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(平18.6.13裁決、裁決事例集No.71 205頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、不動産賃貸業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、不動産管理会社に支払った管理料の一部について、原処分庁が、所得税法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認等》第1項及び同法第37条《必要経費》第1項を適用し、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できないとして所得税の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、違法を理由にその全部の取消しを求めた事案であり、争点は次のとおりである。
争点1 更正の理由附記に不備があるとして、違法となるか否か。
争点2 調査手続に違法があるか否か。
争点3 不動産管理会社に支払った管理料のうち、本件各年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額はいくらか。

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(2)審査請求に至る経緯

 請求人の平成13年分ないし平成15年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税について、審査請求(平成17年5月2日請求)に至る経緯等は、別表1及び別表2のとおりである。
 なお、請求人は原処分を不服として、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号の規定により審査請求をしたものである。

(3)関係法令の要旨

 別紙1のとおり。

(4)基礎事実

イ 請求人は、P市Q町a番及び同b番において2棟のアパート(以下「Xアパート」及び「Yアパート」といい、これらを併せて「本件貸アパート」という。)並びに同市R町○○においてマンション(以下「本件賃貸マンション」という。)を賃貸の用に供している。
 さらに、P市S町○○及び同市T町○○の土地を月極駐車場(以下、順次「本件S町貸駐車場」、「本件T町貸駐車場」といい、これらを併せて「本件貸駐車場」という。)として、また、同市U町d番及び同町e番の土地(以下、順次「本件甲貸地」、「本件乙貸地」といい、これらを併せて「本件貸地」という。)を貸地として賃貸の用に供している(以下、これらの本件貸アパート、本件賃貸マンション、本件貸駐車場及び本件貸地を併せて「本件不動産」という。)。
ロ 請求人は、平成13年7月○日に不動産管理を目的としてK社を設立しており、同社は、法人税法第2条《定義》第10号に規定する同族会社であり、本店所在地は、請求人の事業所の所在地でもあるP市T町f番である。
 同社における代表取締役は請求人であり、取締役は請求人の妻及び子2名の3名であるが、役員報酬は、請求人及び請求人の妻に対してのみ支払われている。
 また、同社は従業員を雇用していない。
ハ 請求人は、本件不動産について、平成13年7月○日にK社との間で不動産管理に係る保証委託契約(以下「本件契約」という。)を締結し、以後、本件契約は更新されているところ、不動産管理に係る保証委託契約書には、要旨次の記載がある。
(イ)第○条(管理業務の内容)
A 管理物件の機能管理、保全管理、衛生管理及び営繕業務
B 賃借人の募集、選択、賃貸借契約の締結履行、条件変更、更新、解除等の契約管理
C 賃料、共益費、附加使用料、駐車料等の計算徴収及び敷金、保証金等預り金の受託保管並びに管理物件に係る維持管理費、地代、町内関係費、損害保険料その他必要経費等の収支管理
(ロ)第○条(経常的報酬)
 この契約にかかる経常的報酬は、請求人の不動産年間賃貸料の10%とし、請求人は毎年12月末に支払うものとする。
(ハ)第○条(契約の存続期間)
 この契約の存続期間は、平成13年7月○日より満2年間とする。ただし、当事者が期間満了3か月前までに別段の意思表示をしないときは、この契約と同一条件をもって更に2年間更新されたものとする。その後の期間満了についても同様とする。
ニ 本件貸アパートについて、請求人とL社は、Xアパートが平成12年1月17日(賃貸借期間が平成12年4月1日から平成14年5月31日)付で、Yアパートが平成14年11月25日(賃貸借期間が平成15年3月1日から平成17年4月30日)付で、それぞれ建物の一括賃貸借に係る契約を締結し、以後、同契約は更新されているところ、建物の一括賃貸借に係る契約書(以下「本件一括賃貸借契約書」という。)には、要旨次の記載がある。
(イ)第○条
 請求人は、本件貸アパートをL社に居住だけを目的とした転借人に転貸することを目的で使用させることを約し、L社は、これを借り受け、賃料を支払うことを約した。
(ロ)第○条
 請求人又はL社が、賃貸借期間満了3か月前の日までに相手方に対して更新をしない旨の通知をしなかったときは、賃貸借期間の満了日の翌日から起算して2年間本契約は、従前の条件と同一の条件により更新されるものとし、更新された契約についても、また同様とする。
(ハ)第○条
 L社は、第○条第○項の賃料を毎月20日に当月分を定められた支払方法により請求人に支払わなければならない。
(ニ)第○条
 請求人及びL社は、清掃、建物、設備等の維持管理を行うものとし、L社は、建物共用部分の定期清掃、屋外敷地の草刈り、樹木の剪定を行い、請求人は、浄化槽の維持管理、建物共用部分の照明器具の管球取替え、建物共用設備の電気・水道の使用に伴う公共料金の支払を行うものとする。
(ホ)第○条
 L社は、本件貸アパートが損傷したときは、請求人に通知しなければならない。
ホ 本件賃貸マンションについて、請求人とM社は、平成13年2月22日付で、賃貸建物の管理に係る委託契約(契約期間は平成13年2月22日から平成15年2月末日)を締結し、以後、同契約は更新されているところ、当該賃貸建物の管理に係る委託契約書には、要旨次の記載がある。
(イ)第○条
 請求人がM社へ委託する管理業務の範囲は、賃貸建物の管理に係る委託契約約款(以下「約款」という。)第○条(家賃徴収業務)、同第○条(契約更新業務)、同第○条(退居管理業務)、同第○条(入居者斡旋業務)、同第○条(建物点検業務)、同第○条(空室管理業務)、同第○条(共益費の管理)、同第○条(各種取次業務)、同第○条(車庫証明)である。
(ロ)約款には、上記(イ)の各条項等について要旨次の記載がある。
A 第○条(契約期間)
 本契約の契約期間は、期間満了日の2か月前に請求人及びM社何れからも契約解除の意思表示がない場合、本契約は更に2か年更新されるものとし、その後も同様とする。
B 第○条(家賃徴収業務)
 M社は、本件賃貸マンションの居住用各部屋及び駐車場において、請求人が各賃借人と締結した賃貸借契約に基づき、賃借人から家賃・駐車料及び共益費の徴収(受領)を行う。また、M社は、各賃借人が賃料など支払義務を履行しない場合、各賃借人に対し電話、訪問、通知書により督促を行う。
C 第○条(契約更新業務)
 請求人と各賃借人の賃貸借契約の期間満了時において、M社は請求人と協議の上、契約の更新手続を行う。
D 第○条(退居管理業務)
 M社は、各賃借人より賃貸借契約の終了及び中途解約による明渡通知がなされた場合、請求人に報告、協議の上必要な手続を行う。また、M社は、明渡しに伴う原状回復に関し、修繕内容、請求人と各賃借人との費用負担割合について請求人及び各賃借人と協議する。
 また、請求人は、M社から報告を受けた退居精算額をM社の指定する期日までにM社に交付し、M社は、請求人より退居精算金の受領後遅滞なく各賃借人に対し退居精算を行い、精算金を引渡す。
E 第○条(入居者斡旋業務)
 M社は、各賃借人より明渡通知がなされた場合、請求人と協議し次の入居募集条件を決定し、次の賃借人の入居者斡旋業務を行うことができる。
F 第○条(建物点検業務)
 M社は、定期的に本件賃貸マンションを巡回し、不具合等の有無を請求人に報告する。また、M社が巡回中に各賃借人の法令、賃貸借契約若しくは使用規制に違反する行為又は本件賃貸マンションの保存に有害な行為を発見した場合には、M社は各賃借人に対しその行為の中止を求める。なお、各賃借人より本件賃貸マンションに関し不具合等の苦情申し出があった場合、M社は、現状を確認し必要に応じ請求人に報告を行い請求人と処理について協議する。
 さらに、事故等により緊急に修繕が必要な場合、M社は請求人及び各賃借人の承諾を得ることなく必要な措置を講じることができる。
G 第○条(空室管理業務)
 M社は、本件賃貸マンションの空室についても、定期的に巡回し請求人に報告を行うこととし、空室の維持・清掃費については請求人の負担とする。
H 第○条(共益費の管理)
 請求人は、各賃借人が負担する共益費をM社が管理することを委託し、M社は必要の都度本件賃貸マンションの共用部の維持管理費に充当する。なお、維持管理業者等への支払はM社が請求人に代わって支払う。
 また、共益費の維持管理項目は、共用電気料、共用水道料、受水槽保守清掃、排水管清掃、植栽維持管理、消防設備維持管理、クリーンキーパー清掃、自治会費納入、共用灯交換及びM社が共用部分設備等の維持に必要と判断する項目である。
I 第○条(各種取次業務)
 M社は、各賃借人から請求人に対する賃貸借契約の賃借人名義変更の申入れ、賃貸借契約の連帯保証人変更の申入れ、増改築工事の申入れ、賃貸借契約の解除・解約の申入れ、賃貸借契約の条件変更の申入れ、その他賃貸借契約に関する一切の申入れ等があった場合には、これを受け付け、請求人に連絡し、請求人から各賃借人に対する賃貸借契約の賃貸人名義変更の申入れ等があった場合には、これを受け付け、各賃借人に通知する。
J 第○条(車庫証明)
 M社は、各賃借人から各賃借人の車両に関し車庫証明の申入れが行われた場合、管理受託者として保管場所使用承諾証明書の発行を行う。
ヘ 請求人は、K社に対して支払った管理料(以下「本件管理料」という。)は、平成13年分は3,690,000円、平成14年分は4,152,000円及び平成15年分4,326,000円であるとして、これらの金額を本件各年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入して青色の確定申告書を提出した。
ト 原処分庁は、本件管理料のうち、本件貸アパート及び本件賃貸マンションに係る管理料について、非同族の法人に建物の管理業務を委託している個人の青色申告者(以下「類似同業者」という。)が支払っている管理料の賃貸料収入の額に占める管理料割合の平均値(以下「同業者率」という。)を超える部分の割合に相当する金額については、所得税の負担を不当に減少させる結果になるとして、所得税法第157条第1項の規定を適用し、また、本件貸駐車場及び本件貸地に係る管理料については、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用として認められないとし、本件管理料の金額のうち、平成13年分は3,046,563円、平成14年分は3,275,234円及び平成15年分は2,845,542円を、本件各年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できないとして更正処分(以下「本件各更正処分」という。)をした。

