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(平13.9.21裁決、裁決事例集No.62 380頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、相続により取得した出資及び取引相場のない株式の価額を財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達、平成10年5月12日付課評2−3による改正前のものをいい、以下「評価基本通達」という。)185《純資産価額》に定める評価方式(以下「純資産価額方式」という。)によって評価するに当たり、評価しようとする会社(以下「評価会社」という。)が、現物出資により著しく低い価額で受け入れた上場株式等を有している場合に、法人税額等相当額を控除すべきか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 審査請求人F、同G、同H及び同K(以下、4名を併せて「請求人ら」という。)は、平成9年6月19日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したL(以下「本件被相続人」という。)の共同相続人である。
 請求人らは、本件被相続人の相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税の申告書に、別表1の「申告」欄のとおり記載して法定申告期限内に申告した(以下、この申告を「本件申告」といい、本件申告に係る申告書を「本件相続税申告書」という。)。
ロ 請求人らは、原処分庁所属の職員の調査(以下「本件調査」という。)があったことから、平成11年11月24日に、別表1の「修正申告」欄のとおり修正申告(以下「本件修正申告」という。)をし、原処分庁は、平成12年1月17日付で請求人らに対し、別表1の「賦課決定」欄のとおり、本件修正申告に係る過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ハ 次いで、原処分庁は、本件調査に基づき、平成12年1月28日付で請求人らに対し、別表1の「更正処分等」欄のとおり、更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ニ 請求人らは、本件更正処分及び本件賦課決定処分を不服として、平成12年3月27日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年6月27日付でこれらをいずれも棄却する旨の異議決定をし、その異議決定書謄本を、請求人らに対し、同月29日に送達した。
ホ 請求人らは、異議決定を経た後の本件更正処分及び本件賦課決定処分に不服があるとして、平成12年7月28日に審査請求をした。
 なお、請求人らは、Gを総代として選任し、その旨を平成12年8月10日に届け出た。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人らは、本件被相続人から、有限会社M(以下「M社」という。)の出資(以下「本件出資」という。)及びN株式会社(本店所在地をP県Q市4丁目7番7号として平成6年12月22日に設立登記されたものをいい、以下「N社」という。)の株式(以下「本件株式」という。)を含む遺産を相続した。
ロ 本件被相続人及び請求人ら(以下「本件被相続人ら」という。)は、昭和63年11月22日に、W証券取引所の公表する最終価格が1株当たり995円であったX株式会社(以下「X社」という。)の株式を1株50円で現物出資してM社を設立し、次いで、同社の平成元年1月28日の増資時にも、同日のW証券取引所の公表する最終価格が1株当たり1,130円であったX社の株式を1株50円で現物出資した。
 なお、本件被相続人ら各人が現物出資をしたX社の株式数及び現物出資により取得したM社の出資(額面1,000円)口数は、次のとおりである。

 M社は、本件被相続人らが現物出資をした上記X社の株式合計729,000株を36,450,000円で受け入れた旨の経理処理をした。
ハ 本件被相続人は、平成7年2月28日に解散した昭和61年12月15日設立のN株式会社(以下「旧N社」という。)から、平成6年12月9日に、株式会社Y(以下「Y社」という。)の株式44,000株を96,534,900円で、また、同月16日に、X社の株式241,500株を161,805,000円でそれぞれ取得した。
ニ Fは、Z証券株式会社を通じ、平成7年1月12日の約定で、X社の株式330,000株を227,700,000円(単価690円、手数料等を差し引いて受領した金額224,080,288円)で売却し、同月13日の約定でX社の株式330,000株を227,700,000円(単価690円、手数料等を加えて支払った金額228,359,612円)で取得するいわゆるクロス取引をした。
 また、Gは、Fと同様に、Z証券株式会社を通じ、平成7年1月12日の約定で、X社の株式690,000株を476,100,000円(単価690円、手数料等を差し引いて受領した金額468,875,422円)で売却し、同月13日の約定でX社の株式690,000株を476,100,000円(単価690円、手数料等を加えて支払った金額477,135,278円)で取得するいわゆるクロス取引をした。
ホ 本件被相続人、F及びGは、平成6年12月22日にN社を資本金10,000,000円で設立した後、同社の同月25日の増資割当てに対して、X社の株式を1株7.25円、Y社の株式を1株22.50円で現物出資した。
 なお、本件被相続人、F及びG各人が現物出資したX社及びY社の株式数並びに現物出資により取得したN社の株式数は、次のとおりである。

