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(平17.4.1裁決、裁決事例集No.69 200頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、法人税法(平成15年法律第8号による改正前のもの。以下同じ。)第141条《外国法人に係る各事業年度の所得に対する法人税の課税標準》第1号に掲げる外国法人(以下「一号法人」という。)である審査請求人(以下「請求人」という。)が、同条第4号に掲げる外国法人(以下「四号法人」という。)であった期間に係る匿名組合の収益分配金(以下「匿名組合分配金」という。)の支払を受けた際に源泉徴収された所得税の額が、請求人の法人税の申告上、法人税の額から控除する所得税の額に該当するか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成15年1月1日から平成15年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、提出期限(法人税法第75条の2《確定申告書の提出期限の延長の特例》第1項の規定により1月間延長されたもの。)までに申告した。

項目/区分確定申告更正処分等
所得金額○○○○円○○○○円
納付すべき税額○○○○○○○○
過少申告加算税2,189,000

ロ A税務署長は、これに対し、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成16年5月31日付で、上記イの表の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として、平成16年7月28日に審査請求をした。

(3)関係法令等

 関係法令等の要旨は、別紙に記載のとおりである。

(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成12年6月22日にB国C島において、同地を本店所在地として設立された法人である。
 なお、請求人は、設立以来、国内に支店、工場など法人税法第141条第1号から第3号までに該当する恒久的施設(以下「PE」という。)を有しておらず、四号法人に該当していたが、平成15年1月1日にD支店を開設したことから、同日以後は、一号法人に該当することとなった。
ロ 請求人は、平成12年12月22日付で、内国法人であるE社との間に同社を営業者、請求人を唯一の匿名組合員とする匿名組合契約を締結し(以下、当該匿名組合契約を「本件匿名組合契約」という。)、平成13年1月5日に、本件匿名組合契約に基づく出資を行った。
ハ 請求人は、平成13年1月5日から平成13年3月31日まで及び平成13年4月1日から平成14年3月31日までの各事業年度において、本件匿名組合契約に基づき受けた損失の分配額を、法人税法第141条第4号イ、同法第138条《国内源泉所得》第1号及び平成14年政令第104号による改正前の法人税法施行令(以下「旧施行令」という。)第177条《国内にある資産の所得》第1項第4号に規定する「国内にある資産の運用、保有若しくは譲渡により生ずる所得」に該当するとして、当該各事業年度の法人税の申告を行った。
ニ 平成14年度の税制改正により、旧施行令第177条第1項第4号の規定が削除され、旧施行令第184条《匿名組合契約等の範囲》が改定されたことにより、その匿名組合の出資者の人数にかかわらず、PEを有しない法人が平成14年4月1日以後に支払を受けるべき匿名組合分配金は、法人税法第141条第4号に規定する法人税の課税標準に含まれないこととなり、その支払を受ける際に所得税法第212条《源泉徴収義務》第1項の規定に基づく所得税の源泉徴収がされることによって、その課税関係を完結することとなった。
ホ 請求人は、本件匿名組合契約に係る平成14年4月1日から平成14年12月31日までを計算期間とする匿名組合分配金○○○○円(以下「本件匿名組合分配金」という。)について、平成15年1月16日に○○○○円及び同年2月14日に○○○○円と二回に分けて、源泉徴収に係る所得税として合計○○○○円(以下「本件所得税額」という。)を控除された後の金額をE社から受領した。
ヘ 平成14年4月1日から平成14年12月31日までの事業年度(以下「本件直前事業年度」という。)において四号法人に該当していた請求人は、上記ニの税制改正により、本件匿名組合分配金が法人税の課税標準に該当しないこととなったため、本件直前事業年度の法人税の申告はしていない。
 なお、請求人は、本件直前事業年度において、本件匿名組合分配金につき相手科目を未収金として収益計上する経理を行っている。
ト 請求人は、本件事業年度の法人税の確定申告において、本件所得税額に係る別表六(一)(所得税額の控除及びみなし配当金額の一部の控除に関する明細書)を添付の上、別表一(一)に、本件所得税額を本件事業年度の法人税の額から控除する所得税の額として記載している。
チ 原処分庁は、本件更正処分において、本件所得税額を法人税の額から控除する所得税の額から減額した。

