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(平13.10.4裁決、裁決事例集No.62 181頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、地方自治法(平成11年法律第87号による改正前のもの。以下「自治法」という。)第1条の2第3項に規定する特別地方公共団体の財産区(以下「自治法上の財産区」という。)に該当し、法人税を納める義務がないとして原処分の取消しを求めた事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 原処分庁は、平成12年4月12日付で、請求人が法人税法第2条《定義》第8号に規定する人格のない社団等に該当し、請求人の行う土地の賃貸が法人税法施行令第5条《収益事業の範囲》第1項第5号に規定する不動産貸付業に該当するとして、平成6年4月1日から平成7年3月31日まで、平成7年4月1日から平成8年3月31日まで、平成8年4月1日から平成9年3月31日まで、平成9年4月1日から平成10年3月31日まで及び平成10年4月1日から平成11年3月31日までの各事業年度(以下、順次「平成7年3月期」、「平成8年3月期」、「平成9年3月期」、「平成10年3月期」及び「平成11年3月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、別表1の「決定処分等」欄のとおり各決定処分(以下「本件決定処分」という。)及び無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ロ 請求人は、これらの処分を不服として平成12年6月8日に異議申立てをしたところ、原処分庁が平成12年9月6日付で棄却の異議決定をしたので、平成12年10月3日に審査請求をした。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査結果においてもその事実が認められる。
イ 昭和44年6月16日に施行されたP県Q郡R町S区会運営規定(以下「S区会運営規定」という。)には、次のような趣旨の定めがある。
(イ)S区内に居住しS区民台帳に記載された者、区会費その他賦課金を負担する者を区民とする(第4条)。
(ロ)区会は正副区長、組長をもって構成する(第13条)。
(ハ)区会は区会運営の審議執行機関である(第14条)。
(ニ)区有財産とは、〔1〕T地方法務局U支局○○出張所及びR町役場の土地台帳、家屋台帳、その他の台帳で公式に「V」又は「S」として登記又は登録された物件、〔2〕区費で建築若しくは購入し又は寄贈を受けた物件類並びに〔3〕区会にて保管する預貯金、現金及び有価証券をいう(第22条)。
(ホ)区有財産は区会がこれを管理し、代表者を区長とする(第23条)。
(ヘ)S区の財政は、区有財産より生ずる収入と、区会費、賦課金、補助金及び寄附金をもって運営維持する(第41条)。
ロ R町長は、S区の区長からの平成4年5月15日付、平成10年4月6日付及び平成12年5月26日付の各証明願に対して、それぞれ同日付で、当該証明願の内容はそのとおりである旨の証明(以下「本件各証明」という。)をした。
 そして、上記の各証明願には、旧V村が所有していた山林等の財産権は旧市町村に帰属せしめず、当該区域をもって権利主体としての地位を認められた財産区とされたものである旨記載されているが、他方で、平成4年5月15日付及び平成10年4月6日付の各証明願には、当該山林等の財産権は慣例により自治会としてのS区会が管理している旨の記載がある。
ハ 請求人は、上記ロの山林等について、採石業者等と採石及び土地賃貸借契約を締結し、採掘料及び土地賃貸料(以下、貸し付けられている山林等を「本件貸付土地」といい、土地賃貸料を「本件土地使用料」という。)を収受しており、本件土地使用料は、請求人の本件各事業年度の決算書によると、別表2に記載のとおりである。

