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(平19.10.3、裁決事例集No.74 450頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、調査業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項の控除(以下「仕入税額控除」という。)を適用して消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の申告をしたところ、税務調査において請求人が課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を提示しなかったことから、原処分庁が同条第7項に規定する帳簿及び請求書等(以下「帳簿等」という。)を保存しない場合に該当するとして仕入税額控除の適用を認めないとする更正処分をしたのに対し、請求人が調査手続の違法及び帳簿を保存していたことを理由として同処分の全部の取消しを求めた事案である。

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(2)  審査請求に至る経緯

 平成17年1月1日から平成17年12月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税等の更正処分(以下「本件更正処分」という。)についての審査請求に至る経緯等は、別表1のとおりである。

(3) 関係法令

イ 消費税法第30条第1項は、事業者が、国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定し、同条第7項は、事業者が課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等を保存しない場合(ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合を除く。)には、当該保存がない課税仕入れの税額につき同条第1項の規定を適用しない旨規定している。
ロ 消費税法施行令第50条《課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の保存期間等》第1項は、消費税法第30条第1項の規定の適用を受けようとする事業者は、同条第7項に規定する帳簿等を整理し、当該帳簿等については定められた期間、これを納税地又はその取引に係る事務所などに保存しなければならない旨規定している。
ハ 消費税法第58条《帳簿の備付け等》は、事業者は、政令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれにその行った資産の譲渡等又は課税仕入れに関する事項を記録し、かつ、当該帳簿を保存しなければならない旨規定している。
ニ 消費税法第62条《当該職員の質問検査権》第1項は、税務署の当該職員は、消費税に関する調査について必要があるときは、1納税義務がある者、納税義務があると認められる者等及び2前記1に掲げる者から金銭の支払若しくは資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者等に質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる旨規定し、所得税法第234条《当該職員の質問検査権》第1項も同旨の規定をしている。
ホ 消費税法第69条は、消費税の調査に関する事務に従事している者又は従事していた者が、その事務に関して知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用したときは、これを2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する旨規定し、所得税法第243条も同旨の規定をしている。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁の間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、関東一円の現場に出張して、調査し、調査依頼者に対して、その調査結果の報告書を作成することを業務としている。
ロ 原処分庁所属の調査担当者(以下「調査担当者」という。)は、請求人の平成14年分、平成15年分及び平成16年分(以下、これらを併せて「各年分」という。)の所得税及び平成14年1月1日から平成14年12月31日までの課税期間、平成15年1月1日から平成15年12月31日までの課税期間及び平成16年1月1日から平成16年12月31日までの課税期間(以下、これらを併せて「各課税期間」という。)の消費税等について、平成17年10月17日に税務調査(以下、本件更正処分に至るまでの一連の税務調査を「本件調査」という。)を行った。請求人は、団体Aで請求人の税務に関する相談窓口をしていた事務員Bを立ち会わせるよう主張したが、調査担当者は第三者の立会いの下では調査はできない旨伝えて、同日の調査を打ち切った。
ハ 原処分庁は、本件調査において、調査担当者に対し本件課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(以下「本件帳簿等」という。)の提示がなかったことが、消費税法第30条第7項にいう帳簿等を保存しない場合に当たるとして、仕入税額控除の適用を認めない旨の本件更正処分を行った。

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2 主張

(1) 原処分庁

イ 本件調査の違法性について
 本件調査において、請求人が本件帳簿等を一切提示しなかったため、請求人の取引先及び取引銀行等(以下「取引先等」という。)に対する調査を行い、消費税等の課税標準額及び納付すべき税額を算定したところ、請求人が消費税等の確定申告書に記載した課税標準額及び納付すべき税額と異なったため更正したもので、調査手続に何ら違法な点はない。
 調査に際し第三者の立会いを認めなければならない旨を定めた法令上の規定はないので、立会いを認めないで調査をしても何ら違法ではない。
ロ 仕入税額控除について(帳簿等の保存)
 消費税法第30条第7項の規定により仕入税額控除は帳簿等の保存があった場合にのみ適用されるところ、本件調査の際に調査担当者が請求人に対し本件帳簿等の提示を求め、提示がない場合には仕入税額控除の適用を受けられなくなる旨を再三説明したにもかかわらず、請求人は本件帳簿等を提示しなかった。このことは同項に規定する帳簿等を保存しない場合に該当することとなるので、請求人は本件課税期間において仕入税額控除を受けることはできない。

