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(平18.4.5裁決、裁決事例集No.71 52頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、造園工事業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が行った法人税の申告には完成工事高の過少計上などが認められ、また、死因贈与による土地の取得に係る収益の額(受贈益)が過大に申告されているとの請求人の主張は認められないとして、原処分庁が法人税の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、その収益の額(受贈益)は、過大に計上されているとして更正処分等の一部の取消しを求めた事案であり、争点は次の2点である。
争点1 申告に係る収益の額に過大部分があったことを主張して、更正の請求によることなく、更正処分の取消しを求めることの可否
 争点2 死因贈与により取得した土地の時価

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(2)審査請求に至る経緯

イ  請求人は、平成13年6月1日から平成14年5月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)について、死因贈与により土地を取得したことから、当該土地の路線価に基づいて算出した金額である591,200,000円(以下「本件計上金額」という。)を本件事業年度の益金の額に算入し、青色の確定申告書(以下「本件申告書」という。)に次表の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告した。

区分\項目確定申告更正処分等
所得金額○○○○円○○○○円
納付すべき税額○○○○○○○○
過少申告加算税の額○○○○
重加算税の額○○○○

ロ 原処分庁は、本件事業年度の法人税について、平成16年5月31日付で上記イの表の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下、これらの賦課決定処分のうち、過少申告加算税の賦課決定処分を「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、原処分を不服として平成16年6月21日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成16年9月13日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成16年10月13日に審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。

(3)関係法令

イ 法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第1項は、内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする旨を、同条第2項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする旨を、また、同条第4項は、第2項に規定する当該事業年度の収益の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨を、それぞれ規定している。
ロ 国税通則法第23条《更正の請求》第1項は、納税申告書を提出した者は、同項第1号ないし第3号の一に該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し同法第24条《更正》又は同法第26条《再更正》の規定による更正(以下「更正」という。)があった場合には、当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定し、同項第1号は、これに該当する場合として、当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があった場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき、と規定している。

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(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の前代表者○○(以下「前代表者」という。)は平成14年1月○日に死亡し、これに基因して、請求人は、前代表者から次表に掲げる各土地(以下、同表のとおり「本件土地1」、「本件土地2」及び「本件土地3」といい、これらの各土地を併せて「本件各土地」という。)を死因贈与により取得した。
 請求人は、本件各土地の取得に関し、次表の「計上金額」欄に記載の各金額の合計591,200,000円を、雑収入(受贈益)として、本件事業年度の益金の額に算入した。

本件各土地
 所在地地目地積計上金額
 (平方メートル)(円)
本件土地1
 P市p町○−○雑種地464.54117,300,000
 P市p町○−○
本件土地2
 P市p町○−○山林808.40259,800,000
 P市p町○−○
本件土地3
 P市p町○−○雑種地619.55214,100,000
 P市p町○−○
 P市p町○−○
 P市p町○−○