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2 主張

 別紙2「当事者の主張」のとおり。

3 判断

(1)争点1

イ 所得税法第155条《青色申告書に係る更正》第2項は、青色申告書に係る不動産所得の金額等を更正する場合には、更正通知書に更正の理由を附記すべき旨を規定しているところ、その趣旨及び目的は課税庁の判断の慎重さ及び合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方納税者に知らせて不服申立ての便宜を与えることにあると解される。
 同趣旨に照らすと、本件のように課税庁が納税者の帳簿書類の記載自体を否認して更正するのではなく、その帳簿において経費として記載されている金額の支出を認めた上で更正をする場合には、どのような理由によりその支出の必要経費算入を否認したのか、その法律上及び事実上の根拠を摘示するとともに、そのような評価に至った過程について記載されていれば足り、それ以上に事実関係の細部にわたって、当該法的評価及び判断の根拠となった事実を記載する必要はないと解するのが相当であり、理由附記の程度については、例えば、不動産所得に係る総収入金額として加算すべき金額及びその算出方法並びに加算すべき理由が簡潔に記載されていれば足り、たとえ平均管理料割合の算出根拠自体や比準同業者がどのような者であるか等について記載されていなかったとしても、更正処分の理由附記として欠けるところはないとされている。
ロ これを本件についてみると、本件各年分の更正通知書には、更正の理由(以下「本件理由附記」という。)として、〔1〕本件各年分において請求人が申告した本件管理料は、平成13年分は3,690,000円、平成14年分は4,152,000円及び平成15年分は4,326,000円であること、〔2〕本件貸アパート及び本件賃貸マンションに係る本件各年分における管理料は、賃貸料収入に同業者率を乗じた額を超えており、所得税法第157条の規定に基づき適正な額ではないこと、〔3〕本件貸駐車場及び本件貸地の管理業務は、請求人の責任と判断で行われるべき性質のものであることから、所得税法第37条に基づき不動産所得を生ずべき業務について生じた費用として認められないこと、〔4〕本件管理料のうち、平成13年分は3,046,563円、平成14年分は3,275,234円及び平成15年分は2,845,542円を必要経費に認められないとして減算する旨記載されており、本件理由付記は、本件各更正処分が行われた根拠又は判断過程を上記イの理由附記制度の趣旨、目的を充足する程度に具体的に明らかにしているものと認められる。
 したがって、本件理由附記に法が要求する理由附記として欠けるところはないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2)争点2

イ 認定事実
 請求人の提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)原処分庁の調査担当職員は、調査の過程において、平成13年分及び平成14年分の賃貸料収入に占める管理料割合を本件貸アパート及び本件賃貸マンションが各5%、本件貸駐車場及び本件貸地が各10%とした検討資料並びにこれに基づく税額計算表を作成して請求人に交付している。
(ロ)その後、調査担当職員は、平成16年6月22日及び同年11月8日に請求人と面接し本件管理料の根拠等について聴取し、質問てん末書を作成している。
ロ 請求人は、調査担当職員が調査の過程で示した検討事項と記載された資料と本件各更正処分の内容が異なるのは、課税庁の自由裁量による課税であり、法律によらない課税と同一であるから、租税法律主義に違反する旨、また、平成16年1月28日以降、請求人は調査担当職員と接触しておらず、平成15年分の調査は受けていないにもかかわらず、更正処分を受けた旨主張するが、上記イの(ロ)のとおり、同日以降においても調査担当職員による調査は継続していることが認められる。また、当該資料は、本件管理料の検討及びこれに基づく税額等を算出するために、調査過程において作成されたものと認められ、資料の内容と本件各更正処分の内容が異なったとしても、そのことをもって原処分が違法となるものではない。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。

