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(平14.12.19裁決、裁決事例集No.64 367頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、活魚の販売等を行う審査請求人(以下「請求人」という。)に対する更正通知書の理由附記の適否及び事業年度内に引渡しが完了していない活魚水槽車載替一式(以下「本件取引」という。)に係る費用を修繕費として損金に計上したことが国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する仮装又は隠ぺいに当たるか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯等

 審査請求(平成14年7月26日請求)に至る経緯等は、別表1のとおりである。

(3)関係法令等

イ 法人税法第130条《青色申告書に係る更正》第2項は、税務署長は、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合には、その更正通知書にその更正の理由を附記しなければならない旨規定している。
 法人税法は青色申告制度を採用し、青色申告に係る所得の計算については、それが法定の帳簿組織による正当な記帳に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがないことを納税者に保障しているところであるが、この規定は、このような青色申告制度の趣旨にかんがみ、原処分庁の判断の慎重、合理性を担保して、そのし意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるとの趣旨によるものと解されている。
ロ 国税通則法第68条第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、過少申告加算税に代え、重加算税を課する旨規定している。
 そして、この規定にいう「事実を隠ぺいする」とは、納税者がその意思に基づいて、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を隠匿し、あるいは脱漏することをいい、また、「事実を仮装する」とは、納税者がその意思に基づいて、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが事実であるかのように装う等、事実を歪曲することをいうと解されている。

(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人が提出した平成9年7月1日から平成10年6月30日までの事業年度(以下「平成10年6月期」という。)の法人税の確定申告書は、青色申告に係るものである。
ロ 請求人は、平成10年6月にコンビニエンスストアH(以下「H」という。)を開店し、その際に開店祝い金(以下「本件開店祝い金」という。)3,170,000円を収受し、開店祝賀会費用(以下「本件開店祝賀会費用」という。)2,331,000円を支出したが、これらを公表帳簿に益金及び損金として計上していない。

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2 主張

(1)原処分庁

 原処分は、次のとおり適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
(イ)理由附記
 法人税法第130条第2項の規定及びその趣旨は上記1の(3)のイのとおりであって、理由附記においては、更正をした根拠を帳簿以上に信ぴょう力のある資料を摘示することによって具体的に明示することを要するものと解される。
 そして、平成10年6月期の法人税の更正処分については、更正の理由附記において「なお、収受した開店祝い金の金額については、貴社に保管されていた大学ノートの平成10年6月7日開店H開店祝との見出しの箇所の記載内容に基づき算出しています」との記述があり、雑収入(開店祝い金)の内容等(入金年月日も含む。)については、更正の理由書に添付している支払者氏名、金額の記載されている雑収入の内訳リストから、請求人において十分理解しうる程度に記載されている。
 そうすると、更正をした根拠としての信ぴょう力のある資料が摘示されているので、更正の理由附記に不備はない。
(ロ)所得金額
A 請求人は、平成10年6月7日のHの開店に際し、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載の3,170,000円の開店祝い金を収受するとともに、開店祝賀会を同年6月24日に開催し、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載の2,331,000円の開店祝賀会費用を支出しているが、収受した本件開店祝い金及び支出した本件開店祝賀会費用ともに帳簿に記載せず、帳簿外の取引としている。
 したがって、本件開店祝い金3,170,000円を雑収入として所得金額に加算し、本件開店祝賀会費用2,331,000円を交際費として所得金額から減算する。
 なお、本件開店祝い金の金額は、請求人が保管していた大学ノートの「平成10年6月7日開店H開店祝」との見出しの箇所の記載内容に基づき算出した。
 また、租税特別措置法第61条の4《交際費等の損金不算入》の規定には、開店祝賀会の一部負担とはみられない祝い金のような金員について祝賀会費用から控除すべき特別の定めは置かれていないから、同条に定める交際費等の額とは、請求人が交際行為に要した費用の全額をいうものと解される。また、請求人が本件開店祝い金として収受した金額と本件開店祝賀会費用として支出した金額を比べると、本件開店祝い金として収受した金額が839,000円多く、その残った金員についても請求人の帳簿に記載されていないことから、請求人が税務に関する認識が乏しいから収入としての認識がなかったということについて、正当な理由があるとは認められない。
B 請求人が法人税の確定申告書に添付している「交際費等の損金算入に関する明細書」の支出交際費等の額に、上記Aの本件開店祝賀会費用2,331,000円を加算して損金不算入額を計算すると、さらに2,331,000円が損金不算入額となることから、当該金額を所得金額に加算する。
C 以上の結果、平成10年6月期の所得金額は、申告所得金額○○○○円に上記Aの本件開店祝い金及びBの交際費等の損金不算入額を加算し、上記Aの本件開店祝賀会費用を減算して算定すると、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり○○○○円となる。
 そうすると、平成10年6月期の所得金額は更正処分に係る金額と同額となることから、更正処分は適法である。
ロ 法人税の重加算税の賦課決定処分について
(イ)平成10年6月期
 国税通則法第68条第1項の規定の内容は上記1の(3)のロのとおりであるところ、請求人が、平成10年6月7日のHの開店に際し、3,170,000円の本件開店祝い金を収受したにもかかわらず、本件開店祝い金を収入として帳簿に記載せず、また、本件開店祝賀会費用として支出した費用についても帳簿に記載せず、収益、費用とも帳簿外の取引とした行為は、当該規定にいう「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したこと」に該当するため、同条第1項の規定に基づいて行った重加算税の賦課決定処分は適法である。
(ロ)平成12年7月1日から平成13年6月30日までの事業年度
 請求人は、K株式会社(以下「K社」という。)からの平成13年6月30日付の請求書に基づき、本件取引に係る費用を修繕費として平成12年7月1日から平成13年6月30日までの事業年度(以下「平成13年6月期」という。)の損金の額に算入しているが、本件調査を担当した職員(以下「調査担当職員」という。)及び異議申立てに係る調査を担当した職員(以下「異議調査担当職員」という。)が、それぞれK社において確認したところ、本件取引は請求書発行時点の平成13年6月30日には終了しておらず、また、活魚水槽を載替え後の活魚運搬車(以下「本件活魚運搬車」という。)の引渡しが翌事業年度の平成13年8月下旬であったにもかかわらず、請求人の経理担当者L(以下「L」という。)の依頼により、平成13年6月30日付請求書を発行させたものである。
 そうすると、請求人は取引先へ依頼し、偽りの請求書を発行させ、その虚偽の請求書を基に、実際には翌事業年度に行われた取引であるにもかかわらず、当事業年度に行われた取引であるかのように仮装し、それにより請求人の平成13年6月期の法人税の所得を過少に申告している。
 このような請求人の行為は、国税通則法第68条第1項に規定する「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出した」ことに該当するため、同項の規定に基づき行った重加算税の賦課決定処分は適法である。
(ハ)消費税及び地方消費税の重加算税の賦課決定処分
 請求人は、上記ロの(ロ)のとおり、取引先へ依頼し、偽りの請求書を発行させ、その虚偽の請求書を基に、実際には翌課税期間に行われた取引であるにもかかわらず、平成12年7月1日から平成13年6月30日までの課税期間(以下「平成13年6月課税期間」という。)に行われた取引であるかのように仮装し、それにより請求人の平成13年6月課税期間の課税仕入れに係る消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)を過大に控除することにより、消費税等の納税額が過少となる確定申告書を提出している。
 このような請求人の行為は、国税通則法第68条第1項に規定する「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出した」ことに該当するため、同項の規定に基づき行った重加算税の賦課決定処分は適法である。

