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(平13.5.31裁決、裁決事例集No.61 721頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、共同審査請求人(以下「請求人ら」という。)が共同で競落し、共有登記をしている7筆の土地について、共有物分割を原因とする持分移転登記申請をしたことにつき、同申請に係る登録免許税の額の計算上、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第84条の4《共有物分割による不動産の所有権の移転登記の税率の特例》第2項の規定による特例(以下「本件特例」という。)の適用があるか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人らは、平成12年7月19日にJ法務局○○出張所に対し、P県Q市R四丁目158番5の宅地35.63平方メートル(以下「A土地」という。)、160番の宅地296.14平方メートル(以下「B土地」という。)、同160番2の宅地385.05平方メートル(以下「C土地」という。)、同160番4の宅地164.70平方メートル(以下「D土地」という。)、同160番6の宅地78.71平方メートル(以下「E土地」という。)、同160番7の宅地89.60平方メートル(以下「F土地」という。)及び同160番8の宅地109.76平方メートル(以下「G土地」といい、A土地ないしG土地を併せて「本件各土地」という。)の各土地について、それぞれ次の事項を記載した登記申請書を提出し(以下、当該各登記申請書を併せて「本件各登記申請書」といい、本件各登記申請書に係る申請を併せて「本件各登記申請」という。)、本件各登記申請に係る登録免許税を本件各登記申請書に印紙をちょう付する方法により納付した。
(イ)A土地に関する登記申請書

A登記の目的Lを除く共有者全員持分全部移転
B原因平成12年3月6日共有物分割
C権利者持分10,000分の7,299 L
D義務者Lを除く請求人ら
E課税価格1,479,000円
F登録免許税 8,800円

(ロ)B土地及びC土地に関する登記申請書

A登記の目的M及びNを除く共有者全員持分全部移転
B原因平成12年3月6日共有物分割
C権利者持分10,000分の2,300 M
持分10,000分の2,300 N
D義務者M及びNを除く請求人ら
E課税価格23,326,000円
F登録免許税 435,900円

(ハ)D土地に関する登記申請書

A登記の目的V、W及びXを除く共有者全員持分全部移転
B原因平成12年3月6日共有物分割
C権利者持分10,000分の3,086 V
持分10,000分の3,085 W
持分10,000分の3,084 X
D義務者V、W及びXを除く請求人ら
E課税価格10,842,000円
F登録免許税 313,400円

(ニ)E土地に関する登記申請書

A登記の目的Yを除く共有者全員持分全部移転
B原因平成12年3月6日共有物分割
C権利者持分10,000分の9,654 Y
D義務者Yを除く請求人ら
E課税価格5,195,000円
F登録免許税 143,800円

(ホ)F土地及びG土地に関する登記申請書

A登記の目的Zを除く共有者全員持分全部移転
B原因平成12年3月6日共有物分割
C権利者持分10,000分の9,192 Z
D義務者Zを除く請求人ら
E課税価格10,546,000円
F登録免許税 285,300円

ロ 原処分庁は、平成12年8月2日に請求人らの本件各登記申請に係る代理人に対して、上記イの(イ)の登記申請に係る登録免許税の額は73,900円であり、65,100円が不足である旨、同(ロ)の登記申請に係る登録免許税の額は1,166,300円であり、730,400円が不足である旨、同(ハ)の登記申請に係る登録免許税の額は542,100円であり、228,700円が不足である旨、同(ニ)の登記申請に係る登録免許税の額は259,700円であり、115,900円が不足である旨、同(ホ)の登記に係る登録免許税の額は527,300円であり、242,000円が不足である旨、それぞれ口頭により通知した(以下、それぞれの通知を併せて「本件各税額認定処分」という。)。
ハ 請求人らは、本件各税額認定処分に不服があるとして、平成12年9月21日に審査請求をした。
 なお、請求人らは、Lを総代として選任し、その旨を平成13年5月7日に届け出た。

