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(平15.1.28裁決、裁決事例集No.65 878頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 審査請求人(以下「請求人」という。)は青果物集荷業を営む者であるが、消費税の課税資産の譲渡等の対価の額(以下「課税売上高」という。)を、青果物の委託販売であるとして手数料収入で算定すべきか(請求人主張)、それとも青果物の卸売であるとして売上金額で算定すべきか(原処分庁主張)を主な争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

 審査請求(平成14年3月20日請求)に至る経緯は、別表1のとおりである。

(3)関係法令等

イ 消費税法(平成9年3月31日までは平成6年法第109号による改正前のもの。以下同じ。)第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項は、事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が3,000万円以下である者については、消費税を納める義務を免除する旨規定している。
ロ 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項(平成12年法第26号による改正前のもの。以下同じ。)は、事業者が国内において課税仕入れ等を行った場合には、当該課税仕入れ等を行った日の属する課税期間の同法第45条《課税資産の譲渡等についての確定申告》第1項第2号に掲げる課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れ等に係る消費税額を控除する旨規定している。
 また、消費税法第30条第7項において、同条第1項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合を除き、当該保存がない課税仕入れ等の税額については適用しない旨を規定し、さらに、消費税法施行令第50条《課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の保存期間等》第1項において、消費税法第30条第1項の規定の適用を受けようとする事業者は、同条第7項に規定する帳簿及び請求書等を整理し、当該帳簿についてはその閉鎖の日の属する課税期間の末日、当該請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日からそれぞれ2月を経過した日(租税特別措置法第86条の6《個人事業者に係る消費税の課税資産の譲渡等についての確定申告期限の特例》第1項の規定の適用がある場合には、この課税期間に係る同項に規定する申告書の提出期限の翌日)から7年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならない旨規定している。
 そして、これらの規定の内容からすれば、帳簿等の保存年限が商法では10年とされているのに、消費税法では、税務当局において課税権限を行使できる最長の期限の7年とされていること、また、その保存場所も納税地等に限られていることからみて、消費税法第30条第7項において、帳簿等の保存がないことをもって原則的に同条第1項の規定の適用除外事由としているのは、適法な税務調査がなされる際には当然に保存されている帳簿等が提示され、これに基づいて課税仕入れ等に係る消費税額(以下「仕入税額」という。)が算出され得ることを予定し、このような確実な資料が保存されていない場合には、仕入税額を控除しないこととする趣旨によるものと解される。

(4)基礎事実

 次の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の営む事業に係る取引は、消費税法第2条《定義》第1項第8号及び第9号の規定により「課税資産の譲渡等」に該当する。
ロ 請求人は、消費税法第37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項(平成13年法第6号改正前のもの。以下同じ。)の規定の適用を受ける旨を記載した届出書を提出していない。

