ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.70 >> (平17.9.28裁決、裁決事例集No.70 34頁)

(平17.9.28裁決、裁決事例集No.70 34頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、外国の各航空会社の国内支店の指定貨物代理店として、航空貨物運送に関する運賃の精算業務等(以下「本件業務」という。)を行なっている審査請求人(以下「請求人」という。)が、〔1〕法人税の確定申告に当たり、本件業務に係る経費を繰上計上したことなどが、国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当するとしてされた重加算税の賦課決定処分と、〔2〕本件業務が消費税法第7条《輸出免税等》第1項各号に規定する取引(以下「輸出免税取引」という。)に該当しないとしてされた消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分を不服として、上記各処分の一部又は全部の取消しを求めた事案である。

トップに戻る

(2)審査請求に至る経緯

イ 法人税の当初申告
 請求人は、次の各事業年度(併せて、以下「本件各事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告した(以下「本件法人税各確定申告」という。)。
(イ)平成12年4月1日から平成13年3月31日までの事業年度(以下「平成13年3月期」という。)
(ロ)平成13年4月1日から平成14年3月31日までの事業年度(以下「平成14年3月期」という。)
(ハ)平成14年4月1日から平成15年3月31日までの事業年度(以下「平成15年3月期」という。)
ロ 消費税等の当初申告
 請求人は、次の各課税期間(併せて、以下「本件各課税期間」という。)の消費税等について、申告書に別表2の「当初申告」欄のとおり記載して、消費税等の還付を受けるための申告をした(以下「本件消費税等各還付請求申告」という。)。
(イ)平成12年4月1日から平成13年3月31日までの課税期間(以下「平成13年3月課税期間」という。)
(ロ)平成13年4月1日から平成14年3月31日までの課税期間(以下「平成14年3月課税期間」という。)
(ハ)平成14年4月1日から平成15年3月31日までの課税期間(以下「平成15年3月課税期間」という。)
ハ 修正申告
 請求人は、原処分の調査(以下「本件調査」という。)での原処分庁の指摘を受けて、平成15年12月18日に平成15年3月期の法人税の修正申告書を別表1の「修正申告」欄のとおり記載して申告した(以下「本件修正申告」という。)。
 本件調査における原処分庁の主な指摘事項は、次のとおりである。
(イ)E社日本支社S支店(以下「E社S支店」という。)に対する平成15年4月分の支払運賃22,342,564円(以下「本件E社向け支払運賃」という。)が、平成15年3月期に繰上計上されている。
(ロ)F社S支店からの次の割戻料が、平成15年4月1日から平成16年3月31日までの事業年度(以下「平成16年3月期」という。)に繰り延べられている。
A 平成15年2月分の割戻料1,075,060円(以下「本件F社S支店2月分割戻料」という。)
B 平成15年3月分の割戻料858,840円(以下「本件F社S支店3月分割戻料」といい、本件F社S支店2月分割戻料と併せて、以下「本件F社S支店割戻料」という。)
(ハ)F社T支店からの平成15年2月分の割戻料9,278,580円(以下「本件F社T支店2月分割戻料」という。)が、平成16年3月期に繰り延べられている。
ニ 処分
 原処分庁は、平成15年12月19日付で、次のとおりの各処分をした。
(イ)平成15年3月期の法人税について、上記ハの(イ)及び(ロ)の指摘事項については、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当するとして、別表1の「賦課決定処分」欄の「重加算税の額」欄記載のとおりとする重加算税の賦課決定処分及び上記ハの(ハ)の指摘事項については、別表1の「賦課決定処分」欄の「過少申告加算税の額」欄記載のとおりとする過少申告加算税の賦課決定処分
(ロ)本件各課税期間の消費税等について、本件業務は、外国の各航空会社の国内支店(居住者)に対する役務の提供と認められ、輸出免税取引に該当しないとして、別表2の「更正処分」欄記載のとおりとする各更正処分(以下「本件消費税等各更正処分」という。)及び別表2の「賦課決定処分」欄記載のとおりとする過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件消費税等各賦課決定処分」といい、本件消費税等各更正処分と併せて「本件消費税等各更正処分等」という。)
(ハ)本件消費税等各更正処分により納付すべきこととなる消費税等相当額を本件各事業年度の法人税の所得金額から減算する必要があることから、本件各事業年度の法人税について、所得金額を減額する各更正処分並びに上記(イ)の重加算税及び過少申告加算税について、別表1の「更正処分等」欄記載のとおりとする各変更決定処分(以下、この変更後の重加算税の賦課決定処分を「本件法人税重加算税賦課決定処分」という。)
ホ 異議申立て及び異議決定
 請求人は、本件法人税重加算税賦課決定処分及び本件消費税等各更正処分等を不服として、平成16年2月18日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成16年5月18日付で上記異議申立てをいずれも棄却するとの異議決定をした。
ヘ 審査請求
 請求人は、異議決定を経た後の本件法人税重加算税賦課決定処分及び本件消費税等各更正処分等に不服があるとして、平成16年6月17日に審査請求をした。

トップに戻る

(3)関係法令等

イ 本件法人税重加算税賦課決定処分に関する通則法の規定は、別紙1の1のとおりである。
ロ 本件消費税等各更正処分に関する消費税法(平成15年法律第8号による改正前のもの。以下、単に「消費税法」という。)及び消費税法施行令の各規定並びに消費税法基本通達の定めは、別紙1の2のとおりである。