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(3)争点3

イ 認定事実
 請求人の提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件不動産に係る管理の状況
A 本件貸アパート
(A)当審判所が本件貸アパートを現地において確認したところ、本件貸アパートは、2棟8戸の共同住宅であり、敷地入口には入居者募集の看板が設置してあるが、その内容は、○○社の社名、所在地、電話番号等が記載されている。なお、K社の連絡先等を表示した看板等は設置されていない。
(B)本件一括賃貸借契約書の契約内容を具体的に説明したL社作成のパンフレットによると、〔1〕入居者の募集や現地案内、入居者審査等をすべてL社で行うこと、〔2〕空室が突然発生した場合でも、同社との契約家賃を受け取れること、〔3〕家賃滞納や苦情、トラブルがあった場合、同社が窓口となって対応すること、〔4〕入退室時の手続を同社が行うこと、〔5〕入居者入替え時の補修工事なども同社が引き受け、契約に基づく費用負担による精算業務を行うこととされており、同社が本件貸アパートの全室を一括で借り上げ、入居希望者に転貸する一括借上システムとなっている。
(C)また、請求人が当審判所に提出した平成11年10月30日付のL社の借上家賃査定に関する報告書によると、本件貸アパートの定額家賃保証率は90%であり、募集案内した月額家賃267,500円の90%である240,750円が保証され、この金額から維持管理費用4,400円を差し引いた236,350円が月額賃料として査定されている。
 なお、年額賃料については、その翌年1月にL社から請求人に対し、不動産の使用料の支払調書及び家賃年間支払明細表により報告が行われている。
(D)L社から請求人に対して送付された平成13年10月ないし平成15年12月までの維持管理に関する報告書によると、同社において、毎月、定期的に建物巡回点検及び清掃作業が行われており、当該清掃作業の内容は、階段やホールのごみ回収と掃き掃除、階段手すりの拭き掃除、共用部の草取り、駐車場及び共用部分のごみ掃除、共用灯の拭き掃除であり、また、同社が行う建物巡回及び目視点検の中で本件貸アパートに補修工事を要する箇所がある場合は、請求人へ随時報告することになっている。
(E)平成15年4月22日及び同年10月24日付の○○社に対して支払われた浄化槽の維持管理費について、同社が発行した領収書のあて先には、K社と記載されているが、K社の総勘定元帳には当該取引の記載は認められない。
B 本件賃貸マンション
(A)当審判所が本件賃貸マンションを現地において確認したところ、建物の名称はZマンションで、戸数は42戸、駐車場は18台分あり、敷地入口にはM社名の立て看板等が4箇所に設置してあり、その内容は、入居の問合せ、入居案内、違法駐車の防止、違法駐輪の防止等を記載したものである。なお、K社の連絡先等を表示した看板等は設置されていない。
(B)本件賃貸マンションに係る契約書の契約内容を具体的に説明したM社作成のパンフレットによると、同社の行う管理業務は、〔1〕入居者斡旋業務、〔2〕家賃管理業務、〔3〕建物管理業務及び〔4〕契約管理業務の4項目に区分され、それぞれ、〔1〕入居者斡旋業務は入居者募集及び入居の管理、〔2〕家賃管理業務は家賃の集金管理、家賃の立替え、家賃の督促、家賃滞納保証、家賃支払明細書の送付、確定申告用資料(年間収支報告書)の発行及び敷金(保証金)管理、〔3〕建物管理業務は定期巡回検査と報告、修繕工事の提案、緊急修理及び24時間電話受付、〔4〕契約管理業務は退居の管理、賃貸借契約の代行、入居者からのクレームの対応、契約に反する入居者への退居交渉及び法的措置とされている。
(C)M社は、請求人に支払うべき家賃、駐車料、共益費の額及び同社で差し引く管理費、消費税等、共済会費、維持費の額並びに入居者ごとに算出された差引支払額が記載された家賃支払明細書を毎月作成し、請求人に送付するとともに、収支内訳書も毎年作成し送付している。
C 本件貸駐車場
(A)当審判所が本件貸駐車場を現地において確認したところ、本件S町貸駐車場は請求人の自宅に、また、本件T町貸駐車場は請求人の自宅から200メートル程度の距離にある請求人の事業所に隣接しており、いずれもいわゆる青空駐車場である。
 また、本件貸駐車場に設置された看板には、N社が管理する月極駐車場であること及び契約者以外立入禁止とする内容が記載されている。なお、K社の連絡先等を表示した看板等は設置されていない。
(B)請求人が当審判所に提出したN社作成の自動車駐車場使用契約書によると、賃貸人は請求人、また、賃借人は駐車場使用者となっており、同契約書上においてK社に関する記載はない。また、駐車料金の支払先は、○○銀行○○支店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○)が記載されている。
D 本件貸地
(A)当審判所が本件貸地を現地において確認したところ、本件甲貸地はV社のガソリンスタンドとして、また、本件乙貸地はW社の駐車場として使用されている。
(B)平成10年6月29日に請求人とV社との間で作成された本件甲貸地に係る事業用借地権設定契約公正証書(以下「本件公正証書」という。)には、借地権の譲渡及び土地の転貸をしてはならない旨、また、平成7年7月1日に請求人とW社との本件乙貸地に係る賃貸借契約書には、当該賃借物件の転貸、その権利を譲渡すること及び建物を建築することはできない旨記載されている。
(ロ)請求人は、K社の代表取締役として、当審判所に対し、同社の管理業務の実績について、要旨次のとおり答述している。
A 本件貸アパートの管理業務は、請求人とL社との間で交わした建物の一括賃貸借に係る契約書のとおりであるが、同契約書の第○条に定めるとおり、浄化槽の維持管理、建物共用部分の照明器具の管球取替え、建物共用設備の電気の使用に伴う公共料金の支払の管理業務はK社が行い、費用の負担は請求人が行っている。
 また、これ以外のK社の行う管理業務の実績は、月の初旬、中旬、月末の土曜日、日曜日、月曜日に本件貸アパートの外観やブロックの損傷等の点検、空室内の状況確認、ブロック等の損傷の改善、空室の清掃及び風通し、砂利敷地部分の改善、敷地内のごみ拾い、通路の工事のほか、ブロック損傷による保険会社との交渉、L社からの口座振込の確認、必要経費等の収支管理である。
 なお、本件貸アパートに係る賃貸料は、L社から毎月20日に○○信託銀行○○支店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○)へ振り込まれている。
B 本件賃貸マンションの管理業務は、請求人とM社との間で賃貸建物の管理委託に係る契約書を交わしているが、M社の管理が不十分なためK社がその不備をカバーしており、K社の行う管理業務の実績は、月の初旬、中旬、月末の土曜日、日曜日、月曜日に行う清掃、空室検査、入居者審査及び保証人審査、オートロックの取替えの負担、違法駐車に対する貼り紙、ごみ置き場の清掃、放置自転車の撤去業務のほか、M社からの口座振込の確認、入居者の退去に伴う敷金の精算業務、施設破損による保険会社への届出、必要経費等の収支管理、M社に対する契約不履行者への明渡勧告の依頼である。
 なお、本件賃貸マンションに係る賃貸料は、M社から毎月27日に○○信用組合本店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○)に振り込まれている。
C 本件貸駐車場の管理業務は、賃借人からの口座振込確認、賃借人からの口座振込額等のノートへの記帳、現金持参者の駐車料徴収、賃借人審査及び保証人審査、車庫証明発行、必要経費等の収支管理のほか、月の初旬、中旬、月末の土曜日、日曜日、月曜日に行う清掃、違法駐車の見回り、滞納者への督促、側溝破損に関する市役所への連絡であるが、賃借人の斡旋はN社が行い、同社の書式による契約書を使用している。
 なお、本件貸駐車場の各月分の駐車料金は、請求人宅へ現金で持参する者を除き、各賃借人から○○銀行○○支店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○)へ振り込まれている。
D 本件貸地の管理業務は、定期的な見回り、賃借人からの口座振込確認、ノートへの収支の記帳である。
 なお、賃借料は、V社が毎月末日に、W社が毎月10日に、○○信用金庫○○支店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○)に振り込まれている。
E 本件契約に基づきK社が行った管理業務については、同社の設立以来記録してない。
ロ ところで、所得税法第37条第1項は、その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、不動産所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他不動産所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする旨規定しており、「不動産所得を生ずべき業務について生じた費用の額」とは、当該業務の遂行上生じた費用、すなわち業務との関連のある費用をいい、これは単に業務と関連があるというだけではなく、客観的にみてその費用が業務と直接関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものに限られるとされている。
 つまり、ある費用が所得税法第37条第1項の必要経費として認められるためには、その費用が「業務について生じた費用」として業務との直接の関連性及び必要性が要求され、また、事業遂行のために必要か否かの判断は、単に事業主の主観的判断のみではなく、社会通念上必要なものとして客観的に必要経費として認識できるものでなければならないとされている。
ハ これを本件についてみると、次のとおりである。
(イ)本件貸アパート
A 上記イの(ロ)のAのとおり、請求人は、本件一括賃貸借契約書の第○条に規定する浄化槽の維持管理、建物共用部分の照明器具の管球取替え、建物共用設備の電気・水道の使用に伴う公共料金の支払の管理業務については、L社に委託しておらず、K社が管理業務を行っている旨答述するが、上記イの(イ)のAの(A)及び(E)並びに上記イの(ロ)のEのとおり、K社が管理業務を行っていたことを客観的に認識し得るような事実を認めることはできない。
