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(平18.8.14、裁決事例集No.72 463頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、海運業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が発行済株式のすべてを所有する○○国領F島(以下「F島」という。)に本店を置く法人であるG社が、同島における税率を選択できる制度を適用して納付した法人所得税について、原処分庁が、当該法人所得税は外国法人税に該当せずG社が請求人の特定外国子会社等に該当するとし、G社に係る課税対象留保金額に相当する金額を請求人の益金の額に算入した法人税の更正処分等を行ったことに対し、請求人が、G社の納付した税は外国法人税に該当し、同社は請求人の特定外国子会社等には該当しないとして同処分等の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成13年4月1日から平成14年3月31日まで、平成14年4月1日から平成15年3月31日まで及び平成15年4月1日から平成16年3月31日までの各事業年度(以下、順次「平成14年3月期」、「平成15年3月期」及び「平成16年3月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税の青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも提出期限(法人税法第75条の2《確定申告書の提出期限の延長の特例》第1項の規定により1月間延長されたもの。)までに提出した。
ロ H税務署長は、これに対し、原処分庁所属の職員の調査に基づき、平成14年3月期については、平成15年6月30日付で、平成15年3月期については、平成16年7月30日付でそれぞれ、別表1の「更正処分等」欄のとおり、法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
ハ H税務署長は、さらに、原処分庁所属の職員の調査に基づき、平成17年6月29日付で、平成14年3月期及び平成15年3月期については、別表1の「再更正処分等」欄のとおり、平成16年3月期については、同表の「更正処分等」欄のとおり、法人税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ニ 請求人は、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を不服として、平成17年8月29日に審査請求をした。

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(3) 関係法令等

イ 租税特別措置法(平成17年法律第21号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第66条の6《内国法人に係る特定外国子会社等の留保金額の益金算入》第1項は、内国法人に係る外国関係会社のうち、各事業年度において本店又は主たる事務所の所在する国又は地域におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社に該当するもの(以下「特定外国子会社等」という。)が、その未処分所得の金額から留保したものとして、当該未処分所得の金額に係る税額及び利益の配当又は剰余金の分配の額に関する調整を加えた金額(以下「適用対象留保金額」という。)を有する場合には、その適用対象留保金額のうちその内国法人の有する当該特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額(課税対象留保金額)に相当する金額は、その内国法人の収益の額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する旨規定している(以下、この規定を「タックス・ヘイブン税制」といい、これに基づく課税を「タックス・ヘイブン課税」という。)。
 また、同条第2項第1号は、外国関係会社とは、外国法人で、その発行済株式の総数又は出資金額のうちに、居住者及び内国法人が有する株式等の総数又は合計額の占める割合が100分の50を超えるもの等をいう旨規定している。
ロ 租税特別措置法施行令(以下「措置法施行令」という。)第39条の14《特定外国子会社等の範囲》第1項は、特定外国子会社等とは、同項第1号では法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社、同項第2号ではその各事業年度の所得に対して課される租税の額を当該所得の金額で除した割合(以下「調整税率」という。)が100分の25以下である外国関係会社が、それぞれ該当する旨規定している。
 また、同条第2項第1号は、同条第1項第2号の所得の金額は、外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき、その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域の外国法人税(法人税法第69条第1項に規定する外国法人税をいう。)に関する法令の規定により計算した所得の金額に、同条第2項第1号イからホまでに掲げる金額の合計額を加算した金額から同号への金額を控除した残額である旨規定し、同条第2項第2号は、同条第1項第2号の租税の額は、当該外国関係会社の当該各事業年度の決算に基づく所得の金額につき、その本店所在地国又は本店所在地国以外の国又は地域において課される外国法人税の額と租税条約により当該外国関係会社が納付したとみなされる外国法人税の額の合計額である旨規定している。
ハ 法人税法第69条《外国税額の控除》第1項は、外国法人税は、外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものをいう旨規定している。
ニ 法人税法施行令第141条《外国法人税の範囲等》第1項は、法人税法第69条第1項に規定する外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものは、外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税とする旨規定している。
 また、法人税法施行令第141条第3項は、同項第1号から第5号までに掲げる税は、外国法人税に含まれないものとする旨規定しており、そのうち同項第1号は、税を納付する者が、当該税の納付後、任意にその金額の全部又は一部の還付を請求することができる税を、同項第2号は、税の納付が猶予される期間を、その税の納付をすることとなる者が任意に定めることができる税を、同項第5号は、外国法人税に附帯して課される附帯税に相当する税その他これに類する税をそれぞれ規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ G社は、請求人グループ各社が保有する船舶の元請保険業を営む目的で、1998年(平成10年)5月20日にF島に設立されて以来、請求人によりその発行済株式数のすべてを保有されており、請求人にとって、措置法第66条の6第2項第1号に規定する外国関係会社に該当する。
ロ G社は、F島の税法の一つであるINTERNATIONAL BUSINESS ACT 1994(以下「ACT 1994」という。)に基づき、F島の税務当局(以下「F島当局」という。)からINTERNATIONAL COMPANY STATUS(以下「国際課税資格」という。)と呼ばれる税制上の資格を取得し、現地の法人に対する所得税(以下「本件法人所得税」という。)の税率については26%を選択して申請し、F島当局から承認を受け、本件法人所得税を平成13年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「G社平成13年12月期」という。)分は○○○○スターリング・ポンド(以下「ポンド」という。)、平成14年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「G社平成14年12月期」という。)分は○○○○ポンド、平成15年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「G社平成15年12月期」という。)分は○○○○ポンドとして申告し、納付している。
ハ 請求人は、本件各事業年度において、G社に係る措置法第66条の6第4項又は第5項に規定する書類又は書面を法人税確定申告書に添付せず、同条第1項に規定する課税対象留保金額に相当する金額を益金の額に算入しないで法人税の確定申告を行っている。
ニ 原処分庁は、G社が納付した本件法人所得税は、法人税法第69条第1項及び同法施行令第141条第1項に規定する外国法人税に該当しないと判断し、G社が措置法第66条の6第1項に規定する特定外国子会社等に該当するとして、本件各事業年度において課税対象留保金額を計算した上でそれを益金の額に算入し(以下「本件課税対象留保金額」という。)、課税所得を計算した。
 なお、本件各更正処分において、益金の額に算入された本件各事業年度のG社に係る本件課税対象留保金額は、別表2の「課税対象留保金額の円換算額」欄のとおりである。