(4)基礎事実(当事者間に争いがなく、当審判所の調査によっても認められる事実)

イ 請求人は、外国に主たる事務所(いわゆる本店)を有する次の各航空会社(以下「外国各航空会社」という。)の国内支店(以下「外国各航空会社国内支店」という。)の指定貨物代理店として、外国各航空会社と外国各航空会社に航空貨物運送を委託する業者(以下「混載業者」という。)との間において、本件業務を行っている。
(イ)F社のT支店、S支店、U支店、V支店及びW支店
(ロ)G社X支店
 なお、G社X支店との本件業務の一部については、H社を経由して行っている。
(ハ)J社T支店
(ニ)K社S支店
(ホ)E社S支店
(ヘ)L社S支店
ロ 本件法人税各確定申告における、本件業務に係る収入及び費用の、益金及び損金の額への算入状況は、次のとおりである。
(イ)G社への支払運賃の返戻額及び混載業者からの受取運賃を航空貨物取扱収入勘定に計上し、別表3の(1)の「〔3〕法人税確定申告計上額」欄の額を本件各事業年度の益金の額に算入した(以下、上記返戻額及び受取運賃を、それぞれ「運賃返戻受取額」、「市場運賃」という。)。
(ロ)F社からの受取割戻料及びL社からの受取手数料を支払貨物取扱割戻料勘定に計上し、別表3の(2)の「〔3〕法人税確定申告計上額」欄の額を本件各事業年度の益金の額に算入した(以下、上記受取割戻料及び受取手数料を、それぞれ「合意割戻料」、「合意手数料」という。)。
(ハ)F社、J社、G社、K社、E社及びH社への支払運賃、混載業者への運賃の返戻額及び本件業務をM社に委託した際の支払委託料をキックバック支払額勘定に計上し、別表3の(3)の「〔10〕法人税確定申告計上額」欄の額を本件各事業年度の損金の額に算入した(以下、上記支払運賃、返戻額及び支払委託料を、それぞれ「合意運賃」、「運賃返戻支払額」、「委託報酬」という。)。
(ニ)消費税法第2条第10号に規定する外国貨物に該当することとなる輸出許可後の航空貨物を国内の保税地域から出発地の空港まで輸送するために運送業者に支払った運賃(以下「保税運賃」という。)を支払運賃勘定に計上し、上記保税運賃以外の国内運送に係る支払運賃と併せて、別表3の(4)の「〔3〕法人税確定申告計上額」欄の額を本件各事業年度の損金の額に算入した。
ハ 請求人の提出した平成15年3月期の法人税の確定申告書(以下「本件法人税確定申告書」という。)では、本件E社向け支払運賃は、平成16年3月期の損金として計上すべきところ、別表3の(3)の番号〔5〕のとおり、平成15年3月期のキックバック支払額に繰上計上され、また、本件F社S支店割戻料(別表3の(2)の番号〔4〕)及び本件F社T支店2月分割戻料(別表3の(2)の番号〔5〕)を平成15年3月期の支払貨物取扱割戻料に計上すべきところ、平成16年3月期に繰り延べられている。
ニ 請求人は、平成9年3月31日、原処分庁に課税事業者選択届出書を提出しており、本件各課税期間は消費税の課税事業者となるところ、本件業務は、輸出免税取引に該当するとして、本件業務に係る収入を課税対象とせずに、上記(2)のロのとおり、本件消費税等各還付請求申告をした。

トップに戻る

2 争点

(1)本件法人税重加算税賦課決定処分の適法性(主として、本件E社向け支払運賃を繰上計上したこと及び本件F社S支店割戻料を繰り延べたことが、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当するか否か)(争点1)
(2)本件消費税等各更正処分の適法性(主として、本件業務が輸出免税取引に該当するか否か)(争点2)
(3)本件消費税等各賦課決定処分の適法性(争点3)