 N社は、本件被相続人が現物出資をしたX社の株式241,500株については1,760,000円で、Y社の株式44,000株については990,000円で、Fが現物出資したX社の株式200,000株については1,450,000円で、また、Gが現物出資したX社の株式800,000株については5,800,000円で受け入れた旨の経理処理をした。
ヘ 本件被相続人は、上記ホのX社及びY社の各株式の現物出資に係る譲渡所得の収入金額について、X社の株式については86,287,530円、Y社の株式については49,307,160円として平成6年分の所得税の確定申告をした。
 また、F及びGは、上記ホのX社の株式の現物出資に係る譲渡所得の収入金額について、Fは71,495,382円、Gは285,981,528円として平成7年分の所得税の確定申告をした。
ト M社に係る商業登記簿謄本の「目的」欄には、「〔1〕不動産の賃貸・管理、〔2〕有価証券の売買、〔3〕上記に付帯する一切の業務」と記載されている。
チ 旧N社に係る商業登記簿謄本の「目的」欄には、「〔1〕損害保険代理店、〔2〕不動産の所有・賃貸及び管理、〔3〕前各号に付帯する一切の業務」と記載されており、N社に係る商業登記簿謄本の「目的」欄には、「〔1〕損害保険代理店業、〔2〕上記に付帯する一切の業務」と記載されている。
 なお、N社の本店所在地は、設立時はP県Q市R町4丁目7番7号であったが、旧N社の解散後の平成7年9月1日に、P県S市T町4丁目11番4−701号へ移転した。
リ 本件相続税申告書には、別表2及び別表3のとおり記載した本件出資及び本件株式に係る評価明細書が添付されている。
ヌ 本件出資及び本件株式は、いずれも取引相場のない株式等であり、本件出資は、評価基本通達189《特定の評価会社の株式》の(1)に定める「株式保有特定会社の株式」に、また、本件株式は、同通達189の(3)に定める「開業後3年未満の会社等の株式」にそれぞれ該当する。
 なお、本件出資の価額は、評価基本通達194《合名会社等の出資の評価》の定めにより、評価基本通達178から193までに定める取引相場のない株式の評価方法に準じて評価することとされている。
ル 評価基本通達の定めに基づく本件相続開始日におけるX社及びY社の株式の相続税評価額は、X社が1株当たり441円、Y社が1株当たり1,370円である。