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2 主張

(1)原処分庁

 原処分は、次のとおり適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 決定処分について
(イ)請求人の取引の性格
A 請求人は、自己の業態を委託販売に係る青果物の仲介であり、手数料収入しか受領しておらず、公平な視点で同業者と同じように課税処理を行うべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人が直接自己の資産の譲渡を行ったものか、資産の譲渡等が委託販売の方法その他業務代行契約に基づいて行われたものであるかの判断に当たっては、当事者間の契約の内容、価格の決定経緯、当該資産の譲渡等に係る代金の最終的な帰属者が誰であるか等を総合判断して行うべきであり、次の事実から、請求人と出荷先である漬物会社との取引及び請求人と納入者である農家との取引は自己の資産の売買であり委託販売に係る手数料のみを収受していたものとは認められず、請求人の主張には理由がなく失当である。
(A)出荷先である漬物会社との取引内容
a 青果物を作付けする以前に、漬物会社から請求人に「栽培契約書」という名称の書類が送付されている。当該契約書には買付数量及び納品時期が指示されている。
b 漬物会社の仕入帳の取引先は、請求人となっている。
c 漬物会社への請求書は請求人の名前で発行されており、そこには取引日、品名、数量、単価、金額、運送代、消費税額及び請求額の合計が記載されているだけで手数料の記載はない。
d 漬物会社の仕入帳には、手数料の記載がない。
e 漬物会社は、請求人の請求書に基づき請求人の当座預金口座に代金を振り込んでいる。
(B)農家との取引内容
a 請求人が、農家にシーズン当初に作付面積を割り振る。
b 農家は、請求人から指示された数量を出荷する。
c 請求人は、漬物会社と契約した販売数量が確保できた場合は、農家に対し買取りを拒否している。
d 請求人が、運送会社を手配し、漬物会社に納品している。
e 取引内容を確認した農家18人と請求人との間には、手数料の取決めの事実は確認できない。
f 農家は、請求人がどこの漬物会社へいくらで売っているか知らされていない。
g 農家に対する商品代金の支払いは、請求人の計算により行っている。
h 漬物会社から請求人に商品のクレームがあっても、請求人は農家に対し代金を支払っている。
i 請求人保有の平成13年3月31日付の農家への支払明細書(荷受伝票)には単価、数量の記載のみで手数料の記載はない。
B また、請求人は、異議調査の担当職員(以下「異議調査担当職員」という。)が請求人の業態に関して「同業者の半分以上が手数料収入として申告していればそれを認める」との見解を示したが異議決定書にそれに関する記載がない旨主張する。
 しかしながら、異議調査担当職員が請求人に対して請求人の主張するような見解を示した事実はない。
(ロ)消費税
A 納税義務の有無
 上記(イ)のとおり、請求人の取引は自己の資産の売買であるから、これに基づき平成8年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成8年課税期間」という。)、平成9年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成9年課税期間」という。)、平成10年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成10年課税期間」という。)、平成11年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成11年課税期間」という。)及び平成12年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成12年課税期間」といい、平成8年課税期間、平成9年課税期間、平成10年課税期間及び平成11年課税期間と併せて「本件各課税期間」という。)の基準期間である当該各課税期間の2年前の課税期間の課税売上高を算定すると、別表2の付表1の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成8年課税期間の基準期間である平成6年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成6年課税期間」という。)が120,690,139円、平成9年課税期間の基準期間である平成7年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成7年課税期間」という。)が123,435,198円、平成10年課税期間の基準期間である平成8年課税期間が128,885,504円、平成11年課税期間の基準期間である平成9年課税期間は1月1日から3月31日までが88,989,268円、4月1日から12月31日までが46,286,416円で合計135,275,684円、平成12年課税期間の基準期間である平成10年課税期間が113,273,932円となりいずれも3,000万円を超えることから、請求人には消費税法第9条の適用はなく、平成8年課税期間については消費税、それ以降の各課税期間については消費税及び地方消費税(以下、消費税と併せて「消費税等」という。)を納税する義務がある。
B 課税売上高(税込み)
 課税売上高(税込み)は、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成8年課税期間が132,752,070円、平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までが91,658,947円、4月1日から12月31日までが48,600,737円、平成10年課税期間が118,937,629円、平成11年課税期間が130,606,094円、平成12年課税期間が114,782,454円となる。
C 課税標準額
 課税標準額は、上記Bの課税売上高(税込み)に、平成8年課税期間及び平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までについては103分の100、平成9年課税期間のうち4月1日から12月31日まで及び平成10年課税期間ないし平成12年課税期間については105分の100をそれぞれ乗じて算定すると、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成8年課税期間が128,885,000円、平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までが88,989,000円、4月1日から12月31日までが46,286,000円、平成10年課税期間が113,273,000円、平成11年課税期間が124,386,000円、平成12年課税期間が109,316,000円となる。