3 争点に対する当事者双方の主張

(1)争点1について

イ 原処分庁の主張
(イ)原処分庁の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 請求人の代表取締役Nは、本件調査を担当する職員(以下「本件調査担当職員」という。)に対して、要旨次のとおり申述した(以下、この申述に係る質問てん末書を「本件質問てん末書」という。)。
(A)平成15年5月7日に関与税理士であるP税理士が来社し、平成15年3月期の所得金額が○○○万円くらいになると聞き、長年取引していたF社がライバル会社のE社に合併され、先行きが不安であったことから、本件E社向け支払運賃を平成15年3月期に繰上計上した。
(B)また、本件F社S支店割戻料は、納付税額を少なくするために平成15年3月期の収益に計上しなかった。
B Nは、異議調査を担当した職員(以下「異議調査担当職員」という。)に対して、要旨次のとおり申述した。
(A)平成15年3月期は、長年の取引先であったF社がライバル会社であるE社に合併され、先行きが不安だったため、納付税額を少なくするため未払金を前倒しして計上したり、売掛金を繰り延べて決算の操作を行った。
(B)P税理士から連絡を受けた所得金額を基に、申告する金額の目安をP税理士に伝え、具体的な操作内容については、P税理士に任せた。
C P税理士は、異議調査担当職員に対して、要旨次のとおり申述した。
(A)上記AでNが本件調査担当職員に申述した時に、税務代理人としてその場に立ち会ったが、Nはありのままに申述している。
(B)請求人においては、毎期平均的に利益を出し、納税し続けることや、○○○万円以上の所得を確保することによる社会的信用を得る目的もあり、毎期の始めは先行きの不安もあって、ある程度の利益を確保しておき、売掛金等の期末処理において所得金額を調整している。
(C)平成15年3月期は、航空会社の合併による先行きの不安から、○○○万円の所得にこだわることはできず、会社を守るために所得金額の調整が必要であった。
(ロ)上記(イ)で述べたところによれば、請求人が意図的に経費を繰上計上したこと及び収入を繰り延べたことが明らかであり、この請求人の行為は、通則法第68条第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当する。
(ハ)そして、重加算税の額は、通則法第68条第1項の規定に従い正しく計算されているので、本件法人税重加算税賦課決定処分は適法に行われている。
ロ 請求人の主張
 本件E社向け支払運賃を繰上計上したこと及び本件F社S支店割戻料を繰り延べたことに関して、証ひょう書類を改ざんした事実など、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の事実はなく、本件法人税重加算税賦課決定処分は違法であるから、過少申告加算税相当額を越える部分の取消しを求める。

トップに戻る

(2)争点2について

イ 請求人の主張
(イ)本件業務は、外国各航空会社国内支店から外国貨物を運送する航空機のスペース(貨物運送枠)を仕入れ、これを混載業者等に販売するものであり、消費税法第7条第1項第3号に規定する貨物の輸送又は消費税法第7条第1項第5号、消費税法施行令第17条第2項第4号に規定する外国貨物に係る役務の提供に該当し、輸出免税取引に該当する。
 そして、平成4年12月10日付課消2−27「国際航空旅客輸送に係るキックバックの取扱いについて」(以下「本件取扱い」という。)においては、いわゆるキックバックは、輸出免税取引に係る対価の返還であるとされている。
(ロ)以上から、請求人の本件業務に係る収入(別表3の(1)の航空貨物取扱収入及び(2)の支払貨物取扱割戻料)は、輸出免税取引に係る売上げ及び対価の返還であり、本件業務に係る支払(別表3の(3)のキックバック支払額)は、輸出免税取引に係る仕入れとなるから、本件業務に係る請求人の収入は、消費税の課税対象とはならない。
(ハ)したがって、本件消費税等各更正処分は違法である。
ロ 原処分庁の主張
(イ)原処分庁の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 本件業務に係る請求人と外国各航空会社国内支店及び混載業者との取引形態は、次のとおりである。
(A)請求人は、外国各航空会社国内支店から〔1〕航空機内のスペース(貨物運送枠)を仕入れ、〔2〕混載業者に販売し、その差額(〔2〕−〔1〕)が請求人の利益となる。
(B)請求人は、外国各航空会社国内支店と混載業者との間で取次ぎをし、外国各航空会社国内支店から手数料を収受する。
(C)請求人は、外国各航空会社国内支店から〔1〕航空機内のスペース(貨物運送枠)を仕入れ、〔2〕混載業者に販売し、その差額(〔2〕−〔1〕)が請求人の利益となり、また、別途外国各航空会社国内支店から手数料(以下「別途手数料」という。)を収受する。
B 本件取扱いでは、要旨次のとおり定められている。
(A)正規の手数料のほかにいわゆるキックバックと称して授受されるものについては、旅行業者及び航空運送事業者のいずれも免税取引に係る対価の返還に該当するものとして取り扱って差し支えない。
(B)キックバックとは、〔1〕販売奨励金、〔2〕スケールメリット、〔3〕季節割引及び〔4〕広告宣伝補助等種々の名称のもとに授受される金銭であり、旅行業者と航空運送事業者との間で旅行業法第2条《定義》に規定する業務の遂行に伴い、航空運送事業者から旅行業者に支払われるもののうち、正規の手数料以外のものを総称するものである。
(ロ)上記(イ)のAのとおり、請求人の経理処理が外国各航空会社からスペースを仕入れ、当該スペースを混載業者に販売している取引形態をとっていたとしても、請求人は、外国各航空会社国内支店に対する航空貨物運送の取次ぎという役務の提供を行っているものであるから、輸出免税取引に該当しない。
 したがって、本件業務に関して請求人が収受する上記Aの(A)ないし(C)のうち、別途手数料以外の利益又は手数料(別表3の(1)の航空貨物取扱収入の法人税確定申告計上額から別表3の(3)のキックバック支払額の法人税確定申告計上額(本件E社向け支払運賃の額を除く。)及び別表3の(4)の支払運賃の法人税確定申告計上額を控除した額)は、消費税の課税対象となる。
 なお、別途手数料(別表3の(2)の支払貨物取扱割戻料の法人税確定申告計上額、本件F社S支店割戻料及び本件F社T支店2月分割戻料の額)は、航空貨物運送の取次ぎによる役務提供の対価と認められる利益のほかに収受されるものであり、本件取扱いで定めているキックバックと認められることから、輸出免税取引に係る対価の返還となり、課税対象とならない。
(ハ)納付すべき消費税額等又は還付金の額に相当する税額について
 以上から、本件各課税期間における納付すべき消費税額又は還付金の額に相当する消費税額は、別表4の「消費税」欄の「差引税額」欄又は「控除不足還付税額」欄のとおりとなる。
 また、本件各課税期間における納付すべき地方消費税額又は還付金の額に相当する地方消費税額は、別表4の「地方消費税」欄の「納税額」欄又は「還付額」欄のとおりとなる。
 そして、本件消費税等各更正処分は、別表4の原処分庁主張額と同額で行われている。
(ニ)したがって、本件消費税等各更正処分は、いずれも適法である。

