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(平19.10.30、裁決事例集No.74 214頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)の法人税について、請求人が、臨床検査で使用する減価償却資産は「機械及び装置」に当たるとして、租税特別措置法(平成18年法律第10号による改正前のものをいい、以下「措置法」という。)第42条の6《中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除》第3項の規定を適用して確定申告したところ、原処分庁が、当該減価償却資産は医療用の「器具及び備品」に当たるから当該規定は適用できないなどとして更正処分等を行ったのに対し、請求人が、原処分庁の認定に誤りがあるとして、同処分等の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯等

 平成15年4月1日から平成16年3月31日まで及び同年4月1日から平成17年3月31日までの各事業年度(以下、それぞれ「平成16年3月期」及び「平成17年3月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、審査請求(平成19年3月23日請求)に至る経緯及び内容は、別表1のとおりである。
 なお、以下、平成18年7月7日付でされた本件各事業年度の法人税の各更正処分を、「本件各更正処分」という。

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(3) 関係法令

イ 法人税法第2条《定義》第23号は、減価償却資産について、建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう旨規定し、その政令で定める資産として、法人税法施行令第13条《減価償却資産の範囲》は、同条第3号に機械及び装置、同条第7号に工具、器具及び備品を規定している。
ロ 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「耐用年数省令」という。)第1条《一般の減価償却資産の耐用年数》第1項は、減価償却資産のうち鉱業権及び坑道以外のものの耐用年数について、同項第1号で法人税法施行令第13条第1号、第2号及び第4号から第7号までに掲げる資産は別表第一(機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表)、同項第2号で法人税法施行令第13条第3号に掲げる資産は別表第二(機械及び装置の耐用年数表)に定めるところによる旨規定している。
ハ 措置法第42条の6第3項は、同法第42条の4《試験研究費の額が増加した場合等の法人税額の特別控除》第7項に規定する中小企業者に該当する法人で、青色申告書を提出するものが、平成10年6月1日から平成18年3月31日までの期間(以下、この期間を「指定期間」という。)内に、その製作の後事業の用に供されたことのない同法第42条の6第1項第1号に掲げる減価償却資産を物品賃貸業を営む者から契約により賃借をして、これを国内にある当該中小企業者の営む製造業、建設業その他政令で定める事業(以下、これらの事業を「指定事業」という。)の用に供した場合には、その指定事業の用に供した日を含む事業年度の所得に対する法人税の額からその指定事業の用に供した当該減価償却資産の当該費用の総額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額の合計額の100分の7に相当する金額を控除する旨規定し、同条第9項において、同条第3項の規定は、確定申告書等に、この規定による控除を受ける金額の申告の記載があり、かつ、当該金額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する旨規定している。
 そして、措置法第42条の6第1項第1号は、当該減価償却資産について、機械及び装置並びに器具及び備品(器具及び備品については、事務処理の能率化等に資するものとして財務省令で定めるものに限る。)とする旨規定し、財務省令で定めるものについては、租税特別措置法施行規則(平成18年財務省令第26号による改正前のものをいい、以下「措置法施行規則」という。)第20条の2の2《中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除の対象範囲等》第1項第1号から第9号までに掲げるものとする旨規定しており、同項各号に規定するものは別表2のとおりである。
 また、措置法第42条の6第3項に規定する指定事業について、租税特別措置法施行令(平成18年政令第135号による改正前のものをいう。)第27条の6《中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除》第3項は、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業その他財務省令で定める事業とする旨規定し、財務省令で定める事業について、措置法施行規則第20条の2の2第4項第10号は、サービス業(物品賃貸業及び娯楽業(映画業を除く。)を除く。)を規定している。

