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(平13.9.25裁決、裁決事例集No.62 485頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、主としてガソリンスタンドを営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、課税済みの揮発油に非揮発油を混和して販売したことにより、揮発油税法第3条《納税義務者》及び地方道路税法(以下、揮発油税法と併せて「揮発油税法等」という。)第5条《納税義務者》に規定する納税義務者に当たることとなるか否か、また、揮発油税及び地方道路税(以下「揮発油税等」という。)が、結果としていわゆる二重課税となることが違法か否かを争点とする事案である。

(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、請求人の経営するG給油所、H給油所及びK給油所(以下、併せて「各給油所」という。)において、課税済みのレギュラーガソリンが入っている各給油所の地下タンクに、「L」と称する自動車用燃料(以下「L」という。)を混和し、それをレギュラーガソリンとして販売した。
ロ 請求人は、原処分庁所属の職員の調査を受け、各給油所に係る平成10年9月分及び平成10年10月分(以下、併せて「各月分」という。)の揮発油税等について、納税申告書に別表1の(1)ないし(3)の「確定申告」欄のとおり記載して、平成12年4月19日に申告(以下、これらの申告を併せて「期限後申告」という。)した。
ハ 原処分庁は、これに対し、平成12年5月18日付で、各月分の揮発油税等について、別表1の(1)ないし(3)の「更正処分等」欄のとおりとする各更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)をした。
ニ 請求人は、本件更正処分等を不服として、平成12年7月14日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成12年9月12日付で棄却の異議決定をした。
ホ 請求人は、異議決定を経た後の本件更正処分等を不服として、平成12年10月6日に審査請求をした。

(3)基礎事実

 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によっもその事実が認められる。
イ 請求人が、各給油所においてレギュラーガソリンに混和したLの仕入等の状況は別表2のとおりであり、また、混和等の状況は別表3の(1)ないし(3)のとおりである。
ロ 請求人は、別表4の(1)ないし(3)のとおり、各給油所のタンク内在庫ガソリンに混和したLの合計数量に基づいた揮発油税等の期限後申告をしている。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
(イ)課税要件について
A 原処分庁は、Lの成分はその都度相当バラツキがあるにもかかわらず、Lの出荷元であるM株式会社(以下「M社」という。)が平成12年4月6日付で発行した確認書(以下「本件確認書」という。)に基づき、混和後のものが揮発油に当たるとしているが、本件確認書によると、Lの炭化水素成分が46.1%であるとする団体N(以下「検定機関」という。)の成分分析は、炭化水素成分が50%以上のものが揮発油に該当するにもかかわらず、それ以下であり、かつ、当社がLを仕入れた日よりも3ケ月も前に行われたものであることからすると、本件確認書に基づき混和後のものが揮発油に当たると決めつけるのは妥当ではない。
B 揮発油税法は、同法第8条《課税標準》及び第23条《製造の開廃等の申告》の規定からすると、製造者、販売者及び一般消費者という区分を前提として規定されているものと認められるところ、請求人は販売者であり製造場を有していないので、揮発油の製造者にはなり得ず、同法第3条に規定する納税義務者とはなり得ない。
 また、製造の一般的な概念は、物理的操作を加え又は化学的変化を与えることによって、新たな物を造り出す行為をいうのであり、単なる混和はこれに当たらないことから、請求人は揮発油を製造していないこととなる。
C 酒税法第6条《納税義務者》は、酒類の製造者は、その製造場から移出した酒類につき酒税を納める義務がある旨規定しており、規定の仕方は揮発油税法第3条と同じであるが、酒税法第43条《みなし製造》は、酒類に水以外の物品(当該酒類と同一の種類及び品目に属する酒類を除く。)を混和した場合において、混和後のものが酒類であるときは、新たに酒類を製造したものとみなす旨規定しているが、揮発油税法にはそのような規定は設けられていない。
 そうすると、酒税法の規定からも分かるように、社会通念上、混和は製造には該当しないことから、同法では、わざわざ混和を製造とみなす旨規定しているのであり、そのような規定が設けられていない揮発油税法は、立法の趣旨として、混和を製造と考えていないこととなる。
 したがって、混和が製造に当たるとする昭和52年4月1日付間消4−11ほか2課共同「揮発油税法基本通達の全部改正について」(平成8年3月31日付課消4−32による改正後のもの。以下「基本通達」という。)第9条《製造の定義》の定めは、揮発油税法を拡大解釈したものであり、法の趣旨に照らし違法である。
