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(平14.5.30裁決、裁決事例集No.63 689頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が不動産の所有権移転登記に当たり納付した登録免許税について、登録免許税法第31条《過誤納金の還付等》第2項に規定する過誤納があるか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成12年12月6日、P市Q町○丁目○番○所在の宅地474.82平方メートル(以下「本件土地」という。)の所有権移転登記申請(以下「本件登記申請」という。)に当たり、登記申請書(以下「本件登記申請書」という。)に登録免許税の課税標準の額を23,213,000円、登録免許税の額を1,160,600円と記載して、その税額に相当する金額の印紙を貼付の上、これを○○法務局○○出張所へ提出することにより、登録免許税を納付した。
ロ その後、請求人は、平成13年9月26日に原処分庁に対して、登録免許税の還付通知請求書に本件土地に係る課税標準の額を11,429,000円、登録免許税の額を571,400円と記載し、先に納付した税額との差額589,200円につき所轄税務署長に還付通知をすべきである旨の請求(以下「本件還付通知請求」という。)をしたところ、原処分庁は同年10月1日付で本件還付通知請求について、還付の通知をすべき理由がない旨の通知処分をした。
ハ 請求人は、この処分を不服として、平成13年10月24日に審査請求をした。

(3)関係法令等

 登録免許税法第10条《不動産等の価額》第1項は、不動産の登記の場合における登録免許税の課税標準としての不動産の価額について、当該登記の時における不動産の価額による旨規定している。
 なお、この不動産の価額について、登録免許税法附則(以下「附則」という。)第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》は、納税者の便宜及び登記所における登記事務の円滑な執行といった点を考慮し、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在における地方税法第341条《固定資産税に関する用語の意義》第9号に掲げる固定資産課税台帳(以下「課税台帳」という。)に登録された当該不動産の価格(以下「台帳価格」という。)を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。
 また、台帳価格のない不動産について、登録免許税法施行令附則(以下「施行令附則」という。)第3項は、当該不動産の登記の申請の日がその年の4月1日から12月31日までの期間内であるものは、その年の1月1日現在における当該不動産に類似する不動産の台帳価格に100分の100を乗じて計算した金額を基礎として、当該登記に係る登記機関が認定した価額とする旨規定している。
 ただし、登記の対象となる不動産が土地の場合について、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第84条の5《不動産登記に係る不動産価額の特例》は、平成8年4月1日から平成15年3月31日までの間に受ける土地に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額について、附則第7条の規定にかかわらず、当該登記の申請の日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在における当該不動産の台帳価格を基礎として政令で定める価額に3分の1を乗じて計算した金額とする旨規定している。
 さらに、その政令で定める価額について、租税特別措置法施行令(以下「措置法施行令」という。)第44条の3《不動産登記に係る不動産価額の特例》(平成13年政令第141号による改正前のもの。以下同じ。)第1項は、台帳価格のない不動産の登記の申請の日がその年の4月1日から12月31日までの期間内であるものは、その年の1月1日現在における当該不動産に類似する不動産の台帳価格を基礎として、当該登記に係る登記官が認定した価額とする旨規定している。

(4)基礎事実

 以下の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によっても、その事実が認められる。
イ 本件登記申請書には、不動産価格69,639,000円、課税価格23,213,000円、登録免許税1,160,600円及び単価146,664円と記載されており、本件登記申請書に添付されている平成12年4月3日付でP市長が発行した「固定資産・土地価格通知書」には、P市Q町○丁目○番○、○番○、○番、○番ないし○番、○番及び○番の各土地(合計面積7,841平方メートル。以下「本件比準地」という。)の平成12年度の台帳価格が記載されており、本件比準地の1平方メートル当たりの台帳価格を計算すると、いずれも146,664円である。
ロ 本件登記申請の日現在において、P市役所が備え付けている課税台帳には、本件土地の価格が登録されていない。
ハ P市長が平成13年5月1日付で請求人に通知した本件土地に係る「固定資産価格等修正通知書(土地)」には、次の事項が記載されている。
(イ)地方税法第417条の規定により、平成13年度分の価格等を修正し、課税台帳に登録した。
(ロ)修正前の評価地目(宅地)を宅地及び山林に分割した。
(ハ)修正前の宅地(474.82平方メートル)の評価額は33,125,817円である。
(ニ)修正後の宅地(250.08平方メートル)の評価額は31,016,672円、山林(224.74平方メートル)の評価額は3,273,113円である(以下、宅地及び山林の評価額の合計34,289,785円を「修正後台帳価格」という。)。
ニ 登記簿の全部事項証明書には、本件土地に係る合筆又は分筆の経緯等について、次のとおり記載されている。
(イ)本件土地は、平成12年1月20日に、本件比準地すべてをP市Q町○丁目○番○に合筆後、同年2月18日に、同所○番○及び○番○ないし○番○に分筆され、さらに、同所○番○が同年4月20日に、本件土地と同所○番○ないし○番○に分筆されている。
(ロ)本件土地は、平成12年12月6日に、G株式会社から請求人に売買を原因として、所有権移転登記がされている。