(4) 基礎事実

イ 請求人の組織等
(イ) 請求人は、昭和○年○月○日に設立され、臨床検査等を目的とする法人であり、措置法第42条の6第3項に規定する中小企業者に該当する。
 なお、請求人の代表取締役には、その設立時からDが就任している。
(ロ) 請求人の営む臨床検査事業は、措置法施行規則第20条の2の2第7項第10号に規定するサービス業に該当することから、措置法第42条の6第3項に規定する指定事業に該当する。
ロ 請求人の確定申告関係
 請求人は、本件各事業年度に係る法人税の確定申告書(以下「本件各確定申告書」という。)に、措置法第42条の6第3項の規定による控除を受ける金額の申告の記載をし、「別表6(10)中小企業者等が機械等を取得した場合等の法人税額の特別控除に関する明細書」を添付した上、本件各確定申告書を法定申告期限内に原処分庁に提出した(以下、本件各確定申告書に添付したこれらの明細書を「本件各明細書」という。)。
ハ 本件各明細書に記載の各減価償却資産
 請求人が、本件各明細書に記載した各減価償却資産(以下「本件各減価償却資産」という。)の名称及び事業の用に供した年月日並びに当該減価償却資産の機能及び設置場所は、別表3のとおりである。
 なお、本件各減価償却資産は、いずれも指定期間内に指定事業の用に供されており、本件各事業年度の終了の日まで引き続き指定事業の用に供されている。

(5) 争点

 本件各減価償却資産は、法人税法施行令第13条第3号に規定する「機械及び装置」として、措置法第42条の6第1項第1号に規定する減価償却資産に該当するか否か。

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2 主張

原処分庁 請求人
 税法上の機械及び装置とは、設備という集合体として、集団的に生産手段やサービスとして用いられる総合償却資産であるところ、本件各減価償却資産は、個々の機器における相互連携が極めて希薄であり、設備という集合体としての関係が成立しているとはいえず総合償却資産とは認められないから、機械及び装置ではない。
 また、本件各減価償却資産は、検体検査を行う包括的な医療用機器であるから、耐用年数省令第1条第1項第1号に定める別表第一の「器具及び備品」の「8医療機器」(以下「医療機器」という。)に該当する。
 したがって、本件各減価償却資産は、措置法第42条の6第1項第1号に規定する減価償却資産に該当しない。
 機械及び装置と器具及び備品がどのようなものであるかは、社会通念による判断にゆだねられており、機械及び装置とは、1剛性のある物体から構成されている、2一定の相対運動をする機能を持っている、3それ自体が仕事をするとの三つの要素を充足するものとされているところ、本件各減価償却資産は、いずれもその要素を満たすものであるから、法人税法施行令第13条第3号に掲げる「機械及び装置」に該当する。
 また、医療機器は、病院等が直接医療用として使用するものをいうところ、本件各減価償却資産は、請求人が病院等からの検体の臨床検査を行うために使用するものであり、直接医療の用に供していないから、医療機器に該当しない。
 したがって、本件各減価償却資産は、措置法第42条の6第1項第1号に掲げる減価償却資産に該当する。