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2 主張

(1)原処分庁の主張

 原処分は、次のとおり適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件決定処分について
(イ)請求人は、S区の住民により同住民の福利厚生、文化の向上等を目的として構成された団体であり、その管理運営はS区会運営規定を基に行われ、また、請求人の財産はR町ではなく請求人に帰属し、請求人の管理下にあることから、私法上の権利能力なき社団に当たるというべきであり、法人税法第2条第8号に規定する人格のない社団等に該当することになる。
(ロ)R町長による本件各証明には財産区である旨の記載がされているとしても、請求人の財産、請求人に属する収益及び費用並びに請求人の活動等のすべては、請求人の構成員によって独自に運営されており、その管理運営についてR町から管理又は干渉を受けず今日に至っているというのであるから、財産区と称しながら、その実態は自治法上の財産区とは合致しないものといわざるを得ない。
(ハ)このことは、原処分庁の照会に対し、平成10年11月26日付でR町長が、請求人については、財産区に関する条例の制定がなく、収入及び支出がR町の予算及び決算に編入されておらず、厳密には自治法に規定する財産区の要件を備えているとは言い難いと回答していることからも明らかである。
(ニ)仮に、R町が請求人に対して自治法上の財産区に相当するような取扱いをしている部分があったとしても、その実態から判断すれば、そのことのみをもって自治法上の財産区に該当すると認めることはできない。
(ホ)そうすると、人格のない社団等である請求人の場合、請求人が行う土地の賃貸は、法人税法施行令第5条第1項第5号に規定する不動産貸付業として収益事業に該当することから、法人税を納める義務がある。
 なお、本件土地使用料に係る損金の額に算入する費用等の金額については、支出合計の額に全体の収入金額に占める本件土地使用料の割合を乗じた金額とした。
(ヘ)また、原処分庁は、請求人が自治法上の財産区であって法人税法上の公共法人に該当するかどうかを確認するために調査を行い、その調査結果に基づいて本件決定処分を行っただけであり、これを調査権限を逸脱した職権濫用というのは当たらない。
ロ 本件賦課決定処分について
 本件決定処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項に規定する正当な理由がある場合に該当しないことから、同条第1項の規定に基づいて行った本件賦課決定処分は適法である。

(2)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件決定処分について
(イ)R町長による本件各証明は、〔1〕P県当局は本件各証明をする権限がR町長にあると証明していること、〔2〕R町長は自治法にいう管理責任者としての権限に基づいて証明したものであり、その証明はR町長の行政権の行使であること及び〔3〕本件各証明が請求人に関するすべての事項を包含し、それを了知した上でされたものであることから、不法不当な状態で証明されたものではなく、有効なものである。
 また、請求人が、少なくとも消費税法施行前まで、原処分庁より自治法上の財産区として容認されてきたことは、歴然たる周知の事実である。
 したがって、請求人は自治法上の財産区に該当し、法人税法第4条《納税義務者》第3項の規定により法人税を納める義務がない。
(ロ)なお、原処分庁の調査権限については、〔1〕本件各証明を無視した原処分庁の権限行使が明らかに職権濫用に当たるという疑念すら生じること、〔2〕本件各証明の効力内容は、請求人と原処分庁との争点ではなく、R町長の行政権と原処分庁の課税権限にかかわる問題であること、〔3〕上記〔2〕の問題については、それぞれの指導、監督官庁で協議し、国民的理解に配意した行政の本旨を示すべきことが関係行政機関の責務であること及び〔4〕原処分庁の権限行使は、国民無視の暴挙であると同時に自治法の侵害であると言っても過言ではないことを考慮すると、原処分庁がその調査権限について認識誤りをしたものである。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件決定処分は違法であるから、本件賦課決定処分も取り消すべきである。