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2 主張

(1)原処分庁の主張

 原処分は、次のとおり適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 登録免許税法第10条に規定する不動産の価額とは、当該登記又は登録の時における不動産の価額によることとされ、この不動産の価額とは、当該不動産の登記申請時の客観的な交換価値を表す時価によるものと解されている。
 しかしながら、この不動産の時価は、容易に認識できるものではなく、仮に、この不動産の売買価額が明らかであったとしても、偶然的な要素が入った価額も存在するなど、その価額をそのまま採用することは不公平にもなりかねない。
 また、登記官が個々に不動産の価額を認定するとしても、時価の評価方法等が一定とならないことも考えられることから、課税の公平を維持することが困難であるのみならず、綿密な手続を採用することは徴税手続が複雑となり、迅速な登記事件の処理が期待できなくなる。
 そのため、登録免許税法は、当該登記申請の日に台帳価格のない土地の価額は、当該土地に類似する土地の登記申請日の属する年の前年12月31日現在又は申請日の属する年の1月1日現在の台帳価格を基礎として登記官が認定した価額とする旨規定している。
ロ また、登記実務において、分筆又は合筆により形質が変更した土地(以下「分筆後土地」という。)の価額は、登記申請の日に台帳価格がないことから、登記官がその土地の近傍に類似する土地を選定し、その土地の台帳価格を基に算定することになり、分筆後土地と分筆又は合筆前の土地(以下「元地」という。)との位置関係及び形質等から、双方の土地の単価に差異がないと認められる場合には、元地の台帳価格を基準に分筆後土地の価額を算定する。
ハ 原処分庁は、前記1の(4)のニのとおり、本件土地が、合筆された本件比準地から分筆されたものであるところ、本件比準地の平成12年度の台帳価格の単価がすべて同じであったこと、本件比準地と本件土地とを比較しても、双方の土地の地目が同一であり、かつ、地理的条件及び利用条件等に差異がないと認められたことから、本件比準地を本件土地に類似する土地と判断し、本件比準地の平成12年度の1平方メートル当たりの台帳価格146,664円に本件土地の面積474.82平方メートルを乗じて本件土地の価額を69,639,000円と認定した。
ニ そうすると、本件土地の課税標準の額は、本件土地の価額に3分の1を乗じた金額23,213,000円となり、当該価額を基に計算した登録免許税の額は1,160,600円となるから、請求人が本件登記申請に際し納付した登録免許税の額と同額である。
ホ したがって、登録免許税法第31条第2項に規定する登録免許税の過誤納があるときには該当しないから、原処分には何ら違法はない。

