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(平16.1.26裁決、裁決事例集No.67 758頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、消費税法第37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項の規定の適用を受ける審査請求人(以下「請求人」という。)が営む既製服プレス加工業が、同法施行令(以下「施行令」という。)第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第5項に規定する第五種事業となるのか、それとも第四種事業となるのかを争点とする事案である。

(2)審査請求に至る経緯

 審査請求(平成15年5月16日請求)に至る経緯等は、別表のとおりである(以下、消費税及び地方消費税を「消費税等」、各更正処分を「本件各更正処分」及び過少申告加算税の各賦課決定処分を「本件各賦課決定処分」という。)。

(3)基礎事実

(請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても認められる事実)
 別紙「争点整理表」の2「争いのない事実」のとおりである。

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2 争点

 別紙「争点整理表」の3「争点」のとおりである。

3 争点に対する当事者双方の主張

(1)原処分庁

 原処分は、別紙「争点整理表」の4「争点に対する当事者双方の主張」の「原処分庁の主張」欄のとおり適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。

(2)請求人

 原処分は、別紙「争点整理表」の4「争点に対する当事者双方の主張」の「請求人の主張」欄のとおり違法であるから、その全部の取消しを求める。

4 判断

(1)本件各更正処分について

イ 中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例(以下「簡易課税制度」という。)
 課税事業者が、基準期間における課税売上高が2億円以下である課税期間について、簡易課税制度選択届出書を所轄税務署長に届け出た場合には、実際の仕入れに係る消費税額を計算することなく、その課税期間の課税標準額に対する消費税額からその課税期間の売上に係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額に、施行令第57条に規定するその事業者の営む事業の種類の区分に応じたみなし仕入率(第一種事業(卸売業)90%、第二種事業(小売業)80%、第三種事業(製造業等)70%、第五種事業(サービス業等)50%、第四種事業(その他の事業)60%)を乗じて計算した金額を仕入れに係る消費税額とみなして控除することができることとされている。
 しかしながら、消費税法及び施行令には、具体的にどの業種が何種事業に該当することになるかについては、格別規定がないため、社会通念に照らし判定することとなる。
ロ 消費税法基本通達13−2−4《第三種事業及び第五種事業の範囲》
 製造業等である第三種事業とサービス業等である第五種事業の範囲は、おおむね日本標準産業分類(平成14年10月1日施行前のものをいう。以下同じ。)の大分類に掲げる分類を基礎として判定する旨、また、製造業等に該当する事業であっても、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業は、第四種事業に該当する旨定められている。
 日本標準産業分類は、「統計調査に用いる産業分類並びに疾病、傷害及び死因分類を定める政令(昭和26年政令第127号)」に基づき、統計調査の結果を産業別に表章する場合に用いる分類として定められたものであり、日本の産業に関する統計の正確性と客観性を保持し、産業統計の信頼性を高めるために広く定着しているものであるといえ、その分類は社会通念に基づく客観的なものであると認められるので、事業の範囲を判定するのに当たり日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎とする旨の消費税法基本通達13−2−4は、当審判所においても相当と認める。
ハ そこで、請求人の営む事業(以下「本件事業」という。)が、第五種事業に該当するのか、それとも第四種事業に該当するのかを検討すると、次のとおりである。
(イ)一般的に既製服は、〔1〕裁断、〔2〕縫製、〔3〕ボタン付け、〔4〕マトメ、〔5〕検針、〔6〕プレス(アイロンかけ)、〔7〕値札等の取付けの各工程を経て、商品が製造されるが、請求人は、既製服の製造工程のうちの一部を既製服製造業者から請け負い、独立した事業として営んでいる。
 この場合、本件事業が簡易課税制度における第五種事業に該当するのか、それとも第四種事業に該当するのかは、請負元の業種業態により判断するのではなく、請求人の業態から判断することが相当であるところ、本件事業の実際の作業は、上記工程のうちの〔4〕までの工程を経た製品を請負元から受け取った上、〔5〕の検針、〔6〕のプレス(アイロンかけ)及び〔7〕の値札等の取付けを行うことであるが、本件事業の主たる作業は、商品価値を高めるために請負元から受け取った製品のしわを取り除き、膨らみをもたせるために行う、〔6〕のプレス(アイロンかけ)による仕上げであると認められる。
(ロ)そして、日本標準産業分類の五十音索引表によれば、「プレス仕上げ業(既製服などの仕上げ工程として行うもの)」は、「大分類L−サービス業」の「中分類86−その他の事業サービス業」の「小分類869−他に分類されない事業サービス業」の「細分類8699他に分類されないその他の事業サービス業」に分類されており、本件事業の主たる作業であるプレス仕上げは、既製服の仕上げ工程として行われているものであるから、日本標準産業分類に記載されているプレス仕上げ業と同一の事業を意味するものと認められる。
 そうすると、本件事業はサービス業に該当し、簡易課税制度における事業区分は第五種事業と認められる。
 したがって、本件事業は第四種事業であるとの請求人の主張には理由がない。
ニ 以上のとおり、本件事業は、簡易課税制度における第五種事業に該当するので、平成11年5月1日から平成12年4月30日まで、平成12年5月1日から平成13年4月30日まで及び平成13年5月1日から平成14年4月30日までの各課税期間に係る控除対象仕入税額を100分の50のみなし仕入率を適用して、これに基づき同各課税期間の消費税等の納付すべき税額を計算すると、本件各更正処分の金額と同額となるので、本件各更正処分はいずれも適法である。

