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(平16.3.31裁決、裁決事例集No.67 491頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、相続により取得した土地が相続税法第12条《相続税の非課税財産》に規定する財産に当たるか否か及び土地評価額の多寡を争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 審査請求人G及び同H(以下、これら2名を併せて「請求人ら」という。)は、平成10年11月30日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したJ(以下「本件被相続人」という。)の共同相続人であるが、この相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税の申告書に別表1の「申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
ロ 次いで、請求人らは、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、別表1の「修正申告等」欄のとおり記載し本件相続に係る相続税の修正申告書を平成13年10月11日に提出したところ、原処分庁は、平成13年10月31日付で別表1の「修正申告等」欄のとおりとする過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ハ その後、原処分庁は、上記ロの調査により、請求人らが修正申告に応じなかった部分について、平成14年9月19日付で別表1の「更正処分等」欄のとおりとする更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ニ 請求人らは、上記ハのこれらの処分を不服として、平成14年10月25日に異議申立したところ、異議審理庁は、平成15年3月28日付で別表1の「異議決定」欄のとおり、原処分の一部を取り消す異議決定をした(以下、異議決定を経た後の原処分をそれぞれ「本件更正処分」及び「本件賦課決定処分」という。)。
ホ 請求人らは、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成15年4月22日に審査請求をした。

(3)関係法令等

 関係法令等の規定の要旨は、別紙のとおりである。

(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 平成11年9月20日付の遺産分割協議書と題する書面には、別表2の土地(以下「本件各土地」といい、また、番号1ないし10の土地を「本件甲土地」、番号11の土地を「本件乙土地」及び番号12ないし14の土地を「本件丙土地」といい、さらに、番号12の土地を「本件12土地」、番号13の土地を「本件13土地」及び番号14の土地を「本件14土地」という。)を、いずれも請求人らが各々2分の1ずつ取得することに決定した旨の記載がある。
ロ 本件各土地は、いずれも市街化調整区域内に位置し、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資第56号ほか国税庁長官通達。ただし、平成11年3月10日付課評2−2による改正前のものをいい、以下「評価基本通達」という。)が定める倍率方式(固定資産税評価額に国税局長が定める倍率を乗じた金額。以下同じ。)によりその相続税評価額を算出する地域に属する。
 なお、当該倍率については、各年1月1日を基準に地目ごとに国税局長が決定し財産評価基準書(以下「評価基準書」という。)に掲載し公開している。
ハ 本件甲土地に関する事項
(イ)本件甲土地の本件相続開始日における地目は、いずれも山林である。
(ロ)平成10年分評価基準書には、本件甲土地の所在する地域の山林は中間山林で、固定資産税評価額に乗ずる倍率は157と定められている。
(ハ)請求人らは、本件甲土地を平成11年9月28日にGが代表役員を務める宗教法人K(以下「K寺」という。)に寄付した。
(ニ)請求人らは、上記(ハ)の寄付について、申請者を請求人らとする国税庁長官あて「租税特別措置法(以下「措置法」という。)第40条《国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税》の規定による承認申請書」(以下「本件承認申請書」という。)を平成13年10月4日に原処分庁を通じて提出した。
(ホ)国税庁長官は、上記(ニ)の承認申請について、請求人ら各々に、平成15年3月5日付で、措置法第40条第1項に規定する要件に該当するものとして承認した旨の通知をした。
ニ 本件乙土地及び本件丙土地に関する事項
(イ)本件乙土地及び本件丙土地は、登記上の地目が田となっているが、固定資産税の課税上の現況地目は、本件相続開始日において、いずれも雑種地である。
(ロ)平成10年分評価基準書には、本件乙土地及び本件丙土地の所在する地域の宅地の固定資産税評価額に乗ずる倍率は1.1と定められ、また、同地域の借地権割合は50%と定められている。なお、同地域の雑種地の固定資産税評価額に乗ずる倍率の定めはない。

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2 主張

(1)請求人ら

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
(イ)本件甲土地について
 本件甲土地は、いずれも次の理由により相続税法第12条第1項第2号(以下「法2号」という。)及び同項第3号(以下「法3号」という。)に規定する財産に該当し非課税である。
A 法2号の適用について
(A)法2号は「墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」と規定し、相続税基本通達(昭和32年3月1日付直資第22号国税庁長官通達。以下「相続税基本通達」という。)12−1《「墓所、霊びょう」の意義》は、法2号に規定する「墓所、霊びょう」には、墓地、墓石及びおたまやのようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件を含むものとして取り扱う旨定めている。
(B)本件甲土地は、本件被相続人及び本件相続開始日後においてはGが住職となっているK寺所有の境内地に接しており、また本件被相続人は、本件甲土地をこの境内地と共に一体管理運営し、宗教法人としてのK寺が維持されている。
(C)したがって、本件甲土地は、宗教法人法第3条《境内建物及び境内地の定義》第1項第2号ないし第7号に規定する境内地等に該当し、K寺という寺院の尊厳を維持するための土地ということができるから、本件甲土地は、相続税基本通達12−1に定められている「尊厳の維持に要する土地」に該当する。
 法2号に規定する「墓所、霊びょう」を本件被相続人自身の祖先を祭祀するための墳墓に限定して解釈すべきではない。
B 法3号の適用について
(A)法3号は「宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの」と規定している。
(B)K寺は、宝暦○年に建立され、○○○○を護本尊として安置した初代から現代まで、宗教活動は無論のこと、永久に自然環境保全の目的を達成するためにその所有する山林111,759平方メートル、雑種地3,161平方メートル、境内地19,800平方メートル及び墓地33,000平方メートルに植樹し、本件甲土地と一体として維持運営し、この広大な地域の中に本堂、高僧の隠居所とその附属建物、斎場及び峰の灸の建物とその附属建物等を有しており、これは、贈与税の非課税財産(公益を目的とする事業の用に供する財産に関する部分)及び公益法人に対して財産の贈与等があった場合の取扱いについて(昭和39年6月9日付直審(資)第24号ほか国税庁長官通達。ただし、平成12年6月23日付課資2−258による改正前のものをいい、以下「個別通達1」という。)に定める公益を目的とする事業の事業規模の要件等に該当するものである。
 なお、自然環境保全のために植樹事業を行うことは、宗教法人のL寺(P市)、M寺(Q市)及びN寺(R市)等が自然の中に厳然として存在していることからも公益に供する事業といえる。
(C)被相続人の意思に基づき公益法人を設立する場合等の相続税の取扱いについて(昭和35年10月1日付直資第90号国税庁長官通達、以下「個別通達2」という。)は、公益法人に財産を提供しようとしていた者について相続が開始したため、その被相続人の意思に基づいて相続財産の一部をその公益法人に帰属させた場合において、公益法人が被相続人から遺贈により取得したものと同様に取り扱うことができる旨定めているところ、本件の場合、本件被相続人は、本件甲土地をK寺に贈与する意思がありながら、その手続を行うことなく逝去したもので、請求人らは、その意思を尊重し、本件甲土地を相続した後にK寺に贈与したのであるから、個別通達2の制定の趣旨からすれば、本件甲土地は、本件相続開始日において、相続税基本通達12−3《「当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの」の意義》が定める「公益を目的とする事業の用に供することに関する具体的計画があり、かつ、当該公益を目的とする事業の用に供される状況にあるもの」ということができる。
(D)また、法3号に規定する「公益を目的とする事業」と措置法第40条第1項に規定する「公益を目的とする事業」とは、同じことをいうところ、請求人らが本件相続後、国税庁長官から、措置法第40条の規定による非課税の承認を得ているのであるから、本件甲土地は、法3号に規定する要件を満たしているのである。