D 課税標準額に対する消費税額
 課税標準額に対する消費税額は、上記Cの課税標準額に、平成8年課税期間及び平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までについては100分の3、平成9年課税期間のうち4月1日から12月31日まで及び平成10年課税期間ないし平成12年課税期間については100分の4をそれぞれ乗じて算定すると、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成8年課税期間が3,866,550円、平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までが2,669,670円、4月1日から12月31日までが1,851,440円、平成10年課税期間が4,530,920円、平成11年課税期間が4,975,440円、平成12年課税期間が4,372,640円となる。
E 控除対象仕入税額
 請求人は、消費税法第37条第1項の適用を受ける旨の届出書を提出していないため、同条の適用はない。
 ところで、請求人は、調査当初に原処分を調査した担当者(以下「調査担当職員」という。)に対して、有限会社K(以下「K社」という。)からの平成11年7月末付の額面2,563,000円及び同年11月末付の額面593,000円の請求書並びに同年8月10日付の額面3,254,000円及び同年12月10日付の額面593,000円の領収書(以下「K社11年分請求書等」という。)を平成12年9月末付の1,052,000円の請求書(以下「K社12年分請求書」という。)とともに提示したが、K社11年分請求書等については平成11年課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れに係る支払対価の額に算入されていない旨主張する。
 しかしながら、請求人が、調査担当職員に対して帳簿書類等を提示したのは平成13年6月28日に請求人宅に臨場した際であり、その際、調査担当職員は携帯したコピー機にて提示された帳簿書類等については同日に写しを作成し、残った請求書等については翌日の同月29日に請求人の妻の立会いの下で写しを作成しており、請求人が提示した帳簿書類等はすべて写しを作成している。そして、写しの保存があるのはK社12年分請求書のみであり、K社11年分請求書等を請求人から提示を受けた事実はない。また、K社12年分請求書に係る支払いについては、提示されたノートに支払いの記載があるがK社11年分請求書等に係る支払いについては記載がない。
 そうすると、K社11年分請求書等に係る支払いについては、消費税法第30条第7項の規定により、同条第1項の規定の適用がないため、課税仕入れに係る支払対価には該当しない。
 なお、消費税法第30条第7項の規定にいう保存とは、帳簿及び請求書等が単に納税者の下に存在しているだけでは足りず、税務職員の質問検査権に基づく適法な調査により確認できるような状態での保存を意味するものと解されている。
 よって、消費税法第30条第1項の規定に基づく仕入れに係る消費税の控除額(以下「控除対象仕入税額」という。)は、請求人から提示のあった帳簿及び請求書により確認ができた別表2の「原処分庁主張額」欄に記載の課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)に、平成8年課税期間及び平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までについては103分の3、平成9年課税期間のうち4月1日から12月31日まで及び平成10年課税期間ないし平成12年課税期間については105分の4をそれぞれ乗じて算定すると、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成8年課税期間が2,955,358円、平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までが1,944,920円、4月1日から12月31日までが1,650,998円、平成10年課税期間が3,349,438円、平成11年課税期間が3,787,856円、平成12年課税期間が3,287,070円となる。
F 納付すべき消費税額
 納付すべき消費税額は、上記Dの課税標準額に対する消費税額から上記Eの控除対象仕入税額を控除して算定すると、別表2の「原処分庁主張額」欄のとおり、平成8年課税期間が911,100円、平成9年課税期間は1月1日から3月31日までが724,700円、4月1日から12月31日までが200,400円、平成10年課税期間が1,181,400円、平成11年課税期間が1,187,500円、平成12年課税期間が1,085,500円となる。
(ハ)地方消費税
A 課税標準となる消費税額
 課税標準となる消費税額は、上記(ロ)のFの納付すべき消費税額と同額で、別表2の「原処分庁主張額」欄のとおり、平成9年課税期間については4月1日から12月31日までの200,400円、平成10年課税期間が1,181,400円、平成11年課税期間が1,187,500円、平成12年課税期間が1,085,500円である。
B 納付譲渡割額
 納付譲渡割額は、上記Aの課税標準となる消費税額に100分の25を乗じて算定すると、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成9年課税期間が50,100円、平成10年課税期間が295,300円、平成11年課税期間が296,800円、平成12年課税期間が271,300円となる。
(ニ)納付すべき合計税額
 平成8年課税期間の納付すべき消費税額は、上記(ロ)のFの金額で、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり911,100円となり、平成9年課税期間ないし平成12年課税期間の各納付すべき合計税額は、上記(ロ)のFの納付すべき消費税額と、上記(ハ)のBの納付譲渡割額の合計額で、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成9年課税期間が975,200円、平成10年課税期間が1,476,700円、平成11年課税期間が1,484,300円、平成12年課税期間が1,356,800円となる。
そうすると、本件各課税期間の納付すべき消費税額及び納付すべき合計税額はいずれも決定処分に係る税額を上回ることとなることから、各決定処分はいずれも適法である。
ロ 無申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件各課税期間の決定処分はいずれも適法であり、また請求人が期限内申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書きに規定する正当な理由があるとは認められないので、無申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