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2 主張

(1)原処分庁

 原処分は、次の理由により適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 法人の各事業年度において生じた所得については、本来、法人税だけが課されるものであるが、所得税法の規定により法人の利子・配当等の所得について所得税が課される場合があり、その場合には、既に所得税が課された所得に対して再度法人税が課される結果となることから、法人税法は、同法第68条《所得税額の控除》で、その所得税の額を法人税の額から控除することによりその調整を図っている。
 また、公益法人等や人格のない社団等を例にとると、これらの法人において、収益事業以外の事業又はこれに属する資産から生ずるものにつき、所得税法の規定により課された所得税の額の控除が認められていないのは、収益事業以外の事業又はこれに属する資産から生ずる所得については法人税が課されないため、その所得税の額を控除する必要がないことによるものである。
 このように、法人税法第68条の規定により法人税の額からの控除が認められる所得税の額は、法人税の課税対象所得となる所得に対して課されたものに限られている。
ロ また、上記イの考え方は、外国法人の場合について別異に取り扱う理由が何ら存しないことからして、法人税法第144条《所得税額の控除》で同法第68条を準用しているのは、同趣旨によるものであると解すべきである。すなわち、同法第141条により四つに区分された外国法人ごとに法人税の課税標準に算入される国内源泉所得に対して所得税が課された場合には、一つの所得に対して法人税と所得税の両方が課されることとなるため、その課された所得税を法人税から控除することを認めるものである。換言すれば、法人税の課税標準に算入されない国内源泉所得について課された所得税の額は、法人税の額からの控除が認められず、その所得税の額が当該国内源泉所得につきその外国法人が納付すべき最終税額となる。
 すなわち、法人税法第144条の「当該各号に掲げる国内源泉所得で所得税法の規定により所得税を課されるもの」とは、外国法人の各事業年度において法人税の課税標準に算入される所得をいい、同法第68条の準用により法人税の額から控除する所得税の額は、法人税の課税標準に算入される所得に対して課されるものを指すと解するのが相当であり、内国法人の場合と何ら異なるところはない。
ハ したがって、本件所得税額は、請求人が四号法人であった期間の国内源泉所得に係るものであり、本件事業年度の法人税の課税標準となる国内源泉所得に係るものではないことから、本件所得税額を「法人税の額から控除する所得税の額」から減額した本件更正処分は適法である。

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(2)請求人

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 請求人が、本件事業年度において法人税法第144条の規定の適用を受けるためには、その条文文理上、〔1〕請求人が同法第141条各号に掲げる外国法人であること、〔2〕対象となる所得が当該各号に掲げる国内源泉所得で、所得税法の規定により所得税を課されるものであること、及び〔3〕当該所得の支払を受けていることが要件になるところ、請求人はこれらの要件をすべて充足している。
ロ 原処分庁は、法人税法第144条の規定の適用を受けるに当たって、同条で準用する同法第68条の規定における二重課税の排除という趣旨だけを理由として、「所得税の額の控除の際に法人税課税を受けていること」という追加要件を課しているが、次のとおり、当該解釈は、条文の文理解釈及び税執行における実情のいずれにかんがみても妥当ではない。
(イ)法人税法第144条に規定する「当該各号に掲げる国内源泉所得で所得税法の規定により所得税を課されるもの」とは、所得税法第178条《外国法人に係る所得税の課税標準》の規定によりその外国法人が支払を受けるべき同法第161条《国内源泉所得》第1号の2から第7号まで及び第9号から第12号までに掲げる国内源泉所得を指すものであり、法人税の課税標準に算入される所得に限定されるものではない。
 さらに、法人税法第144条において、同法第68条を準用しているが、普通法人に準用されるべき規定は、同条第1項のみである。したがって、普通法人と課税所得の範囲が異なる公益法人等に適用すべき規定を例にとって、「法人税の額から控除する所得税の額は、法人税の課税標準に算入される所得に対して課されるものを指す」と解する原処分庁の主張は誤りである。
(ロ)法人税法第144条で準用する同法第68条の趣旨が二重課税の調整であることに異論はないが、内国法人に対する課税の現実は、二重課税の排除が完全になされているわけではない。すなわち、法人税法施行令第140条の2《法人税額から控除する所得税額の計算》では、利子及び配当等の所得については、元本所有期間に応じて所得税の額をあん分する旨規定されているが、それ以外の所得については、その全額を控除すべき旨定められており、現行制度において二重課税の調整の目的が完全に達成され得ないことは、内国法人に対する課税においても予定されている。したがって、外国法人に対する法人税の課税につき、ことさら二重課税の排除の趣旨を強制する理由はない。
ハ 以上のとおり、本件所得税額は法人税の額から控除する所得税の額に該当するから、これを認めなかった本件更正処分は違法である。

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3 判断

 本件は、一号法人に該当する請求人において、請求人が四号法人であった期間に係る匿名組合分配金で、法人税法第141条第4号に掲げる法人税の課税標準に該当しないものの支払を受けた際に源泉徴収された本件所得税額が、請求人の法人税の申告上、法人税の額から控除する所得税の額に該当するか否かを争点とするので、審理したところ、次のとおりである。

