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(平18.4.11裁決、裁決事例集No.71 606頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

イ 本件は、審査請求人J、同L及び同M(以下、それぞれ「請求人J」、「請求人L」及び「請求人M」といい、これら3名を併せて「請求人ら」という。)が、相続により取得した取引相場のない株式の価額は、評価会社が土地の収用等に伴い取得した代替資産については租税特別措置法(平成13年法律第7号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第64条の2《収用等に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例》の規定を適用したことにより算定されるその資産の取得価額(以下「圧縮記帳後の価額」という。)を、また、上場会社の発行した非上場の無額面株式については、上場株式と同様に評価した価額を、それぞれ基にして評価すべきであるとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人らは、平成13年1月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したKの共同相続人4名のうちの3名であり、この相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税の申告書に、別表1の「申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ロ 次いで、請求人らは、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、本件相続に係る相続税について、別表1の「修正申告」欄のとおりとする修正申告書を平成16年11月5日に提出した。
ハ 原処分庁は、これに対し、平成16年11月11日付で別表1の「賦課決定」欄のとおりとする過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
ニ さらに、原処分庁は、平成16年11月12日付で別表1の「更正処分等」欄のとおりとする各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ホ 請求人らは、上記ニの処分を不服として、平成16年12月24日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成17年3月16日付でいずれも棄却の異議決定をした。
ヘ 請求人らは、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成17年4月15日に審査請求をするとともに、請求人Jを総代として選任し、その旨を届け出た。
ト その後、原処分庁は、請求人Lについて、平成18年1月27日付で別表1の「変更決定」欄のとおりの過少申告加算税の変更決定処分をした。

(3)関係法令等

 関係法令等の規定の要旨は、別紙のとおりである。

(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても、その事実が認められる。
イ 請求人Mは、本件相続により、主として生コンクリート卸売業を営む同族会社であるN社の株式(以下「本件株式」という。)を9,400株取得し、同社の発行済株式総数16,000株のうち11,000株を所有することとなった。
ロ N社が所有していた建物、構築物及び機械等(以下、これらを併せて「旧建物等」という。)並びに土地について、平成11年○月○日に、一般国道○号○○拡幅工事に伴う買取り等(以下「本件収用」という。)が行われた。
ハ N社は、上場会社であるT社が募集する第三者割当の無額面第一回第二種優先株式(以下「本件優先株式」という。)を、平成11年7月28日に、1株につき500円で20,000株取得した。
ニ なお、本件優先株式は、非上場の株式である。

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2 主張

(1)請求人ら

 次の理由により、原処分の一部の取消しを求める。
 なお、原処分のその他の部分については争わない。
イ 本件各更正処分について
 本件株式の価額については、N社の有する資産のうち本件収用に伴い取得した代替資産及び本件優先株式の価額を、次のとおり評価して算定すべきである。
(イ)本件各代替資産
 N社は、本件収用に伴い旧建物等の代替として、平成12年6月に、建物を42,521,409円、建物附属設備を3,541,400円、構築物を73,480,600円及び機械装置を194,752,616円(以下、当該各資産を順次「本件建物」、「本件建物附属設備」、「本件構築物」及び「本件機械装置」といい、これらを併せて「本件各代替資産」という。)でそれぞれ取得しているが、原処分庁は、本件株式の評価に際し、措置法第64条の2の規定を適用する前の取得価額(以下「圧縮記帳前の価額」という。)であるこれらの価額を基に本件各代替資産の価額を算定している。
 しかしながら、本件各代替資産は、本件収用という国の政策により強制的に土地を買い取られ、かつ、旧建物等を除去せざるを得なくなったことから正当な補償を得て取得したものであるが、旧建物等に比して品質、製造維持管理費、人件費など営業上の有利性はないのであるから、その評価に当たっては旧建物等と同様の状態であるとして評価をすべきである。
 したがって、本件各代替資産については、圧縮記帳後の価額から本件相続開始日までの減価償却費相当額を控除した後の価額をもって評価すべきであるから、本件各代替資産の価額は、本件建物は389,880円、本件建物附属設備は42,199円、本件構築物は600,051円及び本件機械装置は2,271,086円となり、その合計額は3,303,216円となる。
(ロ)本件優先株式
 原処分庁は、本件優先株式の価額を1株500円の払込金額をもって10,000,000円と評価している。
 しかしながら、本件優先株式は、払込金額の払戻しが優先となるものではなく、議決権もない株式であり、また、第1回中間配当金の支払時期の変更があったこと及び公的資金の導入が行われたことはT社の資産内容が悪化したことを意味し、払込金額を回収できる保証もないものである。
 したがって、本件優先株式についても、T社の一般の上場株式と同様に、本件相続開始日における市場価額である1株当たり122円で評価すべきであるから、本件優先株式20,000株の価額は2,440,000円となる。
ロ 本件各賦課決定処分について
 上記イより、本件各更正処分は違法であり取り消されるべきであるから、これに伴い本件各賦課決定処分についても取り消されるべきである。