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2 主張

(1)請求人ら

 本件更正処分及び本件賦課決定処分は、次の理由により違法かつ不当であるから、その全部を取り消す旨の裁決を求める。
イ 本件更正処分について
 原処分庁は、本件出資及び本件株式の価額については「評価基本通達によらないことが相当と認められる特別な事情がある」として、評価基本通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》の定めに基づき純資産価額方式による評価に当たり「法人税額等相当額を控除しないで計算したものをもって本件出資及び本件株式の時価とみるのが相当である」と主張するが、相続税法第22条《評価の原則》に規定されている「当該財産の取得の時における時価」とは、相続開始時における客観的な交換価値をいうものと解されていることに照らすと、原処分庁の主張は、次のとおり、明らかに同条の規定に違反するものである。
(イ)株式の取得態様並びに本件出資及び本件株式の時価について
A 評価基本通達は、法令解釈通達であるから、相続税法第22条の時価、すなわち、客観的な交換価値の額を超えて評価することはできないところ、法人が所有する上場株式を譲渡した場合には、それが現物出資により取得されたものか、有償又は無償取得されたものかにかかわらず、いずれも譲渡価額と簿価との差額に対して法人税が課されることからすると、本件出資及び本件株式の交換価値(時価)についても、M社及びN社が所有している上場株式の取得の態様が現物出資によるものか否かにかかわりなく、当該上場株式の時価と簿価との評価差額に対する法人税額等相当額を控除した上で決まるものと考えられる。
B 本件出資及び本件株式の客観的な交換価値(時価)は、それぞれの評価会社であるM社及びN社(以下「本件各評価会社」という。)の貸借対照表等から保有資産の現在価値を評価し、含み益がどれほどか、また、それらの損益計算書等から収益力がどれほどか、等々で決まるものと考えられ、本件各評価会社が所有している株式の取得時の態様が現物出資か否か、有償取得か無償取得かによって、本件出資及び本件株式の交換価値が変わるとは考えられず、特に現物出資で簿価が低い価額であるからといって客観的な交換価値が高くなることは絶対にない。
(ロ)本件更正処分の不当性について
 本件更正処分は、次に述べるとおり、評価基本通達が改正された背景や経緯を全く無視した不当な処分である。
A 評価基本通達の改正の経緯と本件更正処分
(A)本件被相続人らがM社に現物出資した当時は、株式等の譲渡益については非課税が原則であり、また、株式等が相続財産又は贈与財産である場合の相続税や贈与税について、その株式等の評価会社の純資産価額を算定するに当たり、評価基本通達186−2《評価差額に対する法人税額等に相当する金額》の定めにより計算した評価差額に対する法人税額等相当額の控除を利用した節税策が横行し、それを契機として平成2年に評価基本通達の改正が行われ、新たに同通達186−3《評価会社が有する株式等の純資産価額の計算》が定められたが、現物出資でも個人が評価会社に対して出資したものの評価については同通達186−2の定めにより計算した評価差額に対する法人税額等相当額の控除の適用が認められる結果となった。
(B)その後、平成5年以前には、金融機関からの借入金を出資して第一同族会社を設立し、次いで第一同族会社の出資の全部を著しく低い価額で現物出資することにより第二同族会社を設立した場合、第二同族会社の株式を評価基本通達185の定めに基づいて純資産価額を評価する際に、評価差額に対する法人税額等相当額が控除されることが問題となり、平成6年6月に、評価基本通達の一部改正があり、同通達186−2の(2)で「現物出資により著しく低い価額で受け入れた取引相場のない株式」だけは、評価差額に対する法人税額等相当額の控除が認められないこととなった。
(C)評価基本通達186−2は、上記のとおりの経緯で改正がされているが、相続税法第22条からみれば、この改正とて上記(イ)のとおり問題であるが、本件出資及び本件株式は、上場株式を現物出資で受け入れた場合であるから、この改正された通達の定めである取引相場のない株式を受け入れた場合に該当しておらず、したがって、評価差額に対する法人税額等相当額を控除しない本件更正処分は不当な処分である。
B 本件更正処分と信義則
 原処分庁は、請求人らの平成6年分の贈与税の申告及び本件被相続人の現物出資に伴う平成6年分の所得税の確定申告に係る税務調査(以下「6年分税務調査」という。)の結果、現物出資に伴う取引相場のない株式の評価において、評価基本通達185の定めを適用し、同通達186−2の定めにより計算した評価差額に対する法人税額等相当額の控除を是認しており、その後、請求人らは本件相続税申告書を提出しているが、この間、相続税法及び評価基本通達ともに改正されていない。
 そうしたところ、6年分税務調査で把握された事実と、原処分庁が本件調査で把握した事実とに何ら異なることがないにもかかわらず、本件更正処分において、本件出資及び本件株式について、評価基本通達186−2の定めにより計算した評価差額に対する法人税額等相当額の控除の適用を認めないのは、信義則に違背した不当な処分である。
C 相続税法第64条の規定の適用について
 原処分庁は、異議申立てに係る調査で把握した事実を総合勘案すると、前記1の(3)のロ及びホの現物出資は、評価差額をし意的に作り出し、相続税の負担の軽減を図る目的で行われたものと認められる旨主張するが、そうだとすると、これは、相続税法第64条《同族会社の行為又は計算の否認》の規定を適用すべき問題であり、評価(時価)の問題ではない。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分はその全部が取り消されるべきであるから、本件賦課決定処分についても、その全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁

 次に述べるとおり、請求人らの主張にはいずれも理由がなく、本件更正処分及び本件賦課決定処分は適法に行われているから、本件審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ)原処分庁の調査によれば、次の事実が認められる。
A 本件被相続人が前記1の(3)のホの現物出資をしたN社の増資割当日の平成6年12月25日は日曜日であるところ、翌26日のW証券取引所の公表するX社の株式の最終価格は1株当たり710円、Y社の株式の最終価格は1株当たり2,190円であったから、本件被相続人が現物出資をしたX社の株式241,500株の同日の時価は171,465,000円であり、Y社の株式44,000株の同日の時価は96,360,000円である。
B F及びGが前記1の(3)のホの現物出資をした平成7年1月24日のW証券取引所の公表するX社の最終価格は1株当たり639円であったから、Fが現物出資をしたX社の株式200,000株の同日の時価は127,800,000円であり、Gが現物出資をした同社の株式800,000株の同日の時価は511,200,000円である。
C 本件被相続人、F及びGは、前記1の(3)のヘのとおり同人らが現物出資により取得した本件株式の価額を法人税額等相当額を控除せずに純資産価額方式で評価した、1株当たり2,465,358円と計算したところに基づき譲渡所得の収入金額を計算して申告している。
D 本件相続に係る相続税の申告手続を行ったJ税理士(以下「J税理士」という。)は、平成12年5月19日、原処分庁の調査担当者に対し、要旨次のとおり申述している。
(A)J税理士は、M社、旧N社及びN社の設立時から、各社の税務関係について関与している。
(B)M社及びN社は、X社の株式の保有並びに不動産の管理を目的として設立された。
(C)前記1の(3)のロからヘまでの一連の行為(以下「本件一連の行為」という。)のうちハからヘまでは、J税理士の事務所員が作成した相続税対策(以下「本件相続税対策」という。)に基づいて行い、前記1の(3)のニのX社の株式のクロス取引は、F及びGの所有するX社の株式の取得価額を引き上げることによって、同ホの同人らの現物出資に係る譲渡所得を生じさせないことを目的として行ったものであり、また、N社の前記1の(3)のホの現物出資された株式の受入価額は、受け入れた株式の相続税評価額との差額を生じさせるように設定したものである。
(ロ)相続税法に規定する財産の時価
A 相続税法第22条は、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」旨規定しており、ここでいう時価とは、相続開始時における客観的な交換価値をいうものと解されている。
 しかしながら、多種多様の財産について個々にその時価を把握することは相当な困難を伴うものであり、また、統一的運用を必要とすることから、課税実務上は、財産の評価の一般的基準として評価基本通達を定めており、そこに定められた画一的な評価方法によって相続財産を評価することとされている。
 これは、財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった価額が生じることが避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、課税実務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどからして、あらかじめ定められた評価方式により画一的に評価する方が納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地から見て合理的であるという理由に基づくものと解されている。
 そうすると、租税平等主義という観点からは、評価基本通達に定められた評価方式が合理的なものである限り、これが形式的にすべての納税者に適用されることが望ましいとしても、他方、同通達に定められた評価方式によるべきであるとする趣旨が上記のようなものであることからすれば、同通達に定められた評価方式を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を害することが明らかであるなどの特別な事情がある場合には、他の合理的な評価方式によることができるものと解すべきであり、このことは、評価基本通達6において「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」旨定められていることからも明らかなものといえる。
B ところで、評価基本通達が定める株式等を評価する純資産価額方式において、法人税額等相当額を控除することとしているのは、個人が株式の所有を通じて会社の資産を間接的に所有している場合と個人事業主として直接に事業用資産を所有している場合とでは、その所有形態が異なることからその処分性等におのずと差があるため、両者の事業用資産の所有形態を経済的に同一の条件の下に置き換えた上で評価の均衡を図る必要があるという配慮に基づくものであると解されている。
(ハ)前記1の(3)のロからチまで及び上記(イ)の事実を上記(ロ)に照らし総合勘案すると、次のとおり判断される。
A 純資産価額方式について
 評価基本通達が取引相場のない株式を評価する純資産価額方式において法人税額等相当額を控除することとしているのは、上記(ロ)のBのとおり、被相続人から事業用資産を直接に相続した場合とその間接的所有形態である株式を相続した場合とで、その評価の均衡を図る必要があるとの考慮に基づくものであり、このような評価の均衡を図る必要性と関係なく、純資産価額方式による評価の際に、理論上、当然に法人税額等相当額の控除がされるというべきものではない。