B また、上記A以外に、請求人が、K社が行ったと答述する管理業務については、上記イの(イ)のAの(B)のとおり、本件貸アパートが、L社に一括借上されており、また、L社において、前記1の(4)のニの(ニ)及び上記イの(イ)のAの(D)のとおり、毎月、定期的に建物巡回点検及び清掃作業が行われ、清掃作業として、階段やホールのごみ回収と掃き掃除、階段手すりの拭き掃除、共用部の草取り、駐車場及び共用部分のごみ掃除、共用灯の拭き掃除が行われており、また、建物巡回及び目視点検において、本件貸アパートに補修工事を要する箇所がある場合は請求人へ随時報告するようにされていることから、これらの業務は同社の本来の業務として行われており、K社が行うとされる管理業務は、L社の管理業務と事実上同一のものと認めることが相当であり、本件貸アパートの管理業務を請求人がK社に委託する客観的必要性は認められない。さらに、上記イの(ロ)のEのとおり、K社が履行したことを客観的に認めるに足る証拠も認められない。
C さらに、口座振込の確認及び必要経費の収支管理等の管理業務については、上記イの(イ)のAの(C)及び上記イの(ロ)のAのとおり、L社が毎月一定額の賃料を保証して、毎月20日に請求人名義の普通預金口座に振り込んでおり、年額賃料については、翌年1月に同社から不動産の使用料の支払調書及び家賃年間支払明細表により請求人に報告が行われており、当該業務をK社が行った事実は認められない。
D そして、上記イの(イ)のAの(A)のとおり、本件貸アパートの敷地入口の看板には、K社の連絡先等の表示は認められず、また、前記1の(4)のニの(イ)及び上記イの(イ)のAの(B)のとおり、本件貸アパートの入居契約は、L社と各転借人との間で締結されていることから、本件貸アパートの管理業務に関する各転借人からの問合せ先窓口等は同社であり、各転借人がK社を窓口等としている事実は認められない。
E その他請求人が主張ないし答述する業務についても、K社が履行したことを客観的に認めるに足る証拠はないから、K社が管理業務を行ったことを認めることはできない。
F そうすると、本件貸アパートに係る本件管理料を請求人が主張する業務の遂行上生じた費用と認めることはできない。
(ロ)本件賃貸マンション
A 上記イの(ロ)のBのとおり、請求人は、管理業務を行ったと答述するが、本件賃貸マンションに係る賃貸建物の管理に係る委託契約の当事者はK社ではなく請求人であるところ、〔1〕定期的な清掃は、約款の第○条において、M社が各賃借人から共益費を徴収してクリーンキーパー清掃が行われていること、〔2〕定期的な空室検査は、同第○条において、M社が定期的に巡回し請求人に報告することになっていること、〔3〕入居者・保証人審査は、同第○条において、M社が請求人と協議して次の入居募集条件を決定し、次の賃借人の入居者斡旋業務を行うことができるとされていること、〔4〕M社に対する契約不履行者への明渡勧告の依頼に関しては、同第○条において、M社が受け付けていること、〔5〕オートロックの取替えに関しては、同第○条において、M社が修繕工事の提案及び緊急修理を行うことができる旨記載されていること、〔6〕違法駐車に対する貼り紙及び放置自転車の撤去業務に関しては、上記イの(イ)のBの(A)のとおり、M社が違法駐車の防止及び違法駐輪の防止を記載した立て看板を設置していること、〔7〕入居者の退居に伴う敷金の精算業務は、同第○条において、請求人がM社から報告を受けた退居精算額を同社の指定する期日までに同社に交付することになっており、これらの業務は同社の本来の業務として行われていることから、K社が行うとされる管理業務は、M社の管理業務と事実上同一のものと認めることが相当である。
 したがって、本件賃貸マンションの管理業務をK社に委託する客観的必要性は認められず、さらに、上記イの(ロ)のEのとおり、K社が履行したことを客観的に認めるに足る証拠も認められない。
B また、M社からの口座振込の確認及び必要経費等の収支管理は、上記イの(イ)のBの(C)及び上記イの(ロ)のBのとおり、M社から、家賃支払明細書が請求人へ送付され、これに基づいて入居者ごとに算出された差引支払額が、毎月27日に請求人名義の預金に振り込まれていること及び同明細書に基づき作成された本件各年分の収支内訳書が請求人へ送付されていることから、当該業務をK社が行った事実は認められない。
C そして、上記イの(イ)のBの(A)のとおり、本件賃貸マンションの敷地入口に設置されている立て看板等には、K社の連絡先等の表示は認められず、上記イの(イ)のBの(B)のとおり、本件賃貸マンションにおける各賃借人からの問合せ先窓口等はM社であり、各賃借人がK社を窓口等としている事実は認められない。
D その他請求人が主張ないし答述する業務についても、K社が履行したことを客観的に認めるに足る証拠はないから、K社が管理業務を行ったことを認めることはできない。
E そうすると、本件賃貸マンションに係る本件管理料を請求人が主張する業務の遂行上生じた費用と認めることはできない。
(ハ)本件貸駐車場
A 上記イの(ロ)のCのとおり、請求人は、管理業務を行ったと答述するが、上記イの(イ)のCの(A)のとおり、当該貸駐車場に設置されている看板には、K社の連絡先等の表示は認められない。
 また、上記イの(イ)のCの(B)のとおり、本件貸駐車場についてN社が作成した自動車駐車場使用契約書においては、K社は契約の当事者ではないことから、同社の管理業務の客観的必要性を認めることはできない。
B また、賃借人からの口座振込確認、賃借人からの口座振込額等のノートへの記帳、現金持参者の賃借料徴収、必要経費等の収支管理については、上記イの(ロ)のCのとおり、本件貸駐車場の賃貸料は、各賃借人から、毎月請求人名義の預金に振り込まれており、当該業務をK社が行った事実は認められない。
C その他請求人が主張ないし答述する業務についても、K社が履行したことを客観的に認めるに足る証拠はないから、K社が管理業務を行ったことを認めることはできない。
D そうすると、本件貸駐車場に係る本件管理料を請求人が主張する業務の遂行上生じた費用と認めることはできない。
(ニ)本件貸地
A 上記イの(ロ)のDのとおり、請求人は、管理業務を行ったと答述するが、定期的な当該貸地の見回りについては、上記イの(イ)のDの(A)のとおり、本件貸地は、V社及びW社が使用しており、上記イの(イ)のDの(B)のとおり、本件公正証書には、本件甲貸地の借地権を譲渡し又は土地の転貸をしてはならない旨、また、請求人とW社との賃貸借契約書では、本件乙貸地を転貸又はその権利を譲渡すること及び建物を建築することはできない旨規定しており、本件各年分においては、本件甲貸地は賃借人がガソリンスタンドに、本件乙貸地は賃借人が公衆浴場の駐車場にそれぞれ使用し、賃借人の責任の下で管理されていることから、K社の管理業務の客観的必要性を認めることはできない。
B また、賃借人からの口座振込確認、ノートへの収支の記帳については、上記イの(ロ)のDのとおり、本件貸地の賃貸料は、各賃借人から、毎月請求人名義の預金に振り込まれており、当該業務をK社が行った事実は認められない。
C その他請求人が主張する業務についても、K社が履行したことを客観的に認めるに足る証拠はないから、K社が管理業務を行ったことを認めることはできない。
D そうすると、本件貸地に係る本件管理料を請求人が主張する業務の遂行上生じた費用と認めることはできない。
(ホ)以上(イ)ないし(ニ)のとおり、請求人がK社と本件契約を締結した業務内容は、いずれも請求人の不動産所得を生ずべき業務遂行上の必要性が認められず、また、K社が本件契約に基づく業務について履行したことを客観的に認めるに足る証拠も認められないことから、本件管理料のうち、請求人の所得税法第37条第1項に規定する不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、零円とすることが相当である。
(ヘ)なお、原処分庁は、本件賃貸アパート及び本件賃貸マンションに係る本件管理料の算定に当たり所得税法第157条第1項を適用し、また、請求人は、本件契約に基づく管理料の支払であれば、租税回避に基づく支出であっても、税法上有効な契約により支出しなければならないものであるので、必要経費を否認することはできない旨主張するが、上記(イ)ないし(ニ)のとおり、本件管理料は、所得税法第37条第1項の規定を適用し、零円とすることが相当であることから、所得税法第157条第1項の規定を適用する余地はなく、当事者双方の主張を採用することはできない。
(ト)また、請求人は、平成13年分の不動産所得の計算上必要経費に算入すべき管理料は、本件契約に基づくとK社の設立日である平成13年7月○日から同14年7月○日までが1期間であり、債務は毎年12月31日に確定するからこの期間の管理料を必要経費に計上すべきである旨主張するが、請求人は、本件契約において、前記1の(4)のハの(ロ)のとおり、不動産年間賃貸料の10%を毎年12月末にK社に対して支払うことを定めており、この賃貸料収入は暦年であることから、原処分庁が、平成13年7月から12月までの6か月を本件管理料の計算期間としたことは適法であり、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
 なお、上記(ホ)のとおり、本件不動産に係る不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき本件管理料の金額は零円とすることが相当である。
ニ 総所得金額
 以上の結果、請求人の本件各年分の不動産所得の金額は、別表3の「審判所認定額」欄のとおり平成13年分は○○○○円、平成14年分は○○○○円及び平成15年分は○○○○円となり、不動産所得以外の所得金額については請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められないから、請求人の各年分の総所得金額は、別表3の「審判所認定額」欄のとおり、平成13年分は○○○○円、平成14年分は○○○○円及び平成15年分は○○○○円となる。
 これらの金額は、本件各更正処分に係る金額を上回るから、その範囲内でされた本件各更正処分は適法である。