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(2)請求人

 原処分は、次のとおり違法であるから、その全部を取り消すとの裁決を求める。
イ 決定処分について
(イ)請求人の取引の性格
 原処分庁は、請求人の取引について、委託販売に係る青果物の仲介であり手数料収入しか受領していないにもかかわらず、自己資産の売買であるとして請求人の当座預金口座へ振り込まれた売上金額を基に消費税の課税売上高を算定しているが、この原処分庁の判断は次のとおり誤ったものである。
A 請求人は、農業をしており、この事業は片手間で始めたものであり、当初から漬物会社とは手数料として契約しており、原処分の調査の際にも取引先は手数料であると言っているはずである。
B 納入する商品の単価は漬物会社が決め、天候などにより変動することはあるものの、手数料は1キログラム当たり○円から○円で一定であり、漬物会社の精算書にその金額が明記されている。
 そして、手数料は、商品代金とともに漬物会社から支払われる。
C 商品クレームについても、輸送途中のミス以外は請求人の責任ではなく農家の責任であり、請求人の手数料収入には関係がない。原処分庁が主張するように、仕入れた物を売るのであれば責任は請求人にくるはずである。
D 請求人の知っている同業者の多くが手数料として申告しており、異議調査担当職員も、同業者の半分以上が手数料収入として申告していればそれを認めるとの見解であったにもかかわらず、異議決定書にはその旨の記載がない。公平な視点で同業者と同じように課税処理を行うべきである。
(ロ)納税義務の有無
 上記(イ)のとおり、請求人は漬物会社とは手数料として契約しており、本件各課税期間の基準期間の収入金額は3,000万円以下である。
(ハ)控除対象仕入税額
 調査当初に調査担当職員に対して、K社からのK社11年分請求書等をK社12年分請求書とともに提示したが、そのうちのK社11年分請求書等については平成11年課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に算入されず、控除対象仕入税額として算定されていない。
ロ 無申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、決定処分はその全部を取り消すべきであるから、これに伴い、無申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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3 判断