(2) 請求人

イ 本件調査の違法性について
 請求人は、初めて税務調査を受けることに不安を抱き、調査への対応の仕方が分からなかったことから、立会人の同席を依頼しただけであるのに、調査担当者が税務職員の守秘義務を根拠に立会人を排除して調査を開始しようとしたのは違法である。仮に、調査担当者に守秘義務があるとしても、(守秘義務による保護の対象である)請求人自身が立会人の同席を認めていたので、調査担当者の守秘義務は解除されていたはずであるから、守秘義務違反を理由に第三者の立会いを排除しようとした調査担当者の行為は違法である。
 調査担当者は、平成17年10月17日に請求人を一度調査しただけで、請求人に対して何らの予告をせずに、請求人宅に臨場した翌日の同月18日から早々と取引先等を調査した。このような取引先等に対する調査は違法であり、不当な調査により、売上げの最も大きい取引先から仕事を断られて収入が減少し、請求人の生活と権利が奪われた。
 調査担当者は、平成17年10月17日の調査では、立会人の排除を求めただけで帳簿の内容すら確認せず、その後は、請求人に対して調査及び課税の根拠となる条文を示しての納得のいくような説明をせず、威圧的態度で請求人が求めた調査日の変更を拒むなどし、結局、請求人に対する調査を一度も行わず処分をしているから、このような一方的な調査に基づいて行われた本件更正処分は違法である。
ロ 仕入税額控除について(帳簿等の保存)
 請求人は本件帳簿等を保存していたのに、調査担当者は本件帳簿等を確認していない。それにもかかわらず仕入税額控除の適用を否認したのは違法である。

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3 判断

(1) 認定事実

 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、別表2記載の経過のほか、次の事実が認められる。
イ 平成17年10月17日の請求人宅への臨場調査
 調査担当者は、事前に請求人と日程調整した上、平成17年10月17日午前10時ころ請求人宅に臨場し、請求人の各年分の所得税及び各課税期間の消費税等の調査に来た旨を告げて調査に着手した。
 請求人は、事務員Bを同席させており、事務員Bは、調査担当者に対し、請求人が一人で調査を受けるのは心細いというので自分の立会いがなければ請求人が調査に応じることはないと述べ、請求人も調査担当者に対し同様の意見を述べた。
 そこで、調査担当者は、請求人に対して、税務調査に第三者が立ち会うことは国家公務員に課せられた守秘義務の観点から問題があり、また、税理士資格を持っていない第三者の立会いを認めると税理士法にも違反することを伝えて、事務員Bを退席させるよう依頼したが、請求人は応じなかった。
 その後も、調査担当者は、請求人に対して、事務員Bを退席させた上で、申告の基となった帳簿書類を提示するよう繰り返し求めたが、請求人は一貫して事務員Bの立会いを求め、事務員Bに帰ってもらう気はないと述べた。この間、事務員Bが調査担当者に見えるように帳簿らしきものを持ち上げたことがあったが、請求人が事務員Bを退席させた上で帳簿書類を提示することを拒んでいたので、調査担当者は帳簿等を確認することはできなかった。そのため、調査担当者は、請求人に対する質問及び帳簿等の検査はできないと判断し、同日の調査の続行を断念した。
 調査担当者は、請求人に対し、帳簿等を確認できないのであれば、他の方法で申告内容を確認するほかないので、請求人の取引先を調査することもある旨を告げて、午前10時45分ころ、請求人宅を辞去した。
ロ 請求人の取引先等への調査
 調査担当者は、平成17年10月28日、請求人の取引先等に対して、各年分の取引金額等についての照会文書を発送し、以後、取引先等に対する書面照会又は臨場調査を順次行った。
ハ その後の調査担当者と請求人の接触状況
 調査担当者は、平成17年11月17日から平成18年2月2日まで、別表2記載のとおり、請求人宅に臨場し、別表2のとおり、連絡票1ないし3を、在宅していた請求人の妻に手渡すか、差し置き、また、電話にて調査への協力を依頼した。
 調査担当者は、連絡票1及び2において、帳簿等の提示がない場合又は備付け、記録若しくは保存が行われていない場合は消費税に係る仕入税額控除の適用が否認される旨を教示した上で、各年分の所得税及び各課税期間の消費税等につき、申告の基となったすべての帳簿書類を提示して調査に応じるよう求めるとともに、次回臨場日の予告をし、連絡票3において、調査担当者への連絡を依頼した。
 請求人は、別表2のとおり、連絡票1及び2並びに電話での伝言による臨場予定日の告知のうち2回について、事前に当該予定日は都合が悪い旨の電話を調査担当者あてにかけて日程の変更を求めたので、調査担当者はいずれも請求人宅への臨場を取りやめた。
ニ 本件課税期間を含めた調査の状況
 調査担当者は、本件課税期間の確定申告期限後の平成18年4月11日に請求人宅に臨場し、別表2の連絡票4を差し置き、本件課税期間を含めて調査を行うことを記載した上で次回臨場日を予告するとともに、本件帳簿等を含めた帳簿等の提示を求めた。これに対し、請求人は、同年4月13日に日程変更を求めて調査担当者に電話をかけ、事務員Bの立会いがない限り調査に応じられない旨述べたので、調査担当者は、請求人に対し、第三者が立会っている下では調査ができないことを再度説明し、このまま本件帳簿等の提示がないと、仮払消費税分の仕入税額控除の適用が認められなくなることを伝えて、調査に応じるかどうかを改めて検討し連絡するよう伝え、臨場予定を取り消した。しかし、請求人から連絡がなかったことから、調査担当者は本件課税期間に係る取引先等の調査を開始した。
 その後、別表2のとおり、調査担当者は、請求人宅に4回臨場し(うち2回は連絡票による臨場日の予告をしていた。)、連絡票5ないし8を差し置き、帳簿等の提示がないと仕入税額控除の適用が認められない旨の教示をした上、本件帳簿等を含む申告の基となった帳簿等の提示を求めるとともに、次回臨場日の予告又は調査担当者への連絡を依頼したが、結局、請求人に面会することができず、また、請求人から日程変更の希望その他の連絡も一切なかった。
ホ 以上のように本件帳簿等の提示がなかったことから、原処分庁は、取引先等に対する調査に基づき消費税の課税標準額及び税額を算出し、消費税法第30条第7項の帳簿等の保存がないとして仕入税額控除を認めずに消費税等の税額を算出し、本件更正処分を行った。