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2 主張

(1) 原処分庁

 原処分は、次のとおり適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 法人税法第69条第1項が規定する外国法人税は、我が国における法人税に相当する税であることが前提にされており、法人税法施行令第141条第3項の規定は、外国法人税に相当する税に含まれないものの例示規定であると解されるから、対象となる外国の税が、我が国の法人税に相当する税の範囲を逸脱していることが明らかな場合には、当該外国の税は外国法人税には該当しないものと解される。
ロ 法人税法第69条第1項が規定するところの「法人税に相当する税」とは、我が国における法人税と基本的構造が類似する税をいうものと解されるところ、我が国の法人税は、明文化された法令の規定に基づき、所得金額を課税標準として課税される税であり、同一の条件の所得であれば、原則として、その所得金額に応じて一定の納付すべき税額が決定され、これを所定の時期までに納付すべきとする基本的構造を有している。
 したがって、外国の税が「法人税に相当する税」に該当するためには、法人税法施行令第141条第1項が規定するように、外国の法令に基づき法人の所得を課税標準として課される税であることが最低限の要件になると解される。
ハ 本件法人所得税は、国際課税資格を取得した法人については、所得に対して適用される本件法人所得税の税率につき、当局に対して当該法人が35%以下の範囲で申請し、承認された税率となる点で我が国の法人税と異なっている。
 本件法人所得税のように、納税額を算出する重要な要素である税率が、納税者の申請と当局の承認により決定されるということは、同一の条件にある同一の所得であっても、納税者が申請する税率により、納税額が異なることになり、同一の条件にある同一の所得であれば、原則として、同一の税率が適用される我が国の法人税と比して、基本構造が類似するものであるとは認め難い。
 まして、本件法人所得税は、限りなく零%に近い税率をも選択できることから、納税額の決定について納税者の広範な裁量が認められる税であると認められ、我が国の法人税に相当する税の範囲を逸脱していることは明らかであるから、本件法人所得税は、法人税法第69条第1項が規定する外国法人税に該当しないことは明らかである。
ニ 法人税法施行令第141条第3項第1号及び第2号の規定は、実質的に負担する納税額や納付期限を納税者の裁量により変更できるような税については、我が国の法人税の基本的構造から外れるので外国法人税に含まれないとしたものであり、当該規定は、このような外国法人税に含まれないものを例示した規定であると解されるところ、本件法人所得税のように、一定の所得金額に対して負担すべき納税額について、個別の納税者に広範な裁量が認められるような税は、我が国の法人税と基本的構造が根本的に異なるものと認められるため、法人税法第69条第1項に規定する外国法人税に該当しない。
ホ さらに、ACT 1994には、F島当局が納税者の申請した税率と異なる税率を決定する場合の基準について、何ら定められていないことからすれば、税率の上限は明確であるものの、法律上税率が定められていないのと同じであり、F島当局が最終的に税率の決定権限を有していることをもってしても、我が国の法人税と基本的構造において大きく異なるものである。
ヘ G社は、請求人の外国関係会社に該当し、また、上記のとおり本件法人所得税は、法人税法第69条第1項に規定する外国法人税に該当せず、G社には他に外国法人税となる税が課されていないので、同社の調整税率は25%以下であることが明らかであるから、特定外国子会社等に該当する。