(3)争点3について

イ 原処分庁の主張
 上記(2)のロのとおり、本件消費税等各更正処分は適法である。
 そして、本件消費税等各賦課決定処分の過少申告加算税の金額は、通則法第65条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に従いそれぞれ正しく計算されているので、本件消費税等各賦課決定処分は適法に行われている。
ロ 請求人の主張
 本件消費税等各更正処分は、上記(2)のイのとおり、いずれもその全部を取り消すべきであるから、本件消費税等各賦課決定処分も、いずれもその全部を取り消すべきである。

トップに戻る

4 判断

(1)争点1(本件法人税重加算税賦課決定処分の適法性:主として、本件E社向け支払運賃を繰上計上したこと及び本件F社S支店割戻料を繰り延べたことが、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当するか否か)について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)請求人は、本件法人税確定申告書の提出に併せて、平成15年3月期の法人税及び平成15年3月課税期間の消費税等に関する申告等並びに税務書類を作成する権限をP税理士に委任する旨の税理士法第30条《税務代理の権限の明示》の規定に基づく委任状を原処分庁に提出している。
(ロ)本件E社向け支払運賃に関する事実
A 請求人のE社S支店に対する合意運賃の支払に関して、E社S支店から、下記(A)ないし(C)の記載のある各請求書が請求人に送付されている。
(A)請求日:平成15年4月15日
 請求明細:平成15年3月15日から同年3月31日まで
 請求金額:813,695円
(B)請求日:平成15年5月7日
 請求明細:平成15年4月1日から同年4月15日まで
 請求金額:10,680,210円
(C)請求日:平成15年5月23日
 請求明細:平成15年4月16日から同年4月30日まで
 請求金額:11,662,354円
B P税理士は、平成15年3月期の決算処理において、上記各請求書の請求金額の合計額23,156,259円を平成15年3月分の合意運賃の支払額として経費に計上し、この結果、E社S支店の平成15年4月の精算期間分(上記Aの(B)及び(C)の請求金額)、すなわち本件E社向け支払運賃が、平成15年3月期に繰上計上され、同額が平成15年3月期の損金の額に過大に算入された。
(ハ)本件F社S支店割戻料に関する事実
A 請求人は、F社S支店に対して平成15年2月分及び平成15年3月分に係る請求書等を送付しているが、当該請求書等の記載事項によれば、請求人は、F社S支店に対して、下記(A)の売掛金及び下記(B)の未払金を有していた。
(A)売掛金