 また、基本通達第9条で混和が製造に当たると定めていながら、同通達第10条《製造として取り扱わない行為》では混和を製造でないと定めていることからも、同通達は、揮発油税法の立法趣旨を拡大解釈し、自己矛盾に陥っている。
 ところで、租税の賦課・徴収は、必ず法律の根拠に基づいて行わなければならないとする租税法律主義により課税要件を明確にしなければならないところ、揮発油の製造の定義は妥当でない。
D なお、請求人は、Lの紹介者から、Lは地球環境に良いエネルギーで、使用しても何らトラブルが発生しない新燃料であり、また、地下タンクのレギュラーガソリンと混和しても良いとの説明を受けたので、レギュラーガソリンにLを混和して販売したが、この混和が製造に当たり揮発油税等が課税されることを知らなかったものである。
(ロ)二重課税について
 請求人は、混和したLに揮発油税等が課税されていないことから、混和したLについて、期限後申告をし、揮発油税等の納付をしたにもかかわらず、揮発油税等が課税済みである部分についてまで更に課税することは、次のことから誤った処分であり、違法・不当である。
A 税法の考え方では、二重課税をしないのが大原則である。
B 原処分庁は、請求人が一時的な試験販売のため初めて行った混和に対して、基本通達第9条を楯に二重課税を行ったが、それはあまりにも酷である。
(ハ)よって、本件更正処分は違法であるから、その全部を取り消すべきである。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分はその全部を取り消すべきであるから、これに伴い本件賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ)課税要件について
A 本件確認書によると、請求人がレギュラーガソリンに混和したLの炭化水素成分は、平成10年6月26日に検定機関で分析したものと同じく46.1%であり、また、別表3に掲げる混和前のタンク内在庫ガソリン数量とL混和量からして、混和後のものは炭化水素成分が重量比で50%以上となることは明らかであり、揮発油に該当する。
B 揮発油税法第3条は、揮発油の製造者とは揮発油を製造した者、製造場とは揮発油を製造した場所をいう旨規定していることから、揮発油を製造すれば、販売業者であっても揮発油の製造者に該当し、製造した場所が製造場に該当するので、揮発油税等の納税義務者となる。
 そして、基本通達第9条では、揮発油の製造とは、原油、揮発油、その他の物に積極的操作を加えて新たな揮発油を造り出す行為であり、積極的操作とは、製造者が意図して物理的操作を加え又は化学的変化を与えることをいう旨定めていることから、混和は物理的操作に当たり、揮発油に非揮発油を混和した行為は製造に当たることとなる。
 なお、揮発油税法第8条の規定は、揮発油が文字どおり揮発しやすい物質であるため、消費者に渡るまでの輸送期間、貯蔵期間の長短、経由する業者の多寡は問わず、一律に政令で定められた数量を移出数量から控除するという規定であり、製造者、販売者及び消費者を定義している規定ではない。
 また、揮発油税法第23条の規定は、税務当局の課税監督の必要性から設けられている規定であり、製造者、販売者及び消費者を定義している規定ではない。
C 酒税法は、揮発油税法とは課税体系を異にするものであるから、これを揮発油税法に置き換えて類推解釈することは妥当ではなく、そして、揮発油税法は、混和の方法により揮発油を造り出す行為が製造に当たらないことを前提に規定しているものではないことから、請求人の主張は当を得ていない。
 また、基本通達第10条に掲げる行為は、厳密には、同通達第9条に定める積極的操作による揮発油の製造に該当するのであるが、法の趣旨に照らし、揮発油の製造には該当しないこととして取り扱う趣旨で定めているものである。
 したがって、基本通達は、揮発油税法の立法趣旨を拡大解釈したものではなく、また、矛盾していることもないので、請求人の主張には理由がない。
D なお、揮発油税法等には、税法の不知を理由に揮発油税等の納税義務を免除する規定はない。
(ロ)二重課税について
 揮発油税法第14条《未納税移出》及び同法第17条《もどし入れの場合の揮発油税の控除等》並びに地方道路税法第6条《未納税移出等》及び同法第9条《戻入れの場合の地方道路税の控除等》において、二重課税を回避する手段及び方法が規定されている。
 そして、これらの制度を利用するかどうかは、請求人の自由な意思にゆだねられており、請求人がこの制度を利用しないために結果的にいわゆる二重課税になったとしても、それは、請求人自身の選択によるものであり、何ら違法ではない。
 なお、揮発油税法において、初めて行った混和は製造に当たらないとする規定はない。
(ハ)以上のことから、各給油所に係る各月分の揮発油税等の計算をすると、納付すべき税額は、別表5の(1)ないし(3)の各「納付すべき税額」欄のとおりであり、期限後申告との差額についてなした本件更正処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分は適法であり、かつ、請求人には、国税通則法(以下「通則法」という。)第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないことから、同条第1項の規定に基づき行った本件賦課決定処分は適法である。

