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(平14.12.6裁決、裁決事例集No.64 122頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、原処分庁が建物貸付業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)に対して行った贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分(以下、併せて「原処分」という。)について、請求人がした異議申立てが法定の不服申立期間を経過した後にされたものか否か及び贈与税の決定処分が適法であるか否かを争点とする事案である。

(2)審査請求に至る経緯

 請求人は、平成11年5月31日にAから不動産を売買によって取得したところ、原処分庁は、当該不動産の取得価額が時価より著しく低額であるとして、平成14年4月24日付で原処分をした。
 請求人は、原処分を不服として、平成14年7月5日に異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)をしたところ、異議審理庁が、当該申立ては法定の不服申立期間を経過した後にされた不適法なものであるとして、同年9月24日付で却下の異議決定をしたので、同年10月23日に審査請求をした。

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2 請求人の主張

(1)異議審理庁は、原処分に係る通知書(以下「本件通知書」という。)が平成14年4月26日に郵便により送達されているので、同年7月5日にされた本件異議申立ては、法定の不服申立期限である同年6月26日の後にされた不適法なものであるとして、却下の異議決定をした。
 確かに、請求人は、自宅に送付される請求人あての郵便物について、請求人が不在の場合、請求人の勤務先である株式会社B(以下「B社」という。)へ転送して配達されるように、その手続をしていたことから、本件通知書は、B社に転送されて、平成14年4月26日に配達され、同社の事務員が受け取った。
 しかしながら、平成14年4月26日から同年5月6日までの間、請求人は休暇中であり、同社へは出社していなかったことから、請求人が原処分のあったことを知った日は、休暇明けの同月7日である。
 したがって、請求人が平成14年7月5日にした本件異議申立ては、法定の不服申立期限である同月7日までにされている。
(2)原処分庁は、Aから売買により取得した不動産の取得価額が、時価より著しく低額であるとして、贈与税を課税したが、当該取引は、不動産鑑定評価書に基づく適正な時価によって行われており、贈与税が課税されるのは違法であるから、原処分の取消しを求める。

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3 判断

(1)関係法令等は、次のとおりである。
イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項第1号は、税務署長がした処分については、その処分をした税務署長に異議申立てをすることができる旨規定し、同条第3項は、異議申立てについての決定があった場合において、なお不服があるときは、その異議申立てが法定の異議申立期間経過後にされたものその他適法にされていないものを除き、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる旨規定している。
ロ 通則法第77条《不服申立期間》第1項は、異議申立ては、処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には、その受けた日)の翌日から起算して2月以内にしなければならない旨規定しているところ、この「処分に係る通知を受けた」とは、社会通念上、通知を了知できると認められる客観的状態に置かれることをいうと解され、郵便による場合には、郵便物が名あて人の住所等に配達されることがこれに当たると解される。
 また、通則法第77条第3項は、異議申立人が不服申立期間内に異議申立てをすることができなかったことについて、「天災その他やむを得ない理由」があるときは、異議申立ては、その理由がやんだ日の翌日から起算して7日以内にすることができる旨規定しているところ、この「天災その他やむを得ない理由」とは、異議申立人の責に帰することができない客観的な事情が存する場合をいうと解される。
(2)これを本件について見ると、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、原処分庁は、平成14年4月24日に請求人あての本件通知書を簡易書留扱いによって、住所地に向けて郵送したこと、請求人は、住所地に配達される郵便物について、不在の場合にはB社に転送して配達されるように、その手続をしていたこと及び本件通知書は、平成14年4月25日に請求人の住所地に配達されたが、請求人が不在であったため、請求人がした転送手続に従い、B社へ転送され、同月26日午前10時45分に配達され、同社の事務員が受領したことの各事実が認められる。
 これらの事実からすると、請求人が原処分に係る通知を受けた日は、本件通知書がB社に配達された日である平成14年4月26日となり、原処分に対する異議申立てに係る法定の不服申立期間は、その翌日から起算して2月以内である同年6月26日までとなるから、請求人が同年7月5日にした本件異議申立ては、法定の不服申立期間を経過した後にされたものということになる。
(3)これに対し、請求人は、平成14年4月26日から同年5月6日まで休暇をとっており、請求人が原処分のあったことを知った日は、B社に出社した同月7日であるから、同年7月7日が法定の不服申立期限である旨主張する。
 しかしながら、仮に、請求人が休暇のために本件通知書の存在を知るのが遅れたとしても、このような事情は、通則法第77条第1項に規定する処分に係る通知を受けた日についての上記ロの解釈を左右するものではなく、また、同条第3項に規定する「天災その他やむを得ない理由」にも該当しない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(4)以上のとおり、本件異議申立ては、法定の不服申立期間を経過した後にされた不適法なものであるから、その後にされた審査請求もまた、通則法第75条第3項に規定する要件を欠いた不適法なものとなる。
(5)そうすると、贈与税の決定処分が適法であるか否かの点について判断するまでもなく、審査請求は却下されるべきである。

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