(E)相続税法施行令第2条《相続又は遺贈に係る財産につき相続税を課されない公益事業を行う者の範囲》は、その者が個人と人格のない社団とである場合について規定し、法人である場合について何ら規定がないとはいえ、請求人らはいずれも僧侶であり、K寺の役員として日常的に宗教活動を行っているのであるから、法3号に規定する宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者に該当し、さらに、その事業を行う者が請求人らが運営する法人である場合が認められないとは解されない。
(F)以上のことから、本件甲土地は、法3号に規定する「宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの」に該当する。
C 仮に、本件甲土地が非課税財産ではない場合、その相続税評価額は次の理由により、別表2の「請求人主張額」欄の予備的主張額とすべきである。
(A)相続財産の価額は、相続税法第22条《評価の原則》の規定により原則として当該財産の時価により評価するものとされ、財産の評価方法としては、評価基本通達が公開され、評価実務の用に供されているが、財産の評価法を画一的に適用するという形式上の平等を重視するあまり、かえって実質的な納税義務者相互間における租税負担の公平を逸することが明確である等、特別な事情があると認められる場合は、他の評価方法により、相続財産の価額を評価することが許されるものであるとする審判所の裁決事例がある。
(B)本件甲土地の付近の売買実例を基に相続税法上の時価を求めると、別表3のとおり3,843円/平方メートルとなるところ、原処分庁の相続税評価額は、平均8,803円/平方メートルとなり、時価を超えていることが明らかであるから、評価基本通達の定めに基づき評価額を求めることは相当ではない。
(C)本件甲土地はK寺が所有する山林の中に散在する物件であり、また幾多の法規制があるので売買取引が行われる可能性はないから、公示価格と比較できるものではなく、評価基本通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》に定める特別な事情が適用されるべきである。
(D)したがって、本件甲土地の相続税評価額は、上記(イ)のAの(B)のとおりの管理運用状況から、昭和47年3月30日付国税不服審判所裁決に準じて、相続税法第23条《地上権及び永小作権の評価》に規定する残存期間が50年を超える地上権が設定されている土地として評価すべきである。
 そうすると、その評価額は上記(B)の相続税法上の時価3,843円/平方メートルにそれぞれの地積を乗じ、さらに100分の10を乗じて算出した別表2の「請求人主張額」欄の予備的主張額となる。
(ロ)本件乙土地について
 本件乙土地は、次の理由により相続財産ではない。
A 本件乙土地は、本件被相続人の叔父S(昭和23年死亡)の仲介により、昭和9年ころに、本件被相続人とT(昭和44年死亡)との間で口頭による交換によって譲渡したものであり、本件乙土地は、Tの相続人UがV株式会社に賃貸し、その収益の全部を同人が得て現在に至っている。
 なお、本件乙土地の不動産登記簿上の所有者が本件被相続人のままであったのは、実質所有者であるUが上記の交換を原因とする所有権移転登記について再三督促するも応じないためである。
B 不動産の登記は第三者に対する対抗要件としてのもので、真実の権利者を表示していることにはならず、財産の登記登録などの名義にとらわれず実質的に本件被相続人の権利に属するものが本件相続に係る相続税の課税対象財産であり、本件被相続人の権利に属する財産の実質判断は、本件被相続人の所得及び財産の多寡、異動の状況、財産の取得の事由などの総合的見地から実質的に本件被相続人の財産か否かが判断されるべきである。
(ハ)本件丙土地について
 本件丙土地の相続税評価額は、次の理由により、別表2の「請求人主張額」欄のとおりである。
A 本件丙土地は雑種地で、評価基本通達及び評価基準書が定める倍率方式が適用される地域に属しているから、その相続税評価額は、それぞれその付近の宅地に準ずる雑種地として評価されている固定資産税評価額に、評価基準書が定める宅地の倍率1.1を単に乗じて求めた価額を基礎として求めるべきである。
 なお、当該固定資産税評価額は、地方税法第408条《固定資産の実地調査》により、R市が現況を知り諸事情を考慮した上で別表4のとおり算出されたもので適正な評価額であり、原処分庁に当該固定資産税評価額を変更する権限はない。
B 原処分庁は、雑種地である本件丙土地について、近傍宅地の固定資産税評価額を基礎として相続税評価額を算出しているが、仮に、このような方法が認められるにしても、雑種地としての減額がなされるべきである。
 なお、原処分庁は、本件丙土地は市街化調整区域内であることから、建物建築制限について、評価基本通達27−5《区分地上権に準ずる地役権の評価》の家屋の建築が全くできない場合の斟酌としての減額割合50%を採用しているが、仮にこのような減額方法が相当であるとすれば、別表5の各土地の相続税評価額は、同表の「請求人予備的主張額」欄のとおりとなるから、請求人らの申告額を減額すべきである。
C また、評価基本通達82《雑種地の評価》は、原則として、その雑種地と状況が類似する付近の土地についてこの通達の定めるところにより評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その土地とその雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した価額に、その雑種地の地積を乗じて計算した金額によって評価する、と定めているところ、「その土地とその雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した価額」とは、単に評価基本通達27−5を適用すればよいというのではなく、雑種地としての諸条件を考慮して評価すべきと解すべきである。
D 以下、本件丙土地の相続税評価額を個別に計算すると、次のとおりである。
(A)本件12土地の相続税評価額について
a 本件12土地の相続税評価額は、上記Aのとおり、本件12土地の固定資産税評価額16,936,698円に評価倍率1.1を乗じて求めた自用地としての価額から、さらに、本件12土地が貸宅地であることから借地権の価額(借地権割合50%)を控除して求めた9,315,183円である。
b 仮に、原処分庁が採用する上記Bの評価方法が認められるとしても、その場合には、R市は別表4の〔8〕欄のとおり4,000円/平方メートルの造成費を控除する計算を行っているところであり、本件12土地の上の建物は不安定な仮設のものであるから、原処分庁の相続税評価額から4,000円/平方メートルの宅地造成費相当額が控除されるべきである。
(B)本件13土地及び本件14土地の相続税評価額について
a 本件13土地の相続税評価額は、上記Aのとおり、本件13土地の固定資産税評価額3,067,830円に評価倍率1.1を乗じて求めた自用地としての価額から、さらに、本件13土地が貸家建付地であることから、当該自用地としての価額に借地権割合(50%)を乗じ、さらに借家権割合(30%)を乗じて得た価額を控除した価額2,868,421円である。
b また、本件14土地の相続税評価額は、上記Aのとおり、本件14土地の固定資産税評価額3,766,026円に評価倍率1.1を乗じて求めた自用地としての価額から、さらに、本件14土地が賃借権の目的となっていることから、賃借権の価額(自用地の価額の5%)を控除した価額3,935,497円である。
c 仮に、原処分庁が採用した評価方法が認められるとしても、その場合には、上記(A)のbと同様に、原処分庁の算定相続税評価額から4,000円/平方メートルの宅地造成費相当額が控除されるべきである。
 さらに、本件13土地及び本件14土地については、R市では、別表4の〔6〕欄のとおり無道路地として30%の減額を行っており、本件被相続人の所有する公道に面する土地に本件13土地及び本件14土地が接しているものの、それぞれ使用目的が異なっており、また本件13土地及び本件14土地には、他人の土地を通行の用に供する権利等は何ら付されていないことから、無道路地の斟酌を行って相続税評価額を算出すべきである。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分は違法であるから、本件賦課決定処分についてもその一部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ)異議審理庁の調査によれば、上記1の(4)の各事実のほかに、次の事実が認められる。
A 国土交通省が発表する地価公示の標準地番号がr町13−○(R市r町f番、山林、地積876平方メートル、以下「本件公示地」という。)の平成10年及び平成11年の公示価格は、それぞれ27,000円/平方メートル及び26,000円/平方メートルである。
B 請求人らは、本件承認申請書に本件乙土地についてもK寺に寄付した旨記載していたが、同土地について、平成15年1月24日、国税庁長官あての「措置法第40条の規定による所得税の非課税の承認申請のうち一部の土地について、承認申請の取下げについて」と題する書面を原処分庁を通じて提出した。
C 本件丙土地は、その登記地目が田であるが、本件相続開始日においては、資材置場として他に貸し付けられている。
D 本件12土地の近傍に位置するR市r町内に存する宅地の平成10年度固定資産税評価額は132,610円/平方メートル、本件13土地及び本件14土地の近傍に位置する同町内の宅地の平成10年度固定資産税評価額は132,050円/平方メートルである。
(ロ)相続税法第22条及び評価基本通達について