a 本件F社S支店2月分割戻料1,075,060円
b 本件F社S支店3月分割戻料858,840円

(B)未払金

a F社へ支払うべき平成15年2月分の合意運賃4,434,465円
b F社へ支払うべき平成15年3月分の合意運賃3,733,635円

B P税理士は、平成15年3月期の決算処理において、本件F社S支店割戻料1,933,900円(上記Aの(A)のaとbの合計額)を支払貨物取扱割戻料として、収益に計上せず、この結果、本件F社S支店割戻料が平成16年3月期の収益に繰り延べられた。
(ニ)F社T支店からの割戻料に関する事実
A 請求人がF社T支店に発送した平成15年3月31日付及び平成15年4月23日付各請求書における、本件F社T支店2月分割戻料及びF社T支店からの平成15年3月分の割戻料8,834,430円(以下「本件F社T支店3月分割戻料」といい、本件F社T支店2月分割戻料と併せて「本件F社T支店割戻料」という。)の各請求明細は、要旨次のとおりとなっている。
(A)平成15年3月31日付の請求書における本件F社T支店2月分割戻料
 請求明細 平成15年2月分の取扱量154,643.0キログラム×60円=9,278,580円
(B)平成15年4月23日付の請求書における本件F社T支店3月分割戻料
 請求明細 平成15年3月分の取扱量147,240.5キログラム×60円=8,834,430円
B 本件F社T支店割戻料については、平成15年5月末までに、F社T支店から入金がなかった。
C P税理士は、平成15年3月期の決算処理において、本件F社T支店割戻料を支払貨物割戻料として、収益に計上しなかったが、この処理について、原処分庁は、〔1〕本件F社T支店2月分割戻料は、貸倒れになるおそれがある旨、また、〔2〕本件F社T支店3月分割戻料については、割戻料の請求基準(1か月当たりの取扱量が150,000キログラム以上となったときに、割戻料が支払われる。)を満たしていないことから、請求書は送付したが受領できるか否かは不確定であった旨の請求人の説明に基づいて、上記〔1〕については、隠ぺい又は仮装の事実はなかったとの判断から重加算税賦課の対象とせず、また、上記〔2〕については、債権が確定していないとして、修正申告を求めなかった。
(ホ)関係者の申述及び答述
A N
(A)本件質問てん末書に記載されたNの本件調査担当職員に対する申述要旨及び異議調査担当職員に対する申述要旨
 前記3の(1)のイの(イ)のA及びB記載のとおりである。
(B)当審判所に対する答述要旨
a 操作前の所得金額は、5月中旬に電話でP税理士から聞いたと思う。
b 自分は経理のことが分からないから、申告する所得金額をP税理士に概算で伝えた。
c 平成15年3月期の法人税の確定申告書に署名押印した時に、納税額が会社が存続できる程度の額だったことから、P税理士が所得金額の操作をしてくれたと思った。
B P税理士
(A)異議調査担当職員に対する申述要旨
 前記3の(1)のイの(イ)のC記載のとおりである。
(B)当審判所に対する答述要旨
a 平成15年5月中旬に、平成15年3月期の売掛金及びE社に対する平成15年3月分の合意運賃の発生額が813,695円となっている未払金の月別明細表が完成し、これらを基に作成した試算表の所得金額を見て、Nに操作前の所得金額を伝えたと思う。
b 請求人は、法人税法上の引当金や多額の減価償却資産を有しておらず、税法で認められている引当金等での節税ができない。
 つまり、請求人において、所得金額を操作するとは、益金・損金を意識的に操作して所得金額を過少にすることをいう。
c 平成15年3月期は、具体的に次の操作を行った。
(a)本件E社向け支払運賃を平成15年3月期に繰り上げた。
(b)本件F社T支店割戻料を平成16年3月期に繰り延べた。
(c)本件F社S支店割戻料については、繰り延べたという明確な記憶はなく、単純な経理処理のミスと思うが、決算を組む時の事務処理手順からすると理論的には、計上漏れが発生することはない。
(d)未払金の繰上げをして利益調整しているのに、利益が増加する売掛金をわざわざ正確に計算することはない。
ロ 通則法第68条第1項は、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、過少申告加算税の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、重加算税を課する旨規定している。
 そして、この「事実を隠ぺいする」とは、納税者がその意思に基づいて、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を隠匿しあるいは脱漏することをいい、また、「事実を仮装する」とは、納税者がその意思に基づいて、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装うなど、事実をわい曲することをいうと解される。
 また、納税者が納税申告を第三者に委任した場合において、当該第三者が隠ぺい・仮装行為に基づく申告をした場合は、納税者と当該第三者との間において、その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装することについて意思の連絡があったと認められれば、納税者に対する重加算税の賦課要件を充足するものというべきである。
ハ 本件E社向け支払運賃の繰上計上及び本件F社S支店割戻料の繰延べについて、上記イの認定事実を上記ロに照らしてみると、次のとおりとなる。
(イ)上記イの(ロ)及び(ハ)のとおり、P税理士が行った平成15年3月期の決算処理において、本件E社向け支払運賃の繰上計上及び本件F社S支店割戻料の繰り延べが発生している。
(ロ)そして、前記3の(1)のイの(イ)及び上記イの(ホ)の本件質問てん末書に記載されたNの申述要旨及び当審判所に対する答述並びにP税理士の申述及び答述を総合すると、Nは、平成15年5月中旬に、P税理士からの電話で、平成15年3月期の試算表にて算出された所得金額(本件E社向け支払運賃を繰上計上するなどの操作を行う前の所得金額)を聞くにおよび、F社の吸収合併による将来への不安から、納税額を少なくするために、所得金額の操作をP税理士に依頼したものであり、本件法人税確定申告書に署名・押印した時に、納税額が会社が存続できる程度の額だったことから、P税理士が平成15年3月期の決算処理に当たり何らかの所得金額の操作を行ったことを認識していたものと認めることができる。
 また、P税理士は、F社の吸収合併による先行きの不安から、請求人(会社)の存続のため、Nからの所得金額の操作の依頼を受け、所得金額を意識的に過少にするため、〔1〕本件E社向け支払運賃については、平成15年3月期に繰上計上する所得金額の操作を行い、〔2〕本件F社S支店割戻料についても、平成16年3月期に繰り延べる所得金額の操作を行ったものと認められる。
 なお、上記〔2〕の点について、P税理士は、上記イの(ホ)のBの(B)のcの(c)のとおり、繰り延べたという明確な記憶はなく、単純な経理処理のミスと思う旨答述しているが、同時に、決算を組む時の事務処理手順からすると理論的には、計上漏れが発生することはない旨答述していること、上記イの(ホ)のBの(B)のcの(d)のとおり、未払金(本件E社向け支払運賃)を繰上計上して、利益調整(所得金額を過少に操作)しているのに、利益が増加する売掛金(割戻金)をわざわざ正確に計算することはない旨答述していること、上記イの(ハ)のとおり、F社S支店に対する請求書等に記載された事項のうち、F社S支店へ支払うべき合意運賃は正当に計上され、他方、本件F社S支店割戻料が計上されていないのであり、決算処理を担当する関与税理士の立場であれば、本来、請求書等から本件F社S支店割戻料を収益として計上する処理をするのが自然と思われるところ、P税理士が、そのような処理もせずに決算処理を了したことは不合理・不自然であること、上記イの(ホ)のBの(B)のcの(b)のとおり、平成15年3月期の決算処理において、Nの依頼に基づき、本件F社T支店割戻料を意図的に平成16年3月期に繰り延べる所得金額の操作をしていたことを併せ考えると、同じ航空会社の別の支店であるS支店からの本件F社S支店割戻料についても同様に、意図的に平成16年3月期に繰り延べたものと認めることができる。
ニ 以上のとおり、P税理士は、上記イの(イ)のとおり、請求人の平成15年3月期の法人税の申告及び税務書類の作成の権限を請求人から委任されているところ、Nは、P税理士に所得金額の操作を依頼し、P税理士は、この依頼に基づき、本件E社向け支払運賃が、あたかも平成15年3月期の経費であるかのごとく、事実を仮装した上で、当該支払運賃を平成15年3月期の経費に繰上計上し、また、本件F社S支店割戻料が平成15年3月期の収益となる事実を隠ぺいした上で、当該割戻料を平成16年3月期の収益に繰り延べたのであるから、請求人とP税理士との間において、本件E社向け支払運賃及び本件F社S支店割戻料に係る事実を隠ぺい又は仮装することについての意思の連絡があったものと認められる。
 したがって、請求人が、P税理士を介して、本件E社向け支払運賃を繰上計上したこと及び本件F社S支店割戻料を繰り延べた上で、本件法人税確定申告書を提出したことは、通則法第68条第1項の「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当するのであり、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ホ そして、重加算税の額は、本件修正申告により増加した納付すべき税額のうち、隠ぺい又は仮装事由に該当する部分の税額を基に通則法第68条第1項の規定に従い正しく計算されている。
ヘ したがって、本件法人税重加算税賦課決定処分は適法である。