(2) 請求人

 原処分は、次の理由により違法であるから、いずれもその一部(本件課税対象留保金額)の取消しを求める。
 なお、原処分のその他の部分については争わない。
 本件法人所得税について、「任意に税率を選択できること」が「外国法人税」に該当しないという原処分庁の判断は、次のとおり租税法律主義に違背し、法令の規定に基づかない課税処分であるので違法である。
イ 本件法人所得税は、F島の法人所得税制であるACT 1994に基づきG社の所得に対して課された税であり、法人税法第69条第1項で規定する「外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるもの」及び同法施行令第141条第1項で規定する「外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税」に該当する。
 また、ACT 1994は、税負担を優遇する措置(租税優遇措置)と加重する措置(租税重課措置)を併せ持つ税制であり、特定の要件に該当する場合に納税者が自らの経済合理性に基づく判断により適用を選択することが可能であることから、この税制は我が国の措置法に相当し、そうすると、本件法人所得税は、我が国の法人税に相当する税であると認められ、外国法人税に該当する。
ロ 外国法人税に含まれないものを定めている法人税法施行令第141条第3項第1号ないし第4号の規定は、第5号の規定にある「その他これに類する税」などの例示の表現がなされていないため、外国法人税に含まれないものを限定列挙したものと解すべきである。
 さらに、同条第3項第1号及び第2号は、税の特性である強制的に徴収される性格に着目するもので、形式的に税を納付することとなっても、任意に還付請求ができるような実質的に税を納付していない場合や、税の納付の猶予を任意に定めることができるような、納付することがないものと同視できる状態を規定しているものであり、税率の選択権の有無についての規定はないことから、本件法人所得税は、外国法人税に含まれないものに該当しない。
ハ 本件法人所得税に係る税率は、納税者がそれを選択し申請したとしても、F島当局はその申請を自由裁量により拒絶できるもので、つまり、納税者にとってはF島当局によって決められた税率であり、これにより納付が強制されていることから、本件法人所得税は、税としての強制性を備え、実質的に税を納付しない場合などに該当するものではないので、外国法人税に該当する。