 相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、相続税法に特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価により評価する旨規定しているところ、当該時価とは、相続開始時における当該財産の客観的交換価値をいうものと解されている。
 しかし、客観的交換価値が必ずしも一義的に確定されているものではないことから、その時価を客観的かつ適確に評価することは容易ではなく、また、当該財産の客観的交換価値を個別的に評価するとすれば、その評価方法、基礎資料の選択の仕方、評価者による判断等により異なった評価額が生じることは避けがたく、とりわけ、評価者による判断等により異なった評価額が生じることについては、ある不動産に関する複数の不動産鑑定士の評価額がそれぞれ異なる場合が多分に存在するという現実からして明白である。
 そこで、課税実務上は、相続税法に特別の定めのあるものを除き、国税庁長官が各国税局長あてに発した評価基本通達に定められている評価方法により画一的に相続財産を評価することとしている。
 これは、単に、課税庁の事務負担の軽減、事務処理の迅速性、徴税費用の節減のみを目的とするものではなく、課税の公平の観点から、あらかじめ定められた評価方法により評価することとしているものである。
 したがって、評価基本通達は法令ではないが、納税者間の課税の適正・公平の確保という見地からすると、同通達に定められた評価方法を適用して、相続財産を画一的に評価する方法には合理性があるといえ、当該評価方法によらないことが正当として是認され得るような特別な事情がある場合を除き、評価基本通達に基づき評価することが相当である。
(ハ)本件甲土地について
 本件甲土地は、次のとおりであるから、法2号又は法3号に規定する財産に該当しない。
A 法2号の適用について
 民法第896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定しているところ、同法第897条第1項は、祭具、墳墓の所有権について「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する。」と規定している。
 このように、民法上、祭具、墳墓は、一般の相続財産とは区別して承継させることとしていることから、当該祭具等は、相続分や遺留分の算定に際して相続財産の中には算入されないこととされており、そうすると、法2号に規定する相続財産の課税価格に算入されない墓所、霊びょう及び祭具等は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰するものが承継するもの、換言すれば、自己の祖先に係るものと解されるところ、本件甲土地が、請求人らの祖先を祭祀するための墳墓として利用されている事実は認められないことからすれば、本件甲土地が法2号に規定する財産であるとは認められない。
B 法3号について
 法3号の規定は、宗教等を目的とする事業を行うものが、相続等により取得した財産を、その事業の用に供することが確実な場合を条件としているところ、本件甲土地を本件被相続人から本件相続により取得したのは、請求人らであるが、同人らは、宗教等を目的とする事業を行うものではなく、K寺の役員であって、当該事業を行う者はK寺であることからすれば、本件甲土地が法3号に規定する財産であるとは認められない。
C 請求人らは、仮に本件甲土地の価額が本件相続に係る相続税の課税価格に算入されるとしても、本件甲土地は、K寺が所有する山林の中に散在すること及び幾多の法律の規制により取引の対象とならないことからすれば、評価基本通達6の定めによって、その相続税評価額を算出すべきである旨主張する。
 しかしながら、評価基本通達に定められた評価方法には合理性があり、当該評価方法によらないことが、正当として是認され得るような特別な事情がある場合を除き、同通達に基づき評価することが相当であることについては上記(ロ)のとおりであり、同通達の定めに基づき本件甲土地の各相続税評価額を算出すると、別表6の〔4〕欄のとおりとなり、その相続税評価額は、本件甲土地の近隣に位置し、現況が類似する林地である本件公示地の公示価格に比べ低額である。
 したがって、本件甲土地の各相続税評価額を算出するにあたって、評価基本通達に定める方法によらないことが正当として是認され得るような特別の事情があるとは認められないことからすれば、評価基本通達6の定めを適用すべきであるとする請求人らの主張には理由がない。
(ニ)本件乙土地について
 本件乙土地について、請求人らは、口頭による交換の合意により、本件乙土地の実質所有者はUであるから、本件被相続人の遺産でない旨主張する。
 しかしながら、本件乙土地については、〔1〕請求人らが主張するとおり交換契約書が存在しないこと、〔2〕交換に係る所有権移転登記がないこと、〔3〕その交換により本件被相続人が取得した資産が明らかにされていないこと、〔4〕請求人ら自身、本件乙土地の所有権を本件被相続人から本件相続により取得し、これをK寺に寄付したとして、同土地を含んだところで本件承認申請書を国税庁長官に提出したことからすれば、本件乙土地が本件被相続人の財産ではないとする理由は認められない。
(ホ)本件丙土地について
A 本件丙土地は、倍率地域に位置するところ、本件丙土地が属する地域は、雑種地の相続税評価額を算出するため固定資産税評価額に乗ずる雑種地の倍率の定めがないことから、本件丙土地の各相続税評価額は、評価基本通達82の定めにより算出することとなる。そして、本件丙土地は、そのいずれもが資材置場等の用途として他に貸し付けられていることからすれば、その状況は、付近の宅地に類似すると認められ、本件丙土地の相続税評価額の算出に当たっては、本件丙土地に類似する宅地の相続税評価額に比準することとなる。
B これに対し、請求人らは、本件丙土地の各相続税評価額を算出するに当たっては、雑種地としての減額をすべき旨主張する。
 しかしながら、本件丙土地は、市街化調整区域内に位置し、固定資産税の課税上その地目が雑種地とされていることからすれば、本件丙土地は付近の宅地に比べ建物の建築が制限されていると認められ、その制限は、評価基本通達27−5に定める承役地に係る制限の内容が家屋の全く建築できないものであるときと同様の制限と認められることから、本件丙土地の相続税評価額を算出するに当たっては、同通達の当該定めに準じて評価したのであり、これは、本件丙土地が市街化調整区域内の雑種地であることから、付近の宅地に比べ劣ることにつき、その減額を行ったものである。
C また、請求人らは、本件12土地の相続税評価額を算出するに当たっては、4,000円/平方メートルの造成費を控除すべきである旨主張する。
 しかしながら、土地の評価額を算出するに当たって宅地造成費を控除する必要がある場合とは、その土地を宅地に転用するための費用の投下が必要と認められる場合をいうところ、本件12土地には、現に建物が存することからすれば、同土地の評価額を算出するに当たり宅地造成費を控除する必要はない。
D さらに、請求人らは、本件13土地及び本件14土地は、無道路地であるから、当該各土地の相続税評価額を算出するに当たっては、その減額をすべきである旨主張する。
 しかしながら、無道路地とは、一般に他人の土地にとり囲まれているなどして公道に直接面していない土地をいうが、本件13土地及び本件14土地とは隣接し、本件13土地は公道に面する本件被相続人所有のR市r町g番所在の土地に隣接していることからすれば、本件13土地及び本件14土地は無道路地とはならない。
E 以上のとおり、請求人らの主張には理由がなく、本件丙土地の相続税評価額は別表7のとおりとなる。
(ヘ)以上により、請求人らの納付すべき税額を算出するとG76,519,100円、H75,643,800円となるから、当該金額と同額で行った本件更正処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分は適法であるところ、請求人らの場合、過少申告となったことについて国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由があると認められる場合」には該当しないから、同条第1項及び第2項の規定に基づき過少申告加算税を賦課したことは適法である。

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3 判断

(1)本件更正処分について

 本件は、本件甲土地が相続税の非課税財産に該当するか否か、また本件甲土地が相続税の非課税財産に該当しない場合の相続税評価額、本件乙土地の帰属及び本件丙土地の相続税評価額について争いがあるので、まず、本件甲土地の非課税財産の該当性及び本件乙土地の帰属について審理する。
イ 本件甲土地の非課税財産の該当性
(イ)法2号の適用について
A 民法第896条は、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると規定するが、同法第897条第1項において、系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継すると規定し、一般の相続財産とは、別個に承継されるべきことを規定している。
 そして法2号は、この民法の精神にのっとり、また国民感情の上からも、これらの物が日常礼拝の対象となっている点にかんがみ、一般の相続財産とは区分して「墓所,霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」を非課税財産としたものであると解され、民法第897条第1項に規定する「系譜、祭具及び墳墓」と法2号に規定する「墓所,霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」とは、その範囲を同じくすると解される。