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3 判断

(1)本件決定処分について

イ 請求人の提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査したところによれば、次の事実が認められる。
(イ)原処分庁からの平成10年10月19日付の照会文書に対し、R町長は同年11月26日付の回答文書において次のとおり回答した。
A 明治22年の町村制施行によりR村を発足するに当たり、V村が所有していた山林等は、その財産権がR村に帰属しないまま、自治会としてのS区会が管理してきた。
B 請求人については、財産区に関する条例の制定がなく、収入及び支出がR町の予算及び決算に編入されておらず、厳密には自治法上の財産区の要件を備えているとは言い難い。
C 請求人については、区民の選挙により選出された役員によって財産の管理運営が行われている。
D R町は、請求人の財産について、地方税法第348条《固定資産税の非課税の範囲》第1項の規定により従前から非課税の取扱いをしている。
(ロ)請求人のG区長、H副区長、K総務委員長及びL経理委員長(以下、4名の者を併せて「区長ら」という。)は、当審判所に対し、請求人には財産区議会若しくは総会又は財産区管理会は設置されておらず、その執行機関は区長及び役員21名であり、区の定例会で議決を行っている旨答述した。
(ハ)R町役場のM総務課長及びN税務課長は、当審判所に対し、次のとおり答述した。
A 明治22年の町村制の施行以降、R町(昭和3年11月9日以前はR村)は、請求人が行っている事業等に対して管理、干渉することなく今日に至っている。
B 請求人の事業内容及び予算、決算について、R町としては、従前から監査を行っていない。
C 請求人が所有する財産については、請求人の事業活動内容が自治法上の財産区と同様であることから、地方税法第348条第1項の規定を準用して従前から非課税の取扱いをしている。
 なお、このような取扱いは、前記(イ)のBの内容と矛盾していると考えるが、過去からのいきさつでそうしており、今後も変更するつもりはない。
D 本件各証明は、請求人の願い出による行政証明であり、その根拠については認識していない。自治法を根拠とするものではない。また、願い出による行政証明であるため、記載されている内容についてまでは深く立ち入っていない。
(ニ)P県W県民局のg参事並びに同局振興課のh主査及びjは、当審判所に対し、平成5年1月にR町に対して同町の財産区の状況について問い合わせた際、同町はX財産区のみを報告してきた旨答述した。
(ホ)なお、原処分庁が作成した「R町Y・S区会の納税義務を巡る今までの経緯」と題する文書によると、原処分庁の調査担当者は、平成3年6月ころから、請求人は人格のない社団等に該当するから収益事業について法人税を納める義務があるとして、請求人に法人税の期限後申告の提出を求めていたが、請求人はこれに応じなかった。
ロ ところで、法人税法第4条第3項は、公共法人は法人税を納める義務がない旨規定しており、法人税法第2条第5号及び同法別表第1によれば、自治法に定める地方公共団体は公共法人に該当する旨規定している。そして、自治法第1条の2第1項は、地方公共団体は特別地方公共団体を含む旨規定し、かつ、第3項は、特別地方公共団体は自治法第294条以下に規定する財産区を含む旨規定していることから、自治法上の財産区は法人税を納める義務がないことになる。
ハ 財産区とは、市町村又は特別区内の一部の地区に存する財産又は公の施設に対する当該地区住民の従前の諸権利利益を保証するために、当該地区に当該財産の権利主体たる地位を特別に認めて、特別地方公共団体の一つとして位置付けたものであり、自治法第295条及び第296条の2によれば、財産区には、財産区の財産又は公の施設に関する事務を処理させるため、当該市町村等の条例又は関係市町村等の協議により議会若しくは総会又は財産区管理会を置くことができるものとされている。
ニ また、自治法第294条第1項は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除く外、市町村及び特別区の一部で財産を有し又は公の施設を設けているもの(これを財産区という。)があるときは、その財産又は公の施設の管理及び処分又は廃止については、この法律中地方公共団体の財産又は公の施設の管理及び処分又は廃止に関する規定による旨規定していることから、財産区の管理及び処分又は廃止についての執行権及び代表権は市町村長にあり、財産区が固有の機関を持たない場合、その事務は、原則として市町村議会の議決を経て、市町村長が行うべきものと解される。また、同条第3項は、地方公共団体は、財産区の収入及び支出については会計を分別しなければならない旨規定していることから、財産区の予算は市町村の予算の一部であり、財産区がその区域に存する地方公共団体とは全く別の予算を持つことは許されないものと解される。