 したがって、評価基本通達が法人税額等相当額を控除することとしていることを利用し、ことさらに評価差額を人為的に作り出して相続税の軽減を図っているような場合においては、評価基本通達を形式的、画一的に適用し、法人税額等相当額を控除することは、上記(ロ)のAに述べた評価基本通達の趣旨に沿わないのみならず、このような計画的な行為を行うことのない納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、また、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税法の立法趣旨に反する著しく不相当な結果をもたらすこととなるから、このような場合においては、評価基本通達によらないことが相当と認められる特別な事情があるとして、純資産価額方式によって株式を評価するに当たって、法人税額等相当額を控除しないで計算したものをもって当該株式の時価とみるのが相当である。
B 本件出資及び本件株式の価額について
(A)評価基本通達を形式的に適用して本件出資及び本件株式の価額を算定する場合、本件出資の価額は、評価基本通達189の(1)、189−2《株式保有特定会社の株式の評価》及び194の定めに基づき、また、本件株式の価額は、同通達189の(3)及び189−3《土地保有特定会社の株式又は開業後3年未満の会社等の株式の評価》の定めに基づき、それぞれ純資産価額方式で評価することとなる。
(B)しかしながら、本件一連の行為は、次のとおり、相続税対策に基づくもので、純資産価額方式を適用して、本件各評価会社の純資産価額を算定するに当たり、所有する上場株式について作り出された評価差額に対して法人税額等相当額を控除することを意図したものである。
a M社については、前記1の(3)のト及びチのとおり、設立の目的が以前から存在していた旧N社と何ら変わりなく、その設立に必然性が認められず、前記1の(3)のロのとおり、設立時及び増資時において、本件被相続人らが現物出資したX社の株式を合理的な理由もなく時価(証券取引所の公表する最終価格)に比し著しく低い金額である額面金額で引き受けさせ、本件出資の純資産価額の計算上、評価差額をし意的に作り出していることから、M社は相続税の負担の軽減を図るという目的で設立され、現物出資によりX社の株式を受け入れたものと認められ、しかも、本件被相続人らの現物出資においては、平成元年3月31日以前の有価証券の譲渡では、各人ごとの1年間の売買株数が12万株を超えない場合に非課税であることを利用し、前記1の(3)のロのとおり、本件被相続人らにおいて、現物出資する株数を調整し、現物出資に係る所得税の税負担すら回避して株式の所有権を移動させたものである。
b N社については、前記1の(3)のホのとおり、その増資割当てに対して、本件被相続人、F及びGが現物出資した上場株式を時価(証券取引所の公表する最終価額)に比し著しく低い金額で引き受けさせ、本件株式の純資産価額の計算上、評価差額をし意的に作り出していることから、その増資割当ては相続税の負担の軽減を図るという目的をもって行われたものであると認められる。
c そうすると、本件出資及び本件株式の価額については、上記Aのとおり、共に評価基本通達によらないことが相当と認められる特別な事情があることから、評価基本通達6の定めに基づき国税庁長官から指示を受けた純資産価額方式によって評価するに当たり、現物出資された上場株式に係る評価差額に対する法人税額等相当額を控除しないで計算した価額をもって時価とみるのが相当である。
C 信義則違反について
 請求人らは、原処分庁が6年分税務調査で把握した事実と本件調査で把握した事実とに何ら異なることがないにもかかわらず、本件更正処分において、本件出資及び本件株式について、評価基本通達186−2の定めにより計算した評価差額に対する法人税額等相当額の控除の適用を認めないのは信義則に違背した不当な処分である旨主張する。
 しかしながら、原処分庁は、前記1の(3)のロからチまで及び上記(イ)の事実に基づき、上記(ハ)のBに述べたとおりの判断をし、当該判断に基づいて本件更正処分を行っており、請求人らの主張には理由がない。
D 相続税法第64条の規定の適用について
 請求人らは、本件更正処分に係る原処分庁の認定は、相続税法第64条の規定を適用して対応すべきものであり、評価の問題ではない旨主張するが、原処分庁は、原処分庁の調査した事実に基づき、本件出資及び本件株式の価額を算定したものであり、そこでM社及びN社の介在する請求人らの行為を否認しているものではないから、当該認定は相続税法第64条の規定が適合するところではない。
(ニ)本件出資及び本件株式の価額
 上記(ハ)のBのとおり、本件出資及び本件株式の価額を評価するに当たっては、本件被相続人らによって現物出資されたX社及びY社の株式(以下「本件上場株式」という。)に係る評価差額に対する法人税額等相当額を控除せずに評価することが相当であるところ、これを算定すると本件出資の価額は別表4の〔11〕欄のとおり1口当たり3,789円、本件株式の価額は別表5の〔11〕欄のとおり1株当たり1,573,195円となる。
 なお、請求人らは、別表2のとおり創業費を「資産の部」に計上しているが、創業費は相続税の評価において財産性が認められないから、別表4の「資産の部」欄の相続税評価額、帳簿価額ともに計上しない。
(ホ)以上に基づき請求人らの課税価格及び納付すべき税額を計算すると、課税価格は別表6の〔9〕欄、納付すべき税額は別表7の〔6〕欄のとおりとなり、これらの金額と同額でした本件更正処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分は適法であり、また、請求人らの場合、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当しないので、請求人らに対し同条第1項及び第2項の規定に基づいて行った本件賦課決定処分は適法である。