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(3)基礎事実

 以下の事実については、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 本件各土地の登記簿謄本によると、平成12年3月6日の競売による売却を取得原因として、本件各土地のいずれの土地についても、請求人ら各人の持分を次のとおりとする所有権移転登記がされているが、これは、K地方裁判所書記官により嘱託登記されたものである。
(イ)Lの持分10,000分の2,701
(ロ)Mの持分10,000分の2,700
(ハ)Nの持分10,000分の2,700
(ニ)Vの持分10,000分の249
(ホ)Wの持分10,000分の248
(ヘ)Xの持分10,000分の248
(ト)Yの持分10,000分の346
(チ)Zの持分10,000分の808
ロ J法務局○○出張所は、本件各登記申請をいずれも平成12年7月19日に受け付けている。
ハ 原処分庁は、請求人らが上記(2)のロに記載する登録免許税の不足額を納付しなかったため、平成12年8月11日付で、本件各登記申請をいずれも却下する旨の決定処分(以下「本件各決定処分」という。)をした。
ニ 本件特例の適用がないとした場合に請求人らが納付すべき本件各登記申請に係る登録免許税の額は、次のとおりである。
 なお、課税標準の額は、上記(2)のイの(イ)から(ホ)までの課税価格と同額である。

(イ)A土地に関する登記申請73,900円
(ロ)B土地及びC土地に関する登記申請1,166,300円
(ハ)D土地に関する登記申請542,100円
(ニ)E土地に関する登記申請259,700円
(ホ)F土地及びG土地に関する登記申請527,300円

ホ 請求人らは、本件各決定処分に伴い、本件各登記申請により納付した登録免許税の還付を受けている。

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2 主張

(1)請求人

 原処分は、次のとおり違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 措置法第84条の4第1項は、実体は売買を原因とする所有権移転でありながら、登録免許税を不当に免れるために、売買物件のごく一部の持分についてのみ税率の高い売買を原因とする所有権移転登記申請(税率1,000分の50)をし、残余の持分については税率の低い共有物分割を原因とする所有権移転登記申請(税率1,000分の6)をすることによって所有権全部の移転登記をしようとする、実体的権利変動と異なる登記申請を防止するために定められたものである。
ロ 他方、本件特例は、共有物分割を原因とする持分移転登記申請がなさ
れた場合に、〔1〕当該土地が、その登記申請前に分筆登記されている土地で、〔2〕その登記申請が分筆登記によって生じた他の土地についての共有物分割を原因とする持分移転登記と同時に連件で申請されたときは、「共有物分割による持分移転登記前に有していた持分に応じた土地の価額に対応する部分」に限って登録免許税の税率を1,000分の6とする例外規定である。
ハ 請求人らが、本件特例の適用があるとして本件各登記申請をした理由は、本件各土地は次のとおり相互に関連性があると判断したからである。
(イ)請求人らが本件各土地について共有関係に入ったのは、本件各土地がK地方裁判所において競売されることとなったため、請求人ら各人が永年賃借していた土地それぞれについて単独で競落しようとしたが、競売手続上それが許されなかったことから、仕方なく請求人らが共同で競買人になったことに起因するのであり、本件各土地が相互に関連性のある土地であることは登記簿上明白である。
(ロ)原処分庁は、本件各土地は既に分筆されている土地であるから、本件特例を適用することはできない旨主張するが、K地方裁判所が一括競売に付したのは、本件各土地を一つの「物」として評価し、一つの土地と観念したからである。一つの土地と観念することができる土地が、たまたま分筆されていただけのことであり、原処分庁の認識は余りに形式的な判断に基づくものといわざるを得ない。
(ハ)請求人らは、登録免許税を不当に免れようとして本件各登記申請をしたものではない。
ニ 仮に、請求人らが本件各土地を合筆し、その後現況と同様の分筆登記を了し、本件各登記申請と同様の共有物分割を原因とする登記申請をした場合には、当然、本件特例が適用されるところ、この場合に請求人らが取得する権利は、本件各登記申請によって請求人らが取得する権利と全く同一である。
 それにもかかわらず、原処分庁の判断は、上記の場合は本件特例を適用し、本件各登記申請の場合は措置法第84条の4第1項を適用せんとするものであり、平等原則に反する不公正な行政処分といわざるを得ない。
 登記官の登記申請の調査については、不動産の表示の登記申請の場合を除き形式的審査主義が採られてはいる。しかし、登記官には国民に対し、法律の解釈、適用については形式的に判断することなく実体を直視し、法を適正に解釈、適用する義務がある。
ホ 平成12年3月31日付法務省民三第828号民事局長通達「租税特別措置法第84条の4の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(以下「民事局長通達」という。)において、共同相続の登記の後に、遺産分割を原因とする所有権移転の登記が申請された場合には、相続を原因とする所有権移転の登記の税率に準じて1,000分の6の税率を適用して差し支えないとしているのは、このような場合には不当に登録免許税を免れて所有権移転登記がなされるおそれがないと判断したからである。
 そうであるならば、請求人らは、既に競売による所有権移転登記に必要な登録免許税(税率1,000分の50)を納付しているのであり、不当に登録免許税を免れようとするものではないのであるから、当該民事局長通達を適用すべきである。
 そして、共有者間でなされた共有関係の解消のための協議が、遺産分割か共有物分割かの違いはあるが、実質は共有関係の解消を目的とする法律行為であり、協議から生ずる実体的権利は同じであるから、やはり当該民事局長通達を適用すべきである。
ヘ 原処分庁による本件各税額認定処分の理由は、通常の不動産取引に基づく登記申請には通用するが、本件各登記申請のような競売による売却を原因とする特異な所有権移転を基本とする共有関係の解消を実体的権利関係とする登記申請においては、登録免許税を免れようとする意図はないのであるから、通用するものではない。
 原処分庁の論理に従えば、請求人らは、税率1,000分の50の登録免許税を納付して100分の100の権利を取得した後、共有関係を解消するためだけに再度税率1,000分の50の登録免許税の納付を強いられることになるが、この課税行為は、権利が新たに増加しない請求人らに二重の税を課す結果となり、登録免許税を免れる行為を阻止せんとして施行された措置法第84条の4第1項を適用して2倍の税を徴収する結果を惹起し、その行為は同項制定の理念に反する。