ホ これを本件について見ると、次のとおりである。
(イ)請求人の区長らは、前記イの(ロ)のとおり請求人の機関として議会又は総会及び財産区管理会は設置されておらず、その執行機関は区長及び役員21名であり、区の定例会で議決を行っている旨答述した。
 しかし、請求人が自治法上の財産区に該当し、かつ、固有の機関を持たないのであれば、その事務については、町議会の議決を経て、町長が行うべきところであるのに、請求人の定例会が議決機関となっており、区長及び役員21名がその執行機関であるというのであるから、請求人は自治法上の財産区に該当しないというべきである。
(ロ)また、R町長は、前記イの(イ)のBのとおり請求人の収入及び支出がR町の予算及び決算に編入されていない旨原処分庁に回答しているのであって、請求人はR町とは全く別に決算を行っていることが認められるのであるから、このことからしても、請求人は自治法上の財産区に該当しないというべきである。
(ハ)前記(イ)及び(ロ)に加え、〔1〕S区会運営規定には、区有財産は区会が管理し、代表者を区長とする旨の規定があること、〔2〕平成5年1月のP県からの財産区の状況についての問い合わせに対し、R町がX財産区のみを報告したこと及び〔3〕R町長は、本件各証明をしながらも、請求人は厳密には自治法上の財産区の要件を備えているとはいい難い旨原処分庁に回答したことを考え併せると、請求人は、名称こそ財産区と称しているが、その実体は自治会であると認められる。
 そうすると、請求人は、S区会運営規定により代表者の選出、区会の運営、財産の管理等を具体的に定めており、団体としての組織を備えた権利能力なき社団であるから、法人税法第2条第8号に規定する人格のない社団等に該当する。
 また、法人税法第4条第1項は、人格のない社団等については、収益事業を営む場合に限り法人税を納める義務がある旨規定しているから、原処分庁が請求人を人格のない社団等に該当するとして、その収益事業である不動産貸付業を課税対象としたことは相当である。
ヘ なお、請求人は、少なくとも消費税法施行前まで、原処分庁から請求人が自治法上の財産区として容認されてきたことは、歴然たる周知の事実である旨主張するが、仮に従前のいきさつがそうであったとしても、上記ホの(ハ)のとおり請求人が人格のない社団等に該当し、収益事業について法人税を納める義務を負うべきことは明らかであるから、請求人の主張は理由がない。
ト そこで、請求人の収益事業である不動産貸付業について検討すると、法人税法施行令第5条第1項第5号ヘは、収益事業の範囲から除かれる不動産貸付業として、主として住宅の用に供される土地の貸付業で、その貸付けの対価の額が低廉であることその他の大蔵省令(現財務省令)で定める要件を満たすものと規定し、これを受けて法人税法施行規則第4条の2《住宅用土地の貸付業で収益事業に該当しないものの要件》は、その要件として、当該事業年度の貸付期間に係る収入金額の合計額が、当該貸付けに係る土地に課される固定資産税額及び都市計画税額で当該貸付期間に係るものの合計額に3を乗じて計算した金額以下(以下「低廉対価」という。)であることとする旨規定しており、本件土地使用料のうち低廉対価による住宅用土地の貸付けに係るものは、非課税とされることとなる。
 当審判所が本件貸付土地の借主の利用状況を調査したところ、別表3に記載のとおり、かなりの者が住宅の用に供している事実が判明した。
チ これに対し、原処分庁は、請求人は固定資産税を支払っていないから、請求人の土地の貸付けは低廉対価による土地の貸付けに該当しない旨答述したが、法人税基本通達15−1−21《低廉貸付けの判定》の(3)は、土地の貸付けの対価が低廉対価に該当するかどうかについては、当該土地に係る固定資産税又は都市計画税が特別に減免されている場合であっても、その減免がされなかったとした場合におけるこれらの税額による旨定めている。