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3 判断

(1)本件更正処分について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件確認書は、平成10年6月26日に検定機関で次のとおり分析したものであり、この分析内容は平成10年9月22日及び平成10年10月16日にP株式会社R営業所から請求人に出荷したLの成分と同様のものである。
(成分分析内容)
A 温度15度で0.7793の比重を有するものである。
B Methanol ○○.○%、M.T.B.E. ○○.○% (アルコール成分の合計 53.9%)
 Benzene ○.○%、ToIuene ○○.○%、Xylenes ○.○%、Others ○○.○% (炭化水素成分の合計 46.1%)
(ロ)L混和後の揮発油の炭化水素成分の割合は別表6のとおりである。
ロ 課税要件について
(イ)請求人は、Lの成分はその都度相当バラツキがあるにもかかわらず、当社がLを仕入れた日よりも3ケ月も前に行われた成分分析結果に基づき、混和後のものが揮発油に当たると決めつけるのは妥当でない旨主張する。
 ところで、揮発油税法等の課税対象となる揮発油とは、揮発油税法第2条《定義》第1項及び地方道路税法第2条《定義》第1項で、温度15度において0.8017をこえない比重を有する炭化水素油をいう旨規定し、また、基本通達第4条《炭化水素、炭化水素油及び単一の炭化水素の意義等》第2項において、炭化水素油とは、炭化水素を主成分とする液状のものをいう旨定めていることからすると、炭化水素成分の割合が50%以上の液状のものが揮発油に当たると解するのが相当である。
 そこで本件についてみると、タンク内在庫ガソリンの数量の比重が通常0.8017をこえない炭化水素であるため、これと上記イの(イ)のAの比重が0.7793のLを混和した場合は、どのような場合でも比重0.8017をこえることはなく、また、タンク内在庫ガソリンの数量と混和したLの数量の割合からすると、混和後の炭化水素成分は上記イの(ロ)のとおり85.3%以上と認められることから混和後の全量が揮発油税法上の揮発油となる。
 仮に、混和したLの炭化水素成分の割合が、上記イの(イ)のBの本件確認書記載の検定機関の分析結果である46.1%を多少下回ったとしても、混和前のタンク内在庫ガソリンの炭化水素成分の割合が通常ほぼ100%であり、混和前のタンク内在庫ガソリンの数量と混和したLの数量との割合からすると混和後のものは揮発油に当たる。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ)請求人は、揮発油税法の規定からすると、製造場を有していない販売業者は納税義務者にはなり得ず、また、単なる混和は製造には当たらない旨主張する。
 確かに揮発油税法においては、揮発油の製造に関し、同法第6条《揮発油等とみなす場合》に製造とみなす場合について規定しているほかには明確に定義規定を設けていない。
 したがって、製造の定義については社会通念に照らして解釈する必要がある。
 社会通念による製造の概念は、材料又は原料に物理的操作を加え、又は化学的変化を与えることによってひとつの物を造り出す行為をいい、この場合材料又は原料は新品であると中古品であるとを問わず、素材である製品であるとを問わないと解されている。
 この点につき、基本通達第9条第1項は、揮発油の製造とは、原油、揮発油その他の物に積極的操作を加えて揮発油を造り出す行為をいい、その造り出された揮発油が容器に収容されるかどうかは問わない旨定め、同条第2項では、「積極的操作」とは、蒸留、分解、改質若しくは脱流をする等の精製操作、揮発油と揮発油以外の物、規格を異にする2種以上の揮発油若しくは2種以上の単一の炭化水素を混和する等のブレンド操作又はこれらの操作を組み合わせた操作をいい、揮発油を天然ガスから分離する操作、炭化水素ガスを他の炭化水素に吸着させる操作若しくは揮発油、ペンタン留分、廃油その他の物から不純物を除去する操作を含む旨定めている。この通達の製造の定義については当審判所も正当と認める。
 したがって、揮発油に揮発油以外の物を混和して揮発油とする行為は揮発油の製造に該当する。
 なお、揮発油税法第6条は、製造場又は保税地域において、揮発油にその他の物を混和して揮発油以外の物とした場合で、その物の性状及び用途が揮発油に類するものであるときは、その全体を揮発油とみなす旨規定しているが、この趣旨は、同条が「当該揮発油以外の物を揮発油とみなす。」という文言をおきながら、更に「当該混和を製造とみなし」という文言をおいていることから明らかなように、同条は、そこで製造されるものが揮発油でないということから、揮発油以外の物の製造を揮発油の製造とみなす旨を定めたものであって、「当該混和を製造とみなし」という文言から一般的に混和は製造に該当しないということを定めたものと解することは正当でない。むしろ、混和という手段によって、造られた揮発油でないものを揮発油とみなして課税することとされていることからみれば、同一の手段によって揮発油が造られたときに、それが製造に当たらず課税されないとする趣旨とは解されないのである。