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3 判断

(1) 本件各更正処分について

 本件は、本件法人所得税が法人税法第69条第1項に規定する外国法人税に該当するか否かについて争いがあるので、審理したところ、次のとおりである。
イ 認定事実
 原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) G社の設立の経緯
A 請求人は、船舶保険の付保の自由化により、外航船の船舶保険を外国保険会社へ直接付保できるようになったため、F島に保険会社としてG社を設立したものである。
 G社の設立の理由は、請求人及び請求人のグループ会社の船舶の船舶保険について、従前は他の内国法人の保険会社が元受となっていたものを、G社が元受として船舶保険の引受けを行い、請求人及び請求人のグループ会社の船舶保険料を従前より引き下げ、結果として傭船料や運航費の低減につながることを意図したものである。
B また、G社の本店所在地について請求人がF島を選択したのは、1F島には既に保険会社等金融管理会社が多数設立され、金融関係の諸制度が整備されていること、2保険市場の中心である○○の所在する○○市に位置的に近いこと等の理由によるものである。
 なお、F島は、○○国領ではあるものの高度なレベルでの自治権を持ち、F島議会を通して内政、立法の権限を有している。
(ロ) G社の各事業年度の決算の状況
A G社の各事業年度の損益計算書には、G社平成13年12月期に○○○○アメリカ合衆国ドル(以下「米ドル」という。)、G社平成14年12月期に○○○○米ドル、G社平成15年12月期に○○○○米ドルの税引後利益が、それぞれ計上されている。
B なお、請求人は、原処分庁所属の職員の調査の際に、税引後利益を○○○○米ドルとするG社平成15年12月期の損益計算書を提出しており、同職員は、当該損益計算書を信頼して、G社の同事業年度の課税対象留保金額を計算し、当該金額を平成16年3月期の益金の額に算入した。
 ところが、原処分庁所属の職員に提出されたG社平成15年12月期の損益計算書は、株主総会の承認を受ける前の仮案であり、株主総会の承認を受けた当該事業年度の損益計算書は別に存在し、それによると、当該事業年度の税引後利益は、○○○○米ドルである。
(ハ) F島の法人税制について
A F島の法人税制は、1970年(昭和45年)に制定された所得税法であるINCOME TAX ACT 1970(以下「ACT 1970」という。)が基本法となっている。F島の法人税制は、1970年以降たびたび改正され、1981年(昭和56年)にはINCOME TAX(EXEMPT INSURANCE COMPANIES)ACT 1981(以下「ACT 1981」という。)の制定により免税保険会社が定められ、さらに1994年(平成6年)には、ACT 1994において、ある一定の要件を備える会社については、申請に基づきF島当局から国際課税資格を取得し、それを取得した法人にはACT 1970とは異なる課税となることが定められた。
B ACT 1970の概要
ACT 1970では、法人に対する所得税について、要旨次のとおり規定されている。
(A) F島に居住する法人には納税義務があり、毎年4月5日までに終了した事業年度については、その年の6月30日までにすべての所得につき真実を記載した正しい申告書をF島当局に提出しなくてはならない。
(B) F島で生じた所得のほか、F島外で稼得したすべての所得を課税標準としており、毎年F島の議会において所得金額の限度額を設定し、それ以下に対する税率と、それを超える税率の2段階税率が議決されている。
(C) 納税者が確定申告書を提出後、F島当局のASSESSOR(以下「税額査定人」という。)は、すべての納税義務者に対し、課税される所得、税率、納付すべき税額、納税義務発生の日付及び納付期日等を記載したNOTICE OF ASSESSMENT(以下「税額通知書」という。)を送付する。
 納税義務者が、税額通知書に基づく納税義務の発生後から31日以内に当該税額の支払を怠ると、税額査定人は、納税義務者に対し再度税額通知書を送付し、その14日後までに納税されない場合には、資産の差押令状を取得して、資産の差押えを行うことができる。
C ACT 1981の概要
 ACT 1981では、保険会社の損益のすべてが、F島外の企業から引き受けた保険リスクより生じた場合、かつ、企業がF島当局の制定する規則を遵守している場合は、ACT 1970にかかわらず、申請により当該保険会社の納税義務のすべて又は一部の免税の権利が与えられる制度を規定している。
D ACT 1994の概要
 ACT 1994及び同法に基づく関係書類によると、納税者がF島当局に対して、国際課税資格の付与の申請を行い、同資格を付与された場合の法人に対する所得税については、ACT 1970にかかわらず、当該納税者のすべての所得を課税標準とし、税率については35%を超えない範囲で自ら選択して申請し、F島当局から承認された税率でもってその申告を行い、その後、税額査定人から、税額通知書の送付を受け、それに従って納税を行う制度が定められており、その要旨は次のとおりである。
(A) ACT 1994の適用を受ける会社
 ACT 1994の適用を受ける会社は、1F島内で取引・業務を行わない企業で、かつ、銀行法、投資業法やACT 1981の適用を受けていないこと、2会社の取締役の少なくとも一人がF島の居住者であること、及び3会社のSECRETARY(以下「秘書役」という。)がF島の居住者であること、又は、国外にて設立された企業に関しては、会社の秘書役として任命された個人がF島の居住者であるなどの条件を具備した会社である。
(B) 国際課税資格の付与の申請
 上記(A)に該当する会社は、国際課税資格を取得するためF島当局に、「APPLICATION FOR INTERNATIONAL COMPANY STATUS」と題する申請書(以下「国際課税資格申請書」という。)を提出する必要がある。国際課税資格申請書には、1会社の登記情報、2取締役の氏名、3事業内容、4F島居住者の秘書役の氏名、5会計年度、6選択する税率、7申請者のF島居住取締役によるこの申請書に記載した事項について正確である旨が記載され、さらに、8法人の所得税率については、税額査定人の同意次第であり、税額査定人から異なった税率が提示される場合には、国際課税資格が確認される前に会社に対してその旨が通知されるという注意書きがあり、9申請者のF島居住の取締役がF島内にて申請者が商取引を行わないことをF島当局に対して保証した旨を記載することとされている。
 なお、国際課税資格申請書の提出期限は、原則として会社の事業年度終了後最初に到来する4月5日であり、また、その事業年度が会社の最初の事業年度である場合には、4月5日と、事業を開始してから30日以内のいずれか遅い日までに当該申請書を申請する必要がある。
(C) 国際課税資格の継続
 上記(B)の申請が認められると、翌年分以降については、税額査定人から毎年4月6日付で、「APPLICATION FOR CONTINUED INTERNATIONAL COMPANY STATUS」と題する書面(以下「国際課税資格継続申請書」という。)が国際課税資格の申請者あてに送付されるので、同資格を継続しようとする当該申請者は、当該申請書に必要事項を記載して、税額査定人にそれを提出することになる。
 したがって、国際課税資格の申請者は、同資格の付与を継続するか否かを毎年判断する必要がある。
(D) 国際課税資格の取得者の納税手続
 国際課税資格の取得者は、法人に対する所得税について定められた申告期限までに申告を行うこととなり、申告書を提出した場合にはその後に税額査定人から税額通知書が送付されることになる。
 なお、税額通知書には、申告額に誤りがない場合には、申告額と同額の所得金額及び算出税額並びに納付期日が記載されている。
(E) 税率及び最低税額
 上記(D)の法人に対する所得税の申告については、納税者がF島当局に35%を超えない範囲の税率を選択して申請し、F島当局から承認を受けた税率により税額計算を行うことになるが、納付すべき最低税額が次のとおり定められている。