(1)本件更正処分について

イ 法令解釈
(イ)法人税法第144条は、別紙の1の(5)のとおり、外国法人が法人税の申告を行うに当たり、法人税の額から控除する所得税の額について、同法第68条の規定を準用する旨規定している。
 また、法人税法第68条は、別紙の1の(2)のとおり、内国法人の所得税の額の控除について規定している。
 そこで、法人税法第144条の規定に基づき、同法第68条第1項を読み替えると、「外国法人が各事業年度において同法第141条各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得で所得税法の規定により所得税を課されるもの(同法第161条第5号に掲げる配当で政令で定めるものを除く。)の支払を受ける場合には、これらにつき同法の規定により課される所得税の額(同法第161条第2号に掲げる対価につき同法第212条第1項の規定により徴収された所得税の額については、その額のうち、同法第215条《非居住者の人的役務の提供による給与等に係る源泉徴収の特例》の規定により同項の規定による徴収が行われたものとみなされる同法第161条第8号に掲げる給与、報酬又は年金に対応する部分の金額を除く。)は、政令で定めるところにより、当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する。」となる。
(ロ)ところで、法人税法第68条の規定は、内国法人の各事業年度の所得については、原則として、法人税を課すべきところ、法人であっても、利子・配当等の所得については、その支払を受ける際に所得税を源泉徴収される場合があることから、その源泉徴収された所得税の額を法人税の前払いとみて、法人税の額から控除することで、同一の所得に対して、法人税と所得税が二重に課されることを排除し、課税の公平性を担保することを目的とする趣旨であると解される。
 これは、法人税法第68条の規定を準用する同法第144条の規定についても同様であり、同条の規定は、外国法人の国内源泉所得につき法人税が課される場合において、その国内源泉所得について源泉徴収された所得税の額を法人税の額から控除することで、二重課税を排除する趣旨であると解される。
(ハ)また、法人税法第9条《外国法人の課税所得の範囲》は、別紙の1の(1)のとおり、外国法人に対しては、各事業年度の所得のうち同法第141条各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得に係る所得について、各事業年度の所得に対する法人税を課する旨規定し、同条は、別紙の1の(4)のとおり、外国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の所得のうち同条各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得に係る所得の金額とする旨規定している。このように、法人税法は、外国法人に対して課する法人税について、外国法人の国内における事業活動の態様による区分に応じて、その課税標準となる国内源泉所得の範囲を規定し、法人税の課税標準とならない外国法人の国内源泉所得で、所得税が源泉徴収されるものについては、その源泉徴収により課税関係を終了させる趣旨であると解される。
(ニ)上記(ロ)及び(ハ)の趣旨に照らして、法人税法第144条を解釈すると、同条に規定する「同法第141条各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得」とは、外国法人の態様による区分に応じて法人税の課税標準とされる国内源泉所得を定めた同条各号の国内源泉所得を引用したものであって、同法第144条に規定する「外国法人が各事業年度において同法第141条各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得で所得税法の規定により所得税を課されるものの支払を受ける場合」とは、「外国法人の区分に応じて法人税の課税標準とされる国内源泉所得で所得税法の規定により所得税を課されるものの支払を受ける場合」を意味していると解するのが相当である。
 なお、法人税法第144条に規定する「同法第141条各号に掲げる外国法人の区分に応じて当該各号に掲げる国内源泉所得」を、所得の支払を受けた時点における外国法人の当該各号に掲げる区分に応じた当該各号に掲げる国内源泉所得と解し、当該支払を受けた所得は、当該各号に掲げる外国法人の区分を異にする時期のもので、当該外国法人の区分においては当該各号に掲げる国内源泉所得として法人税の課税標準とされない所得であっても、支払を受けた時点の外国法人の区分において当該各号の国内源泉所得であれば、所得税の額の控除対象となる国内源泉所得に該当するとの解釈は、同条が外国法人につきその態様による区分に応じて法人税の課税標準となる国内源泉所得を定め、同法第144条がその結果生じた法人税と所得税の二重課税の調整をする趣旨であることに反するばかりか、同条の文理上においても、同法第141条各号に掲げる国内源泉所得を引用して規定されたことの解釈として合理性があるとは認められない。
