(米軍)を指導すべきで、それを怠った国税当局は重大な違反をしているので本件更正処分は不当である旨主張するが、申告納税制度の下においては、消費税の申告は納税者自らの判断と責任においてなされるべきものであるから、請求人のこれらの主張はいずれも採用できない。
 また、本件免税証明書については、権限ある官憲の発給するものに該当し、かつ、原処分庁の調査官に提示したことは、所得税等特例法第7条第2項及び所得税等特例法施行令第2条に規定する保存の要件を満たしている旨主張するが、本件取引は、上記ハのとおり、同法第7条第1項第1号に規定する免税取引に該当しないことは明らかであり、本件免税証明書の効力を判断するまでもなく、この点に関する請求人の主張は採用できない。
 さらに、請求人は、合衆国の公認調達機関の意義について、本件通達は揮発油税法及び地方道路税法の特例に用いられるのが本来の趣旨であり、消費税の特例である所得税等特例法第7条第1項について適用すべきでない旨主張するが、法律の条文解釈に当たっては別段の規定がない限り使用されている語句については同義語であるとするのが通念であり、原処分の本件通達の引用は適正と認められ、請求人の主張は採用できない。
ホ 以上のとおり、請求人の主張にはいずれも理由がなく、本件取引による当該課税資産の譲渡等について、原処分庁が所得税等特例法第7条に規定する消費税の特例は適用できないとして行った本件更正処分は適法である。

(2)本件賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、本件更正処分は適法であり、また、請求人には、本件更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて行った本件賦課決定処分は適法である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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