(1)決定処分について

 消費税の課税売上高を手数料収入で算定すべきか、それとも青果物の販売代金で算定すべきかに争いがあるので、以下審理する。
イ 請求人の取引の性格
 請求人は、請求人の取引に係る収入は委託販売に係る手数料収入であるとして、〔1〕事業の開始当初から漬物会社と手数料で契約をしていること、〔2〕手数料は1キログラム当たり○円から○円と一定で、漬物会社の精算書にもその金額が明記されていること、〔3〕商品クレームについても、輸送途中のミスに基づくもの以外は請求人には責任がなく、手数料収入には関係がないこと及び〔4〕同業者の多くが手数料収入として申告していることから、公平な視点で同業者と同じように取り扱うべきである旨主張する。
(イ)ところで、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 請求人は当審判所に対し、次の旨答述した。
(A)農家との取引
a 請求人が農家へ作付を依頼し、種、肥料は請求人が購入し農家へ販売している。
b 納品スケジュールに従い、農家が搬入したものを運送会社を使い、漬物会社に出荷している。
c 農家からの搬入数量はチェックしないため、不足が生じた場合は請求人の負担で補充している。
d 農家への商品代金の支払いは、農家からの出荷数量を雑記帳に記入しておき、農家に仕切書に基づくチェックをしてもらい、月1回現金もしくは小切手で支払っているが、農家の求めに応じて若干の前払いもある。
(B)漬物会社との取引
a 契約書の作成はない。夏出張したときに値を決めてくる。
b 取引は、漬物会社からの注文書でやっており、注文書はファックスで送られてくる。
c 納品スケジュールは漬物会社の指示に基づき、漬物会社による作付状況のチェックもある。
d 漬物会社への販売代金の請求及び決済は、ファックスで送られた注文書に単価を掛けて請求書を郵便又はトラック便で送付して、月末にまとめて全部振込みで入金となる。
(C)商品のクレーム
 品質に関するクレームは原則農家負担であるが、輸送中の損失(運送会社の責めに帰するものは除く。)は農家に転嫁出来ず、自分の負担となる場合もあるし、農家との折半になる場合もある。
 商品に豆札(タブ)を付けておけば生産者責任は明確であるが、製造上異物とみなされるため、7〜8年前からこれを付けていない。
B 請求人の主要取引先である株式会社L(以下「L社」という。)及び株式会社M(以下「M社」という。)が保存している請求人発行の請求書は、請求人の屋号「N」で発行され、それには、取引日、品名、数量、単価、金額、運送代、消費税額及び請求額の合計額が記載されているが、手数料についての記載はない。
C L社の仕入帳及びM社の仕入先元帳には、仕入先として請求人の屋号が記載されているが、手数料についての記載はない。
D 請求人が原処分に係る調査の際に提示した農家に対する支払代金の明細を記載した「荷受伝票」には、期間、数量、単価、金額及び合計が記載されており、手数料という記載があるが、青果物代金に対する手数料は引かれていない。
E ○○銀行○○支店の請求人名義の当座預金口座は、漬物会社からの代金の振込み、農家への支払い、農機具販売店への支払い等に使用されている。
F 請求人に青果物を納入している農家は、調査担当職員に対し、納入した青果物を請求人がどこの漬物会社にいくらで販売しているかは知らず、また、手数料の取決めもしていない旨申述している。
(ロ)上記(イ)の各事実からすると、請求人と漬物会社及び請求人と農家の間における青果物の取引が委託販売契約であるとの事実は認められず、請求人の取引は、請求人が農家から仕入れた青果物を請求人の商品として漬物会社に販売していると認めるのが相当である。
 なお、請求人は、同業者の大部分が手数料収入で申告していることから、同業者と同様に取り扱うべきである旨主張するが、請求人に対する決定処分の適否は、課税標準等又は税額等が税法の規定に基づいているか否かにより判断すべきものであり、他の納税者の申告状況により、請求人の決定処分の取消しを求めることはできない。
したがって、これらの点に関する請求人の主張にはいずれも理由がない。
ロ 消費税
(イ)納税義務の有無
 請求人は、請求人の収入は手数料収入であるから、各基準期間とも3,000万円以下である旨主張する。
 しかしながら、上記イのとおり、請求人の取引は商品の売買であると認めるのが相当である。
 そして、当審判所が調査した結果によれば、本件各課税期間の基準期間の課税売上高は、別表2の付表1の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成6年課税期間は120,690,139円、平成7年課税期間は123,435,198円、平成8年課税期間は128,885,504円、平成9年課税期間は135,275,684円、平成10年課税期間は113,273,932円となり、いずれも消費税法第9条第1項に規定する3,000万円を超えることから、請求人には消費税の納税義務がある。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ)課税売上高(税込み)
 課税売上高(税込み)は、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成8年課税期間が132,752,070円、平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までが91,658,947円、4月1日から12月31日までが48,600,737円、平成10年課税期間が118,937,629円、平成11年課税期間が 130,606,094円、平成12年課税期間が114,782,454円となる。
(ハ)課税標準額
 課税標準額は、上記(ロ)の課税売上高(税込み)に、平成8年課税期間及び平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までは103分の100、平成9年課税期間のうち4月1日から12月31日まで及び平成10年課税期間ないし平成12年課税期間については105分の100をそれぞれ乗じて算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成8年課税期間が128,885,000円、平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までが88,989,000円、4月1日から12月31日までが46,286,000円、平成10年課税期間が113,273,000円、平成11年課税期間が124,386,000円、平成12年課税期間が109,316,000円となる。
(ニ)課税標準額に対する消費税額