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(2)原処分庁

 次の理由から、本件審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 共有物分割を原因とする登記申請の登録免許税の税率について
(イ)共有物分割を原因とする登記申請の登録免許税の税率は、措置法第84条の4第1項の規定により、平成12年4月1日以降、原則として1,000分の50とされるが、次の二つの要件を備える場合に限って本件特例が適用され、共有物分割による持分の移転に係る土地の価額のうち分筆登記の前に有していた持分に応じた土地の価額に対応する部分に限り1,000分の6となる。
A 共有物分割による持分の移転の登記の申請に係る土地すべてが、同一の分筆登記によって生じたものであること。
B 共有物分割による持分移転の登記が上記Aの分筆で生じた他の土地の共有物分割による持分移転の登記と連件で同時に申請されていること。
(ロ)したがって、1筆の土地についてのみ共有物分割による持分移転の登記が申請されたときの登録免許税の税率は1,000分の50となり、また、数筆の土地について共有物分割による持分移転の登記が連件で同時に申請された場合であっても、申請に係る土地が同一事件に係る分筆登記によって1筆の土地から生じた土地でないときは、本件特例の適用はなく、登録免許税の税率は1,000分の50となる。
 なお、同時に申請された各土地が、もともと1筆の土地を分筆して生じた土地であっても、2回以上分筆登記をした結果生じた土地である場合には、措置法第84条の4第2項が適用されるのは、共有物分割による持分移転の登記が申請される直前にされた分筆によって生じた土地のみであることからも、連件で同時に申請された各土地が、同一事件に係る分筆登記によって1筆の土地から生じた土地でなければならないことは明らかである。
 つまり、もともと共有であった1筆の土地を分筆した後、当該各共有者の持分を相互に移転する共有物分割の登記の申請が、分筆した土地の全部又は一部について同時にされた場合、分筆前に有していた自己の持分に対応する部分までは、当該持分を現物分割により一まとめにするにすぎないものと考えられることから、この部分について1,000分の6の税率を適用することとなるのである。
ロ 本件各登記申請の登録免許税の税率について
 本件各登記申請に係るA土地は、平成4年7月3日、P県Q市R四丁目158番から分筆された土地であり、D土地、E土地、F土地及びG土地は、平成4年9月24日、同160番から分筆された土地であり、C土地は、同60番2の土地を昭和45年5月14日に地番変更した土地であって、これらの土地が同一事件に係る分筆登記によって1筆の土地から生じた土地でないことは明らかであり、加えて、請求人らは、本件各土地が分筆される前の土地について共有関係にあったものでもないから、本件各登記申請が連件で同時になされたとしても、上記イの(イ)の要件を備えておらず、本件特例の適用はない。
 したがって、本件各登記申請に係る登録免許税の税率は、措置法第84条の4第1項が適用され、1,000分の50となる。
ハ 請求人らは、本件各登記申請についても民事局長通達を適用すべきである旨主張するが、次に述べるとおり、請求人らの主張には理由がない。
(イ)共同相続の登記の後に遺産分割の協議が成立した場合には、遺産分割の遡及効から、遺産分割の効力は相続開始の時にさかのぼって生じることとなる。しかし、既にされた共同相続登記は、実態に沿うものであり適法な登記であるから、遺産分割により取得した相続分についてのみ所有権移転の登記をすれば足りる。そして、遺産分割により、相続人は被相続人から直接権利を取得したものと扱われることから、遺産分割は相続の性質を有するものとして、民事局長通達は、共同相続の登記の後に遺産分割を原因とする所有権移転の登記が申請された場合には、相続を原因とする所有権移転の登記の税率に準じて1,000分の6の税率を適用して差し支えないとしたものである。
(ロ)共有物の分割は、分割協議の成立の時点から分割の効力が生じるのであり、その上、共有物の分割は、共有者相互間において、その有する持分の交換あるいは売買等の性質を有するものであるから、遺産分割とはその性質を異にすることは明らかであり、民事局長通達を適用することはできない。
ニ 本件各税額認定処分について
 本件各登記申請に係る登録免許税の計算上、本件特例の適用がないことは上記のとおりである。
 したがって、請求人らが本件各登記申請に関して納付すべき登録免許税の額は、上記1の(3)のニのとおりとなるところ、本件各税額認定処分の金額はこれらの金額と同額であるから正当である。