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3 判断

(1)請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

イ 本件被相続人は、平成6年6月1日に、不動産鑑定評価額が105,000,000円のP県F市g1丁目35番2、同番31所在の宅地延1,674.06平方メートルの敷地持分10,000分の472及び同土地上に存する建物(鉄筋コンクリ−ト造陸屋根5階建共同住宅、延床面積2,824.00平方メートル)の2階部分の専有床面積103.58平方メートル(家屋番号P県F市g1丁目35番2−203)(以下、当該土地に係る敷地持分及び建物の専有部分を併せて「本件土地建物」という。)を、M社の増資に際し現物出資し、M社の出資口数8,040口を取得した。
 なお、M社の本件土地建物の受入価額は、土地の敷地持分が3,561,238円、建物が4,478,762円である。
ロ 本件相続税対策には、〔1〕対策の流図として、旧N社から本件被相続人は、X社及びY社の株式を借入金で購入し、本件被相続人は、当該X社及びY社の株式を新会社の設立及び増資に際して現物出資する。また、Gも新会社の設立及び増資に際して現物出資すること、〔2〕対策の一案(平成6年12月13日現在)には、本件被相続人は、設立時に現金2,500,000円を出資し、株式を50株取得する。さらに、増資時にX社の株式241,500株及びY社の株式24,000株を出資し、株式を50株取得する。同様に、Gは、設立時に現金7,500,000円を出資し、株式を150株取得する。さらに、増資時に時価636,480,000円のX社の株式を出資し、株式を150株取得する。これにより、設立時の株価は、時価及び相続税評価額とも50,000円で増資後の株価は時価2,149,750円で相続税評価額が1,078,877円となること、〔3〕対策の効果として、本件被相続人は、資産が対策前256,178,000円から対策後148,887,000円と107,290,000円減少し、相続税が60,895,200円減少することとなり、Gは、資産が対策前636,480,000円から対策後323,663,100円と312,816,000円減少し、相続税が75,699,900円減少することとなること、〔4〕対策コストとして、本件被相続人及びG合計で9,039,270円であること、〔5〕まとめとして、減少相続税額は、本件被相続人60,895,200円、G75,699,900円の合計136,595,100円である。対策コストは、9,039,270円でコスト率は6.6%であること、〔6〕2次相続を考慮した場合として、以上の対策にFを含めること、〔7〕出資財産表、〔8〕増資後の株価の計算、〔9〕株式の譲渡所得の計算、〔10〕クロス取引時の手数料等試算、及び〔11〕対策の効果の各事項について記載されている。
ハ W証券取引所の公表する、平成6年12月26日のX社の株式の最終価格は1株当たり710円、Y社の株式の最終価格は1株当たり2,190円、また、平成7年1月24日のX社の株式の最終価格は1株当たり639円である。
ニ 評価基本通達の定めに基づく本件相続開始日における本件土地建物の相続税評価額は、土地の敷地持分が24,184,124円、建物が8,731,940円である。
ホ 原処分庁は、評価基本通達6の定めに基づき、国税庁長官の指示を受け本件出資及び本件株式の価額の算定に当たり、現物出資された上場株式に係る評価差額に対する法人税額等相当額を控除しないで計算した価額をもって時価としている。