(2)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 原処分庁が認定した本件土地の価額は、分筆前の土地の価額を基に、本件土地と他の土地の相違を考慮せず、かつ、すべて宅地として、本件土地の地積に本件比準地の1平方メートル当たりの単価を乗じて算定したものであるが、本件土地は、P市の修正後台帳価格のとおり、宅地部分(250.08平方メートル)のみでなく、宅地として利用できない山林部分(224.74平方メートル)も含まれるのであるから、原処分庁の認定額は、本件土地の形状等を考慮せずに算定した不合理な価額である。
ロ 本件土地の課税標準の額は、P市が新たに付した平成13年度の台帳価格33,125,817円に3分の1を乗じた11,041,000円(1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額)であり、本件登記申請に係る登録免許税の額は、当該課税標準の額に1000分の50の税率を乗じた552,000円(100円未満の端数を切り捨てた後の金額)とすべきであるから、先に納付した税額1,160,600円と上記税額552,000円との差額608,600円が、過大に納付したことになるため、還付されるべきである。
ハ また、仮に上記平成13年度の台帳価格を基に算定できないとしても、前記1の(4)のハのとおり、P市が当該台帳価格を修正し課税台帳に登録していることから、本件土地の課税標準の額は、修正後台帳価格に3分の1を乗じた11,429,000円(1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額)であり、本件登記申請に係る登録免許税の額は、当該課税標準の額に1,000分の50の税率を乗じた571,400円(100円未満の端数を切り捨てた後の金額)とすべきであるから、先に納付した税額1,160,600円と上記税額571,400円との差額589,200円が、過大に納付したことになるため、還付されるべきである。