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(2)本件各賦課決定処分について

 本件各更正処分は、上記(1)のとおり適法であり、これにより納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、同条第1項及び地方税法附則第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づいてされた本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

別紙 争点整理表

1 争われている原処分
 平成14年12月20日付でされた平成11年5月1日から平成12年4月30日まで、平成12年5月1日から平成13年4月30日まで及び平成13年5月1日から平成14年4月30日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分
2 争いのない事実
(1)本件各課税期間において、審査請求人(以下「請求人」という。)が営む事業(以下「本件事業」という。)の作業内容は次のとおりである。
イ 検針
ロ スチームボックス(人体ボックス)における蒸気かけ
ハ アイロンかけ
ニ 値札、補修布及び注意書の取付け
ホ ビニール袋かけ納品
(2)請求人は、消費税簡易課税制度選択届出書を平成7年6月30日に原処分庁に提出している。
(3)請求人の本件各課税期間に係る各基準期間の課税売上高は、いずれも2億円以下である。
3 争点
 請求人の営む事業が、消費税法施行令(以下「施行令」という。)第57条第5項に規定する第四種事業に該当するか否か。
4 争点に対する当事者双方の主張
原処分庁の主張
 本件事業は、以下の理由により、第五種事業に該当する。
 簡易課税制度の公平性を図るため、納税者の営む事業が施行令第57条第5項に規定する何種事業となるかの判定に当たっては、日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎としている。
 本件事業は、事業内容から既製服のプレス仕上げ業に該当すると認められ、日本標準産業分類及び日本標準産業分類五十音索引表によれば、「大分類−サービス業、細分類−他に分類されないその他の事業サービス業」に分類されるので、本件事業は施行令第57条第5項に規定する第五種事業に該当する。
請求人の主張
 本件事業は、以下の理由により、第四種事業に該当する。
 何種事業となるかの判定に当たっては、日本標準産業分類を絶対の基準とするのでなく、営む事業の実態に即し判定すべきである。
 本件事業は、既製服製造業者より依頼を受け、既製服製造工程の一部であるプレス加工を営むものであり、本件事業は、加工賃等を対価とする役務の提供を行う事業に該当するから、第四種事業となる。
 日本標準産業分類の「プレス仕上げ業(既製服などの仕上げ工程として行うもの)」は、例えば、既製服の量販店が製造業者又は卸売業者より一括購入した商品を陳列販売前にプレス仕上げを施す場合、さらには今一度プレスする場合がこれに該当する。また、既製服などの「など」には、カッターシャツやエプロン等が含まれると解されるので、既製服製造の一工程である本件事業は、これには該当しない。

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