ロ 原処分庁所属の調査担当職員は、平成15年9月、○○国税局及び○○税務署所属の調査担当職員とともに、請求人の法人税調査等に着手した。
ハ 請求人は、平成16年2月23日付で○○国税局長、○○税務署長及び原処分庁あての「嘆願書」と題する書面を○○税務署長へ提出した。
 上記の「嘆願書」と題する書面には、〔1〕本件計上金額は路線価に基づき概算で算出したものであり、その金額で確定決算を行ったのは事実である旨、〔2〕本件各土地の時価を鑑定した結果、その合計額は474,000,000円であるので、職権により、この金額を反映したところで法人税の課税を行ってほしい旨が記載されている。
ニ 請求人が原処分庁に平成16年6月21日付で提出した異議申立書には、不動産鑑定士○○の鑑定評価に基づく株式会社○○○○(代表取締役社長○○、不動産鑑定部専任不動産鑑定士○○)作成の平成16年○月○日付の本件各土地に係る各不動産鑑定評価書(以下、本件土地1に係る不動産鑑定評価書を「本件土地1鑑定評価書」といい、本件土地2に係る不動産鑑定評価書を「本件土地2鑑定評価書」といい、本件土地3に係る不動産鑑定評価書を「本件土地3鑑定評価書」といい、これら各鑑定評価書を併せて「本件各鑑定評価書」という。)が添付されており、請求人は、本件各土地の時価を本件各鑑定評価書の合計額である474,000,000円(以下「本件鑑定評価額」という。)としている。
ホ 本件各鑑定評価書には、要旨、それぞれ次のとおり記載されている。
(イ) 本件土地1鑑定評価書
A 想定標準画地(G線H駅(以下「H駅」という。)から2.4キロメートルで地積150平方メートル)の類似地域に存する取引事例を別表1−1の取引事例d、e、f及びgの各欄のとおり選択し、想定標準画地の比準価格を別表1−2の「比準価格」欄のとおり288,000円/平方メートルと算定し、当該比準価格288,000円/平方メートルを重視して、想定標準画地の収益価格141,000円/平方メートルを関連付けることが適切と判断し、想定標準画地の標準価格を270,000円/平方メートルと決定した。
 なお、この標準価格270,000円/平方メートルは、地価公示地(P市1)を規準とした価格276,000円/平方メートル(別表1−2の「公示地(P市1)」欄の「規準した価格」欄の額)とも接近している。
B 想定標準画地の標準価格を上記Aのとおり270,000円/平方メートルと決定した上で、本件土地1との個別的要因の比較を行い、個別格差率を別表1−3の「〔2〕個別的要因」欄のとおり78%と判断し、同表の「〔3〕鑑定評価額」欄のとおり、鑑定評価額を決定(211,000円/平方メートル、総額98,000,000円)した(以下、本件土地1鑑定評価書による鑑定評価額98,000,000円を「本件土地1鑑定評価額」という。)。
(ロ)本件土地2鑑定評価書
 上記(イ)のAと同様の方法(想定標準画地、選択した取引事例、想定標準画地の比準価格及び収益価格との関連付け並びに公示地の公示価格との規準について、いずれも上記(イ)のAと同じ。)により、想定標準画地の標準価格を270,000円/平方メートルと決定した上で、本件土地2との個別的要因の比較を行い、個別格差率を別表2の「〔2〕個別的要因」欄のとおり86%と判断し、同表の「〔3〕鑑定評価額」欄のとおり、鑑定評価額を決定(232,000円/平方メートル、総額188,000,000円)した(以下、本件土地2鑑定評価書による鑑定評価額188,000,000円を「本件土地2鑑定評価額」という。)。
(ハ)本件土地3鑑定評価書
A 想定標準画地(L線E駅(以下「E駅」という。)から2.3キロメートルで地積300平方メートルの土地)の類似地域に存する取引事例を別表3−1の取引事例h、i、j及びkの各欄のとおり選択し、想定標準画地の比準価格を別表3−2の「比準価格」欄のとおり339,000円/平方メートルと算定し、当該比準価格339,000円/平方メートルを重視して、想定標準画地の収益価格279,000円/平方メートルを関連付けることが適切と判断し、想定標準画地の標準価格を320,000円/平方メートルと決定した。
 なお、この標準価格320,000円/平方メートルは、都道府県地価調査による基準地(Q市1)を規準とした価格330,000円/平方メートル(別表3−2の「基準地(Q市1)」欄の「規準した価格」欄の額)とも接近している。
B 想定標準画地の標準価格を上記Aのとおり320,000円/平方メートルと決定した上で、本件土地3との個別的要因の比較を行い、個別格差率を別表3−3の「〔2〕個別的要因」欄のとおり95%と判断し、同表の「〔3〕鑑定評価額」欄のとおり、鑑定評価額を決定(304,000円/平方メートル、総額188,000,000円)した(以下、本件土地3鑑定評価書による鑑定評価額188,000,000円を「本件土地3鑑定評価額」という。)。