 課税標準額に対する消費税額は、上記(ハ)の課税標準額に、平成8年課税期間及び平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までは100分の3、平成9年課税期間のうち4月1日から12月31日まで及び平成10年課税期間ないし平成12年課税期間については100分の4をそれぞれ乗じて算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成8年課税期間が3,866,550円、平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までが2,669,670円、4月1日から12月31日までが1,851,440円、平成10年課税期間が4,530,920円、平成11年課税期間が4,975,440円、平成12年課税期間が4,372,640円となる。
(ホ)控除対象仕入税額
A 請求人は、消費税法第37条第1項に規定する届出書を提出していないことから、控除対象仕入税額の控除については、同法第30条第1項の規定が適用されることとなる。
B ところで、請求人はK社11年分請求書等について課税仕入れに係る支払対価の額に算入されず、控除対象仕入税額として算定されていない旨主張する。
 しかしながら、上記1の(3)のロの法令の規定のとおり、消費税法第30条第7項にいう「保存」とは、ただ単に帳簿及び請求書等が事業者の支配下に存在するというだけでは足りず、適法な税務調査に際し、税務職員から帳簿等の提示を求められたときには正当な事由がない限りこれに応じ、当該職員においてこれを確認し得る状態に置くべきことも含むと解されているところ、当審判所の調査によれば、請求人は原処分に係る調査の際にK社11年分請求書等を提示しているとは認められない。
 そうすると、K社11年分請求書等は継続して保存されていなかったことになるから、課税処分の行われた後においてそれを提出したからといって消費税法第30条第1項の規定が適用されるべきものではない。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
C そこで、当審判所において課税仕入れに係る支払対価の額を算定すると、別表2の付表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成8年課税期間が101,467,325円、平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までが66,775,595円、4月1日から12月31日までが43,338,710円、平成10年課税期間が87,922,763円、平成11年課税期間が99,431,242円、平成12年課税期間が86,285,601円となる。
D そして、控除対象仕入税額は、上記Cの課税仕入れに係る支払対価の額に平成8年課税期間及び平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までは103分の3、平成9年課税期間のうち4月1日から12月31日まで及び平成10年課税期間ないし平成12年課税期間については105分の4をそれぞれ乗じて算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成8年課税期間が2,955,358円、平成9年課税期間のうち1月1日から3月31日までが1,944,920円、4月1日から12月31日までが1,650,998円、平成10年課税期間が3,349,438円、平成11年課税期間が3,787,856円、平成12年課税期間が3,287,070円となる。
(ヘ)納付すべき消費税額
 納付すべき消費税額は、上記(ニ)の課税標準額に対する消費税額から上記(ホ)の控除対象仕入税額を控除して算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成8年課税期間が911,100円、平成9年課税期間は1月1日から3月31日までが724,700円、4月1日から12月31日までが200,400円、平成10年課税期間が1,181,400円、平成11年課税期間が1,187,500円、平成12年課税期間が1,085,500円となる。
ハ 地方消費税
(イ)課税標準となる消費税額
 課税標準となる消費税額は、上記ロの(ヘ)の平成9年課税期間の4月1日から12月31日まで及び平成10年課税期間ないし平成12年課税期間のそれぞれ納付すべき消費税額と同額で、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成9年課税期間が200,400円、平成10年課税期間が1,181,400円、平成11年課税期間が1,187,500円、平成12年課税期間が1,085,500円となる。
(ロ)納付譲渡割額
 納付譲渡割額は、上記(イ)の課税標準となる消費税額に100分の25を乗じて算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成9年課税期間が50,100円、平成10年課税期間が295,300円、平成11年課税期間が296,800円、平成12年課税期間が271,300円となる。
ニ 納付すべき合計税額
 平成8年課税期間の納付すべき消費税額は、上記ロの(ヘ)の金額で、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり911,100円となり、平成9年課税期間ないし平成12年課税期間の各納付すべき合計税額は、上記ロの(ヘ)の納付すべき消費税額に上記ハの(ロ)の納付譲渡割額を加算して算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成9年課税期間が975,200円、平成10年課税期間が1,476,700円、平成11年課税期間が1,484,300円、平成12年課税期間が1,356,800円となる。
以上のとおり、平成8年課税期間の納付すべき消費税額及び平成9年課税期間ないし平成12年課税期間の各納付すべき合計税額はいずれも決定処分に係る税額を上回ることとなることから、各決定処分はいずれも適法である。

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(2)無申告加算税の賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、各決定処分はいずれも適法であり、また、請求人が期限内申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第66条第1項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、各賦課決定処分はいずれも適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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