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(2)請求人

 原処分は、次のとおり違法であるから、平成10年6月期の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分はその全部を、平成13年6月期の法人税の重加算税の賦課決定処分及び平成13年6月課税期間の消費税等の重加算税の賦課決定処分は過少申告加算税を超える部分を取り消すとの裁決を求める。
イ 更正処分について
 青色申告に係る更正通知書の理由附記については、最高裁判例によれば更正した根拠を帳簿の記載以上に信ぴょう力のある資料を摘示することによって具体的に明示することを要すると解されているところ、異議決定書において、「大学ノート」の記載内容として、「支払者の住所、入金年月日及び入金の金種については、」と記載されているが、更正の理由には、大学ノート記載の入金年月日の摘示がされていない。
 また、当該大学ノートにも、入金年月日の記載はない。
 以上のとおり、更正処分は理由附記に欠け、違法である。
ロ 法人税の重加算税の賦課決定処分について
(イ)平成10年6月期
 上記イのとおり、更正処分が違法で取り消すべきであるから、これに伴い重加算税の賦課決定処分も取り消すべきである。
(ロ)平成13年6月期
 本件における活魚運搬用の大型トラックは、M株式会社(以下「M社」という。)から購入し、K社が活魚水槽を載替えし、M社が○○陸運支局で車両登録を受けた。
 そして、請求人は、K社から平成13年6月8日付で本件取引を3,700,000円(消費税別)とする見積書を受け取り、また、M社から同年6月22日付で22tトラックを10,350,000円とする見積書及び同日付で当該車両の注文請書を収受し、平成13年6月30日付でK社から本件取引3,885,000円の請求書を受け取ったものである。なお、○○陸運支局からの本件活魚運搬車の登録事項等通知は平成13年8月30日である。
 上記の事実から請求人は、本件取引が、平成13年6月期の取引であるものと認識して当該事業年度の損金の額に算入したものである。
 また、LがK社に依頼して平成13年6月30日付の請求書を発行してもらったとの事実はないので、相手方と通謀したとの事実はない。さらに、原処分庁は調査担当職員及び異議調査担当職員がK社でその確認をしたとの事実を請求人に説明しなかった。
 したがって、本件取引は仮装されたものではなく、重加算税の賦課決定処分は違法であるから、過少申告加算税を超える部分を取り消すべきである。
ハ 消費税等の重加算税の賦課決定処分について
 上記ロの(ロ)のとおり、本件取引は仮装されたものではなく、重加算税の賦課決定処分は違法であるから、過少申告加算税を超える部分を取り消すべきである。