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(4)過少申告加算税の賦課決定処分を含む原処分のその他の部分については、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。

別紙1 関係法令の要旨

所得税法
第37条
第1項 その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、この所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする。
第155条
第2項 税務署長は、居住者の提出した青色申告書に係る年分の総所得金額等の更正をする場合には、その更正に係る国税通則法第28条第2項(更正通知書の記載事項)に規定する更正通知書にその更正の理由を附記しなければならない。
第157条
第1項 税務署長は、内国法人である法人税法第2条第10号(定義)に規定する同族会社の行為又は計算で、これを容認した場合にはその株主若しくは社員である居住者又はこれと政令で定める特殊の関係のある居住者の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その居住者の所得税に係る更正又は決定に際し、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その居住者の各年分の確定申告書の記載事項に掲げる金額を計算することができる。

別紙2 当事者の主張

争点1 更正の理由附記に不備があるとして、違法となるか否か。

請求人

 本件各更正処分に適用した同業者率は、税額算定の基礎をなすものであるから、原処分庁は、更正通知書において、これがどのような根拠に基づいて算定され、正当であるのかを明らかにする必要があり、その記載内容は、不服申立ての便宜及び原処分庁の恣意抑制という両方の要請に応じるものでなければならない。
 しかしながら、更正通知書に記載された同業者率は、単に数字を記載しているのみで、管理料割合の算定の対象となった類似同業者が不動産賃貸会社なのか、純粋な管理会社であるのかさえ明らかでなく、K社と具体的にどのような点で同一視されるのかの説明もない。
 これらの記載がないということは、不服申立ての便宜の要請及び原処分庁の恣意抑制の両方の要請に反するとともに、最高裁判決「昭和36年(オ)84号」において、原処分庁の判断の慎重、合理性を担保して、その恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手先に知らせて不服申立ての便宜を与えようとするものであるから、更正通知書に理由を記載する場合には、更正した根拠を帳簿の記載以上に信憑力のある資料を提示して具体的に明示することを要するとした趣旨にも反する。