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2 主張

(1)請求人

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部を取り消すべきである。
イ 本件審査請求について
 原処分庁は、本件申告書に係る更正の請求を行っていないから、本件計上金額の減額を求める請求人の主張には理由がないとしている。
 しかしながら、原処分庁は今回法人税の調査を実施したのであるから、更正の請求を行っていないことを理由に、本件計上金額の減額を求めることが許されないとする原処分庁の主張には、適正、公平な課税の観点から疑義がある。
ロ 本件各土地の時価について
 本件各土地の通常の取引価額は、本件各鑑定評価書において取引事例比較法などの手法により適正に算定された本件鑑定評価額であるから、本件計上金額と本件鑑定評価額との差額に相当する金額117,200,000円については、本件事業年度の所得金額から減算されるべきである。
 また、前代表者の相続人である○○及び○○は、前代表者から相続した相続財産のうち、〔1〕P市p町○−○に所在する畑1,329.10平方メートル、〔2〕P市p町○−○並びに同○−○及び同○に所在する畑3,207.80平方メートル(以下、これらの土地を併せて「別件各土地」という。)を、平成14年○月○日付不動産売買契約書による売買契約により合計○○○○円で売却したが、この売却価額は、別件各土地の路線価方式による評価額○○○○円よりも約15%低い価額であり、これと比較しても、本件計上金額は過大であったというべきである。
ハ 本件賦課決定処分について
 上記ロのとおり、本件更正処分の一部を取り消すべきであり、それに伴って本件賦課決定処分の一部も取り消すべきである。

(2)原処分庁

 原処分は、次の理由により適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件審査請求について
 本件審査請求において、請求人が原処分の取消しを求める理由は、原処分の対象とされた完成工事高の計上漏れ等の加算による所得金額及び法人税額の増額部分に係るものでなく、本件申告書を提出するに当たり請求人の算定した本件計上金額が過大であったから、その減額を求めるというものである。
 そして、申告に係る課税標準又は税額が過大である場合には、原則として、更正の請求の手続によってその是正を図るべきであり、申告に係る課税標準等が過大であったことを理由としてその減額を求めることは許されないと解すべきであるから、本件申告書に係る更正の請求をすることなく、本件計上金額の減額を求める請求人の主張には理由がない。
ロ 本件各土地の時価について
(イ)仮に上記イの点をおくとしても、本件鑑定評価額は、次の(ロ)のとおり、適正な価額とは認められず、本件各土地の価額は次のとおり算定するのが相当であって、この結果、本件各土地の価額の合計額である591,578,922円(以下「原処分庁評価額」という。)は本件計上金額とほぼ同額であることから、本件申告書を提出するに当たり請求人が算定した本件各土地の価額は過大なものとは認められない。
 したがって、本件計上金額を減額する理由はないから、本件更正処分は適法である。
A 本件土地1
 本件土地1の価額は、別表4−1で抽出した本件土地1の近隣の地域に存する取引事例及び公示地(P市1)の価格を基に、別表4−2のとおり補正等を行い算出される価額246,296円/平方メートルに、地積464.54平方メートルを乗じて算出した価額114,414,343円(以下「本件土地1原処分庁評価額」という。)である。
B 本件土地2
 本件土地2の価額は、別表5−1で抽出した本件土地2の近隣の地域に存する取引事例及び公示地(P市2)の価格を基に、別表5−2のとおり補正等を行い算出される価額303,920円/平方メートルに、地積808.40平方メートルを乗じて算出した価額245,688,928円(以下「本件土地2原処分庁評価額」という。)である。
C 本件土地3
 本件土地3の価額は、別表6−1で抽出した本件土地3の近隣の地域に存する取引事例及び基準地(Q市1)の価格を基に、別表6−2のとおり補正等を行い算出される価額373,619円/平方メートルに、地積619.55平方メートルを乗じて算出した価額231,475,651円(以下「本件土地3原処分庁評価額」という。)である。
(ロ)本件鑑定評価額について
A 本件土地1
(A)採用されている取引事例は、いずれも建物が存在する土地の売買であり、その建物の控除額が不明である。
(B)本件土地1と想定標準地の個別的要因の格差のうち、規模について△10%としているが、本件土地1の地積464.54平方メートルと本件土地1の規準とした公示地(P市1)の地積254平方メートルとを比較した場合、本件土地1は、当該土地が存する地域の標準的画地との比較において著しく広大な土地であるとは認められず、△10%の減価率は相当ではない。
B 本件土地2
(A)本件土地2の公示地について、本件土地2と用途地域、容積率及び建ぺい率を同じくし、かつ、同一路線上の至近距離に所在する公示地(P市2)が存在するにもかかわらず、公示地(P市1)を採用しているが、近隣の公示地(P市2)を規準としていないことについて、合理的な理由があるとは認められない。
(B)個別的要因の格差のうち規模について△20%としているが、請求人が原処分庁に提出した本件土地2に係る広大地補正率を算定するための開発図面には、広大地補正率は0.87となっており、当該格差率は相当とは認められない。
C 本件土地3
 基準地(Q市1)を基にした規準価格の算定のうち、地域的要因の格差について、当該基準地の属する地域は本件土地3の属する地域より商業性が25%優っているとしているが、本件土地3は当該基準地の東南約300メートルの位置にあり、都市計画法上の近隣商業地域に所在する土地と隣接した位置にあることから、25%の格差は相当とは認められない。
ハ 本件賦課決定処分について
 以上のとおり、本件更正処分は適法であり、また、請求人の場合、本件更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」には該当しないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて行った本件賦課決定処分は適法である。