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3 判断

 本件審査請求は、本件登記申請に係る登録免許税の課税標準の額及び登録免許税の額に争いがあるので、以下審理する。
(1)請求人提出資料、原処分関係資料、当審判所が行った現地調査及びP市役所(資産税課)における課税台帳等の調査によれば、次の事実が認められる。
イ 原処分庁は、本件比準地を本件土地に類似した土地とした上で、平成12年度の本件比準地の台帳価格を基に計算した1平方メートル当たりの単価146,664円に、本件土地の面積を乗じて本件土地の価額を69,639,000円と算定し、さらに、措置法第84条の5の規定により、当該価額に3分の1を乗じて計算した金額23,213,000円を本件土地の課税標準の額と認定した。
ロ 本件土地等の状況については、次のとおりである。
(イ)本件土地
A 幅員10メートルの主要道路から西へ約100メートル及びP市立H小学校から西へ約120メートルに位置する住宅地(41区画)の1区画地で、団地内の行き止まりの公道(幅員5.5メートル)が正面道路である。
B 正面道路に面した高さ6メートルのコンクリート擁壁の上に位置する宅地及びその奥の高さ7ないし8メートルのコンクリート擁壁の上に位置する緩やかな傾斜地に区分された一区画地である。
C P市長は、同市職員及び不動産鑑定士が行った現地調査及び地積測量の結果に基づき、平成13年度の修正後台帳価格を決定している。
D 本件土地の敷地面積求積図等によると、本件土地の有効面積(宅地)が189.32平方メートル、コンクリート擁壁部分の面積が60.76平方メートル及び山林の面積が224.74平方メートルであり、総面積に占める山林部分の割合は約47パーセントである。
E 本件土地は、本件登記申請の日から課税台帳に登録されたときまでの間、その状況に何ら変化はない。
(ロ)本件比準地
 平成12年1月1日現在において、宅地開発業者所有の本件土地等を分譲する前の開発途上にある総開発面積11,051.78平方メートルの宅地(以下「本件開発途上地」という。)の一部で、幅員10メートルの主要道路(正面道路)の西側に位置している。
(ハ)本件土地の近傍類似地
 P市R町○丁目○○番○所在の宅地(193.92平方メートル。以下「本件近傍宅地」という。)は、平成12年1月1日現在の台帳価格があり、本件土地から北へ約590メートル、幅員8.4メートルの主要道路から北へ約160メートル及びP市立J小学校から西へ約100メートルに位置する住宅地内の1区画地で、幅員5.5メートルの行き止まりの公道を正面道路とした土地である。
ハ P市における本件土地、本件比準地及び本件近傍宅地の台帳価格については、次のとおり算定されている。
(イ)台帳価格の算定基準等
A 土地の台帳価格は、P市長が定めたその土地が沿接する路線に付された路線価(固定資産評価基準(地方税法第388条《固定資産税に係る総務大臣の任務》に基づいて告示されたもの。以下同じ。)により、主要な街路地及びその他の街路地の別に付設されるもので、街路に沿接する標準的な画地の単位地積当たりの価格をいう。以下同じ。)を基礎として、その土地の状況に応じて奥行補正、不整形地補正及びがけ地補正等の各種補正を行って求めた価格に地積を乗じて算定されている。
 なお、各種補正率等については、市街地山林の比準率及び造成費相当額はP市の評価要領で定められ、その他の補正率は総務省の固定資産評価基準によっている。
B 土地の台帳価格の基礎となる路線価は、3年に一度評価換えを行うこととされ、平成11年が評価換えの年に該当しており、平成12年1月1日現在及び平成13年1月1日現在における路線価は、平成11年1月1日現在の路線価(以下「平成11年基準路線価」という。)を基に、減価率(1−P市固定資産税路線価表に定められた時点修正率)を乗じて算定されている。
 なお、本件土地、本件比準地及び本件近傍宅地が沿接する道路のそれぞれの平成11年基準路線価及び減価率は、次のとおりである。
(A)平成11年基準路線価
 本件土地が沿接する道路は、平成12年の途中に新設されたものであることから、P市長が、平成13年度において、当該道路に平成11年基準路線価174,000円を新たに設定したものである。
 また、本件比準地及び本件近傍宅地が沿接する道路の平成11年基準路線価は、本件比準地が189,000円であり、本件近傍宅地が175,000円である。
(B)減価率
 本件土地の平成13年度の減価率は0.90(1−平成11年1月1日から平成12年7月1日までの時点修正率10パーセント)であり、本件比準地及び本件近傍宅地の平成12年度の減価率は0.97(1−平成11年1月1日から平成11年7月1日までの時点修正率3パーセント)である。
(ロ)本件土地の台帳価格の算定等
 新たに登録された平成13年度の本件土地の台帳価格は、33,125,817円(1平方メートル当たり69,764円)であり、当該台帳価格は、前記1の(4)のハのとおり修正されている。
 なお、修正後台帳価格は、次のとおり算定されている。
A 宅地部分は、平成11年基準路線価174,000円に減価率0.90、がけ地補正率0.90及び不整形地補正率0.88を乗じて計算した124,027円に、地積250.08平方メートルを乗じた額31,016,672円である。
B 山林部分は、平成11年基準路線価174,000円に減価率0.90、市街地山林の比準率0.50、不整形地補正率0.60及び無道路地補正率0.62を乗じて計算した29,127円から造成費相当額14,563円(29,127円×0.50)を控除した14,564円に、地積224.74平方メートルを乗じた額3,273,113円である。
(ハ)本件比準地の台帳価格の算定
 平成12年1月1日現在における1平方メートル当たりの台帳価格は、平成11年基準路線価189,000円に減価率0.97を乗じて求めた平成12年1月1日現在の路線価183,330円に、奥行補正率0.8を乗じて計算した146,664円である。
(ニ)本件近傍宅地の台帳価格の算定