 上記のとおり揮発油に揮発油以外の物を混和して揮発油とする行為が揮発油の製造に該当する以上、混和が行われる場所は揮発油の製造場に、混和を行う者は揮発油の製造者に、それぞれ該当することとなり、当該製造者は、当該製造場から移出した揮発油について、揮発油税法等の規定するところにより、揮発油税等の納税義務者となる。
 そうすると、請求人が各給油所において、レギュラーガソリンにLを混和して販売したことについてみると、当該混和が製造、各給油所が製造場及び当該販売が移出に該当することとなることから、請求人は、揮発油税法第3条及び地方道路税法第5条に規定する揮発油税等の納税義務者に当たることとなる。
 したがって、これらの点に関する請求人の主張には理由がない。
(ハ)請求人は、酒税法においては、混和を製造とみなす旨規定しているが、揮発油税法等には同様の規定が設けられていないことからすると、混和を製造に当たるとした基本通達第9条の定めは、法を拡大解釈したものなので違法であり、一方、同通達第10条では混和を製造ではないと定めているなど、同通達の定めは矛盾しており、また、租税は必ず租税法律主義に基づき賦課・徴収しなければならない旨主張する。
 しかし、混和という行為が揮発油税法等に規定する製造に該当することについては上記(ロ)で判断したとおりであり、基本通達第9条の定めは、法を拡大解釈したものでないことは明らかである。また、同通達第9条において揮発油の製造の定義を定めているのは、揮発油税法に製造の定義規定が設けられていないことによるためであり、同通達第10条は、限定列挙した第1号から第8号までの行為は、同通達第9条に定める積極的操作による揮発油の製造に該当するのであるが、それらの行為は、法の趣旨に照らし揮発油税を課税すべきではないことから、揮発油の製造には該当しないこととして取り扱う旨定めているものと解するのが相当である。
 そして、酒税法は、酒類の製造及び販売において厳格な免許制度をしいていて、酒類の種類及び品目ごとに細分してそれぞれ異なった税率で課税することとしている等、揮発油税法等とは課税体系を異にするものであることから、これを揮発油税法等に置き換えて類推解釈をすることは当を得ていないといわざるを得ない。
 さらに、税法といえども、その法解釈によって規定の内容を明らかにすることが許されるのは当然であって、その規定の意味内容が客観的に認識できる場合には、その課税要件が不明確とはいえないから、そのような法規も租税法律主義に反しないと解すべきである。
 したがって、これらの点に関する請求人の主張には理由がない。
(ニ)なお、揮発油税等は、納税義務が生じたことの不知を理由として、その納税義務が免除されるものではない。
ハ 二重課税について
 請求人は、課税済みの揮発油に非揮発油であるLを混和して製造した揮発油を移出することにより、既に課税された原料揮発油の数量に相当する部分にまでも課税するのは二重課税であり、誤りである旨主張する。
 しかしながら、揮発油の製造者は、揮発油税法第3条第1項の規定により、その製造場から移出した揮発油につき、揮発油税の納税義務があり、その課税標準は、同法第8条の規定によって、揮発油の製造場から移出した揮発油の数量(同法施行令第2条《欠減控除》に規定する欠減数量を控除した数量)とされている。
 また、地方道路税の納税義務者及び課税標準についても、地方道路税法第3条《課税標準》及び第5条の規定により、上記揮発油税と同じとされている。
 これらの規定をみれば、課税済みの揮発油を原料の一部に用いて新たな揮発油を製造し、当該揮発油をその製造場から移出した場合は、混和後の新たな揮発油総体について課税され、納税義務者となることは明らかである。
 そして、揮発油税法は、以上のことを前提として、揮発油税法第14条及び地方道路税法第6条には「未納税移出」が規定されており、これらの規定による手続を行った場合には、将来揮発油の原料となることが予定されている揮発油について、その受入先の揮発油の製造場に未納税移入ができることとなっていて、制度上二重の税負担が課されることを回避できることとなっている。
 しかるに、請求人は、原料とした揮発油の購入に際して、二重課税を排除するために法制度が予定している未納税移入の措置をとらなかったものであるから、そのような本件において、課税済の揮発油に相当する部分について更に課税されることとなったとしても、それは制度上やむを得ないものであり、請求人の主張には理由がない。
 なお、揮発油税等は、一時的な試験販売のため初めて行った混和であっても、それを理由として納税義務を免除されるものではない。
ニ 以上のとおりであるから、請求人の主張にはいずれも理由がなく、本件更正処分は適法である。

(2)本件賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、本件更正処分は適法であり、また、請求人には、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項に基づいてした本件賦課決定処分は適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については請求人は争わず、当審判所に提出された証拠書類等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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