18月5日より前に税務申告する場合1,260ポンド
212月5日より前に税務申告する場合2,520ポンド
34月5日より前に税務申告する場合3,780ポンド

(ニ) G社の国際課税資格取得の手続
A G社は、国際課税資格を取得するため、設立後間もない平成10年5月26日に、平成10年5月20日から同年12月31日までの事業年度に係る国際課税資格申請書をF島当局に提出し、当該申請書に選択する税率を26%と記載した。
B 上記Aの申請については、F島当局からG社の申請どおりに承認され、翌年分の平成11年1月1日から同年12月31日までの事業年度については、税額査定人から平成11年4月6日付で、国際課税資格継続申請書がG社あてに送付され、G社は、当該申請書に選択する税率を26%とするなどの必要事項を記載して、平成11年12月12日に税額査定人へ提出した。
C G社は、平成15年12月期まで、国際課税資格を継続し、選択する税率も26%のまま事前に上記Bのとおりの手続を行っている。
(ホ) G社の各事業年度の申告の手続
A F島の課税期間は、4月5日を基準日としているが、上記(ハ)のDの(C)のとおり、G社は、毎年4月6日付で税額査定人から国際課税資格継続申請書の送付を受けている。国際課税資格継続申請書には、1その年の4月5日までに終了した事業年度分の所得金額を基礎とした税額の計算欄と、2その翌事業年度の国際課税資格の継続申請を行うかどうかの意思表示欄、また、3国際課税資格の継続申請を行う場合の税率を何%と申告するかの意思表示欄及び翌事業年度分に対する予納税額の計算欄が印字されており、G社は、各欄の記入を行いF島居住の同社の役員が署名して毎年税額査定人へ提出している。
B 国際課税資格継続申請書の提出後しばらくして、税額査定人からG社あてに直前の国際課税資格継続申請書に記載した納税額と同額の税額通知書が送付され、G社は、当該税額通知書に基づき本件法人所得税を納付している。
C 上記Bの税額通知書には、納付すべき税額と納付期日が記載され、納付期日までに納付されないときには遅延利息が課されること及び税率以外の課税内容に同意できない場合には、異議申立てができることが記載されている。
(ヘ) G社に適用される法人税制と同社の選択
A G社は、F島の居住法人であるため法人所得に関する適用税法が原則としてACT 1970となり、同法によると、G社平成13年12月期ないしG社平成15年12月期の各事業年度では、税率10%から18%の納税義務を負うことになっていた。一方、G社の営む事業は保険業で、かつ、F島居住者との取引を行っていないことから、F島当局に申請をすれば、ACT 1981の適用を受けて法人所得は免税されることが可能であった。
 この点については、G社は平成16年1月1日から同年12月31日までの事業年度には国際課税資格の継続をしなかったため、当該事業年度の法人所得に係る適用税法をACT 1981として、免税法人を選択して申請し、それがF島当局から認められている事実があることからも明らかである。
 したがって、G社は、法人所得につき免税を選択できるにもかかわらず、あえて国際課税資格を取得の上、ACT 1994の規定に基づき26%の税率を申請し、F島当局から承認を得て、本件法人所得税を納付したものである。
B ところで、G社が法人所得につき免税を選択できるにもかかわらず本件法人所得税を納税した理由について、請求人の代理人は、当審判所に対して、グループ全体として税引後の利益を最大化するという経済合理性に基づいた企業行動の一環であるとし、タックス・ヘイブン税制の対象外である調整税率25%超となるように税率26%を選択して、F島当局から承認されたものである旨答述している。
(ト) OECD(経済協力開発機構)による有害税制地域の公表
A OECDは、1998年(平成10年)に公表した報告書「HARMFUL TAX COMPETITION」(以下「有害な税の競争報告書」という。)74項において、要旨次のことを指摘している。
(A) 税率や課税ベースが交渉によって、あるいは、投資家がどの国の居住者であるかによって決定されるような場合、そのような税制は有害であること(以下「有害税制」といい、有害税制を有している国を「有害税制国」という。)。
(B) 有害税制国の納税者の親会社が所在する国(以下「親会社所在地国」という。)が外国税額控除を認めている場合には、有害税制国の納税者とその国の課税当局との間の交渉によって、親会社所在地国の税は、有害税制国の税を吸収してしまうことを許すことになること。
(C) 親会社所在地国のタックス・ヘイブン税制が、子会社所在地国の税率を基準としている場合には、有害税制国の納税者により親会社所在地国におけるタックス・ヘイブン課税の回避を許すことになること。
(D) 税率と課税ベースの交渉可能性は、実際に有害税制国の納税者の課税所得を決める不透明な税制として問題を提起していること。
B なお、OECDは、F島を「有害税制」の国又は地域として、2000年(平成12年)6月の「タックス・ヘイブン・リスト」に掲載した。
ロ 外国法人税該当性について
(イ) タックス・ヘイブン税制と外国法人税の関係
A 措置法第66条の6第1項は、上記1の(3)のイのとおり、内国法人の特定外国子会社等に係る課税対象留保金額に相当する金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入すべき旨規定している。
 また、措置法施行令第39条の14第1項は、上記1の(3)のロのとおり、特定外国子会社等とは、1法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社、及び2所得に対して課される租税の額を当該所得の金額で除した割合(調整税率)が25%以下である外国関係会社である旨規定し、同条第2項の規定は、上記2の所得に対して課される租税とは、外国法人税(法人税法第69条第1項に規定する外国法人税をいい、租税条約により納付したとみなされる額を含む。)である旨規定している。
B そして、法人税法第69条第1項は、上記1の(3)のハのとおり、外国法人税は、外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものをいう旨規定し、当該規定を受けた法人税法施行令第141条第1項は、上記1の(3)のニのとおり、当該政令で定めるものとは、外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税である旨規定している。
(ロ) 外国法人税の意義について
 措置法施行令第39条の14第2項では、外国法人税とは、法人税法第69条の外国税額控除の規定における外国法人税を引用しており、その法人税法第69条第1項は、上記(イ)のBのとおり、外国法人税について「外国法人税は外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるもの」と規定しているところ、本件は、この規定の解釈が問題となるので、検討したところ、次のとおりである。
A 外国税額控除の制度趣旨からの検討