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(2)本件更正処分について

イ 相続税法に規定する財産の時価及び評価基本通達の合理性
 課税実務上、相続財産の価額は、相続税法に特別の定めのある場合を除き、評価基本通達に定める方式により評価するのが原則であるが、評価基本通達によらないことが相当と認められるような特別の事情がある場合には、他の合理的な時価の評価方式によることが許されるものと解するのが相当であり、前記2の(2)のイの(ロ)のAの相続税法第22条に規定する「財産の時価」の解釈並びに評価基本通達の合理性に関する原処分庁の主張は、当審判所においても相当と解される。
ロ 純資産価額方式において法人税額等相当額を控除する趣旨
 相続財産が取引相場のない株式等である場合のその株式等の評価について、評価基本通達185は、評価基本通達186−2の定めにより計算される評価差額を法人税法第92条《解散の場合の清算所得に対する法人税の課税標準》に規定する金額とみなし、資産の所有形態を法人から個人所有に変更した場合に課税されることとなる清算所得に対する法人税額等相当額を控除することとしているが、これは、個人が株式等の所有を通じて会社の資産を間接的に所有している場合と、個人事業主として直接に事業用資産を所有する場合とでは、その所有形態が異なりその処分性等におのずと差があることから、両者の事業用財産の所有形態を経済的に同一の条件の下に置き換えた上で評価の均衡を図る必要があるためであると解されている。したがって、評価基本通達185が純資産価額方式において評価会社の株式等及び土地建物等その他の各資産の相続税評価額の合計額と各負債金額の合計額との差額から評価差額に対する法人税額等相当額を控除することとしていることは合理的なものと認められる。
ハ 評価基本通達の適用における特別な事情
 評価基本通達が純資産価額方式において法人税額等相当額を控除することとしているのは、上記ロのとおりであるが、純資産価額方式による評価の際に、当然に法人税額等相当額の控除がされるというべきものではない。すなわち、上記イのとおり、評価基本通達を形式的、画一的に適用し、同通達に定める法人税額等相当額を控除することによって、かえって租税負担の公平を著しく害し、また、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税法の立法趣旨にも反する著しく不相当な結果をもたらすこととなる等の特別な事情がある場合には、他の合理的な評価方法によることができると解すべきであり、このことは、評価基本通達の改正の経緯や同通達6の定めにより著しく課税の公平を欠く場合に適正な評価が行えるようにしていることからも肯定されるものである。
ニ 本件出資及び本件株式の評価額の算定
 本件出資及び本件株式の時価を評価するに当たり、本件出資が評価基本通達189の(1)に定める「株式保有特定会社の株式」に該当すること及び本件株式が評価基本通達189の(3)に定める「開業後3年未満の会社等の株式」に該当すること、仮に評価基本通達に従って評価する場合には、本件出資及び本件株式は純資産価額方式によって評価されることについて当事者間に争いがないところ、請求人らは、同通達185の定めをそのまま適用して法人税額等相当額を控除して評価すべきである旨主張し、一方、原処分庁は、同通達に定める純資産価額方式を基礎とするものの法人税額等相当額を控除しないで評価すべき特別な事情がある旨主張するので、以下この点について検討する。
(イ)M社に対する現物出資
A 前記1の(3)のロの事実によれば、本件被相続人らは、昭和63年11月22日に、時価199,000,000円(995円×200,000株)のX社の株式を10,000,000円(50円×200,000株)で現物出資することによりM社を設立し、次いでM社が増資をした平成元年1月28日にも時価597,770,000円(1,130円×529,000株)のX社の株式を26,450,000円(50円×529,000株)で現物出資することにより、総額760,320,000円相当額の経済的利益(評価差額)をM社に移転しており、本件被相続人に限ってみても、総額142,695,000円の相当額の経済的利益(評価差額)をM社に移転している。
B さらに、上記(1)のイの事実によれば、本件被相続人は、平成6年6月1日に、時価105,000,000円の本件土地建物を8,040,000円で現物出資することにより、その差額96,960,000円相当額の経済的利益(評価差額)をM社に移転している。
C 本件被相続人らは、上記A、Bの現物出資により総額857,280,000円相当額の経済的利益(評価差額)をM社に移転したものと認められる。
(ロ)N社に対する現物出資
A 前記1の(3)のハ及び上記(1)のハの事実によれば、本件被相続人は、前記1の(3)のホの増資割当てに応ずるために、旧N社からX社の株式241,500株を161,805,000円で、Y社の株式44,000株を96,534,900円で取得した上で、平成6年12年26日の時価171,465,000円(710円×241,500株)のX社の株式を1,760,000円で、時価96,360,000円(2,190円×44,000株)のY社の株式を990,000円で現物出資しており、取得価額との差額において総額255,589,900円、時価との差額においては総額265,075,000円にも上る経済的利益(評価差額)をN社に移転している。
B また、前記1の(3)のニ及び上記(1)のハの事実によれば、F及びGも、前記1の(3)のホの増資割当てに応ずるために、Z証券株式会社を通じて、クロス取引によりそれぞれX社の株式を取得した上で、Fは、時価127,800,000円(639円×200,000株)のX社の株式を1,450,000円で、Gは、時価511,200,000円(639円×800,000株)のX社の株式を5,800,000円で現物出資することにより、Fは126,350,000円相当額の、Gは505,400,000円相当額の経済的利益(評価差額)をN社に移転している。
C 本件被相続人、F及びGは、上記A、Bの現物出資により総額896,825,000円相当額の経済的利益(評価差額)をN社に移転したものと認められる。
(ハ)評価差額の総額
 M社及びN社が本件相続開始日において所有する前記1の(3)のロ及びホの本件被相続人からの現物出資により取得したX社及びY社の株式の相続税評価額は、前記1の(3)のルから、X社の株式が165,595,500円(375,500株×441円)、Y社の株式が60,280,000円(44,000株×1,370円)の合計225,875,500円であるところ、その帳簿価額は、X社の株式が8,450,875円(M社所有分6,700,000円、N社所有分1,750,875円)、Y社の株式が990,000円の合計9,440,875円であるから、その評価差額の総額は216,434,625円となる。さらに、M社が本件課税時期において所有する上記(1)のイの本件被相続人から現物出資により取得した本件土地建物の相続税評価額は、上記(1)のニから32,916,064円であるところ、その帳簿価額は、8,040,000円であるから、その評価差額の総額は24,876,064円となり、上記株式の評価差額を合計すると241,310,689円となる。したがって、これらの評価差額の総額に対する法人税額等相当額は123,068,451円(241,310,689円×51%)となる。
(ニ)特別の事情の有無
 以上からすると、本件被相続人らの本件一連の行為は、J税理士が作成した本件相続税対策の趣旨・内容に符合していることからも明らかなように、本件上場株式や本件土地建物の現物出資を、本件各評価会社に対し、それぞれの時価に比し著しく低い金額で引き受けさせることにより、本件各評価会社の純資産価額の計算上の評価差額をし意的に作り出し、本件出資及び本件株式の評価額を算定するに当たり、評価差額に対する法人税額等相当額を控除することとしている評価基本通達そのものに定める方式を利用し、それらの評価額を圧縮することによって、相続税額の負担を軽減するという目的で行われたものであることが認められ、上記(ハ)のとおり、本件出資及び本件株式を評価基本通達186−2に定める法人税額等相当額を控除して計算すると、本件被相続人の資産は、上場株式及び本件土地建物から本件出資及び本件株式に形を変えたことにより半額以下になり、その分相続税の課税価格が著しく減少し、多額の相続税が軽減されることになったものである。このような場合にまで、法人税額等相当額の控除を認めることは、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の立法趣旨にも反するとともに、このような行為を行った者の税負担だけが免れる結果を招き、課税の不公平を助長することになり、他の納税者との間の実質的な租税負担の公平を害することは明らかである。したがって、本件については、評価基本通達そのものの定めによらない特別な事情があると認められ、本件出資及び本件株式の評価については、評価基本通達186−2に定める法人税額等相当額を控除せずに評価することが、その客観的な交換価値を算出する上で、合理的な評価方法であると解すべきである。
(ホ)本件出資及び本件株式の価額
 以上によれば、本件出資及び本件株式の価額は、本件各評価会社に対して現物出資された本件上場株式及び本件土地建物に係る相続税評価額と帳簿価額との評価差額に対する法人税額等相当額を控除しないで計算した本件各評価会社の各純資産価額を基とした純資産価額方式により計算するのが相当と認められ、そうすると、本件出資の1口当たりの評価額は別表8の〔11〕欄のとおり3,789円、また、本件株式の1株当たりの評価額は別表9の〔11〕欄のとおり1,573,195円となる。
 なお、M社の出資の価額の評価に際し、請求人らは、別表2のとおり、創業費を「資産の部」に計上しているが、創業費には財産性が認められないから、別表8のとおり、相続税評価額及び帳簿価額のいずれにも計上しないのが相当である。
ホ 以上の結果に基づき請求人ら各人の課税価格及び納付すべき税額を計算すると、課税価格は別表10の〔12〕欄のとおりとなり、納付すべき税額は別表11の〔6〕欄のとおりとなるところ、本件更正処分はこれらの金額と同額であるから、本件更正処分は適法である。