トップに戻る

(2)争点2(本件消費税等各更正処分の適法性:主として、本件業務が輸出免税取引に該当するか否か)について

イ 認定事実
 当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件業務における航空運送状においては、航空運送事業者は、外国各航空会社となっており、荷送人は混載業者となっている。
 そして、請求人は、消費税法第2条第10号に規定する外国貨物の荷役等を行う者ではない。
(ロ)本件業務に係る外国各航空会社国内支店と混載業者との間の運賃の各精算方法及び経理処理等は、別紙2のとおりである。
 そして、別紙2の各経理処理に基づいて計上された本件業務に係る収入及び支出の額が、別表3の本件法人税各確定申告における計上額等となる。
 また、別紙2の各精算方法に記載された「請求人の利益」が本件業務に係る請求人の利益となる。
(ハ)請求人とK社日本支社は、平成15年1月8日、航空貨物の販売・予約業務代行に関して、要旨次のとおり合意した。
A K社日本支社は、請求人を指定貨物代理店として指名し、貨物販売及び予約業務を委託する。
B 請求人は、上記Aの委託に基づき、K社日本支社の各支店が混載業者に提供する貨物運送サービスを代行販売するために、予約業務及び関連する事務業務、運賃精算業務等の役務を提供する。
C 市場運賃と合意運賃の差額を請求人の上記Bの役務の提供の対価(報酬)とする。
(ニ)請求人とG社X支店は、平成9年10月30日付で、G社X支店が請求人に対して航空貨物運送に関して販売手数料を支払うことで合意した。
(ホ)請求人とL社は、平成14年12月25日付で、請求人がT地区において航空貨物を販売し、L社は、請求人から提出されたセールス・レポート等に基づき、販売手数料を支払うことを確認した。
(ヘ)Nは、当審判所に対して、本件業務について、要旨次のとおり答述した。
A 請求人は、外国各航空会社国内支店の指定貨物代理店として、外国各航空会社の航空貨物運送の〔1〕予約業務、〔2〕販売促進業務及び〔3〕運賃精算業務を行っている。
 なお、〔1〕予約業務と〔2〕販売促進業務については、いずれの航空会社とも同様の内容であるが、航空運賃の精算方法は、各航空会社によって異なっている。
B 上記Aの〔1〕ないし〔3〕の具体的な業務は、次のとおりである。
(A)予約業務
 混載業者からの予約の申出があると、外国各航空会社に予約の受付確認を行い、混載業者に予約を受け付けた旨の連絡を行うとともに、請求人の予約情報管理システムに入力し、航空貨物運賃の予約を完了する。
(B)販売促進業務
 外国各航空会社が許可した混載業者を訪問し、外国各航空会社指定の航空運送状を事前に配付し、請求人から外国各航空会社に対して、半月又は1か月単位で、当該航空運送状の使用状況を報告する。
(C)運賃精算業務
 混載業者と外国各航空会社との間の航空貨物運賃の精算を行う。
ロ 別紙1の2のとおり、消費税法第7条第1項は、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、輸出免税取引に該当するものについては、消費税を免除する旨規定している。
 そして、消費税法第7条第1項第5号は、前各号に掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるものを輸出免税取引となる旨規定し、当該規定を受けて、消費税法施行令第17条第2項第7号は、非居住者に対して行われる役務の提供で、同号のイないしハに掲げるもの以外が輸出免税取引に該当する旨規定している。
 ところで、この消費税法施行令でいうところの非居住者とは、同法施行令第1条第2項第2号において、外国為替及び外国貿易法第6条《定義》第1項第6号に規定する非居住者をいう旨規定され、消費税法基本通達7−2−15において、本邦内に主たる事務所を有しない法人(以下「外国法人」という。)であっても、本邦内に支店等(以下「国内支店等」という。)を有する場合は、当該国内支店等は、居住者とみなされる旨定めているところ、この定めは、外国為替及び外国貿易法第6条第1項第6号の規定する非居住者の範囲を念のために明らかにしたものであり、当審判所においても相当であると認められる。
 そうすると、事業者が外国法人の国内支店等に対して、国内において役務提供を行った場合には、当該国内支店等は、消費税法上の非居住者に該当しないから消費税法施行令第17条第2項第7号の規定の適用はないこととなる。
 また、当該役務提供が、消費税法第7条第1項第1号ないし第4号の各規定及び同条第5号の規定を受けた上記消費税法施行令第17条第2項第7号以外の同項各号の各規定に該当しない場合には、当該役務提供は、輸出免税取引には該当しない。
ハ そこで、まず、本件業務が、外国各航空会社国内支店に対する役務提供にあたるか否かについてみると、次のとおりである。
(イ)上記イの(ハ)ないし(ホ)からすると、請求人が、K社S支店、G社X支店及びL社S支店から本件業務に関して受け取る金員は、予約業務及び関連する事務業務、運賃精算業務等の役務提供の対価(報酬)あるいは販売手数料であると認められる。
(ロ)また、上記イの(ヘ)のとおり、外国各航空会社国内支店とは航空運賃の精算方法が異なるだけで、外国各航空会社の指定貨物代理店として、本件業務、すなわち予約業務、販売促進業務及び運賃精算業務を行っている旨のNの答述からすると、請求人が、上記(イ)の各支店以外の外国各航空会社国内支店から本件業務に関して受け取る金員も、上記(イ)と同様に、外国各航空会社国内支店に対して、役務の提供を行った対価(報酬)あるいは販売手数料であると認められる。