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3 判断

(1)争点1について

 原処分庁は、納税者が更正の請求によることなく申告に係る課税標準等又は税額等の過誤の是正を求めることは、その方法以外にその是正を許さないならば、納税者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合を除き、許されないと解されていること(いわゆる、「更正の請求の排他性」)から、本件計上金額の減額を求める請求人の主張につき、主張自体が許されない旨を主張する。
 しかしながら、この更正の請求の排他性が申告に係る課税標準等又は税額等を自己に有利に変更することを求める場合についてのものであることは、国税通則法第23条第1項の規定から明らかであり、そして、本件審査請求に係る審理の対象は客観的に存在していた本件事業年度の法人税の課税標準又は税額との比較における本件更正処分に係るそれらの多寡であるから、本件に上記「特段の事情」が存するか否かを判断するまでもなく、本件審査請求において、請求人が、原処分の一部取消しを求める事由として、本件計上金額の過誤(過大計上)を主張すること自体は、許されることになる。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張は採用できない。

(2)争点2について

イ 認定事実
 請求人の提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件土地1関係
A 本件土地1は、H駅の北西約2.4キロメートルに位置する造園関係資材置場等の更地であり、北東側をほぼ北西ないし南東に走る幅員約5.5メートルの市道、南東側を幅員約5.5メートルの市道に、おおむね等高に接し、北東側の道路を間口とした場合、その間口距離が約30メートル、最大奥行距離が約22メートル、最小奥行距離が約13メートル、地積を間口距離で除した奥行距離が約15メートルの不整形の土地であり、地積、形状、街路条件、交通接近条件、環境条件及び行政的条件等は、別表7−1の「本件土地1」欄のとおりである。
 また、本件土地1は、ほぼ中央部の地積250.47平方メートル部分を横断する○○電力の架設送電線路の下地(高圧線下地)である。
B 本件土地1の近隣に、本件土地1と行政的条件(第1種低層住居専用地域、建ぺい率40%、容積率80%)を同じくする公示地(P市1)が存する。
 この公示地(P市1)の公示価格、地積、形状、街路条件、交通接近条件、環境条件及び行政的条件等は、別表7−1の「公示地(P市1)」欄のとおりである。
C 本件土地1と行政的条件(第1種低層住居専用地域、建ぺい率40%、容積率80%)を同じくする近隣の地域について、本件土地1と地積、形状等の画地条件の格差が最小限となるような取引事例を調査したところ、別表7−1の取引事例m、x及びyが認められた。
 これらの取引事例の取引価格、地積、形状、街路条件、交通接近条件、環境条件及び行政的条件等は、それぞれ、別表7−1の各取引事例の欄のとおりである。
 また、これらの取引事例には、譲渡人と譲受人との間に縁故関係がある等の特殊事情は認められない。
(ロ)本件土地2関係
A 本件土地2は、H駅の北西約2.4キロメートルに位置する造園関係資材置場の更地であり、北東側を幅員約6メートルの市道、南側を幅員約8メートルの市道におおむね等高に接し、南側の道路を間口とした場合、その間口距離が約38メートル、奥行距離が約22メートルのほぼ整形の土地であり、地積、形状、街路条件、交通接近条件、環境条件及び行政的条件等は、別表8−1の「本件土地2」欄のとおりである。
B 本件土地2の近隣に、本件土地2と行政的条件(第2種中高層住居専用地域、建ぺい率60%、容積率200%)を同じくする公示地(P市2)が存する。