原処分庁

 帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合は、納税者による帳簿の記載を覆すものではないから、更正通知書記載の更正の理由が、更正をした根拠について帳簿記載以上に信ぴょう力のある資料を摘示するものではないとしても、更正の根拠を処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の附記として欠けるところはないと解されている。
 本件のように適正な不動産管理料の算定方法について見解を異にするような場合は、請求人の帳簿の記載自体を否認するものではないから、更正した根拠につき帳簿の記載以上に信ぴょう力のある資料を摘示して具体的に明示することまで必要とするものではない。
 したがって、不動産所得に係る適正管理料を超える金額として否認される金額及びその算出方法並びに否認すべき理由は簡潔に記載されているのであるから、請求人が主張するように更正通知書に平均管理料割合の算出根拠や比準同業者がどのような者であるか等について記載されていなかったとしても、本件各更正処分の理由附記は適法であり、請求人の主張には理由がない。

争点2 調査手続に違法があるか否か。

請求人

 原処分庁が調査の過程で示した検討事項と記載された資料によると、平成13年分及び平成14年分の管理料割合は、本件貸アパート及び本件賃貸マンションが5%、本件貸駐車場及び本件貸地が10%であったが、本件各更正処分においては、本件貸アパート及び本件賃貸マンションが、平成13年分4.19%、平成14年分2.75%、平成15年分4.4%であり、本件貸駐車場及び本件貸地が0%であった。
 なぜ同じ税務署、同じ担当者であるのに管理料割合が異なるのか、本件貸駐車場及び本件貸地は10%が0%になるなど等開差があるのか、なぜ一貫性がないのか、そこに恣意性は介入していないのか疑問を禁じ得ない。
 また、原処分庁が調査の過程で示した管理料割合により修正申告に応じていれば、10%であり、応じなければ0%ということは、課税庁の自由裁量による課税であり、即ち法律によらない課税と同一であるから、憲法84条の租税法律主義に違反する。
 なお、原処分庁は、調査の過程において請求人に説明した管理料割合は、調査の途中においてなされたもので調査の最終結論を示したものではない旨主張するが、原処分庁の当初の調査は、平成16年1月20日であり、以後同月23日、28日であったが、この過程で調査の最終結論として税額計算表を示し、加算税の額まで提示したものである。
 同月28日以降、請求人は原処分庁と接触しておらず、同年6月22日に原処分庁から更正期間の関係で平成12年分から平成14年分の調査を平成13年分から平成15年分の調査に変更する旨の連絡を受けたが、その後平成15年分の調査は受けていない。

原処分庁

 税務調査は、課税標準又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味するものであり、証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈を経て更正処分に至るまでの思考、判断を含む極めて包括的な概念であると解されている。
 本件税額計算表は、最終結論として提示されておらず、更正処分に至るまでの新たな事実に基づいて異なった結論になったのであるから、請求人の主張には理由がない。