 そうすると、法2号に規定する「墓所,霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」は、祖先の祭祀を主宰する者が承継するものとなるから、相続税の納税義務者自身の祖先に係るものに限定して解することになる。
B これを本件についてみると、本件甲土地はK寺の境内地と同様に管理している山林であり、請求人らの祖先を祭祀するための墓所等の尊厳の維持に要する土地として利用されている事実は認められないから、本件甲土地が法2号に規定する非課税財産に該当しない。
C これに対し、請求人らは、本件甲土地が、宗教法人法第3条第1項第2号ないし第7号に規定する境内地等に該当し、K寺という寺院の尊厳を維持するための土地であり、請求人ら自身の祖先の祭祀に係るものに限定して解釈すべきものではない旨主張する。
 しかしながら、法2号の適用は上記Aのとおりであり、また相続税基本通達12−1は、「墓所、霊びょう」の意義(範囲)を明らかにしたもので、同通達に「墓地、墓石のようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地」とあるのは、上記Aの解釈を拡大する趣旨のものではなく、民法第897条第1項に規定する「墳墓」が、遺体や遺骨を葬っている設備(墓石、墓碑などの墓標、土葬のときの埋棺など)のほか、当該設備の設置されている相当範囲の土地(墓地)も含むものと解されることから、法2号の「墓所、霊びょう」の解釈をこの民法の「墳墓」の解釈と平仄を合わせるために定められたものと解される。
 したがって、この点に関する請求人らの主張は採用できない。
(ロ)法3号の適用について
A 法3号の規定は、宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者が相続等により取得した財産であることが要件であるところ、請求人らは、本件相続開始日において、請求人らが個人として公益を目的とする事業を行っていた事実は認められないから、本件甲土地が、法3号に規定する財産に該当するとは認められない。
B これに対し、請求人らは、以下のとおり本件甲土地が法3号に規定する財産に該当する旨主張するので、以下検討する。
(A)請求人らは、請求人ら自身が僧侶であり、K寺の役員として日常的に宗教活動を行っているから、同人ら自身が公益を目的とする事業を行う者に該当する旨主張するが、請求人らの日常行う宗教活動は、宗教法人であるK寺の宗教法人法の規定に基づく規則で定められた目的の達成のための業務と認められ、請求人らのなす当該行為の効果は、K寺に帰属するものである。そうすると、宗教活動による公益事業を行っているのは、K寺であってその役員(法人の機関)である請求人らではないから、請求人らは、公益を目的とする事業を行う者には該当しない。
(B)請求人らは、K寺が宗教活動を営み、その歴史、事業内容及び事業規模等について主張するが、上記(A)のとおり、請求人らが公益を目的とする事業を行う者に該当しない以上、当該主張によって、法3号の適用が左右されるものではない。
(C)請求人らは、本件甲土地について、個別通達2の制定の趣旨からすれば、本件相続開始日において、相続税基本通達12−3が定める「公益を目的とする事業の用に供することに関する具体的計画があり、かつ、当該公益を目的とする事業の用に供される状況にあるもの」ということができる旨主張するが、上記(A)のとおり、請求人らが公益を目的とする事業を行う者に該当しない以上、本件甲土地が法3号に規定する財産に該当するとは認められないので、当該主張については判断するまでもない。
(D)請求人らは、相続税法施行令第2条に規定する「もっぱら(以下中略)公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業を行う者」について、法人である場合が認められないとは解されないと主張するが、本件甲土地は個人である請求人らが本件相続によって取得したのであり、K寺が取得したものではないから、そもそも同条を適用すべき余地はない。
(E)請求人らは、本件甲土地の本件承認申請書について、国税庁長官から非課税の承認を得ていることにより、本件甲土地は法3号の要件をも満たしていると主張するが、そもそも、措置法第40条は、所得税法第59条《贈与等の場合の譲渡所得等の特例》の適用による譲渡所得を、一定の要件(受贈者の公益性、事業性等)を満たした場合に非課税とするものであって、法3号は、相続財産が一定の要件を満たした場合に非課税とする規定であり、各々非課税とする対象が異なり、また各々に規定する非課税となるための要件も異なるのであるから、措置法40条の規定をもって、法3号の適用を判断することはできない。
(F)以上のとおり、請求人らの主張にはいずれも理由がない。
ロ 本件乙土地の帰属について
(イ)請求人らは、本件乙土地は、昭和9年ころに、本件被相続人がTに口頭による交換契約によって譲渡したものである旨主張する。
 ところで、請求人らが主張する上記交換の反対給付たる交換取得土地については、請求人ら自ら答述するように、その位置及び面積を特定することができない。
 この点に関して、請求人らは、上記の交換によって本件被相続人の譲渡した土地及び取得した土地について測量した事実がある旨答述するが、これを認めるに足る証拠の提出がない。
 したがって、交換譲渡の反対給付たる交換取得資産は、いまだ定まっていないものと認められ、また他に本件乙土地に係る交換が行われたとする証拠はないから、本件乙土地が交換譲渡されていたとは認めらない。
(ロ)なお、本件乙土地は、請求人らの主張するとおり、本件相続開始日に、Uが第三者に賃貸し収益を得ている事実は認められるが、上記(イ)のとおり交換譲渡されていたとは認められない以上、Uは本件被相続人との間において、本件乙土地に係る使用貸借契約に基づく使用権を有し、これにより本件乙土地を第三者に賃貸していると認めるほかはなく、Uが第三者に賃貸している事実をもって、同人に所有権があるとする請求人らの主張には理由がない。
(ハ)よって、本件乙土地については、交換譲渡されていた事実がないから、本件相続に係る相続財産と認めるのが相当である。
ハ 本件各土地の相続税評価額について
 本件各土地については、評価方法に争いがあるので、以下審理する。
(イ)本件甲土地について
 請求人らは、本件甲土地が非課税財産に該当しないのであれば、本件甲土地に特別な事情が存するから、評価基本通達の定めにより難い場合の評価を適用すべきであると主張するので、以下検討する。
A 相続税法第22条の解釈について
 相続税法第22条の解釈については、上記2の(2)のイの(ロ)で原処分庁が主張しており、当審判所においても相当と認められる。
 そして、評価基本通達においては、市街地的形態を形成する地域にある宅地以外の宅地、純山林、中間山林等は、倍率方式により評価することとされ、国税局長が定める倍率等は、毎年1月1日における地価動向を基に毎年改定することとし、各年の1月1日を評価時点とし、売買実例価額、公示価格及び不動産鑑定士等の精通者意見価格等を基に、公示価格水準の80%程度の水準に設定されている。このことは、相続税等の課税に当たって路線価が1年間を通じて適用されることから、その間の地価変動に耐え得るものであることの必要性など評価上の安全性等を考慮しているためである。
 したがって、評価基本通達の定めにより算定された価額が相続開始の時におけるその価額を上回っているような特別の事情のない限り、倍率方式に基づいて評価する方法は合理的なものと認められる。
B 請求人らは、本件甲土地の本件相続開始日の自用地としての時価は、別表3のとおり、本件甲土地の近隣に存する土地(R市r町h番)の取引事例(以下「請求人取引事例」という。)に各種の補正を行って算定した3,843円/平方メートル(以下「請求人主張時価」という。)であると主張する。
 請求人取引事例は、R地方裁判所の競売による競落であり、自由な取引によって成立した取引事例とは認められず、そして、その競落価額は通常の売買による価額に比較すると低くなるのが通例であるから、競落価額から比準して客観的交換価値を求めるには、競落価額に事情補正を施す必要があるが、請求人らの事情補正率として適用している100/70の算定根拠が明確に示されていない。さらに、相続税法上の時価への修正率として80/100を採用しているが、この80/100の修正率を評価基本通達による相続税評価額が公示価格水準の80%水準とされていることと同様としているならば、請求人が評価基本通達によらないで相続財産の時価を算定すると主張していることからすれば、80/100の修正率を乗ずる必要性は認められない。
 以上のことからすると、請求人主張時価は、適正な時価を算定しているとは認められないから、本件甲土地の相続税法上の時価として採用することはできない。
C 次に、請求人らは、本件甲土地はK寺が所有する山林の中に散在すること及び幾多の法規制により、売買取引が行われる可能性がないことから、同土地の時価の算定に当たって、公示価格と比較できるものではない旨主張する。
 しかしながら、相続税法上の時価は客観的な交換価値であるから、本件相続に係る相続税の計算においても、本件甲土地についての客観的交換価値を求めることが必要となる。
 ところで、公示価格は、地価公示法第2条《標準地の価格の判定等》に規定する「正常な価格」を判定したもので、この「正常な価格」とは、同条第2項において自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格である旨規定され、一般の土地取引の取引価額の指標となるものであり、不動産鑑定評価の適正化を図るための拠り所とすべき規準である不動産鑑定基準においても、都市計画区域において土地の正常価格を求めるときは、公示価格を規準としなければならない旨が定められている。