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3 判断

(1)更正処分について

イ 理由附記
 請求人は、更正の理由附記については、更正した根拠を帳簿の記載以上に信ぴょう力のある資料を摘示することによって具体的に明示することを要すると解されているにもかかわらず、本件においては大学ノート記載の入金年月日が更正の理由に摘示されていないから、理由附記に欠け、違法である旨主張する。
 ところで、原処分関係資料によれば、本件における更正通知書の更正の理由には、「貴社は平成10年6月7日のコンビニエンスストア(名称:H)の開店に際し、別紙のとおり、有限会社Sほか121名から合計3,170,000円の開店祝い金を収受するとともに、開店祝賀会を平成10年6月24日に開催していますが、収受した開店祝い金を帳簿に記載せず、また、開店祝賀会時に支出した費用についても帳簿に記載せず、収益、費用とも帳簿外の取引となっています。そこで、収受した開店祝い金3,170,000円について、雑収入計上漏れとして所得金額に加算しました。なお、収受した開店祝い金の金額については、貴社に保管されていた大学ノートの『平成10年6月7日開店H開店祝』との見出しの箇所の記載内容に基づき算出しています。」と記載され、かつ、別紙雑収入の内訳として122名の氏名又は名称及び金額が記載された表が添付されていることが認められる。
 そうすると、更正通知書には、更正の原因となる事実を示す資料として大学ノートが摘示されており、また、別紙においても入金先及び各入金額が摘示されており、上記1の(3)のイの法令の趣旨を充足していると認められるから、入金年月日が摘示されていないからといって、更正通知書に記載された更正の理由が理由附記に欠けるとは認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ロ 所得金額
(イ)請求人は、当審判所に対して、本件開店祝い金を益金の額に計上しなかったことについて、「お返しをしなければならない関係で大学ノートにメモとして記載したものである」旨主張する。
 しかしながら、法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第4項に当該事業年度の収益の額及び損金の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨規定されていることからすると、本件開店祝い金は益金の額に算入し、本件開店祝賀会費用は損金の額に算入すべきである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ)ところで、租税特別措置法第61条の4第3項は、交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用をいう旨規定している。そして、租税特別措置法関係通達(法人税編)61の4(1)−15《交際費等に含まれる費用の例示》の(1)において、会社の何周年記念における宴会費、交通費及び記念品代並びに新船建造又は土木建築等における進水式、起工式、落成式等におけるこれらの費用と列挙しており、この取扱いは当審判所においても相当と認められるから、本件開店祝賀会費用は、この通達の定めに照らして交際費等に含まれる費用に該当する。
 そこで、本件開店祝賀会費用を請求人の確定申告書に添付されている別表15の支出交際費等の額に加算し、交際費等の損金不算入額を再計算すると、交際費等の損金不算入額が2,331,000円増加することとなる。
(ハ)したがって、平成10年6月期の所得金額は、請求人の確定申告書に記載された所得金額○○○○円に、本件開店祝い金3,170,000円及び上記(ロ)の交際費等の損金不算入額の増加額2,331,000円を加算し、本件開店祝賀会費用2,331,000円を減算して算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり○○○○円となる。
 そうすると、平成10年6月期の所得金額は更正処分の金額と同額となることから、更正処分は適法である。