争点3 本件管理料のうち、本件各年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額はいくらか。

請求人

1 K社の管理業務
(1)本件貸アパート
イ 借上家賃査定に関する報告書に基づいて建物の一括賃貸借に係る契約書を締結しているのみで、L社に管理は委託していない。
ロ なお、K社の管理業務の実績は、次のとおりである。
(イ)家賃の徴収、口座振込確認、台帳記載業務
(ロ)立会い、室内検査等の退去管理業務
(ハ)空室の清掃及び風通し
(ニ)建物定期点検業務
(ホ)通風、清掃等の空室管理業務
(ヘ)車庫証明発行業務
(ト)設備のトラブルへの対応業務
(チ)騒音トラブルへの対応業務
(リ)違法駐車への対応業務
(ヌ)ごみ分別作業、ごみ置場の清掃業務
(ル)浄化槽の維持管理業務
(ヲ)建物共有部分の照明器具の点検、取替業務
(ワ)施設破損による警察署への被害届の提出業務
(カ)施設破損による保険会社との交渉業務
(ヨ)必要経費の収支管理、契約不履行者への明渡勧告、訴訟手続等の業務
(2)本件賃貸マンション
イ K社の管理業務の実績は、次のとおりである。
(イ)家賃の徴収、口座振込確認、台帳記載業務
(ロ)入居者審査、保証人審査等の契約締結業務
(ハ)立会い、室内検査等の退去管理業務
(ニ)建物共用部分の定期清掃業務
(ホ)設備のトラブルへの対応業務
(ヘ)騒音トラブルへの対応業務
(ト)違法駐車への対応業務
(チ)ごみ分別作業、ごみ置場の清掃業務
(リ)自転車スペースの整理整頓業務
(ヌ)放置自転車の撤去業務
(ル)入居者の退去に伴う敷金の精算業務
(ヲ)施設破損による警察署への被害届出の提出業務
(ワ)施設破損による保険会社との交渉業務
(カ)必要経費等の収支管理、契約不履行者への明渡勧告、訴訟手続等の業務
ロ 本件賃貸マンションは、単身世帯用で夜間のトラブルが多く、入退居率も高いため、昼夜を問わずの対応を余儀なくされる。
(3)本件貸駐車場
イ K社の管理業務の実績は、次のとおりである。
(イ)駐車料の徴収、口座振込確認、台帳記載業務
(ロ)入居者審査、保証人審査等の契約締結業務
(ハ)車庫証明発行業務
(ニ)敷地の定期清掃業務
(ホ)滞納者への督促業務
(ヘ)側溝破損に関する市役所への連絡業務
(ト)使用者の退去に伴う保証金の精算業務
(チ)必要経費の収支管理、契約不履行者への明渡勧告、訴訟手続等の業務
ロ 上記イの実績というのは、通常、今までに行ったことをいうのであって、常時、行っているという意味ではない。
ハ また、アスファルト敷きの青空駐車場は、毎日車が出入りすることから、タバコの吸殻やペットボトル等の散乱、落ち葉やスーパーの袋等の飛来により、当然汚れるものと決まっており、それを防ぐには普段からこまめに掃除して美観維持に努めることが物件の価値を維持することにつながる。
(4)本件貸地
イ K社の管理業務の実績は、次のとおりである。
(イ)地代の徴収、口座振込確認、台帳記載業務
(ロ)契約更新意思確認、値上交渉業務
(ハ)必要経費等の収支管理
(ニ)契約不履行者への明渡勧告、訴訟手続等の業務
ロ 本件貸地は本件貸アパート及び本件賃貸マンションと異なり、常時の管理は必要としないものの、過去においてはいつの間にか契約外の建物が建てられ、弁護士を依頼して訴訟を起こしたこともあり、物件等への定期的な見回りは事後のトラブルを避ける意味でも欠かせないものとなっている。
2 本件各年分の不動産管理料
(1)本件貸アパート及び本件賃貸マンション
イ 本件管理料の算定に当たっては、国税庁長官が発遣した平成12年9月6日付課所6−46「個人課税部門における事務運営の執行等に関する指示事項について」の不動産管理料の算定方法についての項目に記載されているとおり、委託する管理業務の内容及び事業規模並びに収益の状況等個々の実態に応じて算定しており、恣意性が介入する余地はない。
ロ 本件管理料は、次のとおり管理業務の実態等を総合勘案の上、不動産年間賃貸料の10%の額とした。
(イ)不動産収入に占める本件貸アパート及び本件賃貸マンションの割合は、平成13年分が73%、平成14年分が77%、平成15年分が77%といずれも高く、これらの物件の管理業務が中心になるため、本件管理料もこれらの物件を主として勘案するとともに、これらの建物の見回りの頻度、昼夜を問わずの緊急時の迅速な対応やその提供する役務の内容、事業規模や収益の状況等管理業務の実態が多様であることを考慮した。
(ロ)特に、本件賃貸マンションは、単身世帯用で夜間のトラブルが多く、入退居率も高いため、昼夜を問わずの対応を余儀なくされること及びM社に本件賃貸マンションの管理の一部を月額賃料の5%で委託していることも考慮して、不動産年間賃貸料の10%とした。
ハ 本件管理料は、不動産収入を得る上での役務の対価として相当な金額であり、K社以外の会社に管理を依頼し、同様の役務の提供を求めた場合でも同額程度の支払を必要とするものである。
ニ 所得税法第157条第1項の適用に当たっては、経済的合理性を欠く行為や異常な取引形式に基づき、所得税の負担を不当に減少させる結果となることが要件となるが、請求人は、K社に不動産の管理を委託しているに過ぎず、これらの行為は経済的合理性を欠く行為でもなく、異常な取引形式でもない。
ホ 更正通知書による管理料割合は、本件貸アパート及び本件賃貸マンションが、平成13年分4.19%、平成14年分2.75%、平成15年分4.40%であるが、類似同業者の管理料割合の内訳をみると、最低1.01%から最高7.79%と著しく高低があり、管理委託の内容が類似性を有するにしては通常あり得ない数値である。
 また、類似同業者の件数をみると、平成13年分10件、平成14年分2件、平成15年分3件ということは通常考えられず、2件や3件で管理料割合を算定することは、著しく不合理であり客観性に欠ける。
ヘ 原処分庁は、調査時において、平成13年分ないし平成15年分の本件賃貸マンションに係る管理料割合を5%とし、その後の更正処分において、答弁書に添付した類似同業者の管理費割合表のとおり、平成13年分4.19%、平成14年分2.75%、平成15年分4.40%としていたが、更にその後に差替えを行い、平成13年分4.18%、平成14年分2.67%、平成15年分4.30%とした。
 このことについて原処分庁は、差替えにより請求人の各年分の不動産所得の金額及び納付する税額は原処分の税額を上回ることになるから、これらの範囲内でされた本件各更正処分は適法であると主張しているが、管理料割合が再三に変更になったことを鑑みるとその信頼性や客観性に欠け到底容認できるものではない。
ト また、判例における適正管理料の割合を見ると、7.81%から13.70%であり、原処分庁が主張するような適正管理料割合(2%〜4%)を判示するものはないことも明らかであり、所得税法第157条第1項に規定する所得税の負担を不当に減少させる結果として、裁決例、判例で認められたのは、開差率(当初支払の管理料割合―適正管理料割合)が、いずれも約20%ないし約50%という大差がある場合に限られており、本件のようにわずか6%ないし7%の僅差の例はない。
 したがって、このような僅差をもって、所得税の負担を不当に減少させる結果となると判断することはできず、本件各更正処分が違法であることは明らかである。
(2)本件貸駐車場及び本件貸地
イ 所得税法第37条第1項に規定する必要経費に該当するためには、事業関連性と客観的必要性とを備えていなければならないが、本件管理料は、事業関連性を有することは問題なく、客観的必要性についても、所得税法上は「通常」という文言が明文で規定されておらず、反社会的行為(違法行為)を原因とする収入でも収入すべき金額とされていることから、正当な支出であることまでは必要とされていない。
 したがって、本件契約に基づく管理料の支払であれば、租税回避に基づく支出であっても、税法上有効な契約により支出しなければならないものであるので、必要経費を否認することはできないと解されており、原処分庁が所得税法第37条第1項の必要経費性の要件を欠くと否認したのは、通説を根底から否定するものであり、誤りであることは明らかである。
ロ 本件貸駐車場及び本件貸地は、原処分庁は、本件貸駐車場において請求人が、何時、いかなる管理業務を行ったか等の記録及び保存が全くないと主張するが、管理業務は請求人ではなく、K社が行っているのであり、客観的に必要経費として認識できるものとは、記録及び保存の有無ではなく事実認定の問題である。
ハ 原処分庁は、更正通知書に「W社との賃貸借契約書は平成7年7月1日の契約開始日から現在まで自動更新されており、賃借料も一回も変更されていません。」と記載しているが、これは事実誤認であり、実際は昭和58年1月1日が契約開始日で、地代は当初が毎月200,000円であり、平成7年7月1日の賃貸借契約書から毎月250,000円となっている。
 また、原処分庁は、更正通知書に「V社との土地賃貸借契約書は平成5年1月1日の契約開始日以後、契約内容の変更はされていません。」と記載しているが、事実誤認であり、実際は平成4年12月24日に月額400,000円で土地賃貸契約書を締結し、その後平成10年6月29日に月額420,000円に契約内容を変更すると同時に公正証書の作成も行っている。
 原処分庁は、これらのことに関して、請求人が主張する契約開始日の相違は原処分の適法性に何ら影響するものではない旨主張するが、契約開始日等の相違は原処分の適法性に重要な意義を持っている。
(3)平成13年分の本件管理料
 本件管理保証委託契約の締結日は、K社の設立日である平成13年7月○日となっており、また、同契約の第6条によると、契約期間は平成13年7月○日より満2年となっている。
 即ち1年目が平成13年7月○日から平成14年7月○日で、2年目が平成14年7月○日から平成15年7月○日となっており、同契約の第5条では、不動産年間賃貸料の10%を毎年12月31日に支払うと定めている。
 請求人は、同契約に基づき7月○日から7月○日までを1期間とし、この間の12月31日に確定する管理料をこの期間の管理料として認識しているため、当然1年目の月割計算は行っていない。