 したがって、相続税法第22条に規定する時価と公示価格とは、ともに、自由な取引が行われたとした場合に通常成立すると認められる価格を指向していると解され、本件甲土地の時価を求めるに当たっては、近隣地域の取引事例及び公示価格等に比準した価格を求めることとなる。そして、この方法(以下「取引事例比較法」という。)を欠く方法によっては、適正な時価(客観的な交換価値)を求めることはできないと認められるから、請求人らの主張には理由がない。
D さらに、請求人らは、本件甲土地の管理状況から、昭和47年3月30日付国税不服審判所裁決に準じて、相続税法第23条に規定する残存期間が50年を超える地上権が設定されている土地として、自用地としての価額に10/100を乗じた価額を評価額とすべきである旨主張するが、上記裁決で争点となった土地は、寺院の檀家のための墓地の用途に供され永代使用されるものと認定した上で、相続税法第23条に規定する残存期間が50年を超える地上権等が設定されている土地の評価に準じて扱うのが相当と判断したものであるところ、本件甲土地は林地であって、本件甲土地の上には何らの地上権等の権利が設定されている事実は認められず、上記裁決の基礎となった事実とは状況が異なるものである。
 したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
E 評価基本通達の適用の可否について
 本件の場合、本件甲土地における特別な事情とは、評価基本通達により評価した価額が当該土地の時価を上回る場合に当るか否かにあるので、これについて判断すると、以下のとおりである。
(A)評価基本通達に基づく相続税評価額
 本件甲土地の本件相続開始日における地目は山林で、評価基本通達に基づく相続税評価額は、本件甲土地の各々の固定資産税評価額に倍率157を乗じた価額であり、その1平方メートル当たりの価格は別表6の〔5〕欄のとおり、それぞれ7,469円/平方メートルから9,630円/平方メートルとなる。
(B)当審判所が算定した時価
 時価の算定に当たっては、上記Cのとおり、取引事例比較法により比準価格を求めることが相当と認められるので、これにより本件甲土地の時価を算定すると、別表8のとおり23,641円/平方メートルとなる。
(C)以上のとおり、本件甲土地については、評価基本通達の定めに基づく相続税評価額が時価を上回っているとする特別な事情は認められない。
(D)したがって、本件甲土地の相続税評価額は、評価基本通達の定めによって評価するのが相当である。
(ロ)本件乙土地について
 本件乙土地については、価額に関して当事者に争いがないところ、当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 本件乙土地の一部は、本件相続開始日において、市道○○号線の道路敷となっていることが認められ、当該道路敷部分の面積は、道路台帳平面図及び道水路等境界明示図から73.52平方メートルと算出される。そして、この73.52平方メートルは、不特定多数の者の通行の用に供されているから、評価基本通達24《私道の用に供されている宅地の評価》の定めにより非課税とすることが相当と認められる。
B 原処分庁は、本件乙土地の相続税評価額を同土地の平成10年度の固定資産税評価額25,513円に評価基準書に定める地目山林の倍率157を乗じて4,005,541円としているところ、本件乙土地の固定資産税評価額25,513円は、上記Aの非課税となる道路敷部分を控除して算定したものとは認められない。
C したがって、本件乙土地の相続税評価額は、4,005,541円に本件乙土地の道路部分以外の部分の面積の割合82.3%(342.48/416)を乗じて3,296,560円とするのが相当である。
(ハ)本件丙土地について
本件丙土地の相続税評価額の算定に当たり、評価基本通達の定めに基づき評価することについては、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがないところ、評価基本通達の解釈又は適用に争いがあるので、以下検討する。
A 本件丙土地の評価方法について
(A)本件丙土地については、雑種地として評価することに争いがないが、評価基準書には本件丙土地が所在する地域の雑種地に適用される倍率が定められていないから、評価基本通達82の定めにより、本件丙土地と状況が類似する付近の土地を評価基本通達の定めるところにより評価した同土地の1平方メートル当たりの相続税評価額に比準して算定するのが相当である。
(B)これに対し、請求人らは、本件丙土地の相続税評価額を、雑種地としての固定資産税評価額に宅地の倍率1.1を乗じて算出すべきである旨主張する。
 しかしながら、評価基準書に定める倍率は、固定資産税評価額が地目により差異があるので、それぞれの地目に応じた適正な評価額を算出できるよう各地目ごとに定めているのであって、宅地の倍率を採用するならば、基になる固定資産税評価額は宅地としての価額によるのが相当である。
 したがって、請求人らの主張には理由がない。
(C)さらに、請求人らは、本件丙土地の固定資産税評価額は、R市が地方税法第408条により、本件丙土地の諸事情を考慮した上で算出したものであり、原処分庁にこれを変更する権限はない旨主張するが、原処分庁は、本件丙土地と状況が類似する付近の土地の評価額に比準して算定しているのであって、本件丙土地の固定資産税評価額を変更しているものではない。
 したがって、請求人らの主張には理由がない。
(D)請求人らは、原処分庁の採用する評価方法が相当であるとするならば、別表5の土地についてもこの方法を用いるべき旨主張するが、そもそも評価する土地は、それぞれ現況が相違し、個別固有の条件や制限そして環境などを有しているものであって、単に市街化調整区域に存するからといってすべて同様の方法を用いて評価できるものではない。
 したがって、請求人らの主張には理由がない。
(E)また、請求人らは、評価基本通達82にいう「その土地とその雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した価額」とは、単に、評価基本通達27−5を適用すればよいというのではなく、雑種地としての諸条件を考慮して評価すべきと解すべきである旨主張するが、同通達の「その土地とその雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した価額」とは、評価すべき土地と比準土地の価格形成要因における個別的要因とされる街路条件、交通接近条件、環境条件、画地条件、行政的条件等を比較考慮して評定することと解される。
 したがって、評価すべき土地と比準土地の差異が、都市計画法上の建築可能な建物の用途制限(行政的条件)を原因とするならば、これを評価すべき土地との差異として考慮すれば足りるのであり、抽象的に雑種地としての諸条件を考慮すべきとする請求人らの主張には理由がない。
B 本件丙土地の各土地の相続税評価額について
(A)本件12土地について
a 認定事実
 請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(a)平成10年度土地・家屋総合名寄帳登録事項証明書には、本件12土地について、現況地目雑種地、課税地積476平方メートル及び固定資産税評価額16,936,698円と記載されているほか、本件12土地に隣接する本件相続の相続財産であるR市r町i番に所在する土地(以下「本件12比準地」という。)について、現況地目宅地、課税地積439平方メートル及び固定資産税評価額58,216,009円と記載されている。
(b)本件12土地及び本件12比準地のそれぞれの画地の奥行距離はおおむね等しい。
(c)本件被相続人は、本件12土地の内60坪(198平方メートル)を、一時貸材料置場として利用させることを目的に、賃料を1か月当り96,000円、賃貸期間を平成10年9月1日から平成11年6月30日までとする旨の借地借家法第25条《一時使用目的の借地権》による一時使用賃貸借契約(以下「本件12土地賃貸借契約1」という。)をWとの間で締結し、平成10年7月31日付で土地賃貸借契約書を作成した。
(d)本件被相続人は、本件12土地の内上記(c)以外の60坪(198平方メートル)を、一時貸材料置場として利用させることを目的に、賃料を1か月当り96,000円、賃貸期間を平成10年9月1日から平成11年6月30日までとする旨の借地借家法第25条による一時使用賃貸借契約(以下「本件12土地賃貸借契約2」という。)をX株式会社(以下「X社」という。)との間で締結し、平成10年7月31日付で土地賃貸借契約書を作成した。
(e)本件12土地には、本件相続開始日において、軽量鉄骨造、亜鉛メッキ鋼板葺2階建て建物(床面積1階90.72平方メートル、2階77.76平方メートル合計168.48平方メートル。以下「本件12建物」という。)が存在している。
(f)本件12比準地には、本件相続開始時の時において、建物2棟(建築床面積56.3平方メートル及び96.8平方メートルのもの、いずれも未登記で平成12年度から固定資産課税台帳に登録)が存在している。
(g)請求人らは、当審判所に対して、本件12建物について、次のとおり答述している。
 本件12建物の建築主は、Y建設(住所不明)で、建築時期、建物の構造、面積及び間取り等は不明であるが、Gが、将来の紛争を避けるため、平成13年ころにX社から対価なしで取得した。
 また、本件12建物が市街化調整区域内に建築されているのは、都市計画法施行前に建てられたからである。
b 本件12土地の自用地としての評価額について
(a)本件12土地は、下記(b)に記載した事情により地目が雑種地となっているところ、その現況は本件12建物の敷地と資材置場として利用されているのであるから、本件12土地の評価は宅地に比準した価額によって算出するのが相当である。