 この公示地(P市2)の公示価格、地積、形状、街路条件、交通接近条件、環境条件及び行政的条件等は、別表8−1の「公示地(P市2)」欄のとおりである。
C 本件土地2と行政的条件(第2種中高層住居専用地域、建ぺい率60%、容積率200%)を同じくする近隣の地域について、本件土地2と地積、形状等の画地条件の格差が最小限となるような取引事例を調査したところ、地積は同程度でなかったものの、別表8−1の取引事例n、s及びzが認められた。
 これらの取引事例の取引価格、地積、形状、街路条件、交通接近条件、環境条件及び行政的条件等は、それぞれ、別表8−1の各取引事例の欄のとおりである。
 また、これらの取引事例には、譲渡人と譲受人との間に縁故関係がある等の特殊事情は認められない。
(ハ)本件土地3関係
A 本件土地3は、E駅の南方約2.3キロメートルに位置する造園関係資材置場の更地であり、西側を幅員約16メートルの県道におおむね等高に接し、間口距離が約24メートル、奥行距離が約28メートルのほぼ整形の土地であり、地積、形状、街路条件、交通接近条件、環境条件及び行政的条件等は、別表9−1の「本件土地3」欄のとおりである。
B 本件土地3の近隣には、本件土地3と行政的条件(第2種住居地域、建ぺい率60%、容積率200%)を同じくする公示地及び基準地は存しないが、行政的条件の格差が小さく(第1種住居地域、建ぺい率60%、容積率200%)、地積及び形状等が同程度である公示地(Q市2)が存する。
 また、本件土地3の近隣には、第1種住居地域ではないものの、行政的条件の格差が小さく(準工業地域、建ぺい率60%、容積率200%)、地積が同程度、又は、地積の格差が最小限となり、形状等が同程度である公示地(Q市7−1、Q市7−2)が存する。
 これらの公示地の公示価格、地積、形状、街路条件、交通接近条件、環境条件及び行政的条件等は、それぞれ、別表9−1の各公示地の欄のとおりである。
C 本件土地3と行政的条件(第2種住居地域、建ぺい率60%、容積率200%)を同じくし又は格差の小さい近隣の地域について、本件土地3と地積、形状等の画地条件の格差が最小限となるような取引事例を調査したところ、行政的条件の格差が小さい地域(第1種住居地域、建ぺい率60%、容積率200%)における取引事例として別表9−1の「取引事例t」が認められた。
 この取引事例の取引価格、地積、形状、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件等は、別表9−1の「取引事例t」欄のとおりである。
 また、この取引事例には、譲渡人と譲受人との間に縁故関係がある等の特殊事情は認められない。
(ニ)別件各土地は、いずれも第1種低層住居専用地域で、建ぺい率は40%、容積率は80%の地域に所在する。
ロ 関係法令の解釈
(イ)土地の死因贈与を受けた場合の収益の額について
 法人税法第22条は、上記1の(3)のイのとおり規定しており、法人が土地の死因贈与を受けた場合、それは同条第2項に規定する無償による資産の譲受けに当たり、その譲受けに係る収益の額については、その土地を譲り受けたときにおける時価をもって計上すべきものと解されている。
 そして、時価とは、一般に、当該資産につき不特定多数の当事者における自由な取引において成立すると認められる客観的交換価値をいうものと解されている。
(ロ)土地の客観的交換価値と取引事例比較法について
 当該土地の客観的交換価値の認定については、不動産鑑定士による鑑定評価等によるほか、取引事例比較法(評価対象地の取引に関して時間的、場所的同一性、及び物件的、用途的同一性等の点で可及的に類似する物件の取引事例等に依拠し、それを比準として算定するという方法)には合理性があり、また相当な方法であると解されている。