(A) 法人税法第69条で定める外国税額控除の制度は、内国法人が外国法人税を納付することとなる場合に、一定の限度で、その外国法人税の額を我が国の法人税の額から控除する制度であり、この制度は、各国がそれぞれ固有の課税権を排他的に行使することによって発生の避けられない国際的二重課税の排除を目的とする制度の一つである。また、外国税額控除は、国内に源泉のある所得と国外に源泉のある所得との間の課税の公平の維持に役立つのみでなく、投資や経済活動を国内において行うか、国外において行うかについて税制の中立性を確保しようとする目的に基づく制度である。
(B) 上記(A)の外国税額控除の制度の目的にかんがみると、内国法人が客観的にみて正当な事業目的を有する通常の経済活動に伴う国際的取引から必然的に外国法人税を納付することとなる場合に限定して、国際的二重課税を排除する外国税額控除の適用が認められると解される。
(C) さらに、外国税額控除の制度は、他の課税管轄(外国又はその地方公共団体)に支払った税を我が国の法人税と相殺することを認めるものであり、最大では、実質的に我が国の法人税課税を完全に放棄することを認めるものであるため、その対象となる外国法人税は、「我が国の法人税に相当する」税であることが必要であると解される。
ちなみに、「我が国の法人税に相当しない」税についても、外国の税制に定められているという理由から、外国税額控除の適用上外国法人税に当たるとした場合には、外国税額控除の適用の可否は、国際的二重課税の排除という目的を逸脱して、全面的に外国の税制に依存することとなり、ひいては外国税額控除の制度の存在自体が、我が国の税収に好ましくない影響を与えるだけでなく、納税者間の公平ないし税制の中立性の維持という目的をも阻害することになる。
 したがって、外国法人税とは、我が国の法人税に相当する税であると解するのが相当である。
(D) 以上のことを踏まえると、外国の租税が「法人税」という名称を有していても、それが我が国の基準に照らして「法人税」に該当しない場合には、それは「外国法人税」とはいえず、外国税額控除の対象とはならないと解すべきである。
(E) そして、外国の租税が「我が国の法人税に相当する」税であるというためには、それが我が国で通用している租税の概念に該当することが前提であり、外国において制度上租税の名を有していても我が国では租税とはいえない支払については、「外国法人税」とはいえないと解される。
B 租税の意義からの検討
(A) 我が国において「租税」とは、一般に「国又は地方公共団体が、特別の給付に対する反対給付としてではなく、公共サービスを提供するための資金を調達する目的で、法律の定めに基づいて私人に課する金銭給付である。」と解されており、租税の特色や他の国家収入との相違点をみると、1公共サービスのための資金調達を目的とすること(租税の公益性)、2一方的、権力的課徴金の性質をもつこと(租税の権力性)、3特別の給付に対する反対給付の性質を持たないこと(租税の非対価性)、4納税者の能力に応じて一般的に課されること、及び5金銭給付であることを原則とするといった特徴がある。
(B) ところで、「租税」は、国民の富の一部を強制的に国家の手に移す手段であるから、国民の財産権への侵害という性質をもたざるを得ず、一方的・権力的課徴金の性質を持つことになり、現代において租税の賦課・徴収が必ず法律の根拠に基づいて行われなければならない(租税法律主義)とされているのは、租税のこのような性質によるものと解される。
(C) また、租税法は、多数の納税義務者にかかわりをもつから、相手方の意思いかんにかかわらず画一的に(すなわち同一の状況にある者は同一に、そして同一の状況にある事実は同一に)取り扱うのでなければ、その適用がまちまちになり、納税者相互間の公平を維持することが困難になる。この意味において、租税法が強行性を有する理由がある。
(D) さらに、「租税」は、租税法に定める特定の要件に該当するときは、課税庁である国又は地方公共団体によって、一方的に(または強行的に)納税の義務が課され、その義務の履行が求められるというものであり、納税の義務は租税法によって設定され、かつ、租税法によって義務の内容が定まる。したがって、租税は、契約によって法律関係が形成されるような任意性を原則的に欠いており、租税法の規定によって法律関係が決定されるので、納税者と課税庁との間で、合意によってその内容となるものを定める余地は残されていないし、また、合意によって内容が定まることを認容していない。
(E) 以上のことから、「租税」とは、租税法に基づいて課される、強行性という特性を有するものであると解される。
C 我が国の法人税の強行性の有無
(A) 我が国の法人税は、法人税法において、課税標準、税率、申告時期、納付時期、還付額の算定方法などが定められており、納税者が同一の条件であれば、同一の法人税額が課され、納付又は還付される仕組みとなっているので、納税者の選択により、あるいは、納税者と課税庁の合意により課税標準の範囲や計算方法、税率、納付時期、還付額などが個別に決定されるようなことはない。
(B) また、納税者が法人税法や措置法で定める課税の特例の規定の適用を選択することにより、法人税額が軽減される場合もあるが、これは、法定の要件を満たすことによって課税の特例が適用され、課税所得金額の計算の修正を許容したものであって、納税者の選択による税率や納税者と課税庁が合意した税率を適用するといったものとは本質が異なるものである。
(C) さらに、法人税法には、法定の税率を超える税率の適用を認める規定や、課税庁が任意に税率を定めることができる旨の規定は存在しない。
(D) したがって、我が国の法人税は、同一の条件の納税者にあっては、納付の計算から納付、還付に至るまでの税額や納付時期などが法令の規定そのものにより定まるのであって、納税者の選択や納税者と課税庁の合意により、これらの金額や期日などが決定又は変更され得るという任意性はなく、租税の特性である強行性を有しているといえる。
D 以上のことから、タックス・ヘイブン税制の適用上における「外国法人税」とは、「我が国の法人税に相当する税」であり、我が国の法人税に相当する税とは、租税法に基づいて課されるという「強行性」を有するものであるといえる。そして、我が国の法人税には、納税者の選択や納税者と課税庁との合意により決定、変更されるという任意性はないものであると認められる。
(ハ) 本件法人所得税が外国法人税に該当するか否かについて
 上記(ロ)の外国法人税の意義に照らして、本件法人所得税について審理したところ、次のとおりである。
A 上記イの(ハ)のとおり、F島の法人税制は、保険業を営む法人に対して3つの選択肢を用意しているが、G社は、上記イの(ヘ)のとおり、法人所得が免税されるACT 1981をF島当局に申請すれば、免税となるところを、あえて国際課税資格を取得の上、ACT 1994の規定に基づき26%の税率を申請し、F島当局から承認を得て、本件法人所得税を納付したものである。
 また、F島当局は、ACT 1981の税制度を制定していることによって、本来、G社のような保険業を営む法人に対しては、居住地国課税を放棄しているともいえる。
 そうすると、請求人は、F島の法人税制のうちACT 1981(免税)を選択すれば納付しなくてもよいこととなる本件法人所得税を、あえてF島当局に納付したものということができるのであり、本件法人所得税は極めて任意性の強い支出と認められる。