 そして、本件12土地及び本件12比準地については、上記aの(a)から、平成10年度の固定資産税評価額のそれぞれの1平方メートル当りの価格が、本件12土地が35,581円、本件12比準地が132,610円と算出される。本件12土地と本件12比準地との間に、位置、形状等の差異は認められないから、本件12土地の相続税評価額を求めるために採用する比準すべき土地は、本件12比準地が相当と認められる。
(b)本件12土地については、昭和45年6月10日の都市計画法に基づく市街化調整区域の線引き当時に、本件12土地が建物の建付地ではなかった等の事情により宅地ではなく雑種地とされたのに対して、本件12比準地の地目は、市街化調整区域の線引き当時に建物の敷地であったことから宅地とされたものである。そして、本件12土地は、都市計画法に基づく市街化調整区域に編入されて以降、都市計画法第43条第1項の規定に基づく、県知事による建築等の許可を受けた土地ではないから、同項による建築制限を受ける土地と判断される。
 なお、請求人らは、本件12土地に存在する本件12建物が都市計画法施行前から建っていたと答述するが、これを認めるに足る証拠の提出がないから、この点に関する答述は採用できない。
 そうすると、本件12土地の評価に当たり比準する本件12比準地との差異の斟酌については、評価基本通達27−5に定める家屋が全く建築できない場合等の区分地上権に準ずる地役権の割合50/100を準用するのが相当と判断される。
(c)したがって、本件12土地の自用地としての評価額は、本件12比準地の自用地としての単位当り相続税評価額から本件12土地の建築制限による斟酌割合50/100を控除して求めることとなる。
(d)また、請求人らは、本件12土地の自用地としての相続税評価額を算定するに当たり宅地造成費を控除すべき旨主張するが、本件12土地及び本件12比準地は、同じ高さで、形状等に差異は認められないから、本件12土地の相続税評価額を求めるに当たり、本件12比準地の相続税評価額から宅地造成費を控除する必要性は認められない。
 なお、この点に関し請求人らは、R市が宅地造成費を控除している取扱いと異なることは公正でない旨主張するが、本件12土地の評価基本通達の定めに基づく相続税評価額は、本件12土地のR市の固定資産税評価額の算定方法に影響されるものではなく、宅地造成費を控除する必要性については本件12土地の現況において判断されるものであり、このことは上記のとおりであるから、請求人らの主張には理由がない。
(e)一方、原処分庁は、本件12土地の相続税評価額を求めるに当たり、本件12比準地の価格に奥行距離に係る補正の格差として、0.99を乗じているが、上記aの(b)のとおり、本件12土地と本件12比準地に奥行距離の差は認められないから、奥行距離に係る補正の必要性は認められない。したがって、この点に関する原処分庁の主張は採用できない。
(f)以上により本件12土地の評価基本通達に基づく自用地としての1平方メートル当りの相続税評価額は、別表9のとおり72,935円となる。
c 本件12土地の利用区分による評価の調整について
 請求人らは本件12土地の全部が貸宅地である旨主張し、原処分庁は一部賃借権が設定されている土地である旨主張するので、以下、この点について検討する。
(a)本件被相続人とW及びX社との間には、本件12土地について、本件相続開始日において、本件12土地賃貸借契約1及び本件12土地賃貸借契約2による借地借家法第25条による土地の一時使用賃貸借契約が締結されていた事実が認められるものの、建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約等が締結されていた事実は認められず、加えて、本件被相続人の所得税の不動産所得の申告内容からは、貸宅地に係る収入の計上も認められない。
 したがって、本件12土地が貸宅地(借地権の目的となっている土地)であったとする事実は認められないから、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(b)一方、本件12土地の内396平方メートルは、本件12土地賃貸借契約1及び本件12土地賃貸借契約2のとおり、賃借権の目的となっている部分と認められる。
 この点に関し、原処分庁は、賃貸借の目的となっていることによる減額として、自用地としての価額から100分の5を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価する旨主張する。
 しかしながら、賃借権の目的となっている土地については、評価基本通達86《貸し付けられている雑種地の評価》及び同通達87《賃借権の評価》の定めにより、その土地の自用地としての価額から賃借権の価額を控除して相続税評価額を求めることになるが、本件12土地賃貸借契約1及び本件12土地賃貸借契約2のとおり、本件相続開始日における上記賃借権の残存期間は5年以下であるから、本件12土地の当該賃貸借部分の相続税評価額は、評価基本通達86の定めのとおり、その自用地としての価額から100分の2.5を乗じて計算した金額を控除して計算した金額によって評価することが相当と認められる。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張は採用できない。
(c)以上のとおり、本件12土地については、一部が賃借権の目的となっている雑種地となるから、本件12土地の相続税評価額は、別表10のとおり、33,995,003円となる。
(B)本件13土地及び本件14土地について
a 認定事実
 請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(a)平成10年度土地・家屋総合名寄帳登録事項証明書には、本件13土地について、現況地目雑種地、課税地積145平方メートル及び固定資産税評価額3,067,830円と記載されているほか、本件13土地に隣接する本件相続の相続財産であるR市r町g番に所在する土地について、現況地目宅地、課税地積267平方メートル及び固定資産税評価額35,257,350円と記載されている。
(b)本件13土地の北西側で接するR市r町k番及び同g番の土地(以下「k番及びg番土地」という。)は、別表15のとおり、市道○○号線にその北西側で面し、北東側では、市道○○号線と接合する道路(以下「北東側道路」という。)に面する角地であり、本件13土地及び本件14土地は、いずれもその北東側道路に面している。
(c)北東側道路には、固定資産評価基準の定めに基づく平成9基準年度の宅地価格として98,000円/平方メートルが付されているが、同道路を含む地区の平成10年度の固定資産税の価格は、地価下落傾向があることによる特例措置として、R市長の判断により修正したものを固定資産税の価格とすることとされている。これにより、平成9基準年度の価格に時点修正率(平成9年度95/100、平成10年度100/100)を乗ずると、同道路に付される価格は、93,100円/平方メートルとなる。
(d)本件被相続人は、R市r町j番の宅地499.17平方メートル(150坪)を、一時貸材料置場として利用させることを目的に、賃料を1か月当り240,000円、賃貸期間を平成10年9月31日から平成11年6月30日までとする旨の借地借家法第25条による一時使用賃貸借契約(以下「本件13土地賃貸借契約」という。)をX社との間で締結し、平成10年7月31日付で土地賃貸借借契約書を作成した。
 ところで、上記のR市r町j番という地番は存在せず、本件13土地賃貸借契約で真に賃貸の目的としている土地は、X社が実際に使用していたR市r町k番(地積26平方メートル)、同所g番(地積267平方メートル)及び同所m番(地積145平方メートル)の3筆(合計地積438平方メートル)で、上記土地賃貸借契約書の土地の表示は誤りであると認められる。
(e)本件13土地には、本件相続開始日において、軽量鉄骨造、スレート葺、平家建て建物2棟(いずれの建物も未登記かつ固定資産税に係る家屋課税台帳に未登録。以下「本件13建物」という。)が存している。
(f)請求人らは、当審判所に対して、本件13建物について次のとおり答述している。
 本件13建物の建築主は、Z建設(住所不明)で、建築時期、建物の構造、面積及び間取り等は不明であるが、Gが、将来の紛争を避けるため、平成13年ころにX社から対価なしで取得した。
 また、本件13建物が市街化調整区域内に建築されているのは、都市計画法施行前に建てられたからである。
(g)本件被相続人は、R市r町n番等の宅地1652.89平方メートル(500坪)を、一時貸資材置場として利用させることを目的に、賃料を1か月当り800,000円、賃貸期間を平成10年9月31日から平成11年6月30日までとする旨の借地借家法第25条による一時使用賃貸借契約(以下「本件14土地賃貸借契約」という。)をd株式会社との間で締結し、平成10年7月31日付で土地賃貸借契約書を作成した。
b 本件13土地及び本件14土地の自用地としての評価額について
(a)本件13土地及び本件14土地は、本件12土地と同様の理由により地目が雑種地となっているから、その評価額は宅地に比準した価額によって算出するのが相当である。
 そして、本件13土地及び本件14土地は、市道○○号線に面しておらず、北東側道路のみに面していることから、本件13土地及び本件14土地の相続税評価額を求めるために採用する比準すべき土地は、同じ接道条件であるR市r町g番に所在する土地の内、南側を占める部分の宅地(以下「本件13・14比準地」という。)とすることが相当と認められる。
 そして、北東側道路には、上記aの(c)のとおり、固定資産評価基準の定めに基づく価格が付されており、本件13・14比準地の平成10年度の固定資産税価格に相当する価格は、93,100円/平方メートルである。