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3 判断

 本件の争点は、本件各登記申請に係る登録免許税の計算上、本件特例の適用があるか否かにあるので以下審理する。

(1)認定事実

 本件各土地に係る登記簿謄本によると、〔1〕A土地は、平成4年7月3日にP県Q市R四丁目158番から分筆された土地であり、〔2〕B土地は、同60番の土地が昭和45年5月14日に同160番に地番変更された後、平成4年9月24日に同160番、160番4ないし160番8に分筆された同160番の土地であり、〔3〕C土地は、同60番2の土地が昭和45年5月14日に同160番2に地番変更された土地であり、〔4〕D土地、E土地、F土地及びG土地は、平成4年9月24日に同160番から分筆された土地であることが認められる。

(2)共有物の分割による移転の登記に係る登録免許税の税率について

イ 不動産の所有権の移転の登記のうち、共有物の分割による移転の登記に係る登録免許税の税率は、登録免許税法第9条及び同法別表第一の第1号の(二)のハの規定により、不動産の価額の1,000分の6とされているが、措置法第84条の4第1項は、「平成12年4月1日以後に受ける登録免許税法別表第一第1号(二)ハに掲げる登記(土地又は建物に関する登記に限る。)に係る登録免許税の税率は、同法第9条の規定にかかわらず、1,000分の50とする。」と規定している。
ロ また、措置法第84条の4第2項は、同条第1項に規定する登記のうち共有物の分割による土地の所有権の持分の移転の登記に係る土地(以下「対象土地」という。)につき当該登記(以下「対象登記」という。)前に分筆による表示の変更登記(当該対象土地につき当該対象登記前に分筆による表示の変更の登記が2回以上されているときは、直前のものをいう。以下「分筆登記」という。)がされている場合において、当該対象登記が当該分筆登記に係る他の土地の全部又は一部の所有権の持分の移転の登記と同時に申請されたものであるときは、当該対象登記に係る登録免許税の税率は、当該対象土地の所有権の持分の移転に係る土地の価額のうち分筆登記前の所有権の持分に応じた対象土地の価額に対応する部分に限り、前項の規定にかかわらず1,000分の6とする旨規定している。
ハ したがって、共有物の分割による土地の所有権の持分の移転の登記に係る登録免許税の税率は、平成12年4月1日以降、原則として1,000分の50とされ、次の二つの要件を備える場合に限って、本件特例が適用されることとなる。
(イ)共有物分割による持分の移転の登記の申請に係る土地すべてが、もともと共有の1筆の土地であって、同一の分筆登記によって生じたものであること。
(ロ)共有物分割による持分移転の登記が、上記(イ)の分筆で生じた他の土地の共有物分割による持分移転の登記と同時に申請されていること。
ニ 本件特例が適用されるためには上記ハの二つの要件を満たさなければならないことから、仮に、数筆の土地について共有物分割による持分移転の登記が同時に申請された場合であっても、その申請に係る土地が、もともと共有であった1筆の土地から同一事件に係る分筆登記によって生じたものでない場合などには、本件特例の適用はなく、登録免許税の税率は1,000分の50となる。