B タックス・ヘイブン税制で引用する外国税額控除制度の外国法人税は、各国がそれぞれ固有の課税権を排他的に行使することによって、発生の避けられない国際的二重課税の排除を目的とする制度に係る租税を予定しているものであるが、本来、G社に対する居住地国課税を放棄しているともいえるF島当局に対して、あえて国際課税資格を取得して所得金額の26%相当額を支出したこの金銭は、上記Aのとおり、極めて任意性の強い支出であるため、外国税額控除制度の予定する外国法人税とはいえないというべきである。
C また、本件法人所得税の根拠となるACT 1994の制度は、税率を納税者側で選択してF島当局に申請して承認を受けるものであり、同一の所得に対して、同一の税額が算出されるものではないため、上記(ロ)のBの(C)の解釈に照らせば、納税者間の画一性(公平性)を維持するための強行性を有する税制であるとはいえない。
 したがって、ACT 1994の制度に基づく税は、我が国の法人税に相当する税の範囲を逸脱したものと認められる。
D 上記イの(ヘ)のBのとおり、請求人の代理人は、G社が法人所得につき免税を選択できるにもかかわらず本件法人所得税を納付した理由について、G社を我が国のタックス・ヘイブン税制の対象外とするためであるとの趣旨を当審判所に答述しており、本件法人所得税の納付には、タックス・ヘイブン課税回避以外の合理的理由がないと認められる。
 このように、タックス・ヘイブン課税の回避を理由として利用されるという観点からACT 1994の制度をみると、ACT 1994の税制が課する租税は、上記(ロ)のBの(A)で述べた、「公共サービスのための資金調達のため課される」ものや「納税者の能力に応じて課される」ものなどという我が国の租税本来の概念とは、大きく乖離したものであるといわざるを得ない。
 この点については、上記イの(ト)の「有害な税の競争報告書」にも指摘されたとおり、納税者が0%から35%までの税率を広範に選択できるF島の税制度は、タックス・ヘイブン課税の回避を支援する国際的にも有害な税制であるとされており、このような有害な税制と評価されるものを我が国の法人税法の適用上、外国法人税として取り扱うことは、税負担の公平を著しく害するものとして許されないというべきである。
(ニ) 小括
 以上のとおり、本件法人所得税は、外国税額控除制度の予定する外国法人税には該当しない。
(ホ) 請求人の主張について
A 請求人は、本件法人所得税がF島の法人所得税制であるACT 1994に基づき、G社の所得に対して課された税であり、法人税法第69条第1項で規定する「外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるもの」及び同法施行令第141条第1項で規定する「外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税」に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件法人所得税は、上記(ハ)で述べたとおり、納付しなくてもよいものをあえて納付した極めて任意性の強い支出であり、租税の特性である強行性に基づいて支出されたものとは認められないこと、また、同一の所得に対して同一の税額が算出されるべきであるという納税者間の画一性(公平性)を著しく欠いたものであることから、我が国の法人税に相当する税の範囲を逸脱したものと認められるので、この点に関する請求人の主張は採用できない。
B 請求人は、法人税法施行令第141条第3項の規定は、外国法人税に含まれないものを限定列挙したものと解すべきものであり、同項には税率の選択権の有無についての規定はない旨を主張する。
 確かに、外国法人税に含まれないものを規定した法人税法施行令第141条第3項には、税率の選択権の有無に関しての規定はない。
 しかしながら、外国法人税とは、我が国の法人税に相当する税と解されるため、外国の租税が法人税という名称を有していても、それが我が国の基準に照らして我が国の法人税に該当しない場合には、外国税額控除の対象にはなり得ないことは上記(ロ)のとおりであり、また、外国法人税に含まれないものを規定した法人税法施行令第141条第3項は、法人税法第69条の趣旨、目的に照らして外国税額控除の対象となり得ないものを確認的に例示することで、当該趣旨及び目的を明確にした例示規定と解されるので、請求人の主張は採用できない。
C 請求人は、本件法人所得税の税率はF島当局によって決められた税率であり、納付が強制されているため税としての強制性を備え、実質的に税を納付しない場合などに該当しないので、本件法人所得税は、外国法人税に該当する旨主張する。
 しかしながら、上記(ハ)のCのとおり、本件法人所得税は、納税者側で税率を選択し、F島当局にその税率を申請し承認を受けるものであり、同一の所得に対して、同一の税額が算出されるものではないため、納税者間の画一性(公平性)を著しく欠いたものである。また、我が国の法人税法には、課税庁が任意に税率を定めることができる旨の規定は存在せず、納付すべき金額は法令の規定により定まるものであることから、本件法人所得税は、外国税額控除において予定される法人税に相当する税とはいえないため、請求人の主張は採用できない。
ハ G社に係る課税対象留保金額に相当する金額の益金算入について
(イ) G社は、上記1の(4)のイのとおり、請求人の外国関係会社に該当し、また上記ロの(ハ)のとおり、本件法人所得税が外国法人税に該当せず、さらに、G社には他に外国法人税となる税が課されていないことから、同社は請求人の特定外国子会社等に該当する。
(ロ) G社の課税対象留保金額の計算
A 平成14年3月期及び平成15年3月期について
 平成14年3月期及び平成15年3月期に係るG社の課税対象留保金額については、別表2のとおり、G社平成13年12月期が○○○○米ドル及びG社平成14年12月期が○○○○米ドルであり、その円換算額は、○○○○円及び○○○○円となり、更正処分で所得金額に加算された金額と同額となる。
B 平成16年3月期について
 平成16年3月期に係るG社の課税対象留保金額については、G社平成15年12月期の税引後利益の額の把握等に誤りが認められたので、再計算をしたところ、次のとおりである。
(A) 税引後利益の額 ○○○○米ドル
 原処分庁は、G社平成15年12月期の税引後の利益の額を○○○○米ドルとしているが、○○○○米ドルが正当額である。
(B) 税引後利益の額に加算する金額の合計額(12
7,920米ドル
1交際費等の損金不算入額 6,090米ドル
G社は、別表3の「交際費等の額」欄のとおり、得意先等との飲食・接待に係る費用6,090米ドルを支出しており、これは交際費等に該当し損金不算入額となるため、当該金額を税引後利益の額に加算することになる。
2減価償却超過額 1,830米ドル
 G社が平成15年6月に事業の用に供した車両については、定額法による耐用年数6年で償却限度額を再計算すると、減価償却超過額1,830米ドルが発生するため、当該金額を税引後利益の額に加算することになる。