(b)本件13土地及び本件14土地の地目は雑種地であるが、この理由については本件12土地の場合と同様であるから、本件13土地及び本件14土地についても、都市計画法第43条第1項による建築制限を受ける土地である。
 なお、本件13土地の上には都市計画法施行前から本件13建物が建っていたという上記認定に反する請求人らの答述があるが、これを認めるにたる証拠の提出がないので採用できない。
 そうすると、本件12土地と同様に、本件13土地及び本件14土地の評価に当たり比準すると本件13・14比準地との差異の斟酌についても、家屋が全く建築できない場合等の区分地上権に準ずる地役権の割合50/100を準用するのが相当である。
(c)これに対し、原処分庁は、本件13土地及び本件14土地の評価に当たり、比準すべき土地として、R市r町k番又はg番所在の宅地(単位当り固定資産税評価額132,050円/平方メートル)を採用していると認められるが、これらの土地は、市道○○号線と北東側道路の両方に面する土地で、本件13土地及び本件14土地とは接道条件が異なるから、本件13土地及び本件14土地の比準地として採用することは相当ではない。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張は採用できない。
(d)また、請求人ら及び原処分庁は、ともに本件13土地及び本件14土地の自用地としての相続税評価額算定に当たり、宅地造成費を控除すべき旨主張するが、本件13・14比準地は市道○○号線の南側に約7メートル入ったところに位置し、順に南側へ本件13土地と本件14土地が所在しており、これらの土地は、等高で平坦であり、形状等に差異は認められない。
 したがって、本件13土地及び本件14土地の相続税評価額を求めるに当たり、本件13・14比準地の相続税評価額から宅地造成費を控除する必要は認められないから、この点に関する請求人ら及び原処分庁の主張には理由がない。
 なお、請求人らのR市の取扱いと異なることは公正でないとする主張については、上記(A)のbの(d)の本件12土地の場合と同様であるから、その主張には理由がない。
(e)さらに請求人らは、本件13土地及び本件14土地の自用地としての相続税評価額の算定に当たり、無道路地としての斟酌をすべき旨主張するが、上記aの(b)のとおり、本件13土地及び本件14土地及び本件13・14比準地は、ともに北東側道路に接しているから無道路地としての斟酌を行う必要は認められない。
 この点に関し、請求人らは、R市の取扱いと異なることは公正でない旨主張するが、本件13土地及び本件14土地の評価基本通達の定めに基づく評価は、本件13土地及び本件14土地のR市の固定資産税評価額の算定方法に影響されるものではなく、本件13・14比準地の価格から無道路地の斟酌を行う必要がないことは、上記のとおりであるから、請求人らの主張には理由がない。
(f)以上により、本件13土地及び本件14土地の評価基本通達に基づく自用地としての1平方メートル当りの相続税評価額は、別表11のとおり51,205円となる。
c 本件13土地及び本件14土地の利用区分による評価の調整について
 請求人らは、本件13土地の全部が貸家建付地であると主張し、原処分庁は、本件13土地及び本件14土地の全部が賃借権の目的となっている土地である旨主張するので、以下、この点について検討する。
(a)本件被相続人とX社との間には、本件相続開始日において、本件13土地賃貸借契約のとおり、借地借家法第25条による土地の一時使用賃貸借契約が締結されていた事実は認められるが、建物の賃貸を目的とする賃貸借契約が締結していた事実は認められず、加えて、本件被相続人の所得税の不動産所得の申告内容からは、貸家建付地に係る収入の計上も認められない。
 したがって、本件13土地を貸家建付地(借家権の目的となっている建物の敷地の用に供されている土地)であるとする事実はないから、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(b)一方、本件13土地及び本件14土地は、上記aの(d)及び(g)の本件13土地賃貸契約及び本件14土地賃貸契約のとおり、賃借権の目的となっていると認められるから、本件12土地の場合と同様、自用地としての価額から賃借権の価額を控除して求めることになる。そして、本件13土地及び本件14土地に係る賃借権の本件相続開始日における残存期間は5年以下であるから、本件13土地及び本件14土地の相続税評価額は、その自用地としての価額から2.5/100を乗じて計算した金額を控除して計算した金額によって評価するのが相当である。
 この点に関し、自用地としての価額から5/100を乗じて計算した金額によって評価すべきとする原処分庁の主張に理由がないことについては本件12土地の場合と同様である。
(c)以上のとおり、本件13土地及び本件14土地については、賃借権の目的となっている雑種地となるから、その相続税評価額は、別表12のとおり、それぞれ7,239,106円及び8,886,627円となる。
(ニ)以上により、本件甲土地、本件乙土地及び本件丙土地の相続税評価額は、別表13の〔2〕欄のとおりとなる。
ニ 課税価格及び納付すべき税額について
 以上の結果、請求人らの課税価格は、別表14の〔8〕欄のとおり、それぞれGが○○○○円、Hが○○○○円となり、納付すべき税額は別表14の〔12〕欄のとおり、それぞれGが75,847,100円、Hが74,974,800円となり、これらの金額は、いずれも本件更正処分の金額に満たないから同処分の一部を取り消すべきである。

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(2)本件賦課決定処分について

 本件更正処分が上記(1)のニのとおりその一部が取り消されることに伴い、請求人らの過少申告加算税の計算の基礎となる税額は、それぞれGが42,340,000円、Hが42,060,000円となるが、これらの税額の計算の基礎となった事実については、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて過少申告加算税の額を算定すると、それぞれGが4,818,000円、Hが4,967,000円となり、これらの金額は本件賦課決定処分の金額に満たないので、本件賦課決定処分はその一部を取り消すべきである。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

別紙 相続税法第12条《相続税の非課税財産》

 次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
 第2号(本文及び以下において「法2号」という。)
 墓所、霊びょう及びこれらに準ずるもの
 第3号(本文及び以下において「法3号」という。)
 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
相続税法第22条《評価の原則》
 この章で特別の定めのあるものを除く外、相続、遺贈又は贈与に因り取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による。
相続税法第23条《地上権及び永小作権の評価》
 地上権及び永小作権の価額は、その残存期間に応じて算定した金額によるものとし、残存期間が10年以下の場合は、土地の時価に100分の5を乗じて算定する。
相続税法施行令第2条《相続又は遺贈に係る財産につき相続税を課されない公益事業を行う者の範囲》
 相続税法第12条第1項第3号に規定する宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行なう者は、もっぱら社会福祉法第2条に規定する社会福祉事業、更生保護事業法第2条第1項に規定する更生保護事業、学校教育法第1条に規定する学校を設置し、運営する事業その他の宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業で、その事業活動により、文化の向上、社会福祉への貢献、その他公益の増進に寄与するところが著しいと認められるものを行う者とする。
租税特別措置法第40条《国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税》
 第1項
 民法第34条の規定により設立された法人その他の公益を目的とする事業を営む法人に対する財産の贈与又は遺贈で当該贈与又は遺贈が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することその他の政令で定める用件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものについては、所得税法第59条《贈与等の場合の譲渡所得等の特例》第1項第1号の規定の適用については、当該財産の贈与又は遺贈がなかったものとみなす。
 第3項
 本条第1項の承認をしたとき、若しくは、当該承認をしないことを決定したときは、その旨を当該承認を申請した者に通知しなければならない。
相続税法基本通達(昭和32年3月1日付直資第22号国税庁長官通達、本文及び以下において「相続税基本通達」という。)
 12−1《「墓所、霊びょう」の意義》
 法2号に規定する「墓所、霊びょう」には、墓地、墓石、おたまやのようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件をも含むものとして取り扱う。
 12−3《「当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの」の意義》