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(2) 本件調査の違法性について

イ 消費税法第62条、所得税法第234条に規定する質問検査権に基づいて行う税務調査は、質問検査の範囲、程度、時期、場所など実定法に特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、相手方の私的利益との比較衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な判断にゆだねられていると解される。
ロ これを本件についてみると、次のとおりである。
(イ)  事務員Bの立会いについて
 税務調査において第三者の立会いを認めるか否かは、実定法に特段の定めのないものである。そして、上記(1)のイのとおり、調査担当者は、本件調査に税理士でない第三者の立会いを認めることは税務職員の守秘義務に違反し、かつ、税理士法違反にもなることを理由に事務員Bを退席させた上での帳簿等の提示を請求人に求めたものであるから、本件調査において第三者の退席を求めた行為は、違法な結果が生ずることを防止するために必要な措置であったということができる。その方法も、口頭で事務員Bを退席させるよう請求人に求めたものにとどまり、たとえ請求人が単独で税務調査を受けることに不安があったとしても、税務に関する専門家である税理士を税務代理人に選任することができたことを考慮すれば、社会通念上相当な方法であったということができる。したがって、事務員Bの立会いを認めなかった措置に何らの違法も認められない。
 なお、請求人は、請求人が事務員Bの立会いを求めていたのであるから、調査担当者の守秘義務は解除されていたと主張する。しかし、消費税法第62条第1項等が取引先等の第三者への質問検査を認め、税務調査が納税者のみならず、第三者の秘密に広く及ばざるを得ないことなどを踏まえて、国家公務員法上の一般的な守秘義務に加重して消費税法第69条等が守秘義務を税務職員に課していることからすれば、守秘義務の対象となる秘密には、納税者自身の秘密のほか納税者の取引先等の第三者の秘密も含まれると解される。そうすると、たとえ請求人が事務員Bの立会いを希望していたとしても、取引先等の第三者に関する秘密はなお保護しなければならなかったのであるから、調査担当者が守秘義務を理由に事務員Bの立会いを認めなかった措置は適法であったというべきである。
(ロ) 請求人の取引先等に対する調査について
 消費税法第62条第1項第2号に規定する納税義務者以外の取引先等の第三者に対する調査に関して、その時期、納税者への予告の要否などの実施の細目についても実定法に特段の定めはないものである。そして、上記(1)のイ及びロのとおり、調査担当者が、平成17年10月17日の約45分に及ぶ調査において、繰り返し事務員Bを退席させた上で帳簿等を提示するよう請求人に求めたが、請求人が事務員Bの立会いを求める意思が固く、帳簿等を提示しなかったため、調査担当者は帳簿等の検査が困難であると判断して、取引先等の調査をすることがある旨告げて、同年10月28日に取引先等に対して書面を発送して取引先等の調査を開始したことが認められる。これらの事情に照らせば、取引先等に対する調査によって申告の正確性を確認する必要性があったということができる。また、調査担当者が、取引先等の調査によらずに申告の正確性を確認できるよう申告の基となった帳簿等の提示を求め、これに請求人が応じなかったことから、法令上必要とされていない予告までした上で取引先等の調査を開始しているので、その方法も社会通念上相当なものであったと認められ、取引先等に対する調査に違法があったとは認められない。
 なお、以上のような必要性に基づき相当な方法によって取引先等に対する調査が行われていることからすれば、請求人の主張する調査後の取引先等の対応により損害を被ったという事情の有無は、取引先等への調査の適否を左右するものとはいえない。
(ハ) さらに、請求人は、本件調査の際に根拠条文を示した納得のいく説明がなく、調査日程の変更を電話で依頼しても調査担当者が威圧的態度で請求人の要望を認めず、請求人に一度しか面会せず、本件帳簿等の調査をしないまま本件更正処分をしており、調査が一方的である旨主張する。
 しかしながら、調査担当者は、上記(1)のイ、ハ及びニのとおり、守秘義務違反及び税理士法違反を防止するために第三者の立会いは認められないこと、本件帳簿等の提示がなければ消費税等に係る仕入税額控除の適用が否認される旨を口頭及び文書で再三にわたり説明して、調査への協力を求めていたと認められる。また、請求人から臨場予定日の都合が悪い旨の連絡があった場合に、調査担当者が日程変更に応じていたことからすれば、調査担当者が威圧的態度で日程変更に応じなかったとも認められない。
 かえって、調査担当者が平成17年10月17日以降請求人に直接面会して質問せず、かつ、本件帳簿等の調査をしなかったのは、調査担当者が請求人に直接質問し、本件帳簿等を含めた帳簿等の検査を行うべく、再三にわたり連絡票又は電話により請求人に対して帳簿等を提示し、調査に応じるよう求めたにもかかわらず、請求人が自らの都合を理由に日程変更を依頼し、又は当該連絡に何の応答もしなかった結果と認められる。このような経緯に照らせば、請求人と一度しか面接せず、かつ、本件帳簿等を検査しなかったことについて、調査担当者に与えられた質問検査の範囲、程度に関する裁量権の範囲の逸脱があったとは認められず、これらの点について何らの違法又は不当は認められない。
(ニ) 以上によれば、本件調査に違法又は不当があるとはいえない。