 したがって、外国法人の法人税の申告において、法人税の額から控除する所得税の額は、法人税法第141条各号に掲げるいずれかの号に該当する外国法人として得た所得のうち、その該当する号に掲げられた国内源泉所得として法人税の課税標準とされる所得につき源泉徴収された所得税に限られ、外国法人が所得税を源泉徴収された国内源泉所得の支払を受けたとしても、当該国内源泉所得が法人税の課税標準とされないものである場合には、当該所得税については、法人税法第144条の規定は適用されず、法人税の額から控除することはできないと解される。
(ホ)請求人は、法人税法第68条の二重課税の排除という趣旨だけで、「所得税の額の控除の際に法人税を課されていること」という追加要件を課すのは同法第144条の文理解釈上妥当ではなく、また、法人税法施行令第140条の2は、利子・配当等以外の所得について、所有期間に応じた所得税の額のあん分を行わず、その全額を法人税の額から控除することを認めており、法人税法は、内国法人においても、二重課税の調整が完全に達成されないことを予定している旨主張する。
 しかしながら、上記(ロ)ないし(ニ)のとおり、法人税法第9条、第68条、第141条及び第144条の趣旨に照らして、同条の条文を文理解釈した結果、外国法人の各事業年度の法人税において、法人税の額から控除する所得税の額は、法人税の課税標準とされる所得に限られると解されるのであり、法の趣旨のみから追加要件を付加したものではない。
 また、法人税法施行令第140条の2は、公社債の利子、株式配当などの利子配当等については元本資産の譲渡が可能であり、その譲渡価額に利子配当等の金額が反映されることから、課税上の弊害を排除して二重課税の調整を徹底する趣旨で、法人税の額から控除する所得税の額につき、その元本所有期間に応じたあん分を行う旨規定し、それ以外の所得に係る所得税については、元本資産の譲渡ということが想定されていないため、その全額を控除対象とする旨規定しているのであるから、この規定により、法人税法が二重課税の調整が完全に達成されないことを予定していることにはならず、また、法人税法第144条の解釈に影響を与えるものでもない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
ロ 本件所得税額の法人税法第144条の規定の適用の可否について
(イ)匿名組合の損益の帰属時期について、法人税基本通達14−1−3《匿名組合契約に係る損益》は、匿名組合分配金についてその分配を現実に受けていない場合であっても、その計算期間の末日の属する事業年度の損益に算入する旨定めており、損益の帰属時期をその計算期間の末日の属する事業年度とすることは、当審判所においても合理的な定めであると認められる。
 そこで、当該通達に基づくと、本件匿名組合分配金は、その計算期間の末日が平成14年12月31日であることから、請求人の同日を含む事業年度、つまり、四号法人であった本件直前事業年度の収益として計上すべきものと認められる。
(ロ)ところで、本件匿名組合分配金は、所得税法第161条第12号に規定する匿名組合分配金として国内源泉所得に該当するものであり、本件所得税額は、同法第212条の規定に基づき、外国法人である請求人に対して支払われる際に源泉徴収された所得税であると認められる。
 そして、本件匿名組合分配金は、上記(イ)のとおり、請求人が四号法人であった本件直前事業年度の所得であり、法人税法第141条第4号に掲げる国内源泉所得ではないことから、法人税の課税標準の対象とはならず、本件所得税額が源泉徴収されたことで、本件匿名組合分配金に係る日本における課税関係は終了していると認められる。
(ハ)このように、本件所得税額は、請求人が四号法人であった本件直前事業年度に係る本件匿名組合分配金の所得につき源泉徴収された所得税であり、法人税法第141条第4号の規定において法人税の課税標準とされているものではない。
 したがって、上記イの解釈に照らせば、請求人の本件事業年度の法人税の申告において、本件所得税額を法人税から控除することは認められない。
ハ 以上のとおり、本件所得税額は、本件事業年度の法人税の額から控除する所得税の額とは認められないから、本件所得税額を法人税の額から控除する所得税の額から減額した本件更正処分は適法である。