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3 判断

(1) 本件各更正処分について

イ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件各減価償却資産は、主に金属製のもので、医療用の検体を容器等の中で、検査、分析、判定、測定等を行うものであり、検査等の項目ごとに単体で使用し、その機能を発揮するものである。
(ロ) 本件各減価償却資産は、建物や設備等に固着しておらず、それらと一体稼動するものではなく、いずれも移設が容易である。
ロ 判断
(イ) 法人税法第2条第23号及び法人税法施行令第13条は、減価償却資産を形態別に分類しそれを掲げているにすぎず、減価償却資産そのものを個別具体的に明らかにしたものではないので、機械及び装置を定義付ける必要があるところ、一般的に、「機械」とは、外力に抵抗し得る物体の結合からなり、一定の相対運動をなし、外部から与えられたエネルギーを有用な仕事に変形するものをいい、「装置」とは、ある目的に合わせて設備・機械・仕掛けなどを備え付けること、又は、その設備・機械などをいうものと解されているので、かかる一般的定義を基本としつつ、耐用年数省令の別表第二に規定する「機械及び装置」の耐用年数が、同表に掲げるかん詰製造設備、自動車製造設備等のように、設備の種類ごとに標準設備を想定し、その標準設備を構成する各資産の耐用年数を見積り、これを各資産の価額により加重平均して算出していることを考慮して定義付けるのが相当である。
 また、法人税法施行令第13条第3号が、「機械」と「装置」とを区分することなく取り扱っていることからすると、両者を併せて定義付けるのが相当である。
 以上の観点からすると、法人税法施行令第13条第3号に規定する「機械及び装置」とは、外力に抵抗し得る物体の結合からなり、一定の相対運動をなし、外部から与えられたエネルギーを有用な仕事に変形するもので、かつ、複数のものが設備を形成して、設備の一部としてそれぞれのものがその機能を果たすものをいうと解するのが相当である。
 さらに、法人税法施行令第13条第7号に規定する「器具及び備品」とは、耐用年数省令の別表第一が個別資産ごとに耐用年数を定めていることから判断すると、それ自体で固有の機能を果たし独立して使用されるものをいうと解するのが相当である。
(ロ) これを本件についてみると、次のとおりである。
A 本件各減価償却資産は、1検査、分析、判定、測定等を行うことにより、その工程がすべて終了するものであること、2それ自体単体で個別に作動するものであり、他の機器と一体となって機能を発揮するものではないことなどの性質を有していることから、複数のものが設備を形成し、その設備の一部としてそれぞれのものがその機能を果たしているものということはできないので、法人税法施行令第13条第3号に規定する「機械及び装置」には該当しない。
 また、本件各減価償却資産は、それ自体で固有の機能を果たし、独立して使用されるものであるので、法人税法施行令第13条第7号に規定する「器具及び備品」に該当するが、措置法第42条の6第3項の適用対象となる器具及び備品は、別表2に掲げる資産に限定されているところ、本件各減価償却資産の機能は別表3のとおりであり、別表2に掲げる「器具及び備品」のいずれにも該当しない。
B これに対し、請求人は、機械及び装置とは、1剛性のある物体から構成されている、2一定の相対運動をする機能を持っている、3それ自体が仕事をするという三つの要素を充足するものであるところ、本件各減価償却資産は、いずれもその要素を満たすものであり、機械及び装置に該当する旨主張する。
 しかしながら、請求人の主張する三つの要素は、機械及び装置の一般的な要素とはいえるものの、上記(イ)のとおり、法人税法施行令第13条第3号に規定する「機械及び装置」というためには、複数のものが設備を形成して、設備の一部としてそれぞれのものがその機能を果たしていなければならないところ、本件各減価償却資産は、他の機器と一体となって機能を発揮するものではないから、同号に規定する「機械及び装置」には該当しない。
 さらに、請求人は、医療機器は、病院等が直接医療用として使用するものをいうところ、本件各減価償却資産は、請求人が病院等からの検体の臨床検査を行うために使用するものであり、直接医療の用に供していないから、医療機器に該当しない旨主張する。
 ところで、医療機器とは、医療の用に使用される機器をいい、医療とは、医学に基づいて、人の疾病の予防又は傷病の治療のために行われる給付又はその給付内容をいい、これらの給付を行うために、又はこれらの給付に付随して必要な医学的諸検査、診療等の給付を含むものと解されているところ、医療機器には、検体検査に使用される機器が含まれ、また、医療の用に使用することを目的とするのであれば、それを使用する場所を問わないと解するのが相当である。
 そうすると、別表3の機能を有し、検体検査を行う目的で使用される本件各減価償却資産は、医療機器に該当するものと認められる。
 したがって、これらの点に関する請求人の主張には、いずれも理由がない。
C 以上のことからすると、本件各減価償却資産は、措置法第42条の6第3項の規定を充足するための要件である同条第1項第1号に掲げる減価償却資産に該当しない。
 したがって、措置法第42条の6第3項の規定は適用できないとの原処分庁の認定に誤りはなく、それを基礎としてされた本件各更正処分はいずれも適法である。

(2) その他

 過少申告加算税の賦課決定処分を含む原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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