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(2)原処分庁

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件各更正処分について
 本件株式の価額については、N社の有する資産のうち本件各代替資産及び本件優先株式の価額を、次のとおり評価して算定すべきである。
(イ)本件各代替資産
 請求人らは、本件各代替資産については、圧縮記帳後の価額を基に算定すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件各代替資産の圧縮記帳後の価額は、法人税法上、損金の額に算入される減価償却費等の基になる価額であって、客観的な交換価額である相続税法第22条に規定する財産の価額ではない。また、本件収用に伴い本件各代替資産を取得したことが、評価通達の定めによらない特別な事情とは認められないから、本件各代替資産の価額は評価通達の定めによるのが相当である。
 そうすると、本件各代替資産の価額は、圧縮記帳前の価額から本件相続開始日までの減価償却費相当額を控除した後の価額を基に評価すべきであり、本件建物は28,396,162円、本件建物附属設備は3,073,219円、本件構築物は43,703,545円及び本件機械装置は165,409,892円となり、その合計額は240,582,818円となる。
(ロ)本件優先株式
 請求人らは、本件優先株式については、T社の一般の上場株式と同様に評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件優先株式についてみると、本件優先株式の1株当たりの払込金額は500円であるところ、〔1〕残余財産を分配するときは、普通株主に先立ち本件優先株式の株主に対し1株につき500円支払われる旨定められていること、〔2〕本件相続開始日以降である平成13年3月期に3%の配当が行われていること等が認められるところから、払込金額と残余財産の分配が行われた場合に返済を受けることのできる金額とのいずれか低い金額により評価すべきである。
 そうすると、本件優先株式の価額は、本件相続開始日において、残余財産の分配が行われた場合に払込金額相当額の分配を下回る特段の事情は認められないから、1株当たりの払込金額500円で評価すべきであり、本件優先株式20,000株の価額は10,000,000円となる。
ロ 本件各賦課決定処分について
 上記イより、本件各更正処分は適法であり、かつ、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められないから、請求人Mについては同条第1項及び第2項の規定に基づいて、請求人J及び請求人Lについては同条第1項の規定に基づいて行った本件各賦課決定処分(ただし、請求人Lについては、平成18年1月27日付の変更決定処分による減額後のもの)はいずれも適法である。

