別紙2

当事者の主張

争点1 本件アワードが付与されたことに基づいて生じる課税の対象となる経済的利益の収入すべき時期について。

請求人 原処分庁
 本件アワードが付与されたことによる経済的利益は、権利行使日(株式売却申請書により申込みを行った日)に実現する。
 したがって、本件アワードにおいて、権利行使日が所得税法第36条第1項の収入金額とすべき時期である。
 本件アワードは、無償による株式の付与であり、株式を取得する権利が確定すれば、本件アワードが付与されたことによる経済的利益は実現する。
 したがって、本件アワードにおいて、諮問委員会が権利確定日として決定した日が、所得税法第36条第1項の収入金額とすべき時期である。

争点2 本件アワードが付与されたことに基づいて生じる経済的利益は、給与所得、一時所得のいずれに該当するか。

請求人 原処分庁
1 給与所得非該当性
(1) 請求人は、本件アワードを付与したH社との間に直接雇用又は委任の契約関係はなく、指揮命令に対する支配従属性もない。
 また、H社に対して請求人が労務を提供する法律上の義務はなく、現実に請求人がこのような人的役務を提供したこともない。
(2) 本件アワードが確定したことによる経済的利益は、株式市場の動向により大きく左右されるものであるから、請求人の労務の提供とかかわりなく発生した利益である。
2 一時所得該当性 本件アワードが確定したことによる経済的利益の発生原因は、株価の上昇によるものであり、請求人の精勤とH社の株価の上昇とは直接的に関係しない。
 したがって、本件アワードが確定したことによる経済的利益は、様々な要因によって形成される株価によって左右されるものであり、偶発性を有する所得である。
 そして、請求人は継続して本件アワードの付与を受けているが、その所得は性質上一時的なものであると解すべきであるから、一時所得に該当する。
3 仮に原処分庁が主張するように、本件アワードが確定したことによる経済的利益が「直接雇用関係がある場合と同様に、労務の対価としての性質を有するもの」と解するとしても、本件アワードの平成13年7月3日権利確定分については、以下のとおり退職所得に該当する。
(1) 請求人は、当該権利確定前の平成12年12月31日に退職しており、退職者になんらインセンティブを与えることにならず、請求人がリストラに協力する目的で退職したことに対し、権利確定前の退職者に対する本件アワードは失効するという原則にかかわらず、特別に支給されたものである。
(2) また、通常報奨分については、一度失効した権利を平成14年1月9日になり、株券で取得したものであり、平成14年分の退職所得である。
1 本件アワード・プランは、Jグループの役員又は使用人等の士気や勤労意欲を高め、かつ、企業の業績向上に資するものとして導入されたもので、役員又は使用人等の業績向上へのインセンティブ(励み、誘因)として機能することが期待されているものと認められる。
 また、本件アワードは、請求人がR社の前身であるS社及びT社に勤務していた期間に付与されたものであること、被付与者は、例外を除き、付与されてから3年以上勤務していなければ権利が確定しないこと及び被付与者が権利確定前に退職した場合は、例外を除き、退職日に権利が自動的に消滅することからすると、本件アワードが権利確定したことにより得た経済的利益は、役員又は使用人等の地位又は職務等に関連する一種の成功報酬としての性質を有し、労務又は役務の対価としての性質を有するものと解するのが相当である。
 ところで、直接雇用関係のないH社が、同社の株式を取得する権利を付与した場合においても、被付与者は、Jグループ内の会社の役員又は使用人等として精勤することによりH社の業績が向上し、それが間接的にグループ全体の業績向上に寄与することに着目して権利が付与されているものと認められる。
 そうすると、本件アワードが権利確定したことにより得た経済的利益は、直接雇用関係がある場合と同様に、雇用又はそれに準ずる関係に基づいて提供されたものと認められる。
 したがって、本件アワードを付与されたことにより得た所得は、役員又は使用人等の地位又は職務等に基づいたもので、また、同社における労務の対価としての性質を有することから、一時所得ではなく給与所得である。
2 以下のとおり、退職所得に該当しない。
(1) 本件アワードの平成13年7月3日権利確定分は、諮問委員会が認めた特別な事情による退職であり、失効していない。
(2) 本件アワードの権利が確定するのは、退職後であっても飽くまでアワード・プランによって給付されるもので、退職という事実を原因として給付されるものではない。
(3) 一定期間の精勤を条件として権利が確定するもので、過去の勤務に対する報酬という性質、すなわち給与の後払いという性質は認められず、「従来の継続的な勤務に対する報酬ないし給与の一部の後払い」に当たらない。

争点3 平成12年分及び平成13年分の所得税の各更正処分が信義誠実の原則に違反するか否か。

請求人 原処分庁
 本件アワード・プランのように、親会社が子会社の従業員等に本件アワードを付与した場合の所得税の課税については、法令及び通達の定めは存在しなかったところ、国税庁は昭和59年以降、本件アワードが確定したことにより得た経済的利益は一時所得に該当する旨の見解を明らかにしていたが、平成10年ころから、給与所得に該当する旨の見解に変更した。このような経緯で行われた原処分は信義誠実の原則に違反する。  原処分が信義誠実の原則に反する旨の請求人の主張は、具体的根拠に欠けるものである。

争点4 平成12年分及び平成13年分の過少申告加算税の各賦課決定処分について通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当するか否か。

請求人 原処分庁
 仮に原処分が適法であったとしても、争点3で主張した事実は、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に該当する。  請求人主張の事実は、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に該当しない。

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