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(3)本件各登記申請の登録免許税の税率について

イ 本件各土地は、請求人らが共同で競落したことに起因して共有することとなったものであり、分筆登記前の土地について共有関係にあったものではないから、たとえ本件各登記申請が同時になされたとしても、本件各登記申請は、上記(2)のハの要件を備えておらず、本件特例の適用はない。
 したがって、本件各登記申請における登録免許税の税率は、措置法第84条の4第1項を適用し、1,000分の50となる。
ロ 請求人らは、K地方裁判所が本件各土地を一括競売に付したのは、本件各土地を一つの「物」として評価し、一つの土地と観念したからであって、本件各登記申請については、本件特例を適用すべきである旨主張する。
 しかしながら、一括競売は、複数の不動産を一つの「物」あるいは一つの土地と観念してなされるものではなく、個別に売却をする場合に比してより高額の買受けの申出がされることが見込まれるなど、これを認めることが債権者、債務者の利益に合致する場合になされるものにすぎない。
 したがって、請求人らの主張には理由がない。
ハ 請求人らは、本件各土地の合筆登記をし、その後分筆登記をすれば本件特例が適用されるところ、この場合に請求人らが取得する権利は、本件各登記申請によって請求人らが取得する権利と同じであるから、本件各登記申請についても本件特例を適用すべきである旨主張する。
 しかしながら、仮に、本件各土地について合筆と分筆の登記をすることにより本件特例の適用が受けられることになるとしても、それはそのような登記がなされることにより本件特例の適用を受けるための要件が備わることになるからであって、そのような登記要件が備わっていない本件各登記申請については、本件特例の適用がないことは明らかである。
 したがって、請求人らの主張には理由がない。
ニ 請求人らは、本件各登記申請についても民事局長通達を適用すべきである旨主張する。
 しかしながら、民事局長通達は、遺産分割は相続の性質を有するものとして、共同相続の登記の後に遺産分割を原因とする所有権移転の登記が申請された場合には、相続を原因とする所有権移転の登記の税率に準じて1,000分の6の税率を適用して差し支えないとしたものであり、本件特例を適用することとしたものではないと解するのが相当である。
 これに対し、共有物の分割は、共有者相互間における持分の交換あるいは売買等の性質を有するものであるから、遺産分割とはその性質を異にすることは明らかであり、民事局長通達を適用することはできないというべきである。
 したがって、請求人らの主張には理由がない。
ホ 請求人らは、登録免許税を免れようとしているものではないにもかかわらず、原処分庁の論理に従えば、登録免許税を免れる行為を阻止せんとして施行された措置法第84条の4第1項の適用により二重の税が課される結果となり、同項制定の理念に反する旨主張する。
 しかしながら、本件特例が適用とならない原因は、競売手続上やむを得なかったとはいえ、本件各土地の取得経緯にあるのであって、その責任を原処分庁に求めるのは的を得ていないというべきである。
 また、本件特例は、登録免許税率の軽減という租税負担の特別の規定であることから、その解釈、適用に当たっては、厳格性と明確性が要請されるのであって、その要件をたやすく拡張することはできないというべきである。
 したがって、請求人らの主張には理由がない。

(4)本件各税額認定処分について

 本件各登記申請について本件特例の適用がないことは上記(3)のとおりであり、したがって、請求人らが本件各登記申請に関して納付すべき登録免許税の額は、上記1の(3)のニのとおりとなるところ、本件各税額認定処分の金額はこれらの金額と同額であるから、本件各税額認定処分は適法である。

(5)その他

 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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