 平成12年1月1日現在における1平方メートル当たりの台帳価格は、平成11年基準路線価175,000円に減価率0.97を乗じて求めた平成12年路線価169,750円に、各種補正率を乗じて算出している。
(2)そこで、前記1の(4)及び上記(1)の各事実を前記1の(3)の規定に照らして、本件登記申請に係る登録免許税の課税標準の額及び登録免許税の額について判断すると、次のとおりである。
イ 原処分庁は、本件土地が合筆された本件比準地から分筆されたものであるところ、本件比準地の平成12年度の台帳価格の単価がすべて同じであったこと、本件比準地と本件土地とを比較しても、双方の土地の地目が同一であり、かつ、地理的条件及び利用条件等に差異がないことが認められたことから、本件比準地を本件土地に類似する土地であると判断し、本件比準地の12年度の台帳価格を基にして本件土地の価額を認定した旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のロの(イ)及び(ロ)のとおり、本件比準地が幅員10メートルの主要道路に面した本件土地等を分譲する前の本件開発途上地の一部であるのに対し、本件土地は幅員5.5メートルの道路に面した本件比準地から分筆された住宅地内の1区画地であるため、双方の土地は、その規模、立地条件及び利用条件等が明らかに異なる。
 また、原処分庁が本件比準地の台帳価格を基に認定した本件土地の価額と本件土地の平成13年度の台帳価格とを比較しても、上記(1)のロの(イ)のとおり、本件土地は、本件登記申請の日から課税台帳に登録されたときまでの間、その状況に何ら変化がなく、また、著しい時価の下落もないにもかかわらず、宅地として通常の用途に供することができない部分の割合(約47パーセント)が大きいことなどが前者においては考慮されていないため、2倍以上の価格格差が認められる。
 以上のことから、原処分庁が、本件比準地を本件土地に類似する土地とし、その台帳価格を基に本件土地の価額を認定したことは相当でない。
ロ 次に、請求人は、本件土地が宅地及び宅地として利用できない山林に区分されているので、P市役所が新たに付した本件土地の平成13年度の台帳価格を本件土地の価額とし、当該価額を基に課税標準の額及び登録免許税の額を算定すべきであり、仮に当該台帳価格を基に算定できないとしても、修正後台帳価格によるべきである旨主張する。
 しかしながら、措置法施行令第44条の3第1項の規定に照らせば、本件登記申請の日現在において台帳価格のない本件土地の価額は、本件土地に類似する土地の平成12年1月1日現在の台帳価格を基に算定することになる。
 したがって、請求人が主張するような事情があっても、P市長が付した本件土地の台帳価格及び修正後台帳価格は平成13年度のものであり、これらの台帳価格を基に課税標準の額及び登録免許税の額を算定することはできないから、請求人の主張は採用できない。
ハ 上記イ及びロのとおり、原処分庁が認定した本件土地の価額及び請求人の主張する台帳価格のいずれも採用することができないことから、当審判所が本件土地に類似した近傍の土地を調査したところ、前記3の(1)のロの(ハ)のとおり、本件近傍宅地は、〔1〕住宅地内の行き止まりの公道に面する1区画地であること、〔2〕当該公道の幅員が本件土地と同一であること、〔3〕有効利用面積(宅地面積)が本件土地とほぼ同一であること及び〔4〕小学校の近くに所在することなどから、その規模、立地条件及利用条件等において本件土地と差異がないと認められる。
 これらのことを総合して判断すると、本件近傍宅地を本件土地に類似する土地として認定することが合理的である。
ニ そうすると、本件土地の価額は、本件近傍地の台帳価格を基礎として算定することとなるが、山林を含んでいるなどの本件土地の形状等を考慮した上で算定すべきであるから、本件近傍宅地の台帳価格の基礎となる平成12年1月1日現在の路線価に、各種補正率等を乗じて算定するのが相当である。
ホ ところで、本件土地の価額の算定に当たっては、前記3の(1)のハの(ロ)のとおりP市が行った本件土地の修正後台帳価格の算定方法を不相当とする理由がないことから、この方法を用いて、それぞれ次のとおり区分して計算した金額の合計額とするのが相当である。
(イ)宅地部分の価額
 本件近傍宅地の平成12年1月1日現在の路線価169,750円に、がけ地補正率0.90及び不整形地補正率0.88を乗じて計算した134,442円に、地積250.08平方メートルを乗じた33,621,255円となる。
(ロ)山林部分の価額
 本件近傍宅地の平成12年1月1日現在の路線価169,750円に、市街地山林の比準率0.50、不整形地補正率0.60及び無道路地補正率0.62を乗じて計算した31,573円から造成費相当額15,786円(31,573円×0.50)を控除した15,787円に、地積224.74平方メートルを乗じた3,547,970円となる。
(3)以上のことから、本件土地に係る登録免許税の課税標準の額は、措置法第84条の5及び措置法施行令第44条の3第1項の規定に基づき算定すると、上記(2)のホの(イ)及び(ロ)の価額の合計額37,169,225円に3分の1を乗じた12,389,000円(1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額)となり、本件土地に係る登録免許税の額は、登録免許税法第9条《課税標準及び税率》及び同法別表第1の1の(二)のニに基づき算定すると、上記の課税標準の額に1,000分の50の税率を乗じた619,400円(100円未満の端数を切り捨てた後の金額)となるから、1,160,600円に相当する金額の印紙を貼付した本件登記申請書を提出してなされた納付は、619,400円を超える部分について過誤納といえ、この部分について還付通知をすべきである。
(4)したがって、全部について還付通知すべき理由がないとした本件通知処分は、その限りにおいて違法であるから、その一部を取り消すべきである。
(5)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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