 そして、取引事例比較法による場合、評価対象地と取引事例の土地との間における位置、形状、地積、地勢、接面街路、供給処理施設、公法規制等の諸条件及び取引時点の相違に係る修正や補正の幅をせばめ、恣意的要素を排除するため、依拠する取引事例については、当該事案に即したところで可能な限り、評価対象地に諸条件が合致し、取引時点が近接し、かつ、個別的事情が価格決定に寄与した度合いの小さいものとすることが相当である。
 また、公示価格及び基準地の標準価格については、それらが、一般の土地の取引価格に対しての指標、不動産鑑定士の鑑定評価及び公共事業の用地の買収価格算定等の規準とされていることからも明らかなように、いずれも客観的交換価値を示すものということができるから、評価対象地の近隣に公示地又は基準地がある場合には、それらを選択することには、合理性があるとされている。
ハ 本件鑑定評価額及び原処分庁評価額について
 本件各土地の時価について、請求人は、本件鑑定評価額であると主張し、原処分庁は、原処分庁評価額であると主張していることから、審理したところ、次のとおりである。
(イ)本件鑑定評価額について
A 本件土地1鑑定評価額について
(A)本件土地1鑑定評価額は、上記1の(4)のホの(イ)のとおり、取引事例比較法による比準価格を重視して決定している。
(B)そこで、上記ロの(ロ)に照らして本件土地1鑑定評価額についてみると、取引事例dないしgは、いずれも建物が存在している土地の売買であるが、取引総額から建物の適正な価額を控除した後の価格を土地の価格とした取引であるのか不明である。また、本件土地1に比べて、いずれも地積が著しく小さい取引事例dないしgに依拠しているが、本件土地1と地積、形状等の画地条件の格差が最小限となるような取引事例として、別表7−1のm、x及びyが、それぞれ認められる。
(C)以上のとおり、本件土地1鑑定評価額は、適正な取引事例に基づいて算定されたものとはいえないから、適正な時価を示しているとは認められない。
B 本件土地2鑑定評価額について
(A)本件土地2鑑定評価額は、上記1の(4)のホの(ロ)のとおり、取引事例比較法による比準価格を重視して決定している。
(B)そこで、上記ロの(ロ)に照らして本件土地2鑑定評価額についてみると、本件土地2鑑定評価額は本件土地2の所在地と行政的条件が大きく異なる地域(第1種低層住居専用地域、建ぺい率40%、容積率80%の地域)の取引事例dないしg及び公示地に依拠しているが、〔1〕本件土地2と行政的条件(第2種中高層住居専用地域、建ぺい率60%、容積率200%)を同じくする公示地(P市2)、〔2〕本件土地2と行政的条件を同じくする近隣の地域において、地積は同程度ではないが、形状等の画地条件の格差が最小限となるような取引事例として別表8−1のn、s及びzが、それぞれ認められる。
(C)以上のとおり、本件土地2鑑定評価額は、適正な取引事例に基づいて算定されたものとはいえないから、適正な時価を示しているとは認められない。
C 本件土地3鑑定評価額について
(A)本件土地3鑑定評価額は、上記1の(4)のホの(ハ)のとおり、取引事例比較法による比準価格を重視して決定している。
(B)そこで、上記ロの(ロ)に照らして本件土地3鑑定評価額についてみると、次のとおりである
a 本件土地3鑑定評価額は、本件土地3から極めて遠方で、行政的条件を大きく異にしている取引事例hないしkに依拠しているが、次の公示地及び取引事例が認められる。
〔1〕本件土地3の近隣には、本件土地3と行政的条件(第2種住居地域、建ぺい率60%、容積率200%)を同じくする公示地及び基準地が存しないが、格差が小さく(第1種住居地域、建ぺい率60%、容積率200%)、地積及び形状等が同程度である公示地(Q市2)が認められる。