 法3号に規定する「当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの」とは、その財産について、相続開始の時において当該公益を目的とする事業の用に供することに関する具体的計画があり、かつ、当該公益を目的とする事業の用に供される状況にあるものをいうものとする。
贈与税の非課税財産(公益を目的とする事業の用に供する財産に関する部分)及び公益法人に対して財産の贈与等があった場合の取扱いについて(昭和39年6月9日付直審(資)第24号ほか国税庁長官通達、ただし、平成12年6月23日付課資2−258による改正前のものをいい、本文及び以下において「個別通達1」という。)
 第1公益事業用財産の非課税に関する取扱い
 2(公益の増進に寄与することが著しいと認められる事業)
 公益を目的とする事業のうち、「公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業」に該当するものについて事業の種類、規模及び運営についての各要件を具体的に定め、宗教の普及その他教化育成に寄与することとなる事業は、事業の種類に関する要件を満たし、事業の内容に応じ、その事業を営む地域又は分野において社会的存在として認識される程度の規模を有しており、かつ、その事業を行うために必要な施設その他の財産を有している場合には、事業規模の要件を満たす。
 3(専ら公益の増進に寄与するところが著しい事業を行う者)
 相続税法施行令第2条に規定する「もっぱら(以下中略)公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業を行う者」とは、その者が個人である場合には、公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業のみを専念して行なう者をいう。
 なお、個別通達1は、相続税法第21条の3《贈与税の非課税財産》第1項第3号に規定する非課税財産についての取扱いを定めたものであるが、同号に規定する公益を目的とする事業を行う者で、一定の要件に該当するものの範囲についての相続税法施行令第4条の5《贈与財産につき贈与税を課されない公益事業を行う者の範囲》の規定は、相続税法施行令第2条を準用していることから、同条の扱いをも示している部分があるものと解されている。
被相続人の意思に基づき公益法人を設立する場合等の相続税の取扱いについて(昭和35年10月1日付直資第90号国税庁長官通達、本文及び以下において「個別通達2」という。)
 1(公益法人の設立の許可申請中に相続の開始があった場合の取扱い)
 公益法人の設立許可申請中に、その公益法人に財産を提供しようとしていた者が死亡したため、その後、設立の許可により公益法人に帰属することによる財産については、被相続人から直接公益法人に遺贈があったと同様に取扱うことができる。
 2(公益法人の設立の許可申請前に相続の開始があった場合の取扱い)
 被相続人の正式遺言がない場合であっても、その相続人が被相続人の意思に基づいて相続財産を提供することにより公益法人を設立する場合は、被相続人が公益法人設立のため財産を提供する意思を有していたことが明らかである等の一定の要件を具備するときは、その公益法人に帰属した財産についても、その公益法人が被相続人から直接遺贈により取得したものと同様に取り扱うことができる。
 3(被相続人の意思に基づくかどうかの判定)
 個別通達2の2の「被相続人が公益法人設立のため財産を提供する意思を有していたことが明らかである」かどうかは、被相続人から指示を受けた者が、設立準備のための作業を進めていたこと、被相続人に係る寄附行為があること、被相続人の日記書簡等にその旨が記載されていること、その他被相続人の意思を立証することができる生前の事実存否により判定する。
 4(既設の公益法人に対し贈与があった場合の準用)
 個別通達2の1から3までの取扱いは、既に設立されている公益法人に対する財産の贈与で、個別通達2の1又は2に準ずるものについて準用する。
地方税法第388条《固定資産税に係る自治大臣(現総務省。以下同じ。)の任務》
 第1項
 自治大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(本文及び以下において「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。
地方税法第403条《固定資産の評価に関する事務に従事する市町村の職員の任務》
 第1項
 市町村長は、固定資産評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならない。
地方税法附則第17条の2《平成10年度又は平成11年度における土地の価格の特例》
 第1項
 地方税法第349条《土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準》は、原則として、固定資産税の評価額は、基準年度の価格を3年間据え置く旨規定しているが、地価の下落傾向がみられる場合には、市町村長の判断により、修正した価格を課税標準とすることができる。
財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資第56号ほか国税庁長官通達、ただし、平成11年3月10日付課評2−2による改正前のものをいい、本文において「評価基本通達」という。)
 6《この通達の定めにより難い場合の評価》
 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
7《土地の評価上の区分》
 宅地、山林、雑種地等の地目の別に評価する。
20《不整形地、無道路地、間口が狭小な宅地等、がけ地等の評価》
 無道路地の価額は、原則として、実際に利用している路線に接する宅地と併せて評価した価額から無道路地以外の宅地の価額に相当する価額を控除した価額を基とし、その近傍の宅地との均衡を考慮して、その価額からその価額の100分の30の範囲内において相当と認める金額を控除した価額によって評価する。
(注)無道路地とは、路線に接しない宅地をいう。
24《私道の用に供されている宅地の評価》
 私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しない。
27−5《区分地上権に準ずる地役権の評価》
 区分地上権に準ずる地役権の価額は、その区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の自用地としての価額に、その区分地上権に準ずる地役権の設定契約の内容に応じた土地利用制限率を基とした割合(以下「区分地上権に準ずる地役権の割合」という。)を乗じて計算した金額によって評価する旨定め、家屋の建築が全くできない場合の区分地上権に準ずる地役権の割合を、100分の50又はその区分地上権に準ずる地役権が借地権であるとした場合にその承役地に適用される借地権割合のいずれか高い割合とし、また家屋の構造、用途等に制限を受ける場合の区分地上権に準ずる地役権の割合を100分の30とする。
44《評価単位》
 山林の評価単位は、1筆の山林ごとに評価する。
45《評価の方式》
 純山林及び中間山林は、倍率方式によって、評価する。
48《中間山林の評価》
 中間山林の価額は、その山林の固定資産税評価額に国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。
81《評価単位》
 利用の単位となっている一団の雑種地ごとに評価する。
82《雑種地の評価》
 雑種地の価額は、原則として、その雑種地と状況が類似する付近の土地について、この評価基本通達の定めるところにより評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その土地とその雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した額に、その雑種地の地積を乗じて計算した金額によって評価するが、その雑種地の固定資産税評価額に、状況の類似する地域ごとに、その地域にある雑種地の売買実例価額、精通者意見等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算によって評価できるものとし、その倍率が定められている地域にある雑種地の価額は、その雑種地の固定資産税評価額に、その倍率を乗じた金額によって評価する。
86《貸し付けられている雑種地の評価》
(1)賃貸借の目的となっている雑種地の価額は、原則として、同通達82の定めにより評価した雑種地の価額(以下「自用地としての価額」という。)から、同通達87《賃借権の評価》の定めにより評価した賃借権の価額を控除した金額によって評価する
 ただし、地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権(例えば、賃借権の登記がされているもの、設定の対価として権利金その他の一時金の授受のあるもの、堅個な構築物の所有を目的とするもの。)以外の賃借権(以下「地上権に準ずる賃借権以外の賃借権」という。)であるときは、その雑種地の自用地としての価格から、その賃借権の残存期間に応ずる割合(5年以下の場合100分の5)の2分の1に相当する割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価する。
87《賃借権の評価》
 雑種地に係る賃借権の価額は、原則として、その賃貸借契約の内容、利用の状況を勘案して評価した価額によって評価する。
 ただし、地上権に準ずる借地権以外の賃借権の価額は、その雑種地の自用地としての価額に、その賃借権の残存期間に応じその賃借権が地上権であるとした場合に適用される相続税法第23条に規定する割合の2分の1に相当する割合を乗じて計算した金額によって評価する。

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