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3 判断

(1)本件各更正処分について

イ 認定事実
 請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)N社について
 評価通達上、N社は評価通達189に定める比準要素数1の会社に該当する。
(ロ)本件各代替資産について
A 請求人ら及び原処分庁が主張する本件各代替資産の内訳は別表2−1の「資産名」欄のとおりであり、また、減価償却費相当額を控除するとするその計算内容は同表の「計算内容」欄のとおりである。
B N社は、平成12年6月までに本件各代替資産を新たに取得又は新築している。
C N社は、本件相続開始日において、本件各代替資産を株式会社Uに賃貸している。
(ハ)本件優先株式について
A T社が作成した本件優先株式に係る平成11年7月付「新株式(優先株式)発行届出目論見書」と題する書面には、要旨次のとおり記載されている。
(A)発行価額は、1株につき500円である。
(B)優先配当金は、1株につき15円である。
(C)残余財産を分配するときは、本件優先株式の株主に対し、普通株主に先立ち、本件優先株式1株につき500円を支払う。
(D)T社は、いつでも本件優先株式を買い入れ、これを株主に配当すべき利益をもって当該買入価額により消却することができる。
(E)T社は、平成17年3月31日以降いつでも本件優先株式1株につき500円で本件優先株式の全部又は一部を償還することができる。
(F)本件優先株式の株主は、株主総会における議決権を有しない。
(G)T社は、本件優先株式について株式の分割又は併合を行わない。また、本件優先株式の株主には新株の引受権又は転換社債若しくは新株引受権付社債の引受権を付与しない。
(H)本件優先株式の株主は、普通株式への転換請求権を有しない。また、普通株式への一斉転換も行われない。
B T社が作成した平成15年4月1日から平成16年3月31日までの事業年度に係る「第○期有価証券報告書」と題する書面には、第○期(平成12年3月決算)から第○期(平成14年3月決算)までの1株当たり純資産額は、期末純資産額から「期末発行済優先株式数×発行価額」を控除した金額を、期末発行済普通株式数で除して算出している旨記載されている。
C 平成14年7月4日付国税庁課税部資産課税課情報第10号ほか1「資産税関係質疑応答事例について(情報)」と題する書面(以下「本件情報」という。)によれば、上場会社が発行した要旨次のような非上場の無額面株式の場合、普通株式に優先して配当があり、また、払込金額を償還することを前提としているため、配当を利息に相当するものと考えると、普通株式よりも利付社債に類似した特色を有すると認められることから、取引相場がない場合における利付社債の元本の評価方法に準じて、株式払込価額である1株当たりの金額と残余財産の分配が行われた場合に返済を受けることのできる金額とのいずれか低い金額により評価するとしている。
(A)優先配当金がある。
(B)残余財産の分配は、普通株式に先立って行われ、これ以外の分配は行われない。
(C)発行会社は、いつでも当該株式を買い入れ、これを株主に配当すべき利益をもって当該買入価額により消却することができる。
(D)発行会社は、定めた時期以降は、いつでも定めた価額で株式の全部又は一部を償還することができる。
(E)株主は、株主総会において議決権を有しない。
(F)発行会社は、株式の分割又は併合を行わない。また、新株の引受権又は転換社債若しくは新株引受権付社債の引受権を付与しない。
(G)株主は、普通株式への転換請求権を有しない。また、普通株式への一斉転換も行われない。
ロ 相続税における時価等
(イ)相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定しており、この場合の時価とは、相続開始の時において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額、すなわち、客観的な交換価額をいうものと解される。
 しかしながら、客観的な交換価額というものが必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務上は、財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。
 もっとも、評価通達に定められた評価方式によって算定される価額が相続財産の相続開始時における客観的な交換価額を上回っていることが明らかであると認められる特別の事情がある場合には、相続税法第22条の時価を評価通達に定められた評価方式によって算定される価額によることは相当ではなく、個別の評価によらざるを得なくなるというべきである。
 ただし、評価通達に定められた評価方式によって算定される価額が当該客観的な交換価額を上回ることが明らかであると認めることができない場合には、評価通達に定められた評価方式によって算定される価額をもって、相続税法第22条の時価とするのが相当であるから、このような場合に、評価通達に定められた評価方式によって算定される価額に基づき行われた課税処分が違法となるものではないというべきである。
(ロ)評価通達189−2は、同189の「比準要素数1の会社の株式」の価額は、同185の定めにより計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する旨定めている。
 そして、評価通達185は、1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を課税時期において評価会社が所有する各資産を評価通達に定めるところにより評価した価額を基礎に計算する旨定めるとともに、この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した家屋及びその附属設備又は構築物(以下、これらを併せて「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する旨定めている。
 この家屋等についての取扱いは、純資産価額の計算において、課税時期の直前に取得又は新築し、通常の取引価額が明らかなものについてまで、わざわざ、評価通達に基づく評価替えを行うことは時価の算定上、適切でないと考えられることによるものであり、当審判所においても相当と認められる。
ハ 本件各代替資産