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(3)信義則違反について

 請求人らは、原処分庁が6年分税務調査で把握した事実と本件調査で把握した事実とでは何ら異なることがなく、かつ、本件相続税申告までの間に相続税法及び評価基本通達ともに改正がないにもかかわらず、なされた本件更正処分は、信義則に反した不当な処分である旨主張する。
 しかしながら、原処分庁のする更正処分等は、過去の税務調査の結果に拘束されると解すべき理由はなく、かえって、そのように解することは、適正な課税を妨げる結果を招来しかねないことになるから、原処分庁が、6年分税務調査の結果にとらわれることなく行った本件更正処分を不当な処分ということはできない。
 したがって、この点についての請求人らの主張には理由がない。

(4)相続税法第64条の規定の適用について

 本件の現物出資はいずれも評価差額をし意的に作り出したもので、相続税の負担の軽減を図る目的で行われたものであるとの原処分庁の主張に対して、請求人らは、これは相続税法第64条の規定の適用の問題であり、評価(時価)の問題ではない旨主張する。
 しかしながら、上記(2)のニの(ニ)のとおり、本件は、相続税の負担軽減を目的として行った現物出資により、本件被相続人らが取得した本件出資及び本件株式の価額の算定について、純資産価額方式による評価に当たり、本件各評価会社の純資産価額から法人税額等相当額を控除することの適否を問題とするものであること、また、原処分庁は、相続税法第64条の規定に基づいて本件被相続人らの現物出資の行為自体を否認して課税価格を計算したものではないことから、この点についての請求人らの主張には理由がない。
 なお、本件一連の行為に関連すると認められる本件被相続人の本件土地建物の現物出資についても、上記と同様に考えられ、いずれにしてもこの点に関する請求人らの主張には理由がない。

(5)本件賦課決定処分について

 以上のとおり、本件更正処分は適法であり、また、請求人らの場合、本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額の計算の基礎となった事実のうちに、その更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づき過少申告加算税を賦課した本件賦課決定処分は適法である。
(6)原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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