(ハ)そうすると、本件業務は、外国各航空会社国内支店に対する予約業務、販売促進業務及び運賃精算業務という役務の提供であり、請求人は、当該役務提供の対価(報酬)として、上記イの(ロ)のとおり、別紙2の「請求人の利益」を受領しているものと認められる。
ニ 次に、上記ハの(ハ)のとおり、外国各航空会社国内支店に対する役務の提供と認められる本件業務が、輸出免税取引に該当するか否かについてみると、次のとおりである。
(イ)前記1の(4)のイのとおり、外国各航空会社の主たる事務所(いわゆる本店)は外国に所在することから、外国各航空会社国内支店は、外国法人の国内支店等として居住者に該当する。
 したがって、本件業務は、居住者に対する役務の提供と認められ、消費税法施行令第17条第2項第7号の規定の適用はない。
 また、請求人の行う外国各航空会社国内支店に対する役務の提供は、外国各航空会社の指定貨物代理店としての予約業務、販売促進業務及び運賃精算業務であり、消費税法第7条第1項第1号ないし第4号の各規定及び同条第5号の規定を受けた上記消費税法施行令第17条第2項第7号以外の同項各号の各規定に該当しない。
 以上によれば、本件業務は、輸出免税取引には該当せず、したがって、消費税法第4条第1項により、消費税の課税の対象となる。
(ロ)この点について、請求人は、前記3の(2)のイのとおり主張する。
 しかしながら、上記ハの(ハ)のとおり、本件業務は、外国各航空会社国内支店に対する予約業務、販売促進業務及び運賃精算業務という役務の提供であり、また、上記イの(イ)のとおり、航空運送状における航空貨物の運送人は外国各航空会社であり、かつ、荷送人は混載業者となっており、請求人が航空貨物の運送を行っているわけではないから、消費税法第7条第1項第3号の適用はなく、外国貨物の荷役等を行っているわけでもないから、同法施行令第17条第2項第4号の適用もない
 したがって、請求人の上記主張には理由がない。
(ハ)ところで、原処分庁は、前記3の(2)のロの(ロ)のとおり、外国各航空会社国内支店からの合意割戻料及び合意手数料として経理処理された別途手数料(別表3の(2)の支払貨物取扱割戻料)が、いわゆる本件取扱いで定められたキックバックであり、輸出免税取引の対価の返還である旨主張し、当該別途手数料を課税標準額に含めていない(この点に関しては、請求人も同様の主張をしている。)。
 しかしながら、別途手数料も、別紙2の1の(2)及び2の(2)の精算方法により生じるものであり、上記ハで述べたとおり、請求人のF社及びL社の各国内支店に対する役務提供の対価であるところ、請求人はこれを、一旦、F社に合意運賃が支払われた後に、合意割戻料として受領しているか、あるいは、一旦、L社に市場運賃が支払われた後に、合意手数料として受領しているにすぎない。
 したがって、別途手数料も、消費税の課税対象となり、いわゆるキックバック(輸出免税取引による対価の返還)には該当しない。
ホ 本件各課税期間の消費税等の納付すべき税額
 以上によれば、本件業務は、居住者である外国各航空会社国内支店に対する役務提供として、国内における課税資産の譲渡等に該当することから、これを踏まえて、本件各課税期間の請求人の納付すべき消費税等の額を計算すると、次のとおりとなる。
(イ)課税標準額
A 本件業務について
 本件業務については、別表3の(1)の航空貨物取扱収入及び(2)の支払貨物取扱割戻料の合計額から、別表3の(3)のキックバック支払額及び(4)の支払運賃のうち〔1〕の保税運賃を控除した額が、外国各航空会社国内支店等に対する役務の提供の対価の額として、消費税の課税標準額となる。
 なお、原処分庁は、別表3の(3)の〔9〕のM社に対する委託報酬の額を課税標準額から減算しているが、当該報酬は、混載業者と外国各航空会社との間の運賃の精算によって請求人が受領する利益ではなく、請求人が国内における役務提供として行うべき当該業務の一部をM社に委託したものであり、当該委託報酬は、消費税法第2条第12号に規定する課税仕入れに該当し、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定により仕入税額控除の対象とすべきものであり、課税標準額を減算するものではない。
 また、原処分庁は、別表3の(4)の〔2〕の国内運送代80,000円を課税標準額から減算しているが、当該国内運送は国内における課税仕入れとして、平成13年3月課税期間の消費税等の当初申告において、仕入税額控除の対象となっていることから、当該金額を、課税標準額から減算する必要はない。
 以上から、本件業務に係る請求人の本件各課税期間に係る課税標準額を計算すると、別表5の「課税標準額計」欄のとおりとなる。
B その他、請求人の各業務において、課税標準額に計上すべきものは認められない。
(ロ)控除税額
 請求人の控除税額は、本件各課税期間の請求人の当初申告における控除税額に別表3の(3)の「〔9〕M社(委託報酬)」欄の額のうち、消費税等相当額を加算した額である別表5の「控除対象税額計」欄のとおりとなる。
(ハ)納付すべき消費税額等
 以上から、請求人の本件各課税期間の納付すべき消費税額等を計算すると、別表5の「消費税」欄の「差引税額」欄及び「地方消費税」欄の「納税額」欄のとおりとなる。
ヘ 以上検討したところによれば、請求人の本件各課税期間の納付すべき消費税額等は、本件消費税等各更正処分の額を上回るから、本件消費税等各更正処分はいずれも適法である。