(イ)請求人らは、本件株式の評価に際しての本件各代替資産の価額は、圧縮記帳後の価額を基に算定すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件各代替資産の取得が本件収用により旧建物等を除去したことによるものであって、旧建物等に比して営業上の有利性がないものであるとしても、上記イの(ロ)のBのとおり、本件各代替資産は新たに取得又は新築されたものであること及び措置法第64条の2の規定からすれば、圧縮記帳後の価額は、法人税に関する法令の規定を適用する場合のものであることが認められ、これらのことからすれば、請求人らが主張する本件各代替資産の圧縮記帳後の価額をもって、上記ロの(イ)の相続開始の時において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額である客観的な交換価額を示すものであると認めることはできないから、この点に関する請求人らの主張には理由がない。さらに、当審判所の調査の結果によっても、評価通達に定められた評価方法によって算定される価額が客観的な交換価額を上回ることが明らかであることを認めるに足る事実があるとは認められないので、上記ロの(イ)からすれば、本件株式の評価に際しての本件各代替資産の価額については、原処分庁の主張のように、評価通達の定めによるのが相当であると認められる。
 したがって、上記イの(イ)のとおり、N社は評価通達189に定める比準要素数1の会社に該当するから、本件株式の評価に当たっては、同189−2の定めにより、課税時期においてN社が所有する各資産を評価通達に定めるところにより評価した価額を基礎とすることとなる。
(ロ)そうすると、上記1の(4)のロ及び上記イの(ロ)のBからすれば、本件各代替資産のうち家屋等に該当するものについては、N社が課税時期前3年以内に取得又は新築したことは明らかであるから、上記ロの(ロ)のとおり、評価通達185の定めにより課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価することとなり、それ以外の一般動産に該当するものについては、評価通達129の定めにより原則として調達価額に相当する金額により評価することとなる。
 この点について原処分庁は、本件各代替資産の圧縮記帳前の価額から減価償却費相当額を控除した金額をもって本件各代替資産の相続税評価額としていることが認められるところ、上記イの(ロ)のB及び上記ロの(ロ)並びに評価通達129が「調達価額が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、取得の時から課税時期までの期間の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する」と定めていること、さらには、当審判所の調査の結果によっても、本件各代替資産の取得等から本件相続開始日までの間に、その価額に影響を及ぼす事情があるとは認められないことからすれば、この方法により本件各代替資産の価額を算定することが不相当であるとは認められない。
(ハ)ところで、上記(イ)、上記(ロ)及び当審判所の調査の結果によれば、請求人ら及び原処分庁の主張する本件各代替資産については、次の誤り等が認められる。
A 本件建物附属設備のうち、別表2−1の4番、5番、12番及び13番の資産については、本件建物と構造上一体となっていることが認められるから、上記イの(ロ)のCのとおり賃貸されている本件建物と同様の評価をすることとなる。
 なお、本件建物附属設備のうち、これら以外の6番から11番の資産については、一般動産として評価するのが相当であると認められ、これに伴い適用する耐用年数(「減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表に掲げる耐用年数」をいう。以下同じ。)も異動することとなる。
B 本件各代替資産のうち、本件建物及び本件構築物のうち別表2−1の17番の資産については、適用する耐用年数に誤りがある。
C 本件構築物の価額の算定に当たって、別表2−1のとおり30%の割合に相当する金額を減額しているが、その価額は課税時期における通常の取引価額に相当する金額によるのであるから、このような減額をすることを相当と認めることはできない。
D 本件機械装置の償却費については、評価通達129の定めにより、償却期間を1年として計算することとなる。
(ニ)以上のことからすれば、本件各代替資産の価額は、別表2−2の「審判所認定額」欄のとおり、本件建物は28,559,267円、本件建物附属設備は2,384,735円、本件構築物は70,923,875円及び本件機械装置は150,738,524円となる。
 そうすると、本件各代替資産の価額の合計額は252,606,401円となり、原処分庁主張額を上回ることとなる。
ニ 本件優先株式
(イ)請求人らは、本件株式の評価に際しての本件優先株式の価額は、T社の一般の上場株式と同様に評価すべきである旨主張する。
 ところで、評価通達には本件優先株式に直接適用できる評価方法が定められてないところ、評価通達5によれば、評価通達に定めのない場合は、類似する資産の評価方法に準じて評価することとしている。
 この点に関して、原処分庁は、本件優先株式は本件情報の上記イの(ハ)のCの(A)ないし(G)に掲げた内容と同様のものであることから、本件情報に基づいて、本件優先株式の評価をしていることが認められるところ、当審判所においても、この本件情報に基づく評価方法を不相当とする理由があるとは認められないから、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(ロ)なお、請求人らは、払込金額を回収できる見込みがない旨主張する。
 しかしながら、上記イの(ハ)のAの(C)及び同Bからすれば、課税時期においてT社の残余財産の分配が行われた場合、本件優先株式の株主に対し、本件優先株式1株につき500円が支払われることは担保されており、払込金額と同額を回収できるものと認められるから、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(ハ)そうすると、本件優先株式の1株当たりの価額を500円とすべきであるとする原処分庁の主張に違法はないと認めるのが相当であるから、本件優先株式20,000株の価額は10,000,000円となる。
ホ 以上のとおり、請求人らの主張にはいずれも理由がなく、また、本件各代替資産の価額の合計額は原処分庁主張額を上回り、本件優先株式の価額は原処分庁主張額と同額となるところ、当審判所の調査の結果によっても本件各更正処分の額が過大であるとは認められないから、本件各更正処分は適法である。