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(2)法人税の重加算税の賦課決定処分について

イ 平成10年6月期
 請求人は、請求人に帰属すべき本件開店祝い金を大学ノートで管理をし、公表帳簿に記載していなかったことが認められる。
 これを、上記1の(3)のロの国税通則法第68条第1項の規定に照らして判断すると、次のとおりである。
 請求人は、本来平成10年6月期の益金として計上すべき本件開店祝い金を簿外で管理し、簿外の本件開店祝賀会費用として使用し、本件開店祝い金と本件開店祝賀会費用との差額も公表帳簿に記載していなかったのであるから、請求人のこれらの行為は当該規定でいう「事実を隠ぺいし」に該当し、請求人はそれに基づいて納税申告書を提出していたのであるといわざるを得ない。
 したがって、国税通則法第68条第1項の規定に基づいて行われた賦課決定処分は適法である。
ロ 平成13年6月期
(イ)請求人は、K社に対し請求書の発行を依頼した事実はなく、請求書等に基づいて本件取引を平成13年6月期のものとして計上した旨及び原処分庁が、請求人がK社に対し、請求書の発行を依頼したことを確認したことの説明をしなかったことが違法である旨主張する。
(ロ)ところで、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 請求人は当審判所に対し、平成13年6月8日付のK社発行の見積金額が3,700,000円の御見積書及び同年6月30日付の同社発行の請求金額3,885,000円の請求書を提出した。
B K社の代表取締役T(以下「T」という。)は当審判所に対し、次の旨答述した。
(A)本件のように活魚水槽の載替えを行う場合は、原則として載替えの作業完了後に車両の登録をし、登録した後に請求書を発行する。
(B)基本的には代金が決定したら、そのうちいくらかを前受金として収受し、それから作業に取り掛かる。
(C)本件の車両の登録日は、登録事項通知書からすると平成13年8月30日であり、今回は単なる活魚水槽の載替えであるので納車日付ははっきりとは分からないが、車両登録日より2、3日位後で、登録日より前になることはない。
(D)コンピュータの6月分請求書を平成13年6月30日付で送付した。しかし、送付した後、Lからお金の関係もあり、請求書、納品書を書いてくれと言われ、当社事務員が平成13年6月30日付の請求書を再度手書きで作成して送付した。
(E)なお、代金は、平成13年7月10日に2,500,000円、同年8月10日に1,732,600円受領した。
C K社は、平成13年6月30日付のコンピュータ作成の請求書控及び同日付の手書きの請求書控を保存しており、コンピュータ作成の請求書控には、当月発生額内訳として整備料金264,700円、消費税13,235円と、手書きの請求書控には、当月発生額内訳として整備料金3,964,700円、消費税198,235円と記載されている。
D K社の平成13年売掛金元帳の請求人勘定には、平成13年7月5日に「載せ替一式3,885,000円」と記載されている。また、同社が保管している本件取引の納品書(控)には、納品年月日が平成13年7月9日と記載されている。
E K社が保管している本件活魚運搬車の登録事項通知書の写しには、「課税済、13.8.30 P県(Q)」の印が押印されている。
(ハ)上記(ロ)のBの請求人から請求書の発行を依頼され、手書きの請求書を発行したとのTの答述は、上記(ロ)のCないしEの事実から信ぴょう性が認められることから、K社に請求書の発行を依頼した事実はないとの請求人の主張は採用できない。
 また、調査の経緯等を納税者に説明しなければならない旨を定めた法令上の規定はないから、原処分庁がK社において請求書発行の経緯を調査した事実を請求人に説明しなかったとしても、原処分が違法となるものではない。
(ニ)そして、上記(ロ)の事実を上記1の(3)のロの国税通則法第68条第1項の規定に照らして判断すると、次のとおりである。
 売上原価等以外の費用で各事業年度の損金の額に算入すべき金額は、法人税法第22条第3項第2号かっこ書きにおいて当該事業年度終了の日までに債務の確定していないものを除くとされているところ、請求人はK社から平成13年6月8日付の本件取引に係る見積書が発行されたことを奇貨として、本件活魚運搬車が納入されていないにもかかわらず本件取引に係る費用を、平成13年6月期の損金に算入するためにLがK社に同年6月30日付の本件取引に係る請求書の発行を依頼し、それに基づき当該請求書に記載された金額を平成13年6月期の損金に算入したものと認めるのが相当である。
 そして、納税者の申告行為に重要な関係を有する部門(経理部門等)に所属し、相当な権限を有する地位に就いている者の隠ぺい又は仮装の行為は、特段の事情がない限り、納税者本人の行為と同視すべきであると解されるところ、Lは請求人の経理担当責任者で、かつ、請求人の平成13年6月期の確定申告書に経理担当者として記名押印がされていることからすると、同人は、請求人の申告行為に重要な関係を有する部門に所属し、相当な地位に就いていると認められるから、同人が行った行為は、請求人の行為と同視すべきである。
 そうすると、請求人の行為は、国税通則法第68条第1項の規定でいう「事実を仮装し」に該当し、請求人はそれに基づいて納税申告書を提出していたことになる。
(ホ)そして、各賦課決定処分の重加算税の基礎となる税額は、いずれも本件取引に係るものであるから、国税通則法第68条第1項に基づいて行われた各賦課決定処分はいずれも適法である。

(3)消費税等の重加算税の賦課決定処分

 請求人は、上記(2)のロの事実に基づいて仕入れに係る消費税の控除額を過大に算定した納税申告書を提出していたのであるから、請求人の行為は国税通則法第68条第1項の規定でいう「事実を仮装し」それに基づいて納税申告書を提出していたことに該当し、同条同項の規定に基づいて行われた賦課決定処分は適法である。

(4)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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