取得価額 耐用年数 事業の用に供した日 償却限度額 減価償却費計上額 償却超過額
38,840 6年 平成15年6月10日 3,384 5,214 1,830

(C) 適用対象留保金額
 G社平成15年12月期の適用対象留保金額は、上記(A)の○○○○米ドルに(B)の7,920米ドルを加算した、○○○○米ドルとなる。
(D) 課税対象留保金額
 請求人がG社の株式を100%保有しているため、請求人が益金に算入することになるG社平成15年12月期の課税対象留保金額は、○○○○米ドルとなり、その円換算額は、平成16年2月末の米ドルの対顧客為替相場の109.62円を適用して○○○○円となる。
(E) したがって、平成16年3月期に益金に算入することになるG社平成15年12月期の課税対象留保金額については、上記(D)で算定された○○○○円となるが、これは、原処分庁が、同事業年度の更正処分で益金に算入した○○○○円を下回る。
ニ 納付すべき税額
(イ) 平成14年3月期及び平成15年3月期
 平成14年3月期及び平成15年3月期の納付すべき金額は、更正処分の金額と同額となり、平成14年3月期及び平成15年3月期の更正処分は適法である。
(ロ) 平成16年3月期
 請求人の平成16年3月期の法人税の納付すべき税額を計算すると、別表4の「審判所認定額」欄のとおり、○○○○円となり、更正処分の額を下回るから、平成16年3月期の更正処分は、その一部を取り消すべきである。

(2) 本件各賦課決定処分について

イ 平成14年3月期及び平成15年3月期
 上記(1)のニの(イ)のとおり、平成14年3月期及び平成15年3月期の更正処分は適法であり、納付すべき税額の基礎となった事実が、更正処分前の税額の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があると認められないため、平成14年3月期及び平成15年3月期の賦課決定処分は適法である。
ロ 平成16年3月期
 平成16年3月期の更正処分は、上記(1)のニの(ロ)のとおり、その一部を取り消すべきであるから、過少申告加算税の賦課決定処分の基礎となる税額は○○○○円となる。
 また、この税額の計算の基礎となった事実については、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があると認められない。
 したがって、過少申告加算税の額は、○○○○円となり、平成16年3月期の賦課決定処分の金額に満たないから、その一部を取り消すべきである。

(3) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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