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(2)本件各賦課決定処分について

 本件各更正処分は、上記(1)のとおり適法であり、また、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各更正処分前の税額の基礎とされなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められないから、請求人Mについては同条第1項及び第2項の規定に基づいて、請求人J及び請求人Lについては同条第1項の規定に基づいて行われた本件各賦課決定処分(ただし、請求人Lについては、平成18年1月27日付の変更決定処分による減額後のもの)はいずれも適法である。

(3)原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

別紙

1 相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの。以下同じ。)第22条《評価の原則》

 相続により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による。

2 措置法第64条《収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例》

 第7項
 第1項の規定の適用を受けた代替資産について法人税に関する法令の規定を適用する場合には、同項の規定により各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額は、当該代替資産の取得価額に算入しない。

3 措置法第64条の2

第1項
 法人の前条第1項各号に規定する資産が当該各号に掲げる場合に該当することとなった場合(同条第2項の規定により同項第2号に規定する土地の上にある資産につき収用等による譲渡があったものとみなされた場合を含む。)において、当該法人が、収用等のあった日を含む事業年度の翌事業年度開始の日から収用等のあった日以後2年を経過する日までの期間(以下「指定期間」という。)内に補償金、対価又は清算金の額の全部又は一部に相当する金額をもって代替資産を取得する見込みであり、かつ、当該収用等のあった日を含む事業年度の確定した決算において当該補償金、対価又は清算金の額で当該代替資産の取得に充てようとするものの額に差益割合を乗じて計算した金額を特別勘定として経理したときは、その経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
第2項
 前条第1項の規定は、前項の規定の適用を受けた法人が、指定期間内に同項に規定する補償金、対価又は清算金の額で代替資産の取得に充てようとするものの全部又は一部に相当する金額をもって代替資産を取得した場合について準用する。
第6項
 前条第6項及び第7項の規定は、第2項の規定の適用を受けた資産について準用する。

4 財産評価基本通達(平成13年5月10日付課評2−6による改正前のもの。以下「評価通達」という。)1《評価の原則》(2)時価の意義

 財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。

5 評価通達5《評価方法の定めのない財産の評価》

 この通達に評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する。

6 評価通達129《一般動産の評価》

 一般動産の価額は、原則として、調達価額に相当する金額によって評価する。ただし、調達価額が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、取得の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は、1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。

7 評価通達185《純資産価額》

 評価通達179《取引相場のない株式の評価の原則》の「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」は、課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額(この場合、評価しようとするその株式の発行会社(以下「評価会社」という。)が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利並びに家屋及びその附属設備又は構築物の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。)の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額とする。

8 評価通達189《特定の評価会社の株式》(1)比準要素数1の会社の株式

 評価通達183《評価会社の1株当たりの配当金額等の計算》の(1)、(2)及び(3)に定める「1株当たりの配当金額」、「1株当たりの利益金額」及び「1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)」のそれぞれの金額のうち、いずれか2が0であり、かつ、直前々期末を基準にして同項の定めに準じそれぞれの金額を計算した場合に、それぞれの金額のうち、いずれか2以上が0である評価会社(以下「比準要素数1の会社」という。)の株式の価額は、次項の定めによる。

9 評価通達189−2《比準要素数1の会社の株式の評価》

 評価通達189の(1)の「比準要素数1の会社の株式」の価額は、同185の定めにより計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する。

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