〔2〕本件土地3の近隣には、第1種住居地域ではないものの、行政的条件の格差が小さく(準工業地域、建ぺい率60%、容積率200%)、地積が同程度、又は、地積の格差が最小限となり、形状等が同程度である公示地(Q市7−1、Q市7−2)が認められる。
〔3〕本件土地3の近隣において、本件土地3と行政的条件(第2種住居地域、建ぺい率60%、容積率200%)の格差が小さく(第1種住居地域、建ぺい率60%、容積率200%)、地積及び形状等の画地条件の格差が最小限となる取引事例として別表9−1の「取引事例t」が認められる。
b 本件土地3の地積に比べて著しく小さい基準地(Q市1)を規準としているが、行政的条件の格差が小さく(第1種住居地域、建ぺい率60%、容積率200%)、地積及び形状等が同程度である公示地(Q市2)が認められる。
(C)以上のとおり、本件土地3鑑定評価額は、適正な取引事例に基づいて算定されたものとはいえないから、適正な時価を示しているとは認められない。
D 請求人は、上記2の(1)のロの後段のとおり、別件各土地の売却価額が同土地の路線価方式による評価額○○○○円よりも約15%低額であり、これとの比較からしても、本件計上金額は過大であるから、本件各土地の時価は本件鑑定評価額によるべきである旨主張する。
 しかしながら、別件各土地の行政的条件についてみてみると、その用途地域は第1種低層住居専用地域、建ぺい率は40%、容積率は80%であり、前記した本件土地2及び本件土地3のそれらと大きく異なり、また、行政的条件を同じくする本件土地1についても、本件土地1の地積(464.54平方メートル)に比べて別件各土地の地積(1,329.10平方メートル、3,207.80平方メートル)は著しく大きいことが認められるため、別件各土地の売却価額との比較をもって、直ちに本件計上金額が過大であったということにはならない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ)原処分庁評価額について
A 本件土地1原処分庁評価額について
 原処分庁は、本件土地1の時価について、上記2の(2)のロの(イ)のAのとおり取引事例等に依拠し、それを比準して算定している。
 そこで、検討するに、本件土地1は形状が不整形であるにもかかわらず、個別的要因の格差として、不整形地の補正が行われていない。また、原処分庁は、本件土地1の地積(464.54平方メートル)に比して、著しく地積が小さい(132.24平方メートル)取引事例rに依拠しているが、本件土地1と地積が同程度の取引事例としてx及びyが認められる。
 以上のとおり、本件土地1原処分庁評価額は、適正な取引事例に基づいて算定されたものとはいえないから、適正な時価を示しているとは認められない。
B 本件土地2原処分庁評価額について
 原処分庁は、本件土地2の時価について、上記2の(2)のロの(イ)のBのとおり取引事例等に依拠し、それを比準して算定している。
 そこで、検討するに、本件土地2の地積は808.40平方メートルであり、本件土地2と行政的条件が同一である公示地(P市2)の地積186.00平方メートルと比べて、地積が著しく大きいにもかかわらず、地積過大の補正が行われていない。また、本件土地2の地積に比べて地積の小さい公示地(P市2)、取引事例n及びsと比準しているが、これらの公示地及び取引事例よりも地積の大きい取引事例zが認められる。
 以上のとおり、本件土地2原処分庁評価額は、適正な取引事例に基づいて算定されたものとはいえないから、適正な時価を示しているとは認められない。
C 本件土地3原処分庁評価額について
 原処分庁は、本件土地3の時価について、上記2の(2)のロの(イ)のCのとおり取引事例等に依拠し、それを比準して算定している。