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(3) 仕入税額控除について(帳簿等の保存)

イ 消費税等に係る申告が適正になされることを確保するため、消費税法第58条が事業者に課税仕入れ等に関する帳簿の保存を義務付け、同法第62条が税務職員にこれらの帳簿書類を検査することを認めている。このように課税仕入れ等に係る帳簿等が税務職員による検査の対象となることを前提として、同法第30条第7項は、事業者が課税仕入れ等の税額に係る帳簿等の保存をしている場合において、税務職員がこれらの帳簿等を検査することができるときに限り、同条第1項の仕入税額控除を適用できることを明らかにしたものであると解される。
 このような趣旨からすれば、事業者が消費税法第30条第1項に規定する仕入税額控除の適用を受けるには、消費税法施行令第50条第1項の定めるとおり、消費税法第30条第7項に規定する帳簿等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、同法第62条の規定に基づく税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要し、事業者がこれを行っていなかった場合には、同法第30条第7項により、事業者が災害その他やむを得ない事情によりこれをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書)、同条第1項の規定は適用されないというべきである。
ロ これを本件についてみると、上記(1)のイ、ハ及びニのとおり、調査担当者は平成17年10月17日から平成18年2月まで、再三にわたって、帳簿等の提示がない場合には仕入税額控除の適用が認められない旨の説明をした上で、税理士でない第三者である事務員Bを退席させた上で各課税期間の帳簿等を提示することを求め、同年4月11日から同年5月26日までも、同様の方法により、本件帳簿等を含めた帳簿等の提示を求めていたところ、これらの提示要求に違法な点が認められないのは前記(2)のとおりである。そして、請求人が専ら事務員Bの立会いなしでは調査に応じられないという理由で各課税期間に係る帳簿等の提示を拒んでいたこと、平成18年4月11日以降の本件帳簿等を含めた提示要求に対しても、同様の理由で提示を拒むか、応答しなかったことに照らすと、請求人は、本件帳簿等の提示の要求に応じ難いとする理由が格別なかったにもかかわらず、本件帳簿等を提示しなかったというべきである。これらによると、請求人が、消費税法第62条の規定に基づく調査担当者の本件帳簿等の検査に当たり、適時に提示することが可能なように態勢を整えてこれらを保存していたということはできず、本件は同法第30条第7項に規定する「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たる。
 したがって、原処分庁が同条第1項の規定を適用せず仕入税額控除は認められないとして行った本件更正処分は適法である。

(4) 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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