 これは、通常であれば低廉対価に該当し非課税となるのに、たまたま固定資産税等が減免されたために低廉対価に該当しないことになるというのでは、判定基準が中立でなく、また、法人税法施行規則第4条の2の規定も、通常課されるべき固定資産税等の額を基準として低廉対価の判定をすることを予定していることによるものであると考えられることから、当該通達は合理的なものであると認められる。
 そうすると、別表3に記載の本件貸付土地のうち、その利用状況が住宅用地とされている土地については、固定資産税が非課税とされなかったとした場合における当該税額を算定の上、その貸付けの対価が低廉対価に該当するか否かを判定する必要がある。
リ 当審判所において、上記固定資産税額を算定するため、R町役場のN税務課長から聴取した内容は次のとおりである。
(イ)請求人が所有する土地については、固定資産税評価額は算定していないので、隣接地等の状況類似地区の宅地等に基づいて、同評価額を算定することになる。
(ロ)Z島内のY2512−2に所在する砕石場の敷地は、請求人が砕石業者に貸し付けている土地と状況が類似していることから、請求人が所有するm島内の宅地を評価する場合、当該宅地の土地を参考にすることになる。また、m島以外の島内に所在する請求人所有の土地についても同様である。
(ハ)当該砕石場の敷地の固定資産税評価額は、1平方メートル当たり3,567円である。なお、当該評価額より低額となるような宅地があるとは考えられない。
(ニ)固定資産税の税額計算の方法については、固定資産税評価額の40パーセント程度が固定資産税の課税標準額になり、R町の固定資産税の税率は1.4パーセントである。
ヌ 上記リに基づき別表3に記載の本件貸付土地について、非課税とされなかった場合の固定資産税額を算定し、この金額に3を乗じた金額と当該土地の使用料の年額とを比較した結果、別表4に記載のものに対する貸付けは、低廉対価による土地の貸付けに該当するものと認められる。
 したがって、請求人の各事業年度における収益事業に係る益金の額への算入額は、本件土地使用料から別表4に記載の低廉対価による土地の貸付けに係るものを控除した金額となり、その金額は、別表5に記載の審判所認定額のとおりである。
 なお、請求人の決算書によると、請求人は、本件土地使用料に対応する費用の額を区分経理していないため、課税対象となる本件土地使用料に対応する費用の額の計算に当たっては、原処分庁が採用した次に掲げる方法によることが合理的であると認められ、この方法により当該費用の額を算出すると、別表6に記載の「費用算出額」欄の審判所認定額のとおりとなる。
(イ)各事業年度の決算書の総収入に占める課税対象となる本件土地使用料の額の割合(小数点以下第3位を四捨五入)を求める。
(ロ)各事業年度の決算書の総支出の額に(イ)で算出した割合を乗じる。ただし、総支出の額のうち資産の取得に充てられたものは除く。
 また、平成8年3月期以降の各事業年度において、損金の額に算入される未納事業税の額は、別表6に記載の「未納事業税認容」欄の審判所認定額のとおりである。
 以上の結果、請求人の本件各事業年度の所得金額は、別表6に記載の「法人税の所得金額」欄の審判所認定額のとおりとなり、いずれも本件決定処分に係る金額を下回ることとなるから、本件決定処分は、いずれもその一部を取り消すべきである。
ル なお、請求人は、本件各証明を無視した原処分庁の権限行使が明らかに職権濫用に当たるという疑念すら生じるなどるる主張するが、原処分庁は、人格のない社団等である請求人の収益事業に係る法人税の調査を行ったものであり、その手続等に何ら違法な点は認められないから、請求人の主張は理由がない。

(2)本件賦課決定処分について

 前記1の(3)のロのとおり、R町長が請求人は財産区である旨の証明をし、固定資産税も非課税とされている事実が認められるとはいえ、前記3の(1)のホのとおり、請求人が自治法上の財産区に該当しないことは明らかである上、前記3の(1)のイの(ホ)のとおり、平成3年6月ころの原処分庁から法人税の期限後申告のしょうようを受けていることも併せ考えると、本件賦課決定処分については、国税通則法第66条第1項に規定する正当な理由がある場合に該当しないことが明らかである。
 なお、本件決定処分の一部の取消しに伴い、本件賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。
(3)原処分のその他の部分については、当審判所に提出された資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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