原処分庁

1 K社の管理業務
(1)本件貸アパート
イ 本件貸アパートの管理は、L社との建物の一括賃貸借に係る契約であるが、いわゆる一括転貸(一括借上)方式による管理方法であり、オーナー個人の賃貸物件を管理会社が一括して借り上げ、第三者に賃貸して入居管理、建物維持管理等の賃貸経営全般に関わるすべての業務を代行する方法である。
 しかし、請求人はこの契約のほかにK社との間で本件契約を締結しており、その管理業務は、L社へ委託した管理業務とほとんどが重複している。
ロ 本件一括賃貸借契約書上、K社が独自で行うと考えられる管理業務は、本件貸アパートに係る浄化槽の維持管理、建物共用部分の照明器具の管球取替え、建物共用設備の電気・水道の使用に伴う公共料金の支払に係る業務程度である。
ハ 請求人は、K社が何時どのような業務を行ったか等の実績について何ら申述しておらず、管理業務が実際に行われたことが確認できる業務日誌等の記録及び保存がないばかりか、業務実績に関する説明も一切なされていない。
 これらの管理業務の内容は、一般的にはK社に委託するほどの必要性ないし通常性があるとはいいがたい。
(2)本件賃貸マンション
イ 請求人は、本件賃貸マンションの管理業務をM社に委託し、さらにK社との間で本件契約を締結しており、その管理業務は、M社へ委託した管理業務とほとんどが重複している。
ロ 請求人は、K社が何時どのような業務を行ったか等の実績について何ら申述しておらず、管理業務が実際に行われたことが確認できる業務日誌等の記録及び保存がないばかりか業務実績に関する説明も一切なされていない。
 これらの管理業務の内容は、一般的にはK社に委託するほどの必要性ないし通常性があるとはいいがたい。
(3)本件貸駐車場
 請求人は、K社が何時どのような業務を行ったか等の実績について何ら申述しておらず、管理業務が実際に行われたことが確認できる業務日誌等の記録及び保存がないばかりか、業務実績に関する説明も一切なされていない。
 請求人は、本件貸駐車場の管理業務について清掃等を主張するが、これは土地の所有者としての立場から普通に行われる程度の行為でしかなく、あえてK社に管理業務を委託すべきほどの必要性ないし通常性を認めることもできない。
(4)本件貸地
 請求人は、K社が何時どのような業務を行ったか等の実績について何ら申述しておらず、管理業務が実際に行われたことが確認できる業務日誌等の記録及び保存がないばかりか、業務実績に関する説明も一切なされていない。
 また、請求人は、本件貸地の管理業務について通常の管理は必要としないものの、物件等の見回り等は事後のトラブルを避ける意味でも欠かせない旨主張するが、これは土地の所有者としての立場から普通に行われる程度の行為でしかなく、本件貸地のように更地を貸し付けた後、借主が建物を建築し利用している場合や施設等の利用者のために駐車場を整備している場合は、通常管理を行う必要はないし、管理を行う場合でも借主の責任において行われるのが通例であり、あえてK社に管理業務を委託するほどの必要性ないし通常性を認めることもできない。
2 本件各年分の不動産管理料
(1)本件貸アパート及び本件賃貸マンション
イ 請求人は、管理業務の程度が異なるにもかかわらず、全ての不動産に一律に不動産年間賃料の10%を乗じた金額を本件管理料としたことについて、「K社は、節税のために設立したものであり、本件管理料の割合は、裁決事例等で20%とされていることも考慮して決定した。」旨申述しており、その算定根拠は明らかでなく、通常の商取引においては考えられない異常な取引形式である。
 また、請求人は、本件貸アパート及び本件賃貸マンションについて、L社及びM社に管理を委託しているにもかかわらず、さらにK社にも管理を委託する行為は、同社が同族会社であるがゆえになし得る行為であり、純経済人の行動としては極めて合理性を欠く行為であり、このことは、所得税法第157条第1項が適用される。
ロ 請求人は、類似同業者の管理料割合の内訳をみると、著しく高低があり、管理委託の内容が類似性を有するにしては通常あり得ない数値であり、類似同業者の件数も2件や3件で管理料割合を算定することは、著しく不合理であり客観性に欠ける旨主張するが、同業者率は、次の条件で抽出した類似同業者の委託管理料割合の平均値を本件各年分の適正な管理料割合としたものであり、これらの算出方法には合理性がある。
(イ)P市を所轄する税務署管内に申告書を提出している納税者で青色申告者である者
(ロ)不動産貸付収入が請求人の不動産貸付収入の半分以上2倍以下の範囲内にある者
(ハ)P市内以外に本件建物に類する物件がある者を除く。
(ニ)管理業務を委託している者(委託先が同族会社である者を除く。)
(ホ)不動産収入のうち貸地収入及び駐車場収入がある者を除く。
(ヘ)年間を通じて、不動産貸付業を営んでいる者
(ト)災害等により経営状態が異常であると認められる者以外の者
(チ)更正又は決定を受けている者については、当該処分につき不服申立期間又は出訴期間が経過している者並びに当該処分に対して不服申立中及び訴訟中でない者
ハ その結果、本件貸アパート及び本件賃貸マンションに係る本件各年分の非同族法人に支払う管理料同業者率は、平成13年分が4.19%、平成14年分が2.75%、平成15年分が4.4%であり、この割合を不動産年間賃貸料に乗じた金額がK社に支払う適正な管理料として更正処分を行ったが、その後、類似同業者の中に返還を要しなくなった敷金等を収入金額から除外している者が認められたため、新たに管理料割合を計算した結果、平成13年分が4.18%、平成14年分が2.67%、平成15年分が4.30%となったことから、答弁書の提出後に類似同業者の管理費割合表の差替えを行った。
ニ したがって、請求人がK社に支払った本件管理料の額のうち、この管理料割合(平成13年分4.19%、平成14年分2.75%、平成15年分4.4%)を超える部分に相当する額は、所得税の負担を不当に減少させる結果となり、所得税法第157条第1項の規定に該当することから、請求人の主張には理由がなく、また、類似同業者の管理費割合表の差替え後の管理料割合(平成13年分4.18%、平成14年分2.67%、平成15年分4.30%)に基づく本件各年分の納付する税額は、原処分の税額を上回ることになるから、これらの範囲内でされた本件各更正処分は適法である。
(2)本件貸駐車場及び本件貸地
イ 所得税法第37条第1項は、一般管理費を必要経費として控除するためには、業務の遂行上通常かつ一般的に必要な経費でなければならないことを要し、その必要性の判断においては、単に事業主の主観的判断のみによるのではなく、客観的に必要経費として認識できるものでなければならないと解されている。
 本来、管理料が役務の対価として相当であるか否かは、管理業務の内容、事業規模や収益の状況等個々の実態に応じて判断すべきものであるが、請求人は、原処分庁の調査担当者に対して、K社に対する管理割合が10%である理由を「K社は、節税のために設立したものであり、管理料割合は裁決事例等で20%が目安とされていることも考慮して決定した。」旨申述しており、本件貸駐車場及び本件貸地に係る管理料割合の算定根拠についても、裁決事例等で20%であるから妥当である旨主張するのみで具体的説明も行っていない。
ロ 請求人は、K社の管理業務について、本件貸駐車場は清掃等を主張するが、これは土地の所有者としての立場から普通に行われる程度の行為でしかない。また、同様に、本件貸地は物件等の見回り等を主張するが、これは土地の所有者としての立場から普通に行われる程度の行為でしかなく、本件貸地のように更地を貸し付けた後、借主が建物を建築し利用している場合や施設等の利用者のために駐車場を整備している場合は、通常管理を行う必要はないし、管理を行う場合でも借主の責任において行われるのが通例であり、請求人が主張するこれらの管理業務をあえてK社に委託するほどの必要性ないし通常性を認めることはできない。
 なお、本件貸地において請求人が主張する契約開始日の相違は原処分の適法性に何ら影響するものではない。
 したがって、本件貸駐車場及び本件貸地に係る管理料は、業務との関連性が希薄であり、業務の遂行上通常必要な経費として必要経費に算入することは認められないことから、本件各年分のおける適正な管理料は零円である。
(3)平成13年分の本件管理料
 所得税法第37条により必要経費として収入金額から控除できる一般管理費は期間対応を要するところ、平成13年分におけるK社による不動産管理は、同年7月○日から同年12月31日までであるから、翌年1月1日以降の不動産管理に係る費用を平成13年分から控除することはできない。

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