トップに戻る

(3)争点3(本件消費税等各賦課決定処分の適法性)について

 本件消費税等各更正処分は、上記(2)のとおり、いずれも適法であり、また、本件消費税等各更正処分により増加した納付すべき消費税額及び納付すべき地方消費税額の計算の基礎となった事実が、本件消費税等各更正処分前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、請求人は、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があることを主張、立証せず、当審判所の調査の結果によっても、そのような事情が存したとは認められない。
 また、過少申告加算税の額は、同条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の9第1項の規定に基づき、正しく計算されている。
 したがって、本件消費税等各賦課決定処分は、いずれも適法である。

(4)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。

別紙1 関係法令等

1 本件法人税重加算税賦課決定処分関係

 通則法第68条第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

2 本件消費税等各更正処分関係

(1)消費税法第2条《定義》第1項第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨規定している。
 また、同項第9号は、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、同法第6条《非課税》第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう旨規定している。
 さらに、同項第10号は、外国貨物とは、関税法第2条《定義》第1項第3号に規定する外国貨物をいう旨規定し、同項第12号は、課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産を譲受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けることをいう旨規定している。
(2)消費税法第4条《課税の対象》第1項は、国内において事業者が行った資産の譲渡等には、消費税を課する旨規定している。
(3)消費税法第7条《輸出免税等》第1項は、事業者(同法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、同項各号に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する旨規定し、消費税が免除されるものとして、第3号において、国内及び国内以外の地域にわたって行われる旅客若しくは貨物の輸送又は通信を、第5号で前各号に掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるものを規定している。
(4)上記(3)の消費税法第7条第1項第5号に規定する政令で定めるものとして、消費税法施行令第17条《輸出取引等の範囲》第2項第4号は、外国貨物の荷役、運送、保管、検数、鑑定その他これに類する外国貨物に係る役務の提供を、第7号は、消費税法第7条第1項第3号、消費税法施行令第17条第1項第3号及び消費税法施行令第17条第2項第1号から第5号までに掲げるもののほか、非居住者に対して行われる役務の提供で次に掲げるもの以外のものである旨規定している。
イ 国内に所在する資産に係る運送又は保管
ロ 国内における飲食又は宿泊
ハ 上記イ及びロに掲げるものに準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの
(5)消費税法施行令第1条《定義》第2項第2号は、非居住者とは、外国為替及び外国貿易法第6条第1項第6号に規定する非居住者をいう旨規定している。
 そして、消費税法基本通達7−2−15《非居住者の範囲》において、消費税法施行令第1条第2項第2号に規定する「非居住者」には、本邦内に住所又は居所を有しない自然人及び本邦内に主たる事務所を有しない法人がこれに該当し、非居住者の本邦内の支店、出張所その他の事務所は、法律上の代理権があるかどうかにかかわらず、その主たる事務所が外国にある場合においても居住者とみなされるのであるから留意する旨定めている。
(6)消費税法第9条第4項は、同条第1項本文の規定により、消費税を納める義務が免除されることとなる事業者が、その基準期間における課税売上高が3,000万円以下である課税期間につき、同条第1項本文の規定の適用を受けない旨を記載した届出書(以下、本文において「課税事業者選択届出書」という。)をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、当該提出をした事業者が当該提出をした日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間中に国内において行う課税資産の譲渡等については、同条第1項の本文の規定は、適用しない旨規定している。

トップに戻る