(2)本件賦課決定処分について

 本件更正処分は、上記(1)のとおり適法であり、また、本件更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づき行われた本件賦課決定処分は適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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別紙 関係法令等の要旨

1 法人税法
(1)法人税法第9条は、外国法人に対しては、各事業年度の所得のうち同法第141条各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得に係る所得について、各事業年度の所得に対する法人税を課する旨規定している。
(2)法人税法第68条第1項は、内国法人が各事業年度において所得税法第174条各号《内国法人に係る所得税の課税標準》に規定する利子及び配当等の支払を受ける場合には、これらにつき同法の規定により課される所得税の額は、政令で定めるところにより、当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する旨規定している。
 また、法人税法第68条第2項は、同条第1項の規定は、内国法人である公益法人等又は人格のない社団等が支払を受ける利子及び配当等で収益事業以外の事業又はこれに属する資産から生ずるものにつき所得税法の規定により課される所得税の額については、適用しない旨規定している。
(3)法人税法第138条は、国内源泉所得とは、次の各号に掲げるものをいう旨規定し、同条第1号は、国内において行う事業から生じ、又は国内にある資産の運用、保有若しくは譲渡により生ずる所得(同条第2号から第11号までに該当するものを除く。)その他その源泉が国内にある所得として政令で定めるものと規定している。
 また、法人税法第138条第11号は、国内において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約(これに準ずる契約として政令で定めるものを含む。)に基づいて受ける利益の分配と規定している。
(4)法人税法第141条は、外国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の所得のうち次の各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得に係る所得の金額とする旨規定し、同条第1号は、国内に支店、工場その他事業を行う一定の場所で政令で定めるものを有する外国法人は、すべての国内源泉所得である旨規定している。
 また、法人税法第141条第4号は、同条第1号から第3号までに掲げる外国法人以外の外国法人は、同法第138条第1号に掲げる国内源泉所得のうち、国内にある資産の運用若しくは保有又は国内にある不動産の譲渡により生ずるものその他政令で定めるものである旨規定している。
(5)法人税法第144条は、同法第68条の規定は、外国法人が各事業年度において同法第141条各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得で所得税法の規定により所得税を課されるものの支払を受ける場合について準用し、この場合において、同法第68条第1項中「所得税の額」とあるのは「所得税の額(所得税法第161条第2号に掲げる対価につき同法第212条第1項の規定により源泉徴収された所得税については、その額のうち、同法第215条の規定により同項の規定による徴収が行われたものとみなされる同法第161条第8号に掲げる給与、報酬又は年金に対応する部分の金額を除く。)」と、同条第2項中「利子及び配当等」とあるのは「当該国内源泉所得」と読み替えるものとする旨規定している。
2 法人税法施行令
(1)法人税法施行令第140条の2第1項は、法人税法第68条の規定により法人税の額から控除する所得税の額は、次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める金額とする旨規定し、同項第1号は、公社債若しくは社債の利子、法人から受ける利益若しくは利息の配当等に対する所得税については、その元本を所有していた期間に対応するものとして計算される所得税の額、同項第2号は、同項第1号に掲げるもの以外の所得についてはその全額である旨規定している。
(2)法人税法施行令第184条は、法人税法第138条第11号に規定する政令で定める契約は、当事者の一方が相手方の事業のために出資をし、相手方がその事業から生ずる利益を分配することを約する契約とする旨規定している。
3 旧法人税法(平成14年法律第15号による改正前のもの)
 旧法人税法第138条は、国内源泉所得とは、各号に掲げるものをいう旨規定し、同条第1号は、国内において行う事業から生じ、又は国内にある資産の運用、保有若しくは譲渡により生ずる所得(同条第2号から第11号までに該当するものを除く。)その他その源泉が国内にある所得として政令で定めるものを規定している。
 また、旧法人税法第138条第11号は、国内において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約(これに準ずる契約を含む。)で政令で定めるものに基づいて受ける利益の分配を規定している。
4 旧施行令(平成14年政令第104号による改正前のもの)
(1)旧施行令第177条第4号は、国内において事業を行うものに対する出資につき、匿名組合契約に基づき利益を受ける権利に基づき、当該組合の資産の運用又は保有により生ずる所得は、旧法人税法第138条第1号に規定する国内にある資産の運用または保有により生ずる所得とする旨規定している。
(2)旧施行令第184条は、旧法人税法第138条第11号に規定する政令で定める契約は、次に掲げる契約とする旨規定している。
イ 事業者が10人以上の匿名組合員と締結している匿名組合契約
ロ 当事者の一方が相手方の事業のために出資をし、相手方がその事業から生ずる利益を分配することを約する契約で、当該事業を行う者が10人以上の出資者と締結しているもの
5 法人税基本通達
 法人税基本通達14−1−3は、法人が匿名組合員である場合におけるその匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額については、現実に利益の分配を受け、又は損失の負担をしていない場合であっても、匿名組合契約によりその分配を受け又は負担をすべき部分の金額をその計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入し、法人が営業者である場合におけるその匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額については、その利益の額又は損失の額から匿名組合契約により匿名組合員に分配すべき利益の額又は負担させるべき損失の額を控除した残額を当該事業年度の益金の額又は損金の額に算入する旨定めている。
6 所得税法
 所得税法第212条は、外国法人に対し、国内において所得税法第161条《国内源泉所得》第1号の2から第7号まで若しくは第9号から第12号までに掲げる国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない旨規定している。