 そこで検討するに、まず、原処分庁は、本件土地3の時価について、基準地(Q市1)に依拠しているが、上記(イ)のCの(B)のbと同様の理由により、公示地(Q市2)を採用すべきである。また、原処分庁は、本件土地3の地積(619.55平方メートル)に比べて著しく小さい土地(153.21平方メートル)の取引事例uに依拠しているが、本件土地3と地積が同程度、又は、地積の格差が最小限となり、形状を同じくする公示地(Q市2、Q市7−1、Q市7−2)及び取引事例tが認められる。
 以上のとおり、本件土地3原処分庁評価額は、適正な取引事例に基づいて算定されたものとはいえないから、適正な時価を示しているとは認められない。
ニ 本件各土地の時価及び益金の額について
 上記ハのとおり、本件鑑定評価額及び原処分庁評価額は、いずれも採用することができないので、上記イの認定事実及び上記ロで説示したところに基づき、当審判所において本件各土地の時価を算定したところ、次のとおりである。
(イ)本件土地1について
 上記イの(イ)のB及びCで摘示した公示地(P市1)の公示価格及び各取引事例の取引価格を基に、当審判所においても相当と認める基準である土地価格比準表(昭和50年1月20日付国土地第4号国土庁土地局地価調査課長通達「国土利用計画法の施行に伴う土地価格の評価等について」。ただし、平成6年3月15日付国土地第56号による改正後のもの。以下「土地価格比準表」という。)に準じて、別表7−2のとおり、時点修正、標準化補正、地域格差及び個別的要因の補正を行って本件土地1の時価を算出すると、それは105,511,434円となる。
(ロ)本件土地2について
 上記イの(ロ)のB及びCで摘示した公示地(P市2)の公示価格及び各取引事例の取引価格を基に、土地価格比準表に準じて、別表8−2のとおり、時点修正、標準化補正、地域格差及び個別的要因の補正を行って本件土地2の時価を算出すると、それは240,262,138円となる。
(ハ)本件土地3について
 上記イの(ハ)のB及びCで摘示した公示地(Q市2、Q市7−1及びQ市7−2)の公示価格及び取引事例tの取引価格を基に、土地価格比準表に準じて、別表9−2のとおり、時点修正、標準化補正、地域格差及び個別的要因の補正を行って本件土地3の時価を算出すると、それは218,590,870円となる。
(ニ)本件各土地の時価は上記(イ)ないし(ハ)の各金額となるから、本件各土地を死因贈与により取得したことに係る収益の額として、本件事業年度の益金の額に算入すべき金額は、それらの合計金額である564,364,442円となる。

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(3)本件更正処分について

 上記(2)のニの(ニ)のとおり、本件事業年度の益金の額に算入する金額は564,364,442円となり、これに基づき、本件事業年度の所得金額を計算すると、それは、別表10の「課税所得金額の計算書」の「審判所認定額」欄のとおり○○○○円となる。
 そして、この審判所認定額は本件更正処分に係る所得金額を下回るから、本件更正処分はその一部を取り消すべきである。

(4)本件賦課決定処分について

 本件更正処分は、上記(3)のとおり、その一部を取り消すべきであるから、過少申告加算税の基礎となる税額は、○○○○円となる。そして、この税額の基礎となった事実については、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そうすると、過少申告加算税の額は、○○○○円となり、本件賦課決定処分の金額を下回るから、本件賦課決定処分はその一部を取り消すべきである。

(5)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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